【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成21年5月1日 社団法人 日本栄養・食糧学会発行の「第63回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集」に発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態にかかる実験時に使用した飼料(対照食)の実験食飼料組成を示した表である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる骨強度低下抑制剤を構成するDASの化学構造を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの週齢とその時期のトレッドミル走行運動の速度・時間とを示した表である。
【
図4】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットのグループ分けを示した表である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの成長曲線グラフを示したものであって、このグラフは、DAS添加食と持久的運動負荷が成長に及ぼす影響を示している。
【
図6】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの各群の初体重、終体重と1日あたり平均摂食量を示した表である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる実験時における運動群(CD群・DE群)の総走行距離を示した表である。
【
図8】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの心臓重量のグラフを示したものである。
【
図9】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの肝臓重量のグラフを示したものである。
【
図10】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの脾臓重量のグラフを示したものである。
【
図11】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの腎臓重量を示したものであって、上図は左腎臓重量、下図は右腎臓重量のグラフを示したものである。
【
図12】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの腎臓重量のグラフを示したものである。
【
図13】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの副腎重量のグラフを示したものである。
【
図14】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの胸腺重量のグラフを示したものである。
【
図15】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットのひらめ筋重量を示したものであって、上図は左ひらめ筋重量、下図は右ひらめ筋重量のグラフを示したものである。
【
図16】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの腓腹筋重量を示したものであって、上図は左腓腹筋重量、下図は右腓腹筋重量のグラフを示したものである。
【
図17】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの24時間尿量のグラフを示したものである。
【
図18】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの尿中カルシウム排泄量のグラフを示したものである。
【
図19】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの尿中クレアチニン排泄量のグラフを示したものである。
【
図20】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの尿素窒素排泄量のグラフを示したものである。
【
図21】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの糞中カルシウム排泄量のグラフを示したものである。
【
図22】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの左大腿骨湿重量のグラフを示したものである。
【
図23】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの右大腿骨湿重量のグラフを示したものである。
【
図24】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの左大腿骨ENERGYのグラフを示したものである。
【
図25】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの右大腿骨ENERGYのグラフを示したものである。
【
図26】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの左大腿骨STIFFNESSのグラフを示したものである。
【
図27】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの右大腿骨STIFFNESSのグラフを示したものである。
【
図28】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの骨中リンのグラフを示したものである。
【
図29】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの骨中カルシウムのグラフを示したものである。
【
図30】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットのカルシウム吸収率のグラフを示したものである。
【
図31】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットのカルシウム保持率のグラフを示したものである。
【
図32】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの血漿総たんぱく質のグラフを示したものである。
【
図33】本発明の実施形態にかかる実験時におけるラットの血漿アルブミンのグラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
ニンニクには、0.2%〜0.5%揮発油が含まれており、ニンニクの薬効成分の大半は、この揮発油中の有機硫黄化合物に起因するといわれている。この有機硫黄化合物の一つで、ニンニクの主な香気成分であるAllyl sulfide類の一つに、ジアリルスルフィド(DAS:Diallyl sulfide)がある。
【0014】
本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤は、このジアリルスルフィド(DAS)(以下、単に「DAS」ともいう。)と植物油とを混合させたDAS含有植物油溶液を有効成分として構成されることを特徴としている。
【0015】
本実施形態にかかるDAS含有植物油溶液を構成する植物油としては、コーン胚芽油、椿油、オリーブオイル、種々の食用植物油の使用が可能である。ただし、本実施形態にて用いられる植物油は、水蒸気処理や圧搾などの抽出による過度の加熱処理を行わない精度の高いものを使用することが好ましい。これは、熱や不純物によるDASの分解を防ぐためである。つまり、本実施形態においては、DASと、精度の高い植物油(本実施形態においてはコーン胚芽油)とを混合させたDAS含有植物油溶液を有効成分として、骨強度低下抑制剤が構成されている。
【0016】
また、DASおよび植物油は、いずれも遮光のために容器にて密閉し、低温下(冷蔵庫)にて保存することが好ましい。さらに、本実施形態にかかるDAS含有植物油溶液を調製する際には、例えば、ガラス容器内に植物油を入れ、その中にDASを滴下し、迅速に攪拌する。このようにして調製されたDAS含有植物油溶液は、揮発性を有するため、調整後は速やかに使用することが好ましいが、必要に応じて、カプセル等に封入した状態で使用してもよい。
【0017】
上述したようにして構成されたDAS含有植物油溶液を有効成分とする本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤は、継続した摂取(例えば、毎日一定時間に摂取)することによって、効果的な骨強度低下抑制が期待できる。また、本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤の使用と、低強度の持久的運動負荷とを行うことによって、より効果的な骨強度低下抑制が期待できる。
【0018】
以下、本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤の効果を確認するための実験等について、具体的に説明する。
【0020】
本実施形態においては、実験動物として、5週齢の体重140g〜160gのJcl:SD(SD)系雄ラット(日本クレア株式会社)を21匹用意した。ラットには、1〜21まで無作為に番号を付し、ステンレスケージで一匹ずつ飼育した。14日間の予備飼育中は、固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社:MF)を自由摂食で与え、水分は蒸留水を自由に与えた。その後、本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤の効果を確認するための実験飼料を与えて、本実験を行った。
【0021】
飼育は、室温約22±1℃、相対湿度約55±3%、明暗サイクルが12時間ずつになるように照明時間午前8時〜午後8時、消灯時間午後8時〜午前8時の人口灯の環境下で行った。床替えは、毎日行った。
【0022】
体重および食餌摂取量は、毎日午後のほぼ一定した時刻に電子天秤を用いて測定した。餌は、毎日新しいものを使用した。
【0024】
飼育期間中の対照食の実験食飼料組成を
図1の表に示す。本実験では、餌は自由摂食、水は蒸留水を自由摂水とした。飼料は、AIN−93Gの純化食を使用した。また、使用する飼料は、給餌のとき以外は、4℃の冷蔵庫で保管した。
【0025】
DASとは、チオスルフィネート類の分解によって生じる硫黄化合物で、ニンニクの主な香気成分であるDiallyl sulfideである。本実施形態においては、上述した対照食にDASを添加したものをDAS添加食とした。飼料への添加量は、200ppmとした。DASは、揮発を防止するために、コーン油(本発明の「植物油」に相当)と混合した後(つまり、本実施形態にかかるDAS含有植物油溶液を有効成分とする骨強度低下抑制剤を構成した後)、他の飼料成分と混ぜ合わせた(骨強度低下抑制剤と他の飼料成分とを混ぜ合わせた)。DASの化学構造を、
図2に示す。
【0027】
予備実験の段階では、すべてのラットに対して、はじめはベルトを動かさずトレッドミル(株式会社夏目製作所製:KN73、R5型トレッドミル)の空間に慣れさせることから始め、徐々に速度3.0m/min〜5.0m/min、5分間の歩行から段階的に時間と速度を上げてトレッドミル走行訓練を行えるようにした。この装置は、ベルトコンベア式のもので無段変速器が装着され、可変電圧器を操作することによって、水平位ベルトの走行速度の調節が可能になっている。また、このトレッドミルは、ベルト上にラットを載せると、ラットが前進しなければ後方に送られ、ラットが後端の電極に触れると、電流刺激されるような構成となっている。
【0028】
本実験においては、運動群のラットのみ毎日一回ほぼ一定の時間、低強度のトレッドミル運動を行わせた。このトレッドミル運動に関する週齢数とその時の速度を
図3に示す。
【0030】
本実験に入る前に、平均体重がほぼ等しくなること、走行が可能なもの、不可能なものを考慮して、対照食群、DAS添加食群(本発明にかかる「骨強度低下抑制剤」を添加した群)ともそれぞれ非運動群と運動群とに分け、具体的には、
図4の表に示すように4群に分けた。この
図4の表に示すように、本実験においては、それぞれを、対照食・非運動群を「C」(個体数n=5)、対照食・運動群を「CE」(個体数n=5)、DAS添加食・非運動群を「D」(個体数n=5)、DAS添加食・運動群を「DE」(個体数n=5)とした。
【0032】
ラットの屠殺前日は、屠殺15時間前より絶食させた。屠殺は、ジエチルエーテル麻酔下で、腹部大動脈より採血屠殺した。採血に使用した注射器中には、抗血液凝固剤としてヘパリンを使用した。
採血後、臓器(心臓・肺・肝臓・腎臓・脾臓・副腎・精巣・精巣上体・胸腺・褐色脂肪細胞・後腹壁脂肪・副腎周囲脂肪・精巣周囲脂肪)、骨(大腿骨・脛骨・腓骨)、筋肉(ひらめ筋・腓腹筋)を摘出した。
臓器・筋肉は、重量測定後、10%ホルマリン緩衝液に浸漬し、固定した。血液は、遠心分離(3000rpm、15分間、4℃)にて血漿を分離した。骨は、生理食塩水中で保存した。
【0033】
尿の採取については、屠殺2日前にラットを代謝ケージに移し、尿採取1日目に12:30〜翌12:30までの24時間尿を採取した。採取した尿は、15mlのプラスチックチューブに移し、尿量を計り記録した。
【0034】
糞の採取については、屠殺2日前に代謝ケージに移し、糞を採取した。経過後、1日そのまま放置し、その後の処理をしやすくするため自然乾燥させた。その後、糞を15mlのプラスチックチューブに移し変え、重量を測定して記録した。
【0035】
カルシウム・リンを測定する試料として、大腿骨を灰化した。るつぼの恒量手順は、まず、るつぼを電気マッフル炉(ADVANTEC:KL−420)にて550℃で2時間加熱した。そして、マッフル炉中で2時間放冷した後、デシケーター内で10分間放冷し、電子天秤で秤量した。このとき、前回との重量差が0.3mg以内となったものを恒量と見なし試料の灰化時に使用した。
【0036】
試料調整のための骨の灰化の手順は、まず、大腿骨骨幹部を生理食塩水中でパスツールピペットを用いて骨髄を吸引除去した。そして、骨切りはさみで細かく切断し、105℃の乾燥機で16時間乾燥後、デシケーター内で2時間放冷し、乾燥重量を測定した。その後、濃硝酸(有害金属測定用)1mlを加え、るつぼ内で混和し、50℃で10分間、100℃で2時間、600℃で16時間の順に温度を上昇させ加熱した。加熱後、マッフル炉内で2時間放冷、デシケーター内で10分間放冷し、電子天秤で計測した。その後は、550℃で2時間加熱、マッフル炉内で2時間放冷、デシケーター内で10分間放冷後に秤量というサイクルで、るつぼの時と同じく、前回との重量差が0.3mg以下になるまで秤量を続けた。恒量に達した骨試料の入ったるつぼに、4mlの濃硝酸を加えて溶解し、100mlのメスフラスコ中で、蒸留水を用いてメスアップした。
【0037】
カルシウムを測定する試料として、糞を灰化した。るつぼの恒量手順は骨のときと同様に行った。
【0038】
糞の試料調整の手順は、糞を乳鉢・乳棒を用いてすりつぶして均質化し、それから糞を0.5g量りとり、濃硝酸(有害金属測定用)1mlを加え、るつぼ内で混和した。その後、50℃10分間、100℃2時間、600℃16時間の順に温度を上昇させ加熱し、マッフル炉中で2時間放冷、デシケーター内で10分間放冷し、電子天秤で計測した。その後、550℃で2時間加熱、マッフル炉中で2時間放冷、デシケーター内で10分間放冷後に秤量というサイクルで、るつぼの時と同じく、前回との重量差が0.3mg以下になるまで秤量を続けた。
【0040】
カルシウム・リンに関する測定器具は、すべて1N塩酸に浸漬後蒸留水で洗浄し、水道水中のミネラルの影響を受けないようにした。
【0041】
(骨湿重量の測定法)
骨湿重量に関しては、左右大腿骨の湿重量を電子天秤にて測定し、記録した。
【0042】
(骨強度の測定法)
骨強度の測定は、骨強度試験装置(室町機械株式会社製:TK−252C)を用いて、三点曲げ試験法によってENERGYとSTIFFNESSを測定した。
三点曲げ試験法は、骨を下側から二点で支え、上側から骨の中央に負荷を加えて、骨が折れたときの値、すなわち破断力を測定する方法である。この三点曲げ試験法においては、大腿骨・脛骨を12mm間隔で支持し、最も安定する角度で置いて測定した。
ENERGY(破断エネルギー)は、骨が破断されるまでの仕事量、すなわち荷重が加わってその方法に動いた仕事量を表す。STIFFNESSは、骨の弾性率であり、骨の硬さの目安を表す。
【0043】
(骨中カルシウムの測定法)
骨中カルシウムの測定は、カルシウム測定用カルシウムE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて、オクトクレゾールフタレインコンプレキソン(OCPC)法で行った。
5倍希釈した試料0.05mlにモノエタノールアミン緩衝液(pH12.0)を2.0ml加え、よく振り混ぜた。これにメチルキシレノールブルーと8−キノリノールを含有した発色試薬を1.0ml加え、よく振り混ぜた。そして、3時間以内にブランクを対照として、分光光度計で610nmの波長で検体および標準液(10mg/dl)の吸光度を測定した。
【0044】
(骨中リンの測定法)
骨中リンの測定は、モリブデンブルー法で行った。このリン測定にあたっては、以下の要領で試薬等を調整した。
まず、蒸留水336mlに塩酸14mlを加え、1.4%塩酸とした。次に、燐酸カリウムをろ紙にとり、乾燥機中(105℃)で2時間乾燥させた。それをデシケーター内で放冷した後、0.220gを量りとり、1.4%塩酸で50mlにメスアップし、リン標準液とした。
次に、モリブデン酸アンモニウム5.0gを約80mlの温水(60℃)中で溶解させた。それを蒸留水で100mlにメスアップし、モリブデン酸アンモニウム溶液とした。
次に、メタバナジン酸アンモニウム0.25gを温水約50mlで溶かし、冷却後、濃硝酸を4ml加え、蒸留水で100mlにメスアップし、メタバナジン酸アンモニウム溶液とした。
試料としては、原液:蒸留水=1:1で、2倍希釈したものを用いた。
そして、試料5ml(ブランクは1.4%塩酸5ml)、蒸留水15ml、メタバナジン酸アンモニウム溶液2.5ml、モリブデン酸アンモニウム溶液2.5mlを加えてよく混合し、蒸留水で50mlメスアップした。それを10分間室温に放置した後、分光光度計で460nmの波長で検体および標準液の吸光度を測定した。
【0045】
(糞中カルシウムの測定法)
恒量に達した糞入りのるつぼは、骨と同様の方法で100mlにメスアップし、糞試料とした。
カルシウム測定は、カルシウム測定用カルシウムE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて、オクトクレゾールフタレインコンプレキソン(OCPC)法で行った。
5倍希釈した試料0.05mlにモノエタノールアミン緩衝液(pH12.0)を2.0ml加え、よく振り混ぜた。これにメチルキシレノールブルーと8−キノリノールを含有した発色試薬を1.0ml加え、よく振り混ぜた。そして、3時間以内にブランクを対照として、分光光度計で610nmの波長で検体および標準液(10mg/dl)の吸光度を測定した。
【0046】
(尿中カルシウムの測定法)
原尿を4℃、3000rpm、15分間で遠心分離し、上清をデカンテーションにて別のプラスチックチューブに採取した。これを尿試料とした。
尿中カルシウムの測定は、カルシウム測定用カルシウムE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて、オクトクレゾールフタレインコンプレキソン(OCPC)法で行った。
5倍希釈した試料0.05mlにモノエタノールアミン緩衝液(pH12.0)を2.0ml加え、よく振り混ぜた。これにメチルキシレノールブルーと8−キノリノールを含有した発色試薬を1.0ml加え、よく振り混ぜた。そして、3時間以内にブランクを対照として、分光光度計で610nmの波長で検体および標準液(10mg/dl)の吸光度を測定した。
【0048】
上述した測定結果から得られたデータは、平均±標準誤差で表した。DASの食餌添加と、トレッドミル走行運動の二つの因子とし、二元配置の分散分析を行った。群間での有意差検定には、Tukeyの多重比較法を用いた。その際、p<0.05を統計学的に有意差ありと判定した。
【0049】
<実験結果1:体重、摂食量、および走行距離>
【0050】
実験開始時の8週齢ラットの体重は、C群289±5g、CE群290±4g、D群300±3g、DE群301±5gであり、終体重は、C群400±7g、CE群385±7g、D群391±6g、DE群394±5gであった。
図5に示すように、実験期間中、体重はいずれの群においても緩やかに増加した。また、この実験時においては、
図6に示すように、1日あたりの食餌摂取量は各群で差はなかった。
実験期間中のトレッドミル走行訓練の週齢とその時期の速度については、先に説明した
図3に示した。また、運動群(CD群・DE群)の総走行距離を
図7に示した。この
図7の表に示すように、総走行距離に関しては、運動群の2群間に差はなかった。
【0052】
ラットの体重100gあたりの主要臓器、腺、筋肉重量については、
図8〜
図16に示している。これらの図に示すように、心臓、左腎臓、右副腎、副腎合計、胸腺、ひらめ筋、腓腹筋に関して、各群間に有意差はみられなかった。
肝臓については、CE群がC群に対して有意に低値を示し、DE群がD群に対して有意に低値を示した。すなわち、運動群が非運動群に比べ、有意に低値を示した。(p<0.05)(
図9参照)
脾臓については、D群がDE群に対して有意に高値を示した。(p<0.05)(
図10参照)
右腎臓については、CE群がC群に対して有意に高値を示し、CE群がDE群に対して有意に高値を示した。(p<0.05)(
図11参照)
左副腎については、CE群がC群に対して有意に高値を示し、CE群がDE群に対して有意に高値を示し、D群がC群に対して有意に高値を示した。(p<0.05)(
図13参照)
【0054】
屠殺2日前の24時間尿量に関するグラフを
図17に示す。
また、
図18に尿中カルシウム排泄量に関するグラフを示し、
図19に尿中クレアチン排泄量に関するグラフを示している。これらの
図18および
図19に示すグラフによれば、尿中カルシウム排泄量、尿中クレアチン排泄量は、いずれの群間においても、有意な差はみられなかった。
さらに、
図20は、尿素窒素排出量に関するグラフを示している。この
図20に示すように、尿素窒素排出量については、D群がC群に比べ有意に低値を示し、DAS添加食群が対照食群と比較して有意に低値を示す傾向がみられた。(p<0.05)
また、
図21は、糞中カルシウム排泄量に関するグラフを示している。この
図21に示すように、糞中カルシウム排泄量は、いずれの群間においても有意な差はみられなかった。
【0056】
図22および
図23に示すように、骨湿重量については、いずれの群間においても有意な差はみられなかった。ここで、
図22は左大腿骨湿重量に関するグラフを示し、
図23は右大腿骨湿重量に関するグラフを示している。
【0057】
また、先にも説明したとおり、骨破断試験によりENERGYとSTIFFNESSを測定した。ここで、
図24は左大腿骨ENERGYに関するグラフを示し、
図25は右大腿骨ENERGYに関するグラフを示し、
図26は左大腿骨STIFFNESSに関するグラフを示し、
図27は右大腿骨STIFFNESSに関するグラフを示している。
【0058】
これらの
図24および
図25のグラフに示すように、ENERGYについては、左右大腿骨のいずれの群間においても、有意な差はみられなかった。
【0059】
図27は、本実施形態にかかる実験時におけるラットの右大腿骨STIFFNESSに関するグラフを示したものである。この
図27に示すように、STIFFNESSについては、右大腿骨においてD群がC群に比べ有意に高値を示した。(p<0.05)
【0060】
骨中リンについては、
図28に示すように、CE群がC群に比べ有意に高値を示し、DE群がC群に比べ有意に高値を示した。(p<0.05)
【0061】
また、
図29は骨中カルシウムに関するグラフを示し、
図30はカルシウム吸収率に関するグラフを示し、
図31はカルシウム保持率に関するグラフを示している。この
図30および
図31に示すように、カルシウム吸収率、カルシウム保持率については、いずれの群間においても差はみられなかった。
【0062】
<本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤の作用効果等について>
【0063】
上述した実験結果に示すように、ラットの体重増加曲線はいずれの群もほぼ同様の緩やかな増加を示し(
図5参照)、飼料摂食量もほぼ同様に直線的な増加がみられた。
【0064】
また、尿中カルシウム量(
図18参照)および糞中カルシウム量(
図21参照)については、群間の差はみられなかった。
【0065】
さらに、大腿骨の骨長・骨径に差はみられなかったが、大腿骨湿重量(
図22、
図23参照)ではCE群がC群と比べて有意に高値を示した。骨強度については、CE群、D群、DE群が、C群と比べて高い傾向を示した。大腿骨骨幹部におけるカルシウム含有量においては、D群が、C群、CE群、DE群と比べて有意に高値を示し、DE群も、C群、CE群と比べて有意に高値を示した。
【0066】
より具体的には、三点曲げ試験法の骨破断におけるSTIFFNESSについては、
図27に示すように、右大腿骨において、D群がC群に比べ有意に高値を示した。これは、以下の理由によると考えられる。
ここで、
図32は血漿総たんぱく質濃度に関するグラフを示し、
図33は血漿アルブミン濃度に関するグラフを示している。
これらの図に示すように、血漿総たんぱく質濃度については、各群間で有意な差はみられなかったが(
図32参照)、血漿アルブミン濃度においては、CE群がC群と比較して有意に高値を示し、DE群がD群と比較して有意に高値を示し、運動群が非運動群と比較して高値を示し、D群がC群と比較して有意に高値を示した。
つまり、血漿アルブミン濃度は、DAS添加食群が対照食群に比べ有意に高値を示した。しかしながら、その一方では、尿素窒素排泄量(
図20参照)においては、DAS添加食群が対照食群に比べ、低い傾向がみられた。このことから、本実施形態にかかるDAS添加食群の方が、「骨の形成材料」をより多く体内に留めていることが明らかである。すなわち、本実施形態にかかる骨強度低下抑制剤を構成するDASが、骨吸収促進因子の産生を抑制したことによって、骨密度を高め、骨破断におけるSTIFFNESSを高めたためであると考えられる。
【0067】
また、骨は、カルシウム、リンなどのミネラル貯蔵庫としても重要な役割を担っている。骨中成分については、
図28に示すように、骨中リン含有量が、CE群がC群に比べ有意に高値を示し、さらにDE群がC群に比べ有意に高値を示し、非運動群に比べ運動群で高値を示す傾向がみられた。
【0068】
以上のことから、本実施形態においては、骨強度低下抑制剤と運動とにより、大腿骨骨幹部骨塩量が増加し、骨中のリン含有量が増加したと考えられる。すなわち、本実施形態によれば、骨強度の低下を効果的に抑制可能な骨強度低下抑制剤を得ることができる。また、本実施形態によれば、骨強度の低下を効果的に抑制可能な骨強度低下抑制方法を得ることができる。
【0069】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。