【実施例1】
【0013】
図1は、ACサーボモータに供する、本発明の第1実施例を示す永久磁石形回転電機の軸方向断面図である。
図において、前記回転電機は、固定子と、回転自在に支持された概円筒形の回転子60を備える。回転子は、負荷側軸受58と反負荷側軸受59を介して、負荷側ブラケット51と反負荷側ブラケット52に回転自在に支持されている。
シャフト61の反負荷側端部には、回転子の回転位置を検出するためのエンコーダ部57が設置されている。
固定子は、固定子鉄心53と固定子コイル54よりなる。
反負荷側ブラケットは、フレーム50とともに、図示しないボルトで、負荷側ブラケットに締結されている。
【0014】
図2は、前記回転電機の径方向断面図である。
図において、固定子は、ティース毎に分割された固定子鉄心53と、集中巻に巻回された固定子コイル54より構成され、フレーム50に支持されている。
回転子60は、磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心65と、各々のポールシューの両側に放射状に配置された永久磁石62を有し、10極の磁極を構成している。
ポールシューを構成する回転子鉄心の両側の永久磁石の磁束発生面より発生する磁束を、ポールシュー外周に集中することで、固定子と回転子の間のギャップ磁束密度を上げ、より大きなトルクが得られる構造であることは、従来の永久磁石形回転電機と同じである。磁束は固定子鉄心を経て固定子コイルに鎖交する界磁磁束となる。永久磁石の磁束発生面より発生する磁束には、外周に至らず回転子内で永久磁石へ戻る洩れ磁束もあり、漏れ磁束の低減はモータの性能向上に重要である。
【0015】
図3は、前記回転電機の回転子の軸方向断面図である。
図において、回転子は、永久磁石62とポールシューを構成する回転子鉄心65を回転子の径方向に支持する負荷側側板66と反負荷側側板67を、回転子の軸方向両側に有する。ポールシューを構成する回転子鉄心は、前記回転子鉄心を軸方向に貫くロッド63により、軸方向両側の側板に支持されるため、遠心力に対し十分に強固な構造の回転子となっている。
側板は、ステンレス等の非磁性金属板をプレス成形により製作されるが、要求される強度や耐熱性が低い場合、樹脂成形で製作してもよい。シャフトも、ステンレス等の非磁性金属製である。これらの材質は非磁性であるため、洩れ磁束の増加を防ぐことができる。
ロッドは鉄製であり、磁束を通し易くする配慮がなされている。
【0016】
図4は、前記回転電機の回転子の径方向断面図である。
図において、放射状に配置された永久磁石62は、板状の部品であり、広い面に対し垂直に着磁されている。ポールシューを構成する回転子鉄心65も各々分離した10個の部品であり、各々の回転子鉄心は電磁鋼板の積層体である。ポールシューを構成する回転子鉄心は各々分離した部品であり、永久磁石の外側ブリッジ部も内側ブリッジ部もないため、永久磁石のN極からS極へ直接ショートカットする洩れ磁束を低減し、発生し得る最大トルクを増大することができる。
放射状に配置された永久磁石の内側は、シャフト61と、凹凸による契合部をもって、契合固定されている。負荷トルクは、10個の永久磁石の契合部において、永久磁石の厚みに対してせん断荷重として作用するため、例えば特許文献2に示した側板を介してシャフトに支持する構造に比較すれば、強大なトルクに耐え得る構造となっている。回転子の磁極部の軸方向長さが大きい場合はより有利である。
【0017】
図5は、前記回転電機の回転子の部品構成説明図である。
図において、シャフト61には永久磁石62との契合部となる凹形状が設けられている。磁極毎に分離され、円周状に配置されたポールシューを構成する回転子鉄心65と、各々のポールシューの両側に放射状に配置され、シャフトと凹凸による契合部を持って契合固定される永久磁石は、回転子の軸方向両側の負荷側側板66と反負荷側側板67に支持される。
ロッド63は、電磁鋼板を積層してなるポールシューを構成する回転子鉄心を貫通している。負荷側側板には、永久磁石とポールシューを構成する回転子鉄心を貫通するロッドと契合する永久磁石装着穴66aとロッド装着穴66b が設けられている。反負荷側側板も同様である。以上説明した構造により、永久磁石とポールシューを構成する回転子鉄心は、遠心力に対しては前記側板に支持され、負荷トルクに対しては、永久磁石のシャフトとの契合部に支持される。
【0018】
図6は、本実施例の有効性を示すトルク特性の磁界解析結果であり、本実施例の回転子を用いた回転電機(A)と、略同形状でブリッジ部を有する従来の回転子を用いた回転電機(B)との比較例である。
比較においては、回転子の外形状のほかに、シャフト81の形状を同じにした。シャフトのサイズは強度と剛性より必要なサイズが決められている場合が多いからである。
従来の回転子の回転子鉄心85は、磁石装着孔85d の外側と内側に、外側ブリッジ部85b と内側ブリッジ部85cを有する一体構造であり、内側への洩れ磁束を低減するために、空隙85a を設けている。
永久磁石82は、外側ブリッジ部と内側ブリッジ部を設ける必要上、径方向の長さが本実施例より短くなっている。
回転電機への負荷電流に対するトルク特性の比較では、本実施例の回転子を用いた回転電機が、従来の回転子を用いた回転電機に比べて、より大きな永久磁石を装着しているためと、洩れ磁束が少ないためとで、モータが発生し得る最大トルクを大きく増大させ得る結果となっている。
【0019】
以上のように、本実施例の永久磁石形回転電機によれば、洩れ磁束を低減し、発生し得る最大トルクを増大するするとともに、強大なトルクに耐え得る構造の回転子を有する永久磁石形回転電機を提供できる。
【0020】
本発明が特許文献1と異なる部分は、一体の回転子鉄心でなく、磁極毎に分離されたポールシューを構成する回転子鉄心を有する部分である。
本発明が特許文献2と異なる部分は、永久磁石やポールシューを構成する回転子鉄心に作用するトルクが、側板でなく、永久磁石とシャフトの契合部において、永久磁石の厚みに対してせん断荷重として作用する部分である。