特許第5678914号(P5678914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000002
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000003
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000004
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000005
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000006
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000007
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000008
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000009
  • 特許5678914-車載用のヒータエレメント 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678914
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】車載用のヒータエレメント
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20150212BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20150212BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   H05B3/20 341
   B60R16/02 675Z
   B62D1/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-63943(P2012-63943)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-196958(P2013-196958A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−114389(JP,U)
【文献】 実開昭62−200995(JP,U)
【文献】 実開昭63−109483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
B60R 16/027
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の基材と、前記基材上に重ね合わされた導電性の熱伝導シートと、前記基材及び前記熱伝導シートの間に配設されて通電により発熱する電熱線と、前記電熱線及び前記熱伝導シートの間を電気的に絶縁する絶縁層とが設けられた車載用のヒータエレメントであって、
前記電熱線の延設方向において前記熱伝導シートが分割され、分割された前記熱伝導シート同士の間から前記絶縁層が露出している
ことを特徴とする車載用のヒータエレメント。
【請求項2】
前記電熱線の延設方向に対して交差する方向に延びるスリットによって前記熱伝導シートが分割されている
請求項1に記載の車載用のヒータエレメント。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記電熱線の外周面を被覆している
請求項1または2に記載の車載用のヒータエレメント。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記熱伝導シートにあって前記基材側の面に形成されている
請求項1または2に記載の車載用のヒータエレメント。
【請求項5】
前記ヒータエレメントは、ステアリングホイールに設けられるヒータエレメントである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載用のヒータエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるヒータエレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるヒータエレメントとして、例えば特許文献1には、ステアリングホイールに設けられたヒータエレメントが開示されている。
この特許文献1に記載のヒータエレメントは、電熱線と、電熱線の外側に設けられた内側外皮と、内側外皮の外側に設けられた外側外皮と、外側外皮に溶着されたアルミニウム製の熱伝導シート(均熱箔)とを備えている。こうしたヒータエレメントでは、導電体である電熱線と熱伝導シートとの間の電気的絶縁性が、内側外皮や外側外皮といった絶縁層によって確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−11029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記絶縁層が2箇所以上損傷すると、それら損傷箇所の間の熱伝導シートには、本来電熱線を流れるはずの電流が流れるようになるため、電熱線全体の抵抗値が小さくなり、電熱線の発熱量が増大してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁層の損傷に伴う電熱線の発熱量増大を抑えることのできる車載用のヒータエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非導電性の基材と、前記基材上に重ね合わされた導電性の熱伝導シートと、前記基材及び前記熱伝導シートの間に配設されて通電により発熱する電熱線と、前記電熱線及び前記熱伝導シートの間を電気的に絶縁する絶縁層とが設けられた車載用のヒータエレメントであって、前記電熱線の延設方向において前記熱伝導シートが分割され、分割された前記熱伝導シート同士の間から前記絶縁層が露出していることを要旨とする。
【0007】
同構成では、電熱線の延設方向において熱伝導シートを分割するようにしており、分割された熱伝導シート間では電気の導通が起きない。従って、互いに異なる熱伝導シートの下で絶縁層が損傷しても、それら熱伝導シート間には電熱線の電流が流れない。そのため、電熱線全体の抵抗値が変化することは無く、絶縁層の損傷に伴う電熱線の発熱量増大も生じない。
【0008】
また、1つの熱伝導シートの下で絶縁層が2箇所以上損傷した場合、電熱線を流れる電流は、その1つの熱伝導シート上を流れるだけである。従って、複数に分割された熱伝導シート全体に対して、電熱線の電流が流れる熱伝導シートは一部のみであり、電熱線の短絡距離は比較的短くなる。そのため電熱線全体の抵抗値の減少が抑えられ、これにより絶縁層の損傷に伴う電熱線の発熱量増大も抑えられる。
【0009】
このように同構成によれば、絶縁層の損傷に伴う電熱線の発熱量増大を抑えることができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載用のヒータエレメントにおいて、前記電熱線の延設方向に対して交差する方向に延びるスリットによって前記熱伝導シートが分割されていることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、熱伝導シートにスリットを形成するだけで熱伝導シートを分割することができるため、簡易な構成で熱伝導シートを分割することができるようになる。
上記絶縁層については、請求項3に記載の発明によるように、電熱線の外周面を絶縁層で被覆する、という構成や、請求項4に記載の発明によるように、熱伝導シートにあって基材側の面に絶縁層を形成する、という構成を採用することができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載用のヒータエレメントにおいて、前記ヒータエレメントは、ステアリングホイールに設けられるヒータエレメントであることを要旨とする。
【0012】
車両の車室内に設けられるステアリングホイールは、車両走行中、車両の運転者が常時触れている。従って、ステアリングホイールにヒータエレメントを設けた場合において、上述したような電熱線の発熱量増大が起きると、比較的長い時間に渡って運転者に不快感を与えてしまうおそれがある。この点、同構成では、ステアリングホイールに設けられるヒータエレメントにおいて、上述したような電熱線の発熱量増大を抑えることができるため、長い時間に渡って運転者に不快感を与えることを抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる車載用のヒータエレメントの一実施形態について、これが適用されるステアリングホイールの側面図。
図2図1のステアリングホイールのC矢視図。
図3】同実施形態におけるヒータエレメントの部分断面図(図4の3−3線に沿った部分断面図)。
図4】同実施形態におけるヒータエレメントの平面図。
図5】同実施形態における熱伝導シートの分割状態を示す模式図。
図6】従来のヒータエレメントの部分断面図(電熱線の延設方向における部分断面図)。
図7】同実施形態におけるヒータエレメントの部分断面図(電熱線の延設方向における部分断面図)。
図8】同実施形態におけるヒータエレメントの部分断面図(電熱線の延設方向における部分断面図)。
図9】同実施形態の変形例におけるヒータエレメントの部分断面図(電熱線の径方向における部分断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車載用のヒータエレメントを具体化した一実施形態について、図1図8を併せ参照して説明する。
図1及び図2に示すように、車両の運転席よりも前方(図1の左方)には、回転軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)11が、運転席側(図1の右側)ほど高くなるように傾斜した状態で配設されている。ステアリングシャフト11の後端部には、ステアリングホイール12が一体回転可能に取付けられている。
【0015】
ステアリングホイール12は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)13、パッド部14及びスポーク部16(図2参照)を備えている。リム部13は、運転者によって把持されて回転操作(操舵)される部分であり、上記回転軸線L1を中心とした略円環状をなしている(図2参照)。
【0016】
パッド部14は、リム部13によって囲まれた空間に配置されている。パッド部14の前側部分はロアカバー15によって構成されている(図1参照)。スポーク部16は、リム部13及びパッド部14間に複数本(ここでは3本)設けられている。
【0017】
なお、回転操作(操舵)されるリム部13における周方向の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときの状態(中立状態)を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。
【0018】
ステアリングホイール12の上記リム部13、スポーク部16及びパッド部14の各内部には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等によって形成された芯金が配設されている。この芯金のうち、リム部13内に位置するものはリム部13の骨格部分をなすものであって、運転者側から見て略円環状をなしており、リム部芯金20と呼ばれる。
【0019】
先の図2に破線で示すように、リム部13の周方向について、多くの運転者が握る箇所である左右両側部にはヒータエレメント40が組込まれている。より詳細には、ヒータエレメント40は、リム部芯金20を覆うように貼り付けられている。
【0020】
以下、本実施形態におけるヒータエレメント40の構造を説明する。
図3に、ヒータエレメント40の断面構造を示す。また、図4に、ヒータエレメント40を展開した状態での平面図を示す。
【0021】
これら図3及び図4に示すように、ヒータエレメント40は、断熱シート41、熱伝導シート43、発熱体45及び粘着層47を備えている。なお、本実施形態における熱伝導シート43は、複数の熱伝導シート、より具体的には第1〜第10熱伝導シート43a〜43jにて構成されている。
【0022】
図3に示すように、断熱シート41は、可撓性を有する非導電性の断熱材料によって、厚みが均一(本実施形態では2〜3mm程度)な板状に形成されている。この断熱材料としては、弾性を有していて柔軟な樹脂材料、例えば、ウレタン、ゴム等が適している。ちなみに、断熱性を高めるうえでは断熱シート41は発泡体であることが好ましい。そこで本実施形態では、発泡ウレタンによって断熱シート41が形成されている。なお、この断熱シート41は、上記基材を構成する。
【0023】
熱伝導シート43は、発熱体45から発せられる熱を素早く拡散するためのものであり、上記断熱シート41よりも厚みが薄く、熱伝導率の高い材料によって形成されている。熱伝導シート43は、上記断熱シート41と同様にリム部芯金20に沿って撓ませられるものであるため、厚みの薄いものであることが好ましい。本実施形態では、熱伝導シート43が導電性のアルミ箔によって形成されている。この熱伝導シート43は、上記断熱シート41上に重ね合わされ、接着等の固定手段によって同断熱シート41に固定されている。
【0024】
発熱体45は、断熱シート41及び熱伝導シート43の間に配設されて通電により発熱する電熱線45aと、この電熱線45a及び熱伝導シート43の間を電気的に絶縁する絶縁層45bとで構成されている。
【0025】
電熱線45aは、通電により発熱するものであればよく、例えば、電気抵抗が大きく、通電により発熱する線材によって形成されている。また、図4に示すように、発熱体45(電熱線45a)は、ヒータエレメント40の長手方向(図4の上下方向)に波状をなすように繰り返し曲げられて配置されている。
【0026】
絶縁層45bは、非導電性の樹脂等で形成されており、電熱線45aの外周面を被覆している。
粘着層47は、断熱シート41の発熱体45とは反対側の面において、その全面に渡って均一の厚みに形成されている。
【0027】
図4に示すように、ヒータエレメント40は、展開された状態では長尺状をなしている。このヒータエレメント40は、相対向した状態で長手方向に延びる一対の対向縁部48を有している。ヒータエレメント40における断熱シート41及び熱伝導シート43には、各対向縁部48の複数箇所から対向する対向縁部48側へ向けて延びる切欠き部49が形成されている。ここでは、各切欠き部49は、各対向縁部48から遠ざかるに従い幅狭となるように形成されている。これら切欠き部49により、ヒータエレメント40をリム部芯金20に貼り付けた状態において、同ヒータエレメント40には、皺が入りにくくなる。
【0028】
断熱シート41上に重ね合わされた熱伝導シート43には、ヒータエレメント40の中央部付近であって同ヒータエレメント40の長手方向に形成された第1スリット61と、ヒータエレメント40の長手方向に対して直交する方向に形成された第2〜第5スリット62〜65とが設けられている。これら第2〜第5スリット62〜65は、互いに対向する切欠き部49の間に設けられており、それら第2〜第5スリット62〜65のヒータエレメント40の長手方向に対する形成間隔は略均等にされている。
【0029】
図5に模式的に示すように、これら第1〜第5スリット61〜65により、熱伝導シート43は10枚の熱伝導シート、すなわち第1〜第10熱伝導シート43a〜43jに分割されている。より詳細には、発熱体45(電熱線45a)に対して交差するスリット、つまり発熱体45(電熱線45a)の延設方向に対して交差する方向に延びるスリット(第1〜第5スリット61〜65)によって、熱伝導シート43は発熱体45(電熱線45a)の延設方向において分割されている。具体的には、発熱体45が外部に取り出されている熱伝導シートを第1熱伝導シート43aとする。そして、第1熱伝導シート43aを基準にして発熱体45の延設方向に向かい時計回りに第2熱伝導シート43b、第3熱伝導シート43c、第4熱伝導シート43d、第5熱伝導シート43e、第6熱伝導シート43f、第7熱伝導シート43g、第8熱伝導シート43h、第9熱伝導シート43i、第10熱伝導シート43jが設けられている。
【0030】
次に、図6図8を参照して、熱伝導シート43が複数に分割された本実施形態のヒータエレメント40の作用を説明する。なお、図6に示すヒータエレメント400は、本実施形態のヒータエレメント40とは異なり、熱伝導シート43が分割されていないヒータエレメント、いわば従来相当のヒータエレメントとなっている。
【0031】
図6に示すように、熱伝導シート43が分割されていないヒータエレメント400では、例えば絶縁層45bが2箇所損傷し、それら第1損傷箇所S1及び第2損傷箇所S2のそれぞれで熱伝導シート43が電熱線45aに接触した場合、第1及び第2損傷箇所S1、S2の間の熱伝導シート43には、本来電熱線45aを流れるはずの電流が流れる。このようにして電熱線45aの一部が熱伝導シート43によって短絡すると、電熱線45a全体の抵抗値が小さくなるため、電熱線45aの発熱量が増大してしまうおそれがある。なお、こうした電熱線45aの発熱量増大は、絶縁層45bの損傷が2箇所以上あれば生じ得るものである。
【0032】
一方、本実施形態のヒータエレメント40は、上述したように電熱線45aの延設方向において熱伝導シート43が分割されている。このように分割された熱伝導シート43間では電気の導通が起きない。
【0033】
従って、互いに異なる熱伝導シート43の下で絶縁層45bが損傷した場合、例えば図7に示すように、第4熱伝導シート43dの下で絶縁層45bが損傷し、この第1損傷箇所S1で熱伝導シート43が電熱線45aに接触する。また、第8熱伝導シート43hの下でも絶縁層45bが損傷し、この第2損傷箇所S2でも熱伝導シート43が電熱線45aに接触する場合には、熱伝導シート43が分割されているため、それら第4熱伝導シート43dと第8熱伝導シート43hとの間には電熱線45aの電流が流れない。そのため、電熱線45a全体の抵抗値が変化することは無く、絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大が生じない。ちなみに互いに異なる3つ以上の熱伝導シート43の下でそれぞれ絶縁層45bが1箇所づつ損傷した場合でも、各熱伝導シート43間には電熱線45aの電流が流れないため、この場合でも電熱線45a全体の抵抗値が変化することは無く、絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大が生じない。
【0034】
また、1つの熱伝導シートの下で絶縁層45bが2箇所以上損傷した場合、例えば図8に示すように、第2熱伝導シート43bの下で絶縁層45bが2箇所損傷し、それら第1損傷箇所S1及び第2損傷箇所S2のそれぞれで熱伝導シート43が電熱線45aに接触する場合には、次のようになる。すなわち電熱線45aを流れる電流は、その1つの熱伝導シート上、つまり第2熱伝導シート43b上を流れるだけである。従って、複数に分割された熱伝導シート43全体に対して、電熱線45aの電流が流れる熱伝導シートは一部のみとなり、電熱線45aの短絡距離は比較的短くなる。そのため電熱線45a全体の抵抗値の減少が抑えられ、これにより絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大が抑えられるようになる。ちなみに、1つの熱伝導シートの下で絶縁層45bが2箇所以上損傷した場合(例えば第2熱伝導シート43bの下で絶縁層45bが3箇所損傷した場合など)には、短絡距離がもっとも長い2つの損傷箇所の間を電熱線45aの電流が流れる。従って、1つの熱伝導シートの下で絶縁層45bが3箇所以上損傷した場合でも、実質的には1つの熱伝導シートの下で絶縁層45bが2箇所損傷した場合と同一の上記作用が得られる。
【0035】
また、車両の車室内に設けられるステアリングホイール12は、車両走行中、運転者が常時触れている。従って、ステアリングホイール12にヒータエレメントを設けた場合において、上述したような電熱線45aの発熱量増大が起きると、比較的長い時間に渡って運転者に不快感を与えてしまうおそれがある。この点、本実施形態では、ステアリングホイール12に設けられるヒータエレメント40において、上述したような電熱線45aの発熱量増大を抑えることができるため、長い時間に渡って運転者に不快感を与えてしまうことを抑えることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)車載用のヒータエレメント40には、電熱線45a及び熱伝導シート43の間を電気的に絶縁する絶縁層45bが設けられている。そして、電熱線45aの延設方向において熱伝導シート43が分割されている。従って、互いに異なる熱伝導シート43の下で絶縁層45bが損傷しても、それら互いに異なる熱伝導シート43間には電熱線45aの電流が流れない。そのため、電熱線45a全体の抵抗値が変化することは無く、絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大も生じない。
【0037】
また、1つの熱伝導シート43の下で絶縁層45bが2箇所以上損傷した場合、電熱線45aを流れる電流は、その1つの熱伝導シート43上を流れるだけである。そのため電熱線45a全体の抵抗値の減少が抑えられ、これにより絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大も抑えられる。
【0038】
このようにして上記実施形態によれば、絶縁層45bの損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大を抑えることができるようになる。
(2)電熱線45aの延設方向に対して交差する方向に延びるスリット(第1〜第5スリット61〜65)によって熱伝導シート43を分割するようにしている。従って、熱伝導シート43にスリットを形成するだけでその熱伝導シート43を分割することができるため、簡易な構成で熱伝導シート43を分割することができる。
【0039】
(3)ステアリングホイール12に設けられたヒータエレメント40の熱伝導シート43を分割するようにしている。そのため、上述したような電熱線45aの発熱量増大によって、長い時間に渡り運転者に不快感を与えてしまうことを抑えることができる。
【0040】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・熱伝導シート43を10枚に分割したが、分割枚数は適宜変更することができる。
・熱伝導シート43にスリットを設けることで、同熱伝導シート43を分割するようにした。この他、予め複数の熱伝導シート43を用意しておく。そして、各熱伝導シート43を互いに離間させた状態で断熱シート41上に設けることで、電熱線45aの延設方向において熱伝導シート43が分割された状態にしてもよい。
【0041】
・熱伝導シート43を重ね合わせる基材として断熱シート41以外のものを適用することもできる。例えば、粘着層47を構成するシートを基材にしてもよい。
・絶縁層45bは、電熱線45aの外周面を被覆するように設けられていた。この他、電熱線45a及び熱伝導シート43の間を電気的に絶縁するように設けられているのであれば、他の配設態様であってもよい。
【0042】
例えば図9に示すように、発熱体45から絶縁層45bを省略し、発熱体45を電熱線45aのみで構成する。そして、熱伝導シート43にあって断熱シート41側(基材側)の面に、絶縁層45bと同等の機能を有する絶縁層100を形成するようにしてもよい。この場合でも、絶縁層100の損傷に伴う電熱線45aの発熱量増大を抑えることができる。
【0043】
・熱伝導シート43は、発熱体45が発した熱を素早く拡散できるものであればよく、アルミ箔とは異なる材料によって形成されたものが熱伝導シート43として用いられてもよい。例えば、熱伝導シート43は、銅箔からなるものであってもよい。
【0044】
・発熱体45は通電により発熱するものであればよく、上述した電熱線45aとは異なるものが発熱部材として用いられてもよい。例えば、絶縁シート上に抵抗体層が形成されたものが発熱体45とされてもよい。
【0045】
・発熱体45は、上記実施形態とは異なる態様で、断熱シート41及び熱伝導シート43間に配置されてもよい。例えば、発熱体45は、ヒータエレメント40の短手方向に波状をなすように繰り返し曲げられて配置されてもよい。
【0046】
・ヒータエレメント40における粘着層47を省略してもよい。この場合には、ヒータエレメント40は、例えば接着剤によってリム部芯金20に貼付けられてもよい。
・第2〜第5スリット62〜65を、互いに対向する切欠き部49の間に設けるようにしたが、この他の部位に設けるようにしてもよい。要は、熱伝導シート43において、電熱線45aの延設方向に対し交差する方向にスリットが形成されていればよい。
【0047】
・切欠き部49は、上記実施形態とは異なる形状に形成されてもよい。また、切欠き部49を省略してもよい。
・本発明にかかるヒータエレメントは、上述したステアリングホイール12に限らず、シフトノブ、座席等の他の車載用部材のヒータエレメントに適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングホイール、13…リム部、14…パッド部、15…ロアカバー、16…スポーク部、20…リム部芯金、40…ヒータエレメント、41…断熱シート、43…熱伝導シート、43a…第1熱伝導シート、43b…第2熱伝導シート、43c…第3熱伝導シート、43d…第4熱伝導シート、43e…第5熱伝導シート、43f…第6熱伝導シート、43g…第7熱伝導シート、43h…第8熱伝導シート、43i…第9熱伝導シート、43j…第10熱伝導シート、45…発熱体、45a…電熱線、45b…絶縁層、47…粘着層、48…対向縁部、49…切欠き部、61…第1スリット、62…第2スリット、63…第3スリット、64…第4スリット、65…第5スリット、100…絶縁層、400…ヒータエレメント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9