特許第5678551号(P5678551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678551
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20150212BHJP
   B41J 11/24 20060101ALI20150212BHJP
   B41J 15/06 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   B41J2/32 Z
   B41J11/24
   B41J15/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-219245(P2010-219245)
(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公開番号】特開2012-71529(P2012-71529A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 昌二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】古川 利彦
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−082862(JP,A)
【文献】 特開平11−005322(JP,A)
【文献】 特開平09−095018(JP,A)
【文献】 特開平04−209154(JP,A)
【文献】 特開2007−163612(JP,A)
【文献】 特開2000−118023(JP,A)
【文献】 特開平10−120233(JP,A)
【文献】 特開2000−062270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 11/24
B41J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン方向に発熱抵抗体を配列したサーマルヘッドと、このサーマルヘッドに供される用紙を紙送りする送りローラとを具備し、前記送りローラを構成する第1のローラ及びこの第1のローラと対をなす第2のローラを前記用紙よりも幅広にするとともに、これら第1のローラ及び第2のローラに摩擦増大部を部分的に設け、前記第の1ローラ及び前記第2のローラによって実質的に用紙に搬送力を生じる範囲を前記サーマルヘッド及びこのサーマルヘッドと対をなすバックアップローラが用紙に対して圧接可能な範囲よりも相対的に幅狭となるように構成したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
送りローラは、サーマルヘッドの近傍であって印刷後の用紙が最初に通過する位置に配置され、その駆動力によって用紙をサーマルヘッドの印刷位置に引き込む搬送を行うものである請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
サーマルヘッドの幅に対して幅広な用紙を装填する用紙装填部を更に備える請求項1又は2に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に発生するシワに起因した印刷不良等の問題に善処したプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、感熱式のプリンタでは、図3に示すように、サーマルヘッド1及びこのサーマルヘッド1と対をなすバックアップローラであるプラテンローラ2の間に感熱用紙5を通過させるように構成するとともに、送りローラであるフィードローラ3及びこのフィードローラ3と対をなすピンチローラ4が用紙搬送可能に配置されている。そして、サーマルヘッド1に印刷信号を入力することにより、サーマルヘッド1に設けた発熱抵抗体6を発熱させて、用紙5に所望の印刷を施すようにしている。特許文献1に示すプリンタ等がこれに該当する。
【0003】
この場合、図4に示すように、ピンチローラ4やその下方にあって当該ピンチローラ4に隠れているフィードローラ3の幅寸法Waは、用紙ロールともども用紙5の幅寸法Wbよりも幅広に構成され、サーマルヘッド1の幅寸法Wcも、用紙全体に印刷を施すことができるように用紙5の幅寸法Wbよりも幅広に構成されているのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−254685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時におけるオフセット印刷等の印刷版を作成する場合などに、図5に示すようにサーマルヘッド1の幅寸法Wcを版下となる用紙5の幅寸法Wbよりも幅狭に構成して、印刷領域を用紙5の一部に限定したいという新たな要請がなされる場合がある。
【0006】
しかしながら、このように構成することによって、サーマルヘッド1に比してフィードローラ3等が幅広になると、サーマルヘッド1の幅寸法Wc内はフィードローラ3等と相対する領域Zとなるが、サーマルヘッド1の端部よりも外側の領域Aはフィードローラ3等に相対しない領域となる。このため、印刷時にサーマルヘッド1とプラテンローラ2との間に引きずり抵抗fが生じると、用紙の搬送力Fがサーマルヘッド1の存する中央部においてF−fに低減される一方、サーマルヘッド1の端部よりも外側にあってサーマルヘッド1と相対しない領域Aにはフィードローラ3等から直接搬送力Fが作用することになる。このため、用紙5の端部側が進み側、中央側が遅れ側となって、用紙に図中斜線Yで示すようなシワが発生する新たな要因となる。
【0007】
このような不都合は、サーマルヘッドとプラテンローラの間に用紙とともにインクリボンを挟みこんでインクリボン上の染料を用紙側に転写する熱転写プリンタ(図示省略)においても同様に起こり得るものである。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、用紙にシワを発生させることなく、用紙幅よりも幅狭なサーマルヘッドを用いて適切に印刷を施すことを可能にしたプリンタを新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明のプリンタは、ライン方向に発熱抵抗体を配列したサーマルヘッドと、このサーマルヘッドに供される用紙を紙送りする送りローラとを具備し、前記送りローラを構成する第1のローラ及びこの第1のローラと対をなす第2のローラを前記用紙よりも幅広にするとともに、これら第1のローラ及び第2のローラに摩擦増大部を部分的に設け、前記第1のローラ及び前記第2のローラによって実質的に用紙に搬送力を生じる範囲を前記サーマルヘッド及びこのサーマルヘッドと対をなすバックアップローラが用紙に対して圧接可能な範囲よりも相対的に幅狭となるように構成したことを特徴とする。
【0011】
このように構成すると、送りローラを構成する第1のローラ及び第2のローラにより実質的に用紙に搬送力を生じる範囲が、サーマルヘッド及びこのサーマルヘッドと対をなすバックアップローラが用紙に対して圧接可能な範囲内に収まり、サーマルヘッドの端部よりも外側に送りローラから直接搬送力が導入されることがなくなる。
【0012】
このため、サーマルヘッドよりも幅広な用紙に対して印刷を行っても、用紙にシワが発生することを有効に防止することができる。
【0013】
特に、送りローラとサーマルヘッドとが直接対峙する位置でシワが発生し易いことに鑑みれば、適用対象とする送りローラは、サーマルヘッドの近傍であって印刷後の用紙が最初に通過する位置に配置され、その駆動力によって用紙をサーマルヘッドの印刷位置に引き込む搬送を行うローラであることが望ましい。
【0014】
また、定常的に本発明の効果を奏するために、サーマルヘッドの幅に対して幅広な用紙を装填する用紙装填部を更に備えているプリンタが特に好適となり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明した構成であるから、用紙よりも幅狭なサーマルヘッドを用いて印刷を行っても、不適切な搬送力が送りローラから用紙に作用することを回避して、用紙にシワを発生させることなく適切な印刷を行うことを可能にした、新規有用なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を模式的に示す平面図
図2】本発明の変形例を模式的に示す平面図
図3】プリンタの基本構成を模式的に示す側面図。
図4】従来のプリンタの構成を模式的に示す平面図
図5】従来の不具合を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態のプリンタは、感熱式のもので、模式的な側面構成は図3と同様であり、サーマルヘッド1、サーマルヘッド1と対をなすバックアップローラであるプラテンローラ2、送りローラを構成する第1のローラであるフィードローラ3、及びこのフィードローラと対をなす第2のローラであるピンチローラ4を備えている。
【0019】
サーマルヘッド1は、図中矢印Xに示す用紙5の搬送方向に対し、これと直交するライン方向に複数の発熱抵抗体6(図3参照)を整列配置したもので、外部からの印刷信号に基づいて対応する発熱抵抗体6が発熱するように構成してある。このサーマルヘッド1は図示しないヘッド駆動機構によって昇降駆動可能とされている。
【0020】
プラテンローラ2は、サーマルヘッド1の対向位置に回転自在に配設され、外周面をサーマルヘッド1の発熱抵抗体6の外側に位置する印刷面に対向させている。このプラテンローラ2は、サーマルヘッド1がヘッドダウンした図3の状態で印刷面に弾接し、サーマルヘッド1による印画を実効あらしめるためのバックアップローラとして機能する。
【0021】
前記サーマルヘッド1の下流には、送りローラであるフィードローラ3及びこれと対をなすピンチローラ4が圧接状態で配置される。フィードローラ3は、サーマルヘッド1に入力される印刷信号と同期した駆動力を図示しない駆動源から入力されることによって回転し、このとき従動ローラであるピンチローラ4が同期逆回転して、両ローラ3,4間に挟み込んだ用紙5を搬送する。これに伴い、上流に位置するサーマルヘッド1とプラテンローラ2の間の印刷位置に用紙5が逐次引き込まれる。
【0022】
このような構成において、図3に示すピンチローラ4及びフィードローラ3が図1の幅方向(Wa方向)に沿って均一な搬送面を有しているとした場合、これらのローラ3、4の幅方向にほぼ均等に搬送力Fが発生する。そして、サーマルヘッド1も幅方向のほぼ全域が印刷可能領域であるとすると、本実施形態では、サーマルヘッド1の幅寸法Wcを用紙5の幅寸法Wbよりも幅狭に設定するとともに、フィードローラ3及びピンチローラ4の幅寸法Waをサーマルヘッド1の幅寸法Wcよりも幅狭に設定して、Wb>Wc>Waなる関係が成立するようにしている。
【0023】
つまり、送りローラであるフィードローラ3及びこれと対をなすピンチローラ4が用紙5に対して圧接可能な範囲La(ここでは幅寸法Waに等しい)が、サーマルヘッド1及びプラテンローラ2が用紙5に対して圧接可能な範囲Lc(ここでは幅寸法Wcに等しい)よりも相対的に幅狭となるように設定している。
【0024】
なお、上記サーマルヘッド1には、用紙装填部である用紙ロール7から繰り出された用紙5が供給され、用紙ロール7の幅寸法Wdは、用紙5の幅寸法Wbと同等若しくはそれよりも幅広となる関係に設定している。したがって、用紙ロール7の幅寸法Wdはサーマルヘッド1の幅寸法Wcよりも幅広である。
【0025】
このように、本実施形態のプリンタは、ライン方向に発熱抵抗体6を配列したサーマルヘッド1と、このサーマルヘッド1に供される用紙5を紙送りするフィードローラ3等とを具備し、フィードローラ3等がサーマルヘッド1に対して相対的に幅狭となるように構成しているので、フィードローラ3等がサーマルヘッド1と相対する領域Zはサーマルヘッド1の幅寸法Wc内に収まり、図5に示したようにサーマルヘッド1の端部よりも外側にフィードローラ3等から直接搬送力が導入されることがなくなる。このため、サーマルヘッド1よりも幅広な用紙5に対して印刷を行っても、用紙5に図5に示したようなシワYが発生することを有効に防止することができる。また、これに伴い用紙ジャムの発生も低減するので、本実施形態によると、印刷の歩留まりや印刷品質を有効に向上させることが可能となる。
【0026】
特に、本実施形態の適用対象である送りローラは、サーマルヘッド1の近傍であって印刷後の用紙5が最初に通過する位置に配置され、その駆動力によって用紙5をサーマルヘッド1の印刷位置に引き込む搬送を行うフィードローラ3であり、サーマルヘッド1との相対関係でシワの発生原因となっていたことから、かかるフィードローラ3をサーマルヘッド1よりも幅狭とすることでシワ防止効果を顕著に奏することとなる。
【0027】
また、用紙装填部としてサーマルヘッド1の幅に対して幅広な用紙5を装填した用紙ロール7を備えているので、この用紙ロール7から供給する用紙5に対して上記のシワ防止効果を定常的に得ることができる。
【0028】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0029】
例えば、フィードローラ3などの送りローラによる搬送力を高めるために、図2に送りローラ中に斜線で示すように、当該送りローラを構成する第1のローラたるフィードローラ3やこれに弾接する第2のローラたるピンチローラ4は用紙5よりも幅広に設定されるとともに、突起(スパイク)やゴム等の摩擦増大部3aが部分的に設けられて、実質的に用紙5に圧接されて搬送力を生じる範囲Laがフィードローラ3等の幅寸法Waよりも狭い範囲に限定される場合がある。或いは、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間においても、実質的に発熱抵抗体6による印刷面とプラテンローラ2とが圧接する幅寸法Lcがサーマルヘッド1の見掛け上の幅寸法Wcよりも幅狭に設定される場合がある。
【0030】
これらを勘案すると、フィードローラ3やピンチローラ4が用紙5に対して圧接可能な範囲Laが、サーマルヘッド1及びこのサーマルヘッド1と対をなすプラテンローラ2が用紙5に対して圧接可能な範囲Lcよりも相対的に幅狭となるように構成することで、フィードローラ3やピンチローラ4、サーマルヘッド2等の見掛け上の外形寸法によらずに実質的に上記の作用効果を奏することができる。
【0031】
また、上記実施形態ではリボンを用いずに直接に用紙に印刷を施す感熱式の場合について説明したが、インクリボンを用いて用紙に熱転写するプリンタにおいても全く同様に構成して同様の効果を奏することが可能である。
【0032】
さらに、用紙搬送に使用するローラは一体ものとしたが、分割されたものであってもよく、ローラの素材はゴムでも金属ローラでも構わない。
【0033】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…サーマルヘッド
2…バックアップローラ(プラテンローラ)
3…送りローラ、第1のローラ(フィードローラ)
4…第2のローラ(ピンチローラ)
7…用紙装填部(用紙ロール)
図1
図2
図3
図4
図5