(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る表示装置は、たとえば、IPS(In-Plane Switching)方式の液晶表示装置であって、
図1に示す液晶表示装置の全体斜視図の通り、TFT(Thin Film Transistor)基板102と、当該TFT基板102に対向し、カラーフィルタが設けられたフィルタ基板101と、当該両基板に挟まれた領域に封入された液晶材料と、TFT基板102のフィルタ基板101側と反対側に接して位置するバックライト103と、を含んで構成されている。ここで、TFT基板102に、後述する通り、ゲート信号線105、データ信号線107、基準電圧線108、画素電極110、基準電極111、及び、TFT109などが配置される(
図3参照)。
【0030】
図2は、当該実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック構成図である。TFT基板102に、表示部120、ドライバIC134、RGBスイッチ回路106、シフトレジスタ回路112が、備えられている。なお、ここで、RGBスイッチ回路106はなくてもよい。さらに、ドライバIC134に、ゲート信号線制御回路114と、データ信号線駆動回路115と、基準電圧線駆動回路10とが、備えられている。なお、ここでは、ゲート信号線制御回路114と、データ信号線駆動回路115と、基準電圧線駆動回路10とが、ドライバIC134に備えられているが、別々に設けられたり、一部が1つのドライバICに設けられたりしてもよい。
【0031】
ゲート信号線制御回路114は、表示部120の両側それぞれに配置されるシフトレジスタ回路112に対して、制御信号を出力し、シフトレジスタ回路112は、制御信号により、複数のゲート信号線105それぞれに、ゲート信号を出力する。ここで、ゲート信号線制御回路114と、シフトレジスタ回路112とを含んで、ゲート信号線駆動回路を構成している。データ信号線駆動回路115は、複数のデータ信号線107それぞれに、画素回路の表示データに応じた表示制御電圧を、RGBスイッチ回路106を介して供給する。さらに、基準電圧線駆動回路10は、複数の基準電圧線108を介して、各画素回路に基準電圧を供給する。
【0032】
図3は、当該実施形態に係るTFT基板102の等価回路の概念図である。
図3に示すTFT基板102において、シフトレジスタ回路112に接続される複数のゲート信号線105が、互いに等間隔をおいて図中横方向に延伸している。ここで、複数のゲート信号線105を、図の上側から順に、それぞれ、1番目、2番目、3番目、・・・のゲート信号線とする。また、RGBスイッチ回路106に接続される複数のデータ信号線107が互いに等間隔をおいて図中縦方向に延伸している。そして、これらゲート信号線105及びデータ信号線107により碁盤状に並ぶ画素回路がそれぞれ区画されている。さらに、基準電圧線駆動回路10に接続される複数の基準電圧線108が、各ゲート信号線105と平行に、図中横方向に延びている。なお、ここで、図には各画素回路に基準電極111と、複数の基準電圧線108とが、別々に示されているが、後述する通り、複数の基準電極111は1個の基準電極膜として形成され、基準電圧線は1本であってもよい。
【0033】
複数のデータ信号線107のうち、1本のデータ信号線107には、順番に1列に並ぶ複数の画素回路が接続されている。ゲート信号線105それぞれは、順番に1列に並ぶ複数の画素回路のうち、隣接する画素回路の間を延伸しており、ともに一方側に配置される画素回路と接続されている。ここでは、一方側とは、図中上側である。なお、順番に1列に並ぶ複数の画素回路を、図の上側から順に、それぞれ、1番目、2番目、3番目・・・の画素回路とする。
【0034】
各画素回路に、スイッチング素子であるTFT109、画素電極110、及び基準電極111が、備えられている。TFT109は、接続されるデータ信号線107と画素電極110の間に設けられ、TFT109のゲートに接続されるゲート信号線105に出力されるゲート信号により、TFT109は制御される。すなわち、ゲート信号がオン電圧となるとき、TFT109はオン状態となる。
【0035】
シフトレジスタ回路112に、複数のゲート信号線105それぞれに対応して、基本回路が複数備えられている。例えば、ゲート信号線105が800本存在しているとき、同じく、基本回路が800個、シフトレジスタ回路112に備えられる。ゲート信号線制御回路114が出力する制御信号により、シフトレジスタ回路112に設けられる各基本回路は、1フレーム期間のうち、対応するゲート走査期間(ゲート信号オン期間)にはオン電圧となり、それ以外の期間(ゲート信号オフ期間)にはオフ電圧となる、ゲート信号を、対応するゲート信号線105に出力している。ここでは、オン電圧をハイ電圧とし、オフ電圧をロー電圧としている。そして、データ信号線駆動回路115は、1列に順番に並ぶ複数の画素回路のうちオン状態のTFT109を備える画素回路を選択し、その表示データに応じた表示制御電圧を、データ信号線107に供給する。
【0036】
以上の回路構成において、基準電圧線駆動回路10は、複数の基準電圧線108を介して、各画素回路の基準電極111に、それぞれの基準電圧を供給する。ゲート信号線駆動回路は、順番に並ぶ複数のゲート信号線105それぞれにゲート信号を出力する。ゲート信号がオン電圧となっているゲート信号線105に接続されるTFT109がオン状態となり、オン状態となるTFT109に電流が流れ、オン状態となるTFT109が備えられる画素回路の表示データに応じた表示制御電圧が、データ信号線駆動回路115よりデータ信号線107に供給され、TFT109を介して、データ信号線107より該画素回路の画素電極110に印加される。これにより、画素電極110と基準電極111との間に電位差が生じ、液晶分子の配向などを制御し、それにより、バックライト103からの光を遮蔽の度合を制御し、画像を表示することとなる。
【0037】
当該実施形態に係るゲート信号線駆動回路は、前述のゲートオーバーラップ駆動を行っている。すなわち、ゲート信号オン期間は、1水平期間(H)より長くなっており、ここでは、2水平期間(2H)となっている。ゲート信号オン期間は、接続される画素回路に表示データの書き込みを行う1水平期間(H)と、さらにその前の1水平期間(H)とを含んでいる。
【0038】
また、当該実施形態に係るゲート信号線駆動回路は、双方向走査駆動を行うことが可能であり、ここでは、
図2及び
図3に示す表示部120の図中上側から下側に沿って、順番に並ぶゲート信号線105に出力されるゲート信号が、時間経過とともに、該順番と正順にオン電圧となる順方向走査駆動と、反対に、下側から上側に沿って、ゲート信号が、時間経過とともに、該順番と逆順にオン電圧となる逆方向走査駆動とのいずれかを選択して駆動することが出来る。
【0039】
当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10は、表示部120に延伸する複数の基準電圧線108に対して、ともに、同じ基準電圧を印加する、基準電圧固定駆動を行う。この場合、
図3に示す複数の基準電圧線108は1本の基準電圧線であってもよい。さらに、後述する通り、基準電圧線駆動回路10が複数の基準電圧線108に対して印加する基準電圧は、順方向走査をする場合と、逆方向走査をする場合とでは、異なっている。
【0040】
当該実施形態に係るデータ信号線駆動回路115は、データ信号反転駆動を行っている。データ信号線駆動回路115は、1本のデータ信号線107に接続され1列に並ぶ複数の画素回路に対して、順に、符号が異なる表示制御電圧を、該データ信号線107を介して供給している。ここで、符号とは、画素電極110の電位が基準電極111の電位より高くなる場合の表示制御電圧を正の符号と、画素電極110の電位が基準電極111の電位より低くなる場合の表示制御電圧を負の符号とを、それぞれ指している。
【0041】
データ信号反転駆動の例として、表示部120に設けられる複数の画素回路に供給される表示制御電圧の符号が、チェスボード(又は、市松模様)のように、互いに隣り合う画素回路において異なるよう分布している場合は、ドット反転方式と呼ばれている。1本のデータ信号線107に接続され1列に並ぶ複数の画素回路のうち、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号と、該データ信号線107に隣接するデータ信号線107に接続され1列に並ぶ複数の画素回路のうち、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号とは、異なっている。
【0042】
データ信号反転方式の他の例として、複数の画素回路それぞれに供給される表示制御電圧の符号が、例えば
図3に示す縦方向に対して、互いに隣り合う画素回路において異なり、横方向に対して同じである場合は、ライン反転方式と呼ばれている。また、複数の画素回路それぞれに供給される表示制御電圧の符号が、例えば
図3に示す横方向に対して、互いに隣り合う画素回路において異なり、縦方向に対して同じである場合は、カラム反転方式と呼ばれている。また、複数の画素回路それぞれに供給される表示制御電圧の符号が、全て同じである場合は、フレーム反転方式と呼ばれている。ここでは、他の方式を含め、いずれのデータ信号反動駆動であってもよい。
【0043】
データ信号線駆動回路115がデータ信号反転駆動を行うのは、以下の理由による。各画素回路において、各フレーム期間に、同じ符号の表示制御電圧が画素電極110に供給される場合、画素電極110と基準電極111に間に配置される液晶分子には、同方向の電場が印加されるために、液晶分子の劣化が早まることとなる。液晶分子の劣化を抑制するために、印加される電場の方向を周期的に反転させるのが望ましい。印加される電場の方向を周期的に反転させる駆動の一つとして、画素電極110に供給される表示制御電圧の符号を反転させる、データ信号反転駆動がある。
【0044】
図3では、簡単の説明のために、シフトレジスタ回路112は、左片側にのみ図示されているが、前述の通り、実際には、シフトレジスタ回路112の基本回路は、前述の通り、表示部120の左右両側に配置され、例えば、ゲート信号線105が800本あるとすると、両側にそれぞれ複数配置されたシフトレジスタ回路112の基本回路によって、例えば、左側の基本回路は奇数番目のゲート信号線105に、右側の基本回路は偶数番目のゲート信号線105に、それぞれゲート信号を出力している。
【0045】
図4Aは、n番目の画素回路近傍の上面図であり、当該実施形態に係る画素回路は、基準電極111(コモン電極)が、画素電極110より上方に配置されるコモントップ構造を有している。
図4Bは、
図4Aに示す4B−4B断面を示す断面図である。
【0046】
ガラス基板などの透明基板(図示せず)上に、透明基板からの不純物の汚染を防止する汚染防止膜(図示せず)が形成され、さらに、
図4Aに示すゲート電極膜205が形成されている。
図3には、TFT109のゲート(ゲート電極)とゲート信号線105は、別々に示されているが、実際には、TFT109のゲートと、ゲート信号線105とは、1個のゲート電極膜205に形成されている。
図4Aには、図中下側に、n番目の画素回路のTFT109
nのゲートと、該TFT109
nが接続されるn番目のゲート信号線105
nとが、1個のゲート電極膜205として示されており、また、図中上側に、n番目の画素回路の上側に配置されるn−1番目の画素回路のTFT109
n−1のゲートと、該TFT109が接続されるn−1番目のゲート信号線105
n−1とが、1個のゲート電極膜205として示されている。すなわち、合計で2個のゲート電極膜205が、
図4Aに示されている。
【0047】
ゲート電極膜205を被覆するようにゲート絶縁膜221(
図4B参照)が形成されているとともに、さらにその上に、半導体膜220が形成されている。ここで、半導体膜220とは、例えば、非晶質(アモルファス)シリコンからなっているが、多結晶シリコンや単結晶シリコン、また、他の半導体からなっていてもよい。
【0048】
図4Aの縦方向に沿って、図の両側それぞれにデータ信号線膜207が、図の中央に画素電極膜210が、形成されている。ゲート電極膜205と同様に、
図3には、TFT109の入力側とデータ信号線107は、別々に示されているが、実際には、TFT109の入力側と、データ信号線107とは、1個のデータ信号線膜207に形成されている。
図4Aには、n番目の画素回路のTFT109
nの入力側と、縦方向に延伸する1本のデータ信号線107と、を含むデータ信号線膜207が左側に、さらに他の1本のデータ信号線107を含むデータ信号線膜207が右側に、示されている。また、同様に、TFT109
nの出力側と、画素電極110
nは、1個の画素電極膜210に形成されている。
【0049】
データ信号線膜207及び画素電極膜210を被覆するように絶縁膜222(
図4B参照)が形成されているとともに、さらにその上に、基準電極膜211が形成されている。
図3には、各画素回路に基準電極111と、複数の基準電圧線108とが、別々に示されているが、実際には、複数の基準電極111と複数の基準電圧線108とは、1個の基準電極膜211に形成されている。基準電極膜211には、各画素回路の画素電極膜210の上方に、スリット(隙間)が設けられており、画素電極膜210と基準電極膜211の間に生じる電位差により、当該スリットの上方に印加される電場は、
図4Bの横方向に成分を有することとなる。なお、基準電極膜211の上に保護絶縁膜223が形成され、液晶分子は、保護絶縁膜の上方に液晶分子が封入される。
図4Aに示す基準電極膜211は、図中縦方向に延伸する4本のスリットを有しており、当該スリットの下方に、絶縁膜222を介して、画素電極膜210が配置されている。
【0050】
画素回路のコモントップ構造とは、ゲート信号線105(ゲート電極膜205)に対して、基準電極111(基準電極膜211)が、画素電極110(画素電極膜210)より遠方(上方)に形成(積層)される構造である。IPS方式の液晶表示装置の画素回路は、コモントップ構造の他に、画素電極が基準電極より上方に配置されるソーストップ構造がある。ソーストップ構造において、TFTの出力側(ソース電極)がソース電極膜に形成され、それぞれ絶縁膜を介して、TFT基板の下側から順に、ソース電極膜(ソース電極)と、基準電極膜(基準電極)と、画素電極膜(画素電極)とが形成される。基準電極膜は所定の形状に形成されているので、基準電極膜が形成されない領域にスルーホールが形成され、スルーホールを介して、ソース電極膜と画素電極膜が電気的に接続され、また、ソース電極膜及び画素電極膜は、基準電極膜と電気的に遮断されている。なお、ソース電極と電気的に接続される画素電極が、基準電極より上方に形成されるので、ソーストップ構造と呼ばれている。ソーストップ構造において、基準電極膜のうち、基準電極となる領域は平面形状をしており、反対に、画素電極膜のうち、画素電極となる領域が、櫛歯形状をしている。なお、画素電極膜の櫛歯形状の歯間となる領域の上方に印加される電場が、横方向成分を有することとなる。
【0051】
画素回路がコモントップ構造を有する場合、ソーストップ構造のようにスルーホールを設ける必要がなく、開口率が向上するとともに、コモントップ構造においては、ソース電極と画素電極が同じ画素電極膜に形成されるため、製造工程が簡略化出来るという利点を有している。その反面、ソーストップ構造と異なり、画素電極110という広い領域を有する画素電極膜210が、ゲート電極膜205の近傍に、ゲート絶縁膜221を介して、形成されている。
【0052】
図4Bに示す通り、ゲート電極膜205の端と、画素電極膜210の端の間の距離が短いので、ゲート電極膜205と画素電極膜210との間に、寄生容量が発生している。すなわち、コモントップ構造の場合、ソーストップ構造と比較して、ゲート電極膜205と画素電極膜210との間に生じる寄生容量が、大きくなるのが特徴である。ここで、n番目の画素回路において、TFT109
nは、
図4Aの下側に配置されており、n番目の画素回路において、画素電極膜210(画素電極110
n)と、TFT109
nのゲート(ゲート電極)を含む図中下側のゲート電極膜205(n番目のゲート信号線105
n)との間に生じる寄生容量をC
gp1とする。また、n番目の画素回路の画素電極膜210(画素電極110
n)と、図中上側のゲート電極膜205(n−1番目のゲート信号線105
n−1)との間に生じる寄生容量をC
gp2とする。
【0053】
図9に示す通り、画素電極110と基準電極111との間には、画素容量C
stが形成されており、データ信号線107に供給される表示制御電圧により、データ書き込みの際、画素容量C
stは充電される。しかし、データ書込みが終了する際に、ゲート信号線105の電圧がオン電圧からオフ電圧に変化し、ゲート信号線105と画素電極110の間に存在する寄生容量とのカップリングにより、その画素回路又は隣接する画素回路の画素電極110の電位は変化する。
【0054】
当該実施形態に係るn番目の画素回路においては、画素電極110
nとn番目のゲート信号線105
nとの間に寄生容量C
gp1が、画素電極110
nとn−1番目のゲート信号線105
n−1との間に寄生容量C
gp2が、存在している。ゲート信号のオン電圧とオフ電圧との電位差を電圧V
0とすると、n番目のゲート信号線105
nがオン電圧からオフ電圧に変化するのに伴い、変化する画素電極110
nの電圧V
1は、V
1=(C
gp1/C
st)・V
0で表すことが出来、この式を(数式1)とする。同様に、n−1番目のゲート信号線105
n−1がオン電圧からオフ電圧に変化するのに伴い、変化する画素電極110の電圧V
2は、V
2=(C
gp2/C
st)・V
0で表すことが出来、この式を(数式2)とする。
【0055】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、順方向走査駆動及び逆方向走査駆動を行う場合における、n番目の画素回路及びn+1番目の画素回路の駆動を示す図である。図中上側がn番目の画素回路の駆動を、図中下側が、n+1番目の画素回路の駆動を、それぞれ示している。
図5Aにおいては、図中上側から下側(順方向31)に順に走査しており、
図5Bにおいては、図中下側から上側(逆方向32)に順に走査している。
【0056】
各画素回路の駆動において、ゲート信号線105供給される電圧と、データ信号線107に供給される電圧と、画素電極110に供給される電圧とが、それぞれ時間経過とともに示されている。ここで、ゲート信号のオン電圧がハイ電圧で、オフ電圧がロー電圧である。
【0057】
前述の通り、ゲート信号線駆動回路は、ゲート信号オン期間がおよそ2水平期間(2H)となるゲートオーバードライブ駆動を行っている。それゆえ、n番目のゲート信号線105
nの電圧は、隣接するn−1番目の画素回路にデータ書き込みを行う水平期間(H)と、n番目の画素回路自体にデータ書込みを行う水平期間(H)との期間に、ハイ電圧となっている。
【0058】
まず、
図5Aの上側に示す通り、順方向走査駆動を行う場合の、n番目の画素回路における駆動について説明する。n−1番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は負であり、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は正である。それゆえ、データ信号線107の電圧は、n番目のゲート信号線105の電圧がハイ電圧となる2水平期間(2H)のうち、前半の水平期間(H)は負と、後半の水平期間(H)は正となっている。ここで、簡単のため、
図5A及び
図5Bには、1列に並ぶ画素回路の表示データが同じ場合について、示している。すなわち、1列に並ぶ複数の画素回路に供給される表示制御電圧は、正と負と符号は順に異なるものの、基準電極111に対する絶対値は一定となっている。
【0059】
n番目のゲート信号線105
nの電圧がハイ電圧となる2水平期間(2H)のうち、前半の水平期間(H)が終了する時刻において、n−1番目の画素回路へのデータ書き込みが終了する。この時刻に、n−1番目のゲート信号線105
n−1の電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。n番目の画素回路において、画素電極110
nとn−1番目のゲート信号線105
n−1との間に存在する寄生容量C
gp2により、電圧V
2が低下する。そして、この時刻に、データ信号線107に供給される表示制御電圧が、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧へ変化する。すなわち、データ信号線107の電圧の符号が負から正へ変化する。
【0060】
2水平期間(2H)のうち、後半の水平期間(H)が始まる時刻において、上述の通り、寄生容量C
gp2による電圧V
2の低下が生じるものの、後半の水平期間(H)において、画素電極110
nの電圧は、n番目の画素回路の表示データに応じた表示制御電圧に近づくので、電圧V
2の低下による影響はほとんど受けていない。
【0061】
そして、後半の水平期間(H)が終了する時刻において、n番目の画素回路へのデータ書込みが終了する。この時刻に、n番目のゲート信号線105
nの電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。n番目の画素回路において、画素電極110
nとn番目のゲート信号線105
nとの間に存在する寄生容量C
gp1により、電圧V
1が低下し、n番目の画素電極110
nの電圧は、所望の表示制御電圧より、電圧V
1が低下された電圧に維持される。
【0062】
次に、
図5Aの下側に示す通り、順方向走査駆動を行う場合の、n+1番目の画素回路における駆動について説明する。n番目の画素回路における駆動と、n+1番目の画素回路における駆動との主な違いは、ゲート信号線105の電圧がハイ電圧となる2水平期間(2H)において、データ信号線107に供給される表示制御電圧の符号である。n番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は正であり、n+1番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は負であるので、上述の場合と、データ信号線107の電圧の符号が逆である。
【0063】
n+1番目のゲート信号線105
n+1の電圧がハイ電圧となる2水平期間(2H)のうち、前半の水平期間(H)が終了する時刻において、n番目の画素回路へのデータ書き込みが終了する。この時刻に、n番目のゲート信号線105
nの電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。n+1番目の画素回路において、画素電極110
n+1とn番目のゲート信号線105
nとの間に存在する寄生容量C
gp2により、n番目の画素回路と同様に、電圧V
2が低下する。そして、この時刻に、データ信号線107の電圧が、n+1番目の画素回路に供給される表示制御電圧へ変化する。すなわち、データ信号線107の電圧の符号が正から負へ変化する。
【0064】
2水平期間(2H)のうち、後半の水平期間(H)が始まる時刻において、上述の通り、寄生容量C
gp2による電圧V
2の低下が生じるものの、後半の水平期間(H)において、画素電極110
n+1の電圧は、n+1番目の画素回路の表示データに対応する表示制御電圧に近づくので、電圧V
2の低下による影響はほとんど受けていない。
【0065】
そして、後半の水平期間(H)が終了する時刻において、n+1番目の画素回路へのデータ書込みが終了する。この時刻に、n+1番目のゲート信号線105
n+1の電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。n+1番目の画素回路において、画素電極110
n+1とn+1番目のゲート信号線105
n+1との間に存在する寄生容量C
gp1により、電圧V
1が低下し、n+1番目の画素電極110
nの電圧は、所望の表示制御電圧より、電圧V
1が低下された電圧に維持される。
【0066】
すなわち、データ信号線駆動回路115がデータ信号反転駆動を行っており、ゲート信号線駆動回路が順方向走査駆動を行っている場合、正の符号となる表示制御電圧が供給される画素回路の画素電極110も、負の符号となる表示制御電圧が供給される画素電極110も、画素電極110と隣接する2本のゲート信号線105との寄生容量が無視出来る場合と比較して、ともに、所望の表示制御電圧より電圧V
1低下された電圧に維持されることとなる。
【0067】
これに対して、逆方向走査駆動を行う場合の駆動について説明する。まず、
図5Bの下側に示す通り、逆方向走査駆動を行う場合の、n+1番目の画素回路における駆動について説明する。n+1番目の画素回路において、n+1番目のゲート信号線105
n+1の電圧がハイ電圧となる2水平期間(2H)のうち、前半の水平期間(H)が終了する時刻において、n+2番目の画素回路へのデータ書き込みが終了する。この時刻に、n+2番目のゲート信号線105
n+2の電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。しかし、n+1番目の画素回路において、画素電極110
n+1が、n+2番目のゲート信号線105
n+2との間に生じる寄生容量は、n+1番目のゲート信号線105
n+1との間に生じる寄生容量C
gp1や、n番目のゲート信号線105
nとの間に生じる寄生容量C
gp2と比較して、小さいので、この時刻における電圧の変動は小さい。又は、当該寄生容量が無視できないほど大きい場合であっても、前述の通り、後半の水平期間(H)において、画素電極110
n+1の電圧は、n+1番目の画素回路の表示データに対応する表示制御電圧に近づくので、電圧の変動による影響はほとんど受けない。
【0068】
さらに、この時刻に、データ信号線107に供給される表示制御電圧が、n+1番目の画素回路に供給される表示制御電圧へ変化する。すなわち、データ信号線107の電圧の符号が負から正へ変化する。そして、後半の水平期間(H)が終了する時刻において、n+1番目の画素回路へのデータ書込みが終了する。この時刻に、n+1番目のゲート信号線105
n+1の電圧がハイ電圧からロー電圧に変化する。n+1番目の画素回路において、画素電極110
n+1とn+1番目のゲート信号線105
n+1との間に存在する寄生容量C
gp1により、電圧V
1が低下する。この時刻より1水平期間(H)より後に、n番目のゲート信号線105
nの電圧がハイ電圧からロー電圧に変化するので、画素電極110
n+1とn番目のゲート信号線105
nとの間に存在する寄生容量C
gp2により、電圧V
2がさらに低下する。よって、n+1番目の画素回路の画素電極110
n+1は、所望の表示制御電圧より、電圧V
1及び電圧V
2の合計となる電圧が低下された電圧に維持される。
【0069】
次に、
図5Bの上側に示す通り、逆方向走査を行う場合の、n番目の画素回路における駆動について説明する。n番目の画素回路における駆動と、n+1番目の画素回路における駆動との主な違いは、順方向走査を行う場合と同様に、ゲート信号線105に出力されるゲート信号がハイ電圧となる2水平期間(2H)において、データ信号線107に供給される表示制御電圧の符号にある。n+1番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は正であり、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧の符号は負であるので、上述の場合と、データ信号線107に供給される表示制御電圧の符号が逆である。
【0070】
よって、n番目のゲート信号線105
nのゲート信号がハイ電圧となる2水平期間(2H)のうち、前半の水平期間(H)が終了する時刻に、n+1番目のゲート信号線105
n+1のゲート信号がハイ電圧からロー電圧に変化するが、前述の通り、画素電極110
nが、n+1番目のゲート信号線105
n+1との間に生じる寄生容量は小さいので、この時刻における電圧の変動は小さい。
【0071】
さらに、この時刻に、データ信号線107に供給される表示制御電圧が、n番目の画素回路に供給される表示制御電圧へ変化し、表示制御電圧の符号が正から負へ変化する。そして、後半の水平期間(H)が終了する時刻において、n番目の画素回路へのデータ書込みが終了し、n番目のゲート信号線105
nのゲート信号がハイ電圧からロー電圧に変化する。n番目の画素回路において、画素電極110
nとn番目のゲート信号線105
nとの間に存在する寄生容量C
gp1により、電圧V
1が低下する。この時刻より1水平期間(H)より後に、n−1番目のゲート信号線105
n−1のゲート信号がハイ電圧からロー電圧に変化するので、画素電極110
nとn−1番目のゲート信号線105
n−1との間に存在する寄生容量C
gp2により、電圧V
2がさらに低下する。よって、n番目の画素回路の画素電極110
nは、所望の表示制御電圧より、電圧V
1及び電圧V
2の合計となる電圧が低下された電圧に維持される。
【0072】
すなわち、データ信号線駆動回路115が、データ信号反転駆動を行っており、ゲート信号線駆動回路が、逆方向走査を行っている場合、正の符号となる表示制御電圧が供給される画素回路の画素電極110も、負の符号となる表示制御電圧が供給される画素電極110も、画素電極110と隣接する2本のゲート信号線105との寄生容量が無視出来る場合と比較して、ともに、電圧V
1及び電圧V
2の合計となる電圧が所望の表示制御電圧より低下された電圧に維持されることとなる。
【0073】
以上、まとめると、データ信号線駆動回路115がデータ信号反転駆動を行っている場合、正の符号となる表示制御電圧が供給される画素回路の画素電極110においても、負の符号となる表示制御電圧が供給される画素回路の画素電極110においても、画素電極110と隣接する2本のゲート信号線105との寄生容量による電圧の低下は、ともに、所望の表示制御電圧より等しいが、順方向走査駆動をする場合と、逆方向走査駆動をする場合とで、その電圧の低下は異なっている。
【0074】
図6は、当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10のブロック概念図である。基準電圧線駆動回路10は、論理回路11と、基準電圧生成回路16と、記憶部15とを、備えている。記憶部15は、例えば、不揮発性メモリが記憶される記憶部であってよい。論理回路11は、メモリ書き込み回路12と、制御レジスタ回路13と、インターフェース回路14とを、備えている。インターフェース回路14に、基準電圧線駆動回路10の外部に設けられる外部システム20より、制御信号が入力される。
【0075】
従来技術に係るドライバICに備えられる基準電圧線駆動回路では、1つの基準電圧を決定する電圧情報が記憶され、制御レジスタ回路は、1つの基準電圧を制御していたところ、当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10の特徴は、記憶部15に、順方向走査駆動用基準電圧V
comF(正順用基準電圧)及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comB(逆順用基準電圧を決定する電圧情報が記憶され、制御レジスタ回路13が順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを制御する点にある。
【0076】
当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10は、前述の通り、基準電圧固定駆動を行っている。すなわち、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBは、ともに直流電圧である。
【0077】
制御レジスタ回路13からの制御により、メモリ書き込み回路12は、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBそれぞれの値を、記憶部15に記憶させる。すなわち、記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの2値とするのが望ましい。また、表示装置の駆動時には、ドライバIC134に電源が入った後に、制御レジスタ回路13は、記憶部15に記憶されている順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBそれぞれの値を読み出し、制御レジスタ回路13はそれぞれの値を内部のレジスタに格納する。
【0078】
走査駆動の走査方向が変更する際に、外部システム20よりインターフェース回路14に制御信号が入力される。制御レジスタ回路13は、該制御信号に従って、さらに、記憶部15に記憶されていた電圧情報より、出力すべき基準電圧を算出し、基準電圧生成回路16を制御する。それにより、基準電圧生成回路16は、順方向走査駆動時には、順方向走査駆動用基準電圧V
comFを、逆方向走査駆動時には、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを、基準電圧として、基準電圧線108に供給する。基準電圧線108を介して、表示部120の各画素回路の基準電極111に、基準電圧が供給される。
【0079】
記憶部15に記憶される2値の電圧情報に基づいて、基準電圧線駆動回路10が、順方向走査駆動時には、順方向走査駆動用基準電圧V
comFを、逆方向走査駆動時には、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを、各画素回路の基準電極111に供給することにより、順方向走査駆動する場合と、逆方向走査駆動する場合とに生じる、表示制御電圧の差異を抑制することが出来、かつ、寄生容量による変動を抑制することが出来る。それにより、表示品質を向上することが出来る。
【0080】
なお、前述の通り、所望の表示制御電圧が等しいとすると、順方向走査駆動をする場合に画素電極110に維持される電圧は、逆方向走査駆動をする場合に画素電極110に維持される電圧より、電圧V
2高くなっている。それに応じて、順方向走査駆動用基準電圧V
comFが、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBより、寄生容量C
gp2に起因する電圧V
2高くなっているのが望ましい。さらに、順方向走査駆動する場合に画素電極110に維持される電圧は、画素電極110とゲート信号線105との間に生じる寄生容量が無視出来る場合と比較して、電圧V
1低くなっている。それに応じて、順方向走査駆動用基準電圧V
comFが、寄生容量が無視出来る場合と比較して、電圧V
1低くなっているのが望ましい。
【0081】
また、ここでは、記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBそれぞれの値としたが、記憶部15に記憶される情報に基づいて、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを生成することが出来るのであれば、他の電圧情報であってもよい。例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBそれぞれの値から、所定の値を加減した値などであってもよい。
【0082】
図7は、当該実施形態に係る液晶表示装置の画像表示駆動を表す図である。順方向走査駆動から逆方向走査駆動に変更するタイミングについて示している。1画面(フレーム)の表示データの書き込みを行う期間が、1フレーム期間T
Fであり、垂直同期信号V
SYNCは、1フレーム期間を周期とする信号であり、垂直同期信号V
SYNCにより、1画面の表示データの書き込みのタイミングを計ることができる。水平同期信号H
SYNCは、前述の1水平期間(H)を周期とする信号であり、水平同期信号H
SYNCにより、1つの画素回路の表示データの書き込みのタイミングを計ることができる。ここで、信号P
CLKはクロック信号である。
【0083】
1フレーム期間T
Fにおいて、帰線期間T
Bに、データ書込み期間T
Dが続き、データ書込み期間T
Dにおいて、複数の画素回路に表示データの書き込み駆動を行う。それに応じて、ゲート信号が順にハイ電圧となるが、図には、1番目のゲート信号V
G1から800番目のゲート信号V
G800へ順にハイ電圧となる、順方向走査駆動が示されている。さらに、前述の通り、ゲート信号線駆動回路は、ゲートオーバーラップ駆動を行っており、隣り合うゲート信号のハイ電圧となるゲート信号オン期間は重なりがある。
【0084】
前述の通り、データ信号線107には、書込み駆動を行う画素回路の表示データに応じた表示制御電圧が供給されており、図には、データ書込み期間T
Dにそれぞれ供給される、1番目の画素回路から800番目の画素回路の表示データに応じた表示制御電圧が示されている。基準電圧線108には、順方向走査駆動を行う際に供給される順方向走査駆動用基準電圧V
comFが供給されている。
【0085】
該1フレーム期間T
Fにおいては、順方向走査駆動を行っているが、次のフレーム期間T
Fにおいては、逆方向走査駆動へ変更される。それに応じて、データ書き込み期間T
Dに続く、帰線期間T
Bに、基準電圧線108に供給される基準電圧が、順方向走査駆動用基準電圧V
comFから、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBに変化している。しかし、基準電圧を変更するタイミングは、最後に表示データの書込み駆動を行う画素回路に対する、ゲート信号がハイ電圧からロー電圧へ変化して直後が望ましい。なお、図に示すオフセット期間V
OFSは、最終のゲート信号がロー電圧へ十分に変化するために設けるオフセット期間であり、最後の画素回路に表示データの書込み駆動を行っている際に、基準電圧が変動するのを防止するために設けられている。
【0086】
なお、ここでは、データ信号線駆動回路115が1本のデータ信号線107に供給する表示制御電圧の符号が、水平期間(H)毎に交互に変化する場合について、説明したが、これに限定されることはない。1フレーム期間においては、1本のデータ信号線107に供給する表示制御電圧の符号がすべて同じであり、1フレーム期間毎又は所定数のフレーム期間毎に該符号が交互に変化する駆動であってもよい。データ信号線駆動回路115に接続される複数のデータ信号線107に供給される表示制御電圧の符号が、1フレーム期間において、すべて等しいフレーム反転方式であっても、隣り合うデータ信号線107で、表示制御電圧の符号が異なるカラム反転方式であってもよい。
【0087】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る表示装置の基本的な構成は、第1の実施形態に係る表示装置と同じである。第1の実施形態に係る基準電圧線駆動回路10が基準電圧固定駆動を行っているのに対して、当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10は、基準電圧交流駆動を行っている点が、主に異なる。
【0088】
ここで、基準電圧交流駆動とは、以下のようなものをいう。前述の通り、データ信号線駆動回路115が、例えばライン反転、またはフレーム反転などのデータ信号反転駆動を行っており、画素回路の画素電極110に供給される表示制御電圧は、正又は負の符号を有している。画素回路の画素電極110に正の符号の表示制御電圧が供給されるときには、該画素回路の基準電極111には、負の符号の基準電圧(ロー電圧)が供給され、画素回路の画素電極110に負の符号の表示制御電圧が供給されるときには、該画素回路の基準電極111には、正の符号の基準電圧(ハイ電圧)が供給される。すなわち、基準電圧は、所定の周期で、ロー電圧とハイ電圧とを交互に繰り返す交流電圧となっている。ここで、正の符号の基準電圧(ハイ電圧)と負の符号の基準電圧(ロー電圧)との差を、振幅値とする。
【0089】
画像表示は、基準電極111に対する画素電極110の電圧によって、画像表示が制御されており、係る基準電圧交流駆動を行うことにより、データ信号反転駆動を行う際に、正の符号の表示制御電圧と、負の符号の表示制御電圧との差を小さくすることが出来、消費電力の抑制をすることができる。
【0090】
前述の通り、データ信号線駆動回路115は、データ信号反転駆動を行っている。駆動がライン反転方式の場合は、
図3に示す縦方向に並ぶ複数の基準電圧線108に、交互に、正の符号の基準電圧と、負の符号の基準電圧とが、1フレーム期間中、供給されている。すなわち、例えば、図の上側から数えて、奇数行目の基準電圧線108に正の符号の基準電圧が供給されている場合、偶数行目の基準電圧線108に負の符号の基準電圧が供給される。また、複数の基準電極111が、1個の基準電極膜として形成され、基準電圧線108が1本である場合には、正の符号と、負の符号の基準電圧とが、表示制御電圧の符号に同期した周期で、供給されている。
【0091】
基準電圧交流駆動を行う場合において、従来技術に係るドライバICに備えられる基準電圧線駆動回路では、1つの基準電圧を決定する電圧情報が記憶され、制御レジスタ回路は、1つの基準電圧を制御していたところ、当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10の特徴は、記憶部15に、順方向走査駆動用基準電圧V
comF(正順用基準電圧)及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comB(逆順用基準電圧)を決定する電圧情報が記憶され、制御レジスタ回路13が順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを制御する点にある。ここで、従来技術における1つの基準電圧を決定する電圧情報とは、基準電圧の基準値と振幅値の2値である。基準電圧の基準値とは、例えば、正の符号の基準値(ハイ電圧)又は負の符号の基準値(ロー電圧)のいずれかである。
【0092】
順方向走査駆動を行う場合と、逆方向走査駆動を行う場合とに、基準値の振幅値は依らず同じであるので、当該実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comFの基準値、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの基準値、及び、両基準電圧の振幅値、の3値とするのが望ましい。
【0093】
記憶部15に記憶される係る3値の電圧情報に基づいて、基準電圧線駆動回路10が、順方向走査駆動時には、順方向走査駆動用基準電圧V
comFを、逆方向走査駆動時には、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを、各画素回路の基準電極111に供給することにより、基準電圧交流駆動を行う場合であっても、順方向走査駆動する場合と、逆方向走査駆動する場合とに生じる、表示制御電圧の差異を抑制することが出来、かつ、寄生容量による変動を抑制することが出来る。それにより、表示品質を向上することが出来る。
【0094】
なお、ここでは、記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comFの基準値、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの基準値、及び、両基準電圧の振幅値、の3値としたが、記憶部15に記憶される電圧情報に基づいて、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを生成することが出来るのであれば、他の電圧情報であってもよい。例えば、記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comFの中心値、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの中心値、及び、振幅値の半値、の3値であってもよい。ここで、中心値とは、正の符号の基準電圧(ハイ電圧)と負の符号の基準電圧(ロー電圧)の平均値である。この場合、各基準電圧は、中心値に、振幅値の半値を加減することにより、正の符号の基準電圧(ハイ電圧)と負の符号の基準電圧(ロー電圧)とを生成することができる。また、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの基準値とは、ハイ電圧又はロー電圧のいずれかから、所定の値を加減した値などであってもよい。
【0095】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る表示装置の基本的な構成は、第1及び第2の実施形態に係る表示装置と同じである。当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10の記憶部15に記憶される電圧情報と、記憶部15に記憶される電圧情報に基づいて、基準電圧を生成する制御方法が、第1及び第2の実施形態と主に異なっている。
【0096】
まず、第1の実施形態と同様に、基準電圧線駆動回路10が、基準電圧固定駆動を行う場合について説明する。第1の実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報とは、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの2値であるところ、当該実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報は、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれかの値と、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの差分値ΔV(=V
comF−V
comB)との2値である。
【0097】
走査駆動の走査方向が変更する際に、制御レジスタ回路13は、出力すべき基準電圧を、変更前の基準電圧から、記憶部15に記憶されている差分値ΔVをシフトさせて、変更後の基準電圧として、基準電圧生成回路16を制御する。それにより、基準電圧生成回路16は、順方向走査駆動時には、順方向走査駆動用基準電圧V
comFを、逆方向走査駆動時には、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBを、基準電圧として、基準電圧線108に供給する。
【0098】
第1の実施形態に係る基準電圧線駆動回路10は、記憶部15に、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの2値の電圧情報を記憶させていたところ、当該実施形態に係る基準電圧線駆動回路10は、記憶部15に、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれかの値と、その差分値ΔVと、の2値の電圧情報を記憶させている。差分値ΔVの電圧設定範囲は、基準電圧そのものの電圧設定範囲より狭くすることが可能であるので、記憶部15に記憶させる電圧情報の情報量(bit数)を軽減することが出来る。その結果、記憶部15に要する領域や、制御レジスタ回路13に設けられるレジスタ領域を軽減することが出来、ドライバIC134の製造コストを軽減することが出来る。例えば、基準電圧の電圧設定範囲を3V、差分値ΔVの電圧設定範囲を300mVとする場合、それぞれ10mV毎の電圧設定を行うために必要な電圧情報の情報量は、基準電圧では9bit、差分値ΔVでは5bitである。
【0099】
また、記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comFと逆方向走査駆動用基準電圧V
comBとの平均値と、順方向走査駆動用基準電圧V
comFと逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの差分値ΔVの半値であってもよい。この場合、該平均値に、差分値ΔVを加減することにより、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれかを選択して生成することができる。
【0100】
次に、第2の実施形態と同様に、基準電圧線駆動回路10が、基準電圧交流駆動を行う場合について説明する。第2の実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報とは、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comFの基準値、逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの基準値、及び、両基準電圧の振幅値、の3値であるところ、当該実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報は、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれかの基準値、振幅値、及び、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの差分値ΔV(=V
comF−V
comB)、の3値である。ここで、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBはともに、所定の周期で繰り返しており、その差分値ΔVは、直流成分のみの値である。第2の実施形態と比較して、基準電圧の基準値を、差分値ΔVとすることにより、記憶部15に記憶される電圧情報の情報量を軽減することが出来る。
【0101】
また、当該実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comFの中心値と逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの中心値との平均値、振幅値の半値、及び、順方向走査駆動用基準電圧V
comF及び逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの差分値ΔV(=V
comF−V
comB)の半値、の3値であってもよい。この場合、該平均値に、差分値ΔVの半値を加減し、さらに、振幅値の半値を加減することにより、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれかを選択して、その正の符号の基準電圧(ハイ電圧)及び負の符号の基準電圧(ロー電圧)を生成することができる。
【0102】
当該実施形態に係る記憶部15に記憶される電圧情報は、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBの一方を決定することが出来る代表値情報と、該代表値情報を用いて他方を決定することが出来る差分情報とを、含んでいればよい。ここで、代表値情報とは、例えば、順方向走査駆動用基準電圧V
comF又は逆方向走査駆動用基準電圧V
comBのいずれか一方の基準値、及び、振幅値であり、差分情報とは、順方向走査駆動用基準電圧V
comFと逆方向走査駆動用基準電圧V
comBとの差分値ΔVであってもよいし、他の電圧情報であってもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態に係る表示装置について、IPS方式の液晶表示装置であって、画素回路がコモントップ構造を有する場合について説明した。前述の通り、画素回路がコモントップ構造を有する場合は、画素回路の画素電極と、隣接するゲート信号線との間の寄生容量に起因する、画素電極の電圧変化の影響を、本発明により抑制することが出来、表示品質が向上される。しかし、IPS方式の液晶表示装置であって、画素回路が他の構造を有する場合であっても、画素回路の画素電極と、隣接するゲート信号線との間の寄生容量に起因して、画素電極に電圧変化が生じる場合に、本発明を適用することが出来る。
【0104】
IPS方式以外の駆動方式、例えば、VA(Vertically Aligned)方式やTN(Twisted Nematic)方式等の液晶表示装置や他の表示装置であっても、同様に、画素回路の画素電極と、隣接するゲート信号線との間の寄生容量に起因して、画素電極に電圧変化が生じる場合に、本発明を適用することが出来る。寄生容量に起因する場合に限定することなく、順方向走査駆動を行う場合と、逆方向走査駆動を行う場合とで、画素電極に系統的な電圧変化が生じる場合に、本発明を適用することが出来る。
図8は、VA方式及びTN方式の液晶表示装置に備えられるTFT基板102の等価回路の概念図である。VA方式及びTN方式の場合には、基準電極111がTFT基板102と対向するフィルタ基板101に設けられている。