特許第5679145号(P5679145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679145
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/22 20060101AFI20150212BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20150212BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   G01R1/22 A
   G01R15/20 Z
   G01R19/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-288839(P2009-288839)
(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公開番号】特開2011-128094(P2011-128094A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2012年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊毅
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−296303(JP,A)
【文献】 実開昭64−034569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 15/20
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの一端同士および互いの他端同士が接合した状態において全体として環状に構成される一対のコアのうちの一方のコアと当該一方のコアに形成された一方の巻線とを備えた一方のセンサと、
前記一対のコアのうちの他方のコアと当該他方のコアに形成された他方の巻線とを備えると共に前記一方のセンサと接合および離反可能に構成されて、当該一方のセンサと接合するクランプ状態において前記一対のコアが前記環状に構成される他方のセンサと、
前記各センサを前記接合する方向に付勢する付勢部材と、
前記各センサが前記付勢部材によって接合させられている状態において前記環状に構成される前記一対のコアによって囲まれた測定対象体に流れる電流に起因して前記各巻線に発生する検出信号に基づいて当該電流の電流値を測定する測定部とを備えたクランプ式の電流測定装置であって、
前記各コアにおける前記一端同士を同極とし、かつ前記他端同士を同極とする励磁信号を前記各巻線に対して供給する励磁部を備えている電流測定装置。
【請求項2】
互いの一端同士および互いの他端同士が接合した状態において全体として環状に構成される一対のコアのうちの一方のコアと当該一方のコアに形成された一方の巻線とを備えた一方のセンサと、
前記一対のコアのうちの他方のコアと当該他方のコアに形成された他方の巻線とを備えると共に前記一方のセンサと接合および離反可能に構成されて、当該一方のセンサと接合するクランプ状態において前記一対のコアが前記環状に構成される他方のセンサと、
前記各センサを前記接合する方向に付勢する付勢部材と、
前記各センサが前記付勢部材によって接合させられている状態において前記環状に構成される前記一対のコアによって囲まれた測定対象体に流れる電流に起因して前記各巻線に発生する検出信号に基づいて当該電流の電流値を測定する測定部とを備えたクランプ式の電流測定装置であって、
前記各コアにおける前記一端同士を異極とし、かつ前記他端同士を異極となる励磁信号と、当該各コアにおける当該一端同士を同極とし、かつ当該他端同士を同極とする励磁信号とのうちから選択された一方の励磁信号を前記各巻線に対して供給する励磁部を備えている電流測定装置。
【請求項3】
前記各コアに残存している残留磁化を消磁するための消磁用磁界を前記各巻線に発生させるための消磁信号を当該各巻線に供給する消磁部を備えている請求項1または2記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア、およびそのコアに形成された巻線を備えたセンサを一対備えたクランプ式の電流測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ式の電流測定装置として、下記特許文献において出願人が開示した電流測定装置が知られている。この電流測定装置は、略円弧状にそれぞれ形成された一対のセンサ(固定側センサおよび可動側センサ)を備えている。この場合、固定側センサおよび可動側センサは、略円弧状に形成されたコアと、このコアに形成された巻線とをそれぞれ備えて構成されている。また、可動側センサは、固定側センサと一体的に形成された本体部に回動可能に配設されると共に、本体部に配設されたばねにより、固定側センサと接合する方向に常時付勢されている。また、可動側センサは、可動側センサに配設されているレバー部が押動されたときには、ばねの付勢力に抗して回動して固定側センサから離反し、レバー部に対する押動が解除されているときには、ばねの付勢力によって固定側センサ方向に回動して固定側センサと接合する。
【0003】
この電流測定装置では、一対のセンサが測定対象体(測定導線)を取り囲み、かつ互いに接合した状態において測定対象体に電流信号が流れた際には、この電流信号の電流値に比例した電圧が、直列に接続された各巻線の両端間に発生する。このため、例えば、本体部に配設された測定部が、各巻線に発生するこの電圧の電圧値を検出すると共に、検出した電圧値に基づいて測定対象体に流れる電流信号の電流値を算出(測定)する。
【0004】
一方、この種のクランプ式の電流測定装置では、一対のセンサが確実に接合していない状態では、測定対象体に流れる電流信号の電流値に対応した正しい電圧よりも低い電圧が各巻線の両端間に発生することから、測定対象体に流れる電流信号の測定結果に誤差が生じることがある。このため、上記公報に開示された電流測定装置では、接合状態検査用コイルと、接合状態検査用コイルに検査用信号を供給する信号供給部と、一対のセンサの接合状態を報知する報知部とを設けることにより、接合状態を正確に報知する構成を採用して、一対のセンサが正常に接合していない状態での測定を防止することで、正確な測定が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−69089号公報(第4−7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のクランプ式の電流測定装置では、接合状態検査用コイル等を備える上記のような構成を採用したことにより、一対のセンサが正常に接合していない状態での測定を防止して、正確な測定が可能となっている。その一方、この電流測定装置には、一対のセンサのうちのいずれか一方に接合状態検査用コイルを配設しなければならないため、その分だけセンサの構造が複雑になるという課題があり、この点の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、接合状態検査用コイルを使用することなく、測定対象体に流れる電流を正確に測定し得る電流測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項記載の電流測定装置は、互いの一端同士および互いの他端同士が接合した状態において全体として環状に構成される一対のコアのうちの一方のコアと当該一方のコアに形成された一方の巻線とを備えた一方のセンサと、前記一対のコアのうちの他方のコアと当該他方のコアに形成された他方の巻線とを備えると共に前記一方のセンサと接合および離反可能に構成されて、当該一方のセンサと接合するクランプ状態において前記一対のコアが前記環状に構成される他方のセンサと、前記各センサを前記接合する方向に付勢する付勢部材と、前記各センサが前記付勢部材によって接合させられている状態において前記環状に構成される前記一対のコアによって囲まれた測定対象体に流れる電流に起因して前記各巻線に発生する検出信号に基づいて当該電流の電流値を測定する測定部とを備えたクランプ式の電流測定装置であって、前記各コアにおける前記一端同士を同極とし、かつ前記他端同士を同極とする励磁信号を前記各巻線に対して供給する励磁部を備えている。
【0010】
また、請求項記載の電流測定装置は、互いの一端同士および互いの他端同士が接合した状態において全体として環状に構成される一対のコアのうちの一方のコアと当該一方のコアに形成された一方の巻線とを備えた一方のセンサと、前記一対のコアのうちの他方のコアと当該他方のコアに形成された他方の巻線とを備えると共に前記一方のセンサと接合および離反可能に構成されて、当該一方のセンサと接合するクランプ状態において前記一対のコアが前記環状に構成される他方のセンサと、前記各センサを前記接合する方向に付勢する付勢部材と、前記各センサが前記付勢部材によって接合させられている状態において前記環状に構成される前記一対のコアによって囲まれた測定対象体に流れる電流に起因して前記各巻線に発生する検出信号に基づいて当該電流の電流値を測定する測定部とを備えたクランプ式の電流測定装置であって、前記各コアにおける前記一端同士を異極とし、かつ前記他端同士を異極となる励磁信号と、当該各コアにおける当該一端同士を同極とし、かつ当該他端同士を同極とする励磁信号とのうちから選択された一方の励磁信号を前記各巻線に対して供給する励磁部を備えている。
【0011】
また、請求項記載の電流測定装置は、請求項1または2記載の電流測定装置において、前記各コアに残存している残留磁化を消磁するための消磁用磁界を前記各巻線に発生させるための消磁信号を当該各巻線に供給する消磁部を備えている。
【発明の効果】
【0013】
求項記載の電流測定装置によれば、一対のコアにおける一端同士が同極となり、かつ他端同士が同極となるように各コアに形成された各巻線を励磁する励磁信号を各巻線に対して供給する励磁部を備えたことにより、励磁部を作動させることで両センサ間に反発力を作用させることができる。したがって、この電流測定装置によれば、両センサを接合させている付勢部材の付勢力を、この両センサ間に作用する反発力で弱めることができるため、両センサをクランプ状態から非クランプ状態に容易に移行させることができる。
【0014】
また、請求項記載の電流測定装置によれば、一対のコアにおける一端同士を異極とし、かつ他端同士を異極となる励磁信号と、各コアにおける一端同士を同極とし、かつ他端同士を同極とする励磁信号とのうちから選択された一方の励磁信号を各巻線に対して供給する励磁部を備えたことにより、励磁部を作動させることで両センサ間に吸引力を作用させることができ、両センサを付勢部材の付勢力のみで接合させる構成よりも、両センサを一層良好に接合することができる。また、この電流測定装置によれば、励磁部を作動させることで両センサ間に反発力を作用させることもでき、これによって付勢部材の付勢力をこの反発力で弱めることができるため、両センサをクランプ状態から非クランプ状態に容易に移行させることもできる。
【0015】
また、請求項記載の電流測定装置によれば、消磁部を備えたことにより、各巻線に励磁信号を供給することによって各コアに残存するおそれのある残留磁化を消磁することができるため、励磁信号の供給によって生じる残留磁化に起因する電流の測定精度の低下を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】クランプ部2がクランプ状態のときの電流測定装置1の正面図である。
図2】クランプ部2が非クランプ状態のときの電流測定装置1の正面図である。
図3】電流測定装置1の回路構成を示す構成図である。
図4図3の両センサ11,12間に吸引力を発生させる電流測定装置1の動作を説明するための構成図である。
図5図3の両センサ11,12間に反発力を発生させる電流測定装置1の動作を説明するための構成図である。
図6図3のコア23a,23bを消磁する電流測定装置1の動作を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電流測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
最初に、電流測定装置1の構成について図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示す電流測定装置1は、クランプ部2および本体部3を備え、測定対象体としての導線100に流れる電流Iを非接触で測定可能に構成されている。
【0020】
クランプ部2は、図1に示すように、一例としてそれぞれ平面視略半円状に形成された固定側センサ11および可動側センサ12(一対のセンサ11,12)を備えて構成されている。また、クランプ部2は、後述するレバー21cに対する開閉操作により、図1,2に示すように、固定側センサ11および可動側センサ12が互いに接合および離反可能に構成されている。
【0021】
固定側センサ(一方のセンサ)11は、図1に示すように、それぞれ平面視略半円状に形成されたセンサケース21aおよびコイル部22aを備えて構成されている。センサケース21aは、本体部3を構成する本体ケース3aと一体形成されている。コイル部22aは、平面視略半円状に形成されたコア(一方のコア)23aおよびコア23aの周囲に巻回された巻線(一方の巻線)24a(いずれも図3参照)を備えて、センサケース21a内に配設されている。
【0022】
可動側センサ(他方のセンサ)12は、図1に示すように、それぞれ平面視略半円状に形成されたセンサケース21bおよびコイル部22b(以下、固定側センサ11のコイル部22aと区別しないときには「コイル部22」ともいう)を備えて構成されている。センサケース21bは、本体ケース3aの内部に基端部が収容されると共に、その基端部に挿通されたピン3bを中心として回動可能に本体ケース3aに取り付けられている。また、センサケース21bは、本体ケース3a内に配設された付勢部材の一例としてのばね3cにより、センサケース21aと接合する(両センサ11,12がクランプ状態(接合状態)となる)向き(同図に示す矢印Aの向き)に回動するように常時付勢されている。
【0023】
また、センサケース21bは、センサケース21bに一体形成されたレバー21cが図2に示す矢印Bの向きに本体ケース3a内に押し込まれたときに、センサケース21aから離反する(両センサ11,12が非クランプ状態となる)向きに回動するように構成されている。コイル部22bは、平面視略半円状に形成されたコア(他方のコア)23bおよび巻線(他方の巻線)24b(いずれも図3参照)を備えてセンサケース21b内に配設されている。
【0024】
以上のように構成されたクランプ部2では、図1に示すように、一対のセンサ11,12が接合状態、つまり固定側センサ11の先端部11aおよび可動側センサ12の先端部12a(具体的には、コイル部22a,22bの先端部)同士が接合し、かつ固定側センサ11の基端部11bおよび可動側センサ12の基端部12b(具体的には、コイル部22a,22bの基端部)同士が接合する状態において、レバー21cを図2に示す矢印Bの向きに押し込む操作(押動する操作)を実行することにより、可動側センサ12がばね3cの付勢力に抗して固定側センサ11から離反する方向に回動して、図2に示す非クランプ状態に移行する。この非クランプ状態のときには、一対のセンサ11,12が離反状態、つまり固定側センサ11の先端部11aおよび可動側センサ12の先端部12a(具体的には、コイル部22a,22bの先端部)同士が離反し、かつ固定側センサ11の基端部11bおよび可動側センサ12の基端部12b(具体的には、コイル部22a,22bの基端部)同士が離反する状態にあるため、図2に示すように、先端部11a,12a間の隙間を介して外部から一対のセンサ11,12間に一点鎖線で示すようにして導線100を導入することが可能となる。
【0025】
また、図2に示す非クランプ状態において、レバー21cに対する矢印B方向への押動を解除する操作を実行することにより、可動側センサ12は、ばね3cの付勢力によって固定側センサ11の方向(図1の矢印A方向)に回動させられると共に、レバー21cが本体ケース3aから突出させられて、図1に示すように、固定側センサ11と接合するクランプ状態に移行する。このクランプ状態において、クランプ部2は、一対のセンサ11,12間に導入された(クランプ部2によってクランプされた)導線100に流れる電流Iに起因して巻線24a,24b(後述するように直列に接続された巻線24a,24b)に発生する検出信号としての誘起電圧(電流Iの電流値に対応する電圧)V1(図3参照)を出力することが可能となる。
【0026】
本体部3は、上記した本体ケース3a、ピン3bおよびばね3cの他に、図3に示すように、2つのオン・オフスイッチ(以下、単に「スイッチ」ともいう)31,32、切替部33、測定部34、処理部35、操作部36、励磁部37、消磁部38、記憶部39および出力部40を備えている。この場合、スイッチ31,32、切替部33、測定部34、処理部35、励磁部37、消磁部38および記憶部39は本体ケース3a内に配設され、操作部36および出力部40は図1,2に示すように本体ケース3aの表面に配設されている。
【0027】
具体的には、スイッチ31は、一端(一の接点)に、巻線24aにおけるコイル部22aの基端部側に戻された先端部側の巻端(以下、「巻線24aの先端部側の巻端」ともいう)が接続されると共に、他端(他の接点)に、巻線24bにおけるコイル部22bの基端部側に戻された先端部側の巻端(以下、「巻線24bの先端部側の巻端」ともいう)が接続されている。スイッチ32は、一端(一の接点)がスイッチ31の一端に接続されると共に、他端(他の接点)が励磁部37を構成する後述の励磁電源37aのマイナス端子に接続されている。また、各スイッチ31,32は、処理部35によってオン・オフ状態が制御される。
【0028】
切替部33は、複数の切換スイッチ(不図示)を備えて構成されて、等価的に、図3に示すように、2つの1回路3接点の切替スイッチSW1,SW2として機能する。この場合、切替スイッチSW1は、励磁電源37aのプラス端子、測定部34の一対の入力端子のうちの一方の入力端子、および消磁部38の一対の出力端子のうちの一方の出力端子のうちから選択される任意の1つを巻線24aにおけるコイル部22aの基端部側の巻端(以下、「巻線24aの基端部側の巻端」ともいう)に接続する。また、切替スイッチSW2は、励磁部37を構成する後述のインバート回路37b、測定部34の他方の入力端子、および消磁部38の他方の出力端子のうちから選択される任意の1つを巻線24bにおけるコイル部22bの基端部側の巻端(以下、「巻線24bの基端部側の巻端」ともいう)に接続する。また、切替部33は、処理部35により、切替スイッチSW1,SW2の切替状態が制御される。
【0029】
測定部34は、一対の入力端子(不図示)を備え、この一対の入力端子のうちの一方の入力端子が切替部33の切替スイッチSW1に接続され、他方の入力端子が切替部33の切替スイッチSW2に接続されることで、切替部33を介してクランプ部2の各巻線24a,24bに接続可能に構成されている。また、測定部34は、切替部33を介してクランプ部2の各巻線24a,24bに接続された際に、巻線24a,24bに発生する誘起電圧V1(交流電圧)に基づいて、クランプ部2によってクランプされた導線100に流れている電流Iの電流値Diを測定して処理部35に出力する。
【0030】
処理部35は、CPU(不図示)を備えて構成されて、操作部36に対する操作内容に基づいて、クランプ部2の各コイル部22a,22bを接合させる接合処理、クランプ部2の各コイル部22a,22bを離反させる離反処理、導線100に流れる電流Iの電流値Diを測定する測定処理、および各コイル部22a,22bの各コア23a,23bを消磁する消磁処理を実行する。また、処理部35は、各スイッチ31,32、切替部33、励磁部37および消磁部38に対する制御についても実行する。
【0031】
操作部36は、図1,2に示すように、一例として、電源スイッチ36a、クランプ閉スイッチ(以下、「閉スイッチ」ともいう)36b、クランプ開スイッチ(以下、「開スイッチ」ともいう)36c、測定開始スイッチ(以下、「測定スイッチ」ともいう)36d、および消磁スイッチ36eを備え、これらのスイッチ36a〜36eが本体ケース3aの表面に配設されて構成されている。この場合、電源スイッチ36aは、例えばオン・オフスイッチで構成されて、本体ケース3a内に配設された不図示の主電源(例えば、バッテリ)から本体ケース3aに配設された各構成要素への作動電圧の供給をオン・オフする。また、操作部36は、閉スイッチ36b、開スイッチ36c、測定スイッチ36dおよび消磁スイッチ36eが操作された際には、その操作内容に対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。
【0032】
励磁部37は、図3に示すように、励磁電源37aおよびインバート回路37bを備えて構成されている。励磁電源37aは、上記した主電源から作動電圧の供給を受けて、一定の励磁電圧(直流電圧)V2を生成して一対の出力端子(プラス端子およびマイナス端子)から出力する。また、励磁部37は、コイル部22aの巻線24aに対しては、励磁電圧(直流電圧)V2を極性を一定にした状態で励磁信号として出力し、コイル部22bの巻線24bに対しては、インバート回路37bにおいて所望の極性に設定された励磁電圧(直流電圧)V2を励磁信号として出力する。なお、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力は、処理部35によって制御される。
【0033】
インバート回路37bは、図3に示すように、一例として、ブリッジ回路に構成された4つのオン・オフスイッチ(以下、単に「スイッチ」ともいう)SW3,SW4,SW5,SW6を備えている。この場合、スイッチSW3,SW5の各一端(一の接点)は、互いに接続されると共に、励磁電源37aのマイナス端子に接続されている。また、スイッチSW3の他端(他の接点)は、スイッチSW4の一端(一の接点)に接続されると共に、スイッチ31の他端に接続されている。スイッチSW5の他端(他の接点)は、スイッチSW6の一端(一の接点)に接続されると共に、切替部33の切替スイッチSW2に接続されている。また、スイッチSW4,SW6の各他端(他の接点)は、互いに接続されると共に、励磁電源37aのプラス端子に接続されている。
【0034】
このように構成されたインバート回路37bは、処理部35によって各スイッチSW3,SW4,SW5,SW6のオン・オフ状態が制御されることにより、スイッチSW3,SW6がオン状態となり、スイッチSW4,SW5がオフ状態となって、巻線24bの基端部側の巻端に励磁電源37aのプラス端子を接続し、巻線24bの先端部側の巻端に励磁電源37aのマイナス端子を接続する反発接続状態、スイッチSW4,SW5がオン状態となり、スイッチSW3,SW6がオフ状態となって、巻線24bの基端部側の巻端に励磁電源37aのマイナス端子を接続し、巻線24bの先端部側の巻端に励磁電源37aのプラス端子を接続する吸引接続状態(反発接続状態に対して、巻線24bに逆極性の励磁電圧V2を供給する接続状態)、およびすべてのスイッチSW3〜SW6がオフ状態となる切断接続状態のうちの任意の1つの接続状態に移行する。
【0035】
消磁部38は、上記した主電源から作動電圧の供給を受けて、各コイル部22a,22bの各コア23a,23bを消磁するための消磁信号としての消磁電圧(一例として、振幅が徐々に減衰してゼロになる交流電圧)V3を生成して一対の出力端子(不図示)から出力する。なお、消磁部38による消磁電圧V3の生成および出力は、処理部35によって制御される。
【0036】
記憶部39は、ROMやRAMなどのメモリで構成されて、処理部35のための動作プログラムが予め記憶されている。出力部40は、一例としてLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されて、処理部35により、測定された導線100の電流Iの電流値Diを画面に表示する。また、出力部40は、図1,2に示すように、本体ケース3aにおける操作部36が配設された面と同一面に画面が位置するように配設されている。
【0037】
次に、電流測定装置1を用いて導線100に流れる電流Iの電流値Diを測定する手順と併せて、電流測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。
【0038】
この電流測定装置1を用いて導線100に流れる電流Iの電流値Diを測定する際には、まず、導線100をクランプ部2でクランプする。具体的には、レバー21cを本体ケース3a内に押し込んで可動側センサ12を図1に示す矢印A方向とは逆方向にばね3cの付勢力に抗して回動させることにより、図2に示すように、両センサ11,12の先端部11a,12a同士および基端部11b,12b同士を互いに離反させる。
【0039】
次いで、図2に示すように、離間している先端部11a,12a側から導線100を両センサ11,12内に導入した後、レバー21cの押し込みを解除する。これにより、可動側センサ12がばね3cの付勢力によって固定側センサ11側に回動させられて、両センサ11,12の先端部11a,12a同士および基端部11b,12b同士が互いに接合することで、クランプ部2はクランプ状態に移行する。これにより、図1に示すように、導線100がクランプ部2によってクランプされる(両センサ11,12によって囲まれる)。
【0040】
続いて、操作部36の電源スイッチ36aを操作して、本体ケース3a内の主電源に対して、本体ケース3a内に配設された各構成要素への作動電圧の供給を開始させる。次いで、操作部36の閉スイッチ36bを操作する。これにより、操作部36は、閉スイッチ36bに対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。処理部35は、この操作信号Sopを入力したときには、クランプ部2の各コイル部22a,22bを接合させる接合処理を実行する。
【0041】
この接合処理では、処理部35は、まず、スイッチ31,32に対する制御を実行することにより、図4に示すように、スイッチ31をオフ状態に移行させると共に、スイッチ32をオン状態に移行させる。また、処理部35は、切替部33に対する制御を実行することにより、同図に示すように、巻線24aの基端部側の巻端と励磁電源37aのプラス端子とを切替部33の切替スイッチSW1を介して接続すると共に、巻線24bの基端部側の巻端とインバート回路37bとを切替部33の切替スイッチSW2を介して接続する。また、処理部35は、インバート回路37bに対する制御を実行することにより、図4に示すように、スイッチSW4,SW5がオン状態となり、スイッチSW3,SW6がオフ状態となる吸引接続状態にインバート回路37bを移行させる。
【0042】
これにより、巻線24aの基端部側の巻端が励磁電源37aのプラス端子に接続されると共に、巻線24aの先端部側の巻端が励磁電源37aのマイナス端子に接続され、かつ巻線24bの基端部側の巻端が励磁電源37aのマイナス端子に接続されると共に、巻線24bの先端部側の巻端が励磁電源37aのプラス端子に接続される。
【0043】
次いで、処理部35は、励磁電源37aに対する制御を実行して、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力を開始させる。これにより、図4に示すように、各コイル部22a,22bを構成する巻線24a,24bの各先端部側の巻端および各基端部側の巻端に励磁電圧V2が供給されるため、各コイル部22a,22bは電磁石として機能し始める。この場合、巻線24a,24bの各先端部側の巻端および各基端部側の巻端には、図4に示す極性で励磁電圧V2が供給されるが、接合状態において全体として1つの環状コアとなるコア23a,23bに対して、各巻線24a,24bの巻回方向が同一に規定されている。これにより、各巻線24a,24bには、同図に示すように同じ方向に電流が流れる結果、コイル部22aの先端部側(コア23aの一端)にはN極が発生すると共に基端部側(コア23aの他端)にはS極が発生し、コイル部22bの先端部側(コア23bの一端)にはS極が発生すると共に基端部側(コア23bの他端)にはN極が発生する。このため、コア23a,23bにおける一端同士が異極となり、かつ他端同士も異極となる結果、両コイル部22a,22b間には吸引力が作用し始める。
【0044】
したがって、ばね3cの付勢力によって既に固定側センサ11と接合している状態にある可動側センサ12が、上記の吸引力によってさらに固定側センサ11側に押し付けられる結果、両センサ11,12の先端部11a,12a同士および基端部11b,12b同士が互いに一層良好に接合する。また、各巻線24a,24bには、一定の励磁電圧V2が供給されるため、発生する吸引力も常に一定となる。このため、この吸引力により、両センサ11,12の先端部11a,12a同士および基端部11b,12b同士は、いずれの接合処理時においても、常に一定の接合状態になる。
【0045】
処理部35は、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力の開始後、予め規定された時間(例えば、数秒程度)が経過した後に、励磁電源37aに対する制御を実行して、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力を終了させる。これにより、接合処理が完了する。なお、接合処理の完了によって、両コイル部22a,22b間に吸引力が発生しない状態になるが、一旦良好な状態に接合された両センサ11,12は、その後、ばね3cの付勢力によってこの状態が維持される。
【0046】
続いて、操作部36の測定スイッチ36dを操作する。これにより、操作部36は、測定スイッチ36dに対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。処理部35は、この操作信号Sopを入力したときには、導線100に流れる電流Iの電流値Diを測定する測定処理を実行する。
【0047】
この測定処理では、処理部35は、スイッチ31,32に対する制御を実行することにより、図3に示すように、スイッチ31をオン状態に移行させると共に、スイッチ32をオフ状態に移行させる。また、処理部35は、切替部33に対する制御を実行することにより、同図に示すように切替スイッチSW1,SW2の接続状態を切り替えて、巻線24aの基端部側の巻端を切替部33の切替スイッチSW1を介して測定部34の一方の入力端子に接続し、かつ巻線24bの基端部側の巻端を切替部33の切替スイッチSW2を介して測定部34の他方の入力端子に接続する。また、処理部35は、インバート回路37bに対する制御を実行することにより、図3に示すように、すべてのスイッチSW3〜SW6がオフ状態となる切断接続状態にインバート回路37bを移行させる。
【0048】
これにより、巻線24aの先端部側の巻端と巻線24bの先端部側の巻端とがスイッチ31を介して接続され、かつ上記したように巻線24aの基端部側の巻端が切替スイッチSW1を介して測定部34の一方の入力端子に接続されると共に、巻線24bの基端部側の巻端が切替スイッチSW2を介して測定部34の他方の入力端子に接続された状態となるため、巻線24aおよび巻線24bが直列に接続された状態で、測定部34の一対の入力端子間に接続された状態となる。なお、巻線24aの先端部側の巻端および巻線24bの先端部側の巻端は、スイッチ32がオフ状態となり、かつインバート回路37bが切断接続状態となっているため、スイッチ31以外の他の構成要素から電気的に切り離された状態となっている。
【0049】
このようにして、接合状態において全体として1つの環状コアとなるコア23a,23bに対して、上記したように同一方向に巻回された2つの巻線24a,24bが直列に接続された状態で、測定部34の一対の入力端子間にのみ接続される構成となるため、直列接続された巻線24a,24bは全体として1つの巻線として機能して、この1つの巻線の両巻端(巻線24a,24bの各基端部側の巻端)間には、導線100に流れる電流Iに比例した誘起電圧V1が発生する。測定部34は、この誘起電圧V1を切替部33を介して一対の入力端子から入力すると共に、この入力した誘起電圧V1に基づいて、電流Iの電流値Diを算出して処理部35に出力する。最後に、処理部35は、電流値Diを記憶部39に記憶させると共に、出力部40に出力する。出力部40は、この電流値Diを入力すると共に画面に表示させる。これにより、測定処理が完了する。
【0050】
次いで、操作部36の開スイッチ36cを操作する。これにより、操作部36は、開スイッチ36cに対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。処理部35は、この操作信号Sopを入力したときには、クランプ部2の各コイル部22a,22bを離反させる離反処理を実行する。
【0051】
この離反処理では、処理部35は、まず、スイッチ31,32に対する制御を実行することにより、図5に示すように、スイッチ31をオフ状態に移行させると共に、スイッチ32をオン状態に移行させる。これにより、巻線24aの基端部側の巻端が励磁電源37aのプラス端子に接続されると共に、巻線24aの先端部側の巻端が励磁電源37aのマイナス端子に接続される。また、処理部35は、インバート回路37bに対する制御を実行することにより、同図に示すように、スイッチSW3,SW6がオン状態となり、スイッチSW4,SW5がオフ状態となる反発接続状態にインバート回路37bを移行させると共に、切替部33に対する制御を実行することにより、巻線24bの基端部側の巻端と励磁電源37aのプラス端子とを切替部33およびインバート回路37bを介して接続すると共に、巻線24bの先端部側の巻端と励磁電源37aのマイナス端子とを切替部33およびインバート回路37bを介して接続する。
【0052】
次いで、処理部35は、励磁電源37aに対する制御を実行して、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力を開始させる。これにより、図5に示すように、各コイル部22a,22bを構成する巻線24a,24bの各先端部側の巻端および各基端部側の巻端に励磁電圧V2が供給されるため、各コイル部22a,22bは電磁石として機能し始める。この場合、巻線24a,24bの各先端部側の巻端および各基端部側の巻端には、図5に示す極性で励磁電圧V2が供給されるため、各巻線24a,24bには、同図に示すように逆方向に電流が流れる結果、コイル部22aの先端部側(コア23aの一端)にはN極が発生すると共に基端部側(コア23aの他端)にはS極が発生し、コイル部22bの先端部側(コア23bの一端)にはN極が発生すると共に基端部側(コア23bの他端)にはS極が発生する。このため、コア23a,23bにおける一端同士が同極となり、かつ他端同士も同極となる結果、両コイル部22a,22b間には反発力が作用し始める。
【0053】
したがって、固定側センサ11に可動側センサ12を接合させているばね3cの付勢力が、この両コイル部22a,22b間に作用する反発力によって弱められた状態となる。このため、レバー21cを本体ケース3aに押し込んで可動側センサ12を図1に示す矢印A方向とは逆方向にばね3cの付勢力に抗して回動させる際に必要となる力が、この反発力の作用しない状態と比較して小さくてよいため、固定側センサ11から可動側センサ12を容易に離反させて、クランプ部2を非クランプ状態に容易に移行させることができる。これにより、離間している両センサ11,12の各先端部11a,12a間を介して、両センサ11,12内に導入されている導線100を両センサ11,12外部に引き出すこと、つまり、クランプ部2から導線100を取り外すことが可能となる。
【0054】
次いで、クランプ部2から導線100を取り外した後に、操作部36の開スイッチ36cを操作する。これにより、操作部36は、開スイッチ36cに対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。処理部35は、離反処理の実行中に、この操作信号Sopを再度入力したときには、励磁電源37aに対する制御を実行して、励磁電源37aによる励磁電圧V2の生成および出力を終了させる。これにより、離反処理が完了する。最後に、操作部36の電源スイッチ36aを操作して、本体ケース3a内に配設された各構成要素への主電源からの作動電圧の供給を停止させる。なお、開スイッチ36cを操作して離反処理を終了させた後に、電源スイッチ36aを操作して主電源からの作動電圧の供給を停止させる手順に代えて、クランプ部2から導線100を取り外した後に、電源スイッチ36aを操作して主電源からの作動電圧の供給を停止させる手順を実行してもよい。
【0055】
一方、引き続き、他の導線に流れる電流についての電流値の測定を実行する場合には、処理部35が離反処理を続行している状態において、他の導線にクランプ部2をクランプさせ、次いで、操作部36の閉スイッチ36bを操作する手順を実行することもできる。この場合、操作部36から処理部35に対して、閉スイッチ36bに対応した操作信号Sopが出力されるため、この操作信号Sopを入力した処理部35は、上記のようにして離反処理を終了させ、続いて、上記した接合処理を実行する。これにより、クランプ部2がクランプ状態に移行して、他の導線がクランプ部2によってクランプされる。したがって、その後、操作部36に対する操作を行って、上記した測定処理を処理部35に実行させることにより、他の導線に流れる電流の電流値が測定される。
【0056】
ところで、接合処理や離反処理の実行時には、上記したように、両センサ11,12には直流磁界が発生するため、両センサ11,12の各コア23a,23bに残留磁化が残存することがあり、この残留磁化が電流の測定における誤差の発生要因となる場合がある。このような場合には、処理部35に対して消磁処理を実行させて、この残留磁化を消磁する。
【0057】
具体的には、操作部36の消磁スイッチ36eを操作する。これにより、操作部36は、消磁スイッチ36eに対応した操作信号Sopを処理部35に出力する。処理部35は、この操作信号Sopを入力したときには、消磁処理を実行する。
【0058】
この消磁処理では、処理部35は、まず、スイッチ31,32に対する制御を実行することにより、図6に示すように、スイッチ31をオン状態に移行させると共に、スイッチ32をオフ状態に移行させる。また、処理部35は、インバート回路37bに対する制御を実行することにより、同図に示すように、すべてのスイッチSW3〜SW6がオフ状態となる切断接続状態にインバート回路37bを移行させる。
【0059】
次いで、処理部35は、切替部33に対する制御を実行することにより、図6に示すように切替スイッチSW1,SW2の接続状態を切り替えて、巻線24aの基端部側の巻端を切替部33の切替スイッチSW1を介して消磁部38の一方の出力端子に接続し、かつ巻線24bの基端部側の巻端を切替部33の切替スイッチSW2を介して消磁部38の他方の出力端子に接続する。これにより、巻線24aの先端部側の巻端と巻線24bの先端部側の巻端とがスイッチ31を介して接続されて、巻線24aおよび巻線24bが直列に接続された状態となり、この状態において、巻線24aおよび巻線24bが消磁部38の一対の出力端子間に接続された状態となる。
【0060】
次いで、処理部35は、消磁部38に対する制御を実行して、消磁部38による消磁電圧V3の生成および出力を開始させ、予め決められた時間の経過後に消磁電圧V3の生成および出力を終了させる。これにより、各コイル部22a,22bを構成する巻線24a,24bに消磁部38から消磁電圧V3が予め決められた時間だけ印加されるが、この消磁電圧V3は、上記したように振幅が徐々に減衰してゼロになる交流電圧であるため、各巻線24a,24bに消磁用磁界が発生して、両センサ11,12の各コア23a,23bに残存していた残留磁化が消磁される。
【0061】
このように、この電流測定装置1によれば、コア23a,23bにおける一端同士が異極となり、かつ他端同士が異極となるように各コア23a,23bに形成された各巻線24a,24bを励磁する励磁電圧V2を各巻線24a,24bに対して供給する励磁部37を備えたことにより、励磁部37を作動させることで両センサ11,12間に吸引力を作用させることができ、両センサ11,12をばね3cの付勢力のみで接合させる構成よりも、両センサ11,12の先端部11a,12a同士および基端部11b,12b同士を一層良好に接合することができる。したがって、この電流測定装置1によれば、従来の電流測定装置とは異なり、クランプ状態での両センサ11,12の結合状態を検査する必要がなくなる結果、接合状態検査用コイルを使用することなく、導線100に流れる電流Iの電流値Diについての測定精度を十分に向上させることができる。また、両センサ11,12間に作用する吸引力により、両センサ11,12の接合状態にばらつきが少なくなるため、これによっても測定精度の一層の向上を図ることができる。
【0062】
また、この電流測定装置1によれば、コア23a,23bにおける一端同士が同極となり、かつ他端同士が同極となるように各コア23a,23bに形成された各巻線24a,24bを励磁する励磁電圧V2を各巻線24a,24bに対して供給する励磁部37を備えたことにより、励磁部37を作動させることで両センサ11,12間に反発力を作用させることができる。したがって、この電流測定装置1によれば、固定側センサ11に可動側センサ12を接合させているばね3cの付勢力を、この両コイル部22a,22b間に作用する反発力で弱めることができるため、レバー21cを本体ケース3aに押し込んで可動側センサ12をばね3cの付勢力に抗して回動させる際に必要となる力を小さくすることができる結果、クランプ部2を非クランプ状態に容易に移行させることができる。
【0063】
また、この電流測定装置1によれば、各センサ11,12を構成するコイル部22a,22bの各巻線24a,24bに消磁用磁界を発生させる消磁部38を備えたことにより、上記したように各巻線24a,24bに直流電圧である励磁電圧V2を供給することによって各コア23a,23bに残存するおそれのある残留磁化を消磁することができるため、励磁電圧V2の供給によって生じる残留磁化に起因する電流の測定精度の低下を確実に防止することができる。
【0064】
また、この電流測定装置1によれば、各コア23a,23bに形成された各巻線24a,24bに対して励磁電圧V2を供給する構成を採用したことにより、導線100に流れる電流Iを検出するための検出コイルとして機能するコイル部22a,22bを、両センサ11,12に対して吸引力や反発力を発生させる電磁石として機能させることができる結果、別途独立した電磁石をクランプ部2に配設したり、またコイル部22a,22bを電磁石として機能させるための専用の巻線を巻線24a,24b以外に各コア23a,23bに形成する構成と比較して、装置構成を大幅に簡略化することができる。
【0065】
なお、上記の電流測定装置1では、両センサ11,12に対して吸引力および反発力の双方を選択的に発生させ得る構成を採用しているが、両センサ11,12に対して吸引力および反発力のいずれか一方のみを発生させる構成を採用することもでき、この構成を採用した場合には、可動側センサ12に供給する励磁電圧V2を反転させる必要がないことから、励磁部37を励磁電源37aだけで構成することができ、インバート回路37bの配設を省くことができる結果、電流測定装置の構成を簡略化することができる。また、消磁器などを使用して、クランプ部2の各コア23a,23bの消磁を行う場合には、電流測定装置1に消磁機能を設ける必要がないため、消磁部38の配設を省いてもよいのは勿論である。この構成においても、電流測定装置の構成を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 電流測定装置
3c ばね
11 固定側センサ
12 可動側センサ
23a,23b コア
24a,24b 巻線
34 測定部
37 励磁部
38 消磁部
I 電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6