(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679366
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】圧力検出表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20150212BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20150212BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20150212BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
G01L1/16 Z
G02B5/30
G02F1/1333
G02F1/1335
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-118300(P2013-118300)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-235136(P2014-235136A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2014年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/021835(WO,A1)
【文献】
特開2010−181561(JP,A)
【文献】
特開2010−108490(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0072670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G02B 5/30
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と下部電極に圧電層が挟まれた圧電センサと、
前記圧電センサの下部電極側に配置される偏光板と前記偏光板の下側に配置される表示部材を有する表示装置と、を備えた圧力検出表示装置であって、
前記圧電層が位相差板からなり、
前記圧電層の遅延軸が前記偏光板の吸収軸に対して20°〜70°の角度を形成するように前記圧電センサと前記偏光板が配置された圧力検出表示装置。
【請求項2】
前記圧電層のリタデーション値が、可視光の1/4波長である請求項1の圧力検出表示装置。
【請求項3】
前記圧電層のリタデーション値が、800nm〜30000nmである請求項1の圧力検出表示装置。
【請求項4】
前記上部電極が、酸化インジウム錫、またはポリエチルジオキソチオフェンを含む請求項1〜3のいずれかの圧力検出表示装置。
【請求項5】
前記下部電極が、酸化インジウム錫、またはポリエチルジオキソチオフェンを含む請求項1〜4のいずれかの圧力検出表示装置。
【請求項6】
前記圧電層が、有機圧電材料からなる請求項1〜5のいずれかの圧力検出表示装置。
【請求項7】
前記有機圧電材料が、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ乳酸を含む請求項6の圧力検出表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの圧力検出表示装置とタッチパネルを備える電子機器。
【請求項9】
前記タッチパネルが静電容量型タッチパネルである請求項8の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出表示装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
与えられた荷重を検出するため、圧電層を用いた圧電センサが知られている。例えば、特許文献1には、透明感圧層と、一対の透明導電層からなる透明圧電センサが開示されている。なお、現在においては透明圧電センサと表示装置(主に液晶パネルや有機ELパネル)とを組合せて圧力検出表示装置を製造する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−125571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の圧力検出表示装置においては、圧電センサを操作する際、偏光サングラスをかけていると、偏光サングラスの光波の吸収軸が、表示装置の上面に積層された偏光板から出射される光と同じ方向であった場合には、圧力検出表示装置の表示を視認できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0006】
本発明の圧力検出表示装置は、圧電センサと表示装置からなる。圧電センサは、上部電極と下部電極に圧電層が挟まれた構成からなる。表示装置は、偏光板と表示部材からなる。表示装置は、表示部材の圧電センサ側に偏光板が積層された構成からなる。なお、上記圧電層は、位相差板からなり、位相差板の
遅延軸は偏光板の
吸収軸に対して20°〜70°の角度を形成するように圧電センサと偏光板は配置されている。
【0007】
そうすると、表示装置から出射された光は、直線偏光から楕円偏光に変換される。その結果、光波の吸収軸が表示部材の点灯光と同じ方向の偏光サングラスをかけている場合でも、圧電センサの下に配置された表示部材の表示を視認することができる。
【0008】
上記位相差板のリタデーション値は、可視光波長の1/4波長であってもよい。
【0009】
そうすると、表示装置の点灯光が、楕円偏光になって上方へ出射されるため、点灯光と同じ方向の吸収軸の偏光サングラスをかけていた場合でも、圧電センサの下に設置された表示装置をさらに良好に視認できる。
【0010】
上記位相差板のリタデーション値は、800nm〜30000nmであってもよい。
【0011】
そうすると、表示部材から出射される光は、自然光に近い状態に変換されて圧電層から出射される。その結果、偏光サングラスをかけて表示部材を観察しても、色味の変化を伴わないで表示部材を観察できる。
【0012】
上記上部電極は、酸化インジウム錫、またはポリエチルジオキソチオフェンを含んでいてもよい。
【0013】
そうすると、上部電極の透明性が高くなるので、液晶や有機ELなどの表示装置の上に圧電センサを配置できる。
【0014】
上記下部電極は、酸化インジウム錫、またはポリエチルジオキソチオフェンを含んでいてもよい。
【0015】
そうすると、下部電極の透明性が高くなるので、液晶や有機ELなどの表示装置の上に圧電センサを配置できる。
【0016】
上記圧電層は、有機圧電材料を含んでいてもよい。
【0017】
そうすると、圧電層の柔軟性が大きくなるので、圧電センサの耐屈曲性が向上する。その結果、上記圧電センサをR曲面などに配置できる。
【0018】
上記有機圧電材料は、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ乳酸を含んでいてもよい。
【0019】
そうすると、圧電層の透明性が高くなるので、液晶や有機ELなどの表示装置の上に圧電センサを配置できる
【0020】
電子機器は、圧電センサとタッチパネルを備えていてもよい。
【0021】
そうすると、圧電センサに対し荷重がほとんどかからないような場合でも、荷重の位置検出ができる。
【0022】
上記タッチパネルは、静電容量型のタッチパネルであってもよい。
【0023】
そうすると、圧力検出装置全体の透明性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る圧力検出表示装置では、偏光サングラスをかけていた場合でも、圧電センサの下に設置された表示装置を良好に視認できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
下記で、本発明に係る実施形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例に記載した部位や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
1. 第1実施形態
(1)圧力検出表示装置の構造
図1を用いて、本発明の圧力検出表示装置の構造を説明する。
図1は圧力検出表示装置の断面図である。
【0028】
圧力検出表示装置は、与えられた荷重の量と位置を検出する機能を有している。
図1示すように、圧力検出装置100は、圧電センサ10と表示装置20とを備えている。圧電センサ10は、表示装置20の上に積層されている。なお、圧電センサ10は、与えられた荷重に応じて電荷を発生させる装置である。圧電センサ10は、圧電層1が上部電極2と下部電極3とに挟まれた構成からなる。表示装置20は、圧電センサ10の表面に表示物を表示する装置である。表示装置20は、表示部材22の上に偏光板21が積層された構成からなる。
【0029】
以下で圧電センサ10を構成する各部材について説明する。
【0030】
(2)圧電センサ
再び、
図1に示すように、圧電センサ10は、圧電層1と上部電極2と下部電極3とを備えている。
【0031】
(3)圧電層
圧電層1は、荷重が与えられると電荷を発生するものである。そのような、圧電層1を構成する材料としては有機圧電材料が挙げられる。有機圧電材料としては、フッ化物重合体又はその共重合体、キラリティーを有する高分子材料などが挙げられる。フッ化物重合体又はその共重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。キラリティーを有する高分子材料としては、L型ポリ乳酸や、R型ポリ乳酸などが挙げられる。
【0032】
また、圧電層1は位相差板として機能を有する。圧電層1が位相差板の機能を有するには、上記有機圧電材料を延伸させるとよい。
【0033】
(4)電極
上部電極2、下部電極3は、それぞれ平板状でもパターン化されていてもよい。なお、上部電極2、下部電極3は、導電性を有する材料により構成できる。導電性を有する材料としては、インジウム−スズ酸化物(Indium−Tin−Oxide、ITO)、スズ−亜鉛酸化物(Tin−Zinc−Oxide、TZO)などのような透明導電酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylenedioxythiophene、PEDOT)などの導電性高分子、などを用いることができる。この場合、上記の電極は、蒸着やスクリーン印刷などを用いて形成できる。
【0034】
また、導電性を有する材料として、銅、銀などの導電性の金属を用いてもよい。この場合、上記の電極は、蒸着により形成してもよく、銅ペースト、銀ペーストなどの金属ペーストを用いて形成してもよい。
【0035】
さらに、導電性を有する材料として、バインダー中に、カーボンナノチューブ、金属粒金属ナノファイバーなどの導電材料が分散したものを用いてもよい。
【0036】
また、圧電センサ10を、液晶装置や有機EL装置のような表示装置の上に配置する場合には、表示装置のディスプレイが見えるように、圧電層1を透明な材料により構成するか、又は、光が十分に透過できる程度に薄く構成することが好ましい。
【0037】
表示装置20は表示部材22の上に偏光板21が積層された構成からなる。
【0038】
表示部材22は、ガラス基板で液晶素子や有機EL素子などを挟んだ構成からなる。偏光板21は、表示部材22から射出された光のうち、特定方向の直線偏光のみを透過させるもので、例えば150μm〜200μm程度の厚みに形成されている。
【0039】
以上の構成において、圧電センサ10背面の表示部材22の表示を視認しながら、圧電層1の上面を指或いはペン等で押圧操作すると、圧電層1が撓み、撓んだ箇所の圧電層1から電荷が発生する。
【0040】
そして、圧電層で発生した電荷は、上部電極2と下部電極3を経由して電子回路(図示しない)で検出される。なお、検出された電荷の電荷量によって、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0041】
また、この時、表示部材22の文字や記号、絵柄等の表示は、表示部材22の上面に配置された偏光板21がX方向及びこれと直交するY方向の光波のうち、例えばY方向の光波を吸収するものであった場合、X方向の直線偏光の点灯光となって、偏光板21から出射される。しかし、この光は、位相差板の機能を有し、その吸収軸が偏光板21の遅延軸に対して20°〜70°の角度を形成するように偏光板21の上に配置された圧電層1によって、直線偏光から楕円偏光の光に変換される。なお、上記角度は、40°から50°であることが、さらに好ましい。
【0042】
その結果、光波の吸収軸が表示部材22の点灯光と同じ方向の偏光サングラスをかけている場合でも、圧電センサ10の下に配置された表示部材22の表示を視認することができるように構成されている。
【0043】
さらに、圧電層1のリタデーション値が800nm〜30000nmであれば、表示部材22から出射される光は、色味の変化を伴わないで圧電層1から出射される。
その結果、表示部材22から出射される光は、自然光に近い状態に変換されて圧電層1から出射される。その結果、偏光サングラスをかけて表示部材を観察しても、色味の変化を伴わないで表示部材22を観察できる。
【0044】
さらに、圧電層1のリタデーション値が可視光波長の1/4波長であれば、表示部材22から出射される光は、圧電層1によって1/4波長ずれた光となって上方へ出射される。その結果、光波の吸収軸が表示装置22の点灯光と同じ方向の偏光サングラスをかけている場合でも、圧電センサ10の下に配置された表示部材22の表示を、明確に視認できる。
【0045】
このように本実施の形態によれば、圧電センサ10の圧電層1が、位相差板の機能を有し、その吸収軸が偏光板21の遅延軸に対して20°〜70°の角度を形成するように偏光板21の上に配置されることによって、表示装置20の点灯光が、圧電層1によって、直線偏光から楕円偏光の光に変換されて上方へ出射される。その結果、点灯光と同じ方向の吸収軸の偏光サングラスをかけていた場合でも、圧電センサ10の下に配置された表示部材22を視認できるものである。
【0046】
さらに、圧電層1のリタデーション値を可視光波長の1/4波長とすることで、圧電層1から出射する光は、直線偏光から円偏光におおむね変換されるので、偏光サングラスをかけていた場合でも、圧電センサ10の下に配置された表示部材22をさらに明確に視認できる。
【0047】
さらに、圧電層1のリタデーション値が800nm〜30000nmであることで、表示部材22から出射される光は、自然光に近い状態に変換されて圧電層1から出射される。その結果、偏光サングラスをかけて表示部材22を観察しても、色味の変化を伴わないで表示部材22を観察できる。
【0048】
2.第2実施形態
圧電層11は、活性な部分と不活性な部分を有するようにパターニングされていてもよい。
【0049】
図2は、第6実施形態にかかる圧電センサの断面図である。
【0050】
図2に示すように、圧電層1は、活性圧電部1aと不活性圧電部1bからなる。
活性圧電部1aは、圧電センサ10に荷重が与えられたときに電荷が発生する部分である。反対に不活性圧電部1bは、荷重が与えられても電荷が発生しない部分である。
【0051】
このように構成されていると、上部電極2または下部電極3付近で発生した電荷が漏れて、他の電極に混入するのを防止できる(クロストーク現象を防止できる)。その結果、位置検出精度と荷重検出精度を向上させることができる。
【0052】
3.第3実施形態
上記では、上部電極2と下部電極3に圧電層1が挟まれた構成について説明してきたが、上部電極2と下部電極3の間に基準電極4が設けられていてもよい。
【0053】
図3は、第3実施形態にかかる圧電センサの断面図である。
【0054】
図3に示すように、第3実施形態の圧電センサ10は、上部電極2と下部電極3の間に基準電極4が設けられている。上部電極2と基準電極4の間には、第1圧電層5が設けられている。下部電極3と基準電極4の間には、第2圧電層6が設けられている。第1圧電層5と第2圧電層6の材質は、圧電層1と同じである。基準電極4の材質も、上部電極2や下部電極3と同じである。
【0055】
このように構成されていると、上部電極2または下部電極3付近で発生した電荷が漏れて、他の電極に混入するのを防止できる(クロストーク現象を防止できる)。その結果、位置検出精度と荷重検出精度を向上させることができる。また上記では、活性圧電部1aの上に上部電極2または下部電極3が直接積層された例を示したが、活性圧電部1aと上部電極2の間、または活性圧電部1aと下部電極3の間には、接着剤やフィルムなどの絶縁材料が積層されていてもよい。
【0056】
4.その他の実施形態
図4に示すように、圧電センサ10の上にタッチパネル30を積層してもよい。上記のように構成することで、与えられた荷重の位置と量を検出してもよい。
圧電センサ10の上にタッチパネル30を積層することにより、与えられた荷重の位置を検出できる。なお、タッチパネルの中でも、静電容量型タッチパネルを用いることが特に好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1:圧電層
1a:活性圧電部
1b:不活性圧電部
2:上部電極
3:下部電極
4:基準電極
5:第1圧電層
6:第2圧電層
10:圧電センサ
20:表示装置
21:偏光板
22:表示部材
30:タッチパネル
100:圧力検出表示装置