(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端に開口部を有する筒状の混合器本体に、一端開口部から吸引ポンプにより吸引して導入した第1流体を軸線方向に流動させて他端開口部から導出する軸線流路と、容器状の第2流体収容部に収容した第2流体を第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により混合器本体の周壁に形成した本体導入孔を介して第1流体の軸線流路の外周から導入し、混合器本体の内周面に沿わせて軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回させながら流動させて第1流体と第2流体とを混合して他端開口部から導出する螺旋流路を形成し、
しかも、前記混合器本体の周壁には、その長手方向との間に一定の鋭角をなして伸延するスリット状の本体導入孔を複数個形成するとともに、各本体導入孔の伸延方向は単一仮想螺旋に沿わせて、かつ、本体導入孔はその伸延方向に多数間隔を開けて配置したことを特徴とする流体混合器。
前記混合器本体は、一端開口部から他端開口部に向かって漸次拡径させて形成した基端側筒状部と、基端側筒状部の終端から他端開口部まで略同径に形成した先端側筒状部とを具備し、
他端開口部には連通パイプを介して吸引ポンプの吸込口を連通連結したことを特徴とする請求項1記載の流体混合器。
吸引ポンプにより吸引されて軸線流路をその軸線方向に沿って流動する第1流体と、軸線流路の外周に設けた容器状の第2流体収容部に収容し、第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により前記第2流体収容部から混合器本体の周壁に形成したスリット状の本体導入孔を介して螺旋流路内に導入して螺旋状に旋回流動する第2流体とを、軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回させながら混合し、しかも、スリット状の本体導入孔は一定の鋭角をなして伸延し単一仮想螺旋に沿って伸延方向に多数間隔を開けて配設されていることを特徴とする流体混合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記した乳化装置は、板状の液体導入部と合流流路部と混合流路部と液体導出部とを積層させて構成し、各部に形成した流路形成路を接続して、分散相流路と連続相流路と旋回流路と混合流路を形成しているが、構造が複雑で各流路形成路の加工成形が煩雑になっている。そのため、乳化装置は製造コストが高価な上に、分散相をサブマイクロレベルに微細化することができるものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、構造簡易で安価に分散相をマイクロレベルないしはサブマイクロレベルに微細化するとともに均一化することができる流体混合器及び流体混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る流体混合器は、両端に開口部を有する筒状の混合器本体に、一端開口部から吸引ポンプにより吸引して導入した第1流体を軸線方向に流動させて他端開口部から導出する軸線流路と、容器状の第2流体収容部に収容した第2流体を第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により混合器本体の周壁に形成した本体導入孔を介して第1流体の軸線流路の外周から導入し、混合器本体の内周面に沿わせて軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回させながら流動させて第1流体と第2流体とを混合して他端開口部から導出する螺旋流路を形成し、しかも、前記混合器本体の周壁には、その長手方向との間に一定の鋭角をなして伸延するスリット状の本体導入孔を複数個形成するとともに、各本体導入孔の伸延方向は単一仮想螺旋に沿わせて、かつ、本体導入孔はその伸延方向に多数間隔を開けて配置したことを特徴とする。
【0008】
かかる流体混合器は、連続相としての第2流体を容器状の第2流体収容部に収容して配置し、分散相としての第1流体を混合器本体の一端開口部から他端開口部に向けて吸引ポンプにより軸線流路を通して軸線方向に沿って流動させる。そうすることで、第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により第2流体を混合器本体の周壁に形成した本体導入孔を介して第1流体の軸線流路の外周から導入することができる。続いて、混合器本体の本体導入孔から混合器本体内に引き込まれながら導入された第2流体は、軸線流路を流動している第1流体の周囲にて螺旋流路を通して螺旋状に旋回流動されて、第1流体を螺旋流路の全域において剪断・分散する。その結果、第1流体と第2流体が均一に混和される。
【0009】
この際、第2流体は、螺旋流路を通して軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回流動される。つまり、軸線流路の外周側から軸線中心(同芯)に向けて漸次旋回半径を小さくしながら旋回される。そのため、旋回流動が軸線中心側で加速されて高速で第1流体に剪断作用し、第1流体を微細かつ均等に分散する。
【0011】
かかる流体混合器では、混合器本体の周壁に複数個の本体導入孔を形成しており、本体導入孔は混合器本体の長手方向との間に一定の鋭角をなして伸延するスリット状となして、単一仮想螺旋に沿わせて、かつ、その伸延方向に多数間隔を開けて配置しているため、本体導入孔から導入された第2流体は混合器本体内で堅実に螺旋状に旋回される。
【0012】
請求項3記載の発明に係る流体混合器は、請求項1記載の発明に係る流体混合器であって、前記混合器本体は、一端開口部から他端開口部に向かって漸次拡径させて形成した基端側筒状部と、基端側筒状部の終端から他端開口部まで略同径に形成した先端側筒状部とを具備し、他端開口部には連通パイプを介して吸引ポンプの吸込口を連通連結したことを特徴とする。
【0013】
かかる流体混合器では、混合器本体の基端側筒状部を漸次拡径させて形成し、先端側筒状部を基端側筒状部の終端から他端開口部まで略同径に形成して、先端側筒状部内において第2流体が螺旋状に旋回流動されるようにしているため、基端側筒状部から先端側筒状部に流動される第1流体と、先端側筒状部において螺旋状に旋回流動される第2流体との混和性と旋回性を促進させることができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る流体混合器は、請求項1又は3記載の発明に係る流体混合器であって、前記混合器本体の外周を被覆体により一定の間隔を保持して被覆し、被覆体に、その周壁に形成した被覆体導入孔から導入した第2流体を被覆体の内周面に沿わせて軸線流路の軸線を中心に旋回させながら流動させて混合器本体の本体導入孔に導入させる旋回流路を形成して、軸線流路を軸線流動する第1流体と、その周囲を螺旋状に旋回流動する第2流体とを、螺旋流路の全域において混合させて他端開口部から導出させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
かかる流体混合器では、例えば、連続相としての第2流体を収容した容器内に配置し、分散相としての第1流体を混合器本体の一端開口部から他端開口部に向けて軸線流路を通して軸線方向に沿って流動させる(例えば、他端開口部側からポンプで引き入れる)。そうすることで、軸線流路内を減圧させることができて、第2流体を被覆体の被覆体導入孔から被覆体内に引き込みながら導入することができる。そして、被覆体内に導入された第2流体は、旋回流路を通して旋回されるとともに、混合器本体の本体導入孔から混合器本体内に引き込まれながら導入される。続いて、混合器本体の本体導入孔から混合器本体内に引き込まれながら導入された第2流体は、軸線流路を流動している第1流体の周囲にて螺旋流路を通して螺旋状に旋回流動されて、第1流体を螺旋流路の全域において剪断・分散する。その結果、第1流体と第2流体が均一に混和される。
【0016】
この際、第2流体は、旋回流路で予備的に軸線流路の軸線を中心に旋回され、続いて、螺旋流路を通して軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回流動される。つまり、軸線流路の外周側から軸線中心(同芯)に向けて漸次旋回半径を小さくしながら旋回される。そのため、旋回流動が軸線中心側で加速されて高速で第1流体に剪断作用し、第1流体を微細かつ均等に分散する。
また、流体混合器は、両端に開口部を有する筒状の混合器本体と、混合器本体の外周を一定の間隔を保持して被覆する被覆体とで構成することができるため、合成樹脂等により軽量で構造簡易かつ安価に製造することができる。
【0017】
請求項5記載の発明に係る流体混合器は、請求項4記載の発明に係る流体混合器であって、前記被覆体の周壁には、その長手方向に沿って伸延するスリット状の被覆体導入孔を形成したことを特徴とする。
【0018】
かかる流体混合器では、被覆体導入孔を被覆体の周壁にその長手方向に沿って伸延するスリット状に形成しているため、被覆体導入孔から導入された第2流体は被覆体の内周面に沿って流動されて堅実に旋回される。したがって、連続相としての第2流体が、外周における予備的な旋回流から内周における螺旋状の旋回流に変化して、高速の旋回流となって分散相としての第1流体に剪断・分散化作用する。その結果、第1流体がサブマイクロレベルで微細化かつ均一化される。
【0019】
請求項6記載の発明に係る流体混合方法は、吸引ポンプにより吸引されて軸線流路をその軸線方向に沿って流動する第1流体と、軸線流路の外周に設けた容器状の第2流体収容部に収容し、第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により前記第2流体収容部から混合器本体の周壁に形成したスリット状の本体導入孔を介して螺旋流路内に導入して螺旋状に旋回流動する第2流体とを、軸線流路の軸線を中心とする螺旋状に旋回させながら混合し、しかも、スリット状の本体導入孔は一定の鋭角をなして伸延し単一仮想螺旋に沿って伸延方向に多数間隔を開けて配設されていることを特徴とする。
【0020】
かかる流体混合方法は、吸引ポンプにより吸引されて軸線流路をその軸線方向に沿って流動する第1流体に対して、軸線流路の外周に設けた容器状の第2流体収容部に収容して、第1流体の流動による減圧効果から生じる吸引により第2流体収容部から混合器本体の周壁に形成したスリット状の本体導入孔を介して螺旋流路内に導入して螺旋状に旋回流動する第2流体を、軸線流路の軸線方向に流動させながら混和させることができる。この際、スリット状の本体導入孔は一定の鋭角をなして伸延し単一仮想螺旋に沿って伸延方向に多数間隔を開けて配設されているため、本体導入孔から導入された第2流体は混合器本体内で堅実に螺旋状に旋回される。その結果、分散相としての第1流体が微細化されるとともに、連続相としての第2流体に均一に分散される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は次のような効果を奏する。すなわち、本発明に係る流体混合器は、構造簡易で軽量・コンパクトかつ安価に製造することができる。そのため、必要な初期コストに対する効果は非常に大きい。そして、流体混合器の洗浄作業やメンテナンス作業を迅速かつ簡単に行うことができる。また、本発明に係る流体混合方法は、分散相としての第1流体を効率良く剪断・分散することができる。しかも、第1流体をマイクロレベルないしはサブマイクロレベルに微細化するとともに均一化することができる。そのため、短時間に大量の混合流体を安価に生成することができる。特に、本発明は、液相−液相の2相を高速で旋回混流させることによりマイクロエマルション(マイクロオーダーのエマルション)を生成することができるものであり、乳化速度を飛躍的に向上させることができるものである。したがって、エマルションの短時間・大量・安価生成に好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示す1は第1実施形態としての流体混合装置であり、かかる流体混合装置1は
図2に示す第1実施形態としての流体混合器10を具備している。また、
図3に示す1は第2実施形態としての流体混合装置であり、かかる流体混合装置1は
図4に示す第2実施形態としての流体混合器10を具備している。これら第1実施形態ないしは第2実施形態としての流体混合装置1は、
図1及び
図3に示すように、第1流体F1と第2流体F2を混合する装置である。本実施形態では、第1流体F1は分散相としての液体(例えば、油)として、また、第2流体F2は連続相としての液体(例えば、水)として説明する。
【0027】
[流体混合装置1の説明]
第1実施形態(第2実施形態)としての流体混合装置1は、
図1(
図3)に示すように、上面が開口した容器状の第2流体収容部2内に第2流体F2を収容し、第2流体F2中に第1実施形態(第2実施形態)としての流体混合器10を配置している。流体混合器10の一端側(基端側)には、第1連通路としての第1連通パイプ3を介して、第1流体F1を収容した第1流体収容部4を連通連結している。流体混合器10の他端側(先端側)には、第2連通路としての第2連通パイプ5を介して、吸引ポンプPの吸込口(図示せず)を連通連結している。吸引ポンプPの吐出口(図示せず)には、第3連通路としての第3連通パイプ6を介して、混合流体F3を収容する混合流体収容部7を連通連結している。
【0028】
このように構成して、吸引ポンプPを吸引作動させることで、第1流体収容部4内の第1流体F1を第1連通パイプ3を通して流体混合器10内に導入するとともに、吸引効果により減圧された流体混合器10内に第2流体収容部2内の第2流体F2を導入して、流体混合器10内で第1流体F1と第2流体F2を混合させて混合流体F3となすようにしている。そして、混合流体F3を第2連通パイプ5→吸引ポンプP→第3連通パイプ6を通して混合流体収容部7に収容するようにしている。また、混合流体F3は、混合流体収容部7から適宜回収することができる。
【0029】
[流体混合器10の説明]
第1実施形態としての流体混合器10は、
図1及び
図2に示すように、両端に開口部を有する円筒状の混合器本体11のみから構成している。また、第2実施形態としての流体混合器10は、
図3及び
図4に示すように、混合器本体11の外周を円筒状の被覆体30により一定の間隔を保持して被覆するとともに、同心円状(二重筒状)に配置して構成している。そして、第2実施形態としての流体混合器10は、被覆体30中に混合器本体11を抜き差し自在に挿入して、混合器本体11の基端部を被覆体30から突出させた状態となして構成している。ここで、流体混合器10は、合成樹脂等により薄肉軽量に形成して、構造簡易かつ安価に製造している。しかも、被覆体30から混合器本体11を抜き取ることで、簡単に分解して、それぞれ洗浄作業やメンテナンス作業をすることができる。
【0030】
第1実施形態としての流体混合器10は、
図1及び
図2に示すように、混合器本体11の基端部に、柔軟性素材により形成した第1連通パイプ3の先端部を着脱自在に外嵌して連通連結している。そして、混合器本体11の先端部外周面には、柔軟性素材により形成した第2連通パイプ5の基端部を着脱自在に外嵌して連通連結している。
【0031】
第2実施形態としての流体混合器10は、
図3及び
図4に示すように、混合器本体11の基端部に、柔軟性素材により形成した第1連通パイプ3の先端部を着脱自在に外嵌して連通連結している。そして、混合器本体11の先端部外周面に、弾性ゴム素材にて円筒状に形成したスペーサ20を外嵌し、スペーサ20の外周面と被覆体30の先端部内周面との間に、第2連通パイプ5の基端部を着脱自在に嵌入して連通連結している。
【0032】
このように構成した第1・第2実施形態の流体混合器10は、第1・第2連通パイプ3,5から簡単に着脱可能として、流体混合器10の洗浄作業やメンテナンス作業が楽に行えるようにしている。
【0033】
(混合器本体11の説明)
混合器本体11は、
図8〜
図11に示すように、一端開口部12から他端開口部13に向かって漸次拡径させて漏斗状に形成した基端側筒状部16と、基端側筒状部16の終端から他端開口部13まで略同径に形成した円筒状の先端側筒状部17と先端筒状部18とから直状に形成している。L1は混合器本体11の長手幅、L2は基端側筒状部16の長手幅である。θ1は基端側筒状部16の周面傾斜角度である。D1は一端開口部12の内径、D2は他端開口部13の内径、D3は先端側筒状部17の内径である。
【0034】
先端側筒状部17の周壁は、軸線方向に軸線方向幅L3〜L7の間隔で五等分割し、各軸線方向幅L3〜L7内には、その長手方向との間に一定の鋭角θ2(例えば、20°〜30°の範囲)をなして伸延するスリット状の本体導入孔15を形成している(本実施形態では5個)。そして、各本体導入孔15は、先端側筒状部17の周壁に描いた単一仮想螺旋Sに沿わせて配置するとともに、単一仮想螺旋Sの伸延方向に一定の間隔を開けて配置している。単一仮想螺旋Sは、
図9に示すように、先端側筒状部17を展開させた状態では仮想直線を描いており、この仮想直線上に一定の間隔を開けてスリット状の内側導入孔15を形成している。そして、円筒状に屈曲させて形成した本来の先端側筒状部17において、この仮想直線が単一仮想螺旋Sを描いている。L8は先端筒状部18の軸線方向幅である。
【0035】
各本体導入孔15は、単一仮想螺旋S上において、先端側筒状部17の周壁の一部を切欠するとともに、他端開口部13側の一端を円周方向に切欠した一側端縁部17aを内方へ屈曲させることで、一端開口部12側から他端開口部13側に向かって漸次拡径状に開口させて形成している。W1は本体導入孔15の最大開口幅である。
【0036】
一側端縁部17aは、外方(先端側筒状部17の半径方向)へ凸状に屈曲する外表面が本体導入孔15から導入される第2流体F2の導入案内面として機能する一方、内表面が旋回流動される第2流体F2の旋回案内面として機能する。したがって、単一仮想螺旋Sに沿わせて配置された各本体導入孔15を形成する一側端縁部17aが、第2流体F2を堅実に螺旋状に旋回案内する。
【0037】
混合器本体11内には、
図2に示すように、一端開口部12から導入した第1流体F1を軸線方向に流動させて他端開口部13から導出する直状の軸線流路14を形成している。また、混合器本体11の先端側筒状部17の周縁部には螺旋流路19を形成しており、螺旋流路19では本体導入孔15から導入された第2流体F2が先端側筒状部17の内周面に沿って軸線流路14の軸線を中心として軸線流路14の外周を螺旋状に旋回されながら流動されるようにしている。そして、螺旋流路19を流動する第2流体F2が、軸線流路14を流動する第1流体F1に剪断・分散作用して混和し、混和した後に他端開口部13から混合流体F3として導出されるようにしている。
【0038】
(被覆体30の説明)
被覆体30は、
図6,
図7,
図12及び
図13に示すように、一端開口部31から他端開口部32に向かって漸次拡径させて漏斗状に形成した被覆基端筒状部33と、被覆基端筒状部33の終端から他端開口部32に向かって略同径にて伸延する円筒状の被覆本体34と、被覆本体34の終端から他端開口部32まで伸延する円筒状の被覆先端筒状部35とから直状に形成している。一端開口部31の内周縁部には、混合器本体11の基端側筒状部16の外周面中途部が当接するようにしている。L9は被覆体30の長手幅、L10は被覆基端筒状部33の軸線幅、L11は被覆本体34の長手幅、L12は被覆先端筒状部35の軸線幅である。D4は一端開口部31の内径、D5は他端開口部32の内径である。θ3は被覆基端筒状部33の周面傾斜角度であり、周面傾斜角度θ3>周面傾斜角度θ1となしている。
【0039】
被覆本体34の周壁には、全幅にたって長手方向に沿って直状に伸延するスリット状の被覆体導入孔36を複数(本実施形態では2個)形成している。2個一対の被覆体導入孔36は、被覆体30の軸線を中心とする点対称の位置に配置している。各被覆体導入孔36は、被覆本体34の長手幅L11にわたって周壁を軸線方向に直状に切欠するとともに、両端を円周方向に切欠した一側端縁部34aを内方へ屈曲させることで、一端開口部12から他端開口部13に向かって略同一幅に開口させて形成している。
【0040】
一側端縁部34aは、外方(被覆本体34の半径方向)へ凸状に屈曲する外表面が外側導入孔36から導入される第2流体F2の導入案内面として機能する一方、内表面が旋回流動される第2流体F2の旋回案内面として機能する。したがって、点対称の位置に配置された一対の被覆体導入孔36を形成する一側端縁部34aが、第2流体F2を堅実に旋回案内する。
【0041】
被覆本体34の内周面と混合器本体11の先端側筒状部17の外周面との間には、
図5に示すように一定の間隔W3が保持された円筒状の旋回流路37を形成して、この旋回流路37内で第2流体F2が旋回流動されるようにしている。ここで、旋回流路37の幅となる一定の間隔W3は、混合器本体11の内径以下でその内径の半分以上、好ましくは、その内径と略同径となすことができる。そして、旋回流路37では、被覆体導入孔36から導入された第2流体F2が被覆本体34の内周面に沿って軸線流路14の軸線を中心に旋回されながら流動するとともに、混合器本体11の内側導入孔15から混合器本体11内に導入されるようにしている。W2は被覆体導入孔36の最大開口幅である。
【0042】
被覆本体34の周壁に形成した被覆体導入孔36の長手幅L11内には、混合器本体11の先端側筒状部17の周壁に形成した5個の本体導入孔15を配置して、被覆体導入孔36を通して被覆本体34内に導入された第2流体F2が旋回流路37内で旋回されながら5個の本体導入孔15を通して混合器本体11内に導入されるようにしている。
【0043】
このように構成することによって、
図4及び
図5に示すように、混合器本体11内の軸線流路14を第1流体F1が軸線方向に沿って流動されると、混合器本体11内の軸線流路14が減圧される。そして、その減圧効果により第2流体収容部2内に収容した第2流体F2は、被覆体導入孔36を通して被覆本体34内に旋回されながら導入されて、被覆本体34内の旋回流路37で旋回流動される。さらに、旋回流路37で旋回流動されている第2流体F2は、本体導入孔15を通して混合器本体11内に導入されるとともに、軸線流路14を軸線流動されている第1流体F1の周囲にて螺旋状に旋回流動されて、螺旋流路19の全域において、第1流体F1と旋回混流される。また、このようにして、第1流体F1と第2流体F2とが旋回混流されて混合された混合流体F3を生成し、混合流体F3は他端開口部13から導出される。
【0044】
この際、連続相としての第2流体F2は、旋回流路37で予備的に軸線流路14の軸線を中心に旋回され、続いて、螺旋流路19を通して軸線流路14の軸線を中心とする螺旋状に旋回流動される。つまり、軸線流路14の外周側から軸線中心(同芯)に向けて漸次旋回半径を小さくしながら旋回される。そのため、旋回流動されている第2流体F2が、軸線中心側で加速されて高速で分散相としての第1流体F1に剪断作用する。その結果、第1流体F1は微細かつ均等に分散される。したがって、第1流体F1に第2流体F2を高速で旋回混流させることができて、第1流体F1と第2流体F2を均一に混和させることができる。
【0045】
また、混合器本体11の基端側筒状部16を漸次拡径させて形成しているため、基端側筒状部16内を流動される第1流体F1の分散性を漸次高めることができる。先端側筒状部17を基端側筒状部16の終端から先端筒状部18まで略同径に形成して、先端側筒状部17内において第2流体F2が螺旋状に旋回流動されるようにしているため、基端側筒状部16から先端側筒状部17に流動される第1流体F1と、先端側筒状部17において螺旋状に旋回流動される第2流体F2との混和性と旋回性を促進させることができる。
【0046】
本体導入孔15は、先端側筒状部17の周壁には、その長手方向との間に一定の鋭角θ2をなして伸延するスリット状に5個形成するとともに、5個の本体導入孔15は単一仮想螺旋S上に配置しているため、本体導入孔15から導入された第2流体F2は混合器本体11内で堅実に螺旋状に旋回される。また、被覆体導入孔36は、被覆本体34の周壁にその長手方向に沿って伸延するスリット状に形成しているため、被覆体導入孔36から導入された第2流体F2は被覆本体34の内周面に沿って流動されて堅実に旋回される。したがって、連続相としての第2流体F2が、外周における予備的な旋回流から内周における螺旋状の旋回流に変化して、高速の旋回流となって分散相としての第1流体F1に堅実に剪断・分散化作用する。その結果、第1流体F1がサブマイクロレベルで微細化かつ均一化される。このように、第1実施形態としての流体混合器10は、少なくとも軸線流路14と螺旋流路19を具備する構成とし、第2実施形態としての流体混合器10は、これらの流路14,19に加えて旋回流路37を具備する構成としていることに特徴を有する。
【0047】
なお、本実施形態では、第1実施形態ないしは第2実施形態としての流体混合器10を備えた流体混合装置1により、第1流体F1と第2流体F2をそれぞれ液体として、液体と液体を混合させる形態について説明してきたが、流体混合器10を備えた流体混合装置1は、液体と気体、又は、気体と気体を混合させる形態とすることもできる。また、流体混合器10を形成する各部の大きさ等は、第1・第2流体F1,F2の粘度等に適応させて設定することができる。
【0048】
次に、流体混合装置1と第2流体収容部2と流体混合器10の変形例について説明する。なお、前記した構成と共通する箇所には同一符号を付して説明する。
【0049】
[流体混合装置1の第1変形例の説明]
流体混合装置1の第1変形例について説明する。すなわち、
図14は第1実施形態としての流体混合装置1の第1変形例の断面正面説明図である。かかる第1変形例としての流体混合装置1は、
図14に示すように、第1実施形態としての流体混合器10を第1変形例である閉塞ケース状に形成した第2流体収容部2により囲繞して構成している。すなわち、基端側筒状部16の中途部外周面と第2連通パイプ5の基端部外周面との間に位置する混合器本体11の部分を、第1変形例である第2流体収容部2により囲繞して構成している。第1変形例である第2流体収容部2は、円筒状の周壁形成体40と、周壁形成体40の一側端部に連設した一側端壁形成体41と、周壁形成体40の他側端部に連設した他側端壁形成体42とから形成して、内部に第2流体F2を収容可能としている。43は基端側筒状部16の中途部周面に取り付ける基端側取付部、44は第2連通パイプ5の基端部外周面に取り付ける先端側取付部である。
【0050】
周壁形成体40の基端側には、第2流体供給パイプ45の先端部を連通連結している。そして、第2流体供給パイプ45の先端開口部46は周壁形成体40の内周面でかつ下流側に指向させて、先端開口部46から吸引・流入される第2流体F2が混合器本体11の軸線廻りに螺旋状の旋回流となされるようにしている。第2流体供給パイプ45の基端部は第2流体貯留源(図示せず)に連通連結している。
【0051】
このように構成することによって、第1流体F1が混合器本体11内を吸引・流動されると、混合器本体11内が減圧されて、第2流体貯留源の第2流体F2が第2流体供給パイプ45を通して先端開口部46から第2流体収容部2内に吸引・流入され、吸引・流入された第2流体F2が混合器本体11の軸線廻りに螺旋状の旋回流となされる。その結果、第1変形例である第2流体収容部2内には予備な旋回流路37が形成されて、第2流体F2が旋回されながら本体導入孔15を通して混合器本体11内に吸入される。
【0052】
[流体混合装置1の第2変形例の説明]
流体混合装置1の第2変形例について説明する。すなわち、
図15は第1実施形態としての流体混合装置1の第2変形例の断面正面説明図である。かかる第2変形例としての流体混合装置1は、
図15に示すように、前記した第1変形例としての流体混合装置1と基本的構造を同じくしているが、第2流体収容部2を周壁形成体40の内周面に螺旋状の旋回手段50を配設して構成した第2変形例の第2流体収容部2となして、第2変形例の第2流体収容部2内に吸引・流入された第2流体F2が混合器本体11の軸線廻りに堅実な螺旋状の旋回流となされるようにして、第2変形例の第2流体収容部2内に予備な旋回流路37が形成されるようにしている点で異なる。
【0053】
すなわち、第2変形例の第2流体収容部2は、旋回手段50として、円筒状の周壁形成体40の内周面に沿わせて、帯状の旋回案内片51を周壁形成体40の軸線廻りに螺旋状かつ周壁形成体40の内方に凸条に取り付けて構成している。そして、第2変形例の第2流体収容部2内に吸引・流入された第2流体F2が旋回案内片51の側壁に沿って流動されて、周壁形成体40の軸線廻りに螺旋状かつ周壁形成体40の内方に凸条に混合器本体11の外周で形成されて、堅実に旋回されながら本体導入孔15を通して混合器本体11内に吸入されるようにしている。なお、第2変形例の第2流体収容部2は、円筒状の周壁形成体40の内周面に凹条溝を周壁形成体40の軸線廻りに螺旋状に形成して構成し、第2流体F2が凹条溝に沿って螺旋状の旋回流となされて、旋回されながら本体導入孔15を通して混合器本体11内に吸入されるようにすることもできる。
【0054】
このように、流体混合装置1の第2変形例では、第1変形例である第2流体収容部2に旋回手段50を配設して第2変形例としての第2流体収容部2を具備する構成とすることで、第2変形例である第2流体収容部2に予備な旋回流路37を堅実に形成する旋回流路形成機能を保持させている。つまり、第2変形例である第2流体収容部2は旋回流路形成機能を保持する被覆体30としても機能するようにしている。
【0055】
[流体混合装置1の第3変形例の説明]
流体混合装置1の第3変形例について説明する。すなわち、
図16は第1実施形態としての流体混合装置1の第3変形例の断面正面説明図である。かかる第3変形例としての流体混合装置1は、
図16に示すように、第2実施形態としての流体混合器10を第3変形例である閉塞ケース状に形成した第2流体収容部2により囲繞して構成している。すなわち、第3変形例としての第2流体収容部2は、被覆基端筒状部33の基端部外周面と第2連通パイプ5の基端部外周面との間に位置する被覆体30の部分を囲繞して構成している。第3変形例としての第2流体収容部2は、円筒状の周壁形成体60と、周壁形成体60の一側端部に連設した一側端壁形成体61と、周壁形成体60の他側端部に連設した他側端壁形成体62とから形成して、内部に第2流体F2を収容可能としている。63は被覆基端筒状部33の中途部周面に取り付ける基端側取付部、64は被覆先端筒状部35の基端部外周面に取り付ける先端側取付部である。
【0056】
周壁形成体60の基端側には、第2流体供給パイプ65の先端部を連通連結している。そして、第2流体供給パイプ65の先端開口部66は周壁形成体60の内周面でかつ下流側に指向させて、先端開口部66から吸引・流入される第2流体F2が被覆体30の軸線廻りに螺旋状の旋回流となされるようにしている。第2流体供給パイプ65の基端部は第2流体貯留源(図示せず)に連通連結している。
【0057】
このように構成することによって、第1流体F1が混合器本体11内を吸引・流動されると、混合器本体11内が減圧されて、第2流体貯留源の第2流体F2が第2流体供給パイプ65を通して先端開口部66から第2流体収容部2内に吸引・流入され、吸引・流入された第2流体F2が被覆体30の軸線廻りに螺旋状の旋回流となされる。その結果、第1変形例である第2流体収容部2内には予備な旋回流路37が形成されて、第2流体F2が旋回されながら被覆体導入孔36を通して被覆体30内に吸入される。
【0058】
[第2実施形態としての流体混合器10の変形例の説明]
第2実施形態としての流体混合器10の変形例について説明する。すなわち、
図17は第2実施形態としての流体混合器10の変形例の断面正面説明図、
図18は
図17のIII-III線断面図である。かかる第2実施形態としての流体混合器10の変形例は、
図17及び
図18に示すように、被覆本体34には、その内周面の接線方向に直状に伸延して被覆本体34を貫通する被覆体導入孔70を多数個整列させて形成している。すなわち、被覆体導入孔70は、被覆本体34の軸線方向に一定の間隔をあけて形成するとともに、円周方向に一定の間隔(本実施形態では円周廻りに60°の間隔をあけて6個形成している)をあけて形成している。そして、円周方向に隣接する被覆体導入孔70は、被覆本体34の外周面においてその軸線方向に伸延する略仮想螺旋上に配置している。
【0059】
このように構成して、
図18に示すように、被覆本体34内には多数個の被覆体導入孔70をそれぞれ通して第2流体F2が反時計廻りに吸入されるようにしている。そして、被覆本体34内の旋回流路37では第2流体F2が混合器本体11の内周面に沿って、その軸線廻りに螺旋状の旋回流となされるようにしている。旋回流となされた第2流体F2は反時計廻りに旋回されながら本体導入孔15を通して混合器本体11内に吸入されるようにしている。
【0060】
近年、マイクロエマルション生成の手法は、半導体分野で用いられるフォトレジストを用いて基盤上に微細な溝を形成し、油(あるいは水)を押し出すことによって生成する手法に移りつつある。この手法は均一な粒子径を生成できる利点がある反面、微細加工等の単価が高いことや生成されるエマルション数の時間効率が悪いなどの欠点が挙げられる。一方、本実施形態に係る流体混合装置1は、低コストでマイクロエマルションを生成可能なことや、マイクロエマルションを生成する時間効率が高い等の効果を奏する。つまり、水-油を引き入れるポンプ出力の可変制御のみで多量から少量までの均一なマイクロエマルションの生成が可能であり、スケールアップが容易である。さらには、界面活性剤等の乳化剤を含まないマイクロエマルションの生成、つまり、安定性のあるマイクロエマルションの生成が可能である。
【実施例】
【0061】
[実施例1]
実施例1では、
図1に示す第1実施形態の流体混合装置1によりエマルションの生成実験を行った。すなわち、第1実施形態に係る流体混合器10を使用してエマルションの生成実験を行った。
【0062】
D2=12mm、内径D3=11mm、各軸線方向幅L3〜L7=15mm、周面傾斜角度θ1=7.5°、鋭角θ2=24°、最大開口幅W1=1mmである。
【0063】
また、第1流体F1(分散相)として(食用)油を使用し、第2流体F2(連続相)として水道水を使用した。そして、吸引ポンプPの排水量を23リットル/分に設定して、油の導入量が100ミリリットル/分となる条件下で、1分当たり100ミリリットルのエマルションを生成した。
【0064】
この実験で生成したエマルションに含有されている油滴の大きさ(粒子径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。その測定結果を
図19に示す。
【0065】
図19のグラフに示すように、実施例1ではエマルションに含まれる油滴の殆どは、その粒子径が10μm〜100μmの範囲に微細化されていた。
【0066】
この測定結果より、本実施形態の混合器本体11は、マイクロレベルの微粒の油滴を生成することができるという優れた性能を有していることが分かった。
【0067】
[実施例2]
実施例2では、
図3に示す第2実施形態の流体混合装置1によりエマルションの生成実験を行った。すなわち、実施例1の実験で使用した混合器本体11に被覆体30を装着することで、第2実施形態の流体混合器10を組み立てて、この流体混合器10を使用してエマルションの生成実験を行った。
【0068】
ここで、使用した被覆体30の長手幅L9=113mm、軸線幅L10=14mm、長手幅L11=83mm、軸線幅L12=16mm、内径D4=7mm、内径D5=28mm、周面傾斜角度θ3=34°最大開口幅W2=1mm、一定の間隔W3=8mmである。
【0069】
実施例1と同様に、第1流体F1(分散相)として(食用)油を使用し、第2流体F2(連続相)として水道水を使用した。そして、吸引ポンプPの排水量を23リットル/分に設定して、油の導入量が100ミリリットル/分となる条件下で、1分当たり100ミリリットルのエマルションを生成した。
【0070】
この実験で生成したエマルションに含有されている油滴の大きさ(粒子径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。その測定結果を
図20に示す。
【0071】
図20のグラフに示すように、実施例2ではエマルションに含まれる油滴の殆どは、その粒子径が約1μmを中心に均一に構成されていることを確認した。
【0072】
この測定結果より、第2実施形態の流体混合器10は、サブマイクロレベルの極めて微粒の油滴を生成することができるという優れた性能を有しており、しかも、粒子径が均一な油滴を生成できるという優れた性能を有していることが分かった。また、これにより、第2実施形態の流体混合器10は極めて優れたエマルション生成能力(流体混合能力)を備えていることが分かった。
【0073】
[実施例3]
次に、エマルション化する対象として、食用油の主要成分であるオレイン酸を用いて実施例2と同様の実験を行った。かかる実験では鋭角θ2を15°、30°に変更した実験も行った。更に、物理化学的要素としてエマルション化する油の粘度に着目し、粘度の異なる大豆油、菜種油、コーン油、オリーブ油、及び椿油を用いて調査した。なお、分散溶媒としては水(水道水)を用いた。
【0074】
また、生成されたエマルションの評価として、粒子観察をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製)、粒子径を粒度分布装置(株式会社島津製作所製)、粒子数をパーティクルカウンター(ベックマン・コールター株式会社製)によってそれぞれ観測した。
【0075】
(結果と考察)
・オレイン酸
1)鋭角θ2を24°に形成した流体混合器10を使用して、50ミリリットル/分でオレイン酸を導入させた場合のマイクロエマルション(生成される量:16リットル/分)について、マイクロスコープ画像を
図21、粒度分布図を
図22にそれぞれ示す。
図21によって、生成されたエマルションが球状を形成していることが確認でき(比較的大きな粒子径で約2μm)、
図22により約0.7μm(モード径)にピークを持つ比較的均一性の取れたエマルションが生成されていることを確認した。また、パーティクルカウンターによって、生成されたエマルション数は約33×10
6個/mL(3μm以下の総量)であった。
2)鋭角θ2を15°に形成した流体混合器10を使用して、同様にマイクロエマルションを生成した。その粒度分布図を
図23に示す。
図23により約0.178μm(モード径)にピークを持つ比較的均一性の取れたエマルションが生成されていることを確認した。
3)鋭角θ2を30°に形成した流体混合器10を使用して、同様にマイクロエマルションを生成した。その粒度分布図を
図24に示す。
図24により約0.708μm(モード径)にピークを持つ比較的均一性の取れたエマルションが生成されていることを確認した。
以上の結果から、本実施形態に係る流体混合器10が油のマイクロエマルション化技術に好適であることを確認した。そして、鋭角θ2は30°、24°、15°の順でモード径が小さくかつ均一化されていることを確認した。その結果、鋭角θ2を変えることにより、分散相としての第1流体F1のモード径に影響を与えることができることが分かった。つまり、第1流体F1の粒子径をある程度制御できることが分かった。
【0076】
次いで、実産業への展開を検討した場合、生成されるマイクロエマルションの時間効率が重要となる。そこに大きな要素として加わるものが、導入する(エマルション化される)油量とポンプ圧である。以下、それぞれについて検討した。
【0077】
・導入する油(オレイン酸)量
導入する油(オレイン酸)量を前述の50ミリリットル/分から100ミリリットル/分に上げ、粒度分布測定をした結果を
図25に示す。
図22とほぼ同様の粒子径を確認した。更に、オレイン酸の導入量を130ミリリットル/分まで上げたが、大きな変動は確認されなかった。
一方,粒子数は導入量に依存して増加することが確認された(
図27参照)。
【0078】
・ポンプ圧
ポンプ圧は流量に依存することから、流体混合器10、及び配管(第1連通パイプ3と第2連通パイプ5)の径や長さなどの吸引ポンプP以外を同一条件にした環境下で、2種類の吸引ポンプPを用いて全体の流量から評価した(流量:16リットル/分、及び、23リットル/分)。
【0079】
図26にオレイン酸導入量が50ミリリットル/分、生成されるマイクロエマルションの流量が23リットル/分の際の粒度分布図を示す。
図22に比べピークが約0.5μmとより小さい位置になった。これは、全体の流量が上がったものの、導入されるオレイン酸量が固定されているため、同時に導入される水(分散溶媒)のみが増加、つまり、エマルション化されるオレイン酸に対して分散溶媒の水の比率が上がった結果、オレイン酸の旋回分散力が向上したためと考えられる。
一方、どちらのポンプ(全体流量)においても、粒子数はオレイン酸の導入量のみに支配されることが確認された(
図27参照)。
【0080】
・導入する油の粘性の影響
液相−液相の旋回混流によってマイクロエマルション化させる場合、その粒子径等は、それら溶液の組成よりも物理化学的な要素による影響が大きい。本実施例3における実験では特に、導入する油の粘性について評価した。本実験で用いた種々の油の粘度、粒度分布測定において確認された平均粒子径、及び粒子数をそれぞれ
図28に示す。また、粒度分布測定の例として、
図29に大豆油、
図30に菜種油、
図31にコーン油、
図32にオリーブ油、
図33に椿油での測定結果をそれぞれ示す。
平均粒子径及び粒子数等に油の粘度の影響は殆ど無く、上述の項目オレイン酸及び導入する油(オレイン酸)の結果を含め、粒子径はポンプ圧、粒子数は導入量によって支配されることを確認した。
【0081】
・安定性
図34はマイクロエマルション化した椿油(処理直後)、
図35はマイクロエマルション化した椿油の3ヶ月後(処理後3ヶ月放置)である。界面活性剤等の乳化剤なしで、安定なマイクロエマルションを生成することができたことを確認した。
【0082】
・まとめ
流体混合装置1を利用したマイクロエマルション化技術について検討した。その結果、生成されるエマルションの平均粒子径及び粒子数等にその粘性の影響は殆ど無く、粒子径はポンプ圧、粒子数は導入量によって支配されることを確認した。