(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
触媒活性成分として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、マンガン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の元素の酸化物をさらに含む、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一によると、触媒活性成分として、薄板状のセリア(CeO
2)を含む、排ガス浄化用触媒が提供される。セリアは、従来、粒状、粉末状の形態で使用されていた。本発明は、従来と異なり、薄板状のセリアを使用することを特徴とする。このように薄板状のセリアを使用すると、従来の粒状/粉末状のセリアを使用した場合に比して、特にNOxの除去効率が向上する。このような結果が得られるメカニズムは不明であるが、下記のように考えられる。なお、下記考察によって、本発明は何ら限定されない。排ガスが触媒層に接するに際して、触媒層内への排ガスの拡散がおこる。排ガスが拡散しやすいほど、触媒が単位時間内に処理できる排ガス量が増加するので好ましい。触媒層は、その組成に応じて、触媒層を構成する粒子自身のもつ細孔や、粒子間の空隙に基づく、細孔容積分布を有する。触媒層内への排ガスの拡散は、触媒層の細孔容積や細孔分布によって影響される。これに対して、薄板状のセリアは、平面方向と厚み方向の長さが著しく異なる、いわゆる形状異方性が大きいという特徴を持つ。このため、薄板状のセリアを触媒活性成分として用いると、従来の粒状/粉末状のセリアに比して、その形状異方性により、主に粒子間の空隙が増大し、細孔容積分布が変化する。このため、触媒層内への排ガスの拡散性が向上し、排ガスの有害成分であるCO、HCおよびNOx、特にNOxの優れた浄化能を達成することができる。なお、薄板状のセリアを触媒活性成分として用いた触媒と、従来の粉末状のセリアを用いた触媒について、水銀圧入法による細孔容積分布を測定した例を
図2に示す。薄板状のセリアを用いた触媒(完成触媒(B))は、従来の粉末状のセリアを用いた触媒(完成触媒(X))と比較して、0.05〜1μmの範囲の細孔容積が大きくなっている。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係るセリア(CeO
2)は、その形状が薄板状であることを特徴とする。なお、本明細書において「薄板状」とは、薄板の厚みに対する薄板の平面方向の円相当平均径が2以上であるものを意味する。薄板の大きさは、特に制限されない。好ましくは、薄板の平面方向の円相当平均径が、好ましくは2〜50μm、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは2〜6μmであり、薄板の平均の厚みが、好ましくは0.01〜1μmであり、より好ましくは0.01〜0.75μmである。このような大きさの薄板状のセリアであれば、触媒中に触媒活性成分として扱いやすい。なお、薄板の大きさの測定方法は、通常の手段を用いることができ、例えば画像解析法、レーザー回折散乱法などが好ましく使用される。本明細書では、「薄板状セリアの平面方向の円相当平均径(μm)」は、画像解析法により個々の粒子(総計30個)の平面方向の面積を測定し、それと等しい面積を有する円の直径を計算し、その平均を求めた値である。また、「平均の厚み(μm)」は、画像解析法により個々の粒子(総計30個)の厚み方向の面積(Sμm
2)と長さ(Lμm)を測定し、その面積をその長さで除した厚み(S/L)を計算し、その平均を求めた値である。
【0013】
本発明に係る薄板状のセリアの製造方法は、特に制限されない。具体的には、例えばクエン酸を含むエチレングリコール溶液に酢酸セリウムを溶解させ、加熱濃縮して得られる高分子ゲルを、スピンコーティング法で薄膜化し、さらに焼成することで得られる。
【0014】
本発明において、薄板状のセリアの使用量(以下で詳述されるように、触媒活性成分が三次元構造体に被覆されてなる場合には三次元構造体への担持量;以下、同様)は、特に制限されない。具体的には、薄板状のセリアの使用量(担持量)は、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、10〜200g、より好ましくは10〜100gである。ここで、薄板状のセリアの使用量(担持量)が上記下限を下回ると、薄板状のセリアが十分に分散できず、排ガスの拡散性が十分でなくなったりする可能性がある。逆に、上限を超えると、薄板状のセリアの添加に見合う効果が達成されず、触媒層の機械的強度が低下する可能性がある。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒は、耐火性無機酸化物を触媒活性成分として含むことができる。耐火性無機酸化物は、通常内燃機関用の触媒に用いられるものであれば、特に制限されず何れのものであってもよい。具体的には、本発明に用いられる耐火性無機酸化物としては、通常、触媒担体として用いられるものであれば何れでもよく、例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナなどの活性アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化珪素(シリカ)などの単独酸化物;これらの複合酸化物、例えば、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア、ゼオライト、シリカ−アルミナなどが挙げられる。好ましくは、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの単独酸化物、およびこれらの複合酸化物が使用される。上記耐火性無機酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0016】
耐火性無機酸化物のBET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積は、特に制限されないが、好ましくは20〜750m
2/g、より好ましくは50〜350m
2/gである。また、耐火性無機酸化物粉末の平均粒径もまた、特に制限されないが、好ましくは0.5〜150μm、より好ましくは1〜100μmである。なお、本明細書中、「平均粒径」は、レーザー回折法や動的光散乱法などの公知の方法によって測定される耐火性無機酸化物粉末の粒子径の平均値により測定することができる。
【0017】
耐火性無機酸化物を使用する場合の、耐火性無機酸化物の使用量(担持量)は、特に制限されない。耐火性無機酸化物の使用量(担持量)は、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは10〜400g、より好ましくは50〜300gである。10g未満であると、触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアや下記に詳述される貴金属)が十分に分散できず、耐久性が十分でない可能性がある。逆に、400gを超えると、耐火性無機酸化物の添加に見合う効果が認められず、また、他の触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアや下記に詳述される貴金属)の効果が十分発揮できず、活性が低下したり、圧力損失が大きくなったりする可能性がある。
【0018】
上記耐火性無機酸化物に代えて、または上記耐火性無機酸化物に加えて、本発明の排ガス浄化用触媒はさらに貴金属を含むことができる。本発明で使用できる貴金属は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分などによって適宜選択できる。例えば、好ましく使用される貴金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、Pt、Pd、Rh、Irが使用され、Pt、Pd、Rhがより好ましい。
【0019】
貴金属をさらに使用する場合の貴金属の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、貴金属は、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.1〜15g、より好ましくは0.5〜5gの量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。
【0020】
上記耐火性無機酸化物や貴金属に代えてあるいは上記耐火性無機酸化物および/または貴金属に加えて、本発明の排ガス浄化用触媒はさらにアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、マンガンおよびタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の元素の酸化物(以下、「他の酸化物」とも称する)を使用することができる。ここで用いられるアルカリ金属酸化物としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの酸化物が挙げられる。同様にして、アルカリ土類金属酸化物としては、ストロンチウム、バリウムの酸化物が挙げられる。希土類元素酸化物としては、例えば、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウムなどからなる群より選択される希土類元素の酸化物が挙げられる。上記他の酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素の酸化物が好ましい。より好ましくは、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化バリウム、セリア、酸化ランタンであり、特に好ましくは、酸化カリウム、酸化バリウム、セリアである。なお、ここで使用される「セリア」とは、本発明に係る薄板状のセリアではなく、公知の粒状/粉末状のセリアを意味する。すなわち、本段落で使用される「セリア」は、例えば、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜20μmの平均粒径、好ましくは10〜300m
2/g、より好ましくは50〜300m
2/gのBET比表面積を有する。なお、本発明における他の酸化物の「平均粒径」は、レーザー回折法や動的光散乱法などの公知の方法によって測定される耐火性無機酸化物粉末の粒子径の平均値により測定することができる。
【0021】
本発明において、触媒活性成分が上記したような他の酸化物を使用する場合の、他の酸化物の使用量(担持量)は、特に制限されない。例えば、他の酸化物を耐火性無機酸化物に代えて使用する場合には、上記耐火性無機酸化物と同様の量が使用でき、より具体的には、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、10〜400g程度であることが好ましい。また、他の酸化物を耐火性無機酸化物に加えて使用する場合には、他の酸化物の使用量(担持量)は、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、5〜200g程度であることが好ましい。他の酸化物の使用量(担持量)が上記下限を下回ると、他の酸化物が十分に分散できず、添加に見合う効果が認められない可能性がある。逆に、上限を超えると、他の酸化物の添加量に見合う効果が認められず、また、他の触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアや上述の貴金属)の効果が十分発揮できず、活性が低下する可能性がある。
【0022】
本発明に係る触媒活性成分は、上記したように、薄板状のセリアを含むことが必須の構成要件であるが、必要あれば、耐火性無機酸化物、他の酸化物、貴金属を含むことができる。触媒活性成分がこのように薄板状のセリア以外を含む場合の、これらの合計としての触媒活性成分の使用量(担持量)は、特に制限されず、各成分の使用量(担持量)が上記した範囲に含まれることが好ましい。より好ましくは、触媒活性成分の使用量(担持量)は、触媒(例えば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、10〜400g、さらにより好ましくは10〜300gである。このような範囲であれば、本発明の触媒は上記したような各成分により十分な機能を発揮することができる。
【0023】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記触媒活性成分が三次元構造体に被覆されてなることが好ましい。ここで、触媒活性成分を被覆する三次元構造体としては、ハニカム担体などの耐熱性担体が挙げられるが、一体成型のハニカム構造体が好ましく、例えば、モノリスハニカム担体、プラグハニカム担体などが挙げられる。なお、三次元構造体ではなくても、ペレット担体なども同様にして使用できる。
【0024】
モノリス担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、特に、コージェライト、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、アルミノシリケート、マグネシウムシリケート、炭化ケイ素などを材料とするハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質のものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金などの酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて一体構造体とした、いわゆるメタルハニカム担体も用いられる。なおプラグ状のハニカム担体であってもよく、プラグハニカムとは多数の通孔を有しかつガスの導入面に市松上に開孔と閉孔を有し、通孔の一方が開孔であれば同一の通孔の他方が閉孔となっているハニカムである。当該プラグハニカム担体には各孔間の壁に微細な孔があり、排ガスは開孔からハニカムに入り、当該微細な孔を通して他の孔を通りハニカム外に出るものである。
【0025】
これらのモノリス担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は
155000.31000062〜1860003.72000744セル/m2(100〜1200セル/平方インチ
)であれば十分に使用可能であり、好ましくは
310000.62000124〜1395002.79000558セル/m2(200〜900セル/平方インチ
)、より好ましくは
465000.93000186〜930001.86000372セル/m2(300〜600セル/平方インチ
)である。
【0026】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して使用できる。以下に、本発明の触媒の調製方法の好ましい実施形態を記載する。しかし、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の触媒の調製方法は以下の手順に限定されるものではない。
【0027】
(1)触媒活性成分(例えば、薄板状のセリア、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物など)を適当な水性媒体に溶解/分散して、触媒活性成分溶液・分散液を得る。次に、この触媒活性成分溶液/分散液を湿式粉砕して、スラリーを調製する。さらに、三次元構造体(例えば、ハニカム担体)を上記スラリーに浸し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して、触媒を得る。なお、(1)の方法において、本発明の排ガス浄化用触媒が、耐火性無機酸化物、貴金属、他の酸化物を使用しない場合には、上記使用しない成分を添加しない以外は、同様の方法が適用しうる。
【0028】
上記方法において、適当な水性媒体としては、特に制限されず、当該分野にて通常使用される水性媒体が同様にして使用される。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノールなどの低級アルコール、ならびに有機系のアルカリ水溶液などが挙げられる。好ましくは、水や低級アルコールが使用され、特に水が好ましく使用される。この際、触媒活性成分の添加量は、所望の量が三次元構造体に担持できる量であれば、特に限定されない。好ましくは、水性媒体中の触媒活性成分の濃度が、5〜75質量%、より好ましくは15〜55質量%となるような量である。また、触媒活性成分溶液/分散液の湿式粉砕は、通常公知の方法によって行われ、特に制限されないが、ボールミルなどが好ましく使用される。または、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの従来公知の手段を用いることもできる。また、湿式粉砕する際に、触媒活性成分の一部(例えば、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物など)を先行して湿式粉砕して中間スラリーを得、得られた中間スラリーに、残りの触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアなど)を追加してから、さらに湿式粉砕して、スラリーを調製することもできる。なお、触媒活性成分の三次元構造体への担持量は、特に制限されず、上記各触媒活性成分の量で規定された量が好ましい。
【0029】
また、上記方法において、本発明に係る薄板状のセリアに加えて、他の触媒活性成分を使用する場合には、その形態は特に制限されず、他の触媒活性成分はそのままの形態で添加されてあるいは他の形態で添加され、その後所望の形態で変換されてもよい。例えば、耐火性無機酸化物、他の酸化物を触媒活性成分として使用する場合には、耐火性無機酸化物、他の酸化物は、そのままの形態で添加されることが好ましい。一方、貴金属を触媒活性成分として使用する場合には、貴金属は、そのままの形態で添加しても良いが、上記したように水性媒体に添加するため、他の形態、特に水溶性貴金属塩の形態で添加されることが好ましい。ここで、水溶性貴金属塩は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、例えば、パラジウムの場合には、パラジウム;塩化パラジウムなどのハロゲン化物;パラジウムの、硝酸塩、硫酸塩、ジニトロジアンミン塩、テトラアンミン塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、ジニトロジアンミン塩、テトラアンミン塩、酢酸塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸パラジウム)がより好ましい。また、白金の場合には、例えば、白金;臭化白金、塩化白金などのハロゲン化物;白金の、ジニトロジアンミン塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサヒドロキソ酸塩、テトラニトロ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、ジニトロジアンミン塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサヒドロキソ酸塩が挙げられ、ジニトロジアンミン塩(ジニトロジアンミン白金)がより好ましい。また、例えば、ロジウムの場合には、ロジウム;塩化ロジウムなどのハロゲン化物;ロジウムの、硝酸塩、硫酸塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサシアノ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、ヘキサアンミン塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸ロジウム)がより好ましい。なお、本発明では、上記貴金属源は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
次に、触媒活性成分を三次元構造体に担持して本発明の触媒を製造するが、この際の触媒活性成分の三次元構造体への担持方法は、特に制限されず、公知の触媒担持方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用される。具体的には、上記したようにして調製されたスラリーに三次元構造体を投入・浸漬する。この際、浸漬条件は、スラリー中の触媒活性成分が三次元構造体と十分均一に接触して、次の乾燥・焼成工程でこれらの触媒活性成分が十分三次元構造体に担持される条件であれば特に制限されない。例えば、三次元構造体をスラリー中に浸漬した後、三次元構造体をスラリーから引き上げて余分なスラリーを除去する。その後、100〜250℃で10分から3時間、乾燥し、さらに、350〜600℃で10分から5時間、焼成することにより、触媒活性成分が三次元構造体に担持された本発明の排ガス浄化用触媒が製造されうる。
【0031】
(2)水溶性貴金属塩を水に溶解し、耐火性無機酸化物に貴金属を担持して、貴金属担持耐火性無機酸化物を得る。次に、この貴金属担持耐火性無機酸化物と薄板状のセリアと他の酸化物とを適当な水性媒体に溶解/分散して、触媒活性成分溶液/分散液を得る。次に、この触媒活性成分溶液/分散液を湿式粉砕して、スラリーを調製する。さらに、三次元構造体(例えば、ハニカム担体)を上記スラリーに浸し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して、触媒を得る。なお、(2)の方法において、本発明の排ガス浄化用触媒が、貴金属、耐火性無機酸化物、他の酸化物を使用しない場合には、上記使用しない成分を添加しない以外は、同様の方法が適用しうる。また、特記しない限り、一の用語については、上記(1)の方法での記載の同様に定義される。
【0032】
上記において、水溶性貴金属塩の水への添加量は特に制限されず、上記貴金属の量で規定された量が好ましい。
【0033】
ここで、貴金属の耐火性無機酸化物への担持方法は、特に制限されず、公知の触媒担持方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用される。具体的には、上記したようにして調製された水溶性貴金属塩の水溶液に耐火性無機酸化物を浸漬した後、乾燥・焼成することにより、貴金属担持耐火性無機酸化物が得られる。この際、浸漬条件は、水溶液中の水溶性貴金属塩が十分耐火性無機酸化物に担持される条件であれば特に制限されない。例えば、耐火性無機酸化物が吸収しうる最大の水分量と等しい量の水溶性貴金属水溶液と、耐火性無機酸化物とを十分均一に混合する。その後、100〜250℃で10分〜15時間、乾燥し、さらに、350〜600℃で10分〜5時間、焼成することにより、貴金属が耐火性無機酸化物に担持された貴金属担持耐火性無機酸化物が製造されうる。
【0034】
次に、この貴金属担持耐火性無機酸化物と薄板状のセリアと他の酸化物とを適当な水性媒体に溶解/分散して、湿式粉砕し、スラリーとした後、三次元構造体をスラリーに浸し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して触媒を得る。この際、貴金属担持耐火性無機酸化物と薄板状のセリアと他の酸化物との混合比は、特に制限されず、上記触媒活性成分の量で規定された量が好ましい。また、適当な水性媒体などは上記(1)の方法での記載の同様のものが使用できる。貴金属担持耐火性無機酸化物と薄板状のセリアと他の酸化物との湿式粉砕もまた、通常公知の方法によって行われ、特に制限されないが、ボールミルなどが好ましく使用される。または、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの従来公知の手段を用いることもできる。湿式粉砕する際に、触媒活性成分の一部(例えば、貴金属担持耐火性無機酸化物、他の酸化物など)を先行して湿式粉砕して中間スラリーを得、得られた中間スラリーに、残りの触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアなど)を追加してから、さらに湿式粉砕して、スラリーを調製することもできる。なお、同様にして、三次元構造体のスラリーへの浸漬・乾燥・焼成工程もまた、上記(1)の方法での記載の同様の工程によって行なわれる。
【0035】
(3)予め薄板状のセリアと耐火性無機酸化物および/または他の酸化物とを適当な水性媒体に溶解/分散して、この溶液/分散液を、湿式粉砕し、スラリーを調製する。次に、三次元構造体(例えば、ハニカム担体)を上記スラリーに浸し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して、触媒前駆体を得る。次に、この触媒前駆体を、水溶性貴金属塩を水に溶解した水溶液に投入・浸漬し、余剰の液を除いた後、乾燥、焼成して、触媒を得る。なお、(3)の方法において、本発明の排ガス浄化用触媒が、貴金属、耐火性無機酸化物、他の酸化物を使用しない場合には、上記使用しない成分を添加しない以外は、同様の方法が適用しうる。また、特記しない限り、一の用語については、上記(1)の方法での記載の同様に定義される。
【0036】
上記において、薄板状のセリアと耐火性無機酸化物および/または他の酸化物との混合比は、特に制限されず、上記触媒活性成分の量で規定された量が好ましい。また、適当な水性媒体などは上記(1)の方法での記載の同様のものが使用できる。薄板状のセリアと耐火性無機酸化物および/または他の酸化物との湿式粉砕もまた、通常公知の方法によって行われ、特に制限されないが、ボールミルなどが好ましく使用される。または、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの従来公知の手段を用いることもできる。湿式粉砕する際に、触媒活性成分の一部(例えば、耐火性無機酸化物、他の酸化物など)を先行して湿式粉砕して中間スラリーを得、得られた中間スラリーに、残りの触媒活性成分(例えば、薄板状のセリアなど)を追加してから、さらに湿式粉砕して、スラリーを調製することもできる。なお、同様にして、三次元構造体のスラリーへの浸漬・乾燥・焼成工程もまた、上記(1)の方法での記載の同様の工程によって行なわれる。
【0037】
次に、上記により得られた触媒前駆体を、水溶性貴金属塩を水に溶解した水溶液に投入・浸漬し、乾燥、焼成して、触媒を得る。ここで、水溶性貴金属塩を水に溶解して水溶液を得る工程は、上記(1)の方法での記載の同様の方法が使用できる。また、触媒前駆体の水溶液への浸漬条件は、水溶液中の貴金属が触媒前駆体と十分均一に混合されて、次の乾燥・焼成条件でこれらの貴金属が十分触媒前駆体に担持される条件であれば特に制限されない。例えば、触媒前駆体を水溶液中に浸漬した後、100〜250℃で10分から15時間、乾燥し、さらに、350〜600℃で10分から5時間、焼成することにより、貴金属が触媒前駆体に担持された本発明の排ガス浄化触媒が製造されうる。
【0038】
(4)薄板状のセリアを適当な水性媒体に分散して、この分散液を、湿式粉砕し、スラリーAを調製する。別途、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物を適当な水性媒体に溶解/分散して、この溶液/分散液を、湿式粉砕し、スラリーBを調製する。次に、このスラリーAとスラリーBとを混合して、スラリーCを得る。三次元構造体(例えば、ハニカム担体)を上記スラリーCに浸漬し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して、触媒を得る。なお、(4)の方法において、本発明の排ガス浄化用触媒が、貴金属、耐火性無機酸化物、他の酸化物を使用しない場合には、上記使用しない成分を添加しない以外は、同様の方法が適用しうる。また、特記しない限り、一の用語については、上記(1)の方法での記載の同様に定義される。
【0039】
スラリーAの調製工程において、薄板状のセリアが、上記したような大きさ(平面方向の円相当平均径や平均厚み)を持たない場合には、薄板状のセリアの分散液を、湿式粉砕することが特に好ましい。これは、粉砕することによって、所望の大きさに調節することができるからである。ここで、粉砕方法としては、特に制限されず、通常公知の方法が使用できる。例えば、ロールミル、ボールミル、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどが使用できる。好ましくは、ボールミルが使用される。
【0040】
ここで、薄板状のセリアの分散液の粉砕を行なう場合の、適当な水性媒体としては、上記方法(1)で記載したのと同様の水性媒体が使用できる。特に水が好ましく使用される。また、粉砕前の薄板状のセリアの大きさもまた、特に制限されない。粉砕のしやすさなどを考慮すると、平面方向の円相当平均径が、好ましくは2〜1000μmであり、より好ましくは2〜100μmであり、かつ厚みが、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.01〜2μmである。水性媒体に添加する薄板状のセリアの量は、特に制限されず、上記で規定となるような量で薄板状のセリアを水性媒体に添加することが好ましい。また、粉砕条件は、所望の大きさに調節できるものであれば特に制限されない。具体的には、薄板状のセリアを水性媒体に分散した後、ボールミルを用いて、好ましくは15〜30℃の温度で、好ましくは1分から20時間、より好ましくは10分から10時間、さらにより好ましくは30分から5時間、湿式粉砕して、スラリーAを調製することが好ましい。上記したような条件であれば、所望の大きさを有する薄板状のセリアが簡単な工程で得られる。
【0041】
同様にして、スラリーBの調製工程において、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物の溶液/分散液を、湿式粉砕することが好ましい。これは、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物が、均一に混合できるからである。ここで、粉砕方法としては、特に制限されず、通常公知の方法が使用できる。例えば、ロールミル、ボールミル、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどが使用できる。好ましくは、ボールミルが使用される。耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物の溶液/分散液の湿式粉砕を行なう場合の、適当な水性媒体としては、上記方法(1)で記載したのと同様の水性媒体が使用できる。特に水が好ましく使用される。なお、スラリーAの調製工程とスラリーBの調製工程とで使用される水性媒体は、同一のものであってもあるいは異なる種類のものであってもよいが、好ましくは同じ種類である。後の混合工程において、水性媒体の適合性を考慮する必要がないからである。水性媒体に添加する耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物の量は、特に制限されず、上記で規定となるような量で耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物を水性媒体に添加することが好ましい。粉砕条件は、特に制限されないが、具体的には、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物を所定量、水性媒体に溶解/分散した後、ボールミルを用いて、好ましくは15〜30℃の温度で、好ましくは30分から20時間、湿式粉砕して、スラリーBを調製することが好ましい。上記したような条件であれば、耐火性無機酸化物、水溶性貴金属塩、他の酸化物が均一に混合できる。
【0042】
このようにして調製されたスラリーAとスラリーBとを混合して、スラリーCを得る。ここで、スラリーAおよびBの混合比率は、所望の量が三次元構造体に担持できる量であれば、特に限定されず、適宜調整されうる。
【0043】
次に、三次元構造体(例えば、ハニカム担体)をスラリーCに浸し、余剰のスラリーを除いた後、乾燥、焼成して触媒を得る。この際、三次元構造体のスラリーCへの浸漬条件は、スラリー中の触媒活性成分が三次元構造体と十分均一に接触して、次の乾燥・焼成工程でこれらの触媒活性成分が十分三次元構造体に担持される条件であれば特に制限されない。例えば、三次元構造体をスラリーC中に浸漬した後、三次元構造体をスラリーCから引き上げて余分なスラリーを除去する。その後、100〜250℃で10分から3時間、乾燥し、さらに、350〜600℃で10分から5時間、焼成することにより、触媒活性成分が三次元構造体に担持された本発明の排ガス浄化用触媒が製造されうる。
【0044】
上記調製方法のうち、(1)、(2)、(4)の方法が好ましく使用される。
【0045】
本発明の排ガス浄化用触媒は、排ガス、例えば、ガソリンを含む燃料からの排ガスと接触させることによって、効率的に排ガスを浄化することができる。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、水分を含みかつ排ガスが酸化雰囲気と還元雰囲気との間を変動する排ガスに対しても、好適に使用することができる。ここで、「水分を含み」とは、排ガス中の水分含有量が2〜15容量%であることを意味し、好ましくは排ガス中の水分含有量が4〜13容量%である。
【0046】
また、「排ガスが酸化雰囲気と還元雰囲気との間を変動する」とは、排ガス中に含まれる酸化成分(酸素およびNOx)と被酸化成分(HC、CO、水素)とのバランスが、酸化成分の方が多い場合を酸化状態、被酸化成分の方が多い場合を還元状態、両者の量が同じ場合を化学量論状態(ストイキオメトリー)とした時、酸化状態、ストイキオメトリー、還元状態を変動する状態をさす。また、排ガス中のガス成分は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素、水素、窒素、残存する酸素などで構成される。ストイキオメトリーでも燃料が完全燃焼しなければ燃料、酸素が排ガスに残存することになる。
【0047】
このため、本発明による排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排気ガス(特に、NOx)の浄化に使用されうる。特に、酸化雰囲気においてNOxを吸蔵し、還元雰囲気においてNOxを放出還元する、いわゆるNOxトラップ触媒として使用することができる。
【0048】
すなわち、本発明は、本発明の排ガス浄化用触媒に対し、排ガスを接触させることを有する、排ガスの浄化方法をも提供する。
【0049】
上記方法において、排ガスの空間速度(S.V.)は10,000〜300,000h
−1、好ましくは10,000〜100,000h
−1である。
【0050】
上述したように、本発明の排ガス浄化用触媒は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排ガスを浄化するのに使用できる。すなわち、排ガス浄化用触媒を、排ガス中に設置することによって排ガスの浄化を行なう。本発明では、本発明の排ガス浄化用触媒の設置位置は特に制限されないが、本発明の浄化用触媒を排気ガスの上流側に設置し、三元触媒や炭化水素吸着剤を下流側に設置する、または三元触媒や酸化触媒を排気ガスの上流側に設置し、本発明の排ガス浄化用触媒を排気ガスの下流側に設置する、などによって排ガスの浄化を行なうことができる。このような方法を採用することにより、効率的に排ガスを浄化することができる。
【実施例】
【0051】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0052】
(実施例1)
平面方向の円相当平均径が40μm、平均厚みが0.1μmである薄板状のセリア20gと水80gとを混合し、ボールミルにより常温で30分間湿式粉砕して、水性スラリーAを得た。なお、水性スラリーAに含まれる薄板状のセリアの平面方向の円相当平均径は4.8μmであった。
別途、耐熱性活性アルミナ(BET=136m
2/g、平均粒径=15μm)227g、硝酸カリウム41g、白金3gを含むジニトロジアンミン白金水溶液および水250gを混合し、ボールミルにより常温で15時間湿式粉砕して水性スラリーBを得た。
【0053】
このようにして得られた水性スラリーAとBとを混合し、スラリーCを得た。このスラリーCに、市販のコージェライト質モノリスハニカム担体(
620001.24000248セル/m2(400セル/平方インチ
)、直径24mm、長さ66mm、体積0.030L)を浸漬し、余剰のスラリーを圧縮空気により吹き飛ばした。次に、150℃で水分減量がなくなるまで10分間乾燥し、さらに電気炉にて500℃で2時間焼成して、完成触媒(A)を得た。この触媒は、担体に対して、白金3g/L、薄板状のセリア20g/L、酸化カリウム19g/L及びアルミナ227g/Lが担持されていた。
【0054】
(実施例2)
実施例1において水性スラリーAを得る際の粉砕時間を90分とする以外は、実施例1と同様の方法に従って、完成触媒(B)を得た。なお、水性スラリーAに含まれる薄板状のセリアの平面方向の円相当平均径は4.3μmであった。この触媒は、担体に対して、白金3g/L、薄板状のセリア20g/L、酸化カリウム19g/L及びアルミナ227g/Lが担持されていた。
【0055】
(実施例3)
実施例1において水性スラリーAを得る際の粉砕時間を150分とする以外は、実施例1と同様の方法に従って、完成触媒(C)を得た。なお、水性スラリーAに含まれる薄板状のセリアの平面方向の円相当平均径は2.7μmであった。この触媒は、担体に対して、白金3g/L、薄板状のセリア20g/L、酸化カリウム19g/L及びアルミナ227g/Lが担持されていた。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、薄板状のセリアの代わりに、平均粒径が10μmである粒状のセリアを用いる以外は、実施例1と同様の方法に従って、完成触媒(X)を得た。この触媒は、担体に対して、白金3g/L、セリア20g/L、酸化カリウム19g/L及びアルミナ227g/Lが担持されていた。
【0057】
(評価:経時性能試験)
上記実施例1〜3で調製した完成触媒(A)〜(C)、及び比較例1で調製した完成触媒(X)について、下記試験を行った。すなわち、まず触媒を電気炉にて800℃で50時間、耐久した。その後、ステンレス反応管に触媒を充填し、空間速度60,000Hr
−1になるように下記表1に示される組成の反応ガスを導入し、触媒床入口300℃、350℃および400℃での平均NOx浄化率(%)を測定して、触媒性能を評価した。結果を下記表2および
図1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
なお、本出願は、2008年10月17日に出願された日本国特許出願第2008−268762号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。