特許第5679144号(P5679144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679144ケミカル除去シート並びにそれを用いた展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679144
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ケミカル除去シート並びにそれを用いた展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
   A61L9/16 D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-281359(P2009-281359)
(22)【出願日】2009年12月11日
(65)【公開番号】特開2011-120759(P2011-120759A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2012年12月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 発行者:文化財保存修復学会第31回大会実行委員会 刊行物:文化財保存修復学会第31回大会in倉敷研究発表要旨集 発行日:平成21年6月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】松井 敏也
(72)【発明者】
【氏名】市川 佐織
(72)【発明者】
【氏名】新沼 仁
(72)【発明者】
【氏名】増田 竜司
(72)【発明者】
【氏名】中島 文男
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−297211(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3125419(JP,U)
【文献】 特開平11−221147(JP,A)
【文献】 特開2000−135159(JP,A)
【文献】 特許第3029979(JP,B2)
【文献】 特開2001−187341(JP,A)
【文献】 特開2006−195149(JP,A)
【文献】 特開平11−165007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
B01D 53/02−53/12
B01D 53/26−53/28
B01J 20/00−20/34
B01J 21/00−38/74
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示物或いは収蔵物を運び込む前の展示用或いは収蔵用施設のスペース内に空気清浄器を設置して前記スペース内を清浄化し、清浄化後に、前記空気清浄器を前記スペースから取り出し、次いで、ケミカル除去シートを前記スペース内に吊り下げ、その状態で前記スペース内に展示物或いは収蔵物を展示或いは収蔵する展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法であり、
前記ケミカル除去シートは、粒状吸着材を2枚の通気性シートで挟持した吸着シートをHEPA用ろ材或いはULPA用ろ材からなる通気性袋体に収容するとともに掛止手段を備えて前記展示用或いは収蔵用施設のスペース内に吊り下げ自在としてなり、
前記吸着シートは、前記粒状吸着材を前記通気性シートに固定するとともに前記2枚の通気性シート同士を固定するようにしたことを特徴とする展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法
【請求項2】
前記通気性袋体は区画壁で仕切られた複数の区画室を備えることを特徴とする請求項1記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法
【請求項3】
有機ガス用、酸性ガス用、またはアルカリガス用の粒状吸着材を固定することにより作製された有機ガス用、酸性ガス用、アルカリガス用の3種の吸着シートの少なくとも何れかを前記区画室に収容したことを特徴とする請求項2記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法
【請求項4】
前記通気性袋体は前記HEPA用ろ材或いはULPA用ろ材を重ねてヒートシールして区画壁を形成したものであることを特徴とする請求項2または3に記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法
【請求項5】
前記掛止手段は前記スペース内の可動壁のレールに吊り下げるための吊り下げ手段であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法
【請求項6】
前記空気清浄器はファン付きフィルタユニットであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法。
【請求項7】
前記ファン付きフィルタユニットはガス除去フィルタと、HEPAフィルタを備えるものであることを特徴とする請求項6記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、文化財公開施設等の展示用或いは収蔵用施設の環境を改善維持するために用いられるケミカル除去シートと、このケミカル除去シートを用いた展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文化財公開施設で検出される室内汚染物質の影響は、コンクリート、観覧者等に起因するアンモニア、アミン類等のアルカリ性物質による油絵の褐変や銅器・銀器の腐食促進の問題や、内装材のベニア合板樹脂のり等に起因するギ酸、酢酸等の酸性物質による金属工芸品の腐食、緑青など岩絵の具の変質、鉛丹の変色の問題、更には、ベニア合板塗膜材料、殺菌剤等に起因するホルムアルデヒド等のアルデヒドによる鉛丹など岩絵の具の変色、たんぱく質の硬化の問題等を引き起こすことが非特許文献1で紹介され、空気質改善することが望まれている。
従来、文化財や美術工芸品等の展示或いは収蔵環境の空気質改善方法として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。即ち、以下に示すように、この方法は、吸着材を保持した通気性シートを用いて施工後の壁面や床面からの汚染ガスを吸着除去するようになっており、主に、施工後のコンクリートからのアルカリ性汚染因子を対象としている。更に詳細に説明すれば、展示用或いは収蔵用スペースの内壁面施工が終了した後、内壁面に含まれる汚染因子に合わせた吸着材を保持した通気性シートを、内壁面に近接或いは接触させて配置し、吸着除去し、更にスペース内の空気をサーキュレータ等を用いて循環させて、汚染因子を吸着除去し、所定期間後に通気性シートを取り外して、展示品や収蔵品を入れるようにしている。また、床面上に床面から放出するガスの吸着剤を配置し、その上に非通気性シートを敷いて、更に上に外気からのガス吸着剤を配置することもできるものとなっている。また、静電吸着フィルタと、ガス吸着剤(浄化剤)と、吸湿フィルタを組込んだろ過式空気清浄器を用いて展示室内の環境を維持することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3029979号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「空気清浄」(第38巻第1号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術では、美術工芸品等の展示中にろ過式空気清浄器を稼動するので、機械故障等による漏電、差圧上昇によるモータ焼付けなどによる火災リスクが考えられ、また、活性炭や各種吸着剤が摩擦等により破損し、気流に乗って展示品に接触する可能性があるため、ガス吸着剤等からの発塵による美術工芸品の汚損リスクがあった。
そこで、本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、美術工芸品等の展示品や収蔵品の破損リスク低減を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究の結果、下記の解決手段を見いだした。
本発明の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項1記載の通り、展示物或いは収蔵物を運び込む前の展示用或いは収蔵用施設のスペース内に空気清浄器を設置して前記スペース内を清浄化し、清浄化後に、前記空気清浄器を前記スペースから取り出し、次いで、ケミカル除去シートを前記スペース内に吊り下げ、その状態で前記スペース内に展示物或いは収蔵物を展示或いは収蔵する展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法であり、前記ケミカル除去シートは、粒状吸着材を2枚の通気性シートで挟持した吸着シートをHEPA用ろ材或いはULPA用ろ材からなる通気性袋体に収容するとともに掛止手段を備えて前記展示用或いは収蔵用施設のスペース内に吊り下げ自在としてなり、前記吸着シートは、前記粒状吸着材を前記通気性シートに固定するとともに前記2枚の通気性シート同士を固定するようにしたことを特徴とする
また、請求項2記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項1記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法において、前記通気性袋体は区画壁で仕切られた複数の区画室を備えることを特徴とする。
また、請求項3記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項2記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法において、有機ガス用、酸性ガス用、またはアルカリガス用の粒状吸着材を固定することにより作製された有機ガス用、酸性ガス用、アルカリガス用の3種の吸着シートの少なくとも何れかを前記区画室に収容したことを特徴とする。
また、請求項4記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項2または3記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法において、前記通気性袋体は前記HEPA用ろ材或いはULPA用ろ材を重ねてヒートシールして区画壁を形成したものであることを特徴とする。
また、請求項5記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項1乃至4の何れかに記載の展示用、或いは、収蔵用施設の環境改善維持方法において、前記掛止手段は前記スペース内の可動壁のレールに吊り下げるための吊り下げ手段であることを特徴とする。
また、請求項6記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項1乃至5の何れかに記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法において、前記空気清浄器はファン付きフィルタユニットであることを特徴とする。
また、請求項7記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法は、請求項6記載の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法において、前記ファン付きフィルタユニットはガス除去フィルタと、HEPAフィルタを備えるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のケミカル除去シートによれば、粒状吸着材を通気性シートで挟持した吸着シートをHEPA用ろ材或いはULPA用ろ材からなる通気性袋体に収容して、吸着材をシート化することにより、吸着材の磨耗等が低減され発塵が低減する。また、発塵した場合でも、HEPA用或いはULPA用ろ材により、スペース内に有害な塵埃を飛散させない。そのため、塵埃による美術工芸品の汚れや傷つきなどの汚損リスクを低減できる。また、掛止手段を備えて展示用或いは収蔵用施設のスペース内に吊り下げ自在としたことにより、ケミカル除去シートの表裏から吸着できるため、コンクリートだけでなくベニア合板、観覧者、樹脂のり等からの室内の発ガスを除去することが可能となる。
また、本発明の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法によれば、展示物或いは収蔵物を運び込む前の展示用或いは収蔵用施設のスペース内に空気清浄器を設置して前記スペース内を清浄化し、清浄化後に、前記空気清浄器を前記スペースから取り出し、次いで、前記ケミカル除去シートを前記スペース内に吊り下げ、その状態で前記スペース内に展示物或いは収蔵物を展示或いは収蔵するようにしたので、美術工芸品等の重要物が部屋に入っている期間は電気式の空気清浄器を稼動しないため、火災リスクの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明ケミカル除去シートに用いられる吸着シートの一実施の形態を示す斜視図
図2】本発明ケミカル除去シートの一実施の形態を示す平面図
図3】(a)同ケミカル除去シートの使用状態を示す正面図,(b)同ケミカル除去シートの使用状態を示す側断面図
図4】同斜視図
図5】本発明環境改善維持方法に用いられる空気清浄器の使用方法の一実施の形態を示す斜視図
図6】本発明環境改善維持方法の一実施例における酢酸濃度の経時変化を示す特性線図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のケミカル除去シートに用いられる吸着シートの一実施の形態を示すもので、図中1は酸性ガス用の吸着シートを示し、活性炭からなる粒状吸着材1aを不織布からなる2枚の通気性シート1b,1bで狭持したもので、図略の粉末状ホットメルト樹脂で前記粒状吸着材1aを前記通気性シート1b,1bに固定するとともに前記2枚の通気性シート1b,1b同士を固定するようにした。尚、前記不織布に熱融着性繊維配合してこれを前記粉末状ホットメルト樹脂に代えて前記固定に用いるようにしてもよい。
【0010】
前記粒状吸着材としては、活性炭やイオン交換樹脂等を用いることができる。
【0011】
また、通気性シートとしては、熱可塑性樹脂等の合成樹脂からなる不織布が好ましいが、前記粒状吸着材を狭持してバインダー等で固定できればよく、特に限定されるものではない。
【0012】
図2は図中10で示される本発明のケミカル除去シートの一実施の形態を示すもので、図中2は通気性袋体を示すもので、650mm×1730mmの2枚のPTFE製HEPA用ろ材2a,2aをヒートシールして、ヒートシール2bで形成された区画壁2cによって二つの区画室2d,2dに仕切られており、各区画室2d,2dに前記酸性ガス用吸着シート1が収容されている。また、前記通気性袋体2の上端側には掛止手段2eとして、吊り下げ手段としてのアルミニウム製のパイプが前記通気性袋体2の上端に設けた袋部に挿通して設けられ、また、同じく、前記通気性袋体の下端側には錘2fとしてアルミニウム製のパイプが前記通気性袋体2の下端に設けた袋部に挿通して設けられている。
本実施例では、上下2室の区画室を設けた例を示したが、3室以上に区画したり、左右に区画したりしてもよい。
本実施の形態では、吸着シートとして酸性ガス用吸着シートを用いた例を示したが、アルカリガス用や有機ガス用の吸着シートを単独で、或いは、これら有機ガス用、酸性ガス用、アルカリガス用の吸着シートを適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0013】
図3及び図4は前記ケミカル除去シートの使用状態を示すもので、可動壁30の上端側に設けられたレール31を利用して前記ケミカル除去シート10を8枚吊り下げた状態を示すものである。各ケミカル除去シート10の上端に設けられた掛止手段2eとしてのアルミニウム製のパイプ2eにワイヤー11を挿通し、両端のパイプ2e,2eから突出させたワイヤー11の端部を、前記レール31に取り付けたフック32に結びつけて、前記レール31に吊り下げるようにした。
尚、ケミカル除去シート10を吊り下げるには、前記態様に限ることなく、例えば、それぞれのケミカル除去シート10の上端に取り付け用のフックを吊り下げ手段として取り付け、そのフックを前記レールに直接掛止させて吊り下げるようにしてもよい。
前記ケミカル除去シート10は、表裏から吸着できるように、前記可動壁30との間に隙間を存して吊り下げるのが好ましい。
【0014】
図5は、本発明の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法に用いられる図中20で示される空気清浄器20を施設内に設置した状態を示すもので、本実施の形態では前記空気清浄器20として、上流側にアルカリガス用のガス除去フィルタ20a、その下流側に酸性ガス除去用のガス除去フィルタ20b、更に、その下流側にHEPAフィルタからなる高性能フィルタ20cを備えるファン付きフィルタユニットを用いたものである。尚、図中20dは前記ガス徐去フィルタ20a、20bと、HEPAフィルタ20cの間に設けられた送風機を示し、21は前記空気清浄機20を設置する架台を示す。
ガス除去フィルタ20aの後段に高性能フィルタ20cを配置することにより、活性炭等の吸着剤から脱落した塵埃が室内に拡散して汚染するのを防ぐことができる。
尚、必要に応じ、プレフィルタを設けることも任意である。
【0015】
本発明の展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法は、図5に示すように、先ず、展示物或いは収蔵物を運び込む前の展示用或いは収蔵用施設のスペース内に空気清浄器20を設置して前記スペース内を清浄化し、清浄化後に、前記空気清浄器20を前記スペースから取り出し、次いで、図3図4に示すように前記ケミカル除去シート10を前記スペース内に吊り下げ、その状態で前記スペース内に展示物或いは収蔵物を展示或いは収蔵するものである。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
空気清浄器として、図5に示される上流側にアルカリガス用のガス除去フィルタ20a、その下流側に酸性ガス除去用のガス除去フィルタ20b、更に、その下流側にHEPAフィルタ20cを備えたファン付きフィルタユニットを用いた。
ケミカル除去シート10として、図2に示すケミカル除去シート10を12枚用いた。
また、本実施例では、全面がガラス張りで背面、床面、天面および可動壁30はクロス貼展示用ウォールケース(寸法:6500mm×1500mm×3300mm)を試験スペースとした。
クロス面の面積は、壁面6.5m×3.3m+床面・天面6.5m×1.5m×2+可動壁6.5m×3.3m×2≒84mで、ケミカル除去シート10の面積は1.67×0.65×12枚≒13mであるため、全クロス面に対し、約16%を覆った計算になる。
本実施例の場合、背面、床面、天面および可動壁30はクロス貼のクロス接着剤が酢酸類の発生源と推定される。
初期酢酸濃度は600μg/mであった。
【0017】
本実施例では、先ず、前記試験スペース内に前記空気清浄器20を設置して1週間運転した。酢酸濃度が150μg/mに達した時点で前記空気清浄器を撤去した。その後、前記ケミカル除去シート10を前記空気清浄器20を撤去されたスペース内に12枚吊した。
【0018】
図6は、試験スペース内の酢酸濃度を示すもので、前記空気清浄器20の稼働(図6中1)により、酢酸濃度は急激に低減される(図6中2)。その後、前記空気清浄器を取り外し、ケミカル除去シートを設置することにより、酢酸の濃度を低く保つことができる(図6中3)。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は美術工芸品等の展示品や収蔵品の破損リスク低減を可能にすることができるケミカル除去シート並びにそれを用いた展示用或いは収蔵用施設の環境改善維持方法を提供でき、産業上の利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0020】
1 通気性シート
1a 粒状吸着材
1b 通気性シート
2 通気性袋体
2a ろ材
2b ヒートシール
2c 区画壁
2d 区画室
2e 掛止手段
2f 錘
10 ケミカル除去シート
11 ワイヤー
20 空気清浄器
20a アルカリガス用のガス除去フィルタ
20b 酸性ガス除去用のガス除去フィルタ
20c 高性能フィルタ
20d 送風機
21 架台
30 可動壁
31 レール
32 フック
図1
図2
図4
図5
図6
図3