特許第5678656号(P5678656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678656
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】合わせガラスの予備接着装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
   C03C27/12 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-294447(P2010-294447)
(22)【出願日】2010年12月29日
(65)【公開番号】特開2012-140298(P2012-140298A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145632
【弁理士】
【氏名又は名称】小出 誠
(72)【発明者】
【氏名】森 武志
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167242(JP,A)
【文献】 特開平05−004842(JP,A)
【文献】 特許第5521458(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 17/10
B32B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲ガラス板間に中間膜を挟んで積層させた湾曲積層ガラス板を両外側面より押圧挟持して、前記湾曲ガラス板同士を前記中間膜によって接着させる予備接着装置であって、
前記湾曲積層ガラス板の搬送方向とは直交する方向で前記湾曲積層ガラス板の湾曲面に沿うように前記湾曲積層ガラス板を上下に挟み込むように配置された上部屈曲自在ロール及び下部屈曲自在ロールと、
前記上部屈曲自在ロールに接続又は当接され、前記上部屈曲自在ロールを下方へ押圧する複数の独立した上部屈曲自在ロール押圧手段と
前記下部屈曲自在ロールに接続又は当接され、前記下部屈曲自在ロールを上方へ押圧する複数の独立した下部屈曲自在ロール押圧手段と
前記上下の屈曲自在ロールの中心軸に沿う方向の前記湾曲ガラス板の有無を検出するガラス検出手段と、
前記ガラス検出手段の検出結果に基づき、前記上部屈曲自在ロールの湾曲姿勢を前記湾曲積層ガラス板に沿うように調整する上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段とを有し、
前記上部屈曲自在ロール押圧手段と前記下部屈曲自在ロール押圧手段とのうちの少なくとも一方に、予め設定したプログラムに従って、前記押圧手段の個々の高さを変化させることで前記押圧手段に接続又は当接されている前記屈曲自在ロールの形状を変化させる高さ調整手段を設けたことを特徴とする合わせガラスの予備接着装置。
【請求項2】
前記上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段は、
上下に伸縮自在な複数個の押付手段と、
前記押付手段の伸縮方向に空間を空けて設置される押付部材とから構成されており、
前記押付手段又は前記押付部材の一方が、前記上部屈曲自在ロールか又は前記上部屈曲自在ロール押圧手段かのいずれかに備えられていることを特徴とする請求項に記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項3】
前記上部屈曲自在ロール及び前記下部屈曲自在ロールは、複数の剛性の自在継手を直列に連結した一本の芯材にリング状の複数のリング材をはめ込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項4】
前記上部屈曲自在ロール及び前記下部屈曲自在ロールは、
それぞれ屈曲自在ロールを構成する自在継手を支持する軸受を介してそれぞれ前記上部屈曲自在ロール押圧手段と前記下部屈曲自在ロール押圧手段に接続されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載の合わせガラスの予備接着装置。
【請求項5】
前記上部屈曲自在ロールと前記下部屈曲自在ロールとの少なくてもいずれか一方の中心軸を回転軸として回転駆動を与える屈曲自在ロール駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載の合わせガラスの予備接着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスの予備接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合わせガラスは、複数枚のガラス板間に中間膜としてPVB(ポリ・ビニル・ブチラール)製の樹脂シートを挿入して重ね合わせて、オートクレーブで加熱と加圧を行い、該中間膜によって前記ガラス板同士を接着させることによって製造される。
【0003】
前記合わせガラスを接着させる工程において、ガラス板間に気泡等が残ると、その気泡により、透視性能が損なわれたり、前記ガラス板間の接着力の低下による合わせガラスのガラス板同士がはがれたりといった不具合が生じることがある。
【0004】
そのため、前記オートクレーブで加熱及び加圧を行うことによって前記中間膜を熱溶融させて前記ガラス板同士を本接着させる前に、予備接着工程において、前記ガラス板同士を押圧し、前記ガラス板間の脱気を十分に行うことが必要である。
【0005】
自動車窓用の合わせガラスの予備接着工程においては、該合わせガラスが三次元に湾曲した形状をしているため、その形状に追従するように該ガラス面を均一に押圧するためのさまざまな手段が提案されている。
【0006】
特開2002−167244号公報には、搬送される中間膜を挟んだ湾曲積層ガラスをその湾曲面の両面より縦断面形状に沿って角度調整自在な複数のロール群によって加圧する予備接着装置において、前記湾曲ガラスを傾斜角度自在に搬出入させる搬出入手段と、上部側ロール群と下部側のロール群からなる押圧ロール群と、上下各押圧ロールは、それぞれ湾曲ガラス面の法線方向で対となるように配置され、各押圧ロール毎にガラス面に押圧させる押圧シリンダを設け、該押圧シリンダ内の圧力を一定にさせる圧力調整弁とからなるロール押圧手段と、前記上下の各押圧シリンダの支持点を水平方向に設けた上下の横フレームに設けた各長孔内で位置移動可能に支持して、湾曲ガラスへの押圧角度を調整自在とした角度調整手段と、前記上下の横フレームの両端を縦フレームと連結して方形の本体支持枠とし、その縦フレームの略中心部に設けた支持軸で前記本体支持枠を回動自在とする回動手段と、前記湾曲ガラスを押圧ロール群間で移動させ、その移動速度を調整自在な駆動手段とからなり、湾曲ガラスの搬送速度に合わせて上下のロール群をガラス曲面の法線方向としたことを特徴とする積層ガラスの予備接着装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−167242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された合わせガラスの予備接着装置に関する発明においては、中間膜をガラス板の間に挟んだ湾曲積層ガラス板を両外側面より押圧する押圧ロールがガラス板の湾曲面に追従する首振り機構を有するため、前記ガラス板のエッジが、前記押圧ロールがその回転軸方向に前記ガラス板のエッジをまたぐ場合に、前記押圧ロールの軸が傾き、前記ガラス板のエッジ周辺を十分に押圧できず、脱気不十分による接着ムラが生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みて、合わせガラスの予備接着工程において、湾曲した自動車用の合わせガラスをエッジ部分も含めて、該ガラス板を搬送方向と直交する全幅方向に亘って均等の圧力で押圧し、合わせガラス端部での接着ムラを発生させないことを目的とする。
【0010】
すなわち本発明は、湾曲ガラス板間に中間膜を挟んで積層させた湾曲積層ガラス板を両外側面より押圧挟持して、前記湾曲ガラス板同士を前記中間膜によって接着させる予備接着装置であって、前記湾曲積層ガラス板の搬送方向とは直交する方向で前記湾曲積層ガラス板の湾曲面に沿うように前記湾曲積層ガラス板を上下に挟み込むように配置された上部屈曲自在ロール及び下部屈曲自在ロールと、前記上部屈曲自在ロールに接続又は当接され、前記上部屈曲自在ロールを下方へ押圧する複数の独立した上部屈曲自在ロール押圧手段と、前記下部屈曲自在ロールに接続又は当接され、前記下部屈曲自在ロールを上方へ押圧する複数の独立した下部屈曲自在ロール押圧手段とを有し、前記上部屈曲自在ロール押圧手段と前記下部屈曲自在ロール押圧手段とのうちの少なくとも一方に、予め設定したプログラムに従って、前記押圧手段の個々の高さを変化させることで前記押圧手段に接続又は当接されている前記屈曲自在ロールの形状を変化させる高さ調整手段を設けたことを特徴とする合わせガラスの予備接着装置である。
【0011】
あるいはまた本発明は、前記上下の屈曲自在ロールの中心軸に沿う方向の前記湾曲ガラス板の有無を検出するガラス検出手段と、前記ガラス検出手段の検出結果に基づき、前記上部屈曲自在ロールの湾曲姿勢を前記湾曲積層ガラス板に沿うように調整する上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段とを有することを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0012】
あるいはまた本発明は、前記上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段が、上下に伸縮自在な複数個の押付手段と、前記押付手段の伸縮方向に空間を空けて設置される押付部材とから構成されており、前記押付手段又は前記押付部材の一方が、前記上部屈曲自在ロールか又は前記上部屈曲自在ロール押圧手段かのいずれかに備えられていることを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置。
【0013】
あるいはまた本発明は、前記上部屈曲自在ロール及び前記下部屈曲自在ロールが、複数の剛性の自在継手を直列に連結した一本の芯材にリング状の複数のリング材をはめ込んだことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0014】
あるいはまた本発明は、前記上部屈曲自在ロール及び前記下部屈曲自在ロールが、それぞれ屈曲自在ロールを構成する自在継手を支持する軸受を介してそれぞれ前記上部屈曲自在ロール押圧手段と前記下部屈曲自在ロール押圧手段に接続されていることを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【0015】
あるいはまた本発明は、前記上部屈曲自在ロールと前記下部屈曲自在ロールとの少なくても一つの中心軸に沿って回転駆動を与える屈曲自在ロール駆動手段を設けたことを特徴とする上述の合わせガラスの予備接着装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、合わせガラスの予備接着工程において、予備接着装置の屈曲自在ロール間を湾曲積層ガラスが通過している間に、前記押圧手段に設けた高さ調整手段がプログラムに基づいて動作し、前記押圧手段に接続された屈曲自在ロールの形状を時々刻々と変化する湾曲形状に沿うように変化させられるようにしたことにより、常に前記屈曲自在ロールを湾曲積層ガラス板面に当接させることができるようになり、湾曲積層ガラス板の全幅に渡り、押圧力を常に均一にすることができるようになった。
【0017】
さらにまた、搬送される前記湾曲積層ガラス板を上下に配置された前記屈曲自在ロールで挟み込んで押圧する際に、前記合わせガラスの予備接着装置に備えたガラス検出手段によって前記積層ガラス板の搬送方向と直交する全幅方向でのガラス板の有無を検出し、前記ガラス検出手段の検出結果に基づいて、前記上部屈曲自在ロールの下を前記湾曲積層ガラス板のエッジ部が通過する際に、前記上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段によって、予め上部屈曲自在ロールの湾曲姿勢を保持することができるようになり、前記エッジ部も均一に押圧できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係わる合わせガラスの予備接着装置の正面図。
図2】本発明の実施形態に係わる合わせガラスの予備接着装置の断面拡大図。
図3】本発明の実施形態に係わる屈曲自在ロールの回転軸方向の断面図。
図4】本発明の実施形態に係わる屈曲自在ロールの斜視図。
図5】本発明の実施形態に係わる合わせガラスの予備接着装置に湾曲積層ガラス板を通過させたときの、押付手段及び押付部材の動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の予備接着装置は、図1に示すように湾曲積層ガラス板Gの下面の形状に従って下部屈曲自在ロール30’が屈曲して当接するように調整され、その動作に従って湾曲積層ガラス板Gの上面に沿って上部屈曲自在ロール30が屈曲して当接するように調整されている。
【0021】
上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’は、それぞれの両端が上部屈曲自在ロール駆動軸42及び下部屈曲自在ロール駆動軸43に接続されている。
【0022】
上部屈曲自在ロール駆動軸42及び下部屈曲自在ロール駆動軸43への駆動力の伝達は、支柱3の片端に取り付けられた屈曲自在ロール駆動モーター40の駆動力が屈曲自在ロール駆動力左右連結軸41及び複数のプーリー44と複数のベルト45とを介してなされる。
【0023】
上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’は、それぞれ複数個所で上部屈曲自在ロール支持具11及び下部屈曲自在ロール支持具21を介して上部屈曲自在ロール押圧手段10、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20及び下部屈曲自在ロール位置決め部材と後述する方法で接続されている。なお、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段は、下部屈曲自在ロール押圧手段としても機能する。
【0024】
また、上部屈曲自在ロール押圧手段10、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20及び下部屈曲自在ロール位置決め部材23は、それぞれ上部フレーム4及び下部フレーム5に固定されており、下部屈曲自在ロール30’の中央付近のフレーム5には下部屈曲自在ロール位置決め部材23が複数本固定されており、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20は、下部屈曲自在ロール位置決め部材23を左右に挟むようにフレーム5に固定されている。
【0025】
下部屈曲自在ロール位置決め部材23は、高さの固定された剛性のフレーム材であり、下部屈曲自在ロール位置決め部材23と接続される下部屈曲自在ロール支持具21’を介して下部屈曲自在ロール支持具の中央部付近の位置及び高さを固定する。この高さが、下部屈曲自在ロール30’の基準の高さとなる。
【0026】
各下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20にはそれぞれの下部屈曲自在ロールの高さを調整するための高さ調整手段として昇降用サーボモーターを備えており、上部屈曲自在ロール押圧手段10は、ベロフラムシリンダーを備えており、常に一定の押圧力により通過する湾曲積層ガラス板Gを押圧する。
【0027】
各下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に備えられた各サーボモーターは、予備接着させる湾曲積層ガラス板Gの湾曲形状に合わせて、それぞれ動作が予めプログラムされており、下部屈曲自在ロール30’の上を通過する湾曲積層ガラス板Gの湾曲形状が時間変化することに従って、各下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20の高さを変化させ、下部屈曲自在ロール30’が常に湾曲積層ガラス板の湾曲面の形状に追随できるように動作する。
【0028】
上部屈曲自在ロール押圧手段10は、ベロフラムシリンダーを備えているため、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20の動作に追随して、湾曲積層ガラスGの湾曲面に合わせて上部屈曲自在ロールの湾曲形状を変化させつつ、湾曲積層ガラスGの湾曲面に与える押圧力を均一に維持することができる。
【0029】
上部屈曲自在ロール押圧手段10には、上部屈曲自在ロール30への湾曲積層ガラスGが入る入口側と出る出口側とに対になるように一つずつガラス検出手段50が設置されており、ガラス検出手段の下を湾曲積層ガラス板Gが通過しているか否かを検出する。
【0030】
ガラス検出手段50としては、光電センサーを用いており、ガラス検出手段50の直下を湾曲積層ガラス板Gが通過するときに、湾曲積層ガラス板Gの湾曲面で反射される反射光を検出することで、ガラスの在ることを検出する。
【0031】
ガラス検出手段50の検出結果に基づいて各ガラス検出手段と組み合わされる各上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60を動作させる。前記ガラス検出手段の下を湾曲積層ガラス板Gが通過する場合には、前記上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60を動作せず、前記ガラス検出手段の下を湾曲積層ガラス板Gが通過しない場合には、前記上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60が動作し、前記湾曲積層ガラス板Gの幅方向のエッジ部において上部屈曲自在ロールが傾いてしまうことによる前記エッジ部における押圧力の不均一を防いでいる。
【0032】
上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60は、各上部屈曲自在ロール押圧手段10にそれぞれ取付けられた上下に伸縮自在なシリンダーで構成される押付手段61と、それぞれの押圧手段61と対となるように下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に取付けられた押付部材62とから構成されており、押付手段61が、押付部材62を押付けることによって発生する抗力により、上部屈曲自在ロール支持具11が持ち上げられることにより、上部屈曲自在ロールが持ち上げられ、湾曲積層ガラス板Gのエッジ部上の上部屈曲自在ロール30が湾曲積層ガラス板Gの湾曲面に沿うように補正し、湾曲積層ガラス板Gのエッジ部を含む湾曲ガラス板Gの全幅に渡って押圧力を均一とする。
【0033】
上部屈曲自在ロール30の中央部付近に設置されている少なくても一本の上部屈曲自在ロール押圧手段10には、ガラス検出手段50および押付手段61は取付けられていない。それら以外の上部屈曲自在ロール押圧手段10にはガラス検出手段50及び押付手段61が湾曲積層ガラス板Gの搬送方向とは垂直となる全幅方向に並ぶように取付けられている。それぞれの上部屈曲自在ロール押圧手段10上での押付手段61及びガラス検出手段50の位置関係は、それぞれの上部屈曲自在ロール押圧手段10の設置位置から見て、湾曲積層ガラス板Gの前記全幅の中心方向に上部屈曲自在ロール押圧手段10を搬送方向の前後に挟むように一対のガラス検出手段50が取付けられ、前記全幅の端方向に押付手段61が取付けられている。
【0034】
各上部屈曲自在ロール押圧手段10に取付けられているガラス検出手段50と押付手段61とは一つのペアとして動作し、あるガラス検出手段50の下部を湾曲積層ガラス板Gが通過しない場合には、前記ガラス検出手段50とペアとなっている押付手段61が、その対となっている押付部材62を押付け、その抗力によって、前記ガラス検出手段50と前記押付手段61とを備えている上部屈曲自在ロール押圧手段10が接続されている上部屈曲自在ロール支持具11を介して、前記ガラス検出手段50の付近の上部屈曲自在ロールを押し上げる。
【0035】
図3は、屈曲自在ロール30、30’の回転軸方向の断面図であり、図4は、屈曲自在ロール30、30’の斜視図である。
【0036】
屈曲自在ロール30、30’は、複数の剛性の屈曲ロッド材31が自在継手によって連結されて屈曲自在な芯材を構成しており、各屈曲自在ロッド材31には、それぞれ弾性リング材32が固定されている。
【0037】
弾性リング材32、32’は、屈曲自在ロッド材31、31’に結合しており、剛性を有する筒状部材32a、32a’と筒状部材32a、32a’の外側を覆っており、湾曲積層ガラス面Gと当接させられる筒状弾性部材32b、32b’から構成されている。筒状弾性部材32b、32b’の材質としてはゴムなどの硬質樹脂が用いられる。
【0038】
各屈曲自在ロッド材31、31’には、屈曲自在ロール軸受部材33、33’が、屈曲ロッド材回動軸受33a、33a’を介して接続されており、図4に示すように前後に軸受34、34’を設けている。
【0039】
図2は、図1のa-a'の断面の上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’付近の拡大図である。
【0040】
上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’は、それぞれ屈曲自在ロール軸受部材33、33’に設けられた軸受34、34’で、上部屈曲自在ロール押圧手段10に備えられた上部屈曲自在ロール支持具11及び下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に備えられた下部屈曲自在ロール支持具21に接続され、その接続部はそれぞれ上部屈曲自在ロール軸受部材首振部12及び下部屈曲自在ロール軸受部材首振部22として機能し、湾曲積層ガラス板Gの通過に従って変化する湾曲面に沿って上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’が湾曲面に対して垂直に向くように傾きが調整される。
【0041】
次に本予備接着装置の動作について説明する。
【0042】
本予備接着装置によって予備接着される湾曲積層ガラス板Gは、本発明の予備接着装置の搬送方向の前後に備えられている図示されていない搬送コンベヤによって、本発明の予備接着装置1まで搬送される。
【0043】
本発明の予備接着装置1に進入した湾曲積層ガラス板Gは、上部屈曲自在ロール30と下部屈曲自在ロール30’との間に挟まれ、各屈曲自在ロール30、30’の回転によって搬送方向の推進力が与えられ、湾曲積層ガラス板Gは、上部屈曲自在ロール30と下部屈曲自在ロール30’との間を進行するのに従って、上部屈曲自在ロール30の押圧力によって湾曲積層ガラス板Gが脱気され湾曲積層ガラス板Gを構成するガラス板間に挟まれる中間膜とが予備接着される。
【0044】
下部屈曲自在ロール30’を通過する湾曲積層ガラス板Gの湾曲形状に沿わせて湾曲させる下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20は、それぞれの下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に備えられている昇降用サーボモーターの動作が、予め湾曲積層ガラス板Gの形状及び搬送速度を考慮してプログラムされており、湾曲積層ガラス板Gの通過に従って逐次高さ調整が行われ、下部屈曲自在ロール30’の湾曲形状が常に通過中の湾曲積層ガラス板の湾曲形状に沿うように調整している。
【0045】
上部屈曲自在ロール30を押圧する各上部屈曲自在ロール押圧手段10は、それぞれベロフラムシリンダーを備えているため、下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20の昇降サーボモーターの動きに追随して、上部屈曲自在ロール30の高さが調整されるとともに、常に一定の押圧力を発生させている。
【0046】
また、上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’を構成する個々の屈曲ロッド材31、31’は、それぞれ軸受34、34’を介して上部屈曲自在ロール押圧手段10及び下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に接続されているため、個々の屈曲ロッド材31、31’には湾曲積層ガラスGの搬送方向とは垂直方向となる幅方向に対する動作に自由度が生じ、湾曲積層ガラス板Gの湾曲面に各屈曲ロッド材31、31’に結合する各弾性リング材32、32’が垂直に当接するように各弾性リング材32、32’の傾きが調整されるため、本発明の予備接着装置によって湾曲積層ガラス板Gのほぼ全ての領域で均一な押圧力で予備接着することが可能となる。
【0047】
また、湾曲積層ガラス板Gは、図5(a)に示すように、長方形ではないため、上部屈曲自在ロール30と下部屈曲自在ロール30’との間を湾曲ガラス板Gが通過中、湾曲積層ガラス板Gと当接する上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’の範囲が時間変化する。
【0048】
従来の予備接着装置においては、図5(b)に示すように、湾曲ガラス板Gのエッジにおいて、ロールの一部が湾曲積層ガラス板Gからはみ出してしまうことがあった。図5(b)のようにロールが湾曲積層ガラス板Gからはみ出してしまうと、湾曲ガラス板Gのエッジにおいて、ロールが湾曲積層ガラス板Gの湾曲面に対して垂直に当接しないため、湾曲積層ガラス板Gの周辺で押圧力の不均一が生じ、湾曲積層ガラスの接着ムラの生じる原因となっていた。
【0049】
このような課題に対して、本発明の予備接着装置は、上部屈曲自在ロール30と下部屈曲自在ロール30’との湾曲積層ガラスGに当接する範囲を検出するために、本装置の中央部に取付けられた上部屈曲自在ロール押圧手段を除いて全ての上部屈曲自在ロール押圧手段に、それぞれの上部屈曲自在ロール押圧手段を挟むように湾曲積層ガラス板Gの搬送方向の前後に一対となるようにガラス検出手段50を取付けて、各一対のガラス検出手段に対応する上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60を備え、ガラス検出手段50の検出結果を受けて上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60を作動させて湾曲積層ガラス板Gのエッジ部においても均一な押圧力を与えることを可能とした。
【0050】
上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段の動作について図5を用いて説明する。
【0051】
上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60は、各上部屈曲自在ロール押圧手段10に設置された押付手段61とその直下に位置し各下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段20に設置された押付部材62とから構成されている。
【0052】
図5(a)において、図に記した複数の破線の各破線間の間隔は、上部屈曲自在ロール30を構成する各弾性リング材の幅を表すものであり、図の左側に記した番号は、各弾性リング材と湾曲積層ガラス板Gの位置関係を説明するために便宜上振ったものである。また、図中に描いた矢印は、湾曲積層ガラス板Gの搬送方向である。
【0053】
左右端の各屈曲ロッドの端部及び、それぞれの弾性リング材と弾性リング材の間にはそれぞれガラス検出手段50と各ガラス検出手段50と対となる押付手段61及び押付部材62が取付けられている。
【0054】
各弾性リング材間に設置されている各一対のガラス検出手段50と押付手段61とは、ガラス検出手段50が、それぞれ上部屈曲自在ロール30の中心側になるように、押付部材は上部屈曲自在ロール30の端部側になるように配置されている。
【0055】
上記のようにそれぞれのガラス検出手段50が配置されているため、あるガラス検出手段50の下部を湾曲積層ガラス板Gが通過しない場合には、そのガラス検出手段50と湾曲積層ガラス板Gの搬送方向に重なっている弾性リング材の一部が湾曲積層ガラス板Gの上に載っていないと見なすことができる。
【0056】
そのため、ある場所に設置されているガラス検出手段50の下部を湾曲積層ガラス板Gが通過しないときに、そのガラス検出手段50とペアとなる押付手段61が押付部材62を押付けるように動作するように設定されていると、そのガラス検出手段50と湾曲積層ガラス板の搬送方向に重なっている弾性リング材をその押付手段61が取付けられている上部屈曲自在ロール押圧手段10の上部屈曲自在ロール支持具11を介して押し上げることができ、湾曲積層ガラス板Gの端部に位置する弾性リング材を湾曲積層ガラス板Gに沿うように湾曲積層ガラス板Gに当接させることができるようになる。
【0057】
各ガラス検出手段50は、各ガラス検出手段50と湾曲積層ガラス板Gの搬送方向に重なり合う弾性リング材に関して、その上部屈曲自在ロール30の端部側から1/3以上の領域に湾曲積層ガラス板Gが載らない場合に、その下部を湾曲積層ガラス板Gが通過していないと認識できるように取付け位置が調整されていることが望ましい。
【0058】
各弾性リング材に関して、その上部屈曲自在ロール30の端部側から1/3以上の領域に湾曲積層ガラス板Gが載らない場合に、湾曲積層ガラス板Gが載らなかった弾性リング材の外側に位置する押付部材61が動作すると仮定して、図5(a)を用いて、上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段の動作の具体例を示す。例えば湾曲積層ガラス板Gのb-b'が上部屈曲自在ロールと下部屈曲自在ロールとの間に位置しているときは、弾性リング材のうち[1][2][10][11]が湾曲ガラス板Gに載らない状態になっている。
【0059】
このとき、図5(c)に示されるように弾性リング材[1]の左側及び[1]と[2]の間に設置されている押付手段61に備えられているシリンダーが下降し、その直下にあり下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段に設置されている押付部材62に当接し、それぞれの押付手段61が取付けられている上部屈曲自在ロール押圧手段10の上部屈曲自在ロール支持具を介して弾性リング材[1]及び[2]の左側を押し上げる。同時に、弾性リング材[11]の右側及び[10]と[11]の間に設置されている押付手段61も作動し、その直下にあり下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段に設置されている押付部材62に当接し、それぞれの押付手段61が取付けられている上部屈曲自在ロール押圧手段10の上部屈曲自在ロール支持具を介して弾性リング材[10]の右側及び[11]を押し上げる。
【0060】
弾性リング材[1]から[11]は、全て自在継手によって連結されているため、[1]及び[2]の左側並びに[10]の右側及び[11]が持ち上げられると、隣接する弾性リング材も持ち上げられ、上部屈曲自在ロールは全幅方向で湾曲積層ガラス板Gの湾曲面に沿うようにその傾きが補正される。
【0061】
図5(a)において、湾曲積層ガラス板Gがさらに進みc−c’付近が予備接着装置1まで到達すると、屈曲ロッド[2][3]の間に備えられているガラス検出手段50が、ガラスを検出できなくなる。この検出結果を受けて、屈曲ロッド[2][3]の間にある押付手段のシリンダーが下がり、直下に存在している押付部材に当接され、その押付手段61が取付けられている上部屈曲自在ロール押圧手段10の上部屈曲自在ロール支持具を介して屈曲ロッド[3]を持ち上げる。
【0062】
その結果、図5(d)に示すようになり、弾性リング材[1]の左側と[1]と[2]との間並びに[10]と[11]の間及び[11]の右側に設置されている押付手段だけではなく、弾性リング材[2][3]の間に設置されている押付手段も作動して、上部屈曲自在ロールの弾性リング材[1][2]及び[3]の左側並びに[10]の右側及び[11]が押付部材で持ち上げられ、上部屈曲ロールの湾曲形状が湾曲積層ガラス板Gの湾曲形状に沿うように調整される。
【0063】
さらに湾曲積層ガラス板Gが進みd−d’が予備接着装置1付近まで到達すると、次は、弾性リング材[2][3]の間のガラス検出手段がガラスを検出する。この検出結果を受けて、弾性リング材[2][3]の間に備えられている押付部材のシリンダーが上がり、湾曲積層ガラス板Gに均一な押圧力を与えることを可能とした。
【0064】
このように、湾曲積層ガラス板Gの通過に合わせてガラス板の通過しない弾性リング材間に備えられている押付部材のシリンダーのみを下げることによって、湾曲ガラス板のエッジ部もそれ以外の領域と同様の押圧力で押圧できるようになり、湾曲ガラス板Gの全面を均一の押圧力で予備接着できるようになり、脱気不十分による接着ムラをなくすことができるようになった。
【0065】
本発明の予備接着装置おいては、上部屈曲自在ロール30と下部屈曲自在ロール30’との両方を回転駆動させたが、いずれか片方のみを駆動させるだけでもよい。
【0066】
また、上部屈曲自在ロール30及び下部屈曲自在ロール30’は、それぞれ上部屈曲自在ロール押圧手段10と下部屈曲自在ロール湾曲姿勢調整手段20との接続がそれぞれ上下の屈曲自在ロール支持具11、21と各屈曲自在ロール30、30’に備えられている屈曲自在ロール軸受部材33、33’とを接続させているが、必ずしもこのようにする必要はなく、例えば、上部屈曲自在ロール押圧手段と下部屈曲自在ロール湾曲姿勢調整手段とのそれぞれに車輪を備え、その車輪を上部屈曲自在ロール及び下部屈曲自在ロールに当接させるようにしてもよい。
【0067】
また下部屈曲自在ロール湾曲姿勢調整手段20に用いているサーボモーターは、必ずしも湾曲積層ガラス板Gの下部側に設ける必要はなく、上部側に設けることが可能である。この場合には、湾曲積層ガラス板Gが、上下の屈曲自在ロール間を通過する際に、湾曲積層ガラス板Gのエッジ周辺にかかる位置に設けられているサーボモーターの動作による押圧力をプログラムによって調整しておくことにより、前記エッジ部で弾性リング材が傾くことを防ぐことができるため、本実施例で用いたような押付手段及び押付部材を用いずに予備接着装置を構成することが可能である。このように、上部側にサーボモーターを設ける場合には、下部側にベロフラムシリンダーに設けておくか、もしくは下部側も湾曲姿勢及び押圧力をサーボモーターによるプログラムで制御することが、下部側から湾曲積層ガラス板Gを均一に押圧する上で必要となる。
【0068】
また、ガラス検出手段50と上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段60は、必ずしも屈曲自在ロール30、30’の全幅にわたって備える必要はなく、屈曲自在ロール30、30’の端部で湾曲積層ガラスが通らない可能性がある範囲にのみ備えるようにしてもよい。
【0069】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【符号の説明】
【0070】
G 湾曲積層ガラス板
1 予備接着装置
2 架台
3 支柱
4 上部フレーム
5 下部フレーム
10 上部屈曲自在ロール押圧手段
11 上部屈曲自在ロール支持具
12 上部屈曲自在ロール軸受部材首振部
20 下部屈曲自在ロール湾曲形状調整手段
21 下部屈曲自在ロール支持具
22 下部屈曲自在ロール軸受部材首振部
23 下部屈曲自在ロール位置決め部材
30、30’ 屈曲自在ロール
31、31’ 屈曲ロッド材
32、32’ 弾性リング材
32a、32a’ 筒状部材
32b、32b’ 筒状弾性部材
33、33’ 屈曲自在ロール軸受部材
33a、33a’ 屈曲ロッド材回動軸受
34、34’ 軸受
40 屈曲自在ロール駆動モーター
41 屈曲自在ロール駆動力左右連結軸
42 上部屈曲自在ロール駆動軸
43 下部屈曲自在ロール駆動軸
44 プーリー
45 ベルト
50 ガラス検出手段
60 上部屈曲自在ロール湾曲姿勢安定化手段
61 押付手段
62 押付部材
図1
図2
図3
図4
図5