(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炊飯工程において、加圧蒸気により加圧したチャンバー内で、前記容器内の浸漬米を100℃を超える所定温度まで加熱することを特徴とする請求項1に記載の包装米飯の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の包装米飯の製造装置に係る概略平面図であり、
図2は同製造装置における容器自動供給部、紫外線殺菌部、浸漬米充填部、加圧炊飯部及び撹拌部等の構造を示す概略図であり、
図3は前記加圧炊飯部に用いる加圧加熱装置の構造を示すための概略断面図であり、
図4は同一チャンバー内で真空冷却、ガス置換及び容器開口部の密封シールを行う密封包装部の構造を示す概略図である。
【0019】
図1及び
図2において、符号1は本発明に係る包装米飯の製造装置であり、符号2は容器自動供給部である。容器自動供給部2は、耐熱性の合成樹脂性容器(容器)2cを多数積み重ねるとともに、複数列(例えば、4列)で待機させておく容器貯留部2aと、該容器貯留部2a下部から各列の容器を1枚ずつ自動で取り出す容器供給部2bとからなり、容器2cは横4列で連続的にコンベア装置3に供給される。
【0020】
コンベア装置3は、一対のスプロケット3a,3b及び補助スプロケット3c,3dにチェーン3eが巻回されており、該チェーン3eに、容器受けパレット3f…が間隙をおいて多数取り付けられている。該容器受けパレット3f…は、1枚のパレット3fに横4列、縦1列で4個の容器2c…が収容可能であり、複数個の容器2c…を整列させながら順次搬送させる構成になっている。
【0021】
容器受けパレット3fには、容器2cの下部を嵌め込むための孔が形成されており、容器2cは、前記孔に嵌め込まれた状態で容器受けパレット3fに収容される構造となっている。なお、パレットに収容される容器の個数は、4個に限定されるわけではなく、包装米飯の製造規模や条件によって、適宜増減させればよい。
【0022】
容器自動供給部2の次の工程には、紫外線殺菌部4が設けられ、容器内を紫外線によって殺菌する。なお、この工程の前又は後に異物吸引装置等を用いて容器2c内の塵埃や異物を吸引除去することが望ましい。
【0023】
紫外線殺菌部4の次の工程には、浸漬米充填部5が設けられ、容器2cに所定量、例えば一人前の米が充填される(米供給工程)。浸漬米充填部5には、計量・排出が可能な公知の浸漬米充填機を採用すればよい。本実施例では、2つの同一の浸漬米充填機5a及び5bを搬送方向に対して直列に配置している。
【0024】
図2に示すように、送米管50により送られてきた洗米済みの米は、切換バルブ51を経由してタンク52に投入され、タンク52内で浸漬工程が行われる。なお、タンク52内への浸漬用の水を供給する手段は図示していない。タンク52の下方には、充填バルブ53が設けられ、浸漬工程が終了した浸漬済みの適量の米が充填バルブ53により、充填水切機54に送られる。そして、該充填水切機54で水切りを行った前記米が、配米シャー55から、該配米シャッターの下方に搬送されている容器2c内に供給される。
【0025】
なお、原料の米は、容器2cの底部に層厚が一様になるように投入するとよい。この様にすることで、マイクロ波を用いた加熱による加熱ムラを防ぐことができる。
【0026】
浸漬米充填部5に供給する原料としては、市販されている無洗米が好ましいが、精白米、胚芽残存率の高い胚芽米、分搗き米及び玄米でもよい。
【0027】
ところで、本実施例では、浸漬米充填機を搬送方向に対して直列に2つ設けているが、これは、一方の浸漬米充填機から容器2cに浸漬米を供給している間に、もう一方の浸漬米充填機で浸漬工程を行うためである。このように構成することで、浸漬米を連続的に供給することが可能となる。
【0028】
米計量充填部5の次の工程には、加圧炊飯部25が設けられ、該加圧炊飯部25で、マイクロ波及び加圧蒸気の2つの熱源によって容器2c内の米の炊飯が行われる(炊飯工程)。
【0029】
ここで、加圧炊飯部25を構成する加圧加熱装置9について
図3を用いて説明する。
図3は、加圧加熱装置9の概略断面図である。符号30は油圧シリンダであって、該油圧シリンダ30の昇降動作によりベース板31が支柱32に沿って昇降する。ベース板31の上面には複数の支持体34が立設しており、該支持体34により下チャンバー35が支持されている。符号36はマイクロ波発振装置であって、導波管37により上チャンバー38に接続されている。下チャンバー35は、油圧シリンダ30の昇降動作により上方に押し上げられる構造になっており、押し上げられた時に、下チャンバー35の上方に位置する容器受けパレット3fを挟み込む状態で、上チャンバー38に押し付けられる。上チャンバー38及び下チャンバー35には、それぞれ容器2cを収容できる大きさの窪みが設けられており、該窪みにより、下チャンバー35が押し上げられた時に、密封された空間であるチャンバー40が形成される。本実施例においては、1枚の容器受けパレット3fに、横4列に4個の容器2cが収容されていることから、チャンバー40も横4列に4個同時に形成される。なお、
図3は、チャンバー40が形成された状態を示している。
【0030】
チャンバー40には、上方に導波管37が接続されており、マイクロ波発振装置36で発振されたマイクロ波が導波管37を経て照射される。なお、本実施例においては、一つのチャンバー40に対して、二つのマイクロ波発振装置36から3kWの出力のマイクロ波(周波数:2.5GHz、波長:12cm)がそれぞれ照射される構造としている。
【0031】
なお、マイクロ波発振装置36の出力は3kWに限定されるものではなく、無菌包装米飯の製造条件により適切な出力に変更すればよい。また、上チャンバー38には、照射されたマイクロ波が外部に漏れないようにするためにチョーク39が設けられている。
【0032】
チャンバー40内には、送管42から加圧蒸気が投入される構造となっている。該送管42は別途設けられた蒸気発生装置(ボイラー)及び蒸気クリーン装置(図示していない)に接続されており、該蒸気発生装置で発生させた加圧蒸気は、蒸気クリーン装置を通してから、減圧弁43、電磁弁44及び圧力計45を経てチャンバー40内に送られる。
【0033】
本発明では、加圧蒸気を直接、食品である米に接触させるので、蒸気クリーン装置を設けている。また、チャンバー40内に投入する加圧蒸気の圧力は、目標とするチャンバー40内の内圧よりも若干高めに設定してやればよい。
【0034】
なお、チャンバー40と導波管37との接続部には、遮蔽板が配設されている(図示していない)。この遮蔽板は、当然、マイクロ波は透過するが、蒸気は漏れないものを用いている。
【0035】
また、容器受けパレット3fを挟み込む状態で下チャンバー35を上チャンバー38に押し付けることで形成されるチャンバー40内から加圧蒸気が漏れるのを防ぐために、パッキン41が設けられている。このパッキン41によってチャンバー40の気密性が維持される。
【0036】
チャンバー40内の気圧を下げる場合、送管46からチャンバー40内の加圧蒸気を排出する。送管46は、電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49に接続されており、これら電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49を制御することによりチャンバー40内の圧力を所定の速度で降圧することができる。また、下チャンバー35は油圧シリンダ30の昇降運動により上下方向に動くため、送管46はフレキシブルなものを用いている。
【0037】
加圧炊飯部25の次の工程には、具材供給部27(具材供給工程)を配設する(
図1及び
図2参照)。該具材供給部27は、
図2に示すように、各容器2c内に各種具材を計量供給するために、具材タンク27aから任意量の具材が計量供給可能に構成してある。
【0038】
具材供給工程で具材が供給された容器2cは、1次加水部10に送られる(
図1及び
図2参照)。1次加水部10では、具材を米飯と撹拌にするために必要となる撹拌水がノズル10aから充填される(1次加水工程)。前記撹拌水を多く充填した方が撹拌を行いやすいが、その反面、撹拌時に容器内の内容物が周囲に飛散しやすくなるため、撹拌の容易性と飛散防止とを考慮した撹拌水の充填量とする。
【0039】
また、製造する包装米飯の食味を考慮し、温度が50℃〜60℃の撹拌水を使用することが望ましい。このため、本発明では別途加温装置を設け(図示していない)、撹拌水を所定の温度まで加熱してから容器2cに投入している。当然、常温の撹拌水を使用することもできる。なお、前記撹拌水は水に限定されず、調味液又は調味液と水との混合液を使用してもよい。
【0040】
本実施例では、具材を供給する具材供給工程の次に撹拌水を充填する1次加水工程を設けているが、具材供給工程と1次加水工程とは順番を入れ替えても何ら問題はない。
【0041】
撹拌水投入後、容器2cは撹拌部26に送られ、撹拌部26にて容器2c内の米飯と具材とが撹拌される。なお、ここでの撹拌は機械を使用してもよいし、手作業により撹拌してもよい。
【0042】
撹拌工程後、次の2次加水部11にて、各容器2cに仕上げ炊飯用及び炊飯調整用(米飯の硬さ調整用)の炊飯水の補充を行う(給水工程)。2次加水部11は所定量の補充炊飯水をノズル11aから容器2cに供給可能に構成されている。
【0043】
2次加水部11の次の工程には、密封包装部7が設けられている。なお、2次加水部11の容器排出側と密封包装部7との間には、容器移送装置8、横送りコンベア13及び押し込み手段29が配設されており、2次加水部11から排出された各容器2c(仮製品)が密封包装部7まで移送されるようにしてある。前記押し込み手段29は、移送されてきた容器2cを密封包装部7に押し出し供給するためのものである(
図1参照)。
【0044】
容器移送装置8は、複数個のローラに巻回されたコンベアベルトと、エアシリンダにより水平方向に往復動可能な押し込み機構と、該押し込み機構に取り付けられた押し込み部材とから構成され、横4列で搬送された容器2c…を横送りコンベア13に移送する役目をする。
【0045】
なお、
図1においては、製造装置1を「コ」の字状に配置するために横送りコンベア13を設けているが、設置面積が大きく、折り返し不要の場合は横送りコンベア13を省略することができる。
【0046】
横送りコンベア13により搬送された容器2cは、押し込み装置29によって、製品供給装置15に送られ、製品整列装置16によって、横4列、縦1列でパレットに整列して収容される。
【0047】
密封包装部7は、チャンバー24内において、容器2cに対してガス置換して上方開口部を密封シール処理するものである(密封包装工程)。密封包装部7は、コンベア装置18を備え、該コンベア装置18の上流側から、放射温度計19、チャンバー24が順次配設され、チャンバー24内には、線シール部20、ローレットシール部21及び容器フランジ冷却部22が順次配設されている。
【0048】
前記コンベア装置18は、一対のスプロケット18a,18bにチェーン18cが巻回されており、該チェーン18cには、容器受けパレット18d…が間隙をおいて多数取り付けられている。前記各容器受けパレット18d…には、容器2cを四つ横4列、縦1列状態に並設するための保持穴(図示せず)が四つ並設されている。
【0049】
前記放射温度計19は、容器2c内の温度を検知するように構成してある。前記チャンバー24については、前記容器2cを供給し、当該チャンバー24内を窒素ガスや炭酸ガス等で充満させることで、容器2c内のガス置換をするとともに、容器2cの上方開口部を密閉シール包装できるように構成してある。
【0050】
前記ローレットシール部21は、前記線シール部20で密閉シール包装された容器2cのシール面の捲れ防止のために、当該容器2cのシール面の周縁部をローレットシールするためのものである。さらに、前記容器フランジ冷却部22は、ローレットシールした前記容器2cのシール面の周縁部を冷却するためのものである。
【0051】
なお、上記製造フローにおいては、各容器2cは内部に米が入った状態で上方が開放状態となる区間があり、このままの状態では雑菌などの異物が混入するおそれがあるので、雑菌等の異物混入を防止するために、密封包装部7にて密封包装が行われるまでの各工程をクリーンブース内にて行うことが望ましい。
【0052】
前記密封包装部7の次の工程には、加熱加圧殺菌部23が配設されている(
図1及び
図5参照)。該加熱加圧殺菌部23は、前工程で上方開口部が密閉シールされた容器2cを加熱加圧殺菌部23に入れて殺菌処理する工程である。
【0053】
該加熱加圧殺菌部23は公知の装置(レトルト殺菌装置)を用いればよい。例えば、(株)日阪製作所製の高温高圧調理殺菌装置(商品名:フレーバーエース)を用いることができる。加熱加圧殺菌部23は、
図5に示すように、開閉扉23aを有し室内を密閉状態にできる処理槽23bを備える。そして、該処理槽23bには、加圧空気を密閉室内に供給する加圧空気供給管23cが接続されるほか、密閉室内の加圧空気を排気する排気管23d、温水タンク23gから密閉室内に熱水を供給する熱水供給管23e及び密閉室内で使用後の熱水を排出する配水管23fがそれぞれ接続されたものとなっている。
【0054】
前記処理槽23bで殺菌処理をする場合には、複数の前記容器2cを並べた整列皿を多段にしてこれを処理槽23bに入れた後、後述する加熱加圧条件で制御運転する。本実施例における加圧加熱殺菌部23は熱水中に容器2cを浸漬する熱水加熱式のものであるが、このほか、加熱蒸気を室内に充満せて加熱させる蒸気加熱式のものを使用してもよい。
【0055】
以下、上記のような包装米飯の製造装置1を用いて包装米飯を製造する方法について説明する。
【0056】
図1及び
図2に示すように、容器自動供給部2から容器2cが取り出されて容器受けパレット3f…に供給され、容器2cは横4列、縦1列で整列されて順次搬送される。
【0057】
そして、紫外線殺菌部4により殺菌された後、容器2cは浸漬米充填部5に至る。なお、この工程の前後において、異物吸引装置等によって容器2c内の異物を除去するようにしてもよい。
【0058】
浸漬米充填部5においては、容器2c内に、あらかじめ浸漬された所定量の米が順次計量・充填される。包装米飯(パック米飯)は個食用(一人用)の製造が主であり、充填する浸漬米の量は、85グラム〜130グラム程度である。本実施例では約130gの浸漬米を充填した。
【0059】
浸漬米が充填された容器2cは、加圧炊飯部25に送られる。加圧炊飯部25では、極めて短時間で容器2c内に充填された浸漬米を炊飯する炊飯工程が行われる。
【0060】
この炊飯工程について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、前記炊飯工程を説明するためのフローチャートであり、
図7は、炊飯工程におけるチャンバー40内の内圧及び容器2c内の米の温度の変動を示している。
【0061】
まず、加圧炊飯部25に配設されている加圧加熱装置9に送られてきた容器2cを、下チャンバー35を押し上げることで形成されるチャンバー40内に収容し(ステップS1)、チャンバー40が形成された時点で、減圧弁43により圧力が調整された加圧蒸気を、電磁弁44を開いて送管42によりチャンバー40内に送り、チャンバー40内を加圧蒸気で加圧する(ステップS2)。
【0062】
投入する加圧蒸気による前記加圧は、チャンバー40内の内圧が、0.2〜0.5MPa、好ましくは0.25〜0.4MPa、より好ましくは0.3MPa〜0.38MPa程度になるように行う。本実施例では、チャンバー40内の内圧を0.36MPaまで加圧する。
図7に示すように、0.36MPaまで加圧するのに要する時間は約7秒である。
【0063】
チャンバー40内の内圧と、加熱する米が含有する水分の沸点とには密接な関係があり、前記内圧が高ければ当然前記沸点も高くなり、前記圧力値が低ければ沸点も低くなる。沸点が高くなりすぎると食味低下の原因となるおそれがあり、沸点が低いと米の炊飯が短時間では十分に行えないので、これらを考慮して適切な加圧によるチャンバー40内の内圧を決定する必要がある。
【0064】
また、チャンバー40が形成されるとほぼ同時にマイクロ波発振装置36によるマイクロ波の照射を開始する(ステップS3)。したがって、ステップS2とステップS3とは同時に開始されることになる。なお、ステップS2とステップS3とを時間差を設けてそれぞれ開始してもよいが、短時間で炊飯工程を行うためには、同時に開始することが望ましい。
【0065】
マイクロ波の照射による加熱に加え、加圧蒸気による加熱による二つの熱源での同時加熱によって、容器2c内の米を100℃を超える温度、好ましくは102℃〜148℃、より好ましくは140℃以上まで加熱する(ステップS4(加熱工程))。チャンバー40内は加圧されているため、米が含有する水分を100℃を超える温度に加熱することが可能である。本実施例では、チャンバー40内の内圧を0.36MPaまで上げているので、水の沸点も上がり、148℃まで前記水分の温度が上昇する。そして、この温度を維持した状態で所定の時間、炊飯(加熱)する。
【0066】
前記時間は、容器2cに投入した米の量や目的とする炊飯後の米飯の硬さ等の条件により適宜設定されるものである。本実施例では、
図7に示すように、前記時間を16秒間(7秒〜23秒)に設定している。なお、チャンバー40内の内圧が0.36MPaの時のチャンバー40内の蒸気の温度も148℃となる。
【0067】
マイクロ波の照射による所定の時間(本実施例では23秒間)の加熱後、マイクロ波の照射を停止するとともに、電磁弁44を閉じ、電磁弁47を開いて、スピードコントローラ48の制御によって、徐々にチャンバー40内の内圧を大気圧まで下げていく(ステップS5(降圧工程))。降圧開始から7秒程度経過した時点で大気圧になるように、チャンバー40内の内圧を下げる(ステップS6)。その際、降圧の途中の時点で電磁弁49を開き、チャンバー40内を確実に大気圧と同レベルまで減圧する。実際には、電磁弁49を開いてからチャンバー40内の圧力が常圧まで低下するのに2秒程度の時間が必要である。
【0068】
チャンバー40内の内圧を常圧(大気圧)まで急激に降圧させると、チャンバー40内の水の沸点が100℃まで下がるため、容器2c内の米が含有する水分の沸点も降圧に伴って下がる。このため、マイクロ波の照射停止後であっても、容器2c内の100℃を超える温度まで加熱された前記水分の沸騰を維持した状態のまま、大気圧までの減圧が可能となる。すなわち、炊飯に必要な熱を効率良く利用することができる。また、前記水分の全てを沸騰させるので、沸騰している前記水分の活発な動きによって容器2c内の米をムラなく均一に炊飯することが可能となる。
【0069】
ところで、通常、容器内の米が完全に炊飯水に浸かった状態で炊飯を行うが、本発明の炊飯工程では、容器2cに炊飯水を充填しないことを特徴の一つとしている。このため、炊飯工程において、炊飯水の沸騰の作用によって容器2c内の内容物(おねば等)が容器の周囲に飛散することがない。
【0070】
本発明では炊飯水を充填すること無しに炊飯を行うが、これは本発明が、浸漬後の米を使用するとともに、熱源の一つである加圧蒸気が含有する水分を炊飯水の一部として利用するからである。また、通常の炊飯では、加熱され沸騰した炊飯水のうち、米に吸収されずに蒸発してしまうものが存在するが、本発明では炊飯水を充填しないので、炊飯工程時に必要な加熱エネルギーを最小限にして加熱効率(生産効率)を向上させることができる。
【0071】
なお、前記炊飯工程に必要な時間は、自由に変更することができるので、米飯の製造条件に合わせて、20秒〜60秒、好ましくは20秒〜40秒の間で適切に変更すればよく、その際、加熱工程及び減圧工程のそれぞれの時間は、適宜変更すればよい。本実施例では、
図7に示すように、30秒間(加熱工程が23秒、降圧工程が7秒)としている。
【0072】
ところで、本発明では蒸気を使用するので、チャンバー40内に結露水が発生することがある。このため、図示していないが、加圧加熱装置9に結露水を排出するための手段、例えばドレントラップ等を送管46に配設することが望ましい。
【0073】
炊飯工程が終了した容器2cは、コンベア装置3により次の工程である具材供給工程を行う具材供給部27に送られ、適宜、容器2cに具材が供給される。
【0074】
具材供給工程が終了した容器2cは、次の工程である1次加水工程を行うためにコンベア装置3により1次加水部10に送られる。1次加水部10では、あらかじめ減菌された撹拌用の撹拌水が順次計量・充填される。撹拌水が充填された容器2cは、撹拌工程を行う撹拌部26に送られる。
【0075】
撹拌部26では、容器2c内の米飯と前工程で供給された具材との撹拌が行われる。なお、製造する包装米飯が白飯である場合は、具材供給工程、2次加水工程及び撹拌工程を省略することができる。
【0076】
撹拌工程が終了した容器2cは、次の工程である2次加水工程を行うためにコンベア装置3により2次加水部11に送られる。2次加水部では、容器2c内の米飯をレトルト処理するのに必要な量の補充炊飯水が投入される。
【0077】
本実施例では、撹拌工程後に2次加水工程を設けているが、1次加水工程でレトルト処理に必要な量の水を投入することで、2次加水工程を省略することができる。
【0078】
本発明においては、2次加水工程より後の工程を後処理工程としている。この後処理工程には一般的な方法を用いることができる。2次加水工程でレトルト処理に必要な補充炊飯水が供給された容器2cは、容器移送装置8、横送りコンベア13、押し込み装置29、製品供給装置15及び製品整列装置16を経て放射温度計19を通過し、該放射温度計19にて米飯の温度が検知されて製品の温度管理が行われ、この後、次の工程である密封包装部7に搬入される。
【0079】
密封包装部7に送られた容器2cは、容器2cの開口縁(フランジ)が殺菌済フィルム7aでシールされる。このシールを炊飯後に行うのは、炊飯工程でチャンバー40内の内圧を昇圧及び降圧する際に、容器2c内もスムーズに昇圧及び降圧させるためであり、さらに、加圧蒸気の水分を炊飯工程での炊飯水の一部として利用するために、容器2cの上方を開口しておく方が有利であるからである。
【0080】
密封包装部7では、容器2cのガス置換及び密封包装を行う(
図1及び
図4)。前記容器2cが密封包装部7のチャンバー24内に搬入されると、まず、チャンバー24の真空発生装置(図示せず)を作動してチャンバー24内を真空状態下まで減圧し、容器2c内の米飯を75℃まで急冷させる。これにより、雑菌の繁殖を抑えるとともに、ガス置換の効率を高めることができる。前記減圧時には、当然、容器2c内の空気も吸い出される。次いで、真空状態下のチャンバー24内に窒素ガスや炭酸ガスを充満させてガス置換が行われる。
【0081】
ガス置換後の容器2cは、チャンバー24内の線シール部20でフランジの全周がシールされる。ローレットシール部21では捲れ防止のローレットシールが容器2cに施され、次いで、容器フランジ冷却部22にて冷却して容器2cの完全な密封包装が完了する。
【0082】
密封包装済みの容器2cは、
図1及び
図5に示したように、例えば、作業員やロボット等によって整列皿上に複数個並べられる一方、この整列皿は、多段状(例えば8段)に重ねられる。次いで、この多段状の整列皿(複数の容器2c)を1ロットとして、前記加熱加圧殺菌部23(レトルト殺菌装置)の処理槽23b内に、開閉扉23aを開けて例えば3ロット(合計24段)分の複数の容器2cを供給セットし、開閉扉23aを閉めて処理槽23b内を密閉状態にする(
図6参照)。次いで、前記処理槽23b内に加圧空気を供給するとともに熱水を供給し、処理槽23b内の温度を例えば115℃まで上昇させて35分間この状態を保持して加熱加圧殺菌処理を施す。これにより、完全に密封包装された容器2c内の米飯は、完全に殺菌処理されるとともに、前記米飯の芯部等の仕上げ炊飯処理がなされ完全アルファ化(アルファ化度100%)したものとなる(水分は60%〜65%程度)。
【0083】
加熱加圧殺菌部23でレトルト処理が完了した容器2cは、処理槽23bから取り出され、除水作業が行われた後、ピンホールチェック及びウェイトチェック等の検査を行ってから包装梱包し、製品として出荷される。
【0084】
本発明の製造方法は、包装米飯だけではなく、加熱方法が同様であれば、それ以外の食品の製造方法にも適用できる。