(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一側部材に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、他側部材に設けられ該一対のブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と前記各ブラケットとに挿嵌され両者間を相対回転可能に連結する連結ピンと、該連結ピンが前記ブラケットに対して回動するのを規制する回動規制機構とを備えてなる軸受装置において、
前記回動規制機構は、
前記一対のブラケットのうち一方のブラケットの外側面に取り付けられた雌穴付きの突起と、
前記連結ピンのうち前記一方のブラケット側の端部に固着され前記連結ピンの軸線方向と交差する長手方向に延び、内側面、外側面、および幅方向の両側に端面を有する板体として形成された鍔部と、
該鍔部の内側面と外側面とに開口するように穿設され前記突起が挿通される突起挿通孔と、
前記鍔部の外側面に対面する平板部に前記突起に嵌合する嵌合孔が形成されると共に、前記鍔部の幅方向の両側の端面に当接して前記連結ピンの回動を規制する当接部が前記平板部に形成されたストッパ部材と、
該ストッパ部材の前記嵌合孔を介して前記突起の雌穴に嵌着することにより前記ストッパ部材を抜止めする抜止め部材とにより構成したことを特徴とする軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1による軸受装置では、長穴の内側面に当接する規制板片によって連結ピンの回転力を支持する構成としている。このため、連結ピンの回転力により、規制板片の端面に、長穴の内側面が当接すると、長穴の角隅部には応力が集中する。従って、鍔部の強度を確保するためには、長穴を挟んだ鍔部の幅方向の寸法を大きく設定する必要がある。一方、互いに当接する規制板片の端面と長穴の内側面との面圧を抑えるには、規制板片と長穴の長さ方向の寸法を大きく設定する必要がある。その結果、鍔部全体が大きくなり、加工・組立における不具合等の製作上の制約を受け易いという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、鍔部を大きくすることなく、連結ピンの回動を確実に規制することができる軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による軸受装置は、一側部材に設けられ互いに対面する一対のブラケットと、他側部材に設けられ該一対のブラケット間に配置されるボス部材と、該ボス部材と前記各ブラケットとに挿嵌され両者間を相対回転可能に連結する連結ピンと、該連結ピンが前記ブラケットに対して回動するのを規制する回動規制機構とを備えている。
【0008】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記回動規制機構は、前記一対のブラケットのうち一方のブラケットの外側面に取付けられた雌穴付きの突起と、前記連結ピンのうち前記一方のブラケット側の端部に固着され前記連結ピンの軸線方向と交差する
長手方向に延び
、内側面、外側面、および幅方向の両側に端面を有する板体として形成された鍔部と、該鍔部
の内側面と外側面とに開口するように穿設され前記突起が挿通される突起挿通孔と、前記鍔部
の外側面に対面する平板部に前記突起に嵌合する嵌合孔が形成されると共に
、前記鍔部の
幅方向の両側の端面に当接
して前記連結ピンの回動を規制する当接部が
前記平板部に形成されたストッパ部材と、該ストッパ部材の前記嵌合孔を介して前記突起の雌穴に嵌着することにより前記ストッパ部材を抜止めする抜止め部材とにより構成したことにある。
【0009】
請求項2の発明は、前記鍔部は、長手方向の一端側が前記連結ピンに固着され他端側に前記突起挿通孔が穿設された長方形状の
前記板体からなり、前記ストッパ部材は、前記鍔部の幅方向に延び中央部に前記嵌合孔が形成された長方形状の板体からなる前記平板部と、該平板部に互いに対面して設けられ前記鍔部を幅方向の両側から挟む一対の前記当接部とにより構成したことにある。
【0010】
請求項3の発明は、前記鍔部は、長手方向の一端側が前記連結ピンに固着され他端側に前記突起挿通孔が穿設された長方形状の
前記板体からなり、前記ストッパ部材は、前記鍔部に対面し第1の嵌合孔が形成された第1の平板部
および該第1の平板部に設けられ前記鍔部の幅方向の一側端面に当接する第1の当接
部によりL字型に形成された第1の分割ストッパ部材と、前記鍔部に対面し第2の嵌合孔が形成された第2の平板部
および該第2の平板部に設けられ前記鍔部の幅方向の他側端面に当接する第2の当接
部によりL字型に形成された第2の分割ストッパ部材とからなり、前記鍔部に前記第1の分割ストッパ部材と第2の分割ストッパ部材とを重ね合わせ、前記第1の嵌合孔と前記第2の嵌合孔を介して前記抜止め部材を前記突起の雌穴に嵌着する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ストッパ部材の当接部を鍔部の
幅方向の両側の端面に当接させることにより、連結ピンの回転力を支持することができる。このため、鍔部に設けた突起挿通孔の内側面に連結ピンの回転力が作用することがなく、突起挿通孔の角隅部に応力が集中することがない。その結果、連結ピンの回転力に対する充分な強度を確保しつつ突起挿通孔を挟んだ鍔部の幅方向の寸法を小さくすることができる。しかも、鍔部に穿設された突起挿通孔は、一方のブラケットに取付けられた突起の外周に嵌合するだけの小さな孔径とすることができるので、突起挿通孔の内側面と鍔部の端部との間の幅寸法を充分に確保することができ、鍔部の強度を高めることができる。また、ストッパ部材の当接部を、鍔部の端面にその長さ方向に渡って広く当接させることにより、連結ピンの回転力を分散させてストッパ部材の当接部に作用する面圧を低くすることができる。従って、連結ピンの回転力を確実に支持しつつ、鍔部の大きさを小さくすることができるので設計の自由度を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ストッパ部材の一対の当接部により、鍔部をその幅方向の両側から挟み込むことができる。このため、連結ピンが時計廻り及び反時計廻りのいずれの方向に回転した場合でも、当該連結ピンの回転力を一対の当接部によって確実に支持することができる。また、一対の当接部を有する単一のストッパ部材を用いて連結ピンの両方向の回転力を支持することができるので、一方のブラケットに設けた突起に対するストッパ部材の取付けも容易である。
【0013】
請求項3の発明によれば、ストッパ部材を、第1の分割ストッパ部材と第2の分割ストッパ部材との2部材に分割してL字型に形成したことにより、各分割ストッパ部材の加工が容易になり、かつ各分割ストッパ部材の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る軸受装置の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図11を参照しつつ詳細に説明する。まず、
図1ないし
図6は第1の実施の形態による軸受装置を示している。
【0016】
図中、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成され、上部旋回体3の前部側には、土砂の掘削作業等を行う作業装置4が俯仰動可能に設けられている。
【0017】
ここで、作業装置4は、基端側が上部旋回体3の前端側に回動可能にピン結合されたブーム5と、該ブーム5の先端側に回動可能にピン結合されたアーム6と、該アーム6の先端側に回動可能にピン結合されたバケット7とにより大略構成されている。そして、作業装置4のブーム5はブームシリンダ8によって駆動され、アーム6はアームシリンダ9によって駆動され、バケット7はバケットシリンダ10によって駆動される構成となっている。
【0018】
そして、一側部材としてのブーム5は、左,右方向で対面する左,右のウェブ5A(左側一方のみ図示)と、各ウェブ5Aの上端側に溶接された上フランジ板5Bと、各ウェブ5Aの下端側に溶接された下フランジ板5Cとにより強固な角筒状をなし、前,後方向に延びている。そして、左,右のウェブ5Aと上,下のフランジ板5B,5Cの先端側には、略V字型の折曲げ形状を有するエンドプレート5Dが溶接されている。
【0019】
ところで、作業装置4の各ピン結合部のうち、例えば、ブーム5の先端側とアーム6との間のピン結合部には、後述の軸受装置11が設けられており、以下、この軸受装置11について
図2ないし
図6を参照して説明する。
【0020】
11は一側部材としてのブーム5と他側部材としてのアーム6との間に設けられた軸受装置で、該軸受装置11は、ブーム5の先端側でアーム6を回動可能に支持するものである。そして、軸受装置11は、後述する左ブラケット12、右ブラケット13、アームボス14、連結ピン16、回動規制機構17等により構成されている。
【0021】
12はブーム5の先端側に設けられた左ブラケットを示している。該左ブラケット12は、厚肉な鋼板材等を用いてほぼ三角形の平板状に形成された左ブラケット本体12Aと、該左ブラケット本体12Aに溶接によって接合された左ブラケット補強板12Bとにより構成されている。
【0022】
そして、左ブラケット本体12Aは、ブーム5のエンドプレート5Dと左ウェブ5Aとに溶接によって接合されている。これにより、左ブラケット12の先端側は、エンドプレート5Dとの接合部5Eから前方に突出している。
【0023】
また、左ブラケット補強板12Bは、厚肉な鋼板材等を用いてほぼ長方形の平板状に形成され、これにより、後述の連結ピン16が挿嵌される左ブラケット12の先端側を補強し、その剛性を高めるものとしている。
【0024】
ここで、左ブラケット12の先端側には、後述の連結ピン16が挿嵌されるピン挿嵌孔12Cが穿設されている。そして、
図6に示すように、左ブラケット12(左ブラケット補強板12B)の外側面12Dには、後述する突起18が設けられている。
【0025】
13はブーム5の先端側に設けられ左ブラケット12と対面する右ブラケットを示している。該右ブラケット13も左ブラケット12と同様に、厚肉な鋼板材等を用いてほぼ三角形の平板状に形成された右ブラケット本体13Aと、該右ブラケット本体13Aに溶接によって接合された右ブラケット補強板13Bとにより構成されている。
【0026】
そして、右ブラケット本体13Aは、ブーム5のエンドプレート5Dと右ウェブ5Aとに溶接によって接合されている。これにより、右ブラケット13の先端側は、エンドプレート5Dとの接合部5Eから前方に突出している。
【0027】
また、右ブラケット補強板13Bは、厚肉な鋼板材等を用いてほぼ長方形の平板状に形成され、これにより、後述の連結ピン16が挿嵌される右ブラケット13の先端側を補強し、その剛性を高めるものとしている。ここで、右ブラケット13の先端側には、後述の連結ピン16が挿嵌されるピン挿嵌孔13Cが穿設されている。
【0028】
そして、左ブラケット12の左ブラケット本体12Aと右ブラケット13の右ブラケット本体13Aとの間には、後述のアームボス14が配置されている。一方、左ブラケット12のうちアームボス14とは反対側には、左ブラケット補強板12Bが溶接等により固着されており、同様に右ブラケット13のうちアームボス14とは反対側には、右ブラケット補強板13Bが溶接等により固着される構成となっている。
【0029】
14は他側部材となるアーム6の基端側に設けられたボス部材としてのアームボスで、該アームボス14は、左ブラケット12と右ブラケット13との間に配置されるものである。ここで、アームボス14は、左,右方向に延びる円筒状をなしている。そして、アームボス14の左,右方向の両端部内周側には、後述の連結ピン16を摺動可能に支持する円筒状のブッシュ15が嵌合して設けられている。
【0030】
16はアームボス14と左ブラケット12と右ブラケット13との間を相対回転可能に連結する連結ピンで、該連結ピン16は、
図3に示すように、アームボス14に設けられたブッシュ15と、左ブラケット12のピン挿嵌孔12C及び右ブラケット13のピン挿嵌孔13Cとに挿嵌されている。そして、連結ピン16は、ブッシュ15の内周面に常時摺接し、左ブラケット12と右ブラケット13との間にアームボス14を回転可能に支持している。また、連結ピン16の軸方向の一端側には、後述の鍔部19が固着して設けられている。
【0031】
次に、第1の実施の形態に用いられる回動規制機構17について説明する。この回動規制機構17は、左ブラケット12と連結ピン16との間に設けられ、連結ピン16を左ブラケット12と右ブラケット13とに対して回動するのを規制するものである。そして、回動規制機構17は、後述する突起18、鍔部19、ストッパ部材21、抜止め部材22等により大略構成されている。
【0032】
18は左ブラケット12の外側面12Dに取付けられた雌穴付きの突起で、該突起18は、
図6に示すように、左ブラケット12を構成する左ブラケット補強板12Bの外側面12Dに突設されている。ここで、突起18は、左ブラケット12(左ブラケット補強板12B)の外側面12Dに溶接によって固着された大径部18Aと、該大径部18Aよりも小径な小径部18Bとにより段付き円筒状に形成され、小径部18Bの内周側には雌穴としての雌ねじ部18Cが設けられている。そして、
図4及び
図5に示すように、小径部18Bの高さ寸法H1は、後述する鍔部19の厚さ寸法とストッパ部材21の平板部21Aの厚さ寸法を合計した値よりも僅かに大きく設定されている。
【0033】
19は連結ピン16のうち左ブラケット12側の端部に固着され、連結ピン16の軸線方向と交差する方向に延びる鍔部を示している。該鍔部19は、内側面19A,外側面19B,上端面19C,下端面19D,前端面19E,後端面19Fからなる長方形状の板体として形成されている。そして、鍔部19の長手方向の一端側には、ピン挿嵌孔19Gが穿設され、該ピン挿嵌孔19G内に連結ピン16の一端側を挿嵌して溶接することにより、連結ピン16の一端側に鍔部19が一体的に固着されている。また、鍔部19の長手方向の他端側には、後述する突起挿通孔20が設けられている。
【0034】
20は鍔部19に穿設され突起18が挿通される突起挿通孔を示し、該突起挿通孔20は、鍔部19を板厚方向に貫通し、突起18に対応する位置に設けられている。ここで、突起挿通孔20は、突起18の小径部18Bの外径寸法よりも僅かに大きな幅寸法を有し、鍔部19の長さ方向に延びる長孔状に形成されている。そして、左ブラケット12と右ブラケット13とアームボス14との間を連結ピン16によって連結した状態で、突起18の小径部18Bを突起挿通孔20に挿通する構成となっている。
【0035】
次に、第1の実施の形態に用いられるストッパ部材について説明する。
【0036】
21は連結ピン16の鍔部19と左ブラケット12の突起18との間に設けられたストッパ部材を示し、該ストッパ部材21は、連結ピン16の回動を規制するものである。ここで、ストッパ部材21は、鍔部19に対面し、その幅方向に延びる長方形状の板体からなる平板部21Aと、該平板部21Aの中央部に穿設され、突起18の小径部18Bに嵌合する嵌合孔21Bと、該嵌合孔21Bを挟んで平板部21Aの長さ方向の両端側に互いに対面して設けられ、鍔部19の上端面19C及び下端面19Dに当接する一対の当接部21C,21Dとにより形成されている。つまり、ストッパ部材21は、嵌合孔21Bが穿設された平板部21Aと、一対の当接部21C,21Dとにより全体としてコ字型の板体として形成されている。
【0037】
そして、ストッパ部材21の平板部21Aを鍔部19の外側面19Bに当接させた状態で、ストッパ部21の当接部21Cを鍔部19の上端面19Cに当接させ、ストッパ部21の当接部21Dを鍔部19の下端面19Dに当接させることにより、これら一対の当接部21C,21Dによって、鍔部19を幅方向の両側から挟み込むようになっている。これにより、連結ピン16が左,右のブラケット12,13に対して回転したときに、鍔部19の上端面19Cと下端面19Dとが、ストッパ部材21の当接部21C,21Dに当接することにより、連結ピン16の回動が規制されることになる。
【0038】
22はストッパ部材21の嵌合孔21Bを介して突起18の雌穴(雌ねじ部18C)に嵌着される抜止め部材を示し、該抜止め部材22は、ストッパ部材21を抜止めするものである。ここで、抜止め部材22は、ストッパ部材21の嵌合孔21Bよりも大径な円板状をなし、中心部にボルト挿通孔22A1が穿設された押え板22Aと、押え板22Aのボルト挿通孔22A1を通じて突起18の雌ねじ部18Cに螺合され、ストッパ部材21を突起18の小径部18Bに対して抜止めする取付ボルト22Bとにより構成されている。そして、
図4ないし
図6に示すように、押え板22Aをストッパ部材21の平板部21Aに当接させた状態で、取付ボルト22Bの軸部を押え板22Aのボルト挿通孔22A1に挿通し、突起18の雌ねじ部18Cに螺合することにより、押え板22Aが、突起18(小径部18B)の突出端部に固定される。これにより、ストッパ部材21と連結ピン16を軸方向に抜止めすることができる構成となっている。
【0039】
第1の実施の形態による軸受装置11は上述の如き構成を有するもので、この軸受装置11によってブーム5の先端側にアーム6を取付ける場合について説明する。
【0040】
まず、ブーム5の先端側に設けた左ブラケット12と右ブラケット13との間に、アーム6に設けられたアームボス14を配置する。
【0041】
次に、一端側に鍔部19が固着された連結ピン16の他端側を、左ブラケット12のピン挿嵌孔12Cから、アームボス14の各ブッシュ15、右ブラケット13のピン挿嵌孔13Cへと挿嵌する。そして、左ブラケット12(左ブラケット補強板12B)の外側面12Dに設けた突起18の小径部18Bに、鍔部19に設けられた突起挿通孔20を挿通させる。
【0042】
次に、ストッパ部材21の嵌合孔21Bを突起18の小径部18Bに嵌合させつつ、ストッパ部材21の一対の当接部21C,21Dによって鍔部19を幅方向両側から挟み込むようにして、ストッパ部材21の平板部21Aを鍔部19の外側面19Bに当接させる。
【0043】
そして、押え板22Aのボルト挿通孔22A1に取付ボルト22Bを挿通し、この取付ボルト22Bを突起18の雌ねじ部18Cに螺合させることにより、突起18(小径部18B)の突出端部に押え板22Aを固定する。
【0044】
このようにして、ブーム5の先端側に設けた左ブラケット12と右ブラケット13と、アーム6に設けたアームボス14との間を、連結ピン16を介して回転可能に連結することができる。
【0045】
このとき、ブーム5に対してアーム6が回動すると、連結ピン16に対し、その軸線廻りに回動しようとする力(回転力)が作用する。これに対し、第1の実施の形態では、ストッパ部材21に設けた各当接部21C,21Dが鍔部19の端面に当接することにより、連結ピン16の軸線廻りの回動を規制することができる。具体的には、ストッパ部材21の当接部21Cが鍔部19の上端面19Cに当接することにより、連結ピン16の反時計方向の回動を規制することができる。一方、ストッパ部材21の当接部21Dが鍔部19の下端面19Dに当接することにより、連結ピン16の時計方向の回動を規制することができる。
【0046】
かくして、第1の実施の形態によれば、連結ピン16の鍔部19を幅方向の両側から挟む一対の当接部21C,21Dが設けられたストッパ部材21を用い、連結ピン16が軸線廻りに回動しようとする力(回転力)を、当接部21C,21Dが、鍔部19の端面(上端面19C及び下端面19D)に当接することにより支持している。このため、鍔部19に穿設した突起挿通孔20の内側面に連結ピン16の回転力が作用することがなく、突起挿通孔20の角隅部に応力が集中することもない。また、鍔部19に設けられた突起挿通孔20を、突起18の小径部18Bが嵌合するだけの小さな孔径に形成することができる。その結果、鍔部19に設けられた突起挿通孔20の内側面と鍔部19の上端面19Cとの間の幅寸法L1を小さく設定し、同様に突起挿通孔20の内側面と鍔部19の下端面19Dとの間の幅寸法L2を小さく設定することができる。これにより、連結ピン16の回転力に対する充分な強度を確保しつつ、鍔部19の幅寸法Lを小さくすることができ、鍔部19の小型化を図ることができるので、設計の自由度を高めることができる。
【0047】
次に、
図7及び
図8は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ストッパ部材を第1の分割ストッパ部材と、第2の分割ストッパ部材とに分割形成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0048】
31は第1の実施の形態による突起18に代えて用いられる突起31を示している。該突起31は、第1の実施の形態による突起18と同様に左ブラケット12(左ブラケット補強板12B)の外側面12Dに溶接によって固着された大径部31Aと、該大径部31Aよりも小径な小径部31Bとにより段付き円筒状に形成され、小径部31Bの内周側には雌穴としての雌ねじ部31Cが設けられている。そして、
図8に示すように、小径部31Bの高さ寸法H2は、第1の実施の形態による突起18の小径部18Bの高さ寸法H1よりも大きく、鍔部19と、後述する第1の分割ストッパ部材32と、第2の分割ストッパ部材33の厚さ寸法を合計した値よりも僅かに大きく設定されている。
【0049】
32は第1の実施の形態によるストッパ部材21に代えて用いられる第1の分割ストッパ部材を示している。該第1の分割ストッパ部材32は、鍔部19の外側面19Bと対面する長方形状の第1の平板部32Aと、該第1の平板部32Aに穿設された第1の嵌合孔32Bと、第1の平板部32Aの長手方向の上端側から鍔部19側に向けて屈曲し、鍔部19の幅方向の一側端面(上端面19C)に当接する第1の当接部32Cとにより形成されている。このように、第1の分割ストッパ部材32は、第1の平板部32Aと第1の当接部32CとによりL字型の板体として形成されている。
【0050】
33は第1の実施の形態によるストッパ部材21に代えて用いられる第2の分割ストッパ部材を示している。該第2の分割ストッパ部材33は、鍔部19の外側面19Bと対面する長方形状の第2の平板部33Aと、該第2の平板部33Aに穿設された第2の嵌合孔33Bと、第2の平板部33Aの長手方向の下端側から鍔部19側に向けて屈曲し、鍔部19の幅方向の他側端面(下端面19D)に当接する第2の当接部33Cとにより形成されている。このように、第2の分割ストッパ部材33は、第2の平板部33Aと第2の当接部33CとによりL字型の板体として形成されている。
【0051】
34は第1の分割ストッパ部材32の第1の嵌合孔32Bと第2の分割ストッパ部材33の第2の嵌合孔33Bを介して突起31の雌穴(雌ねじ部31C)に嵌着される抜止め部材を示している。この抜止め部材34は、第1の分割ストッパ部材32と第2の分割ストッパ部材33を抜止めするものである。ここで、抜止め部材34は、第1の嵌合孔32B及び第2の嵌合孔33Bよりも大径な円板状をなし、中心部にボルト挿通孔34A1が穿設された押え板34Aと、押え板34Aのボルト挿通孔34A1を通じて突起31の雌ねじ部31Cに螺合され、第1の分割ストッパ部材32と第2の分割ストッパ部材33を突起31の小径部31Bに対して抜止めする取付ボルト34Bとにより構成されている。
【0052】
このように分割形成された第1の分割ストッパ部材32と第2の分割ストッパ部材33を用いる場合には、第1の分割ストッパ部材32の第1の平板部32Aと、第2の分割ストッパ部材33の第2の平板部33Aとを鍔部19に重ね合わせる。この状態で、抜止め部材34の押え板34Aのボルト挿通孔34A1に取付ボルト34Bを挿通し、この取付ボルト34Bを、突起31の雌ねじ部31Cに嵌合させて取付ける。このとき、第1の分割ストッパ部材32の第1の当接部32Cを鍔部19の幅方向の一側端面(上端面19C)に当接させる。これにより、第1の分割ストッパ部材32は、連結ピン16の反時計廻りの回動を規制するものとして構成されている。
【0053】
一方、第2の分割ストッパ部材33の第2の当接部33Cを鍔部19の幅方向の他側端面(下端面19D)に当接させる。これにより、第2の分割ストッパ部材33は、連結ピン16の時計廻りの回動を規制するものとして構成されている。
【0054】
第2の実施の形態による回動規制機構は、第1の分割ストッパ部材32と第2の分割ストッパ部材33との2部材からなるストッパ部材を用いたもので、その基本的作用については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0055】
然るに、第2の実施の形態によれば、ストッパ部材を構成する第1の分割ストッパ部材32と第2の分割ストッパ部材33とをL字型の板体として構成することができる。このため、これら第1,第2の分割ストッパ部材32,33の加工が容易となり製造時の作業性を高めることができる。
【0056】
次に、
図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ストッパ部材の当接部を、鍔部の上端面、下端面、及び後端面を取り囲むように設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
41は第1の実施の形態によるストッパ部材21に代えて用いられるストッパ部材を示している。該ストッパ部材41は、鍔部19のうち突起挿通孔20が設けられた領域に対面する平板部41Aと該平板部41Aの中央部に穿設され、突起18の小径部18Bに嵌合する嵌合孔41Bと、平板部41Aから鍔部19に向けて突出する当接部41C,41D,41Eとにより構成されている。ここで、当接部41Cは鍔部19の上端面19Cに当接し、当接部41Dは鍔部19の下端面19Dに当接するものである。また、当接部41Eは、当接部41C,41D間を連結する円弧状の当接部となり、鍔部19の後端面19Fに当接するものである。
【0058】
そして、ストッパ部材41の平板部41Aを鍔部19の外側面19Bに対面させ、嵌合孔41Bを突起18の小径部18Bに嵌合させた状態で、抜止め部材22の押え板22Aに挿通した取付ボルト22Bを、突起18の雌ねじ部18Cに螺合する。これにより、当接部41Cが鍔部19の上端面19Cに当接し、当接部41Dが鍔部19の下端面19Dに当接すると共に、当接部41Eが鍔部19の後端面19Fと当接する。このように、ストッパ部材41は、鍔部19の外側面19Bの突起挿通孔20側を覆い被せるように取付けられるものである。
【0059】
第3の実施の形態による回動規制機構は、上述の如きストッパ部材41を用いたもので、その基本的作用については第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0060】
然るに、第3の実施の形態によれば、連結ピン16の回転力を支持するストッパ部材41の当接部41C,41D,41Eが鍔部19の上端面19C,下端面19D,後端面19Fに連続して当接していることから、連結ピン16の回転力を支持する接触面積を広く確保することができる。これにより、連結ピン16の回転力を分散させることができるので、鍔部19の各端面19C,19D,19Fとストッパ部材41の各当接部41C,41D,41Eとの間の面圧を低く抑えることができ、ひいては鍔部19の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、上述した第1の実施の形態では、鍔部19を連結ピン16の軸線方向と交差する方向に延びる略長方形状の板体として形成されたものを例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図10に示す第1の変形例の鍔部51のように、突起挿通孔51Aを挟む幅方向の寸法を小さく形成してもよい。この場合には、鍔部51の小型化のみならず、該鍔部51を廻止めするストッパ部材52の小型化も図ることができるので、設計の自由度を一層高めることができる。
【0062】
また、上述した第1の実施の形態では、油圧ショベル1の作業装置4を構成するブーム5とアーム6とのピン結合部に用いた軸受装置11を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図11に示す第2の変形例のように、上部旋回体3のベースとなる旋回フレームの左,右の縦板3A,3Bとブーム5とのピン結合部に用いてもよい。また、アーム6とバケット7とのピン結合部等、2部材間を回動可能に連結するピン結合部に広く適用することができるものである。これら第1の変形例及び第2の変形例は、第2の実施の形態及び第3の実施の形態についても同様である。
【0063】
また、第1の実施の形態では、抜止め部材22を押え板22Aと取付ボルト22Bとにより構成している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば取付ボルト22Bに押え板22Aを一体的に設けたものや、押え板22Aを用いずに取付ボルト22Bの頭部の外径をストッパ部材21の嵌合孔21Bの直径よりも大きくしてストッパ部材21を固定させてもよい。このことは、第2の実施の形態及び第3の実施の形態についても同様である。
【0064】
さらに、各実施の形態では、建設機械として、油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の油圧ショベルやクレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。