(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3に示されるヒートポンプシステムを利用した暖房方法では、圧縮機の稼動により高温高圧化された熱交換媒体が前記暖房用のサブコンデンサ等の室内熱交換器を通過する際に、この熱交換媒体の熱を、空気通路内を流れる空気に放熱することにより、当該空気通路内を流れる空気を暖めるものとなっている。
【0006】
この場合に、室内熱交換器を通過する空気の暖房能力を向上させるには、室内熱交換器を通過する熱交換媒体に対し、より多くのエネルギーを投入すれば良いので、室内熱交換器を通過する前の熱交換媒体を何らかの手段により加温する手法等が考えられるが、この手法では熱交換媒体の加温のための新たなエネルギーが必要となるので、近年における車両の省動力化の要請に反するという不具合が生ずる。
【0007】
そこで、本発明は、
車両空調用ヒートポンプシステムの既存のエネルギーとして暖房運転時にコンプレッサから発する熱に着目して、コンプレッサから発する熱を逃がさないことで熱交換媒体により多くのエネルギーを投入し、暖房能力を向上することができる
車両空調用ヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る
車両空調用ヒートポンプシステムは、少なくとも、熱交換媒体を吸引して圧縮して吐出するコンプレッサと、
車室内空間に配置された空気通路内に収納される室内熱交換器と、
車室外域に配置される室外熱交換器と、膨張装置とを適宜配管接合すると共に、前記コンプレッサから吐出された相対的に高温の熱交換媒体を、暖房運転時には前記室内熱交換器に送り、冷房運転時には前記室外熱交換器に送るように、熱交換媒体の流方向を切換可能な切換手段を有し、
前記室外熱交換器は室外送風機を有する車両空調用ヒートポンプシステムにおいて、
断熱性を有し、前記車室外域に配置されるコンプレッサ収納用構造体を備え、前記コンプレッサ収納用構造体は、このコンプレッサ収納用構造体内に空気を流入させるための空気吸込用開口部と、前記コンプレッサ収納用構造体内から空気を流出させるための空気吐出用開口部とを有すると共に、前記空気吸込用開口部の開口が前記室外送風機の下流側に位置しており、前記コンプレッサを、
前記コンプレッサ収納用構造体に収納し、このコンプレッサ収納用構造体を一時的に密封状態として、前記コンプレッサの周囲の空気を前記コンプレッサ収納用構造体内に滞留可能とすることにより、前記コンプレッサの発した熱が前記コンプレッサの周囲の空気に蓄熱されるようにしたことを特徴としている(請求項1)
。車室外域は、内燃機関を有する車両のエンジンルームの領域、或いは車両外部領域に相当する。熱交換媒体とは、例えばフロン系冷媒やCO2冷媒等の冷媒を言う。切換手段とは、例えば方向切換弁を言う。
【0009】
これにより、暖房運転時においては、コンプレッサを、断熱性を有するコンプレッサ収納用構造体で密封状態とすることにより、コンプレッサの周囲の空気は、コンプレッサ収納用構造体内、より具体的には、コンプレッサとコンプレッサ収納用構造体との間の空間に滞在するので、コンプレッサの表面から発する熱がコンプレッサから離れる方向に逃げずにコンプレッサの周囲の空気に蓄熱され、このコンプレッサの周囲の空気の温度が相対的に高くなることで、コンプレッサの表面が保温されて、コンプレッサから吐出される熱交換媒体の温度が相対的に上昇することとなる。
更に、空気吸込用開口部の開口を室外送風機の下流側に位置させることにより、自動車が走行していなくても、室外送風機の駆動により空気吸込用開口部からコンプレッサ収納用構造体内への空気の取り込みを可能にしている。
【0010】
そして、この発明に係る
車両空調用ヒートポンプシステムにあっては、前記コンプレッサ収納用構造体
は、前記空気吸込用開口部と前記空気吐出用開口部とを開閉する開閉手段を備え、これらの開閉手段で前記空気吸込用開口部と前記空気吐出用開口部との双方を閉塞することにより、前記コンプレッサ収納用構造体を密封状態とすることを特徴としている(請求項2)。開閉手段としては、例えばバタフライ型のドアや、複数の回転可能なブレードが一列に並んだシャッター等が挙げられる。
【0011】
これにより、開閉手段により暖房運転時にはコンプレッサ収納用構造体の開口部を密閉すると共にそれ以外の運転時(例えば冷房運転時)にはコンプレッサ収納用構造体の開口部を開放してこのコンプレッサ収納用構造体に収納されたコンプレッサに対してコンプレッサ収納用構造体を通過する空気により冷却する等の運用も可能となる。
【0012】
更に、この発明に係る
車両空調用ヒートポンプシステムにあっては、前記
車両空調用ヒートポンプシステムは更に室内冷却用熱交換器を備え、この室内冷却用熱交換器は、インペラと共に前記空気通路内に収納されると共に前記インペラよりも前記空気通路の風下側に配置され、前記空気吐出用開口部は、前記空気通路の前記インペラよりも風上側と接続される第1の開口部と、前記
車室外域に開口する第2の開口部とから成っており、前記第1の開口部を開閉する開閉手段と、前記第2の開口部を開閉する開閉手段とは、個別に開口部を開閉することが可能であることを特徴としている(請求項3)。
【0013】
これにより、暖房運転の初期時においては、コンプレッサ収納用構造体内のコンプレッサで加温された空気を空気吐出用開口部の第1の開口部からHVACユニットの空気通路に送り込み、HVACユニットの暖房能力を向上させることができると共に、冷却用熱交換器に加温された空気が送り込まれることで、室内冷却用熱交換器の凍結を防止し、ヒートポンプシステム自体が停止するのを防止することができる。更に、冷房運転時においては、コンプレッサ収納用構造体内のコンプレッサで加温された空気を空気吐出用開口部の第2の開口部から室内空間以外の領域に排出することで、HVACユニットへの熱の流入を防止し、冷房能力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、暖房運転時においては、断熱性を有するコンプレッサ収納用構造体でコンプレッサを密封状態とすることにより、コンプレッサの周囲の空気がコンプレッサとコンプレッサ収納用構造体との間の空間に滞在するので、コンプレッサの表面から発する熱が外部に逃げずにコンプレッサの周囲の空気に蓄熱され、これに伴い、コンプレッサの周囲の空気の温度が相対的に高くなることで、コンプレッサの表面が保温されて、このコンプレッサから吐出される熱交換媒体の温度も相対的に高めることが可能となる。
これにより、暖房運転時に熱交換媒体を加温するための新たなエネルギーの投入をしなくても、暖房能力を向上することができる。
更に、この発明によれば、空気吸込用開口部の開口が室外送風機の下流側に位置しているので、自動車が走行していなくても、室外送風機の駆動により空気吸込用開口部からコンプレッサ収納用構造体内への空気の取り込みが可能になっている。
【0015】
特に請求項2に記載の発明によれば、暖房運転時には開閉手段により空気吸込用吸引開口部と空気吐出用開口部との双方を確実に閉塞して、コンプレッサ収納用構造体を密閉する一方で、暖房運転以外の運転時(例えば冷房運転時)にはコンプレッサ収納用構造体の空気吸込用吸引開口部と空気吐出用開口部の双方を開放することによって、コンプレッサ収納用構造体に収納されたコンプレッサに対してコンプレッサ収納用構造体を通過する空気により冷却することが可能となるので、コンプレッサ収納用構造体を備えても冷房能力が低下することがない。
【0016】
特に請求項3に記載の発明によれば、暖房運転の初期時においては、コンプレッサ収納用構造体内のコンプレッサで加温された空気をHVACユニットに送り込み、HVACユニットの暖房運転初期時の暖房能力を向上させることができると共に、室内冷却用熱交換器が凍結するのをコンプレッサから発する空気を暖めて成る暖気で防止することができる。そして、冷房運転時においては、コンプレッサ収納用構造体内のコンプレッサで加温された空気を排気用開口部から室内空間以外の領域に排出することにより、HVACユニットの空気通路に温風が混入することによる冷房能力の低下を抑制することができる。よって、HVACユニットの空調性能とヒートポンプサイクルの稼動安定性とを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1から
図3において、HVACユニット3とヒートポンプシステム2とを備えた空調装置1の実施例の一例(実施例1)が示されている。
【0020】
この空調装置1は、例えば電気自動車、ハイブリッド型の自動車等に用いられるもので、HVACユニット3は、車室外域と車室内空間とを仕切るファイヤーボード(図示せず。)よりも車室内空間側に配されており、内部に空気通路4が形成されたケース5に、後述するヒートポンプシステム2の一部を構成する室内熱交換器6が立設して収納され、室内熱交換器6に対して空気通路4の空気の上流側に送風機7が配されている。この送風機7は、インペラ8とこれを駆動するファンモータ9とで構成されている。
【0021】
そして、送風機7よりも更に空気通路4の空気の上流側にインテーク装置11が配置されており、このインテーク装置11は、送風機7の回転により、インテーク装置11のインテークドア12の位置(開度)に応じて内気又は外気が外気導入口13又は内気導入口14から導入されるようになっている。
【0022】
また、空気通路4の最下流側には、図示しないフロントガラスに向けて空気を吹き出すデフロスト開口部15、車室内空間の上方へ空気を吹き出すベント開口部16、車室内空間の下方へ空気を吹き出すフット開口部17が形成されており、それぞれの開口部15、16、17の開度は、対応する開口部15、16、17の手前側に設けられたモードドア18、19、20によって調節される。すなわち、デフロスト開口部15のみが開放されるデフロストモード、ベント開口部16のみが開放されるベントモード、フット開口部17のみが開放されるフットモード、デフロスト開口部15とフット開口部17とが開放されるデフフットモード、ベント開口部16とフット開口部17とが開放されるバイレベルモードとの切り換えが行われる。
【0023】
この実施例1に係るヒートポンプシステム2は、室内熱交換器6によって車室内空間の冷房と暖房との双方を行うもので、HVACユニット3の空気通路4内に配置された室内熱交換器6の他に、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24、及び熱交換媒体の流れる方向を切り換える方向切換弁25を有して構成されていると共に、室内熱交換器6、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24及び方向切換弁25は、配管26に適宜に接合連結されて、フロン系冷媒やCO
2冷媒等の熱交換媒体が後述する暖房運転時における第1の熱交換媒体循環経路又は冷房運転時における第2の熱交換媒体循環経路で巡るようになっている。
【0024】
室外熱交換器22は、車室外域に配置されて、車室外域の空気(大気)と熱交換媒体との熱交換を行うもので、モータとこのモータに回転軸で回動自在に連結されたインペラとから成る室外送風機28を有していると共に車両の走行時に車両前方から送られて来る風の当たる位置に設置されている。
また、コンプレッサ23も、車室外域に配置されているもので、図示しない電気モータにより駆動して熱交換媒体を吸引し、圧縮して、吐出するようになっている。但し、コンプレッサ23は、ハイブリッド型の自動車では、車両エンジン等の内燃機関を動力源とするものであっても良い。
更に、膨張装置24は、室内熱交換器6と室外熱交換器22との間に配置されて、一方の熱交換器から他方の熱交換器に送られる熱交換媒体を減圧膨張させるためのもので、その構成としては、室内熱交換器6と一体に連結されたブロック型の膨張弁や、キャピラリーチューブ等が挙げられる。
そして、方向切換弁25は、この実施例1では、
図2及び
図3に示されるように、室外熱交換器22からコンプレッサ23に直接的に熱交換媒体が流れ、コンプレッサ23から室内熱交換器6に直接的に熱交換媒体が流れる第1の熱交換媒体循環経路と、室内熱交換器6からコンプレッサ23に直接的に熱交換媒体が流れ、コンプレッサ23から室外熱交換器22に直接的に熱交換媒体が流れる第2の熱交換媒体循環経路との切り換えを可能とするものである。そして、この方向切換弁25の切換は、
図1に示されるアクチュエータ29により行われる。
【0025】
このような構成のヒートポンプシステム2とすることにより、暖房運転時には、方向切換弁25に対し
図2に示されるように第1の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された高温高圧の熱交換媒体は、まず室内熱交換器6に流れることにより室内熱交換器6を加熱器として機能させ、空気通路4を流れる空気と熱交換を行って空気を加熱した後、膨張装置24、室外熱交換器22、方向切換弁25、コンプレッサ23の順に流れる。また、冷房運転時には、方向切換弁25に対し
図3に示されるように第2の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された熱交換媒体は、まず室外熱交換器22に流れることにより室外熱交換器22で冷却されてから、膨張装置24を経て室内熱交換器6に送られることで、室内熱交換器6を冷却器として機能させ、空気通路4を流れる空気と熱交換を行って空気を冷却した後、方向切換弁25、コンプレッサ23の順に流れる。
【0026】
ところで、この実施例1に係るヒートポンプシステム2は、コンプレッサ収納用構造体30内にコンプレッサ23が収納されており、コンプレッサ収納用構造体30は、車室外域から空気を吸い込むための空気吸込用開口部31と空気を車室外域に吐出するための空気吐出用開口部32とを有している。この空気吸込用開口部31は、室外熱交換器22の空気の下流側に開口しており、自動車が走行していなくても、室外熱交換器22に併設された室外送風機28の駆動により空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内への空気の取り込みを可能としている。尚、コンプレッサ収納用構造体30の内部形状及びその容積は、コンプレッサ23とその内壁との間隔が相対的に小さくなるものであれば特に限定されない。また、コンプレッサ収納用構造体30の素材は、断熱性が高い材料(熱伝導性が低い材料)が望ましいが、車両用部品として要求される耐熱性、耐振性、強度、規制材料でないこと、コスト等を同時に満たす必要性から、適宜選択されるものであってもよい。例えば、コンプレッサ収納用構造体30の素材として、ポリプロピレン、ABS樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。そして、コンプレッサ収納用構造体30として断熱性を備えるようにするにあたっては、素材の厚さや形状を工夫する、さらには断熱素材(例えば発泡ウレタン)を組み合わせるなど、適宜に設計をすればよい。このようなコンプレッサ収納用構造体30の素材や断熱性については後述する実施例2、3でも同様である。
【0027】
そして、空気吸込用開口部31は、コンプレッサ用開閉ドア33により開閉されるようになっていると共に、空気吐出用開口部32はコンプレッサ用開閉ドア34により開閉されるようになっている。コンプレッサ用開閉ドア33、34は、この実施例1ではバタフライ型のドアとして示されていると共にアクチュエータ35、36によって開閉制御されている。もっとも、コンプレッサ用開閉ドア33、34の構造はかかるバタフライ型のドアに限定されず、図示しないが、複数のブレードを開口部31、32の径方向に並べて各ブレードが回転することにより、開口部31、32を開閉するシャッター型でも良く、更には片持ち型のドアやスライドドアであっても良い。
【0028】
コンプレッサ収納用構造体30の開口部31、32がコンプレッサ用開閉ドア33、34により閉塞された際には、コンプレッサ収納用構造体30は密封状態となり、コンプレッサ収納用構造体30内のコンプレッサ23の周りの空気はコンプレッサ収納用構造体30の外部に逃げずにコンプレッサ収納用構造体30内に留まることとなる。
【0029】
更に、この実施例1では、車室等の室内温度を検出するための室内温度センサ38が、ケース5の外部、例えばインストルメントパネルやダッシュボード等の車室内に配置されている。
【0030】
更にまた、実施例1の空調装置1は、
図1に示されるように、コントロールユニット40を有している。このコントロールユニット40は、種々の入力信号を受けて、種々の構成要素を制御するものである。このコントロールユニット40の概要について説明すると、入力信号としては、室内温度センサ38からの室内温度についての入力信号、コントロールパネル41からの設定温度の入力信号や、図示しないが外気温度についての入力信号、乗員センサからの乗員の着座状況についての入力信号、その他の各種信号が挙げられる。
そして、コントロールユニット40は、上記入力信号に基づいて、ファンモータ9、コンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36、方向切換弁25のアクチュエータ29に制御信号を出力して、ファンモータ9の回転数の制御、コンプレッサ用開閉ドア33、34の開閉の制御、方向切換弁25の切り換えを行うと共に、インテーク装置11のインテークアクチュエータ42、モードドア18、19、20のモードアクチュエータ43に制御信号を出力して、内外気導入口13、14の切り換え、各種吹出モードの選択を行うものとなっている。
【0031】
これにより、暖房運転時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図2に示されるように、方向切換弁25を前記第1の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図2に示されるように、前記フットモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33、34がコンプレッサ収納用構造体30の双方の開口部31、32を閉塞することが行われる。
【0032】
しかるに、コンプレッサ23は、コンプレッサ収納用構造体30内に閉じ込められた当該コンプレッサ23の周囲の空気を加温して蓄熱させ、この温度が上昇したコンプレッサ収納用構造体30内の空気でコンプレッサ23を保温するので、コンプレッサ23から室内熱交換器6に送られる熱交換媒体の温度も相対的に上昇する。このため、室内熱交換器6は空気通路4を通過する空気を加熱する加熱器としての性能が向上し、十分な温度の吹出空気をフット開口部17から車室内空間に吹き出させることができる。
【0033】
一方、冷房運転時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図3に示されるように、方向切換弁25を前記第21の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図3に示されるように、前記ベントモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33、34がコンプレッサ収納用構造体30の双方の開口部31、32を開放することが可能となる。
【0034】
しかるに、コンプレッサ23は、空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内に吸込まれた後、空気吐出用開口部32から車室外域に吐出されるかたちで流れる空気により冷却されて、不必要に高温の熱交換媒体がヒートポンプシステム2を循環するのを抑制することができる。
【0035】
尚、暖房運転時においても、室内温度センサ38から送られてくる検出された温度の値に基づいて、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36に制御信号を送って、コンプレッサ用開閉ドア33、34の開閉を細やかに行うようにしても良い。
【実施例2】
【0036】
図4から
図6において、HVACユニット3とヒートポンプシステム2とを備えた空調装置1の実施例の他の例(実施例2)が示されている。
【0037】
この空調装置1も、実施例1と同様に、例えば電気自動車、ハイブリッド型の自動車等に用いられるものであり、HVACユニット3は、車室外域と車室内空間とを仕切るファイヤーボード(図示せず)よりも車室内空間側に配されているもので、内部に空気通路4が形成されたケース5に、ヒートポンプシステム2の一部を構成するエバポレータ等の室内冷却用熱交換器45、同じくヒートポンプシステム2の一部を構成する室内暖房用熱交換器46が車両の前後方向に並んだかたちでそれぞれ立設して収納され、室内冷却用熱交換器45に対し空気通路4の空気の上流側に送風機7が配されている。
【0038】
この送風機7に対して更に空気の上流側には、インテーク装置11が設けられていると共に、このインテーク装置11は、送風機7の回転により、インテーク装置11のインテークドア12の位置(開度)に応じて内気又は外気が外気導入口13又は内気導入口14から導入されるようになっている。
【0039】
ケース5内には、室内冷却用熱交換器45を通過して冷却・除湿された空気について室内暖房用熱交換器46をバイパスして空気通路4の空気の下流側へ導く冷風通路48と、室内暖房用熱交換器46を通過した空気を空気通路4の空気の下流側へ導く温風通路49とが当該空気通路4の一部として形成されている。そして、これらの冷風通路48を通過する空気と温風通路49とを通過する空気の割合は、室内冷却用熱交換器45と室内暖房用熱交換器46との間に設けられたエアミックスドア47によって調節された後、冷風通路48から流れてきた空気と温風通路49とから流れてきた空気とが空気通路4のエアミックスドア47よりも下流側で適宜混合されて温調されるようになっている。
【0040】
空気通路4の最下流側には、図示しないフロントガラスに向けて空気を吹き出すデフロスト開口部15、車室内空間の上方へ空気を吹き出すベント開口部16、車室内空間の下方へ空気を吹き出すフット開口部17が形成されており、それぞれの開口部15、16、17の開度は、対応する開口部15、16、17の手前側に設けられたモードドア18、19、20によって調節される。すなわち、デフロスト開口部15のみが開放されるデフロストモード、ベント開口部16のみが開放されるベントモード、フット開口部17のみが開放されるフットモード、デフロスト開口部15とフット開口部17とが開放されるデフフットモード、ベント開口部16とフット開口部17とが開放されるバイレベルモードとの切り換えが行われる。
【0041】
ヒートポンプシステム2は、前記した室内冷却用熱交換器45と室内暖房用熱交換器46とによって車室内空間の冷房と暖房とを行うもので、これらのHVACユニット3の空気通路4内に配置された熱交換器45、46の他に、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24、及び熱交換媒体の流れる方向を切り換える方向切換弁25、熱交換媒体が逆方向に流れるのを防止する逆止弁51を有して構成されている。
【0042】
そして、これらの室内冷却用熱交換器45、室内暖房用熱交換器46、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24、方向切換弁25及び逆止弁51は、配管26により適宜接合されて、フロン系冷媒やCO
2冷媒等の熱交換媒体が、後述する暖房運転時における第1の熱交換媒体循環経路又は冷房運転時における第2の熱交換媒体循環経路で巡るようになっている。そして、
図4から
図6中の配管26においてU1として指標される点は、配管26同士が相互に連通しつつ交差する部位を示している。
【0043】
室外熱交換器22とコンプレッサ23とは、先述の実施例1と同様であり、室外熱交換器22は、車室外域に配置されて、車室外域の空気(大気)と熱交換媒体との熱交換を行うもので、室外送風機28を有していると共に車両の走行時に車両前方から送られて来る風の当たる位置に設置されている。コンプレッサ23は、室外熱交換器22と同様に車室外域に配置されているもので、図示しない電気モータにより駆動して熱交換媒体を吸引し、圧縮して、吐出するようになっている。尚、コンプレッサ23について、ハイブリッド型の自動車では車両エンジンを動力源とするものであっても良いことは、実施例1と同様である。
一方で、膨張装置24は、室内冷却用熱交換器45と室内暖房用熱交換器46との間に配置されて、室内暖房用熱交換器46から室内冷却用熱交換器45に送られる熱交換媒体を減圧膨張させるためのもので、その構成としては、熱交換器45又は46と一体に連結されたブロック型の膨張弁や、キャピラリーチューブ等が挙げられる。
また、方向切換弁25は、この実施例2では、
図5に示されるように、コンプレッサ23から室内暖房用熱交換器46に直接的に熱交換媒体が流れる第1の熱交換媒体循環経路と、
図6に示されるようにコンプレッサ23から室外熱交換器22に熱交換媒体が流れた後、この室外熱交換器22から室内暖房用熱交換器46に熱交換媒体が流れる第2の熱交換媒体循環経路との切り換えを可能とするものである。そして、この方向切換弁25の切換は、
図4に示されるアクチュエータ29により行われる。
【0044】
このような構成のヒートポンプシステム2とすることにより、暖房運転時には、方向切換弁25に対し
図5に示されるように第1の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された高温高圧の熱交換媒体は、まず方向切換弁25を経由して室内暖房用熱交換器46に流れることにより室内暖房用熱交換器46を加熱器として機能させ、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を加熱した後、膨張装置24で減圧膨張され、室内冷却用熱交換器45に流れて、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を除湿・冷却し、コンプレッサ23に戻されるように流れる。このとき、エアミックスドア47は、室内暖房用熱交換器46の風上側通風面を所定の開度にて開放するように駆動される。
【0045】
そして、冷房運転時には、方向切換弁25に対し
図6に示されるように第2の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された高温高圧の熱交換媒体は、まず方向切換弁25を経由して室外熱交換器22に流れることにより、室外熱交換器22で冷却されて、相対的に低温化した熱交換媒体が室内暖房用熱交換器46を通過した後、膨張装置24で減圧膨張され、室内冷却用熱交換器45に流れて、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を除湿・冷却して、コンプレッサ23に戻されるように流れる。このとき、エアミックスドア47は、室内暖房用熱交換器46の風上側通風面を全て閉塞するように駆動され、空気通路4内の空気が加熱されることを防止する。
【0046】
ところで、この実施例2に係るヒートポンプシステム2も、コンプレッサ収納用構造体30内にコンプレッサ23が収納されており、このコンプレッサ収納用構造体30は、車室外域から空気を吸い込むための空気吸込用開口部31と空気を車室外域に吐出するための空気吐出用開口部32とを有している。空気吸込用開口部31は、実施例1と同様に、室外熱交換器22の空気の下流側に開口しており、自動車が走行していなくても、室外熱交換器22に併設された室外送風機28の駆動により空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内への空気の取り込みを可能としている。そして、コンプレッサ収納用構造体30の内部形状及びその容積について、コンプレッサ23とその内壁との間隔が相対的に小さくなるものであれば特に限定されないことも実施例1と同様である。
【0047】
空気吸込用開口部31は、実施例1と同様に、コンプレッサ用開閉ドア33により開閉されるようになっている。空気吐出用開口部32も、実施例1と同様に、コンプレッサ用開閉ドア34により開閉されるようになっている。そして、コンプレッサ用開閉ドア33、34は、この実施例2ではバタフライ型のドアとして示されていると共にアクチュエータ35、36によって開閉制御されている。もっとも、コンプレッサ用開閉ドア33、34の構造は、かかるバタフライ型のドアに限定されず、実施例1と同様に、図示しないが、複数のブレードを開口部31、32の径方向に並べて各ブレードが回転することにより、開口部31、32を開閉するシャッター型でも良く、更には片持ち型のドアやスライドドアであっても良い。
【0048】
コンプレッサ収納用構造体30の開口部31、32の全てがコンプレッサ用開閉ドア33、34により閉塞された際には、コンプレッサ収納用構造体30は密封状態となり、コンプレッサ収納用構造体30内のコンプレッサ23の周りの空気はコンプレッサ収納用構造体30の外部に逃げずにコンプレッサ収納用構造体30内に留まることとなる。
【0049】
更に、この実施例2でも、車室内空間等の室内温度を検出するための室内温度センサ38が、ケース5の外部、例えばインストルメントパネルやダッシュボード等の車室内に配置されている。
【0050】
更にまた、この実施例2の空調装置1においても、
図4に示されるように、種々の入力信号を受けて、種々の構成要素を制御するコントロールユニット40を有している。このコントロールユニット40の概要について説明すると、入力信号としては、室内温度センサ38からの室内温度についての入力信号、コントロールパネル41からの設定温度の入力信号や、図示しないが外気温度についての入力信号、乗員センサからの乗員の着座状況についての入力信号、その他の各種信号が挙げられる。そして、コントロールユニット40は、上記入力信号に基づいて、ファンモータ9、コンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36、方向切換弁25のアクチュエータ29に制御信号を出力して、ファンモータ9の回転数の制御、コンプレッサ用開閉ドア33、34の開閉の制御、方向切換弁25の切り換えを行うと共に、インテーク装置11のインテークアクチュエータ42、エアミックスドア47のアクチュエータ54、モードドア18、19、20のモードアクチュエータ43に制御信号を出力して、内外気導入口13、14の切り換え、エアミックスドア47の開度の制御、各種吹出モードの選択を行うものとなっている。
【0051】
これにより、暖房運転時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図5に示されるように、方向切換弁25を前記第1の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図5に示されるように、前記フットモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33がコンプレッサ収納用構造体30の空気吸込用開口部31を閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34がコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32を閉塞することが行われる。
【0052】
しかるに、コンプレッサ23は、コンプレッサ収納用構造体30内に閉じ込められた当該コンプレッサ23の周囲の空気を加温して蓄熱させ、この温度が上昇したコンプレッサ収納用構造体30内の空気でコンプレッサ23を保温するので、コンプレッサ23から室内暖房用熱交換器46に送られる熱交換媒体の温度も相対的に上昇する。このため、室内暖房用熱交換器46は空気通路4を通過する空気を加熱する加熱器としての性能が向上し、十分な温度の吹出空気をフット開口部17から車室内空間に吹き出させることができる。
【0053】
一方、冷房運転時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図6に示されるように、方向切換弁25を前記第2の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図6に示されるように、前記ベントモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33、34がコンプレッサ収納用構造体30の双方の開口部31、32を開放することが可能となる。
【0054】
しかるに、コンプレッサ23は、空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内に吸込まれた後、空気吐出用開口部32から車室外域に吐出されるかたちで流れる空気により冷却されて、不必要に高温の熱交換媒体がヒートポンプシステム2を循環するのを抑制することができる。
【0055】
尚、暖房運転時においても、室内温度センサ38から送られてくる検出された温度の値に基づいて、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36に制御信号を送って、コンプレッサ用開閉ドア33、34の開閉を細やかに行うようにしても良いことは、実施例2でも同様である。
【実施例3】
【0056】
図7から
図10において、HVACユニット3とヒートポンプシステム2とを備えた空調装置1の実施例の更なる他の例(実施例3)が示されている。
【0057】
この空調装置1も、前記実施例1、2と同様に、例えば電気自動車、ハイブリッド型の自動車等に用いられるものであり、HVACユニット3は、車室外域と車室内空間とを仕切るファイヤーボード(図示せず)よりも車室内空間側に配されているもので、内部に空気通路4が形成されたケース5に、ヒートポンプシステム2の一部を構成するエバポレータ等の室内冷却用熱交換器45、同じくヒートポンプシステム2の一部を構成する室内暖房用熱交換器46が車両の前後方向に並んだかたちでそれぞれ立設して収納され、室内冷却用熱交換器45に対し空気通路4の空気の上流側に送風機7が配されている。
【0058】
この送風機7に対して更に空気の上流側には、インテーク装置11が設けられていると共に、このインテーク装置11は、送風機7の回転により、インテーク装置11のインテークドア12の位置(開度)に応じて内気又は外気が外気導入口13又は内気導入口14から導入されるようになっている。
【0059】
ケース5内には、室内冷却用熱交換器45を通過して冷却・除湿された空気について室内暖房用熱交換器46をバイパスして空気通路4の空気の下流側へ導く冷風通路48と、室内暖房用熱交換器46を通過した空気を空気通路4の空気の下流側へ導く温風通路49とが当該空気通路4の一部として形成されている。そして、これらの冷風通路48を通過する空気と温風通路49とを通過する空気の割合は、室内冷却用熱交換器45と室内暖房用熱交換器46との間に設けられたエアミックスドア47によって調節された後、冷風通路48から流れてきた空気と温風通路49とから流れてきた空気とが空気通路4のエアミックスドア47よりも下流側で適宜混合されて温調されるようになっている。
【0060】
空気通路4の最下流側には、図示しないフロントガラスに向けて空気を吹き出すデフロスト開口部15、車室内空間の上方へ空気を吹き出すベント開口部16、車室内空間の下方へ空気を吹き出すフット開口部17が形成されており、それぞれの開口部15、16、17の開度は、対応する開口部15、16、17の手前側に設けられたモードドア18、19、20によって調節される。すなわち、デフロスト開口部15のみが開放されるデフロストモード、ベント開口部16のみが開放されるベントモード、フット開口部17のみが開放されるフットモード、デフロスト開口部15とフット開口部17とが開放されるデフフットモード、ベント開口部16とフット開口部17とが開放されるバイレベルモードとの切り換えが行われる。
【0061】
ヒートポンプシステム2は、前記した室内冷却用熱交換器45と室内暖房用熱交換器46とによって車室内空間の冷房と暖房とを行うもので、これらのHVACユニット3の空気通路4内に配置された熱交換器45、46の他に、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24、及び熱交換媒体の流れる方向を切り換える方向切換弁25、熱交換媒体が逆方向に流れるのを防止する逆止弁51を有して構成されている。
【0062】
そして、これらの室内冷却用熱交換器45、室内暖房用熱交換器46、室外熱交換器22、コンプレッサ23、膨張装置24、方向切換弁25及び逆止弁51は、配管26により適宜接合されて、フロン系冷媒やCO
2冷媒等の熱交換媒体が、後述する暖房運転時における第1の熱交換媒体循環経路又は冷房運転時における第2の熱交換媒体循環経路で巡るようになっている。そして、
図7から
図10中の配管26においてU1として指標される点は、配管26同士が相互に連通しつつ交差する部位を示している。
【0063】
室外熱交換器22とコンプレッサ23とは、先述の実施例1、2と同様であり、室外熱交換器22と膨張装置24とは、先述の実施例2と同様である。尚、コンプレッサ23について、ハイブリッド型の自動車では車両エンジンを動力源とするものであっても良いことも、実施例1、2と同様である。
また、方向切換弁25は、この実施例3でも、
図8及び
図9に示されるように、コンプレッサ23から室内暖房用熱交換器46に直接的に熱交換媒体が流れる第1の熱交換媒体循環経路と、
図10に示されるようにコンプレッサ23から室外熱交換器22に熱交換媒体が流れた後、この室外熱交換器22から室内暖房用熱交換器46に熱交換媒体が流れる第2の熱交換媒体循環経路との切り換えを可能とするものである。そして、この方向切換弁25の切換も、実施例2と同様に、
図7に示されるアクチュエータ29により行われる。
【0064】
このような構成のヒートポンプシステム2とすることにより、暖房運転時には、方向切換弁25に対し
図8及び
図9に示されるように第1の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された高温高圧の熱交換媒体は、まず方向切換弁25を経由して室内暖房用熱交換器46に流れることにより室内暖房用熱交換器46を加熱器として機能させ、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を加熱した後、膨張装置24で減圧膨張され、室内冷却用熱交換器45に流れて、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を除湿・冷却し、コンプレッサ23に戻されるように流れる。このとき、エアミックスドア47は、室内暖房用熱交換器46の風上側通風面を所定の開度にて開放するように駆動される。
【0065】
そして、冷房運転時には、方向切換弁25に対し
図10に示されるように第2の熱交換媒体循環経路となる設定がなされ、コンプレッサ23から吐出された高温高圧の熱交換媒体は、まず方向切換弁25を経由して室外熱交換器22に流れることにより、室外熱交換器22で冷却されて、相対的に低温化した熱交換媒体が室内暖房用熱交換器46を通過した後、膨張装置24で減圧膨張され、室内冷却用熱交換器45に流れて、空気通路4内の空気と熱交換を行って空気を除湿・冷却して、コンプレッサ23に戻されるように流れる。このとき、エアミックスドア47は、室内暖房用熱交換器46の風上側通風面を全て閉塞するように駆動され、空気通路4内の空気が加熱されることを防止する。
【0066】
ところで、この実施例3に係るヒートポンプシステム2も、実施例1、2と同様に、コンプレッサ収納用構造体30内にコンプレッサ23が収納されている一方で、この実施例3のコンプレッサ収納用構造体30では、車室外域から空気を吸い込むための空気吸込用開口部31、空気を空気通路4のインテーク装置11と送風機7との間に吐出するための空気吐出用開口部32a、及び、空気を車室外域に吐出するための空気吐出用開口部32bを有している。空気吸込用開口部31は、実施例1、2と同様に、室外熱交換器22の空気の下流側に開口しており、自動車が走行していなくても、室外熱交換器22に併設された室外送風機28の駆動により空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内への空気の取り込みを可能としている。そして、コンプレッサ収納用構造体30の内部形状及びその容積について、コンプレッサ23とその内壁との間隔が相対的に小さくなるものであれば特に限定されないことも実施例1、実施例2と同様である。
【0067】
空気吸込用開口部31は、実施例1と同様にコンプレッサ用開閉ドア33により開閉されるようになっている。空気吐出用開口部32a、32bはそれぞれコンプレッサ用開閉ドア34a、34bにより開閉されるようになっている。そして、コンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bは、この実施例3ではバタフライ型のドアとして示されていると共にアクチュエータ35、36によって開閉制御されている。もっとも、コンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bの構造は、かかるバタフライ型のドアに限定されず、図示しないが、複数のブレードを開口部31、32a、32bの径方向に並べて各ブレードが回転することにより、開口部31、32a、32bを開閉するシャッター型でも良く、更には片持ち型のドアやスライドドアであっても良い。また、アクチュエータ36によるコンプレッサ用開閉ドア34a、34bの制御は、
図8に示されるように空気吐出用開口部32aのみがコンプレッサ用開閉ドア34aで閉塞される態様と、
図10に示されるように空気吐出用開口部32bのみがコンプレッサ用開閉ドア34bで閉塞される態様と、
図9に示されるように空気吐出用開口部32a、32bの双方がコンプレッサ用開閉ドア34a、34bで閉塞される態様とがある。
【0068】
コンプレッサ収納用構造体30の開口部31、32a、32bの全てがコンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bにより閉塞された際には、コンプレッサ収納用構造体30は密封状態となり、コンプレッサ収納用構造体30内のコンプレッサ23の周りの空気はコンプレッサ収納用構造体30の外部に逃げずにコンプレッサ収納用構造体30内に留まることとなる。
【0069】
更に、この実施例3でも、車室内空間等の室内温度を検出するための室内温度センサ38が、ケース5の外部、例えばインストルメントパネルやダッシュボード等の車室内に配置されている。
【0070】
この実施例3の空調装置1においても、
図7に示されるように、種々の入力信号を受けて、種々の構成要素を制御するコントロールユニット40を有している。このコントロールユニット40の概要について説明すると、入力信号としては、室内温度センサ38からの室内温度についての入力信号、暖房運転開始時からの時間を計測するタイマ53からの入力信号、コントロールパネル41からの設定温度の入力信号や、図示しないが外気温度についての入力信号、乗員センサからの乗員の着座状況についての入力信号、その他の各種信号が挙げられる。そして、コントロールユニット40は、上記入力信号に基づいて、ファンモータ9、コンプレッサ用開閉ドア33、34のアクチュエータ35、36、方向切換弁25のアクチュエータ29に制御信号を出力して、ファンモータ9の回転数の制御、コンプレッサ用開閉ドア33、34の開閉の制御、方向切換弁25の切り換えを行うと共に、インテーク装置11のインテークアクチュエータ42、エアミックスドア47のアクチュエータ54、モードドア18、19、20のモードアクチュエータ43に制御信号を出力して、内外気導入口13、14の切り換え、エアミックスドア47の開度の制御、各種吹出モードの選択を行うものとなっている。
【0071】
これにより、暖房運転の初期時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図8に示されるように、方向切換弁25を前記第1の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図8に示されるように、前記フットモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bのアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33がコンプレッサ収納用構造体30の空気吸込用開口部31を閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34bがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32bを閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34aがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32aを開放することが行われる。
【0072】
しかるに、空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内に吸引された車室外域の空気は、コンプレッサ33の周囲を通過する際に加温された後、空気吐出用開口部32aから送風機7に向けて送られ、内外気導入口13、14から導入された空気と混合されるので、相対的に低温の外気等のみで室内暖房用熱交換器46で加熱する場合に比し、フット開口部17から吹き出させる空気の温度を初期段階から高めることが可能となる。また、室内冷却用熱交換器45に導入される空気の温度も高めることができるため、室内冷却用熱交換器45の凍結を防止することが可能となるので、ヒートポンプサイクル自体が停止することを防止することができる。
【0073】
ところで、このような暖房運転の初期時の動作のままだと、空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30に吸引された車室外域の空気は、空気吐出用開口部32aから送風気7へ送られる間にダクトを介して放熱し、暖房性能を向上させるという効果が十分に得られないおそれがある。そこで、暖房運転が安定したとき、すなわち室内冷却用熱交換器45の凍結のおそれが十分になくなったときに、次のように動作して、より確実に暖房性能を向上させるようになっている。
【0074】
すなわち、暖房運転の安定時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図9に示されるように、方向切換弁25を前記第1の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図9に示されるように、前記フットモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bのアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33がコンプレッサ収納用構造体30の空気吸込用開口部31を閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34aがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32aを閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34bがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32bを閉塞することが行われる。
【0075】
しかるに、コンプレッサ23は、コンプレッサ収納用構造体30内に閉じ込められた当該コンプレッサ23の周囲の空気を加温して蓄熱させ、この温度が上昇したコンプレッサ収納用構造体30内の空気でコンプレッサ23を保温するので、コンプレッサ23から室内暖房用熱交換器46に送られる熱交換媒体の温度も相対的に上昇する。このため、室内暖房用熱交換器46の性能が向上し、十分な温度の吹出空気をフット開口部17から車室内空間に吹き出させることができる。
【0076】
この暖房運転の初期時のモードから暖房運転の安定時のモードへの移行は、例えば、室内温度センサ38から入力される検出温度やタイマ53から入力される暖房運転の開始した時点からの経過時間に基づいて行われる。
【0077】
これに対し、冷房運転時では、ヒートポンプシステム2にあっては、コントロールユニット40から方向切換弁25への制御信号により、
図10に示されるように、方向切換弁25を前記第2の熱交換媒体循環経路となるように設定し、HVACユニット3にあっては、コントロールユニット40からモードアクチュエータ43への制御信号により、
図10に示されるように、前記ベントモードの選択が行われると共に、コントロールユニット40からコンプレッサ用開閉ドア33、34a、34bのアクチュエータ35、36への制御信号により、コンプレッサ用開閉ドア33がコンプレッサ収納用構造体30の空気吸込用開口部31を開放し、コンプレッサ用開閉ドア34aがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32aを閉塞し、コンプレッサ用開閉ドア34bがコンプレッサ収納用構造体30の空気吐出用開口部32bを開放することが行われる。
【0078】
しかるに、コンプレッサ23は、空気吸込用開口部31からコンプレッサ収納用構造体30内に吸込まれた後、空気吐出用開口部32bから車室外域に吐出されるかたちで流れる空気により冷却されて、不必要に高温の熱交換媒体がヒートポンプシステム2を循環するのを抑制することができる。
【0079】
そして、コンプレッサ23をコンプレッサ収納用構造体30内に収納して密封することでコンプレッサ33を保温した状態(以下、「コンプレッサ保温あり」と称する。)と、コンプレッサ33をコンプレッサ収納用構造体30に収納しない状態、すなわち、コンプレッサ33を保温しない状態(以下、「コンプレッサ保温なし」と称する。)とを対比した場合には、
図11に示されるように、コンプレッサ保温ありの方がコンプレッサ保温なしよりも、暖房運転時において、相対的に少ないコンプレッサ33の消費電力でフット開口部17から相対的に高い温度での吹き出し空気を得ることができている。
【0080】
より具体的には、コンプレッサ保温なしの場合では、コンプレッサ33の消費電力が1.2kwでは、暖房運転時のフット開口部17からの吹出し空気の温度が約21℃から22℃くらいであるのに対し、コンプレッサ保温ありの場合では、コンプレッサ33の消費電力が同じ1.2kwであっても、暖房運転時のフット開口部17からの吹出し空気の温度を約25℃とすることができる。また、コンプレッサ保温なしの場合では、コンプレッサ33の消費電力が1.6kwでは、暖房運転時のフット開口部17からの吹出し空気の温度が約25℃であるのに対し、コンプレッサ保温ありの場合では、コンプレッサ33の消費電力が同じ1.6kwであっても、暖房運転時のフット開口部17からの吹出し空気の温度を約27℃から28℃とすることができる。すなわち、房運転時のフット開口部17からの吹出し空気の温度を約25℃とするには、コンプレッサ保温なしの場合では、コンプレッサ33の消費電力として1.6kwほど必要であるのに対し、コンプレッサ保温ありの場合では、コンプレッサ33の消費電力として1.2kwで足りるので、コンプレッサ33の消費電力の低減を図ることが可能である。
【0081】
この発明に係るヒートポンプシステム2は、電気自動車用又はハイブリッド型の自動車用のものとして説明したが、ガソリンエンジンなどの内燃機関のみを有する従来の自動車用として用いることも可能である。