(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長変換基板の他方の表面の上に形成されており、前記波長変換基板の他方の表面から入射しようとする光の反射を抑制する反射抑制層をさらに備える、請求項1に記載の波長変換素子。
前記反射抑制層は、屈折率が相対的に低い低屈折率層と、屈折率が相対的に高い高屈折率層とが交互に積層された積層体により形成されている、請求項2に記載の波長変換素子。
前記反射層は、Ag、Al、Au、Pd及びTiからなる群から選ばれた金属またはAg、Al、Au、Pd及びTiからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属を含む合金からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の波長変換素子。
前記半田固定層は、AuまたはAuを含む合金、SnまたはSnを含む合金、InまたはInを含む合金、PbまたはPbを含む合金、AlまたはAlを含む合金、若しくは、AgまたはAgを含む合金からなる、請求項5に記載の波長変換素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究した結果、LEDを複数配置した光源などの場合、光源使用中において、波長変換素子が破損したり、経時的に出射される光の強度が低下するという問題があることが分かった。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源使用中に波長変換素子が破損したり、波長変換素子を備える光源から出射される光の強度が低下するのを抑制し得る波長変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波長変換素子は、波長変換基板と、反射層とを備えている。波長変換基板は、励起光が入射したときに、励起光の一部を吸収し、励起光とは波長が異なる光を発する。反射層は、波長変換基板の一方の表面の上に配置されている。反射層は、金属または合金からなる。
【0007】
なお、本発明において、「基板」には、シート状またはフィルム状の部材が含まれるものとする。
【0008】
本発明に係る波長変換素子は、波長変換基板の他方の表面の上に形成されており、波長変換基板の他方の表面から入射しようとする光の反射を抑制する反射抑制層をさらに備えていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る波長変換素子では、反射抑制層は、屈折率が相対的に低い低屈折率層と、屈折率が相対的に高い高屈折率層とが交互に積層された積層体により形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る波長変換素子では、反射層は、Ag、Al、Au、Pd及びTiからなる群から選ばれた金属またはAg、Al、Au、Pd及びTiからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属を含む合金からなることが好ましい。
【0011】
本発明に係る波長変換素子は、反射層と波長変換基板との間に形成されており、反射層と波長変換基板との密着強度を高める密着層をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る波長変換素子では、密着層は、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化銅、チタン、クロムまたはクロムを含む合金からなることが好ましい。
【0013】
本発明に係る波長変換素子は、反射層の上に形成されている半田固定層をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
半田固定層は、AuまたはAuを含む合金、SnまたはSnを含む合金、InまたはInを含む合金、PbまたはPbを含む合金、AlまたはAlを含む合金、若しくは、AgまたはAgを含む合金からなることが好ましい。
【0015】
本発明に係る波長変換素子は、半田固定層と反射層との間に形成されており、Ni、NiCr合金、PtまたはPdからなるバリア層をさらに備えていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る波長変換素子では、波長変換基板は、無機蛍光体粉末が分散しているガラスまたはセラミックスからなることが好ましい。
【0017】
本発明に係る光源は、上記本発明に係る波長変換素子と、波長変換基板の他方の表面に対して励起光を出射する発光素子とを備えている。
【0018】
本発明に係る光源では、発光素子は、半導体発光素子により構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る光源では、波長変換素子は、反射層の上に形成されており、AuまたはAuを含む合金、もしくは、SnまたはSnを含む合金からなる半田固定層をさらに有することが好ましい。その場合において、本発明に係る光源は、筐体と、筐体と波長変換基板の半田固定層とを接合している半田層とをさらに備えていることが好ましい。
【0020】
本発明に係る液晶用バックライトユニットは、上記本発明に係る光源と、導光体とを有する。導光体は、主面と側面とを有する。導光体は、波長変換素子からの光を側面で受光し、主面から面状光として出射する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光源使用中において、波長変換素子の破損や波長変換素子を備える光源から出射される光の強度の低下を抑制し得る波長変換素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、
図1に示す光源1を例に挙げて説明する。但し、光源1及び光源1に含まれる波長変換素子20は、単なる例示である。本発明に係る光源及び波長変換素子は、光源1及び波長変換素子20に何ら限定されない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る光源の模式図である。
図2は、本実施形態における波長変換素子の略図的断面図である。
図3は、本実施形態における反射抑制層の略図的断面図である。
【0025】
図1に示すように、光源1は、発光素子10と、波長変換素子20と、ダイクロイックミラー11と、筐体12とを備えている。発光素子10、ダイクロイックミラー11及び波長変換素子20は、筐体12の内部に収納されて固定されている。筐体12は、発光素子10、ダイクロイックミラー11及び波長変換素子20を保持できるものである限りにおいて特に限定されない。筐体12は、例えば、樹脂や金属、合金により形成することができる。なかでも、筐体12は、金属や合金などの熱伝導率の高い材料からなるものであることが好ましい。具体的には、筐体12は、例えば、鉄、アルミニウム、銅などの金属や、ステンレスなどの合金により形成されていることが好ましい。
【0026】
発光素子10は、波長変換素子20に向けて、波長変換素子20の励起光を出射する。発光素子10は、励起光を出射できるものであるかぎりにおいて特に限定されない。発光素子10は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザー発光素子、EL(ElectroLuminescent)発光素子、プラズマ発光素子などにより構成することができる。
【0027】
図2に示すように、波長変換素子20は、波長変換基板21を備えている。波長変換基板21は、第1及び第2の主面21a、21bを有する。波長変換基板21は、第1の主面21aが発光素子10(
図1を参照)側を向き、発光素子10から出射された励起光L0が第1の主面21aに入射するように配置されている。
【0028】
波長変換基板21は、励起光L0を吸収し、吸収した励起光とは波長が異なる光を出射する蛍光体を含む。具体的には、本実施形態では、波長変換基板21は、無機蛍光体粉末が分散しているガラスからなる。このため、波長変換基板21は、励起光L0の一部を吸収し、吸収した励起光とは波長が異なる光を出射する。無機蛍光体粉末及びガラスは、高い耐熱性を有するため、無機蛍光体粉末が分散しているガラスにより波長変換基板21を形成することにより、波長変換基板21の高い耐熱性を実現することができる。
【0029】
波長変換基板21の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm〜3.0mm程度とすることができる。波長変換基板21が厚すぎると、励起光L0のうち波長変換基板21により吸収される光の割合が多くなり、反射光L2の強度が低くなりすぎる場合がある。一方、波長変換基板21が薄すぎると、蛍光L1の強度が低くなりすぎる場合がある。
【0030】
なお、無機蛍光体粉末は、光源1から出射させようとする光L3の波長や、発光素子10から出射される励起光L0の波長などに応じて適宜選択することができる。無機蛍光体粉末は、例えば、酸化物無機蛍光体、窒化物無機蛍光体、酸窒化物無機蛍光体、硫化物無機蛍光体、酸硫化物無機蛍光体、希土類硫化物無機蛍光体、アルミン酸塩化物無機蛍光体及びハロリン酸塩化物無機蛍光体から選ばれた1種以上からなるものとすることができる。
【0031】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の可視光(波長が440nm〜480nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+、(Sr,Ba)MgAl
10O
17:Eu
2+、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+などが挙げられる。
【0032】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると緑色の可視光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+、SrBaSiO
4:Eu
2+、CdS:In、CaS:Ce
3+、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+、SrSiOn:Eu
2+、ZnS:Al
3+,Cu
+、CaS:Sn
2+、CaS:Sn
2+,F、CaSO
4:Ce
3+,Mn
2+、LiAlO
2:Mn
2+、BaMgAl
10O
17:Eu
2+,Mn
2+、ZnS:Cu
+,Cl
−、Ca
3WO
6:U、Ca
3SiO
4Cl
2:Eu
2+、Sr
0.2Ba
0.7Cl
1.1Al
2O
3.45:Ce
3+,Mn
2+、Ba
2MgSi
2O
7:Eu
2+、Ba
2SiO
4:Eu
2+、Ba
2Li
2Si
2O
7:Eu
2+、ZnO:S、ZnO:Zn、Ca
2Ba
3(PO
4)
3Cl:Eu
2+、BaAl
2O
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0033】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の可視光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+、SrBaSiO
4:Eu
2+、CdS:In、CaS:Ce
3+、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+、SrSiOn:Eu
2+などが挙げられる。
【0034】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると黄色の可視光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無蛍光体粉末としては、ZnS:Eu
2+、Ba
5(PO
4)
3Cl:U、Sr
3WO
6:U、CaGa
2S
4:Eu
2+、SrSO
4:Eu
2+,Mn
2+、ZnS:P、ZnS:P
3−,Cl
−、ZnS:Mn
2+などが挙げられる。
【0035】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の可視光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Ba
5(PO
4)
3Cl:U、CaGa
2S
4:Eu
2+、Sr
2SiO
4:Eu
2+が挙げられる。
【0036】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると赤色の可視光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、CaS:Yb
2+,Cl、Gd
3Ga
4O
12:Cr
3+、CaGa
2S
4:Mn
2+、Na(Mg,Mn)
2LiSi
4O
10F
2:Mn、ZnS:Sn
2+、Y
3Al
5O
12:Cr
3+、SrB
8O
13:Sm
2+、MgSr
3Si
2O
8:Eu
2+,Mn
2+、α−SrO・3B
2O
3:Sm
2+、ZnS−CdS、ZnSe:Cu
+,Cl、ZnGa
2S
4:Mn
2+、ZnO:Bi
3+、BaS:Au,K、ZnS:Pb
2+、ZnS:Sn
2+,Li
+、ZnS:Pb,Cu、CaTiO
3:Pr
3+、CaTiO
3:Eu
3+、Y
2O
3:Eu
3+、(Y、Gd)
2O
3:Eu
3+、CaS:Pb
2+,Mn
2+、YPO
4:Eu
3+、Ca
2MgSi
2O
7:Eu
2+,Mn
2+、Y(P、V)O
4:Eu
3+、Y
2O
2S:Eu
3+、SrAl
4O
7:Eu
3+、CaYAlO
4:Eu
3+、LaO
2S:Eu
3+、LiW
2O
8:Eu
3+,Sm
3+、(Sr,Ca,Ba,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu
2+,Mn
2+、Ba
3MgSi
2O
8:Eu
2+,Mn
2+などが挙げられる。
【0037】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の可視光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、ZnS:Mn
2+,Te
2+、Mg
2TiO
4:Mn
4+、K
2SiF
6:Mn
4+、SrS:Eu
2+、CaS:Eu
2+、Na
1.23K
0.42Eu
0.12TiSi
4O
11、Na
1.23K
0.42Eu
0.12TiSi
5O
13:Eu
3+、CdS:In,Te、CaAlSiN
3:Eu
2+、CaSiN
3:Eu
2+、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、Eu
2W
2O
7などが挙げられる。
【0038】
励起光や発光の波長域に合わせて、複数の無機蛍光体粉末を混合して用いてもよい。例えば、紫外域の励起光を照射して白色光を得る場合は、青色、緑色、赤色の蛍光を発する無機蛍光体粉末を混合して使用すればよい。
【0039】
無機蛍光体粉末の分散媒は、特に限定されない。分散媒としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂などが挙げられる。
【0040】
分散媒としてのガラスは、無機蛍光体粉末を安定して保持できるものである限りにおいて特に限定されない。分散媒として用いることのできるガラスの具体例としては、例えば、珪酸塩系ガラス、硼酸塩系ガラス、SiO
2−B
2O
3−RO系ガラス(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaの少なくとも一種)などの硼珪酸塩系ガラス、SnO−P
2O
5系ガラスなどのリン酸塩系ガラス、硼リン酸塩系ガラスなどが挙げられる。なかでも、SiO
2−B
2O
3−RO系ガラスやSnO−P
2O
5系ガラスが好ましく用いられる。
【0041】
分散媒としてのセラミックスの具体例としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、窒化ケイ素、窒化チタン等の金属窒化物などが挙げられる。
【0042】
波長変換基板21における無機蛍光体粉末の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%〜95質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがより好ましく、50質量%〜90質量%であることが特に好ましい。
図2に示すように、波長変換基板の、発光素子10とは反対側の第2の主面21bの上には、金属または合金からなる反射層24が形成されている。このため、本実施形態では、励起光L0のうち、波長変換基板21により吸収されなかった光や、波長変換基板21において生じた蛍光のうち、反射層24側に出射された光は、反射層24によって、発光素子10側に反射される。よって、励起光L0が波長変換基板21に入射すると、励起光L0を吸収した無機蛍光体粉末が発する蛍光L1と、励起光L0の反射光L2とが波長変換基板21の第1の主面21aから発光素子10側に向けて出射される。よって、
図1に示す波長変換基板21から発光素子10側に出射する光L3は、蛍光L1と反射光L2との合成光となる。従って、発光素子10として青色光を出射するLEDを用い、青色光を吸収し、黄色光を発光する波長変換素子20を用いることにより、例えば、液晶ディスプレイの光源として有用な白色光光源1を実現することができる。なお、合成光L3は、ダイクロイックミラー11により反射されることにより、発光素子10とは異なる方向に取り出される。
【0043】
反射層24の材質は、励起光L0を反射できる金属または合金であれば特に限定されない。反射層24の形成に好ましく用いられる金属及び合金としては、例えば、Ag、Al、Au、Pd及びTiからなる群から選ばれた金属や、Ag−Pd合金などの、これらの金属のうちの少なくとも一種の金属を含む合金が挙げられる。なかでも、反射層24は、AgやAlなどの金属またはAg及びAlのうちの少なくとも一種を含む合金により形成されていることが好ましい。その場合、反射層24の光反射率を高くでき、光源1から出射される合成光L3の強度を高めることができる。以下、本実施形態では、反射層24がAgにより形成されている例について説明する。
【0044】
なお、反射層24の厚みは、励起光L0を好適に反射できる厚みである限りにおいて特に限定されない。反射層24の厚みは、例えば、100nm〜300nm程度とすることができる。反射層24の厚みが薄すぎると、励起光L0の反射率が低くなりすぎる場合がある。一方、反射層24の厚みが厚すぎると、膜応力の増加や表面散乱の影響が生じる場合がある。
【0045】
一方、波長変換基板21の第1の主面21aの上には、反射抑制層22が形成されている。この反射抑制層22の膜厚を調整することで、第1の主面21aから入射しようとする励起光L0の第1の主面21aにおける反射が抑制される。また、蛍光L1や反射光L2の第1の主面21aにおける反射も抑制される。その結果、励起光L0の利用効率を高めることができ、合成光L3の強度を高めることができる。
【0046】
反射抑制層22は、第1の主面21aにおける励起光L0の反射を抑制できるものであれば特に限定されない。反射抑制層22は、例えば、
図3に示すように、低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとが交互に積層された積層体により構成することができる。ここで、低屈折率層22Lは、相対的に屈折率が低い層である。低屈折率層22Lは、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムなどにより形成することができる。高屈折率層22Hは、相対的に屈折率が高い層である。高屈折率層22Hは、例えば、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ハフニウムなどにより形成することができる。なお、高屈折率層22Hの屈折率と、低屈折率層22Lの屈折率とは、0.1以上異なることが好ましい。低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとの総数は、特に限定されないが、例えば、2〜50程度であることが好ましく、4〜20程度であることがより好ましく、4〜10程度であることがさらに好ましい。低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとの総数が少なすぎると、反射抑制効果が十分に得られなくなる場合がある。一方、低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとの総数が多すぎると、膜応力が大きくなり、剥がれやすくなる場合がある。また、低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとの形成に要する時間が長くなりすぎる場合がある。
【0047】
低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとのそれぞれの厚みは、反射を抑制しようとする波長に応じて適宜設定することができる。低屈折率層22Lと高屈折率層22Hとのそれぞれの厚みは、例えば、10nm〜200nm程度とすることができる。
【0048】
反射層24と波長変換基板21の間には、密着層23が形成されている。密着層23は、反射層24との密着強度が、反射層24と波長変換基板21との密着強度よりも高く、かつ波長変換基板21との密着強度が、反射層24と波長変換基板21との密着強度よりも高い層である。従って、この密着層23により、反射層24と波長変換基板21との密着強度が高められている。密着層23は、反射層24と波長変換基板21との密着強度を向上可能なものである限りにおいて特に限定されない。密着層23は、例えば、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化銅、チタン、クロム、クロムを含む合金などにより形成することができる。クロムを含む合金の具体例としては、NiCr合金が挙げられる。
【0049】
なお、密着層23が酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化銅などの酸化物からなる場合は、密着層23の厚みは、例えば、5nm〜500nm程度とすることができる。密着層23が薄すぎると、密着強度の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、密着層23が厚すぎると、膜応力の増加により剥がれが生じる場合がある。特に、酸化クロム、酸化銅の場合には、密着層23が厚すぎると、密着層23による光吸収が大きくなりすぎ、反射光の強度が低下してしまう場合がある。
【0050】
密着層23がチタン、クロム、クロムを含む合金などの金属や合金からなる場合は、密着層23の厚みは、例えば、10nm以下であることが好ましい。密着層23が厚すぎると、密着層23による光吸収が大きくなりすぎ、反射光の強度が低下してしまう場合がある。一方、密着層23が薄すぎると、密着強度の向上効果が十分に得られない場合がある。このため、密着層23がチタン、クロム、クロムを含む合金などの金属や合金からなる場合は、密着層23の厚みは、例えば、0.1nm以上であることが好ましい。
【0051】
また、密着強度が高いAlを反射層24として用いる場合は、反射層(Al)と波長変換基板21との間には密着層23を形成しなくてもよい。
【0052】
反射層24の上には、バリア層25を介して、AuまたはAuを含む合金、もしくは、SnまたはSnを含む合金からなり、半田濡れ性の高い半田固定層26が積層されている。そして、半田固定層26が、Sn合金などの各種半田により形成されている半田層13により筐体12に接合されている。ここで半田固定層26は、半田層13による接合強度を高めるための層である。半田固定層26の厚みは、例えば、100nm〜500nm程度とすることができる。半田固定層26の厚みが薄すぎると、濡れ性が低下する場合がある。一方、半田固定層26の厚みが厚すぎると、生産性が低下する場合がある。
【0053】
バリア層25は、Ni、NiCr合金からなるNiCr合金層、PtからなるPt層、またはPdからなるPd層により構成されている。このバリア層25により、半田による接合時に、半田により反射層24が損傷することを効果的に抑制することができる。バリア層25の厚みは、例えば、100nm〜2000nm程度とすることができる。バリア層25の厚みが薄すぎると、バリア効果が十分に得られず、反射層24が損傷する場合がある。一方、バリア層25の厚みが厚すぎると、膜応力により半田固定層26に割れが生じる場合がある。
【0054】
なお、バリア層25をNiCr合金により形成する場合、NiとCrとのモル比(Ni/Cr)は、50以上100未満とすることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、金属または合金からなる反射層24が設けられている。このため、以下の実施例及び比較例によっても裏付けられるように、光源1の使用中における合成光L3の強度低下を効果的に抑制することができる。この効果が得られる理由は、金属または合金からなり、熱伝導率の高い反射層24を第2の主面の上に形成することにより、波長変換基板21の温度上昇に伴う熱消光が抑制されたためであると考えられる。特に、本実施形態では、反射層24の上に、金属または合金からなり、熱伝導率の高いバリア層25や半田固定層26及び半田層13が形成されている。このため、放熱性がより高くなっており、波長変換基板21の温度上昇に伴う熱消光がより効果的に抑制されたものと考えられる。
【0056】
また、熱消光のより効果的な抑制を図る観点からは、筐体12は、金属や合金などの熱伝導率の高い材料からなるものであることが好ましい。半田層13に換えて、例えば無機接着剤の硬化物からなる無機接着層を設けてもよい。この場合は、バリア層25及び半田固定層26を設ける必要は必ずしもない。
【0057】
この本実施形態の効果は、発光素子10の種類に関わらず得られるものであると考えられるが、高出力のLEDやレーザー素子などの発熱しやすい半導体発光素子10が用いられており、波長変換基板21の温度が上昇しやすい場合により顕著に奏されるものと考えられる。
【0058】
なお、この波長変換基板21の第2の主面21bの上に金属または合金からなり、光透過率の低い反射層24を形成することは、波長変換素子20を、透過型ではなく、反射型にすることによって初めて実現されることである。
【0059】
上記実施形態では、波長変換基板21が、ガラス及び無機蛍光体粉末という無機材料からなる場合について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、有機材料からなる蛍光体粉末を用いてもよいし、蛍光体粉末の分散媒をセラミックスや有機樹脂にしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、ダイクロイックミラー11を用いて合成光L3を取り出す例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、発光素子10を、波長変換基板21に対して励起光L0が斜めに入射するように配置し、ダイクロイックミラー11を用いずに光源を構成してもよい。
【0061】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例や変形例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0062】
(変形例)
図4は、本変形例に係る光源の模式図である。
図4に示すように、本変形例では、筐体12の表面12aに凹部12bが形成されている。波長変換素子20は、その凹部12b内に配置されている。波長変換素子20の表面20aは、筐体12の表面12aと面一である。よって、本変形例では、波長変換素子20の側面が筐体12により覆われている。このため、波長変換素子20の側面からの光の出射が抑制されている。よって、波長変換素子20の表面20aから出射する光の強度を高めることができる。従って、出射光L3の強度を高めることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る液晶用バックライトユニットの模式図である。本実施形態の液晶用バックライトユニット2は、液晶表示装置のバックライトユニットとして用いられるものである。
【0064】
液晶用バックライトユニット2は、光源1aと、導光体30とを備えている。光源1aは、発光素子10と、ダイクロイックミラー11と、半田層13により筐体12に取り付けられた波長変換素子20とを有する。光源10から出射された励起光L0は、ダイクロイックミラー11により波長変換素子20に導かれる。一方、蛍光と反射光との合成光である光L3は、ダイクロイックミラー11を透過する。ダイクロイックミラー11を透過した光L3は、導光体30の側面30aから入射する。導光体30に入射した光は、導光体30内を導光され、主面30bから面状光L4として出射される。
【0065】
本実施形態においても、金属または合金からなる反射層が設けられている。このため、液晶用バックライトユニット2の使用中における合成光L3の強度低下を効果的に抑制することができる。
【0066】
(第3及び第4の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る液晶用バックライトユニットの模式図である。
図7は、第4の実施形態に係る液晶用バックライトユニットの模式図である。
【0067】
第3及び第4の実施形態の液晶用バックライトユニット2a、2bは、上記第2の実施形態の液晶用バックライトユニット2と、光源の構成においてのみ異なる。
図6及び
図7に示すように、第3及び第4の実施形態において用いられている光源1b、1cは、ダイクロイックミラー11を有さない。第3及び第4の実施形態においては、発光素子10からの出射光L0が直接波長変換素子20に入射し、波長変換素子20から出射された光L3が導光体30の側面30aに直接入射するように発光素子10及び波長変換素子20が配置されている。
【0068】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0069】
(実施例)
まず、ホウケイ酸系ガラスからなるガラス粉末85質量%に対し、CaS:Ce
3+の蛍光体粉末15質量%を添加し、混合した後、焼成し、厚み0.2mmの波長変換基板を作製した。
【0070】
次に、作製した波長変換基板の一方の表面に、低屈折率層が酸化ケイ素からなり、高屈折率層が酸化タンタルからなる厚さ250nmの反射抑制層を形成した。
【0071】
さらに、反射抑制層を形成した反対側の表面に、厚さが134nmとなるように、酸化アルミニウムの密着層を形成した後、密着層の上に、厚さ200nmとなるように、Agからなる反射層を形成した。続いて、反射層の上に、厚さ500nmとなるように、NiCr合金からなるバリア層を形成した後、バリア層上に、厚さ300nmとなるように、Auからなる半田固定層を形成して波長変換素子(反射型)を作製した。
【0072】
作製した波長変換素子と金属からなる筐体とを半田を用いて接合した後、反射抑制層を形成した側の表面に光が照射されるように波長変換素子を配置したものを、電流30mAで操作したレーザー光(波長440nm〜450nm)を30分間連続照射し、照射開始直後及び照射開始から30分後の波長変換基板で変換されて出てくる光の強度を測定し、時間経過に伴う発光強度の低下量を評価した。また、目視で、破損がないかを確認した。その結果、本実施例における波長変換素子の発光強度の低下量は15%と小さいものであった。また、波長変換素子及びその周辺に破損は認められなかった。
【0073】
(比較例)
実施例と同じ方法で作製した波長変換素子を、反射抑制層を形成した側の表面に光が照射されるようにエポキシ樹脂を用いて筐体と接着した後、実施例と同様の評価を行った。その結果、照射開始から約20分後に波長変換素子に破損が生じた。