特許第5678637号(P5678637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5678637地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678637
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法
(51)【国際特許分類】
   F24J 3/08 20060101AFI20150212BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   F24J3/08
   F28D7/16 D
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-279749(P2010-279749)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-127582(P2012-127582A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 正
(72)【発明者】
【氏名】毎田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】三小田 憲司
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/028496(WO,A1)
【文献】 特開2002−060143(JP,A)
【文献】 特開2001−302107(JP,A)
【文献】 特公平05−020346(JP,B2)
【文献】 特表2008−531945(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0139886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
F28D 7/16
B65H75/00−75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面の掘削孔に地中熱交換器に係る管部材を管軸方向に沿って下降して建て込む方法であって、
コイル状に巻き取り状態の管部材を、前記掘削孔の側方の前記地面に置かれたリール装置に載置して取り付け、
前記巻き取り状態の管部材を前記リール装置によって水平回転することにより、前記管部材を繰り出しながら前記掘削孔へ送り、
前記コイル状に巻き取り状態の前記管部材から繰り出された管部材は、所定の建て込みルートを辿って前記掘削孔へ建て込まれ、
前記建て込みルートは、前記繰り出された管部材を、前記リール部材からの前記管部材の繰り出し位置よりも高い所定高さまで引き上げた後に、前記掘削孔へ向けて垂下して前記掘削孔へ建て込むルートであることを特徴とする地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法であって、
前記管部材はU字管であり、前記掘削孔には、前記U字管が一対で建て込まれ、
前記一対のU字管のそれぞれに対応させるべく、前記リール装置は一対設けられているとともに、前記一対のリール装置は、互いに、前記掘削孔から等距離の位置に配置されていることを特徴とする地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱交換器に使用される管部材を地面の掘削孔へ建て込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通年の温度変動の小さい地中熱を利用して建物の冷暖房等を行う地中熱利用システムが注目されている。この地中熱利用システムでは、地盤との間で採・放熱を行うべく地中に地中熱交換器が設置される。そして、例えば、夏場には地盤に放熱し、冬場には地盤から採熱する。
【0003】
この地中熱交換器は、地盤に鉛直に埋設される管部材を有する。そして、この管部材内に熱媒体を流し込むとともに、地中熱と熱交換後に当該熱媒体を取り出す等して、ヒートポンプ等へ送出して利用する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる地中熱交換器は、例えば次のようにして地中に設置される。
先ず、ボーリングマシンやオーガ等の掘削機により、地面に掘削孔を形成する。そして、掘削孔に、その上方から管部材を管軸方向に沿って下降して建て込み(挿入のこと)、しかる後に、掘削孔と管部材との間の隙間を適宜な充填材で埋め戻す。
ここで、例えば、管部材は、コイル状に巻き取った状態で現場搬入される。そして、掘削孔の略直上に吊り下げ配置されたリール装置に取り付けられて、鉛直回転しながら繰り出されて掘削孔へと建て込まれる。
【0006】
他方、この掘削孔の上方というのは、実際に建て込む位置なので、建て込み状態の監視など種々の作業が発生し易い場所であり、つまり、作業員の立ち寄り頻度の高い場所である。そのため、上述のようにリール装置を掘削孔の略直上に吊り下げ配置すると、このリール装置との関係において上下作業となり、作業安全上好ましくない。例えば、繰り出しのためにリール装置によって鉛直回転される管部材に巻き込まれる等の危険があって、好ましくない。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、コイル状に巻き取り状態の管部材を繰り出しながら、管軸方向に沿って地面の掘削孔に下降して建て込む際に、掘削孔の上方位置の作業安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に係る発明は、
地面の掘削孔に地中熱交換器に係る管部材を管軸方向に沿って下降して建て込む方法であって、
コイル状に巻き取り状態の管部材を、前記掘削孔の側方の前記地面に置かれたリール装置に載置して取り付け、
前記巻き取り状態の管部材を前記リール装置によって水平回転することにより、前記管部材を繰り出しながら前記掘削孔へ送り、
前記コイル状に巻き取り状態の前記管部材から繰り出された管部材は、所定の建て込みルートを辿って前記掘削孔へ建て込まれ、
前記建て込みルートは、前記繰り出された管部材を、前記リール部材からの前記管部材の繰り出し位置よりも高い所定高さまで引き上げた後に、前記掘削孔へ向けて垂下して前記掘削孔へ建て込むルートであることを特徴とする地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法である。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、巻き取り状態の管部材は、掘削孔の側方の地面に置かれたリール装置に載置して取り付けられる。これにより、掘削孔の上方には、リール装置や巻き取り状態の管部材は一切配置されず、結果、掘削孔の上方位置で作業する作業員は、繰り出し時のリール装置や管部材の回転に巻き込まれる危険から解放される。よって、掘削孔の上方位置の作業安全性を高めることができる。
また、上記建て込み方法によれば、巻き取り状態の管部材をリール装置に載置した状態で、水平回転して管部材を繰り出す。つまり、巻き取り状態の管部材は、その巻き取り芯の向きを鉛直方向に向けて載置された姿勢という最も安定した姿勢で回転されて、管部材は繰り出される。よって、管部材を安定して繰り出すことができて、これも作業安全性の向上に寄与する。
【0012】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の地中熱交換器に係る管部材の掘削孔への建て込み方法であって、
前記管部材はU字管であり、前記掘削孔には、前記U字管が一対で建て込まれ、
前記一対のU字管のそれぞれに対応させるべく、前記リール装置は一対設けられているとともに、前記一対のリール装置は、互いに、前記掘削孔から等距離の位置に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記請求項2に示す発明によれば、前記一対のリール装置は、前記掘削孔から等距離の位置に配置されている。よって、リール装置同士の互いのU字管の繰り出し動作を揃えて行い易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コイル状に巻き取り状態の管部材を繰り出しながら、管軸方向に沿って地面の掘削孔に下降して建て込む際に、掘削孔の上方位置の作業安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。
図2図2Aは、地盤Gの竪孔23を透視して見た地中熱交換器21の概略側面図であり、図2Bは、図2A中のB−B断面図である。
図3図3A及び図3Bは、地中熱交換器21の設置工事の施工手順の説明図である。
図4図4A乃至図4Cは、同施工手順の説明図である。
図5図5A乃至図5Cは、同施工手順の説明図である。
図6】本実施形態に係るリール装置70の一例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
===本実施形態===
<<<地中熱交換器21について>>>
図1は、本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。図2Aは、地盤Gの竪孔23を透視して見た地中熱交換器21の概略側面図であり、図2Bは、図2A中のB−B断面図である。
【0017】
この地中熱利用システム11は、地盤Gとの間で熱交換を行う地中熱交換器21と、地中熱交換器21の熱媒体26からの熱を利用して建物1の暖房のための温水や冷房のための冷水を生成するヒートポンプ15と、循環ポンプ17とを有する。なお、ヒートポンプ15の構成は周知なので、その説明は省略する。
【0018】
図2A及び図2Bに示すように、この地中熱交換器21は、所謂「ボアホール方式」である。すなわち、地盤Gに形成された掘削孔としての竪孔23と、竪孔23に挿入されるU字管30と、竪孔23とU字管30との間の空間SP23に充填される充填材27と、を有している。そして、U字管30の一方の管端開口35aには、ヒートポンプ15から熱媒体26として水又は不凍液等が送り込まれ、当該熱媒体26は、U字管30を流れる間に地盤Gの地中熱により加熱又は冷却され、しかる後に、U字管30の他方の管端開口35bから、循環ポンプ17によりヒートポンプ15へ向けて送られて、ヒートポンプ15にて温水生成や冷水生成に供される。
【0019】
竪孔23は、ボーリングマシンやオーガ等の掘削機により地面Gにほぼ垂直に掘削された孔であり、その直径は100〜200mm、深さは30〜150mである。
【0020】
U字管30は、例えば可撓性を有する高密度ポリエチレン等の樹脂製のU字形状の管である。詳しくは、当該U字管30は、熱媒体26の流路の折り返し部分をなすU字継手部31と、U字継手部31に連結される二本の単管35,35とを有し、当該U字継手部31を竪孔23の最深部に位置させつつ、2本の単管35,35の各管端開口35a,35bを、それぞれ竪孔23の外に突出させている。そして、これら管端開口35a,35bのうちの一方35aは、ヒートポンプ15から送られる熱媒体26の取入口となり、他方35bは、地盤Gとの間で熱交換した熱媒体26をヒートポンプ15へ送り出す送出口となる。
【0021】
なお、図示例では、一つの竪孔23につき、かかるU字管30,30が一対設けられている。つまり、図2Aでは、奥側に隠れて見えないが、先端のU字継手部31,31を重ね合わせた状態で、一対のU字管30,30が竪孔23内に建て込まれており、これにより、図2Bに示すように計4本の単管35,35,35,35が配されている。よって、本実施形態では、一対のU字管30,30のひとまとまりが、請求項に係る「管部材」に相当する。但し、U字管30の数は何等一対に限るものではなく、一つでも良い。ちなみに、U字管30,30を一対で設ける場合には、建て込み時の竪孔23への挿入性を考えると、U字継手部31,31同士を互いに上下にずらして固定すると良く、このようにすれば、これらU字管30,30において建て込み時に先頭になる部分のサイズが小さくなって、竪孔23内へ建て込み易くなる。
【0022】
充填材27は、例えば、モルタル、川砂や山砂、珪砂等を基材とし、U字管30と竪孔23との間の空間SP23に密実に充填される。これにより、充填材27を介して、U字管30内の熱媒体26と地盤Gとの間で熱交換が行われる。なお、この熱交換効率を高めるべく、充填材27に対して、1〜20%の容積含有率(=長粒物の総容積/充填材27の総容積)で、炭化ケイ素、アルミナ、及び高炉スラグのうちの少なくとも何れか1種からなる長粒物を混入しても良い。
【0023】
<<<地中熱交換器21の設置工事について>>>
図3A乃至図5Cは、地中熱交換器21の設置工事の施工手順の説明図である。なお、図3A乃至図5Cでは、一部の構成を側面視で示し、それ以外の構成は縦断面視で示している。また、図の錯綜を防ぐ目的で、一部の断面部位についてはハッチングを省略している。
【0024】
先ず、図3Aに示すように、対象地盤Gに、土留め用の塩化ビニル製等の樹脂管22を、管軸方向を鉛直方向に向けつつ打ち込む。この樹脂管22は、地盤表層部の崩落を防ぐものであり、その長さは、例えば1〜5mの短尺なものである。但し、その管径にあっては、その内周側に上述の竪孔23が形成されることから、樹脂管22の内径は、竪孔23の孔径よりも若干大径に設定される。
【0025】
次に、図3Bに示すように、樹脂管22の内側の地盤Gの部分を掘削することにより、最終的に図4Aのような孔径100〜200mm、深さ30〜150mの竪孔23を形成する。この掘削は、ボーリングマシンやオーガ等の掘削機によってなされ、また、孔壁保護や削孔自体の目的で、竪孔23には、その掘削と同時並行又はその直後に、竪孔23のサイズに合ったケーシング鋼管24が挿入されている。なお、このケーシング鋼管24は無くても良い。更には、竪孔23の内側(正確には、「ケーシング鋼管24の内側」と言うべきであるが、以下では、ケーシング鋼管24も含めて単に竪孔23と言うことにする)には削孔水23wが充満している。この削孔水23wは、掘削時に使用されたものであり、つまり、掘削時に竪孔23の下方へ向けて圧送され、これにより、掘削土を泥状にして上方への排土に用いられたり、掘削面に高圧で噴射されて掘削自体を行うのに用いられたものである。よって、掘削終了時には、一般に竪孔23内には、当該使用済みの削孔水23wが充満している。
【0026】
そうしたら、この削孔水23wが充満する竪孔23内に、図4B及び図4Cに示すように、U字管30,30を、その管軸方向(単管35の管軸方向のこと)たる長手方向を鉛直方向に沿わせつつ沈降させて建て込む。
【0027】
詳しくは、先ず、U字管30をコイル状に巻き取った状態で現場搬入する。この例では、前述のように竪孔23には一対のU字管30,30が建て込まれるので、コイル状に巻き取り状態のU字管30r,30rも一対で現場搬入され、そして、地面Gに直置きされた一対のリール装置70,70に取り付けられる。そして、各リール装置70は、同巻き取り状態のU字管30rを水平回転して繰り出す。すると、繰り出されたU字管30は、竪孔23の上方に配置された引き上げ機構80により所定高さまで引き上げられた後に、竪孔23の略直上で垂下された状態で竪孔23内へ入っていくという建て込みルートを辿って順次建て込まれる。
【0028】
ちなみに、U字管30の下端部30dを建て込む際には、一対のU字管30,30のU字継手部31,31同士を重ね合わせて番線等の適宜な結束具により分離不能に結束固定し、しかる後に、竪孔23の口部23euへ一緒に挿入する。よって、それ以降は、これら一対のリール装置70,70同士は互いに連動して従動回転することにより、互いの繰り出し量を揃えながら各々担当するU字管30,30を繰り出していく。なお、この従動回転の連動性を高める、つまり、互いの繰り出し動作を揃え易くするには、一対のリール装置70,70同士は、互いに竪孔23から等距離の位置に配置されていると良い。
【0029】
図6は、リール装置70の一例の概略斜視図である。このリール装置70は、地面Gに載置される外形円形状の基台72と、この基台72と同軸且つ上方に設けられ、同基台72に水平回転自在に支持された外形円形状の載置台75とを有している。そして、載置台75上に、巻き取り状態のU字管30rが略同芯に載置され、同U字管30rが載置台75と略一体となって基台72に対して水平回転することにより、U字管30が繰り出される。
【0030】
詳しくは、基台72は、その外形をなす円環部72aと、該円環部72aの平面中心軸72acと円環部72aとを繋ぐべく放射状に配置された複数のスポーク部72b,72b…と、を有する。また、載置台75は、基台72の円環部72aよりも小径の円環部75aと、該円環部75aの平面中心軸75acと円環部75aとを繋ぐべく放射状に配置された複数のスポーク部75b,75b…と、を有する。そして、これら基台72と載置台75とは、互いの平面中心軸72ac,75acにおいて係合し、これにより、当該平面中心軸72ac,75ac周りの相対回転のみを許容するようになっている。
【0031】
また、基台72の各スポーク部72bには、ローラー部材73が回転自在に軸支されており、これらローラー部材73,73…を介して載置台75の円環部75aは、基台72の円環部72aに乗っている。そして、これにより、載置台75は、基台75に対して水平回転自在に支持されている。
【0032】
更に、載置台75のスポーク部75bにおける平面中心軸75ac側の部位には、複数のガイド棒部材76,76…が一体に立設されている。そして、これらガイド棒部材76,76…に、芯無し巻き取り状態のU字管30rの巻き取り中心部の空間が通されることにより、U字管30rは載置台75と略同芯に揃えられつつ、同載置台75のスポーク部75bに載置支持されるようになっている。
【0033】
そして、このようなリール装置70によれば、竪孔23の側方の地面Gの任意の位置に容易に設置することができる。よって、竪孔23の上方位置を、他の作業用空間として解放することができて、当該他の作業を安全に行うことができる。
【0034】
また、上述のリール装置70では、巻き取り状態のU字管30rを載置台75に載置した状態で、水平回転してU字管30を繰り出す。つまり、巻き取り状態のU字管30rは、その巻き取り芯の向きを鉛直方向に向けて載置された姿勢という最も安定した姿勢で回転されてU字管30は繰り出される。よって、U字管30を安定して繰り出すことができて、これも作業安全性の向上に寄与する。
【0035】
以上、リール装置70の一例について説明したが、これは一例であって何等上述の構成例に限るものではない。つまり、U字管30rを水平回転して繰り出し可能なリール装置70であれば、これ以外の構成のリール装置70を用いても良い。例えば、基台72や載置台75は、円板状部材を本体としても構わない。
【0036】
ところで、望ましくは、この建て込み中に、U字管30,30内への通水を行うと良い。すなわち、U字管30において少なくとも竪孔23内に建て込まれている部分については、管内に水を充満させていると良い。そして、このようにすれば、当該部分の管内空気起因の浮力の発生を無くすことができて、削孔水23w内へのU字管30,30の沈降たる建て込みを円滑に行うことが可能となる。
【0037】
また、建て込み中に、適宜タイミングで削孔水23wの水位を低下すると良い。これは、U字管30,30の密度(0.93〜0.96kg/m)が、削孔水23wの密度(約1kg/m)よりも小さいことに起因して、削孔水23wに建て込まれたU字管30,30には浮力が働いており、建て込み深さが深くなると、U字管30,30の沈降が進まなくなって、つまり建て込みが進まなくなるためである、よって、この浮力を小さくすべく、排水ポンプやエアブロー装置等により、削孔水23の液位を適宜タイミングで低下させるのが望ましい。
【0038】
以上のようにして、U字管30,30を目標の建て込み深さまで建て込んだら(図4C)、次に、各U字管30を各リール装置70から分離すべくU字管30を切断する。これにより、図5Aに示すように、U字管30の上端部30u(35a),30u(35b)が形成され、また、これら上端部30u,30uたるU字管30における両方の管端開口35a,35bは、竪孔23の口部23euよりも上方に突出した状態になる。
【0039】
次に、図5Aのようにケーシング鋼管24を挿入していた場合には、図5Bに示すようにケーシング鋼管24を上方へ引き抜いて同鋼管24を竪孔23から取り出すが、ここで、このケーシング鋼管24を引き抜く際には、ケーシング鋼管24の内周面がU字管30,30の上端部30u,30u…と接触等して、これら上端部30u,30u…が損傷する虞がある。そのため、この引き抜きの前に、図5Aのように、U字管30,30の上端部30u,30u…には、保護キャップ90を被せている。
【0040】
保護キャップ90は、円筒部90aを本体とする。そして、この円筒部90aの外径は、ケーシング鋼管24の内径よりも小さく、且つ、同円筒部90aの内径は、一対のU字管30,30の計4本の上端部30u,30u…をひとまとめに収容可能な寸法に設定されている。また、同円筒部90aは、蓋部90bを有する有蓋円筒体であり、U字管30,30の上端部30u,30u…の上に蓋部90bが乗ることにより、保護キャップ90はU字管30,30に吊り下げ支持され、更に、保護キャップ90は或る程度の重みを有するステンレス鋼等の金属製である。
【0041】
よって、図5Bに示すように、上方へ引き抜かれるケーシング鋼管24と大きく干渉することも無く、また、その重みに基づいて保護キャップ90は確実にU字管30,30の上端部30u,30u…にしっかりと留まることができて、結果、効果的にU字管30,30の上端部30u,30u…の損傷を防ぐ。
【0042】
そして、このケーシング鋼管24の引き抜き作業が終わったら、最後に、図5Cに示すように竪孔23内に充填材27を入れてU字管30,30を埋め、これにより、地中熱交換器21の設置工事が完了する。
【0043】
この充填材27を入れる方法としては、例えば漏斗95を用いることが挙げられ、また、その場合には、U字管30,30の上端部30u,30u…には上述の保護キャップ90を被せたままにしておく。すなわち、竪孔23の内周面と保護キャップ90の外周面との間に、漏斗95の下端部の略円筒部95pが入るように漏斗95を配置する。また、この時、漏斗95の下端部たる略円筒部95pの内周面と保護キャップ90の外周面との間にはクリアランスが形成されるように配置する。
【0044】
そうしたら、充填材27を貯留するホッパー98を漏斗95の上方にミニクレーン99等で持ち上げ、その状態でホッパー98の下端開口98aを開く。すると、漏斗95上に充填材27が落下するが、これら落下した充填材27は、漏斗95上を滑落しながらその平面中心側へと誘導されて、同漏斗95の下端部の略円筒部95pと保護キャップ90との間のクリアランスを通って竪孔23内へと順次落ちていく。これにより、充填材27が竪孔23内に充填されてU字管30,30が埋設される。なお、この時、ホッパー98から落下する充填材27は保護キャップ90に当たるが、このことにより、U字管30,30の上端部30u,30u…は充填材27の衝突から保護されるので、同上端部30u,30u…の損傷は確実に防止される。
【0045】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0046】
上述の実施形態では、管部材の一例として樹脂製の一対のU字管30,30を例示したが、管形状は何等U字状に限るものではない。
例えば、二重管式の地中熱交換器の場合には、同熱交換器の本体として、外筒と、外筒内に挿入配置される内筒とが使用され、そして、外筒としては、下端部が密閉封止された単管状の管部材が竪孔に建て込まれることになるが、当該単管状の管部材であっても本発明に係る建て込み方法を適用可能である。
なお、この単管状の管部材の一例としては、コルゲート管(corrugated pipe:波形管)が挙げられ、当該管によれば、その外周面及び内周面の螺旋波形形状に基づく表面積の拡大効果により、地盤Gとコルゲート管内の熱媒体との熱交換効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 建物、11 地中熱利用システム、15 ヒートポンプ、17 循環ポンプ、
21 地中熱交換器、22 樹脂管、23 竪孔(掘削孔)、23eu 口部、
23w 削孔水、24 ケーシング鋼管、26 熱媒体、27 充填材、
30 U字管(管部材)、30u 上端部、30d 下端部、
30r 巻き取り状態のU字管(巻き取り状態の管部材)、31 U字継手部、
35 単管、35a 管端開口、35b 管端開口、70 リール装置、
72 基台、72a 円環部、72ac 平面中心軸、72b スポーク部、
73 ローラー部材、75 載置台、75a 円環部、75ac 平面中心軸、
75b スポーク部、76 ガイド棒部材、80 引き上げ機構、
90 保護キャップ、90a 円筒部、90b 蓋部、95 漏斗、
95p 略円筒部、98 ホッパー、98a 下端開口、99 ミニクレーン、
SP23 空間、G 地盤(地面)
図2
図3
図6
図1
図4
図5