特許第5678519号(P5678519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5678519微細黄色顔料組成物及び該微細黄色顔料組成物を含む顔料分散体、並びに前記微細黄色顔料組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678519
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】微細黄色顔料組成物及び該微細黄色顔料組成物を含む顔料分散体、並びに前記微細黄色顔料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/46 20060101AFI20150212BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20150212BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20150212BHJP
   C09B 25/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   C09B67/46 ACSP
   C09B67/20 F
   C09B67/22 F
   C09B25/00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-188706(P2010-188706)
(22)【出願日】2010年8月25日
(65)【公開番号】特開2012-46603(P2012-46603A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 純平
(72)【発明者】
【氏名】松原 康洋
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−066225(JP,A)
【文献】 特開2007−009096(JP,A)
【文献】 特開2003−167112(JP,A)
【文献】 特開2004−091497(JP,A)
【文献】 特開2003−089756(JP,A)
【文献】 特開2009−145643(JP,A)
【文献】 特開2004−196893(JP,A)
【文献】 特開2009−132899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/46
C09B 25/00
C09B 67/20
C09B 67/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノフタロン系顔料と、スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と、下式(1)で表わされるトリアジン系顔料誘導体とを含む微細黄色顔料組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは下式(2)で表わされる芳香族アミン残基を表し、Bは塩素原子、水酸基、スルファニル酸残基またはオルタニル酸残基を表す。)
【化2】
(式(2)中、Q、Q、Q、Qは、それぞれ独立して、−H、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表す。Xは、−H、−OH又は−NHを表す。Wは、−CH−を表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1である。)
【請求項2】
キノフタロン系顔料と前記スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と前記トリアジン系顔料誘導体とを含む混合物を摩砕混練して前記キノフタロン系顔料を微細化してなる請求項1に記載の微細黄色顔料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微細黄色顔料組成物と、溶剤、分散剤、分散樹脂、他の顔料を含む顔料分散体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の微細黄色顔料組成物の製造方法であって、キノフタロン系顔料と前記スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と前記トリアジン系顔料誘導体とを含む混合物を60℃以下で摩砕混練して前記キノフタロン系顔料を微細化する工程を含む微細黄色顔料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色顔料組成物に関するものであり、さらに詳しくは、微細化した黄色顔料を含有する微細黄色顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキや塗料、例えばインクジェットプリンター用インキ、カラーフィルター用インキにおいては、顔料を微細な状態で分散させることにより、高い着色力を発揮させ、印刷物などの展色物や塗加工物の鮮明な色調、光沢等の適性を持たせたり、カラーフィルター等の塗膜の色度、コントラスト比等の適性を持たせたりしている。近年、これらの用途においては、より高い鮮明性、光沢、色度、コントラスト比などが求められてきている。
【0003】
この対応策の一つとして、顔料を微細化する方法が採用されている。しかし、一般的には、水、溶剤、樹脂などの混合物(塗料やインキ等のビヒクル)中に一旦分散した顔料粒子は、その混合物(顔料分散体)中で凝集する傾向にあり、顔料の一次粒子の粒子径が小さくなるほど、凝集して二次粒子を形成する傾向が強いため、顔料を微細化しても、微細化された顔料粒子を安定して分散させることは難しいこととされている。そして、このように顔料分散体中で顔料粒子が凝集すると、当該顔料分散体の粘度上昇、展色物の塗面光沢の低下、塗膜の性能の低下など、各種の好ましくない現象を生じることが多い。
【0004】
ところで、カラーフィルター用の顔料としては、主にレッド、グリーン、ブルーの三色が用いられるが、これらの補色として、黄色顔料が併用されるのが一般的である。このような黄色顔料としては、耐熱性や耐候性が良好とされるキノフタロン系の顔料が知られているが、上記のように微細化を行うと、却って性能が低下する場合があった(このことは、カラーフィルター以外の他の用途においても同様である)。
【0005】
この改善策としては、特定の型の結晶構造を有するキノフタロン顔料を採用する方法(特許文献1)、キノフタロン誘導体スルホン酸などを用いる方法(特許文献2)が提案されている。また、特許文献1では、湿式摩砕温度は80℃以上が好ましいとされている。
【0006】
しかしながら、これらの技術を用いても、例えばカラーフィルターなどの塗膜用のインクとして用いた場合に、そのコントラスト比向上などの点で、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−105351号公報
【特許文献2】特開2003−167112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題に鑑みて、本発明の目的とするところは、カラーフィルターなどの塗膜用のインクとして用いた場合に、コントラスト比を向上することができる微細黄色顔料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、キノフタロン系顔料と複数種の特定の顔料誘導体とを用いることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0010】
本発明の第一は、キノフタロン系顔料と、スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と、下式(1)で示されるトリアジン系顔料誘導体とを含む微細黄色顔料組成物に関する。
【化1】
【0011】
(式(1)中、Aは下式(2)で表わされる芳香族アミン残基を表し、Bは塩素原子、水酸基、スルファニル酸残基またはオルタニル酸残基を表す。)
【0013】
【化2】
【0015】
(式(2)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、それぞれ独立して、−H、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表す。Xは、−H、−OH又は−NH2を表す。Wは、−CH2表し、mおよびnは、それぞれ独立に0または1である。)
【0016】
本発明の第二は、前記微細黄色顔料組成物と、溶剤、分散剤、分散樹脂、他の顔料を含む顔料分散体に関する。
【0017】
本発明の第三は、前記微細黄色顔料組成物の製造方法であって、キノフタロン系顔料と前記スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と前記トリアジン系顔料誘導体とを含む混合物を60℃以下で摩砕混練して前記キノフタロン系顔料を微細化する工程を含む微細黄色顔料組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る微細黄色顔料組成物によれば、カラーフィルターなどの塗膜用のインクとして用いた場合に、当該塗膜のコントラスト比を向上することができる。
【0019】
本願発明に係る微細黄色顔料組成物の製造方法によれば、上記微細黄色顔料組成物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る微細黄色顔料組成物は、キノフタロン系顔料と、スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と、上式(1)で示されるトリアジン系顔料誘導体とを含む。
【0021】
前記キノフタロン系顔料としては、カラーインデックス(以下、C.I.と略称する。)ナンバーでは、C.I.ピグメントイエロー138(以下、PY138と略称する。)が代表的なものであり、下記式(4)で表わされる。PY138としては公知のものを使用することができ、例えば、BASF社製のPaliotol Yellow D0960などが例示できる。
【0022】
【化4】
【0023】
本発明では、前記顔料の一次粒子径は、顔料の分散性の確保、コントラスト比向上の観点から、20〜60μmの範囲にあるのが好ましい。
【0024】
前記スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体(以下、単に「スルホン化顔料誘導体」という場合がある。)としては、キノフタロン系顔料または同顔料誘導体に対してスルホン化処理を施すことによって得られるものである。スルホン化処理は、例えば特開2009−126994号公報に記載の方法、その他の公知の方法などにより行うことができる。
【0025】
また、本発明では、上記方法などで得られたスルホン酸をそのまま用いても良いし、前記スルホン酸の塩として用いても良い。前記スルホン酸と塩を形成する化合物あるいは原子としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウムなどの1〜3価の金属原子、エチルアミン、ブチルアミン等のモノアルキルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のジアルキルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等の有機アミン、アンモニア等が挙げられる。
【0026】
また、塩がアルカリ金属塩である場合は、塩が水溶性となり、塩を水に溶解させた後、単に濾過するだけで、非水溶性の不純物を容易に分離することができ、スルホン化顔料誘導体を純度の高いものとして得ることができる。
【0027】
本発明において使用するスルホン化キノフタロン系顔料誘導体としては、例えば、下記式(5)で示される化学構造を有するものや、その塩が挙げられる。
【0028】
【化5】
【0029】
(式(5)中、pは1〜5の整数を表す。X1〜X8はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。)
【0030】
このような構造を有するスルホン化顔料誘導体は、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とは、非平行状態をとっていることから、キノフタロン系顔料との適度な親和性を有し、キノフタロン系顔料粒子の凝集を抑制しているものと考えられる。また、スルホン化顔料誘導体は、後述するようにトリアジン系顔料誘導体とも親和性が高く、両者の相互作用により、両者のキノフタロン系顔料に対する作用が効果的に発揮できるものと考えられる。さらに、分子内にスルホ基を有しているため、後述する溶剤に対する分散性に優れており、顔料分散体の調製の際に効果的に機能するものと考えられる。
【0031】
本発明では、上記式(5)で表わされるスルホン化キノフタロン系顔料誘導体を用いればよいが、中でも、X1〜X8の全てが、塩素原子であるものが好ましい。これにより、上記式(4)で示されるキノフタロン系顔料との親和性が向上し、当該誘導体の顔料粒子への吸着が促進されて、より効果的な結晶成長の防止が期待できる。
【0032】
前記トリアジン系顔料誘導体としては、上記式(1)で表わされる構造を有するものであればよい。このような芳香族アミン残基を有するトリアジン系顔料誘導体は、π電子リッチな化合物であり、該化合物がキノフタロン系顔料結晶粒子表面に接近し、その顔料分子が有するπ電子との相互作用により、後述する微細化処理にいて、キノフタロン系顔料の一次粒子の結晶成長が抑制/制御できるものと考えられる。
また、トリアジン系顔料誘導体は、同じく前記スルホン化顔料誘導体の分子が有するπ電子とも相互作用を有するため、両者の親和性が高く、両者のキノフタロン系顔料に対する作用が効果的に発揮できるものと考えられる。
さらに、前記スルホン化顔料誘導体と同様に分子内にスルホ基を有しているため、後述する溶剤に対する分散性に優れており、顔料分散体の調製の際に効果的に機能するものと考えられる。
【0033】
本発明では、上記式(1)で表わされるトリアジン系顔料誘導体を用いればよいが、前記トリアジン系顔料誘導体の芳香族アミン残基であるAが、上記式(2)で表わされる基であるのが好ましい。尚、本発明において、低級アルキル基、低級アルコキシ基における低級とは、炭素数が1〜4であるものを意味する。このような炭素数の場合、立体障害が低く、顔料との親和性がより向上すると考えられる。
【0034】
上記(2)で表わされる基の具体例としては、キノフタロン系顔料の結晶成長を抑制し、一次粒子径を小さくする観点からは、式(6)〜(8)で表わされる基のいずれかが好ましい。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
このようなトリアジン系顔料誘導体は、公知の方法にて製造することができるほか、市販のものを用いても良い。
【0039】
本発明の微細顔料組成物では、前記スルホン化顔料誘導体の含量は、特に限定はないが、塗膜のコントラスト比向上の観点から、キノフタロン系顔料100重量部に対して、2〜20重量部であるのが好ましく、5〜10重量部であるのがより好ましい。また、前記トリアジン系顔料誘導体の含量は、特に限定はないが、塗膜のコントラスト比向上の観点から、キノフタロン系顔料100重量部に対して、1〜10重量部であるのが好ましく、2〜5重量部であるのがより好ましい。
【0040】
本発明の微細黄色顔料組成物には、必要により、上記の顔料および顔料誘導体以外に、分散剤、樹脂などが含まれていてもよい。
【0041】
本発明の微細黄色顔料組成物は、キノフタロン系顔料と前記スルホン化されたキノフタロン系顔料誘導体と前記トリアジン系顔料誘導体とを含む混合物を60℃以下で摩砕混練する工程を経て、得ることができる。
【0042】
PY138は、上述のように耐熱性や耐候性が良好とされているものであり、例えば特許文献1では、湿式摩砕温度は80℃以上が好ましいとされている。しかしながら、本発明者らは、上記のように比較的低い温度にて摩砕混練を行うことで、カラーフィルターなどの塗膜のコントラスト比をより向上させることが可能であることを見出した。
【0043】
また、上記の複数の特定の顔料誘導体を用いてキノフタロン系顔料を摩砕混練することで、顔料粒子の結晶成長が効果的に抑制され、最終的にカラーフィルターなどの塗膜のコントラスト比をより向上させることが可能であることを見出した。
【0044】
本発明では、混練物の温度が60℃以下と低い温度にて摩砕混練を行えば良いが、コントラス比向上の観点からは、20℃以上がより好ましく、30〜50℃がより好ましい。このように、より低温にて摩砕混練を行うことで、混練物の粘度を上げ、混練物に対して剪断力をより付与し易くなり、顔料の微細化に寄与することができる。20℃より低温で摩砕混練を行うと、顔料の一次粒子径が小さくなり過ぎ、顔料分散体調製時に凝集して粘度が上昇し、塗膜のコントラスト比に影響する場合がある。
【0045】
本発明の微細黄色顔料組成物の製造方法について、湿式のミリング法を用いた好適例をもとに説明するが、これに限定されるものではなく、特定の温度にて行うことが可能であれば、乾式のミリング法などその他の公知の方法を用いても良い。
【0046】
本例では、先ず、前記キノフタロン系顔料、前記スルホン化顔料誘導体、前記トリアジン系顔料誘導体、水溶性無機塩、水溶性有機溶媒を混合し、スーパーミキサーなどの混合機により予備混合を行う。この際の混合比は、キノフタロン系顔料100重量部に対して、前記スルホン化顔料誘導体2〜20重量部、前記トリアジン系顔料誘導体1〜10重量部、水溶性無機塩500〜1500重量部、水溶性有機溶媒100〜400重量部であるのが好ましい。
【0047】
前記水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、(無水)芒硝((無水)硫酸ナトリウム)など摩砕助剤として公知のものを適宜用いることができる。当該無機塩の粒子径は特に限定はないが、顔料の微細化の観点から、50μm以下、好ましくは10μm以下のものを用いると良い。また、特開2009−263501号公報記載のように、微細化し、整粒したものを用いても良い。
【0048】
前記水溶性有機溶媒としては、ソルトミリングにおいて使用される公知の有機溶媒を用いることができ、例えば、ジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
次に、前記の予備混合を行って得られる混合物を混練機に供給し、混合物(混練物)の温度が60℃以下になるように調整しながら、摩砕混練を行う。この際、混練物の温度は、バッチ式混練機の場合は混練槽内で摩砕混練中の混練物に対して、また、連続式混練機の場合は混練機の出口から排出される混練物に対して、校正した温度計を接触させて、計測される。
【0050】
混練機としては、上記の温度の調整が可能なものであれば、公知のものを用いることができる。具体的には、ニーダーなどのバッチ式混練機や、連続式混練機を用いることができる。摩砕混練中の混合物の温度制御の観点からは、連続式混練機を用いるのが好ましい。連続式混練機としては、特開平9−263723号公報に記載の2軸連続混練機や、特開2006−77062号公報に記載の連続式混練機などが挙げられ、後者としては、浅田鉄工株式会社製のミラクルKCKが挙げられる。
【0051】
更に、上記のようにして摩砕混練を行って得られる摩砕混練物を、イオン交換水などにより洗浄し、微細顔料ペーストを得る。その後、必要により水洗後の微細顔料ペーストを乾燥機にて乾燥させて、微細顔料の乾燥ブロックを得、これを公知の粉砕機にて粉砕し、微細顔料の粉体を得る。
【0052】
本発明では、上記のようにして得られる微細顔料ペースト、あるいは、微細顔料の粉体を微細黄色顔料組成物とする。
【0053】
本発明の顔料分散体は、前記微細黄色顔料組成物を含むものである。
また、前記顔料分散体には、前記微細黄色顔料組成物のほか、溶剤、分散剤、分散樹脂、他の顔料(顔料誘導体を含む)、その他の成分が適宜含まれる。これらの各成分は公知のものを適宜使用可能であるが、以下にその概略を説明する。尚、その詳細は、例えば特開2009−126994号公報に記載されているものを適宜用いることができる。
【0054】
前記溶剤としては、水溶性溶媒が好ましく使用される。溶剤として水溶性溶媒を用いることにより、顔料の分散性を特に優れたものとすることができる。水溶性溶剤としては、親水性の溶媒を用いることができ、具体的には、例えば、25℃における水100gに対する溶解度が3g以上の液体を用いることができる。
水溶性溶剤としては、一般に、水酸基等の親水性の高い官能基を有する化合物や、ポリグリコール骨格を有する化合物等を好適に用いることができる。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテ−ト(PMA)などが挙げられる。
本発明では、非水溶性溶媒を用いても良い。
【0055】
前記分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子系分散剤を用いることができる。高分子系分散剤としては、例えば、塩基性高分子系分散剤、中性高分子系分散剤、酸性高分子系分散剤等が挙げられる。このような高分子系分散剤としては、例えば、アクリル系、変性アクリル系共重合体からなる分散剤、ウレタン系分散剤、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系、脂肪族多価カルボン酸等からなる分散剤等が挙げられる。
顔料分散体中における分散剤の含有率は、特に限定されないが、2〜28wt%であるのが好ましく、9〜25wt%であるのがより好ましい。
【0056】
前記分散樹脂としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散体中における分散樹脂の含有率は、特に限定されないが、2〜21wt%であるのが好ましく、6〜19.5wt%であるのがより好ましい。
【0057】
前記他の顔料としては、各種公知の顔料や、その顔料誘導体を用いることができる。またこれらの顔料、顔料誘導体は、1種または2種以上を用いても良い。
顔料分散体中における顔料(本発明の黄色微細顔料組成物、これ以外の顔料(顔料誘導体を含む)の全て)の含有率は、10wt%以上であるのが好ましく、10〜25wt%であるのがより好ましい。
【0058】
前記その他の成分としては、例えば、ビヒクル、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。これらは、本発明の効果を妨げない限り、適宜添加することができる。
【0059】
本発明の顔料分散体は、公知の方法により調製することができる。その実施形態の好適例を以下に簡単に説明するが、これに限定されるものではない。
本例は、微細黄色顔料組成物、溶剤、分散剤、分散樹脂を含む混合液に無機ビーズを多段で添加して分散処理を行うものである。このように多段で無機ビーズを添加することにより、効率的に微細顔料組成物などを微細な状態で分散させることができる。尚、必要により、前記他の顔料、前記その他の成分を添加しても良い。
【0060】
前記無機ビーズとしては、特に限定はなく、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
各段で使用する無機ビーズの平均粒子径としては、特に限定はないが、順次小さくしていくのが好ましい。例えば、2段で無機ビーズを添加する場合の第1段目の無機ビーズの平均粒子径は、0.5〜3.0mm、第2段目では0.03〜0.3mmとするなどである。
無機ビーズの各段における添加量は、特に限定はないが、前記混合液100重量部に対して、300〜500重量部であるのが好ましい。また、当該範囲であれば、各段における添加量は同じでも異なっていても良い。
【0061】
分散処理を行う分散機としては、特に限定はなく、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。処理時間としては、特に限定はないが、10〜120分間であるのが好ましい。また、分散機の撹拌翼の回転数としては、特に限定はないが、1000〜5000rpmであるのが好ましい。尚、これらの機器の種類、条件に関しては、各段において、適宜選択するとよい。
【0062】
無機ビーズを添加する段数としては、特に限定はないが、2段で添加するのが好ましい。また、本例では、各段で添加した無機ビーズを除去した後、その後の段で他の無機ビーズを添加するが、無機ビーズの除去方法としては、ろ過などの公知の方法にて行うと良い。
【0063】
上記のような条件にて多段で無機ビーズを添加して分散処理し、最終段で添加した無機ビーズを除去して得られる分散処理された混合液が、本発明の顔料分散体である。
本発明の顔料分散体は、例えば、各種塗料、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷用インク、カラーフィルターなどの塗膜用のインク(フィルム用着色剤)、レンズのコート材等に用いることができる。
【0064】
本発明の顔料分散体は、塗膜の形成に用いることができる。塗膜は、例えば、バーコート、スピンコート、ロールコート、スリットコート、刷毛塗り、オフセット印刷、グラビア印刷等の方法により、基材上に顔料分散体を付与し、その後、必要に応じ乾燥(脱溶剤処理)することにより目的の塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0066】
(製造例1)トリアジン系顔料誘導体(A)の調製
水100部に塩化シアヌル7.3gと塩化シアヌルの1個のClと反応する量のスルファニル酸(商品名:ASAスルファニル酸、スガイ化学工業製)6.8gを加えて20℃で1時間反応させた。次に、この反応物の1個のClと反応する量の4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン(商品名:KAYABOND C−200S、日本化薬製)10gを加えて70℃で1時間反応させた。得られた反応物を濾過、残渣を水洗した後、80℃の恒温槽に1晩静置して乾燥させて、下記記式(9)で示されるトリアジン系誘導体(A)17.0gを得た。
【0067】
【化9】
【0068】
(製造例2)トリアジン系顔料誘導体(B)の調製
水100gに3,3′−ジクロルベンジジン10gを加え、分散させ、1個のアミノ基と反応する量の塩化シアヌル7.3gを加えて20℃で1時間反応させた。次に13.7gのスルファニル酸を加え90℃で1時間反応させ下式(10)の構造を有するトリアジン系顔料誘導体(B)26.6gを得た。
【0069】
【化10】
【0070】
(実施例1)
キノフタロン系顔料としてYellow138(商品名「Paliotol Yellow L0960HD、BASF社製)500g、水溶性無機塩として無水芒硝(平均粒径約5μm、特開2009−263501号公報記載の無水芒硝)5000g、水溶性有機溶媒としてエチレングリコール1045g、下記式(11)で表わされるスルホン化顔料誘導体50g、製造例1のトリアジン系顔料誘導体(A)25g、を均一になるようにスーパーミキサー(カワタ社製、スーパーミキサーSMV−20)にて約2分間予備混合した。
この混合物を連続混練機(浅田鉄工社製ミラクルKCK32型)に供給した。混練条件は、押出し量6.6kg/hで、回転数90rpm、混練物の温度が45℃になるように温度コントロールしながら摩砕混練した。当該摩砕混練物1300gを40℃のイオン交換水8000gに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が取り除かれるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。
当該顔料水ペーストを60℃で20h乾燥させた。当該乾燥物を粉砕機(共立理工(株)製、小型粉砕機サンプルミルSK−M2)で粉砕し、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体、トリアジン系顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0071】
【化11】
【0072】
(式(11)中、pは1〜5の整数である。)
【0073】
(実施例2)
トリアジン系誘導体(A)に替えて、トリアジン系誘導体(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体、トリアジン系顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0074】
(実施例3)
混練物の温度が30℃になるように温度コントロールしながら摩砕混練したこと以外は、実施例1と同様にして、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体、トリアジン系顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0075】
(実施例4)
混練物の温度が50℃になるように温度コントロールしながら摩砕混練したこと以外は、実施例1と同様にして、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体、トリアジン系顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0076】
(比較例1)
トリアジン系誘導体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0077】
(比較例2)
スルホン化顔料誘導体の添加量を75gにした以外は、比較例1と同様にして、キノフタロン系顔料、スルホン化顔料誘導体を含む微細黄色顔料組成物約90gを得た。
【0078】
(評価)
<顔料分散体および塗膜の調製>
緑色顔料としてFastogen GREEN A11O(DIC社製)17.36g、補色顔料として実施例、比較例の微細黄色顔料組成物23.55g、上記式(11)で表わされるスルホン化顔料誘導体5.89g(以上3品の含有量を顔料分という)、分散剤としてDisperbyk LPN−6919(ビックケミー社製)24.5g、分散樹脂としてSPCN−2000(昭和高分子製)27.6g、有機溶剤としてPMA71.1gを、内容量400mlの撹拌機(一軸ミキサー)に投入し、10分間撹拌を行った。このとき、撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、平均粒径0.8mmの無機ピーズ(第1の無機ピーズ、ジルコニア製、Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)640gを添加して、室温下、30分間撹拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL杜製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ピーズ)を除去し、その後、顔料分が15wt%となるようにPMAを添加し、平均粒径0.1mmの無機ピーズ(第2の無機ピーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を重量にして全体仕込み量の4倍量添加し、更に90分間撹拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ピーズ)を除去し、目的とする顔料分散体を得た。
【0079】
上記のようにして調製した顔料分散体を、スピンコート(MIKASA SPINCORTER IH−DX2)を用いて薄膜状の塗板(塗膜)を調製した。当該塗膜を230℃にて1時間加熱し、下記評価に供した。
【0080】
(評価)
上記のようにして調製した塗膜を用い、分光光度計(SPECTROPHOTOMETER CM−3700d)にてY値、x値、コントラスト比(CR)を測定した。
尚、コントラストの測定方法は、以下のとおりである。即ち、カラーフィルターを2枚の偏光板の間にはさみ、各偏光板の偏光面を平行にした時の透過光照度と垂直にした時の透過光照度とを測定し、その比を求めた。透過光照度の測定には、輝度計「LS−100」(ミノルタ社製)を用いた。各測定結果を表1に示す。尚、表中の評価の欄は、y値が0.55の場合の値であり、コントラスト比(CR)は、比較例1の値を基準とした相対比である。
【表1】
【0081】
表1に示すように、所定の温度にて混練摩砕を行って調製した、スルホン化顔料誘導体とトリアジン系顔料誘導体を含む黄色微細顔料組成物を用いて得られた顔料分散体を用いると、当該顔料分散体より調製した塗膜はコントラスト比が向上している。これに対して、トリアジン系顔料誘導体を用いずに、スルホン化顔料誘導体の添加量を増加した場合にはコントラスト比が大幅に低下している。
このように本発明の微細黄色顔料組成物は、コントラスト比の向上したカラーフィルターなどの塗膜の提供に好適である。