(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679038
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】圧縮成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/32 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
B29C43/32
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-263564(P2013-263564)
(22)【出願日】2013年12月20日
(62)【分割の表示】特願2010-520790(P2010-520790)の分割
【原出願日】2009年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-76664(P2014-76664A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2008-186883(P2008-186883)
(32)【優先日】2008年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(72)【発明者】
【氏名】米田 敦志
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−277611(JP,A)
【文献】
特開2002−240134(JP,A)
【文献】
特開2000−084991(JP,A)
【文献】
特開平09−277357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の成形型と、
型締めに際して、前記下型を上動させつつ圧縮荷重を加える下型駆動手段と、
所定のストローク長まで前記上型を下動させた後に、前記下型に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように前記上型を支持する上型駆動手段と、
型締めがなされる際に前記上型の上動を抑止する固定手段と
を備え、
前記固定手段が、前記上型駆動手段の出力軸に設けられ、下方が前記出力軸に向かって先細りとされたテーパ状の側面を有する係止台と、前記上型駆動手段の基台の左右に対向して設けられ、下方が前記出力軸に向かって先細りとされたテーパ状の端面を有する係止バーであることを特徴とする圧縮成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分なストロークをもって型開きがなされるようにしても、圧縮成形を効率よく繰り返し実施することができる圧縮成形装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1などに示されているように、上下一対の成形型の間に、押出機から押し出された溶融樹脂を所定の樹脂量となるように切断して供給し、型締めして所定形状に圧縮成形することが知られている。
【特許文献1】特開2000−280248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、圧縮成形によって所定形状に成形された成形品を成形型から取り出す際には、成形品の取り出しを行うのに必要な空間が上型と下型との間に形成されるようにする必要がある。このため、成形が完了した後には、十分なストロークをもって型開きがなされるようにすることが望まれる。
しかしながら、型開きのストロークを長くして、そのようなストロークで成形型の開閉を繰り返したのでは、成形サイクルが長くなってしまい、成形効率の点で好ましくない。
【0004】
一方、成形サイクルを短くするには、成形型の開閉動作を高速で行うようにして、成形型の開閉に要する時間を短縮すればよい。
しかしながら、この種の圧縮成形には、一般に、クランク機構や油圧シリンダを利用して、成形型の開閉や型締めを行うようにした圧縮成形装置が用いられている。そして、そのような装置において、圧縮成形に必要な高い荷重が得られるように、その加圧能力を維持した上で、成形型を高速で開閉させようとすると、装置が大型化してしまったり、ランニングコストが増大したりするというような不具合が考えられる。
また、エアシリンダ又はボールネジとサーボモーターを組み合わせたものを利用した駆動機構により、成形型の開閉動作を高速で行うことも考えられるが、一般に用いられているエアシリンダ又はボールネジとサーボモーターを組み合わせたものを利用した駆動機構では、圧縮成形に必要な高い荷重を発生させるには限界があった。
【0005】
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、所定形状の成形品を圧縮成形によって成形するに際して、成形品の取り出しのために、十分なストロークをもって成形型の型開きがなされるようにしても、成形サイクルが長くなってしまうのを有効に回避して、効率よく所定形状の成形品を量産することができる圧縮成形装置
の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧縮成形装置は、上下一対の成形型と、型締めに際して、前記下型を上動させつつ圧縮荷重を加える下型駆動手段と、所定のストローク長まで前記上型を下動させた後に、前記下型に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように前記上型を支持する上型駆動手段とを備え、前記上型駆動手段が、型締めがなされる際に前記上型の上動を抑止する固定手段を有する構成としてある。
【0007】
このような本発明に係る圧縮成形装置によれば、所望の容器形状に対応するキャビティが形成された上下一対の成形型に、所定の樹脂量とされた溶融樹脂を供給し、圧縮成形により合成樹脂製容器を製造するにあたり、前記溶融樹脂が供給された下型に近接するように、所定のストローク長まで上型を下動させた後に、前記下型を上動させつつ、前記下型に圧縮荷重を加えるとともに、前記上型の上動を抑止して前記下型に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように前記上型を支持する
ことにより合成樹脂製容器を製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のような本発明にあっては、十分なストロークをもって型開きがなされるようにしても、成形サイクルが長くなってしまうのを有効に回避して、圧縮成形を効率よく繰り返し実施することができる。
【0009】
このため、本発明
によれば、所定形状の合成樹脂製容器を生産性よく量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る圧縮成形装置の実施形態の概略を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る
圧縮成形装置を利用して合成樹脂製容器
を製造する工程を説明するための工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[圧縮成形装置]
まず、本発明に係る圧縮成形装置の実施形態について説明する。
ここで、
図1は、本実施形態に係る圧縮成形装置の概略を示す説明図である。また、
図2は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法を説明するための工程図であり、
図1に示す圧縮成形装置を利用して合成樹脂製容器を製造する例を示している。
【0013】
本実施形態において、圧縮成形装置1は、雌型としての上型10と、雄型としての下型20とからなる上下一対の成形型を備えている。また、図示する圧縮成形装置1は、薄肉カップ状の合成樹脂製容器Mを成形するためものであり(
図2(e)参照)、型を閉じた上下型10,20の間には、当該容器Mの外形形状に対応したキャビティが形成されるようになっている。
【0014】
なお、合成樹脂製容器Mは、圧縮成形が可能な任意の熱可塑性樹脂を用いて成形することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂,ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリ乳酸,又はこれらの共重合体などが用いられる。
【0015】
このような上下一対の成形型のうち、下型20は、下型駆動手段としての油圧シリンダ40に取り付けられている。この油圧シリンダ40は、型締めに際して下型20を上動させつつ、圧縮成形に必要な圧縮荷重を発生させて、これを下型20に加えるようになっている。
【0016】
一方、上型10は、上型駆動手段としてのエアシリンダ50に取り付けられている。この上型駆動手段によって、上型10は、型締めする際に下動して下型20に近接し、型開きの際には上動して下型20から離間するようになっている。
エアシリンダ50は、基台55に鉛直に設置されており、このエアシリンダ50の出力軸51の先端側に、上型10が取り付けられている。エアシリンダ50を駆動させると、上型10は、下型20に対して離接するように上下動し、これによって上型10の高速動作を可能としている。
【0017】
所定のストローク長まで上型10を下動させた後は、下型20が取り付けられた油圧シリンダ40を駆動させて、下型20を上動させつつ圧縮成形に必要な荷重を下型20に加える。このとき、下型20に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように上型10を支持するために、上型駆動手段は、上型10の上動を抑止する固定手段を有している。
【0018】
図1に示す圧縮成形装置1にあっては、出力軸51の基部側に設けられた係止台52と、基台55の左右に対向して設けられた係止バー53が、上型10の上動を抑止する固定手段を構成する。
図1に示すように、係止台52は、下方が出力軸51に向かって先細りとされたテーパ状の側面を有し、係止バー53は、下方が出力軸51に向かって先細りとされたテーパ状の端面を有する。そして、係止バー53は、エアシリンダ54により水平方向に進退可能に設けられ、上型10が所定のストローク長まで下動したところで前進し、係止台52の上面側に係止されることにより、上型10の上動を抑止するようにしてある(
図2(c)参照)。
【0019】
[合成樹脂製容器の製造方法]
次に、以上のような構成とされた圧縮成形装置1の動作を説明するとともに、
図1に示す圧縮成形装置1を利用して
合成樹脂製容器を製造する工程について説明する。
【0020】
まず、一つ前の成形サイクルにおいて所定形状に成形された容器Mが取り出され、そのまま型開きした状態で待機する下型20上に、図示しない押出機から押し出されて、所定の樹脂量となるように切断された溶融樹脂Dを供給する(
図2(a)参照)。このとき、上型10は、下型20との間に、容器Mの取り出しに十分な空間が形成されたままの位置で待機する。
次いで、上型駆動手段としてのエアシリンダ50を駆動させて、上型10を下動させる(
図2(b)参照)。
【0021】
次に、上型10が所定のストローク長まで下動したところで、エアシリンダ54を駆動させて、係止バー53を前進させる。これにより、出力軸51の基部に設けられた係止台52の上面側に係止バー53を係止させて、上型10の上動を抑止する(
図2(c)参照)。
その一方で、下型20が取り付けられた油圧シリンダ40を駆動させて、下型20を上動させつつ圧縮成形に必要な荷重を下型20に加える(
図2(d)参照)。
【0022】
これにより、下型20に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように、上型駆動手段に上型10が支持されて、上型10と下型20との間に形成されるキャビティ内で、溶融樹脂Dが所定形状の容器Mに圧縮成形される。
【0023】
圧縮成形が完了すると、エアシリンダ54を駆動させて、係止バー53を後退させ、係止台52に対する係止バー53の係止を解除する。次いで、エアシリンダ50を駆動して上型10を上動させて型開きをし、成形された容器Mの取り出しを行う(
図2(e)参照)。
また、型開きに際しては、下型20についても、下型駆動手段を駆動させて待機位置まで下動させる。
【0024】
型開きがなされ、容器Mが取り出された後は、
図2(a)に示す状態に戻って、圧縮成形を繰り返す。
【0025】
以上のようにして圧縮成形を行う本実施形態において、圧縮成形装置1が備える上型駆動手段としてのエアシリンダ50は、上型10の高速動作を可能とする。そして、上型10が所定のストローク長まで下動したところで、固定手段によって上型10の上動が抑止され、下型20に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされる。
したがって、成形品の取り出しのために、十分なストロークをもって成形型の型開きがなされるようにしても、成形サイクルが長くなってしまうのを有効に回避して、効率よく圧縮成形を繰り返し実施して、所定形状の合成樹脂製容器Mを生産性よく量産することができる。
【0026】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更実施が可能であるのはいうまでもない。
【0027】
例えば、前述した実施形態では、下型20に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように上型10を支持することができれば、上型駆動手段は、前述したものには限定されない。
すなわち、前述した実施形態にあっては、圧縮成形に必要な圧縮荷重は、下型駆動手段によって発生させて、これを下型20に加えるようにしている。このため、上型駆動手段には、そのような高い荷重を発生させるための加圧能力は要求されない。したがって、上型駆動手段は、型締めする際に、下型20に加えられた圧縮荷重に抗して型締めがなされるように上型10を支持できるという条件を満足するものであれば、上型10を高速で上下動させることが可能な種々の機構を採用することができる。
【0028】
また、前述した実施形態では、上型10を雌型とし、下型20を雄型としたが、これに限定されない。上型10を雄型とし、下型20を雌型としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、圧縮成形による合成樹脂製容器の製造に、特に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 圧縮成形装置
10 上型
20 下型
50 エアシリンダ
52 係止台
53 係止バー
54 エアシリンダ
M 合成樹脂製容器