特許第5679228号(P5679228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679228
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】油圧ダンパ油量検査装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20150212BHJP
   F16F 9/43 20060101ALI20150212BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   F16F9/34
   F16F9/43
   F16F9/20
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-182428(P2012-182428)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-40854(P2014-40854A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233239
【氏名又は名称】日立機材株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072467(JP,A)
【文献】 特開2013−072468(JP,A)
【文献】 特開2005−120777(JP,A)
【文献】 実開昭54−184165(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ダンパのシリンダに係合する係合部と、
油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁をシリンダ内に押し込める押圧部材と、
油圧ダンパから取り出した作動油を収納する油タンクを有する油圧ダンパ油量検査装置。
【請求項2】
前記油タンクに圧力機構を設けた請求項1に記載の油圧ダンパ油量検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物等の構造物に取り付けられ、地震等の外力により構造物に発生する運動エネルギーを作動油の熱エネルギーに変換して吸収する油圧ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ダンパには、例えば図8に示すようなものがあった。
【0003】
この従来の油圧ダンパ50は、両端を閉止された円筒状のシリンダ60と、このシリンダ60の内部に収納されて、作動油が充填された第1油室62、第2油室64をその両側に形成するピストン66とを備えていた。
【0004】
このピストン66は、その両端面66a、66bから軸線方向(図8中左右方向)の外側に伸びた2つのピストンロッド68、70を有しており、これらのピストンロッド68、70は、シリンダ60の両端面60a、60bから軸線方向の外側にそれぞれの先端部が突出していた。そして、ピストンロッド70の先端部は、シリンダ60の端面60bからその軸線方向の外側に延長する延長部材72の内部空間に収容されていた。
【0005】
そして、従来の油圧ダンパ50には、そのピストン66の中実内部の第1油室62、第2油室64間を連通する油路66c、66dの途中に、第1油室62、第2油室64間の作動油の流動状態を制御する油圧弁78、80が設けられていた。ピストンロッド70の内部空間には、第1油室62、第2油室64内の作動油の膨張、収縮を吸収して油圧ダンパ50を安定して動作させるアキュムレータ82が備え付けられていた。
【0006】
このアキュムレータ82は、ピストンロッド70の内部空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン86と、2つの空間の一方に形成され、シリンダ60内の第1油室62、第2油室64に連通するアキュムレータ油室84と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン86をアキュムレータ油室84に向けて押圧するバネ88と、アキュムレータピストン86の軸線部にその基端部が一体的に形成されて、その先端部がピストンロッド70の軸孔70aを通って、ピストンロッド70の先端面70bから外部に突出している棒状部材90とにより構成されていた。
【0007】
上記ピストンロッド70の先端部の軸孔70aから外部に突出した棒状部材90先端部の、ピストンロッド70の先端面70bからの突出長さ寸法の変化を視認できるようにするため、延長部材72にはその内部の棒状部材90先端部の突出長さを覗くための貫通孔72aが形成されていた。
【0008】
そして、油圧ダンパ50全体の作動油の油量は、アキュムレータ82のアキュムレータ油室84内の作動油を介して、ピストンロッド70の先端面70bから外部に突出した棒状部材90先端部の突出長さ寸法の変化によって検査することができるようになっていた(特許文献1参照)。
【0009】
このような従来の油圧ダンパ50によれば、作業者が延長部材72の貫通孔72aを覗き込み、ピストンロッド70の先端部から外部に突出した棒状部材90先端部の突出長さ寸法の変化を検査することにより、油圧ダンパ50全体の作動油の油量の変化を外部から認識することができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-36677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の油圧ダンパ50においては、アキュムレータピストン86に棒状部材90を設けるため、延長部材72が長くなり高コスト化を招くという問題があった。そして、作業者が延長部材72の貫通孔72aを覗き込むことにより、棒状部材90先端部の突出長さ寸法の変化を視認していたため、その視認作業が煩雑であり、労力や時間、費用が掛かるという問題があった。
【0012】
また、従来の油圧ダンパ50においては、延長部材に作業者が棒状部材90を視認するための比較的大きい貫通孔72aを設けるため、貫通孔72aから雨水や埃が浸入し、雨水や埃が付着したピストンロッド70とシリンダ60の端面60bの摺動により、油圧ダンパ50に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、油圧ダンパにおいて、アキュムレータピストンに棒状部材を設けないことにより高コスト化を防止し、延長部材に棒状部材を視認するための比較的大きい貫通孔72aを設けずにすむことにより延長部材内への雨水や埃の浸入を低減することができ、また、作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の油量の変化を外部から容易に認識することができる油量検査装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による油量検査装置は、
油圧ダンパのシリンダに係合する係合部と、
油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁の弁体をシリンダ内に押し込める押圧部材を備え、
油量検査時に油量検査装置の係合部を油圧ダンパのシリンダに設けられる被係合部に係合し、
油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁の弁体をシリンダ内に押し込み、アキュムレータ内の作動油の量に相当する量の作動油を取り出して、油圧ダンパ全体の作動油の油量を把握することができるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明の油量検査装置によれば、
油圧ダンパのシリンダに係合する係合部と、
油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁の弁体をシリンダ内に押し込める押圧部材を備え、
油量検査時に油量検査装置の係合部を油圧ダンパのシリンダに設けられる被係合部に係合し、
油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁の弁体をシリンダ内に押し込み、アキュムレータ内の作動油の量に相当する量の作動油を取り出して、油圧ダンパ全体の作動油の油量を把握することができるようにしたことにより、油圧ダンパにおいて、アキュムレータピストンに棒状部材を設けないことにより高コスト化を防止し、延長部材に棒状部材を視認するための比較的大きい貫通孔72aを設けずにすむことにより延長部材内への雨水や埃の浸入を低減することができ、また、作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ダンパ油量検査装置の全体図である。
図2】本発明の実施の形態に係る油圧ダンパ油量検査装置のブロック部を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る油圧ダンパ油量検査装置のブロック部を油量検査時に油圧ダンパに取付けた状態を示す図である。
図4】油量検査時にブロック部の押圧部材で油圧ダンパのチェック弁の弁部を押し込んだ状態を示す図である。
図5】油圧ダンパのシリンダに設けられるチェック弁を示す図である。
図6】アキュムレータピストンに棒状部材を設けず、延長部材に貫通孔を設けない油圧ダンパを示す図である。
図7】アキュムレータピストンに棒状部材を設けず、延長部材に貫通孔を設けない油圧ダンパから、油量検査時において、アキュムレータ内の油量に相当する量の作動油を、油圧ダンパ外に取り出した状態の油圧ダンパを示す図である。
図8】従来の油圧ダンパの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る油圧ダンパ油量検査装置を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0018】
図1から図2は、本発明の実施の形態に係る油圧ダンパ油量検査装置2の構成について説明するために参照する図である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る油圧ダンパ油量検査装置2は、図1のように、主に、ブロック部4、ホース14、油タンク16から構成される。
【0020】
ブロック部4は、図2に示すように、油圧ダンパのシリンダに係合する係合部10を有するブロック6と、ブロック6の中心部にネジ結合されている押圧部材8で構成される。
【0021】
ブロック6と押圧部材8の間には油路12が設けられ、油路12はブロック部4のブロック6の外周に設けられるホース連通孔13まで連通している。
【0022】
ホース連通孔13にはホース14の一端が取付けられ、ホース14の他端は油タンク16につながれている。
【0023】
油タンク16は、円筒状のタンク胴体18と、底板部20を有し、タンク胴体18内にはピストン22が設けられており、内部に油を収納することができる。
【0024】
そして、ピストン22には、ピストン22をタンク胴体18内に押し引きできるように、圧力機構24が取り付けられている。
【0025】
次に、油量の検査方法について説明する。
【0026】
油圧ダンパ40には、図5に示すようなチェック弁30がシリンダ60の外周に設けられている。チェック弁30の弁体34は、バネ36に付勢され、油圧ダンパ40の外側へ向け押し付けられており、通常時は油圧ダンパ40内の作動油が外に出ないようになっている。
【0027】
そして、油圧ダンパ40のシリンダ60の外周のチェック弁30が設けられる箇所には、油圧ダンパ油量検査装置2のブロック6の係合部10が係合する被係合部32が設けられている。
【0028】
油量検査時には、まず、図3のように、ブロック6の係合部10を油圧ダンパ40に設けられている被係合部32にねじ込んで固定する。そして、ブロック6の中心部にネジ結合されている押圧部材8を油圧ダンパ40内部に向けてねじ込んでいく。油圧ダンパ40内は、アキュムレータ82のバネ88によりアキュムレータピストン86が押し付けられていることにより大気圧よりも高い圧力状態になっているので、油圧ダンパ油量検査装置2のブロック6の中心部にネジ結合されている押圧部材8により油圧ダンパ40のチェック弁30の弁体34がシリンダ内に押し込まれ、図4のようにチェック弁30が開くと、アキュムレータピストン86がバネ88によって押されることにより、油圧ダンパ40内の作動油が油圧ダンパ油量検査装置2の油タンク16へと流出する。
そして、アキュムレータピストン86がバネ88に押されることにより、図6に示すような状態から、アキュムレータ82内の作動油がなくなる状態、すなわち、図7に示すような状態になるので、アキュムレータ82内に入っていた作動油の油量と同量の作動油を、油圧ダンパ40から油圧ダンパ油量検査装置2の油タンク16に取り出し測定することができる。
【0029】
油圧ダンパ40の第1油室62、第2油室64には常に作動油が満たされているので、アキュムレータ82内の作動油の油量を測定すれば油圧ダンパ40全体の作動油の油量の変化を把握することができる。
【0030】
なお、アキュムレータ86をアキュムレータ油室84に向けて押圧するバネ88の力が弱い場合、油圧ダンパ油量検査装置2のピストン22に設けられた圧力機構24により、ピストン22を引っ張ることによって、アキュムレータ86内の作動油の量に相当する量の作動油を油圧ダンパ40内から取り出すこともできる。
【0031】
以上のように、本実施の形態の油圧ダンパ油量検査装置を用いることにより、油圧ダンパにおいて、アキュムレータピストンに棒状部材を設けないことにより高コスト化を防止し、延長部材に棒状部材を視認するための比較的大きい貫通孔を設けずにすむことにより延長部材内への雨水や埃の浸入を低減することができ、また、作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【0032】
油量検査後は、油圧ダンパ油量検査装置2の押圧部材8で、チェック弁30を開き、油タンク16に設けられている圧力機構24により、ピストン22を押し込んで作動油を流し込むことにより、適当な量の作動油を油圧ダンパ40内に戻すことができる。すなわち、油量検査により、作動油が減少していなければ取り出した作動油と同量の作動油を、作動油が減少していれば減少した量を加えた作動油を、油圧ダンパ40内に戻すことができる。
【符号の説明】
【0033】
2 油圧ダンパ油量検査装置
4 ブロック部
6 ブロック
8 押圧部材
10 係合部
12 油路
13 ホース連通孔
14 ホース
16 油タンク
18 タンク胴体
20 底板部
22 ピストン
24 圧力機構
30 チェック弁
32 被係合部
34 弁体
36 バネ
40 油圧ダンパ
50 油圧ダンパ
60 シリンダ
60a 端面
60b 端面
62 第1油室
64 第2油室
66 ピストン
66a 端面
66b 端面
66c 油路
66d 油路
68 ピストンロッド
70 ピストンロッド
70a 軸孔
70b 先端面
72 延長部材
72a 貫通孔
78 リリーフ弁
80 リリーフ弁
82 アキュムレータ
84 アキュムレータ油室
86 アキュムレータピストン
88 バネ
90 棒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8