特許第5678954号(P5678954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5678954
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】永久磁石形回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150212BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   H02K1/27 501H
   H02K1/27 501C
   H02K1/27 501K
   H02K21/16 M
   H02K1/27 501A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-505457(P2012-505457)
(86)(22)【出願日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2010072645
(87)【国際公開番号】WO2011114594
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2012年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-57412(P2010-57412)
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】野中 剛
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3224890(JP,B2)
【文献】 特開2008−295178(JP,A)
【文献】 特開平04−340340(JP,A)
【文献】 特開2009−77469(JP,A)
【文献】 特開2005−102437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/17
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子を備えた永久磁石形回転電機において、前記回転子は、磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心と、各々のポールシューの両側に放射状に配置され、シャフトと凹凸による契合部を持って契合固定された永久磁石を有し、前記ポールシューを構成する回転子鉄心と永久磁石を回転子の径方向に支持する側板を、回転子の軸方向両側に有し、前記側板には、前記永久磁石と契合して前記永久磁石の遠心力を支持するための永久磁石契合部が設けられており、前記永久磁石契合部は、前記永久磁石の回転子の軸方向の外側の端面の周縁部が嵌り込み、かつ、前記軸方向の外側の端面の全体を覆うように前記軸方向の外側に窪んだ非貫通の凹形状部を含むとともに、前記永久磁石契合部は、前記永久磁石を前記永久磁石の前記軸方向の両側から支持するように構成されており、前記回転子鉄心の前記永久磁石側端部と前記永久磁石の前記回転子鉄心側端部とは、互いに回転子の径方向に重ならないように接続されている、永久磁石型回転電機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ACサーボモータのような回転電機に関するもので、特に回転子の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子を備えた永久磁石形回転電機には、前記回転子が、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心と、各々のポールシューの両側に放射状に配置された極数と同数の永久磁石を有し、永久磁石より発生する磁束をポールシュー外周に導き、磁極を得るものがある(例えば、特許文献1参照)。
図7は、従来の永久磁石形回転電機の回転子の径方向断面図であり、固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子を備えた永久磁石形回転電機の構造例である。
ポールシュー2bの両側の永久磁石3の磁束発生面より発生する磁束を、ポールシュー外周に集中することで、固定子と回転子の間のギャップ磁束密度を上げ、より大きなトルクが得られる。
回転子鉄心2には複数の磁石装着孔2dがあり、全てのポールシューを一体に構成している。永久磁石の磁束発生面より発生する磁束には、外周に至らず回転子内で永久磁石へ戻る洩れ磁束もあり、漏れ磁束の低減はモータの性能向上に重要である。
本従来例では、漏れ磁束の低減のため、永久磁石の外側のブリッジ部2eを切断し、回転子鉄心の内側ブリッジ部2aには漏れ磁束を低減するために、それぞれの永久磁石の間に打抜孔4を有し、打抜孔には補強部材7が挿入されている。補強部材は非磁性であるため、磁気的には空隙とみなし得る。永久磁石より発生する磁束の一部は、打抜孔の両側の接続部分2cから回転子鉄心の内側ブリッジ部を経て、永久磁石へ戻る漏れ磁束となるが、打抜孔が設けられているために、その大きさは制限される。
このように、永久磁石は、回転子鉄心に支持されているため、永久磁石に作用する遠心力は回転子鉄心が支持し、永久磁石や回転子鉄心外周に作用するトルクは、回転子鉄心よりシャフト9に支持される。
【0003】
従来の別の永久磁石形回転電機の回転子には、永久磁石や回転子鉄心外周に作用するトルクが側板を介して、シャフトに支持されるものもある(例えば、特許文献2参照)。
図8は、従来の別の永久磁石形回転電機の回転子の側面図と径方向断面図であり、固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子を備えた永久磁石形回転電機の別の構造例である。
図において、回転子10は、磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心16と、各々のポールシューの両側に放射状に配置された極数と同数の永久磁石14を有し、前記ポールシューを構成する回転子鉄心と永久磁石は、側板24に固定されている。
ポールシューを構成する回転子鉄心は、1極ごとに分割され、ロッド22をもって、側板に固定され、側板は、シャフト12に固定されている。
回転子鉄心は、永久磁石の外側と永久磁石の内側で磁極毎に分離されているため、N極からS極へショートカットする洩れ磁束が少なく、永久磁石より発生する磁束の多くがギャップに向い、ブリッジ部を有する永久磁石形回転電機に比べ、発生し得る最大トルクを増大できる。
【0004】
このように、従来の永久磁石形回転電機には、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心と、各々のポールシューの両側に放射状に配置された極数と同数の永久磁石に作用する遠心力やトルクを、回転子鉄心とシャフトで支持するものがあり、また、磁極毎に分離された回転子鉄心を側板で支持することで、ブリッジ部を廃し、永久磁石形回転電機が発生し得る最大トルクを大きくしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−36459号公報(第9頁、図1
【特許文献2】特許3224890号公報(第9頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示した、従来の永久磁石形回転電機は、永久磁石の内側のブリッジ部を回転子鉄心に有するため、永久磁石より発生する磁束の一部は、ギャップに達せず、ブリッジ部を、N極からS極へショートカットする洩れ磁束となる。このことは、ギャップ磁束密度を低下させ、永久磁石形回転電機が発生し得る最大トルクを大きく低下させる。
【0007】
特許文献2に示した、従来の別の永久磁石形回転電機は、永久磁石や回転子鉄心外周に作用するトルクが側板を介して、シャフトに支持されているため、強大なトルクには耐えることができない。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、洩れ磁束を低減することで、発生し得る最大トルクを増大するとともに、強大なトルクに耐え得る構造の回転子を有する永久磁石形回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、
固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子を備えた永久磁石形回転電機において、前記回転子は、磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心と、各々のポールシューの両側に放射状に配置され、シャフトと凹凸による契合部を持って契合固定された永久磁石を有し、前記ポールシューを構成する回転子鉄心と永久磁石を回転子の径方向に支持する側板を、回転子の軸方向両側に有し、前記側板には、前記永久磁石と契合して前記永久磁石の遠心力を支持するための永久磁石契合部が設けられており、前記永久磁石契合部は、前記永久磁石の回転子の軸方向の外側の端面の周縁部が嵌り込み、かつ、前記軸方向の外側の端面の全体を覆うように前記軸方向の外側に窪んだ非貫通の凹形状部を含むとともに、前記永久磁石契合部は、前記永久磁石を前記永久磁石の前記軸方向の両側から支持するように構成されており、前記回転子鉄心の前記永久磁石側端部と前記永久磁石の前記回転子鉄心側端部とは、互いに回転子の径方向に重ならないように接続されている永久磁石型回転電機とするものである
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によると、
磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心を有するため、洩れ磁束を低減し、発生し得る最大トルクを増大するとともに、
シャフトと凹凸による契合部を持って契合固定された永久磁石を有するため、強大なトルクに耐え得る構造の回転子を有する永久磁石形回転電機を提供できる
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例を示す永久磁石形回転電機の軸方向断面図
図2】前記回転電機の径方向断面図
図3】前記回転電機の回転子の軸方向断面図
図4】前記回転電機の回転子の径方向断面図
図5】前記回転電機の回転子の部品構成説明図
図6】トルク特性の磁界解析結果
図7】従来の永久磁石形回転電機の径方向断面図
図8】従来の別の永久磁石形回転電機の回転子の側面図と径方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、ACサーボモータに供する、本発明の第1実施例を示す永久磁石形回転電機の軸方向断面図である。
図において、前記回転電機は、固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子60を備える。回転子は、負荷側軸受58と反負荷側軸受59を介して、負荷側ブラケット51と反負荷側ブラケット52に回転自在に支持されている。
シャフト61の反負荷側端部には、回転子の回転位置を検出するためのエンコーダ部57が設置されている。
固定子は、固定子鉄心53と固定子コイル54よりなる。
反負荷側ブラケットは、フレーム50とともに、図示しないボルトで、負荷側ブラケットに締結されている。
【0014】
図2は、前記回転電機の径方向断面図である。
図において、固定子は、ティース毎に分割された固定子鉄心53と、集中巻に巻回された固定子コイル54より構成され、フレーム50に支持されている。
回転子60は、磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心65と、各々のポールシューの両側に放射状に配置された永久磁石62を有し、10極の磁極を構成している。
ポールシューを構成する回転子鉄心の両側の永久磁石の磁束発生面より発生する磁束を、ポールシュー外周に集中することで、固定子と回転子の間のギャップ磁束密度を上げ、より大きなトルクが得られる構造であることは、従来の永久磁石形回転電機と同じである。磁束は固定子鉄心を経て固定子コイルに鎖交する界磁磁束となる。永久磁石の磁束発生面より発生する磁束には、外周に至らず回転子内で永久磁石へ戻る洩れ磁束もあり、漏れ磁束の低減はモータの性能向上に重要である。
【0015】
図3は、前記回転電機の回転子の軸方向断面図である。
図において、回転子は、永久磁石62とポールシューを構成する回転子鉄心65を回転子の径方向に支持する負荷側側板66と反負荷側側板67を、回転子の軸方向両側に有する。ポールシューを構成する回転子鉄心は、前記回転子鉄心を軸方向に貫くロッド63により、軸方向両側の側板に支持されるため、遠心力に対し十分に強固な構造の回転子となっている。
側板は、ステンレス等の非磁性金属板をプレス成形により製作されるが、要求される強度や耐熱性が低い場合、樹脂成形で製作してもよい。シャフトも、ステンレス等の非磁性金属製である。これらの材質は非磁性であるため、洩れ磁束の増加を防ぐことができる。
ロッドは鉄製であり、磁束を通し易くする配慮がなされている。
【0016】
図4は、前記回転電機の回転子の径方向断面図である。
図において、放射状に配置された永久磁石62は、板状の部品であり、広い面に対し垂直に着磁されている。ポールシューを構成する回転子鉄心65も各々分離した10個の部品であり、各々の回転子鉄心は電磁鋼板の積層体である。ポールシューを構成する回転子鉄心は各々分離した部品であり、永久磁石の外側ブリッジ部も内側ブリッジ部もないため、永久磁石のN極からS極へ直接ショートカットする洩れ磁束を低減し、発生し得る最大トルクを増大することができる。
放射状に配置された永久磁石の内側は、シャフト61と、凹凸による契合部をもって、契合固定されている。負荷トルクは、10個の永久磁石の契合部において、永久磁石の厚みに対してせん断荷重として作用するため、例えば特許文献2に示した側板を介してシャフトに支持する構造に比較すれば、強大なトルクに耐え得る構造となっている。回転子の磁極部の軸方向長さが大きい場合はより有利である。
【0017】
図5は、前記回転電機の回転子の部品構成説明図である。
図において、シャフト61には永久磁石62との契合部となる凹形状が設けられている。磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心65と、各々のポールシューの両側に放射状に配置され、シャフトと凹凸による契合部を持って契合固定される永久磁石は、回転子の軸方向両側の負荷側側板66と反負荷側側板67に支持される。
ロッド63は、電磁鋼板を積層してなるポールシューを構成する回転子鉄心を貫通している。負荷側側板には、永久磁石とポールシューを構成する回転子鉄心を貫通するロッドと契合する永久磁石装着穴66aとロッド装着穴66b が設けられている。反負荷側側板も同様である。以上説明した構造により、永久磁石とポールシューを構成する回転子鉄心は、遠心力に対しては前記側板に支持され、負荷トルクに対しては、永久磁石のシャフトとの契合部に支持される。
【0018】
図6は、本実施例の有効性を示すトルク特性の磁界解析結果であり、本実施例の回転子を用いた回転電機(A)と、略同形状でブリッジ部を有する従来の回転子を用いた回転電機(B)との比較例である。
比較においては、回転子の外形状のほかに、シャフト81の形状を同じにした。シャフトのサイズは強度と剛性より必要なサイズが決められている場合が多いからである。
従来の回転子の回転子鉄心85は、磁石装着孔85d の外側と内側に、外側ブリッジ部85b と内側ブリッジ部85cを有する一体構造であり、内側への洩れ磁束を低減するために、空隙85a を設けている。
永久磁石82は、外側ブリッジ部と内側ブリッジ部を設ける必要上、径方向の長さが本実施例より短くなっている。
回転電機への負荷電流に対するトルク特性の比較では、本実施例の回転子を用いた回転電機が、従来の回転子を用いた回転電機に比べて、より大きな永久磁石を装着しているためと、洩れ磁束が少ないためとで、モータが発生し得る最大トルクを大きく増大させ得る結果となっている。
【0019】
以上のように、本実施例の永久磁石形回転電機によれば、洩れ磁束を低減し、発生し得る最大トルクを増大するするとともに、強大なトルクに耐え得る構造の回転子を有する永久磁石形回転電機を提供できる。
【0020】
本発明が特許文献1と異なる部分は、一体の回転子鉄心でなく、磁極毎に分離されたポールシューを構成する回転子鉄心を有する部分である。
本発明が特許文献2と異なる部分は、永久磁石やポールシューを構成する回転子鉄心に作用するトルクが、側板でなく、永久磁石とシャフトの契合部において、永久磁石の厚みに対してせん断荷重として作用する部分である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の永久磁石形回転電機は、回転電機が発生し得る最大トルクが大きいため、サーボモータのみならず、汎用モータにも適用できる。
【符号の説明】
【0022】
10 回転子
12 シャフト
14 永久磁石
16 回転子鉄心
22 ロッド
24 側板
50 フレーム
51 負荷側ブラケット
52 反負荷側ブラケット
53 固定子鉄心
54 固定子コイル
57 エンコーダ部
58 負荷側軸受
59 反負荷側軸受
60 回転子
61 シャフト
62 永久磁石
63 ロッド
65 ポールシューを構成する回転子鉄心
66 負荷側側板
67 反負荷側側板
81 シャフト
82 永久磁石
85 回転子鉄心
85a 空隙
85b 外側ブリッジ部
85c 内側ブリッジ部
85d 磁石装着孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8