(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る作業車両の空調構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る空調構造を備えるトラクタの概略図である。なお、以下の説明では、本実施形態に係る空調構造によって空調装置70(
図12参照)が備えられるトラクタ1の通常の使用態様時における前後方向、左右方向、上下方向を、各部位においてもそれぞれ前後方向、左右方向、上下方向として説明する。圃場等で作業を行う作業車両であり、本実施形態に係る空調構造によって空調装置70が備えられるトラクタ1は、操舵用の車輪として設けられる前輪3と、駆動用の車輪として設けられる後輪4とを有している。このうち、後輪4には、機体前部のボンネット6内に搭載されるエンジン(図示省略)で発生した回転動力を、変速装置7で適宜減速して伝達可能になっており、後輪4は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置7は、エンジンで発生した回転動力を、必要に応じて前輪3にも伝達可能になっており、この場合は、前輪3と後輪4との四輪で駆動力を発生する。即ち、変速装置7は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっている。
【0015】
また、後輪4の上方から前方にかけた位置には、後輪4を覆うことにより後輪4で巻き上げた土の飛散を抑えるフェンダー33が設けられている。さらに、トラクタ1の機体後部には、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能な連結装置8が配設されている。
【0016】
図2は、
図1に示すキャビンの斜視図である。トラクタ1は、運転者がトラクタ1の操縦時に入り込むキャビン10を有している。このキャビン10は、上部にルーフ12を有しており、さらに、キャビン10を構成すると共にトラクタ1の上下方向に向かって形成される縦支柱であるピラーを複数有している。即ち、キャビン10は、複数のピラーとして、フロントピラー15と、センターピラー16と、リアピラー17と、を有しており、これらのピラーは、それぞれトラクタ1の左右方向における両側に1つずつが配設されている。
【0017】
このうち、フロントピラー15は、トラクタ1の前後方向におけるルーフ12の前端付近から下方に向かって形成されており、リアピラー17は、ルーフ12の後端付近から下方に向かって形成されている。また、センターピラー16は、前後方向におけるフロントピラー15とリアピラー17との間の位置に配設されており、ルーフ12から下方に向かって形成されている。キャビン10は、透明のガラス等がこれらのピラーに取り付けられることにより、閉塞された空間を内部に形成しつつ、内側から外部を視認することが可能になっている。
【0018】
詳しくは、左右のフロントピラー15の間にはフロントウインド26が取り付けられており、左右のリアピラー17の間にはリアウインド27(
図13参照)が取り付けられている。また、センターピラー16とリアピラー17との間には、リアサイドウインド24が取り付けられている。また、フロントピラー15とセンターピラー16との間には、開閉ドア20が配設されている。
【0019】
この開閉ドア20は、ヒンジ21によってセンターピラー16に接続されている。これにより、開閉ドア20は、センターピラー16付近を軸として回動可能に配設され、この回動により、フロントピラー15とセンターピラー16との間を開閉することが可能になっている。この開閉ドア20には、サイドウインド22が設けられており、開閉ドア20も、サイドウインド22を介して内側から外部を視認することが可能になっている。また、開閉ドア20の下方には、キャビン10に対して出入りする際に足をかけるステップ31が配設されており、開閉ドア20の前方に位置するフロントピラー15には、トラクタ1の後方を視認する際に用いるサイドミラー30が取り付けられている。
【0020】
また、トラクタ1には、キャビン10内の温度を調節する空調装置70が備えられており、ルーフ12の後端には、空調装置70の一部を構成するエアコンユニット71(
図3参照)を内設するエアコン設置部13が設けられている。このエアコン設置部13は、キャビン10の上方に位置するルーフ12において、キャビン10の後方に突出するように設けられている。このため、エアコンユニット71は、キャビン10の後上部に配設されている。
【0021】
図3は、
図1のA−A断面図である。
図4は、
図3のB−B矢視図である。
図5は、
図3のC−C断面図である。キャビン10の上方で、且つ、キャビン10の後方に突出しているエアコンユニット71には、エアコンユニット71から前方に向かって配設される空調ダクト38が接続されている。つまり、空調ダクト38は、エアコンユニット71からキャビン10内の方向に向かって延在している。この空調ダクト38は、左右方向におけるキャビン10内の両端付近の2箇所に、ルーフ12に沿ってエアコンユニット71から前方に向かって配設されている。空調ダクト38には、空調ダクト38内を流れる空気をキャビン10内に吹き出す吹出口39が、空調ダクト38の下面側に複数形成されている。
【0022】
また、キャビン10内には、トラクタ1の運転者100が座る運転席105の前方に、エアコンユニット71の運転操作を行うエアコン操作部35が配設されている。このエアコン操作部35は、キャビン10内における運転席105の前方で、ルーフ12寄りの位置に配設されている。さらに、キャビン10内には、オーディオユニット36等の運転者100の運転時における快適装備が備えられている。
【0023】
図6は、
図1に示すキャビンのフレームの斜視図である。
図7は、
図6に示すフレームを他方向から見た斜視図である。キャビン10は、フレーム40を有して構成されており、フレーム40は、縦支柱であるピラーの骨格となるピラーフレーム41を複数有している。即ち、フレーム40は、ピラーフレーム41として、フロントピラー15を構成するフロントピラーフレーム42と、センターピラー16を構成するセンターピラーフレーム43と、リアピラー17を構成するリアピラーフレーム44と、を有している。
【0024】
これらのフロントピラーフレーム42とセンターピラーフレーム43とリアピラーフレーム44とは、フロントピラー15、センターピラー16、リアピラー17と同様に、それぞれ左右方向における両側に1つずつが配設されている。これらのピラーフレーム41のうち、フロントピラーフレーム42とリアピラーフレーム44とは、内側が空洞になったパイプ状の形状で形成されている。また、センターピラーフレーム43は、センターピラーフレーム43の延在方向に見た場合における形状、即ち、上下方向にセンターピラーフレーム43を見た場合における形状が、略コの字状の形状で形成されている。
【0025】
また、ピラーフレーム41は、上端付近が他の部材によって接続されている。即ち、左右両側に位置するフロントピラーフレーム42の上端同士の間には、左右方向に延在するフロントクロスメンバ46が配設され、2箇所のフロントピラーフレーム42は、共に上端付近がこのフロントクロスメンバ46に接続されている。同様に、左右両側に位置するリアピラーフレーム44の上端同士の間には、左右方向に延在するリアクロスメンバ47が配設され、2箇所のリアピラーフレーム44は、共に上端付近がリアクロスメンバ47に接続されている。これらのフロントクロスメンバ46とリアクロスメンバ47とは、それぞれフロントピラーフレーム42やリアピラーフレーム44の上端付近における側面に接続されている。
【0026】
また、フロントピラーフレーム42の上端付近とリアピラーフレーム44の上端付近との間には、前後方向に延在するサイドメンバ48が配設されている。フロントピラーフレーム42とリアピラーフレーム44とは、共に上端付近がこのサイドメンバ48に接続されている。また、サイドメンバ48には、フロントピラーフレーム42とリアピラーフレーム44との間に位置するセンターピラーフレーム43も上端が接続されており、このサイドメンバ48は、左右方向における両側に配設されている。
【0027】
これらの接続のうち、サイドメンバ48と、フロントピラーフレーム42及びリアピラーフレーム44との接続は、フロントピラーフレーム42とリアピラーフレーム44との上端付近における側面にサイドメンバ48が接続されている。このため、フロントピラーフレーム42とリアピラーフレーム44とは、上端が開口している。これに対し、サイドメンバ48とセンターピラーフレーム43との接続は、サイドメンバ48の側面に、センターピラーフレーム43の上端が接続されている。
【0028】
また、トラクタ1の前後方向におけるリアクロスメンバ47の後方側には、エアコンユニット71の下方を覆うエアコンカバー部50が設けられている。このエアコンカバー部50は、トレイ状の形状で形成されており、左右のリアピラーフレーム44同士の間におけるリアクロスメンバ47の後方に配設されている。
【0029】
また、リアクロスメンバ47の上方には、リアクロスメンバ47と同様にサイドメンバ48の後端部同士の間に左右方向に延在するブラケット設置フレーム51が、リアクロスメンバ47と平行に配設されている。詳しくは、リアクロスメンバ47は、リアピラーフレーム44の上端より少し下方の位置に接続されており、ブラケット設置フレーム51は、リアピラーフレーム44よりも上側の位置に接続されている。
【0030】
このブラケット設置フレーム51には、エアコンユニット71を取り付けるブラケット52が接続されている。このブラケット52は、複数がブラケット設置フレーム51からブラケット設置フレーム51の後方に延在しており、複数のブラケット52は、全てエアコンカバー部50の上方に位置している。
【0031】
また、フレーム40には、フェンダー33が配設される位置にフェンダーフレーム55が配設されている。このフェンダーフレーム55は、フェンダー33に沿って形成されているため、後輪4が配設された状態における後輪4の上方から前方にかけて設けられている。このフェンダーフレーム55も、ピラーフレーム41と同様にパイプ状の部材によって形成されている。即ち、フェンダーフレーム55は、後輪4が配設された状態における後輪4の上方から前方にかけて配設されるように、後輪4の上方付近では前後方向に延在し、後輪4の前方付近では上下方向に延在するように、パイプ状の部材が湾曲して形成されている。
【0032】
また、このように形成されているフェンダーフレーム55は、前後方向に延在する部分における後端が、リアピラーフレーム44の下端付近の側面に接続されている。リアピラーフレーム44におけるフェンダーフレーム55の接続部分は開口しており、リアピラーフレーム44の内側とフェンダーフレーム55の内側とは、互いに連通している。
【0033】
また、フェンダーフレーム55の、上下方向に延在する部分における下端は、ステップ31を取り付ける部分であるステップフレーム58に接続されている。このステップフレーム58は、左右方向に延在するパイプ状の部材の端部に、上下方向に延在するパイプ状の部材の上端が接続されることにより形成されており、ステップ31は、この上下方向に延在する部分に取り付けられる。即ち、ステップ31は、ステップフレーム58における上下方向に延在する部分に、ステップ31が有するパイプ状の部材である取付部材32(
図2参照)が差し込まれて固定される。
【0034】
フェンダーフレーム55は、このステップフレーム58のうち、左右方向に延在する部分に接続されており、ステップフレーム58におけるフェンダーフレーム55の接続部分は開口している。このため、ステップフレーム58の内側とフェンダーフレーム55の内側とは、互いに連通している。
【0035】
図8は、エアコンユニットの平面図である。
図9は、
図8のD−D矢視図である。
図10は、
図8のE−E矢視図である。エアコンユニット71は、空気を吸入して送風するブロア72を有しており、ブロア72で送風する空気の流路上には、この空気と、空調装置70で用いる冷媒との間で熱交換を行うエバポレータ73と、ブロア72で送風する空気と、エンジンの冷却水との間で熱交換を行うヒータコア74と、エバポレータ73やヒータコア74で熱交換をした後の空気を空調ダクト38側に吹き出すユニット吹出口75と、を有している。なお、エバポレータ73は、膨張弁を内蔵しており、膨張弁で気化した冷媒と、ブロア72で送風する空気との熱交換を行うことが可能になっている。また、エバポレータ73とヒータコア74とは、ブロア72で送風する空気の熱交換を行うため、ブロア72の下流側とユニット吹出口75との間に配設されている。
【0036】
また、エバポレータ73の下方には、エバポレータ73での熱交換による空気の温度の低下によって凝縮した空気中の水分を集める集水部77を有しており、集水部77には、集水部77内の水をエアコンユニット71の外部に排水する排水部78が設けられている。この排水部78は、短管状の形状で集水部77に対して2箇所に設けられており、2箇所の排水部78は、互いに反対方向に向かって突出し、開口する向きになっている。また、この2箇所の排水部78は、共にユニット吹出口75が開口する向きに直交する向きに突出して開口している。
【0037】
このように設けられるエアコンユニット71は、エアコン操作部35に対する操作に応じてブロア72が駆動し、ユニット吹出口75から吹き出す空気量を変化させることが可能になっている。
【0038】
図11は、
図4のF−F矢視図であり、エアコン設置部にエアコンユニットを設置した状態におけるエアコンユニットの下面図である。エアコンユニット71は、ブラケット52で保持することによりエアコン設置部13に設置する。その向きは、ユニット吹出口75がトラクタ1の前方に向かって開口すると共に、集水部77側が下方に位置し、集水部77に設けられる2箇所の排水部78が、トラクタ1の左右方向における左方向または右方向に向かう向きで、ブラケット52に取り付けられる。
【0039】
エアコンユニット71の下方側に位置して左右方向に突出している2箇所の排水部78には、排水部材である排水部ホース86が、ぞれぞれの排水部78に接続されている。この排水部ホース86は、共に一端が排水部78に接続され、他端側が、ブラケット52に取り付けられている状態のエアコンユニット71の、トラクタ1の左右方向における端部が位置する付近に位置している。即ち、排水部ホース86は、排水部78から、トラクタ1の左右方向における外側方向に向かって設けられている。
【0040】
なお、2箇所の排水部78は、エアコンユニット71の端部の位置までの距離が互いに異なっているため、それぞれの排水部78に接続される排水部ホース86の長さも、排水部ホース86が接続される側の排水部78に応じて異なっている。
【0041】
排水部ホース86における排水部78に接続されている側の端部の反対側の端部には、3方向の接続部を有するT型ジョイント88が接続されている。このT型ジョイント88は、3つの接続部うち、2つの接続部は直線上における反対方向を向き、残りの1つは他の2つの接続部に対して直交する向きになって形成されている。排水部ホース86の端部には、このT型ジョイント88の3つの接続部のうち、他の2つの接続部に対して直交する向きになっている接続部が接続される。また、T型ジョイント88は、他の2つ接続部がトラクタ1の前後方向を向く向きになって、排水部ホース86の端部に接続される。
【0042】
このT型ジョイント88の3つの接続部における、排水部ホース86に接続される端部以外の2つの接続部には、排水部78から排出された水をトラクタ1の外部に排水するドレンホース80が、それぞれ接続されている。ドレンホース80が接続されるT型ジョイント88の2つの接続部は、トラクタ1の前後方向を向く向きになっているため、この接続部に接続されるドレンホース80も、T型ジョイント88からトラクタ1の前方側と後方側とにそれぞれ配設される。このように、T型ジョイント88に接続されるドレンホース80のうち、前方側に配設されるドレンホース80は前側ドレンホース81となっており、後方側に配設されるドレンホース80は後側ドレンホース82となっている。即ち、ドレンホース80におけるエアコンユニット71よりも前方側に位置する部分は、前側ドレンホース81となっており、ドレンホース80におけるエアコンユニット71よりも後方側に位置する部分は、後側ドレンホース82となっている。
【0043】
排水部ホース86とドレンホース80とは、このようにT型ジョイント88を介して接続されているため、ドレンホース80は排水部ホース86に対して、トラクタ1における前後方向の2方向に分岐して接続されている。また、エアコンユニット71の排水部78には排水部ホース86が接続され、ドレンホース80は、この排水部ホース86に接続されているT型ジョイント88に接続されているため、換言すると、排水部78とドレンホース80とは、排水部ホース86を介して接続されている。また、T型ジョイント88やドレンホース80は、トラクタ1の左右方向における両側に位置する排水部ホース86に接続されているため、前側ドレンホース81や後側ドレンホース82も、トラクタ1の左右方向における両側に配設されている。
【0044】
図12は、
図1示すトラクタに備えられる空調装置の全体構成を示す概略図である。トラクタ1に備えられる空調装置70は、主にエアコンユニット71と、流体の経路を介してエアコンユニット71に接続される機器によって構成されている。空調装置70を構成するエアコンユニット71には、エバポレータ73での空気との熱交換に用いる冷媒が流れる冷媒流路であるクーラ配管90と、ヒータコア74での空気との熱交換に用いるエンジンの冷却水が流れる熱媒体流路であるヒータ配管94と、が接続されている。
【0045】
このうち、クーラ配管90には、空調装置70が有する各機器が接続されている。即ち、クーラ配管90には、例えば、エンジンで発生した動力で駆動することにより冷媒を圧縮するコンプレッサ91と、圧縮することにより温度が上昇した冷媒と大気との間で熱交換を行うことにより冷媒を冷却し、ガス状の冷媒を液化する凝縮器であるコンデンサ92と、冷媒中の液体と気体とを分離し、また、冷媒中の水分を取り除くレシーバドライヤ93と、が接続されている。これらのコンプレッサ91やコンデンサ92、レシーバドライヤ93等の機器は、機体前部のボンネット6内に配設されている。
【0046】
エアコンユニット71には、エバポレータ73やヒータコア74で熱交換を行う前の冷媒や冷却水が流れるクーラ配管90及びヒータ配管94と、熱交換後の冷媒や冷却水が流れるクーラ配管90及びヒータ配管94と、がそれぞれ接続されている。このため、エアコンユニット71は、クーラ配管90によって流入した冷媒やヒータ配管94によって流入した冷却水と、キャビン10内に流す空気との間の熱交換をエバポレータ73やヒータコア74で行うことにより、キャビン10内に流す空気の冷却や加熱が可能になっている。
【0047】
また、このように、エアコンユニット71に熱交換前後のクーラ配管90がそれぞれ接続され、熱交換後の冷媒が、再びコンプレッサ91等の機器側に流れるように配設されることにより、冷媒の循環経路は構成されている。
【0048】
ここで、コンプレッサ91等の各機器は、ボンネット6内に配設されているが、ボンネット6内には、エンジン等の動力源装置も配設されており、これらの動力源装置は、駆動時に温度が高くなる。特に、エンジンから排出された排気ガスに含まれる粒子状物質を減少させるフィルタであるDPF(DieselParticulate Filter)96は、高温になり易くなっている。このため、クーラ配管90におけるDPF96の近傍を通る部分は、DPF96の熱影響を避けるため、DPF96を避けて配設されている。
【0049】
詳しくは、クーラ配管90におけるDPF96の近傍を通る部分は、DPF96を保持するDPFブラケット97の後方側に配設されている。つまり、コンデンサ92は、冷媒と大気との間で熱交換を行うため、外気に晒され易いように、ボンネット6内における比較的前方に配設されている。このため、クーラ配管90は、ボンネット6内における前方寄りの位置から、エアコンユニット71が位置するキャビン10の後方にかけて配設されており、さらに、ボンネット6内で左右方向にかけて配設されている部分を有している。
【0050】
このように、ボンネット6内に配設されるクーラ配管90と同様にボンネット6内に配設されるDPF96は、ボンネット6内における比較的後方寄りの位置に配設されている。DPF96は、この位置でDPFブラケット97に保持されているが、DPFブラケット97は、DPF96を実際に保持する保持部と、当該DPFブラケット97のボンネット6内への取り付け部分である取付部と、を有している。このうち、取付部は、略矩形の板状の形状で形成されており、大部分が、保持部で保持するDPF96よりも、ボンネット6内の位置における後方側に位置している。
【0051】
ボンネット6内に配設されるクーラ配管90のうち、左右方向にかけて配設されている部分は、DPFブラケット97の後方を通っている。このため、このクーラ配管90とDPF96との間には、DPFブラケット97の取付部が介在しており、高温となるDPF96からの放射熱は、DPFブラケット97の取付部によって遮られる。換言すると、DPFブラケット97は、クーラ配管90に対して、DPF96で発生する熱を遮熱する役割も果たしている。
【0052】
また、エアコンユニット71に接続されているドレンホース80は、2方向に分岐しているため、ドレンホース80の端部に位置する開口部であり、ドレンホース80内を流れた水を排水可能なドレンホース排水口85は、トラクタ1の前後方向におけるエアコンユニット71の位置よりも前後両側に位置している。詳しくは、2方向に分岐しているドレンホース80のうち、後側ドレンホース82は、T型ジョイント88から後方に向かって比較的短い長さで配設されている。このため、後側ドレンホース82のドレンホース排水口85は、エアコンユニット71の近傍で、トラクタ1の前後方向におけるエアコンユニット71の位置よりも後方側に位置している。
【0053】
これに対し、前側ドレンホース81は、エアコンユニット71の前方に位置するリアピラーフレーム44の上端の開口部分からリアピラーフレーム44内に入り込んでいる。つまり、前側ドレンホース81は、トラクタ1の左右方向におけるエアコンユニット71の端部が位置する付近に位置している排水部ホース86の端部に接続されている。このため、前側ドレンホース81におけるT型ジョイント88に接続されている部分も、左右方向におけるエアコンユニット71の端部が位置する付近に位置しており、前側ドレンホース81は、この位置から前方に向かって配設されている。
【0054】
このため、前側ドレンホース81は、T型ジョイント88に接続されている位置から、リアピラーフレーム44が配設されている部分に向かって配設されており、この前側ドレンホース81は、リアピラーフレーム44の上端の開口部分から、リアピラーフレーム44内に入り込んでいる。さらに、前側ドレンホース81は、リアピラーフレーム44の下端付近から、このリアピラーフレーム44に対して内側同士が貫通しているフェンダーフレーム55内に入り込んでいる。
【0055】
このように、フェンダーフレーム55内に入り込んでいる前側ドレンホース81は、端部がフェンダーフレーム55内に位置した状態で、または、フェンダーフレーム55内の内側と連通しているステップフレーム58の内側に入り込んだ状態で、ドレンホース排水口85がステップフレーム58内に対して開口している。即ち、前側ドレンホース81は、リアピラーフレーム44内からフェンダーフレーム55内にかけて配設され、ドレンホース排水口85がステップフレーム58内に対して開口している。
【0056】
図13は、
図1に示すトラクタのエアコン設置部付近のルーフの斜視図である。
図14は、
図13に示すエアコン上部カバーを外した状態を示す説明図である。ルーフ12は、フレーム40が有するサイドメンバ48等にルーフカバー60が取り付けられることにより形成されている。また、ルーフ12の後端には、エアコン設置部13が設けられており、エアコン設置部13には、エアコン設置部13における上面側のカバーであるエアコン上部カバー61と、エアコン下部カバー62とが設けられている。これにより、エアコンユニット71は、外側がエアコン上部カバー61とエアコン下部カバー62との双方のカバーで覆われている。これらのカバーのうち、エアコン上部カバー61は、ルーフ12に対して、或いは、フレーム40に対して着脱可能に配設されており、エアコンユニット71は、ルーフ12からエアコン上部カバー61を取り外すことにより、点検等を行うことが可能になっている。
【0057】
なお、このようにルーフ12から取り外すことができるように設けられているエアコン上部カバー61とルーフカバー60等とのエアコン上部カバー61の接合部分は、パッキン等を用いて防水構造が施されている。
【0058】
また、ルーフ12は、エアコン設置部13を除く左右方向における幅が、前側から後側に向うに従って広くなっており、エアコン設置部13の直前付近が最も広くなっている。このように、ルーフ12におけるエアコン設置部13の直前付近に位置し、左右方向の幅が広くなっている部分の内部には、エアコンユニット71の駆動時において外気を吸引する際に、外気の塵や埃を除去する外気フィルタ(図示省略)が配設されている。エアコンユニット71は、外気を吸引する際には、この外気フィルタで塵や埃を除去した外気を吸引する。
【0059】
図15は、
図14のG−G矢視図である。着脱可能なエアコン上部カバー61に対し、エアコン下部カバー62は、容易には取り外しが出来ないようにエアコン設置部13に設けられている。このエアコン下部カバー62は、下面側が、後方から前方に向うに従って下方に位置する方向に傾斜しており、トラクタ1が走行する路面の方向に対して約5°下方に傾斜している。エアコンユニット71の下方には、排水部ホース86やドレンホース80等が配設されているが、ドレンホース80におけるエアコンユニット71の下方に位置している部分や排水部ホース86は、エアコン下部カバー62によって覆われている。
【0060】
このように設けられるエアコン下部カバー62の後方側からは、後側ドレンホース82の後端近傍が外部に突出している。つまり、後側ドレンホース82は、エアコン下部カバー62の内側に配設されると共に、エアコン下部カバー62の後端からドレンホース排水口85がエアコン下部カバー62の外側に露出している。後側ドレンホース82において、このようにエアコン下部カバー62の外側に露出している部分は、後端近傍が下方に向かって曲がることにより、ドレンホース排水口85が下方に向う方向に曲がっている。なお、後側ドレンホース82におけるエアコン下部カバー62の外側に露出している部分は、エアコン下部カバー62の下面よりも上方に位置している。
【0061】
図16は、
図15に示すエアコン下部カバーを除去した場合における説明図である。エアコン下部カバー62は、下面側が、前側が下方に位置する方向に傾斜しているが、ドレンホース80のうち、エアコン下部カバー62の内側に配設されているドレンホース80も、トラクタ1における前方に向うに従って下方に向う向きで傾斜している。
【0062】
具体的には、ドレンホース80におけるエアコン下部カバー62に覆われている部分は、T型ジョイント88に接続されているが、T型ジョイント88は、後側ドレンホース82が接続される接続部側から前側ドレンホース81が接続される接続部側に向うに従って下方に向う方向に傾斜している。このため、T型ジョイント88のこれらの接続部に接続される前側ドレンホース81と後側ドレンホース82とは、T型ジョイント88に接続されている部分付近が、後方側から前方側に向うに従って下方に向うに方向に傾斜している。これにより、エアコン下部カバー62内に配設されるドレンホース80は、エアコン下部カバー62の下面側の傾斜と同様に、前下がりの傾斜になる。
【0063】
なお、後方側から前方側に向うに従って下方に向うに方向に傾斜しているT型ジョイント88の傾斜角は、エアコン下部カバー62の下面側の傾斜角以上になっているのが好ましい。例えば、エアコン下部カバー62の下面側の傾斜角が5°の場合は、T型ジョイント88の傾斜角は、トラクタ1が走行する路面の方向に対して10°程度傾斜しているのが好ましい。
【0064】
本実施形態に係るトラクタ1の空調構造は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。トラクタ1の運転時は、運転者100はキャビン10内でハンドル操作や各種レバーの操作、ペダルの操作を行うことにより、トラクタ1の走行や連結装置8に接続される作業機の運転操作を行う。また、トラクタ1には、空調装置70が備えられているが、空調装置70は、キャビン10内に配設されるエアコン操作部35を操作することにより行う。
【0065】
エアコン操作部35の操作により、空調装置70によってキャビン10内の温度を下げる場合には、まず、エンジンで発生した動力により、空調装置70のコンプレッサ91が駆動する。これにより、コンプレッサ91はクーラ配管90内の冷媒を吸引して圧縮し、冷媒は、この圧縮によって温度が上昇する。この温度が上昇した冷媒は、クーラ配管90によってコンプレッサ91からコンデンサ92に流れる。コンデンサ92に流れた冷媒は、電動ファン(図示省略)の駆動等によってコンデンサ92を通過する空気との間で、熱交換を行うことにより、温度が低下する。これにより、コンプレッサ91によって圧縮されることにより圧力が高くなった冷媒は温度が低下し、ガス状の冷媒はコンデンサ92で液化される。
【0066】
液化された冷媒は、レシーバドライヤ93でさらに気体と液体とに分離され、水分が取り除かれた後、液体の冷媒のみがクーラ配管90を通ってエアコンユニット71に流れる。エアコンユニット71に流入した冷媒は、エアコンユニット71が有するエバポレータ73に流れる。エバポレータ73に流れた冷媒は、膨張弁によって気化され、冷媒は、その際に温度が低下する。
【0067】
一方、空調装置70の駆動時は、エアコンユニット71のブロア72が駆動し、エバポレータ73の方向に向かって空気を送風する。エバポレータ73は、当該エバポレータ73の外側を流れるこの空気と、内側を流れる低温の冷媒との間で熱交換を行い、空気の温度を低下させる。エバポレータ73で温度が低下した空気は、ユニット吹出口75から吹き出して空調ダクト38に流れ、空調ダクト38に設けられる吹出口39から、キャビン10内に吹き出す。これにより、キャビン10内には温度が低い空気が流れ、キャビン10内の温度が低下する。また、エバポレータ73で熱交換を行った冷媒は、エアコンユニット71から流出し、クーラ配管90を通って再びコンプレッサ91に流れる。
【0068】
これに対し、エアコン操作部35の操作により、空調装置70によってキャビン10内の温度を上げる場合には、ヒータ配管94によってエンジンの冷却水をエアコンユニット71に流す。つまり、暖機運転完了後のエンジンの冷却水は、外気温と比較して温度が高くなるため、キャビン10内の温度を上げる場合には、この冷却水を熱媒体として利用することにより温度を上げる。
【0069】
ヒータ配管94によってエアコンユニット71に流入した冷却水は、エアコンユニット71が有するヒータコア74に流れる。空調装置70の駆動時には、ヒータコア74には、ブロア72から送風された空気が流れ、ヒータコア74は、当該ヒータコア74の外側を流れるこの空気と、内側を流れる高温の冷却水との間で熱交換を行い、空気の温度を上昇させる。ヒータコア74で温度が上昇した空気は、ユニット吹出口75から吹き出して空調ダクト38に流れ、空調ダクト38に設けられる吹出口39から、キャビン10内に吹き出す。これにより、キャビン10内には温度が高い空気が流れ、キャビン10内の温度が上昇する。また、ヒータコア74で熱交換を行った冷媒は、エアコンユニット71から流出し、ヒータ配管94を通って再びエンジンの方向に流れる。
【0070】
空調装置70を駆動させることによりキャビン10内の温度を調節する場合には、このようにキャビン10内に送風する空気の温度を冷媒によって低下させることと、冷媒によって上昇させることとを組み合わせることにより、所望の温度に調節する。
【0071】
空調装置70は、このように冷媒と冷却水とを用いて、キャビン10内に吹き出す空気の温度を調節するが、エバポレータ73によって、エバポレータ73の外側を流れる空気と内側を流れる冷媒との間で熱交換を行い、空気の温度を低下させた場合、空気の飽和水蒸気量が低下する。これにより、空気中の水分は凝縮して液体になり易くなり、液体となった水分は、水となってエバポレータ73に付着し、次第に下方に流れる。エバポレータ73の下方には集水部77が形成されているため、エバポレータ73から下方に流れた水は、集水部77に溜まる。集水部77に溜まった水は、集水部77に設けられている排水部78から排水され、エアコンユニット71から流出する。
【0072】
排水部78から排水された水は、排水部78に接続されている排水部ホース86に流れ、さらに、排水部ホース86からT型ジョイント88を介してドレンホース80に流れる。このドレンホース80は、T型ジョイント88によって2方向に分岐することにより、前側ドレンホース81と後側ドレンホース82とに分かれているが、ドレンホース80におけるエアコン下部カバー62に覆われている部分は、前下がりの傾斜になっている。このため、トラクタ1が、平坦な路面など、前輪3の接地面と後輪4の接地面とで高さの変化が少ない状態になっている場合、排水部ホース86からドレンホース80に流れた水は、前側ドレンホース81の方向に流れる。
【0073】
この前側ドレンホース81は、上下方向に延在するリアピラーフレーム44の上端の開口部分からリアピラーフレーム44内に入り込んでいるため、前側ドレンホース81は、リアピラーフレーム44の上端の開口部分から下方に向かって配設されている。このため、前側ドレンホース81の方向に流れた水は、前側ドレンホース81におけるリアピラーフレーム44内に配設されている部分に到達した場合、前側ドレンホース81に沿って下方に流れる。
【0074】
前側ドレンホース81におけるリアピラーフレーム44の下端付近に配設されている位置まで到達した水は、さらに、前側ドレンホース81におけるフェンダーフレーム55内に入り込んでいる部分に流れる。このフェンダーフレーム55内に配設されている前側ドレンホース81は、ドレンホース排水口85がステップフレーム58内に対して開口しているため、前側ドレンホース81におけるこの部分に流れた水は、ドレンホース排水口85から排水され、ステップフレーム58内に流れる。
【0075】
ドレンホース排水口85から排水された水は、ステップフレーム58における左右方向に延在する部分内に流れ、この水はさらに、ステップフレーム58における上下方向に延在する部分に流れる。ステップフレーム58のこの部分には、ステップ31の取付部材32が差し込まれており、双方の内側は連通している。このため、ステップフレーム58内に流れた水は、ステップ31の取付部材32内に流れ、この取付部材32の下方から流出する。前側ドレンホース81に流れた水は、このようにステップ31の下方から排水される。
【0076】
これらに対し、前輪3の接地面が後輪4の接地面よりも高い状態になり、トラクタ1全体が後ろ下がりになることにより、エアコン下部カバー62内のドレンホース80も後ろ下がりの状態になった場合、排水部ホース86からドレンホース80に流れた水は、後側ドレンホース82の方向に流れる。後側ドレンホース82は、後端がエアコン下部カバー62の後端からエアコン下部カバー62の外側に露出し、ドレンホース排水口85が下方に向う方向に曲がっているため、後側ドレンホース82の方向に流れた水は、後側ドレンホース82のドレンホース排水口85から排水される。
【0077】
また、トラクタ1の傾斜の方向に関わらず、排水部ホース86からドレンホース80に流れる水の量が多い場合、排水部ホース86から前側ドレンホース81と後側ドレンホース82との双方のドレンホース80に分かれて流れる。これにより、ドレンホース80に流れる多量の水は、前側ドレンホース81と後側ドレンホース82との双方のドレンホース排水口85から排水される。
【0078】
以上のトラクタ1の空調構造は、キャビン10の後上部に配設されるエアコンユニット71の排水部78に、前後方向に沿って配設されるドレンホース80を左右両側に配設し、ドレンホース80のドレンホース排水口85を、トラクタ1の前後方向におけるエアコンユニット71の位置よりも前後両側に位置させている。これにより、空調装置70の運転時にエアコンユニット71から排水される水を、トラクタ1の傾きの状態に関わらず、少なくともいずれかのドレンホース排水口85から排水することができる。また、ドレンホース排水口85は、複数形成されているため、エアコンユニット71から排水される水の量が多い場合でも、複数のドレンホース排水口85から排水することができる。これらの結果、円滑な排水を行うことができる。
【0079】
また、前側ドレンホース81は、エアコン下部カバー62の内側からリアピラーフレーム44の内側を通ることにより、ドレンホース排水口85がキャビン10の下方に位置しているため、外部から視認し難くなっている。また、後側ドレンホース82は、エアコン下部カバー62の内側に配設され、ドレンホース排水口85は、エアコン下部カバー62の後端からエアコン下部カバー62の外側に露出しているため、後側ドレンホース82も外部から視認し難くなっている。これらのため、前側ドレンホース81と後側ドレンホース82とは、共に外部から視認し難くなっており、美観の向上を図ることができる。この結果、円滑な排水と美観の向上とを両立することができる。
【0080】
また、エアコン下部カバー62の内側に配設されているドレンホース80は、前下がりの向きで傾斜しているため、エアコンユニット71から排出された水の大部分を、前側ドレンホース81のドレンホース排水口85から排水することができる。これにより、空調装置70の駆動時にエアコンユニット71から排出された水がドレンホース80から排水される際に、外部から見え難くすることができる。この結果、より確実に、円滑な排水と美観の向上とを両立することができる。
【0081】
また、ドレンホース80は、エアコンユニット71の排水部78に接続されている排水部ホース86に対して、T型ジョイント88を介して接続されることにより2方向に分岐しているため、単位時間当たりにドレンホース80で流すことが可能な水量を確保することができる。この結果、より確実に、円滑な排水を行うことができる。
【0082】
また、後側ドレンホース82におけるエアコン下部カバー62の外側に露出している部分を、エアコン下部カバー62の下面よりも上方に位置させているため、エアコン設置部13の下面側を平坦にすることができる。この結果、安全性を向上させることができ、また、より確実に美観を向上させることができる。
【0083】
また、エアコン上部カバー61を着脱可能にすることにより、エアコンユニット71の点検時は、エアコン上部カバー61を取り外して容易に点検することができる。この結果、メンテナンス性を向上させることができる。
【0084】
〔変形例〕
図17は、実施形態に係る空調構造の変形例であり、リアウインド側にサンバイザーを設けた場合における説明図である。
図18は、
図17に示すサンバイザーを下ろした状態を示す説明図である。
図19は、
図18に示すサンバイザーの斜視図である。なお、上述した空調構造では、後側ドレンホース82は、ドレンホース排水口85が形成される後端がエアコン下部カバー62から露出しており、後側ドレンホース82からの排水は比較的高い位置から行われるが、この排水が作業者にかからないようにしてもよい。例えば、
図17、
図18に示すように、リアウインド27の後方側に、リアウインド27からキャビン10への太陽光の進入を防ぐサンバイザー110を設け、このサンバイザー110を用いて、後側ドレンホース82からの排水が作業者にかからないようにしてもよい。
【0085】
詳しくは、サンバイザー110は、略矩形状の板状の形状で形成され、1つの辺の両端に、この辺に沿った方向が軸方向となる回転軸111を有している。このサンバイザー110は、キャビン10の後方に突出するように設けられるエアコン設置部13の下面側における後端寄りの位置に回転軸111が位置する状態で、エアコン設置部13の下面側に配設する。回転軸111は、軸方向がトラクタ1の左右方向に向う向きになっており、サンバイザー110は、この回転軸111を中心として回転可能に、エアコン設置部13の下面側に配設する。
【0086】
また、サンバイザー110には、回転軸111を中心して回転させることにより、サンバイザー110がエアコン設置部13の下面に重なるようにエアコン設置部13の下方に位置する状態における下面側に、2つの溝部112が形成されている。この溝部112は、両端に回転軸111が位置する辺から、この辺に対向する辺にかけて形成されている。また、両端に回転軸111が位置する辺上において2つの溝部112が形成されている位置は、エアコン設置部13の後端でエアコン下部カバー62から露出している2つの後側ドレンホース82における位置とほぼ同じ位置になっている。即ち、エアコン設置部13の後端には、2つの溝部112のそれぞれの一端と、2つの後側ドレンホース82のドレンホース排水口85とが位置しているが、溝部112の一端と後側ドレンホース82のドレンホース排水口85とは、トラクタ1の左右方向における位置が、ほぼ同じ位置になっている。
【0087】
また、溝部112の他端側は、2つの溝部112の間隔が、2つの後側ドレンホース82のドレンホース排水口85の間隔よりも広くなっている。つまり、2つの溝部112は、回転軸111が位置する側の辺から、この辺に対向する辺に向うに従って、溝部112同士の間隔が広くなっている。
【0088】
このように設けられるサンバイザー110の不使用時は、回転軸111を中心として回転させることにより、サンバイザー110がエアコン設置部13の下面に重なってエアコン設置部13の下方に位置する状態にする(
図17)。これにより、キャビン10内からリアウインド27を介して外部を視認する場合、キャビン10内と外部との間に遮るものが無いため、運転者100は外部を視認することができる。
【0089】
これに対し、サンバイザー110の使用時は、回転軸111を中心として回転させることにより、サンバイザー110における上端部分に回転軸111側の辺が位置する程度まで、サンバイザー110を下ろす(
図18)。これにより、後方からの太陽光はサンバイザー110に遮られてリアウインド27に到達し難くなるため、太陽光はキャビン10内に進入し難くなり、運転者100は眩しさを感じ難くなる。
【0090】
ここで、サンバイザー110の溝部112は、トラクタ1の左右方向における位置が、後側ドレンホース82のドレンホース排水口85の位置とほぼ同じ位置になっている。このため、この状態で空調装置70を駆動することにより、後側ドレンホース82のドレンホース排水口85から排水があった場合、この水はサンバイザー110の溝部112に流れる。
【0091】
溝部112に流れた水は、溝部112に沿って流れ、回転軸111側の辺に対向する辺の方向に流れて、溝部112の端部から排水される。これにより、後側ドレンホース82から排出された水は、サンバイザー110の左右両側に広がって排水されるため、例えば、連結装置8に対して作業機の着脱作業を行う場合に作業者に対して水がかかり難くなる。
【0092】
また、連結装置8に対して作業機の着脱作業を行う場合には、回転軸111を中心としてサンバイザー110を後方に上げてもよい。
図20は、
図17に示すサンバイザーを上げた状態を示す説明図である。つまり、回転軸111を中心としてサンバイザー110を後方側に回転させることにより、回転軸111から後方に、水平よりも若干後ろ下がりの状態になって延在する程度まで、サンバイザー110を後方に上げる。
【0093】
この状態で空調装置70を駆動し、後側ドレンホース82のドレンホース排水口85から排出された水がサンバイザー110の溝部112に流れた場合、この水は、溝部112に沿って後方に流れながら左右両側に広がり、溝部112の端部から排水される。これにより、後側ドレンホース82から排出された水は、エアコン設置部13から後方に離れた位置で左右両側に広がって排水される。このため、連結装置8に対して作業機の着脱作業を行う際に、キャビン10の直後付近で作業する場合には、サンバイザー110を上げることにより、作業者に対して水がかかり難くなる。
【0094】
これらのように、連結装置8に対して作業機の着脱作業を行う場合には、作業の状態に応じてサンバイザー110の角度を調節することにより、後側ドレンホース82から排出された水が作業者に対してかかり難くなるようにすることができる。
【0095】
また、上述した空調構造では、エアコンユニット71から排出された水は、水に作用する重力によって排水部ホース86からドレンホース80に流れるが、この水を強制的に排水部ホース86からドレンホース80に送る手段を設けてもよい。
図21は、実施形態に係る空調構造の変形例であり、ポンプを設けた場合における説明図である。排水部ホース86からドレンホース80に送る手段としては、例えば、
図21に示すように、ドレンホース80と排水部ホース86との接続部分に、排水部ホース86内の水をドレンホース80側に圧送するポンプ120を配設してもよい。
【0096】
即ち、T型ジョイント88の代わりに、T型ジョイント88と同様に3つの接続部を有して排水部ホース86と2つのドレンホース80が接続されると共に、排水部ホース86内の水を前側ドレンホース81と後側ドレンホース82とに圧送するポンプ120を配設してもよい。このように、排水部ホース86とドレンホース80との接続部分にポンプ120を配設することにより、空調装置70の駆動時にエアコンユニット71から排出される水を、トラクタ1の傾斜状態に関わらずドレンホース80に流して排水することができる。この結果、排水性を向上させることができる。
【0097】
また、このようにポンプ120を配設する場合、ポンプ120は前側ドレンホース81及び後側ドレンホース82と排水部ホース86との接続部分ではなく、排水部ホース86に配設してもよい。排水部ホース86にポンプ120を配設した場合でも、エアコンユニット71から排出された水をポンプ120でドレンホース80側に圧送することにより、トラクタ1の傾斜状態に関わらず排水することができる。
【0098】
また、これらのようにポンプ120を配設する場合には、ポンプ120の駆動は水の流れ状態に応じて自動的に行うのが好ましい。例えば、排水部ホース86に、当該排水部ホース86内に水が流れているか否かを検知するセンサ(図示省略)を設け、排水部ホース86内に水が流れていることを、このセンサによって検知している場合に、ポンプ120が駆動するようにしてもよい。これにより、エアコンユニット71からの排水時は、ポンプ120が駆動することによって排水性を向上させることができ、且つ、エアコンユニット71からの排水が無い場合は、ポンプ120を停止することにより、ポンプ120の空転や、不必要な駆動を抑えることができる。この結果、排水性を向上させつつ、ポンプ120の耐久性を向上させることができる。
【0099】
また、上述した空調構造では、前側ドレンホース81はリアピラーフレーム44の上端の開口部分からリアピラーフレーム44内に入り込んでいるが、前側ドレンホース81は、リアピラーフレーム44以外に入り込んで配設されていてもよい。例えば、センターピラーフレーム43がパイプ状の形状で形成され、上端の開口部分が露出している場合、前側ドレンホース81は、このパイプ状のセンターピラーフレーム43内に入り込ませてもよい。前側ドレンホース81は、エアコン下部カバー62の内側から、ピラーフレーム41の内側を通ることにより、ドレンホース排水口85がキャビン10の下方に位置していればよく、前側ドレンホース81が内側を通るピラーフレーム41は、リアピラーフレーム44には限られない。
【0100】
また、上述した空調構造では、前側ドレンホース81は、ドレンホース排水口85がステップフレーム58内に対して開口しており、ドレンホース排水口85から排出された水は、ステップ31の取付部材32から排水されるが、前側ドレンホース81から排出された水は、ステップ31以外から排水されるようにしてもよい。例えば、前側ドレンホース81は、フェンダーフレーム55が接続されるステップフレーム58を貫通し、路面に対して直接開口することにより、前側ドレンホース81のドレンホース排水口85からの排水は、直接路面に対して行われるようにしてもよい。前側ドレンホース81は、ドレンホース排水口85から排出された水がエアコンユニット71よりも前方側の下方で排水することができるように設けられていれば、排水部分の経路は、実施形態に係る空調構造での排水部分の経路以外の形態でもよい。