(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(20)を収容するエンジンルーム(8)を設け、該エンジンルーム(8)におけるエンジン(20)よりも外側の部位にラジエータ(80)を配置し、該ラジエータ(80)の外側の部位に濾過体(12)を配置し、前記エンジン(20)とラジエータ(80)の間の部位にファン(40)を配置した作業車輌の原動部構造において、前記ラジエータ(80)の内側にシュラウド(61,81)を備え、該シュラウド(61,81)に基部を支持されると共に前記ファン(40)の回転軸に向けて延設された第1フレーム(64)によってファン(40)を軸受し、前記エンジン(20)の駆動力を変速してファン(40)側に出力する油圧式無段変速機(30)を、前記エンジンルーム(8)における、前記エンジン(20)に対してファン(40)を配置した側とは反対側の上部に配置し、該油圧式無段変速機(30)を前記エンジン(20)の上部内側に位置する上側フレーム(15)に支持し、該油圧式無段変速機(30)の正転方向および逆転方向への変速作動によって、前記ファン(40)を正転駆動して濾過体(12)の外側から内側へ外気を吸入する冷却状態と、前記ファン(40)を逆転駆動して濾過体(12)の内側から外側へ風を吹き出す除塵状態とに切換自在な構成とし、前記油圧式無段変速機(30)によって駆動される第1出力軸(33)をエンジン(20)の上方に配置し、該第1出力軸(33)をエンジン(20)の上方を横断して外側方へ延伸させ、該第1出力軸(33)の外側端部からファン(40)を駆動する構成とし、前記油圧式無段変速機(30)を、ファン(40)の回転軸心方向視において該ファン(40)の回転軌跡の外側に配置し、該油圧式無段変速機(30)の第1出力軸(33)の外側端部に備えた第1プーリ(34)と、ファン(40)の中心部に取り付けた第1入力軸(41)の端部に備える第2プーリ(42)とに第1ベルト(35)を巻き掛け、前記第1出力軸(33)の外側端部とファン(40)を第1ベルト(35)で連動する構成とし、前記第1出力軸(33)を軸支する出力管(33A)の外側端部を、前記ファン(40)を軸受する第1フレーム(64)の中間部から設けた第2フレーム(136,137)で支持したことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
前記ラジエータ(80)と濾過体(12)の間の部位に、車体に備えた油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ(85A,85B)を配置し、該オイルクーラ(85A,85B)と濾過体(12)の間の部位には、エンジン(20)に吸気される空気を冷却するインタークーラ(90)と、空調機器の冷媒を冷却するコンデンサ(91)を上下方向にずらして配置した請求項4記載の作業車輌の原動部構造。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするために便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0020】
コンバインは、
図1〜
図3に示すように、機体フレーム1の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行う脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前方には圃場の穀桿を収穫する刈取装置4が設けられている。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により外部へ排出される。また、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作部を備えたキャビン6が設けられ、キャビン6の下方にはエンジンルーム8が設けられている。
【0021】
エンジンルーム8のエンジンカバー11には目抜き鉄板などからなる濾過体12(12A,12B,12C)が設けられている。また、濾過体12A、12B、12Cの目合いを同一にすることもできるが、ファン40と対向して設けられていない濾過体12Aの目合いを大きくし、ファン40と対向して設けられている濾過体12B、12Cの目合いを小さくするのが好ましい。
【0022】
エンジンカバー11の内側には、
図4〜
図8に示すように、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、ファン40、エンジン20が配置され、エンジン20の内側(ファン40とは反対側)の上方に、ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させてファン用油圧式無段変速装置(油圧式無段変速機)30が配置されている。
【0023】
インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、ラジエータ80の外側に設けられた支持部材に着脱自在に取付けられている。
【0024】
オイルクーラ85は、昇降用シリンダ及びミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、ラジエータ80の外側に設けられた支持部材に取付けられている。なお、用途毎に複数個のオイルクーラ85を設けることもできる。
【0025】
ラジエータ80は、エンジン20により加熱された冷却水を冷却する機器であり、エンジン20の冷却水経路であるマニホールドに接続されている。
ラジエータ80は、オイルクーラ85とファン40の間に配置され、ラジエータ80の外側には、インタークーラ90及びオイルクーラ85を取付ける支持部材が設けられ、ラジエータ80の内側には、後述するファン40の吸入効率を高めるため、ファン40を取り囲むシュラウド81が設けられている。
【0026】
シュラウド81の形状は、ファン40の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ファン40による外気の吸入の抵抗を小さくするため薄板状の鋼板により成形加工するのが好適である。
【0027】
ファン40は、正転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体12A〜12Cを介して外気を吸入し、ラジエータ80、エンジン20を冷却し、逆転駆動状態にあっては、濾過体12A〜12Cを介して機体内側の内気を排気し、併せて、濾過体12A〜12Cに付着した藁屑、塵埃等を除去する機器である。
【0028】
ファン40は、羽根40Aと羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、ファン40の中心部40Bには、内側(エンジン20側)に伸びる入力軸
(第1入力軸)41が取付けられ、入力軸41の内側端部には、プーリ
(第2プーリ)42が軸支されている。
【0029】
ファン用油圧式無段変速装置30は、ファン40の正転・逆転駆動状態の切換え、ファン用油圧式無段変速装置30の入力軸31に伝動されたエンジン20の回転(駆動力)の増減速を行なう機器である。
【0030】
ファン用油圧式無段変速装置30は、ファン40の吸入・排気を能率良く行ない、エンジン20の振動による影響を低減するために、機体フレーム1から立設したエンジンルーム8の前側フレーム13と後側フレーム14に架設した上側フレーム15上にブラケット(取付けメタル)を介して取付けられている。また、エンジン20は、エンジ20から発生する振動の伝達を防止するために、エンジンマウント24を介して機体フレーム1に取付けられており、ブラケットには、部品点数を低減するために、ファン用油圧式無段変速装置30の正転・逆転駆動状態の切換えを行なうトラニオン、回転(駆動力)の増減速を行なう制御ギヤ等が取付けられている。なお、トラニオンによって、後述する走行用油圧式無段変速装置150から伝動された回転は逆回転に変更される。すなわち、走行用油圧式無段変速装置150から伝動された回転が正転の場合、ファン用油圧式無段変速装置30の回転は逆転となり、伝動された回転が逆転の場合、ファン用油圧式無段変速装置30の回転は正転に変更される。
【0031】
ファン用油圧式無段変速装置30は、
図4に示すように、エンジン20の内側(ファン40とは反対側)の上方に配置されており、
図5に示すように、エンジン20の吸気を過給するためにエンジン20の排気ガスが流入するタービン25よりも前方で、走行用油圧式無段変速装置150よりも後方のエンジン20のクランク軸21の上方近傍に配置されており、
図6に示すように、キャビン6内のシート(着座シート)6Aと共に開閉自在な支持プレート6Bの下方に配置され、
図7に示すように、ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させて配置されている。
【0032】
なお、圧縮空気を送風するコンプレッサ45は、ファン用油圧式無段変速装置30の略後方に並列して配置されており、エンジン20の後方には、エンジン20から排出される排気ガスに含まれる不純物を除去するために、ディーゼル微粒子捕集フィルタ26が設けられており、ファン用油圧式無段変速装置30は、シート6Aの真下よりも内側に偏倚させて設けられている。
【0033】
エンジン20の内側(ファン40とは反対側)のクランク軸21の先端部に軸支されたプーリ
(第3プーリ)22と、エンジン20の前方に配置された走行用油圧式無段変速装置150の入力軸
(第2入力軸)151の先端部に軸支されたプーリ
(第4プーリ)152には、ベルト
(第2ベルト)23が巻き掛けられており、エンジン20の回転が、走行用油圧式無段変速装置150に伝動される。なお、ベルト23は、ベルト23の耐久性を向上させるために、
図6の矢印で示すエンジン20のプーリ22の逆転駆動状態時(ファン40の正転駆動状態時)にベルト23の緩み側をテンションアーム23Aのローラ23Bによって押圧している。
【0034】
走行用油圧式無段変速装置150の入力軸151の先端部に軸支されたプーリ152と、ファン用油圧式無段変速装置30の内側(ファン40とは反対側)の入力軸31の先端部に軸支されたプーリ
(第5プーリ)32には、ベルト
(第3ベルト)153が巻き掛けられており、走行用油圧式無段変速装置150に伝動された回転が、ファン用油圧式無段変速装置30に伝動される。なお、ベルト153は、ベルト153の耐久性を向上させるために、
図6の矢印で示す走行用油圧式無段変速装置150のプーリ152の逆転駆動状態時(ファン40の正転駆動状態時)にベルト153の緩み側をテンションアーム153Aのローラ153Bによって押圧している。
【0035】
ファン用油圧式無段変速装置30の外側(ファン40側)には、ファン40にエンジン20の回転を伝動するエンジン20の上方を横断する長軸な第1出力
軸33と、コンプレッサ45にエンジン20の回転を伝動する短軸な第2出力軸36が設けられている。
【0036】
ファン用油圧式無段変速装置30の第1出力軸33の先端部に軸支されたプーリ
(第1プーリ)34と、ファン40の入力軸41の先端部に軸支されたプーリ42には、ベルト
(第1ベルト)35が巻き掛けられており、ファン用油圧式無段変速装置30に伝動された回転が、ファン40に伝動される。なお、ベルト35は、ベルト35の耐久性を向上させるために、
図7の矢印で示すファン40の正転駆動状態時にベルト35の緩み側をテンションアーム35Aのローラ35Bによって押圧している。
【0037】
ファン用油圧式無段変速装置30の第2出力軸36の先端部に軸支されたプーリ
(第6プーリ)37と、コンプレッサ45の入力軸46の先端部に軸支されたプーリ
(第7プーリ)47には、ベルト
(第4ベルト)38が巻き掛けられており、ファン用油圧式無段変速装置30に伝動された回転が、コンプレッサ45に伝動される。なお、ファン用油圧式無段変速装置30の入力軸31のプーリ32からコンプレッサ45にファン用油圧式無段変速装置30の回転を伝動することもできる。
【0038】
図9に示すように、ファン用油圧式無段変速装置30の流入管110及び流出管111は、それぞれ油圧バルブ装置200とオイルクーラ85の間の油圧回路に接続されている。ファン用油圧式無段変速装置30から流出した駆動オイルは、オイルクーラ85で冷却されるため、ファン用油圧式無段変速装置30に専用の冷媒用チャージポンプを設ける必要はない。
【0039】
駆動用オイルは、オイルタンク201から浮遊物等を除去するフィルタ202を介して走行用油圧式無段変速装置151に流入し、走行用油圧式無段変速装置151に流入した一部の駆動用オイルは、走行用油圧式無段変速装置151から昇降用シリンダ及びミッションを駆動する作業バルブを有する油圧バルブ装置200に流入し、その後、油圧バルブ装置200からオイルクーラ85を介して再びオイルタンク201に流入する。
【0040】
また、走行用油圧式無段変速装置150に流入した一部の駆動用オイルは、走行用油圧式無段変速装置151からフィルタ203と分流バルブ204を介して刈取用油圧式無段変速装置191に流入し、その後、刈取用油圧式無段変速装置155からオイルタンク201に流入する。
【0041】
ファン用油圧式無段変速装置30は、
図10に示すように、ファン40の中立状態(正転・逆転駆動を行なわない状態)を迅速に行ない、ファン40の逆転駆動状態における回転速度を速くするために、正転側にオリフィス114を設けている。入力軸31に接続された定常式油圧ポンプ112と、出力軸33に接続された可変式油圧モータ113を有する。入力軸31に伝動された回転を増減速し出力軸33,36に出力するには、キャビン6に設けられた操作レバーで遠隔操作される可変式油圧ポンプ112の斜板115の傾斜角度を変更する。
【0042】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第2の実施形態について説明する。なお、同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
図11、
図12に示すように、第2の実施形態は、エンジンルーム8のエンジンカバー11の内側には、外側から順に、インタークーラ90、オイルクーラ85、ラジエータ80、ファン40、エンジン20が配置され、エンジン20の内側の上方に、ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させファン用油圧式無段変速装置30が配置されており、ファン用油圧式無段変速装置30の第1出力軸33に軸支されたプーリ34に隣接した内側に上側ファン50が配置されている。
【0043】
上側ファン50の外径は、プーリ34の外径よりも若干大きく形成されており、上側ファン50の中心部は、ファン用油圧式無段変速装置30の第1出力軸33に支持されている。また、上側ファン50の正転・逆転駆動状態は、ファン40の正転・逆転駆動状態と一致している。
【0044】
上側ファン50の正転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体12Aを介して外気を吸入し、特に、ファン用油圧式無段変速装置30及びキャビン6内のシート6Aの前方部を冷却し、逆転駆動状態にあっては、特に濾過体12Aに付着した藁屑、塵埃等を除去する機器である。なお、第2ファン50によって吸引された外気をファン用油圧式無段変速装置30、キャビン6内のシート6Aの前方部流すために、エンジン22に隣接する仕切板51を設けることが好適である。
【0045】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第3の実施形態について説明する。なお、同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
図13〜16に示すように、エンジンルーム8の内側にはエンジン20が配置され、エンジン20の外側(外気が吸入される上流側)には、一定の間隔を隔ててラジエータ80が配置され、エンジン20とラジエータ80の間には正転・逆転駆動するファン40が配置されている。また、ラジエータ80の外側にはオイルクーラ85A,85Bが上下に配置され、下側に配置されたオイルクーラ85Bの外側にはインタークーラ90が配置され、上側に配置されたオイルクーラ85Aの外側には、一定の間隔を隔ててコンデンサ91が配置されている。
【0046】
エンジン20は、エンジン20で発生する振動の伝達を防止するためにエンジンマウント24を介して機体フレーム1に取付けられ、エンジン20の出力軸であるクランク軸(図示省略)は、左右方向での内側に向かって延設している。また、クランク軸の回転(駆動力)は、ベルトを介してファン40を駆動するエンジン20の上側に設置されたファン用油圧式無段変速装置30に伝動される。
【0047】
ファン用油圧式無段変速装置30は、入力軸に伝動された回転の増減速と、ファン40の正転・逆転駆動状態の切換えを行なう機器であり、ファン用油圧式無段変速装置30は、ファン40の吸入・排気を能率良く行なうためにファン40の回転軌跡の外側に偏倚したエンジン20の上方左側に配置されている。なお、回転の増減速、正転・逆転駆動状態の切換えは、キャビン6内に設けられた操作スイッチ等によって遠隔操作することができる。
【0048】
ファン用油圧式無段変速装置30によって増減速等された回転は、ファン用油圧式無段変速装置30から外側に向かって延設した第1出力軸33の端部に支持されているプーリ34に伝動される。
【0049】
ファン用油圧式無段変速装置30からエンジン20を超えて延設した第1出力軸33の撓みを防止するために第1出力軸33を軸支する出力管33Aの左右方向の中間部は、支持部材6Gを介してキャビン6の下部に配置されたフレーム6Fに支持されている。
【0050】
後述するベルト35の張力による第1出力軸33の先端部の撓みを防止するために、
図17に示すように、第1出力軸33を軸支する出力管33Aの先端部は、フレーム136,137によって支持されている。なお、フレーム136は、後述するフレーム
(第1フレーム)64の中間部から緩やかに前上がり傾斜して配置され、フレーム137は、フレーム64の中間部から上方に向かって垂直に配置されている。
【0051】
フレーム136の基部に設けられたブラケット136Aは、フレーム64の中間部に取付けられ、フレーム136の先端部に設けられた支持部材136Bは、出力管33Aと対向する部位に略円弧状の切欠き部が形成されている。同様に、フレーム137の基部に設けられたブラケット137Aは、フレーム64の中間部に取付けられ、フレーム137の先端部に設けられた支持部材137Bは、出力管33Aと対向する部位に略円弧状の切欠き部が形成されている。
【0052】
プーリ34に伝動された回転は、ベルト35を介してプーリ42に伝動される。また、プーリ34は、
図17に示すように、ファン40によって吸引された外気の流れを良好に維持するためにファン40の回転軌跡の外側に偏倚して配置されており、ベルト35は、ベルト35の耐久性を向上させるために、ファン40の正転駆動状態時にベルト35の緩み側をテンションアーム35Aの先端に設けられたローラ35Bによって押圧している。
【0053】
なお、エンジン20等の保守点検時等には、テンションアーム35Aの基部に接続されているスプリング35Cを連結部材35Dから外して、ベルト35のテンションを緩めた後に、プーリ42からベルト35を取外すことによって行なうことができる。
【0054】
プーリ42に伝動された回転は、入力軸42を介してファン40に伝動される。ファン40は、正転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体12(12A〜12D)を介して外気を吸入し、ラジエータ80、エンジン20を冷却し、逆転駆動状態にあっては、濾過体12A〜12Dを介して機体内側の内気を排気し、併せて、濾過体12A〜12Dに付着した藁屑、塵埃等を除去する機器である。
【0055】
ファン40は、羽根40Aと、この羽根40Aの基部を支持する中心部40Bにより構成され、ファン40の中心部40Bには、一端にプーリ42を支持する入力軸41の他端が取付けられている。また、入力軸41は、基部がシュラウド61に支持され、先端部が入力軸41に向かって延設したフレーム64に設けられたベアリング64Aによって回転自在に軸支されている。
【0056】
ファン40の外側には、ラジエータ80が配置されている。ラジエータ80は、エンジン20によって加熱された冷却水を冷却する機器であり、ラジエータ80の下部は、フレーム66を介して機体フレーム1に取付けられ、上部は、エンジン20の冷却水経路であるマニホールドに接続されている。また、ラジエータ80の内側には、ファン40の吸入効率を高めるためにファン40を取り囲むシュラウド61が設けられている。シュラウド61の形状は、ファン40の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ファン40による外気の吸入の抵抗を小さくするため薄板状の鋼板により成形加工するのが好適である。
【0057】
ラジエータ40の上側後方には、エアクリーナ52が配置されている。エアクリーナ52は、エンジン20に供給する空気の不純物を除去する機器である。
エアクリーナ52に内装されてフィルタ等の保守・点検を容易にするためにエアクリーナ52の吸気口52Aを外側に、排気口52Bを内側に配置し、エアクリーナ52の後端部をエンジンカバー11の内側に近接して配置されている。なお、エアクリーナ52の外端部には、開閉カバーが設けられており、内装するフィルタ等の着脱作業を行なうことができる。
【0058】
ラジエータ80の外側には、排藁等の粉塵の内側への浸入を防止するために鋼材等からなる分離板65が配置されている。分離板65の下部は、フレーム66に取付けられ、上部は、ブラケット67,67を介してエンジンルーム8の上部に配置された前後側フレームに取付けられている。また、分離板65には、
図18に示すように、外気の吸入を能率良く行なうためにエアクリーナ52、ラジエータ80の右面に対向する部位にそれぞれ開口部65A,65Bが形成されている。
【0059】
分離板65の外側には、オイルクーラ85A,85Bが配置されている。オイルクーラ85Aは、ミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、オイルクーラ85Bは、昇降用シリンダの駆動用オイルを冷却する機器であり、それぞれ、ラジエータ80の外側に配置された分離板65にボルト等の締結部材によって着脱自在に取付けられている。
【0060】
オイルクーラ85Aは、外気の吸入を能率良く行なうために、
図15に示すように、ラジエータ80の上側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ80の上側部の前後方向の略中央部に配置されている。また、同様にオイルクーラ85Aよりも小型のオイルクーラ85Bは、ラジエータ80の下側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ80の下側部の前後方向の略中央部に配置されている。
【0061】
オイルクーラ85Bの外側には、インタークーラ90が配置されている。インタークーラ90は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、インタークーラ90の前端部は、前側フレーム62Aに支持され、後端部は、上下2本の連結部材69C,69Cを介して後側フレーム62Bに支持されている。なお、前側フレーム62Aの上下部は、分離板65の前部にそれぞれ着脱自在に取付けられており、後側フレーム62Bの上下部は、分離板65の後端部にそれぞれ着脱自在に取付けられている。
【0062】
インタークーラ90は、
図15に示すように、外気の吸入を能率良く行なうために、ラジエータ80の下側部の前後方向の両端部を覆わないように、また、オイルクーラ85Bの全体を覆わないように、ラジエータ80の下側部の前後方向の後側に偏倚して配置されている。また、インタークーラ90の下端部は、ファン40の軸心方向視において、該ファン40の回転軌跡の下端部近傍に配置されている。なお、インタークーラ90は、温度によって特性が大きく影響を受ける機器であり、温度による影響が小さいオイルクーラ85Bよりも外側に配置するのが好適である。
【0063】
インタークーラ90の吸気口80Aは、ゴム製のホース83によってエンジン20のタービン側のマニホールド122に接続され、インタークーラ90の排気口80Bは、ゴム製のホース82によってエンジン20のコンプレサー側のマニホールド22にそれぞれ接続されている。ホース83,82は、設置を簡易に行なうために分離板65よりも外側に配置された外側ホースと内側に配置された内側ホースを、分離板65に取付けられた連通口を有するフランジ83C,82Cによって接続した分割構造とするのが好適である。
【0064】
オイルクーラ85Aの外側には、オイルクーラ85Aの冷却能率を良くするために一定の間隔(インタークーラ90の左右方向の略幅寸法)を隔ててコンデンサ91が配置されている。コンデンサ91は、キャビン6の空調設備に利用される冷媒を冷却する機器であり、コンデンサ91の前端部は、インタークーラ90を超えて延存する前側フレーム62Aの先端部に支持され、後端部は、略T形状に形成された連結部材69Aと略I形状に形成された連結部材69Bを介してインタークーラ90を超えて延存する後側フレーム62Bの先端部に支持されている。
【0065】
コンデンサ91は、
図15に示すように、外気の吸入を能率良く行なうために、ラジエータ80の上側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ80の上側部の前後方向の略中央部に配置され、また、オイルクーラ85Aと重なる部位を低減するように、ラジエータ80の上側部及びオイルクーラ85Aの上下方向の上側に偏倚して配置されている。なお、コンデンサ91は、温度によって特性が大きく影響を受ける機器であり、温度による影響が小さいオイルクーラ85Aよりも外側に配置するのが好適であり、コンデンサ91の上端部は、分離板65の開口部65Aよりも上側に偏倚して配置されている。
【0066】
キャビン6のドア6Dの開閉を容易に行ない、ドア6Dの開閉時にエンジンカバー11の不用意な開閉を防止するために、
図16に示すように、平面視においてドア6Dの外周に対向するキャビン6の外側部位に設けられたシール部材6Eを、エンジンカバー11の外周に対向する分離板65の外周部位に設けられたシール部材65Eよりも外側に配置するのが好適である。
【0067】
また、シール部材6Eの露出による早期劣化を防止し、シール部材6Eの脱落を防止するために、エンジンカバー11の開閉軸11A側の上下方向に配置されたシール部材6Eの外側にカバー11Bを配置するのが好適である。
(原動部構造の第4の実施形態)
次に本発明の作業車両の原動部構造の第4の実施形態について説明する。なお、同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0068】
エンジンカバー11の内側には、
図19及び
図20に示すとおり、ラジエータ80が設けられ、ラジエータ80とエンジン20の間にファン40が配置されている。また、エンジンカバー11の内側の、ラジエータ80の上側には、インタークーラ90が配置され、このインタークーラ90の内側にインタークーラ用ファン160が配置されている。
【0069】
そして、ファン40及びインタークーラ用ファン160へ向けて駆動力を出力するファン用油圧式無段変速装置(油圧式無段変速機)30は、エンジン20の内側(ファン40とは反対側)の上方に、ファン40の回転軌跡の外側に偏倚させて配置されている。
【0070】
また、ファン40の回転軸心A1は、この回転軸心A1方向からみて、ラジエータ80の投影形状の面積重心Cr近傍に配置され、より正確には回転軸心A1と面積重心Crが一致するように配置されている。
【0071】
また、ファン40の回転軸心A1と平行な姿勢のインタークーラ用ファン160の回転軸心A2は、この回転軸心A2方向からみて、インタークーラ90の投影形状の面積重心Ci近傍に配置され、より正確には回転軸心A2と面積重心Ciが一致するように配置されている。
【0072】
なお、ラジエータ80及びインタークーラ90は、任意の形状のものを採用することができる。
また、ラジエータ80とエンジンカバー11の間にオイルクーラを配置してもよい。
【0073】
また、インタークーラ90及びインタークーラ用ファン160は、エンジンルーム8の後側、すなわち、グレンタンク5の前側外側部に濾過体を備えて配置してもよい。
そして、ファン40は、3つのうちの下側2つの濾過体12B,12Cに臨むように配置され、インタークーラ用ファン160は、上端の濾過体12Aに臨むように配置されている。
【0074】
ファン用油圧式無段変速装置30の第1出力軸33の先端部に軸支されたプーリ34と、ファン40の入力軸の先端部に軸支されたプーリ42及びインタークーラ用ファン160の入力軸に軸支されたプーリ162には、ベルト35が巻き掛けられており、ファン用油圧式無段変速装置30から第1出力軸33へ出力された回転駆動力が、ファン40及びインタークーラ用ファン160に伝達される。
【0075】
すなわち、ファン用油圧式無段変速装置30によってエンジン20からの駆動力を変速してファン40及びインタークーラ用ファン160を駆動し、正転駆動状態と逆転駆動状態に切換える。
【0076】
なお、インタークーラ用ファン160の正転・逆転駆動状態は、ファン40の正転・逆転駆動状態と一致している。
正転駆動状態のインタークーラ用ファン160は、濾過体12Aを介して外気を導入し、この吸引風によりインタークーラ90を冷却する。そして、インタークーラ90を通過した冷却風は、平板状に形成された遮蔽体171及び上側ガイド体170によって、ファン用油圧式無段変速装置30へ向けて案内される。
【0077】
上側ガイド体170は、エンジンルーム遮蔽体171は、エンジン20周囲の熱気の上方のへの移動を抑制するものであり、上側ガイド体170は、エンジンルームの上面を形成しており、略水平な姿勢の上面部170Aと、上面部の機体の左右方向における左端から左側に連続し、左下がりに傾斜する傾斜面部170Bを有している。
【0078】
傾斜面部170Bは、インタークーラ用ファン160によって、この前記回転軸心A2方向であって機体の左側へ向けて送風された冷却風を、傾斜面部170Bの下方に位置するファン用油圧式無段変速装置30へ向けて案内する。
【0079】
しかして、第4の実施形態に係る原動部構造によれば、ファン40の回転軸心A1が、この回転軸心A1方向からみて、ラジエータ80の投影形状の面積重心Cr近傍に配置され、インタークーラ用ファン160の回転軸心A2が、この回転軸心A2方向からみて、インタークーラ90の投影形状の面積重心Ci近傍に配置されているので、ファン40及びインタークーラ用ファン160の前記正転駆動状態においては、ラジエータ80及びインタークーラ90を効率的に冷却することができ、前記逆転駆動状態においては、ラジエータ80及びインタークーラ90の放熱用フィンの間に詰った細かい塵埃を効率的に濾過体12A,12B,12Cの外側へ吹き飛ばすことができる。
【0080】
また、ファン40が、3つのうちの下側2つの濾過体12B,12Cに臨むように配置され、インタークーラ用ファン160が、上端の濾過体12Aに臨むように配置されているので、外気の導入面積が大きく、各冷却器とエンジン20を効率的に冷却できるものでありながら、濾過体12A,12B,12Cの外面に付着した塵埃を効率的に除去することができる。
【0081】
また、インタークーラ用ファン160のインタークーラ90を通過した後の冷却風が、ファン用油圧式無段変速装置30へ向けて案内されるため、ファン用油圧式無段変速装置30の動力伝達効率の低下を抑制することで、ファン40及びインタークーラ用ファン160の回転速度を安定させることができる。
【0082】
更に、ファン用油圧式無段変速装置30の上面への塵埃の堆積を防止して、変速作動を円滑化することができ、ファン40及びインタークーラ用ファン160の正転駆動状態と逆転駆動状態の相互の切換を迅速に行うことができる。
【0083】
したがって、各冷却器の冷却効率を高く維持することができる。
そして、エンジン20の上側に遮蔽体171が配置されることで、複数の冷却器のうちのインタークーラ90のみを通過した冷却風が、エンジン20の熱気と混合されることなくファン用油圧式無段変速装置30へ送風されるので、ファン用油圧式無段変速装置30の動力伝達効率の低下を更に効果的に抑制することができる。
(ファン用油圧式無段変速装置の制御装置)
次に、本発明の作業車両の原動部構造における、ファン用油圧式無段変速装置30の制御装置について説明する。
【0084】
図15に示すとおり、制御装置210の入力側には、ラジエータ80の冷却液の温度を検出する冷却液温センサ(第2温度センサ)220、インタークーラ90からエンジン20に流入する給気の温度を検出するブースト温度センサ(第1温度センサ)221、エンジンカバー11とラジエータ80等の冷却器の間に配置され、ファン40により吸気された空気の風速を検出する原動部風速センサ222、エンジンカバー11が開放された状態であることを検出するカバー開閉センサ223、キャビン6内に設けられ、機体の操向・旋回操作を行う旋回操作具(操作具)の操作量を検出する旋回操作センサ(旋回検出手段)224、グレンタンク5内に貯留されている穀粒の量を検出する貯留量センサ225、脱穀装置3と刈取装置4の夫々に伝達される駆動力を伝動及び遮断する作業クラッチの接続状態、刈取装置4に導入された穀稈の存在を検出する穀稈センサ227、作業部エンジンカバー11の濾過体12A,12B,12Cの外面を撮像する撮像カメラ228が接続されている。
【0085】
また、機体に設置され、機体から取り外して携帯可能な遠隔操作機230は、その送信部230Aから、制御装置210の受信部210Cへ無線通信手段を介して逆転スイッチ231及び調節ダイヤル232の操作信号を入力可能に構成されている。
【0086】
制御装置210の出力側には、変速アクチュエータとしてのファン用HST制御モータ240が接続されており、このファン用HST制御モータ240が、前記ファン用油圧式無段変速装置30の変速を行う。
【0087】
なお、旋回操作センサ(旋回検出手段)224は、走行装置2の左右の駆動軸又は駆動輪の相対的な速度差によって、機体の旋回状態を検出するものであってもよい。
また、前記撮像カメラ228は、機体上の任意の場所に設置することができるが、キャビン6又はグレンタンク5の上部から、濾過体12A,12B,12Cの全面が撮像できるように配置されることが望ましい。
【0088】
この撮像カメラ228によって撮像された映像は、制御装置210の付着判定部210Bの解析アルゴリズムにより、濾過体12A,12B,12Cにおける塵埃付着領域が抽出され、塵埃の付着量が推定される。
【0089】
また、制御装置210の入力側に接続される各種センサは、任意の公知のものを採用することができる。
例えば、前記原動部風速センサ222は、ロータ式や超音波式などの各種公知のセンサを採用することができる。
【0090】
また、貯留量センサ225は、上下方向に複数配置された感圧体が穀粒の貯留高さを検出することで貯留量を判定するものや、グレンタンク5の重量、又は、グレンタンク5内の穀粒の重量から貯留量を推定するものなどの各種公知のセンサを採用することができる。
【0091】
また、穀稈センサ227は、植生穀稈を引起こす引起装置から穀稈の株元を切断する刈刃装置に至る穀稈導入経路、刈取後の搬送穀稈が通過する搬送経路において、穀稈との接触により存在を検出する接触型センサや、赤外線、超音波センサなどの非接触型センサを採用することができる。
(制御態様)
各種入力信号は制御装置210によって処理され、この制御装置210内のファン制御部210Aから、制御信号がファン用HST制御モータ240へ出力される。
【0092】
ファン用HST制御モータ240は、ファン用油圧式無段変速装置30を変速作動してファン40を正回転(正転駆動)させて濾過体12A,12B,12Cの外側から内側へ外気を吸入する冷却状態と、ファン用油圧式無段変速装置30を変速作動してファン40を逆回転(逆転駆動)させて濾過体12A,12B,12Cの内側から外側へ送風する除塵状態に切換可能に構成されている。
【0093】
そして、ファン制御部210Aは、コンバインが収穫作業中である場合、すなわち、作業クラッチセンサ226により作業クラッチが接続されていることが検出され、作業部である脱穀装置3と刈取装置4の何れか、又はその双方が駆動されている場合、所定のタイミングで、ファン用HST制御モータ240を冷却状態と除塵状態に交互に切換える(正逆転モード)。
【0094】
また、コンバインが非収穫作業中である場合、すなわち、作業クラッチセンサ226が遮断されている場合、ファン用HST制御モータ240を常時冷却状態に維持する(正転モード)。
【0095】
なお、正逆転モードが実行されるタイミングで、ファン用HST制御モータ240を除塵状態に切換えて、作業クラッチセンサ226が接続されてから、刈取装置4に穀稈が導入されるまでの間に、濾過体12A,12B,12Cに付着した塵埃を除去し、除塵が行われた状態で収穫作業を開始できるようにすることが望ましい。
【0096】
また、ファン制御部210Aは、原動部の状態やコンバインの作業状態に応じて、冷却状態におけるファン40の回転速度と、除塵状態におけるファン40の回転速度を夫々最適な回転速度に設定する。
【0097】
ファン制御部210Aは、前記冷却液温センサ220により検出される冷却液の温度が所定の温度(設定冷却液温度,第2設定温度)以下であり、かつ、前記ブースト温度センサ221により検出される吸気の温度が所定の温度(設定ブースト温度,第1設定温度)以下である場合(定常運転時)の冷却状態におけるファン40の回転速度を、所定の第1速度に設定する。
【0098】
そして、前記冷却液温センサ220が所定の温度(設定冷却液温度)を超える冷却液の温度を検出している場合か、ブースト温度センサ221が所定の温度(設定ブースト温度)を超える吸気の温度を検出している場合には、冷却状態におけるファン40の回転速度は、前記第1速度よりも高い回転速度である第2速度に設定され、かつ、何れかのセンサが上記の所定の温度を超える範囲で上昇するほど、冷却状態におけるファン40の回転速度を上昇させる。
【0099】
また、除塵状態におけるファン40の回転速度は第3速度に設定されるが、この第3速度は、前記第1速度よりも高い(絶対値で比較した場合に第1速度よりも大きい)回転速度である。
【0100】
上記の制御態様によれば、ファン制御部210Aは、作業クラッチセンサ226が接続されている場合に、正逆転モードを実行し、作業クラッチセンサ226が遮断されている場合に、正転モードを実行するので、塵埃が発生しやすい作業時には、濾過体12A,12B,12Cの外面に付着した塵埃を除去することができ、ファン40の外気吸引効率が高い状態を維持することができ、非作業時には、ファン40が常時正転駆動されるため、逆転による各冷却器の温度上昇を抑制するとともに、正逆転の切換頻度を低下させ、ファン用油圧式無段変速装置30からファン40に至る伝動部材の耐久性を高めることができる。
【0101】
また、冷却液温度か吸気温度が上昇した場合に、冷却状態のファン40の回転速度を上昇させるので、ラジエータ80等の冷却器の冷却効率を更に高めることができる。
また、除塵状態のファン40の回転速度である第3速度が、第1速度よりも高く設定されることにより、濾過体12A,12B,12Cの塵埃除去効率を高め、短時間で塵埃を除去することができる。
(正逆転モードのサブモード群)
前記ファン制御部210Aが正逆転モードを選択して実行している場合には、この正逆転モードのサブモード群の何れかが実行される。
【0102】
すなわち、第1のサブモードは、制御装置210内の計時手段により、作業クラッチセンサ226が接続されてからの時間を計測し、所定時間が経過する毎に除塵状態への、又は、冷却状態への切換条件が満たされたと判定し、ファン用HST制御モータ240を冷却状態と除塵状態を切換えるものである。この場合、冷却状態の継続時間は5〜10分程度とし、除塵状態の継続時間は5秒から10秒程度とすることが望ましく、機体の走行速度に応じて冷却状態の継続時間を変化させる(機体の走行速度が速くなるほど冷却時間を短縮する)ことが更に望ましい。
【0103】
次に、第2のサブモードは、旋回操作の回数を計測し、すなわち、前記旋回操作センサ224により旋回操作具が所定の操作量以上操作された状態が検出された回数か、中立域を超えて旋回操作具が操作された状態が所定以上の時間継続した回数を計測し、所定の旋回操作回数(第1設定回数)に達すると切換条件が満たされたと判定し、ファン用HST制御モータ240を前記冷却状態から前記除塵状態に切換えるものである。この場合、4回から8回の旋回操作毎に除塵状態とすることが望ましい。
【0104】
また、この第2のサブモードは、機体の旋回状態が発生した回数が所定の旋回回数(第2設定回数)に達すると切換条件が満たされたと判定する態様とすることもできる。
次に、第3のサブモードは、前記穀稈センサ227が、穀稈の存在が検出される状態から、穀稈の存在が検出されない状態となった回数を計測し、所定の穀稈非検出回数(第3設定回数)毎に切換条件が満たされたと判定し、ファン用HST制御モータ240を前記冷却状態から前記除塵状態に切換えるものである。この場合、4回から8回の穀稈非検出回数毎に除塵状態とすることが望ましい。
【0105】
次に、第4のサブモードは、前記第1から第3のサブモードにおける切換タイミングの判定条件を複合したものである。
すなわち、ファン制御部210Aが正逆転モードの実行を開始した時点からの時間と、同じく旋回回数と、同じく穀稈非検出回数のうち、何れかの切換条件が満たされた場合に、ファン用HST制御モータ240を前記冷却状態から前記除塵状態に切換えるものである。
【0106】
なお、いずれのサブモードにおいても、貯留量センサ225により検出されるグレンタンク5の貯留量が増加するほど、除塵状態の頻度が低くなるように、切換間隔が変更される。すなわち、前記旋回操作回数、又は、前記旋回回数、又は、前記穀稈非検出回数が増加して再設定され、グレンタンク5の貯留量が少ないときと比べて、相対的に前記冷却状態の継続時間が延長された状態となる。
【0107】
これらのサブモードは、キャビン6内の操縦部に設置されたサブモード選択手段によって、任意に変更することができる。
上記の制御態様によれば、作業時の走行速度や、作業対象物(収穫対象物)、気候条件等に応じて、任意のサブモードを選択することができ、濾過体12A,12B,12Cに付着する塵埃を効果的に除去することができるので、エンジン20のオーバーヒート発生を防止することができる。
【0108】
そして、グレンタンク5の貯留量が増加するほど、濾過体12A,12B,12Cの除塵頻度を低下させるので、貯留量の増加により、走行装置2の駆動負荷が増大し、エンジン20の負荷が増大した状態において、エンジンルーム8内に外気が供給されなくなる時間を短縮することで、エンジン20のオーバーヒートを更に効果的に抑制することができる。
(モード非依存の除塵制御)
前記ファン40が正回転で駆動されることにより、濾過体12A,12B,12Cの外面に塵埃等が付着した場合、ファン40による吸気量が制限される。そのため、前記冷却状態において、前記原動部風速センサ222によって、エンジンルーム8内の風速が所定速度以下に低下したことが検出されると、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えることが望ましい。
【0109】
また、撮像カメラ228によって、濾過体12A,12B,12Cの外面に所定量以上の塵埃等が付着した状態が検出される(付着判定部210Bにより抽出される塵埃付着領域の面積が所定以上であると判定される)と、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えることが望ましい。
【0110】
また、カバー開閉センサ223によって、エンジンカバー11が開放された状態であることが検出されると、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えることが望ましい。
【0111】
また、前記遠隔操作機230の逆転スイッチ231が操作された場合、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えることが望ましい。この逆転スイッチ231の操作が行われた場合の除塵状態の継続時間は調節ダイヤル232によって任意に変更することができる。
【0112】
また、調節ダイヤル232を設けずに、逆転スイッチ231の逆転指示操作が行われている間、除塵状態を継続することもできる。
上記制御態様によれば、エンジンルーム8内の風速が所定速度以下に低下したことが検出されると、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えるので、濾過体12A、12B、12Cの目詰まりが発生したときに、効果的に除塵を行うことができ、エンジン20のオーバーヒートを抑制することができる。
【0113】
また、撮像カメラ228によって、濾過体12A,12B,12Cの外面に所定量以上の塵埃等が付着した状態が検出されると、ファン用HST制御モータ240を所定時間の間、除塵状態に切換えるので、濾過体12A、12B、12Cの目詰まりが発生したときに、効果的に除塵を行うことができ、エンジン20のオーバーヒートを抑制することができる。
【0114】
また、携帯可能な遠隔操作機230によって、ファン40を逆転させることができるため、機外で待機している補助作業者が、濾過体12A、12B、12Cの塵埃付着状況に応じて任意のタイミングで除塵操作を行うことができ、エンジン20のオーバーヒートを抑制することができる。
(DPF再生制御)
上記コンバインは、エンジン20から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集して浄化する排気ガス浄化装置(DPF)を備えている。
【0115】
このDPFに所定量以上の粒子状物質が堆積すると、排気抵抗が増大し、エンジン20の出力が低下するため、そのような状態になった場合に、DPFに捕集された粒子状物質を気体化して除去する再生制御を行う。具体的には、吸気バルブを絞ったり、混合気の爆発後の推進力でピストンが下降している段階でシリンダ内に燃料を噴射する、所謂ポスト噴射を行い、排気温度を上昇させ、粒子状物質を酸化させることで気体化して機外へ排出する。
【0116】
また、エンジン20は制御装置によりその回転速度(回転数)が制御され、自動回転制御スイッチによる自動制御指示が入力された場合には、作業クラッチが接続され、作業部が駆動される状態において、回転速度を増加させる。具体的には、脱穀装置3又は刈取装置4が駆動されている状態において、エンジン20の回転速度は収穫作業回転速度(約2800rpm)に設定され、排出筒7に内装される排出装置が駆動されている状態において、排出作業回転速度(約2000rpm)に設定される。
【0117】
そして、これらの作業クラッチが遮断された状態においては、機体の走行速度を変更する変速レバーの操作量に応じた回転速度に設定される。
DPFの前記再生制御は、制御装置によって作業中に自動で実行される自動再生制御と、粒子状物質の堆積量が多く、自動再生制御で正常範囲まで減少させることが困難な場合にコンバインの機体を停止させ、操縦者の手動の指令に実行される手動再生制御に大別される。
【0118】
この手動再生制御時には、前記作業クラッチの状態や、前記変速レバーの操作状態に関わらず、エンジン20の回転速度を再生回転速度(約1000rpmから1500rpm)に設定するとともに、前記ファン40の回転速度を正転側の上限速度である制御限度速度まで増加させ、排気温度を高める。
【0119】
また、手動再生制御が実行されている間は、エンジン20の前記自動回転制御スイッチのパイロットランプを点滅させ、所定時間間隔で警音器に警告音を発生させて、再生中の安全性を向上させる。
【0120】
また、操縦者により手動再生が指示されたときに、エンジン20の冷却水温度が所定以下の温度である場合、エンジン20の回転速度を所定時間の間増加させ、エンジン20のシリンダ内温度をDPFの再生に適した温度となるように上昇させるとともに、キャビン6内の表示モニタに暖機運転中であることを表示する。
【0121】
また、手動再生が完了したときに、断続的又は連続的に警音器による警告音を発生させ、操縦者等に通知する。