(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時間決定部は、前記情報処理装置について予め定められたユニークな値を用いて、決定された前記時間の範囲における、アプリケーションの更新のための情報をダウンロードする時刻を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、無線LANシステムの構成の一例である。
【0019】
無線LANシステムは、複数の端末1と、1個の無線LANステーション2とを含む。無線LANステーション2によりセル3が規定される。換言すれば、セル3は、無線LANステーション2に対応する。
【0020】
端末1は、無線LANステーション2にアクセス可能な情報処理装置であり、例えばモバイルコンピュータ、携帯端末を含む。端末1は、ネットワークにアクセスする場合に、アクセスポイントである無線LANステーション2に接続要求する。これにより、端末1は、ネットワークを介して、ホストコンピュータに接続し、これとの間で通信を行う。
【0021】
無線LANステーション2は、セル3内のアクセスポイントである。無線LANステーション2は、端末1と無線通信を媒介として、外部のネットワークへ通信を中継する。1個のセル3において、1個の端末1が、無線LANステーション2と同時刻に通信可能とされる。複数の端末1を区別する場合には、端末#1、端末#2、端末#3・・・、端末#n(nは整数)のように表すものとする。
【0022】
例えば、端末#1における無線LANステーション2からの受信電波の受信強度を「X#1」と表し、端末#1における無線LANステーション2との間の通信速度を「V#1」と表す。他の端末についても同様である。
【0023】
図2は、端末の構成例を示す図である。
【0024】
端末1は、管理部11と、管理データ格納部12と、アプリケーション13と、OS(オペレーティングシステム)15と、無線LANインタフェース部16とを含む。管理部11は、情報取得部111と、クラス判定部112と、時間決定部113とを含む。管理データ格納部12は、受信強度テーブル121と、通信速度テーブル122と、クラス値テーブル123と、時間表テーブル124と、実行履歴テーブル125とを含む。アプリケーション13は、起動部131と、ダウンロード部132とを含む。
【0025】
無線LANインタフェース部16は、電波を受信する通信インタフェース部である。無線LANインタフェース部16は、無線LANステーション2からの電波を受信し、無線LANステーション2へ電波を送信する通信インタフェースである。無線LANインタフェース部16は、例えば、電波を送受信するアンテナを有する無線LANカードなどである。無線LANインタフェース部16は、セル3内のアクセスポイントである無線LANステーション2を介して、データの送受信、換言すれば、無線パケットの送受信を行う。無線LANインタフェース部16と無線LANステーション2との間における通信は、例えばIEEE802.11a、IEEE802.11b等の規格に従う通信である。
【0026】
無線LANインタフェース部16は、無線LANステーション2との間でデータの送受信を行うと、その都度、ネットワーク情報を生成して保持する。ネットワーク情報は、例えば、IPアドレス、MACアドレス、無線LANインタフェース部16における受信電波の受信強度、無線LANインタフェース部16における通信速度を含む。なお、受信強度に代えて、信号対雑音比(S/N)を用いるようにしても良い。
【0027】
OS15は、端末1を制御する制御プログラムを実行する処理部であり、管理部11にアプリケーション13の起動時刻を管理させる。制御プログラムは、例えば、RAM上に存在し、CPU上で実行される。OS15は、例えば管理部11からの要求に応じて、無線LANインタフェース部16から受信強度X及び通信速度Vの双方を取得する。OS15は、取得した受信強度X及び通信速度Vを管理部11に送る。OS15は、アプリケーション13に業務を実行させる。
【0028】
アプリケーション13は、例えば、業務処理プログラムであるアプリケーションプログラムを実行する処理部であり、予め定められた業務を処理する。アプリケーションプログラムは、例えば、RAM上に存在し、CPU上で実行される。アプリケーション13は、例えば業務開始時刻に、業務に使用するデータの取得、セキュリティパッチやウイルスパターン更新のために、大量のデータを、無線LANステーション2を介して、ホストコンピュータ1からダウンロードする。
【0029】
管理部11は、OS15から受信強度X及び通信速度Vを取得する。管理部11は、取得した受信強度X及び通信速度Vと、管理データ格納部12に格納された情報とを用いて、アプリケーション13の起動処理を実行する。
【0030】
管理データ格納部12は、管理部11により参照され、受信電波の通信クラスを判定するための情報、アプリケーション13を起動するための情報などを格納するための記憶部である。例えば、管理データ格納部12はハードディスク装置等である。
【0031】
情報取得部111は、OS15から受信強度X及び通信速度Vを取得する。例えば、情報取得部111は、予め定められた周期で、OS15に対して、受信強度X及び通信速度Vの取得要求を送る。これに応じて、OS15は、先の取得要求から今回の取得要求までの間に実行された通信の各々についての受信強度X及び通信速度Vを、情報取得部111に送る。情報取得部111は、取得した受信強度X及び通信速度Vをクラス判定部112に送る。
【0032】
なお、情報取得部111が、無線LANインタフェース部16における受信電波の受信強度X及び通信速度Vの少なくとも一方を取得するようにしても良い。
【0033】
クラス判定部112は、取得された受信強度X及び通信速度Vの双方に基づいて、クラスを判定する。通信のクラスとは、受信電波について通信品質の良さを階層(クラス)により表したものである。即ち、通信のクラスが高いほど、通信品質が良好とされる。なお、受信強度X及び通信速度Vは、一般に受信エラーレートと相関関係にあり、通信品質を評価する尺度となる。また、受信強度及び通信速度の双方を用いることにより、より詳細に通信のクラスを判定することができる。
【0034】
なお、クラス判定部112は、取得された受信強度X及び通信速度Vの少なくとも一方に基づいて、無線LANインタフェース部16における通信のクラスを判定するようにしても良い。
【0035】
クラス判定部112は、取得された受信強度Xを用いて受信強度テーブル121を参照して、受信強度クラスCを求め、取得された通信速度Vを用いて通信速度テーブル122を参照して、通信速度クラスDを求め、求めた受信強度クラスCと通信速度クラスDとを用いてクラス値テーブル123を参照して、通信のクラスを判定する。
【0036】
具体的には、クラス判定部112は、通信のクラスの判定に先立って、情報取得部111から取得した受信強度X及び通信速度Vについて、取得した時間範囲ごとに、各々の代表値を決定する。クラス判定部112は、取得した時間範囲における複数の受信強度X及び複数の通信速度Vについて、例えば単純平均、移動平滑化等の統計処理を用いることにより、代表値を決定する。これにより、無線LANの通信環境が時々刻々に変化する場合でも、安定的に通信のクラスを判定することができる。
【0037】
次に、クラス判定部112は、受信強度X及び通信速度Vの各々の決定した代表値を用いて、受信強度テーブル121及び通信速度テーブル122を参照し、受信強度クラスC及び通信速度クラスDを求める。
【0038】
更に、クラス判定部112は、求めた受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せに基づいて、クラス値テーブル123を参照し、通信のクラスを決定する。通信のクラスは、例えば、重み付けランクRにより表される。重み付けランクRは、受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せに基づいて、予め定められた通信のクラスである。クラス判定部112は、判定した通信のクラスを時間決定部113に送る。
【0039】
なお、クラス判定部112は、受信強度テーブル121及び通信速度テーブル122のいずれか一方を用いて、通信のクラスを判定するようにしても良い。
【0040】
時間決定部113は、判定された通信のクラスに基づいて、アプリケーション13の更新のための情報をダウンロードする時間の範囲(起動時間範囲)を決定する。時間決定部113は、時間の範囲として、判定された通信のクラスが高い順に、より早い時間の範囲を割当てる。
【0041】
更に、時間決定部113は、端末1について予め定められたユニークな値(以下、ユニーク値という)を用いて、決定された時間の範囲における、アプリケーション13の更新のための情報をダウンロードする時刻を決定する。
【0042】
具体的には、時間決定部113は、時間表テーブル124を参照して、クラス判定部112により決定された重み付けランクRに対応する起動時間範囲の割当てを決定する。更に、時間決定部113は、端末1のユニーク値を用いて、割当てられた起動時間範囲から起動時間を決定する。時間決定部113は、決定した起動時間と現在時刻とに基づいて、アプリケーション13を起動する時刻(起動時刻)を決定する。起動時刻になった場合、時間決定部113は、アプリケーション13の起動開始を通知する。
【0043】
ここで、時間決定部113により用いられるユニーク値について説明する。
【0044】
複数の端末1の通信のクラスが同じである場合、複数の端末1間で、割当てられた起動時間範囲が重複する結果、起動時間が重複する可能性がある。そこで、時間決定部113は、通信のクラスが同じである複数の端末1間で起動時間が重複しないように、端末1の固有値を用いて、割当てられた起動時間範囲から起動時間を決定する。固有値は、例えばMACアドレス、IPアドレス、ホスト名等の端末1毎に一意に定まる情報である。固有値は、情報取得部111によりOS15から取得される。この固有値を用いて、ユニーク値が定められる。
【0045】
具体的には、ユニーク値は、MACアドレス、IPアドレス等の固有値から生成される値である。ユニーク値が大きい値である場合、起動時間範囲における起動時間が遅くされる。即ち、同じ通信のクラス(同じ重み付けランクR)であっても、起動時間が遅くなる。ユニーク値が小さい値である場合、起動時間範囲における起動時間が早くされる。即ち、同じ通信のクラスであっても、起動時間が早くなる。
【0046】
例えば、業務において、端末1におけるゲストユーザ用のIPアドレスと、通常業務に係るユーザ(通常ユーザとする)に割当てられるIPアドレスとが区別できる場合がある。この場合、固有値としてIPアドレスを用いることにより、通常ユーザ(業務上優先されるユーザなど)に対して、割当てられた起動時間範囲において、ゲストユーザ(業務上優先されないユーザなど)よりも早い起動時間を割り当てることができる。即ち、通常ユーザの端末1とゲストユーザの端末1とが同じ通信のクラスである場合、通常ユーザのIPアドレスの固有値から生成されるユニーク値は、ゲストユーザのIPアドレスの固有値から生成されるユニーク値と比較して、割当てられる起動時間範囲において、相対的に早い起動時間となるようにされる。
【0047】
起動部131は、アプリケーション13を起動する。具体的には、起動部131は、管理部11の時間決定部113からアプリケーション13の起動開始の通知を受けると、アプリケーション13の初期化、メモリ領域確保などの起動処理を開始する。
【0048】
ダウンロード部132は、決定された時間の範囲において、アプリケーション13の更新のための情報を、無線LANインタフェース部16を介して、ダウンロードする。具体的には、ダウンロード部132は、起動部131による起動処理において、端末1のアクセスポイントへの接続を、OS15を介して、要求する。端末1によるアクセスポイントへの接続後、ダウンロード部132は、決定された時間の範囲において、アプリケーション13の修正ソフト、更新データなどの更新のための情報を、無線LANインタフェース部16を介して、ダウンロードする。
【0049】
次に、
図3〜
図5を参照して、管理データ格納部12における各種テーブルについて説明する。
【0050】
図3(A)は、受信強度テーブル121の一例を示す図である。
【0051】
受信強度テーブル121は、受信強度Xに基づいて、受信強度クラスCを定める。受信強度テーブル121において、受信強度Xが強いほど高い順位のクラスとされる。受信強度テーブル121は、通信品質の評価尺度の1つである受信電波の受信強度Xについて、予め定めた基準範囲毎にクラス分けされた受信強度クラスCのいずれに属するかを判定するためのテーブルである。いずれの受信強度クラスCに属するかは、クラス判定部112により受信強度テーブル121に定められた受信強度範囲を参照して判定される。
【0052】
具体的には、受信強度テーブル121は、受信強度クラス毎に、受信強度範囲を格納する。受信強度クラスCは、受信強度Xがどの通信品質であるかを示すために、予め定められたクラス(階層)である。受信強度範囲は、受信強度クラス毎の基準範囲を予め定めた受信強度の数値範囲である。
【0053】
例えば、受信強度クラスCは、受信強度範囲毎に、C1〜C4のように4段階にクラス分けされる。C1が受信強度Xの最も強いクラスであり、C2、C3、C4の順に受信強度Xの弱いクラスとされる。受信強度クラスCは、4段階に限定されない。受信強度テーブル121には、受信強度クラス「C1」について受信強度範囲「X≧a」、同様に「C2」について「a>X≧b」、「C3」について「b>X≧c」、「C4」について「c>X」が格納される。例えば、a=−50、b=−60、c=−70である(いずれも、単位はdBm)。
【0054】
なお、
図3(A)に示す備考は、受信強度の評価を参考的に示したものである。例えば、受信強度クラスC1の備考「非常に良好」は、最も高い順位のクラスを表す。
【0055】
受信強度テーブル121は、予め管理データ格納部12に格納される。受信強度テーブル121は、クラス判定部112により参照されて、受信強度Xがいずれの受信強度クラスCに属するかの判定に用いられる。
【0056】
図3(B)は、通信速度テーブル122の一例を示す図である。
【0057】
通信速度テーブル122は、通信速度Vに基づいて、通信速度クラスDを定める。通信速度テーブル122において、通信速度Vが速いほど高い順位のクラスとされる。通信速度テーブル122は、通信品質の評価尺度の1つである受信電波の通信速度Vについて、予め定めた基準範囲毎にクラス分けされた通信速度クラスDのいずれに属するかを判定するためのテーブルである。いずれの通信速度クラスDに属するかは、クラス判定部112により通信速度テーブル122に定められた通信速度範囲を参照して判定される。
【0058】
具体的には、通信速度テーブル122は、通信速度クラス毎に、通信速度範囲を格納する。通信速度クラスDは、通信速度Vがどの通信品質であるかを示すために、予め定められたクラス(階層)である。通信速度範囲は、通信速度クラス毎の基準範囲を予め定めた通信速度の数値範囲である。
【0059】
例えば、通信速度クラスDは、通信速度範囲毎に、D1〜D4のように4段階にクラス分けされる。D1が通信速度Vの最も速いクラスであり、D2、D3、D4の順に通信速度Vの遅いクラスとされる。通信速度クラスDは、4段階に限定されない。通信速度テーブル122には、通信速度クラス「D1」について、通信速度範囲「V≧α」、同様に「D2」について「α>V≧β」、「D3」について「β>V≧γ」、「D4」について「γ>V」が格納される。例えば。α=50、β=40、γ=30である(いずれも、単位はMbps)。
【0060】
なお、
図3(B)に示す備考は、通信速度の評価を参考に示したものである。例えば、通信速度クラスD1の備考「非常に速い」は、最も高い順位のクラスを表す。
【0061】
通信速度テーブル122は、予め管理データ格納部12に格納される。通信速度テーブル122は、クラス判定部112により参照されて、通信速度Vがいずれの通信速度クラスDに属するかの判定に用いられる。
【0062】
図4(A)は、クラス値テーブル123の一例を示す図である。
【0063】
クラス値テーブル123は、受信強度クラスCと通信速度クラスDとに基づいて、通信のクラスを定める。具体的には、クラス値テーブル123は、例えば受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せ毎に、重み付けランクRと、優先度とを格納する。受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せは、受信強度テーブル121における受信強度クラスCと、通信速度テーブル122における通信速度クラスDとの組合せである。
【0064】
重み付けランクRは、受信強度クラスCと通信速度クラスDとの組合せに基づいて決定される通信のクラスである。重み付けランクRは、例えばR1〜R4のように4段階にクラス分けされる。重み付けランクRは、4段階に限定されない。優先度は、割り当てる起動時間範囲において、起動時間を早くするか、遅くするかを定める優先順位である。優先度は、例えば1(最も高い優先度の通信のクラス)〜4(最も低い優先度の通信のクラス)のように順位付けされる。
【0065】
例えば、クラス値テーブル123は、
図4(A)に示すクラス値テーブル123において、受信強度クラス「C1」及び通信速度クラス「D1」の組合せについて、重み付けランク「R1」が格納され、最も高い優先度「1」の通信のクラスとされる。また、例えば、受信強度クラス「C4」及び通信速度クラス「D4」である場合に、重み付けランク「R4」が格納され、最も低い優先度「4」の通信のクラスとされる。
【0066】
クラス値テーブル123は、予め管理データ格納部12に格納される。クラス値テーブル123は、クラス判定部112により参照されて、受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せがいずれの重み付けランクRにあるか、換言すれば、通信のクラスがいずれであるかの判定に用いられる。
【0067】
なお、クラス値テーブル123におけるこれらの重み付けランクRは、受信強度クラスCのみ又は通信速度クラスDのみを用いて判定するようにしても良い。
【0068】
図4(B)は、時間表テーブル124の一例を示す図である。
【0069】
時間表テーブル124は、重み付けランクR毎に、起動時間範囲を格納するテーブルである。起動時間範囲は、時間決定部113によりアプリケーション13を起動させる時間の範囲である。
【0070】
具体的には、時間表テーブル124は、重み付けランク毎に、起動時間範囲と、起動時間帯とを格納する。起動時間範囲は、アプリケーション13が起動する時間の範囲の数値データ範囲である。起動時間帯は、起動時間範囲に示される数値データの時間換算値である。
【0071】
例えば、重み付けランク「R1」では、起動時間範囲「0000〜0459」及び起動時間帯「5分」が格納されている。この場合に、「0000」は00分00秒を示し、「0459」は04分59秒を示す。即ち、重み付けランク「R1」である場合、起動時間範囲は、0分0秒〜4分59秒である。
【0072】
また、重み付けランク「R2」では、起動時間範囲「0500〜0959」及び起動時間帯「5分」が格納されている。この場合に、「0500」は05分00秒を示し、「0959」は09分59秒を示す。即ち、重み付けランク「R2」である場合、起動時間範囲は、5分0秒〜9分59秒である。
【0073】
なお、通信のクラスが低くなるに従ってダウンロード処理に要する時間が長くなるため、重み付けランク「R2」が低くなるほど起動時間帯を長くしても良い。例えば、重み付けランク「R1」〜「R3」では起動時間帯「5分」とし、重み付けランク「R4」では起動時間帯「10分」と長くするようにしても良い。以上のように、通信のクラスが低くなるに従って、起動時間が遅くなる。
【0074】
時間表テーブル124は、予め管理データ格納部12に格納される。時間表テーブル124は、時間決定部113により参照され、起動時刻の算出に用いられる。
【0075】
なお、時間表テーブル124に、ダウンロード(又は起動)する時刻を指定するダウンロード時間を格納するようにしても良い。例えば、ダウンロード時間として「8:40」、「9:40」、「12:20」、「13:20」、「19:40」、「20:40」等の複数の時間を格納するようにしても良い。これにより、業務上の形態に応じて、必要時間に、必要なデータ更新を実行することができる。また、例えば異なるアプリケーション毎に、各々に対応するダウンロード時間を格納するテーブルを用意しても良い。
【0076】
図5(A)〜(D)は、実行履歴テーブル125(125’)の一例を示す図である。
【0077】
実行履歴テーブル125は、アプリケーション起動開始の通知を実行した否かの実行フラグと、その実行時刻の履歴とが記録されるテーブルである。従って、実行履歴テーブル125は、時間決定部113により、アプリケーション起動開始の通知の都度に更新される。アプリケーション起動処理の通知後、時間決定部113により重複してアプリケーション起動開始の通知を実行しないように、実行フラグで管理される。これにより、次のダウンロード時間まで重複処理を実行しないようにすることができる。
【0078】
具体的には、実行履歴テーブル125は、実行フラグ1251と、日付/時間設定履歴1252とを含む。実行フラグ1251は、オン又はオフに設定される。オン状態は、アプリケーション起動命令を通知したことを示す。オフ状態は、アプリケーション起動命令を通知していないことを示す。日付/時間設定履歴1252は、実行フラグ1251をオンに設定した日付及び時刻が記録される。
【0079】
例えば、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、実行履歴テーブル125における実行フラグ1251では、オンに設定されている。日付/時間設定履歴1252は、最後の実行フラグ1251のオン設定の日付「2011/3/11」、設定時間「9:47:37」であることを示す。
【0080】
図5(C)及び
図5(D)は、実行履歴テーブル125’の一例を示す図であり、
図5(A)及び
図5(B)に示す実行履歴テーブル125から次の履歴の動作を説明する図である。
【0081】
例えば、
図5(C)に示すように、実行履歴テーブル125’において、時間決定部113により実行フラグ1251’がオフに設定されたとする。その設定以降において、時間決定部113がアプリケーション起動開始を通知した場合、時間決定部113が実行フラグ1251’をオフからオンに設定し、それと共に、
図5(D)に示すように、日付/時間設定履歴1252’に、その履歴を設定の日付「2011/3/12」、設定時間「9:47:36」と記録する。
【0082】
ダウンロード処理が、例えば1日に1度だけ実行される場合、ダウンロード処理通知後は、時間決定部113は、端末1を立ち上げる都度にアプリケーション13がダウンロードを行わないようにする。具体的には、時間決定部113は、ダウンロード処理通知後には実行フラグをオンに設定し、翌日以降にフラグをクリアするまで、二重処理を行わないように、実行履歴テーブル125を管理する。
【0083】
図6は、無線LANシステムにおける端末からアクセスポイントへの接続状況の説明図である。
【0084】
セル3内において、1個の端末1のみが、アクセスポイントである無線LANステーション2と、同一時間内に通信可能とされる。例えば、時間軸上で、占有時間T#11が、端末#1が無線LANステーション2に接続されている時間である。
【0085】
例えば、端末#1における受信電波の受信強度を「X#1」と表し、端末#1における通信速度を「V#1」と表す。例えば、受信強度X#1(=−45dBm)>X#2(=−65dBm)>X#3(=−78dBm)であり、通信速度V#1(=54Mbps)>V#2(=48Mbps)>V#3(=24Mbps)であるとする。また、端末#1の重み付けランクは「R1」とされ、端末#2の重み付けランクは「R2」とされ、端末#3の重み付けランクは「R3」とされるものとする。
【0086】
図6において、時間原点を起動時間の0分0秒とする。例えば、端末#1において、無線LANステーション2に接続されている時間、換言すれば、占有時間は、T#11、T#12、T#13、T#14である。端末#2では、占有時間は、T#21、T#22、T#23、T#24である。端末#3では、占有時間は、T#31、T#32、T#33、T#34である。同一時間にセル3内の無線LANステーション2へ接続できる端末1は1台であるので、占有時間が重なることはない。
【0087】
同一のパケット通信量当たりで見た場合に、その通信時間は通信品質に依存する。このため、端末#1の占有時間T#11と端末#2の占有時間T#21とを比較すると、占有時間T#21はT#11よりも長くなる。さらに、端末#3の占有時間T#31は、T#21よりも長くなる。
【0088】
通信のクラスに応じて起動時間が定められるため、
図6に示すように、重み付けランクR1の端末#1が、他の重み付けランクRの端末#2及び#3に先立って、無線LANステーション2に接続することができる。重み付けランクR2の端末#2が、端末#1に遅れて、かつ、端末#3に先立って、無線LANステーション2に接続する。重み付けランクR3の端末#3が、端末#1及びに端末#2に遅れて、無線LANステーション2に接続する。
【0089】
これにより、無線LANシステムにおいて、通信のクラスが高い端末1が、それよりも通信のクラスが低い他の端末1に先立って、無線LANステーション2に接続し、他の端末1は、通信のクラスが高い端末1よりも十分遅れて無線LANステーション2に接続する。これにより、複数の端末1がランダムに無線LANステーション2に接続要求して、衝突を発生することを回避することができ、通信のクラスが高い端末1が優先してダウンロード処理などを実行することができる。
【0090】
また、無線LANシステムで、端末1の固有値を用いることにより、同一の起動時間範囲で、ダウンロード処理を優先する業務上優先度の高い端末1と、ゲストアカウント使用等の優先度の低い端末1とで、起動時間を差別化して設定することができる。これにより、業務上優先度の高い端末1には、同一の起動時間範囲で、優先的に早くダウンロード処理を完了させることができる。
【0091】
図7は、管理部11が実行するアプリケーション管理処理フローを示す図である。
【0092】
情報取得部111は、OS15から現在時刻と、受信強度X及び通信速度Vを含むネットワーク情報とを取得する(ステップS11)。
【0093】
次に、クラス判定部112は、情報取得部111により取得された受信強度X及び通信速度Vから各々の代表値を決定する(ステップS12)。例えば、受信強度X及び通信速度Vは時間とともに変動するため、取得した時間範囲において、クラス判定部112は、例えば平均値、最多出現値等の統計処理により受信強度の代表値Xav1、通信速度の代表値Vav1を算出する。
【0094】
クラス判定部112は、受信強度テーブル121及び通信速度テーブル122を参照し、受信強度X及び通信速度Vの各々の代表値を用いて、通信のクラスを判定する(ステップS13)。例えば、受信強度の代表値Xav1≧aである場合、クラス判定部112は、
図3(A)に示す受信強度テーブル121を参照して、受信強度クラス「C1」を決定する。また、α>通信速度Vの代表値Vav1≧βである場合、クラス判定部112は、
図3(B)に示す通信速度テーブル122を参照して、通信速度クラス「D2」を決定する。これにより、クラス判定部112は、
図4(A)に示すクラス値テーブル123を参照して、受信強度クラスC及び通信速度クラスDの組合せに基づいて、重み付けランク「R1」(通信のクラス)を決定する。
【0095】
次に、時間決定部113は、クラス判定部112から通信のクラス(重み付けランクR)を取得すると、時間表テーブル124を参照して、起動時間(起動時刻)を決定する(ステップS14)。なお、起動処理の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0096】
時間決定部113は、決定した起動時刻に従って、アプリケーション起動処理を実行し(ステップS15)、その後、処理を終了する。なお、アプリケーション起動処理の詳細については、
図9を参照して後述する。
【0097】
以上のような時間決定部113によるアプリケーション起動開始の通知後、アプリケーション13の起動部131が起動する。起動後に、アプリケーション13は、ダウンロード処理の実行するために、OS15に通知する。これを受けて、OS15が、無線LANインタフェース部16を介して、アクセスポイントである無線LANステーション2に接続要求する。無線LANステーション2に接続後、アプリケーション13のダウンロード部132が、ダウンロード処理を実行する。なお、アプリケーション13の起動後、管理部11がアプリケーション13のダウンロード処理の開始時刻は制御できないため、アプリケーション13のダウンロード部132により制御される。ここでは、アプリケーション13の起動後に、
図2に示す実施例においては、ダウンロード部132がダウンロード処理を開始するものとする。
【0098】
図8は、管理部11が実行する起動処理フローを示す図である。
【0099】
時間決定部113は、時間表テーブル124を参照して、通信のクラス(重み付けランクR)から起動時間範囲を決定する(ステップS21)。例えば、重み付けランク「R2」の場合、時間決定部113は、
図4(B)に示す時間表テーブル124を参照して、起動時間範囲「0500〜0959」を決定する。
【0100】
時間決定部113は、情報取得部111から端末1のユニーク情報(固有値)を取得する(ステップS22)。例えば、時間決定部113は、情報取得部111から端末1のIPアドレスを固有値として取得し、取得した固有値を加工してユニーク値「+235」を得るとする。
【0101】
時間決定部113は、起動時間範囲及びユニーク情報(固有値)から起動時間を決定する(ステップS23)。例えば、重み付けランク「R2」の場合における起動時間範囲「0500〜0959」、かつユニーク値「+235」である場合、時間決定部113は、起動時間RT1=0500+235=0735、即ち、起動時間「7分35秒」と決定する。
【0102】
時間決定部113は、現在時刻及び起動時間に基づいて、起動時刻(絶対時刻)を決定する(ステップS24)。例えば、ダウンロード時間「8:40、9:40、12:20、13:20、19:40、20:40」、現在時刻=8時45分18秒とする。時間決定部113は、現在時刻=8時45分18秒、及び、ダウンロード時間を参照して、直近のダウンロード時間「9:40」を選択する。時間決定部113は、ダウンロードを開始するべき起動時刻AT1=直近のダウンロード時間+起動時間RT1=「9:40」+7分35秒=9時47分35秒と決定する。
【0103】
時間決定部113は、決定した起動時刻AT1をアプリケーション13に通知し(ステップS25)、その後、処理を終了する。
【0104】
以上がダウンロードを開始する起動時刻あるいはダウンロードを伴うアプリケーションを起動する起動時刻AT1を決定するまでの動作フローである。
【0105】
図9は、時間決定部113のアプリケーション起動処理フローを示す図である。なお、
図9に示すフローでは、アプリケーションの起動処理を一日一回としている。
【0106】
時間決定部113は、実行履歴テーブル125を参照して、実行フラグ1251及び実行履歴1252をチェックする(ステップS31)。例えば、時間決定部113は、実行履歴テーブル125を参照して、
図5(A)に示す実行フラグ1251が「オン」であり、
図5(B)に示す実行履歴テーブル125から最終のオン設定日時「2011/3/11 9:47:37」であることをチェックする。
【0107】
次に、時間決定部113は、前回のアプリケーション起動開始通知の実行から翌日以降に実行フラグ1251をオンとしたか判断する(ステップS32)。例えば、チェック日時2011/3/12である場合、
図5(B)に示す前回実行「2011/3/11 9:47:37」であることから、時間決定部113は、「2011/3/12」以降に実行フラグ1251がオンされたか判断する。
【0108】
前回実行の翌日以降に実行フラグ1251がオンされていない場合(ステップS32 No)、時間決定部113は、ステップS31を繰り返す。
【0109】
前回実行の翌日以降に実行フラグ1251がオンされた場合(ステップS32 Yes)、時間決定部113は、実行履歴テーブル125の実行フラグ1251をクリアし、オフに設定する(ステップS33)。例えば、
図5(B)に示す前回実行「2011/3/11 9:47:37」であることから、時間決定部113は、「2011/3/12」以降に実行フラグ1251をオンしていないと判断し、
図5(C)に示すように、実行フラグ1251’をクリアして「オフ」とする。
【0110】
次に、時間決定部113は、現在の時刻が起動時刻に到達したか判断する(ステップS34)。例えば、時間決定部113は、現在の時刻が起動時刻AT1=9時47分35秒に到達したか判断する。
【0111】
起動時刻ATに到達していない場合(ステップS34 No)、到達するまでステップS34の処理を繰り返す。
【0112】
起動時刻ATに到達した場合(ステップS34 Yes)、時間決定部113は、実行フラグ1251をオンに設定する(ステップS35)。例えば、現在の時刻が起動時刻AT1=9時47分35秒に到達した場合、時間決定部113は、実行フラグ1251をオンに設定し、
図5(D)に示すように、実行履歴1252’の日付及び設定時間に「2011/3/12 9:47:36」と記録する。これにより、ダウンロード完了後、当日何度かあるダウンロード時間の度にダウンロードが行われないように、実行フラグ1251をオン設定し、翌日以降に実行フラグ1251がクリアされるまで、二重の処理を行わない動作設定を可能とする。
【0113】
時間決定部113は、実行フラグ1251をオンに設定後、アプリケーション13に起動開始を通知して(ステップS36)、処理を終了する。
【0114】
図10は、端末の他の構成例を示す図である。
【0115】
図10の例は、
図2の例においてアプリケーション13に代えてアプリケーション14を備え、アプリケーション14が、起動部144とダウンロード部145とに加えて、情報取得部141と、クラス判定部142と、時間決定部143とを含む例である。換言すれば、アプリケーション14がダウンロード時刻を決定する例である。従って、端末1は、管理部11を含まない。情報取得部141、クラス判定部142及び時間決定部143は、各々、
図2の情報取得部111、クラス判定部112及び時間決定部113に相当する。起動部144及びダウンロード部145は、各々、
図2の起動部131及びダウンロード部132に相当する。
【0116】
図10においては、ダウンロード時刻を決定するために、アプリケーション14が起動されていることが必要である。これにより、情報取得部141、クラス判定部142及び時間決定部143が処理を実行することにより、ダウンロード時刻が決定される。これに基づいて、アプリケーション14の起動部144が、ダウンロード処理の開始時刻を制御する。従って、アプリケーション14が起動している場合でも、アプリケーション14自身が、ダウンロード時間を決定し管理することができる。
【0117】
図11は、アプリケーションが実行する起動時間管理処理フローを示す図である。
【0118】
情報取得部141は、
図7に示すステップS11と同様に、OS15から現在時刻と、受信強度X及び通信速度Vを含むネットワーク情報とを取得する(ステップS41)。
【0119】
クラス判定部142は、
図7に示すステップS12と同様に、取得した受信強度X及び通信速度Vから各々の代表値を決定する(ステップS42)。
【0120】
クラス判定部142は、
図7に示すステップS13と同様に、受信強度テーブル121及び通信速度テーブル122を参照し、受信強度X及び通信速度Vの各々の代表値を用いて、通信のクラス(重み付けランクR)を決定する(ステップS43)。
【0121】
時間決定部143は、
図7に示すステップS14と同様に、クラス判定部142から通信のクラス(重み付けランクR)を取得すると、時間表テーブル124を参照して、ダウンロード処理の起動時刻を決定する(ステップS44)。
【0122】
起動部144は、決定された起動時刻に従って、ダウンロード部145にダウンロード処理を実行させ(ステップS45)、その後、処理を終了する。なお、ダウンロード処理の詳細については、
図12を参照して後述する。
【0123】
図12は、アプリケーションが実行するダウンロード処理フローを示す図である。なお、アプリケーション14のダウンロード処理を1日1回実行するものとして説明する。
【0124】
起動部144は、実行履歴テーブル125を参照して、実行フラグ1251及び実行履歴1252をチェックする(ステップS51)。
【0125】
起動部144は、前回実行の翌日以降に実行フラグ1251をオンとしたか判断する(ステップS52)。
【0126】
前回実行の翌日以降に実行フラグ1251をオンとしていない場合(ステップS52 No)、処理をステップS51に戻して、ステップS51を繰り返す。
【0127】
前回実行の翌日以降に実行フラグ1251をオンとした場合(ステップS52 Yes)、起動部144は、実行履歴テーブル125の実行フラグ1251をクリアし、オフに設定する(ステップS53)。
【0128】
次に、起動部144は、現在の時刻が起動時刻ATに到達したか判断する(ステップS54)。
【0129】
起動時刻ATに到達していない場合(ステップS54 No)、到達するまでステップS54の処理を繰り返す。
【0130】
起動時刻ATに到達した場合(ステップS54 Yes)、起動部144は、実行フラグ1251をオンに設定する(ステップS55)。
【0131】
起動部144は、実行フラグ1251をオンに設定後、ダウンロード部145にダウンロード処理の実行の開始を通知する(ステップS56)。この通知を受けると、ダウンロード部145は、無線LANインタフェース部16を介して、ダウンロード処理を実行し、その後、処理を終了する。