(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)可塑剤の含有量aと前記(D)エトキシレート誘導体の含有量bとの質量比(a/b)が、1/10〜10/1であることを特徴とする請求項1または2記載のポリウレタン発泡組成物。
前記(A)ポリイソシアネートのうちの10質量%以上は、2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のポリウレタン発泡組成物。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォーム(発泡体)は、そのクッション性の高さから、車両用クッション材、家具用マット、寝具、雑貨等に幅広く用いられている。軟質ポリウレタンフォームは、通常、有機ポリイソシアネートと活性水素を含有する2種以上の化合物とを、触媒、整泡剤、およびその他の添加剤の存在下に反応させることで製造される。活性水素含有化合物としては、ポリオール類や、ポリオール中でアクリロニトリルやスチレンをラジカル重合させて得られたポリマーポリオール類、一級および二級ポリアミン類、ならびに水等が使用される。
【0003】
そして、例えば車両クッションシート用フォームの製造では、一般に、出発物質を高圧発泡機などで混合し、型へ注入して成型した後、圧縮機を使用してフォーム中の発泡セルを強制的に連通化する方法が採られている。
【0004】
このような製造プロセスでは、成型時間の短縮や低エネルギー化などが求められるため、反応の速さと脱型の迅速さが要求されている。一方、製造されるポリウレタンフォームにおいては、製造コストや成型品のハンドリングの有利さの観点から、低密度化が求められている。特に、車両用フォームにおいては、燃費改良の観点から軽量化のための低密度化が要求されており、併せて、すわり心地、乗り心地などの良さを高めることも要望されている。
【0005】
従来から、低密度化の際に求められる技術的課題として、圧縮永久歪み(圧縮残留歪みともいう。)の低減などの耐久性の維持が挙げられる。例えば、特許文献1においては、特定の架橋剤組成物を用いることで耐久性を向上させる技術が提案されている。しかし、特許文献1の方法では、低密度化に起因する物性の低下は大幅に改善できるが、すわり心地や感触の改善には至っていない。
【0006】
また、特許文献2には、ポリイソシアネートと水と有機酸、および非プロトン性極性溶媒を含有させることで、高温で架橋することなしにフォーム表面の脆弱性を改良し、接着性の付与を可能としたポリウレタンフォーム製造用の組成物が提案されている。特許文献3には、溶媒として環状ラクトンを使用することで、スコーチ防止に格段に優れたポリウレタンフォームの製造方法が示されている。さらに、特許文献4および特許文献5には、建材用の硬質ポリウレタンフォームの接着特性を改良するために、特定の溶媒を配合することが示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2〜5に示された組成物は、いずれも硬質ポリウレタンフォームを製造するための組成物であり、これらの組成物を用いても、硬質ポリウレタンフォームとは気泡の構造や特性が大きく異なる軟質ポリウレタンフォームを得ることはできない。特に、圧縮残留歪みや湿熱条件下での圧縮残留歪み、および柔軟性やヌメリ性、滑り性等の感触の点で満足のゆくフォームを得ることができなかった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の実施形態のポリウレタン発泡組成物は、(A)ポリイソシアネートと、(B)(B1)ポリオールと(B2)水を含む活性水素含有化合物と、触媒、および(C)可塑剤をそれぞれ含有する。以下、本発明の実施形態の各成分について説明する。
【0015】
[(A)ポリイソシアネート]
(A)成分であるポリイソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を有する公知の脂肪族、脂環族および芳香族の有機イソシアネート化合物を使用することができる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−あるいは2,6−トリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネートあるいはトルイジンジイソシアネートともいう。:TDI)、2,2´−または2,4´−あるいは4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のようなアルキレンジイソシアネートあるいはアリーレンイソシアネート、ならびに公知のトリイソシアネートおよびポリメリックMDI(粗製ジフェニルメタンジイソシアネート;クルードMDIと呼称されている)などが挙げられる。
【0016】
軟質フォームを得るために好適なイソシアネートは、80質量%の2,4−TDIと20質量%の2,6−TDIとの混合物、65質量%の2,4−TDIと35質量%の2,6−TDIとの混合物、MDIタイプのすべてのポリイソシアネート、およびそれらTDIとMDIとの混合物である。(A)成分であるポリイソシアネートのうちの10質量%以上が、2,4−TDIおよび/または2,6−TDIであることが好ましい。
【0017】
フォーム(発泡体)の製造に使用されるポリイソシアネートの量は、「イソシアネートインデックス(Isocyanate Index)」として記載される。「イソシアネートインデックス」は、イソシアネート基と反応し得る活性水素含有基に対するイソシアネート基の百分率を示し、反応混合物中で使用される実際量のポリイソシアネートを、活性水素のすべてと反応するのに必要な理論的に要求される化学量論量のポリイソシアネートで割り、100倍することにより得ることができる。本発明の実施形態において、イソシアネートインデックスは特に限定されるものではないが、一般に軟質フォームの製造においては、70〜130の範囲で製造される。
【0018】
[(B)活性水素含有化合物]
(B)成分である活性水素含有化合物は、(B1)ポリオールと(B2)水をそれぞれ含有する。
【0019】
(B1)ポリオールは、前記(A)成分のイソシアネート基と反応し得る水酸基などの活性水素含有官能基を分子中に2個以上有する化合物であり、公知のものを使用することができる。ポリオールの好適な活性水素含有官能基(水酸基)数は2〜8であり、最も好ましくは2.3〜6である。水酸基数が2以上であれば、軟質ポリウレタンフォームの耐久性が良好となる。また、平均水酸基数を6以下とすることで、軟質ポリウレタンフォームが硬くなり過ぎず、伸び等の機械物性が良好となる。
【0020】
2個以上の水酸基を有する化合物としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオールなどがある。特に、ポリエーテル系ポリオールの1種以上のみからなるか、あるいはポリエーテル系ポリオールを主成分とし、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、ポリアミン、アルカノールアミン、その他の活性水素含有化合物と併用したものが好ましい。
【0021】
本発明の実施形態において使用可能なポリオールは、特に制限されないが、下記に分類されるものを単独でまたは混合して使用することが好ましい。すなわち、
1)ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキサイド付加物
2)非還元糖および糖誘導体のアルキレンオキサイド付加物
3)リン酸およびポリリン酸のアルキレンオキサイド付加物
4)ポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物
5)一級および二級アミンのアルキレンオキサイド付加物である。
【0022】
軟質フォームを得るために好適なポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキサイド付加物は、トリヒドロキシアルカンのエチレンオキサイド付加物、およびプロピレンオキサイド付加物である。
【0023】
グラフト化したポリオールまたはポリマーポリオールは、本発明の実施形態に有用なポリオールの1種であり、軟質フォームの製造に広範囲に使用することができる。ポリマーポリオールは、例えば上記ポリオール1)〜5)の中で、より好ましくはタイプ1)のポリオール中にポリマーの安定分散物(例えば、ビニルポリマーの微粒子)を含有するポリオールである。
【0024】
実施形態においては、(B1)ポリオールとして、水酸基価が10〜120mgKOH/gのものを使用することが好ましい。水酸基価を10mgKOH/g以上とすることで、ポリオールの粘度が高くならず、製造時の作業性が良い。また、水酸基価を120mgKOH/g以下とすることで、軟質ポリウレタンフォームの耐久性が良好となる。ポリウレタンフォームの用途に応じて、ポリオールの水酸基価を選択することが好ましい。
【0025】
(B1)成分であるポリオールの市販品としては、例えば、サンニックスFA−703(グリセリン−プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、水酸基価33mgKOH/g;三洋化成工業社製)や、サンニックスFA−728R(ポリマーポリオール、水酸基価28.5mgKOH/g;三洋化成工業社製)、アクトコールPPG EP−901(グリセリン−プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、水酸基価24mgKOH/g;三井化学社製)や、アクトコールPOP−36/90(ポリマーポリオール、水酸基価24mgKOH/g:三井化学社製)、AdekaポリオールAM−302(グリセリン−プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、水酸基価57.6mgKOH/g;Adeka社製)などがある。
【0026】
(B2)成分である水は、(A)成分であるポリイソシアネート中のイソシアネート基との反応で発生する炭酸ガスによって発泡を形成する、化学的発泡剤として配合される。発泡を形成するガス容量の少なくとも50%(すなわち、発泡ガス全体の少なくとも50容量%)が、(B2)成分である水と(A)ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応によって生成される二酸化炭素であることが好ましく、特に、発泡剤として水を単独で使用し、発泡ガス容量の100%が水とイソシアネート基との反応によって生成される二酸化炭素であることがより好ましい。すなわち、化学的発泡剤である水の他に、ギ酸などの有機酸である化学的発泡剤や物理的発泡剤を併用することができるが、水を単独で使用して発泡させることがより好ましい。
【0027】
[触媒]
触媒は、前記(A)成分であるポリイソシアネート中のイソシアネート基と(B)成分である活性水素含有化合物中の活性水素含有基との反応を促進するものであり、ゲル化触媒ということができる。このような触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ビス[(2−ジメチルアミノ)エチル]エーテル、N,N,N,N−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウムなどのカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなどの有機スズ化合物などを使用することができる。これらの触媒の配合量は、前記反応促進に通常使用される量とする。また、本発明においては、前記(B2)水と(A)成分であるポリイソシアネートのイソシアネート基との反応を促進する触媒(ガス化触媒)を配合することもできる。
【0028】
[(C)可塑剤]
本発明の実施形態に使用する(C)可塑剤は、アルコールとカルボン酸との反応により得られる、分子中に1つ以上のエステル基を有するエステル化合物であり、以下の式(1):
【化5】
で表わされるモノエステル化合物、式(2):
【化6】
で表わされるジエステル化合物、式(3):
【化7】
で表わされるトリエステル化合物、および式(4)
【化8】
で表わされるテトラエステル化合物等が挙げられる。これらのエステル化合物の1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
式(1)において、R
1は炭素数6〜24の1価の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜24の1価の炭化水素基である。R
1は炭素数8〜18の1価の炭化水素基が好ましく、R
2は炭素数3〜14の1価の炭化水素基が好ましい。
式(1)で表されるモノエステル化合物としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルなどが例示される。
【0030】
式(2)において、R
3は炭素数2〜15の1価の炭化水素基、または該炭化水素基の水素原子の一部がヒドロキシル基に置換された基であり、R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜24の1価の炭化水素基である。R
3は炭素数2〜13の1価の炭化水素基が好ましく、R
4は炭素数3〜14の1価の炭化水素基が好ましい。
式(2)で表されるジエステル化合物としては、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、リンゴ酸ジステアリル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルなどが例示される。
【0031】
式(3)において、R
5はそれぞれ独立に炭素数1〜24の1価の炭化水素基である。R
5は炭素数4〜14の1価の炭化水素基が好ましい。
式(3)で表されるトリエステル化合物としては、トリス(2−エチルヘキサン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、大豆油などが例示される。
【0032】
式(4)において、R
6はそれぞれ独立に炭素数1〜24の1価の炭化水素基である。R
6は炭素数4〜14の1価の炭化水素基が好ましい。
式(4)で表されるテトラエステル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラカプリル・カプリン酸エステルなどが例示される。
なお、(C)成分であるエステル化合物は、これら式(1)〜(4)で表される化合物に限定されない。例えば、3価の酸と1価のアルコールとのエステルであるクエン酸アセチルトリブチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルなども使用可能である。
【0033】
本発明の実施形態において、このような(C)可塑剤の配合割合は、前記(B1)成分であるポリオール100質量部に対して0.5〜20質量部とする。1〜12質量部の範囲がより好ましい。(C)可塑剤の配合割合が0.5質量部未満の場合には、フォーム(発泡体)のヌメリ性や滑り性等の感触の向上が難しい。また、配合割合が20質量部を超えると、その他の物性の低下が生じるため好ましくない。
【0034】
本発明のポリウレタン発泡組成物には、さらに、以下に示す(D)エトキシレート誘導体を配合することができる。
【0035】
[(D)エトキシレート誘導体]
(D)エトキシレート誘導体は、エチレンオキサイド誘導体ともいい、架橋剤としての機能を有する。(D)エトキシレート誘導体としては、
式(5):HO(CH
2CH
2O)
mH、または
式(6):R
7−[(CH
2CH
2O)
nH]
xで表わされ、2000以下の質量平均分子量(Mw)を有するものが好ましい。質量平均分子量(Mw)は1200以下が、さらに好ましい。
【0036】
式(5)において、mは3〜30の整数である。mは5〜25の整数であることが好ましい。また、式(6)において、R
7は、
グリセロール、トリメチロールプロパン、ジグリセロールより選ばれる化合物の全てのヒドロキシル基をエーテル基とした基である。R
7は、グリセロールの全てのヒドロキシル基をエーテル基とした基であることが好ましい。nは1〜15の整数であり、xは3または4である。nは2〜8の整数であることが好ましく、xは3であることが好ましい。
【0037】
具体的に(D)エトキシレート誘導体の好ましい例としては、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレントリメチロールエーテル、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンジグリセロールエーテル等が挙げられる。
【0038】
本発明の実施形態において、このような(D)エトキシレート誘導体の配合割合は、前記(B1)成分であるポリオール100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。0.1〜10質量部の範囲がより好ましい。(D)エトキシレート誘導体を前記範囲で配合することで、他の物性を低下させることなく、フォーム(発泡体)の硬さの改善、組成物の粘度上昇の抑制を達成することができる。
【0039】
本発明において、(D)エトキシレート誘導体を配合する場合、前記(C)可塑剤の含有量aと(D)エトキシレート誘導体の含有量bとの質量比(a/b)は、1/10〜10/1の範囲とすることが好ましい。a/bは、2/8〜8/2の範囲がより好ましい。a/bが1/10未満の場合には、良好な感触すなわち満足できる手触りやすわり心地の改善が得られない。また、a/bが10/1を超えると、耐久性が十分ではない場合がある。
【0040】
本発明の実施形態の発泡組成物は、前記(A)〜(C)の各成分と触媒、必要に応じてさらに(D)成分を加えたものを、高速ミキサー等により混合して得られる。
【0041】
実施形態の発泡組成物は、(A)〜(C)の各成分、および触媒の他に、整泡剤を配合することができる。また、必要に応じて、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤などの添加剤をさらに配合することができる。整泡剤は、良好な気泡を形成するために配合される界面活性剤である。整泡剤としては、ポリウレタン工業において整泡剤として公知のものであれば、いずれも使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤などがある。
【0042】
このような本発明のポリウレタン発泡組成物を使用し、ワンショット発泡法により軟質ポリウレタンフォームを製造することができる。なお、「ワンショット発泡法」とは、ポリウレタンフォームを一段階で製造する方法である。この方法では、ポリイソシアネート、ポリオール、水、架橋剤、触媒、整泡剤、任意選択的な発泡剤、その他を含むポリウレタンフォームを製造するために必要な成分の全てを、単純に一緒にブレンドし、移動しているコンベヤ上でまたは適当な形態の型に流し込んで発泡させ、硬化させるものである。
【0043】
本発明のポリウレタン発泡組成物から得られるフォーム(発泡体)は、高反発特性が得られる等の点から、14kg/m
3以上の密度を有することが好ましい。また、すわり心地や乗り心地、手触り等の感触およびコストの点から、80kg/m
3以下の密度を有することが好ましい。
【0044】
本発明の実施形態のポリウレタン発泡組成物によれば、ポリウレタン類、好ましくはワンショットポリウレタン類、特に軟質ポリウレタンフォームの製造において、特定の可塑剤を用いることにより、大幅に製造効率を改良し、物性の良好な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。より具体的には、圧縮残留歪みや湿熱条件下での圧縮残留歪みが改善され、かつ良好なヌメリ性や滑り性を有し、手触り等の感触に優れた軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。得られる軟質ポリウレタンフォームは、高反発弾性ポリウレタンフォームとして、車輌用シート、家具用クッション、寝具用マットレスなどに好適する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の具体的実施例について記載する。
【0046】
実施例1〜12、比較例1
(A)ポリイソシアネートと、(B1)ポリオールと、(B2)水と、(C)成分である可塑剤-1〜可塑剤-6と、(D)成分であるエトキシレート誘導体と、触媒および整泡剤を、実施例1〜7においては表1に示す組成(質量部)で、実施例8〜12および比較例1においては、表2に示す組成(質量部)でそれぞれ配合し、高速ミキサーにより混合した。
【0047】
なお、(A)ポリイソシアネートとしては、コロネート1021(80質量%のTDIと20質量%のMDIからなるブレンドイソシアネート:日本ポリウレタン工業社製)を、(B1)成分のポリエーテルポリオールとしては、サンニックスFA−703(グリセリン−プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、水酸基価34mgKOH/g;三洋化成工業社製)を、(B1)成分のポリマーポリオールとしては、サンニックスFA−728R(水酸基価34mgKOH/g;三洋化成工業社製)を、アミン系ガス化触媒としては、Niax catalyst A−1(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を、アミン系ゲル化触媒としては、Niax catalyst A−33(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を、整泡剤としてはNIAX silicone L−3642J(シリコーン系整泡剤:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)をそれぞれ使用した。
なお、前記したように、ガス化触媒は、(B2)水と(A)ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応を促進する触媒であり、ゲル化触媒は、(A)ポリイソシアネート中のイソシアネート基と(B)活性水素含有化合物中の活性水素含有基との反応を促進する触媒である。
【0048】
また、(C)可塑剤-1〜可塑剤-6としては、それぞれ以下に記載するものを使用した。
・可塑剤-1
ミリスチン酸イソプロピル(商品名:エキセパールIPM、花王ケミカル社製)
・可塑剤-2
ミリスチン酸オクチルドデシル(日油社製)
・可塑剤-3
トリス(2−エチルヘキサン酸)グリセリル(商品名:パナセート800B、日油社製)
・可塑剤-4
イソノナン酸イソノニル(商品名:サラコス99、日清オイリオグループ製)
・可塑剤-5
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(商品名:O.D.O、日清オイリオグループ製)
・可塑剤-6
アジピン酸ジオクチル(商品名:DOA、大八化学工業社製)
さらに、(D)成分であるエトキシレート誘導体としては、ポリオキシエチレングリセリルエーテル(Mw=990)(商品名:UCON TPEG−990、ダウ社製)を使用した。
【0049】
次いで、混合後直ちに、混合物を60±2℃に温度調整されたアルミ製金型(内寸300×300×100mm)内に注入し、フタを閉め、そのまま5分間保持して発泡成形し、ポリウレタンフォームを得た。このとき、吐出時間を以下に示すようにして測定した。また、フォームの密度を以下に示すようにして測定した。
【0050】
[吐出時間]
反応混合物への(A)ポリイソシアネートの添加から、金型上部の4箇所のガス抜き孔からフォームが押出されて最初に出現するまでの時間(秒)を、吐出時間として測定した。
[密度]
得られたフォームの密度(kg/m
3)を、オーバーオール密度として、型から取り出した後に測定した。
【0051】
また、ポリウレタンフォームの特性を、JIS K 6401に準拠し、以下に示すようにして測定するとともに、感触試験を行った。
【0052】
[強制圧縮(Force-to-crush:FTC)]
FTCは、型から出して1分後から測定し、発泡体(フォームパッド)を最初の厚さから50%まで圧縮させるのに必要なピーク力である。硬さ測定に使用されるものと同じ設定の荷重試験器を用いて測定した。FTC値(N)は気泡の連通性を評価する良好な尺度である。FTC値が低いほど発泡の連通性が高い。
【0053】
[硬さ]
JIS K6401の硬さ測定に準じ、型から出して室温で1日静置後に、FTC測定について使用したと同じパッドの硬さ(N)を測定した。
【0054】
[圧縮残留歪み]
JIS K6400−4:2004(ISO1856:2000)に準じて測定した。すなわち、一辺の長さ50±1mm、厚さ25±1mmの試験片を、厚さ方向に50%圧縮した状態で70±1℃の温度に22時間放置した。その後、試験片を圧縮治具から取り出し、室温に30分間放置して回復させてから厚さを測定した。こうして圧縮残留歪みを求めた。
【0055】
[湿熱圧縮残留歪み]
JIS K6400−4:2004(ISO1856:2000)に準じて湿熱老化試験を行い、圧縮縮残留歪み(%)を測定した。すなわち、一辺の長さ50±1mm、厚さ25±1mmの試験片を、厚さ方向に50%圧縮した状態で、70±1℃、95%RHに22時間放置した。その後、試験片を圧縮治具から取り出し、室温に30分間放置して回復させてから厚さを測定した。こうして湿熱圧縮残留歪みを求めた。
【0056】
[感触試験]
室温で1日放置したフォーム表面を素手で触り、感触を評価した。ヌメリ性および滑り性を3段階で評価した。
【0057】
これらフォームについての特性の測定結果を、前記密度および吐出時間の測定結果とともに表1および表2の下欄に示す。なお、表中の感触試験結果において、ヌメリ性、滑り性ともに、◎は良好、○はやや良好、×は不良を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
実施例13〜15、比較例2
(A)ポリイソシアネートと、(B1)ポリオールと、(B2)水と、(C)成分である可塑剤-1および可塑剤-5と、触媒および整泡剤を、それぞれ表3に示す組成(質量部)で配合し、高速ミキサーにより混合した。
【0061】
なお、(A)ポリイソシアネートとしては、コロネートT−80(80質量%の2,4−TDIと20質量%の2,6−TDIからなるブレンドイソシアネート:日本ポリウレタン工業社製)を、(B1)成分のポリエーテルポリオールとしては、Adekaポリオール G−3000B(グリセリン−プロピレンオキサイド付加物、水酸基価54mgKOH/g;Adeka社製)を、アミン系ガス化触媒としては、Niax catalyst A−1(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を、スズ系ゲル化触媒としては、Niax catalyst D−19(2−エチルヘキサン酸スズ:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を、整泡剤としてはNIAX silicone L−595(シリコーン系整泡剤:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)をそれぞれ使用した。また、(C)成分である可塑剤-1および可塑剤-5としては、前記したものを使用した。
【0062】
混合後、混合物を直ちに離型紙が敷かれた木製型(内寸200×200×200mm)内に注入した。そのまま室温(23℃±2℃)で3分間保持して発泡成形した。その後、離型紙ごと木型から発泡体を取り出し、120℃のオーブンで10分間加熱して架橋した後、室温まで冷却しポリウレタンフォームを得た。
【0063】
次いで、こうして得られたポリウレタンフォームを10cm×10cm×10cmに切り出し、密度(kg/m
3)を測定した。
また、得られたポリウレタンフォームの硬さおよび通気性を、以下に示すようにして測定した。圧縮残留歪み(%)、湿熱圧縮残留歪み(%)を、実施例1〜13および比較例1と同様にして測定した。さらに、感触試験を行い、前記と同様に評価した。これらの測定結果を表3の下欄に示す。
【0064】
[硬さ]
JIS K6401−2:2004(ISO2439:1997)の硬さ測定に準じて測定した。314cm
2の大きさの圧縮板を使用し、25%圧縮したときの硬さ(25%硬さ)を測定した。
【0065】
[通気性]
JIS K6400−7:2004 B法(ISO7231:1984)に準じて、一辺の長さ51.0±0.3mm、厚さ25.0±0.3mmの試験片を用い、試験片の前後の圧力差を維持するために必要な風量を測定することにより、通気性(L/min.)を測定した。
【0066】
【表3】
【0067】
表1〜表3の測定結果からわかるように、(A)ポリイソシアネートと、(B)(B1)ポリオールと(B2)水を含む活性水素含有化合物と、触媒を含み、さらに(C)分子中に1つ以上のエステル基を有する可塑剤を、所定の割合で配合して得られた組成物を発泡して得られた実施例1〜15のポリウレタンフォームは、前記可塑剤を配合することなく得られた比較例1および比較例2のポリウレタンフォームに比べて、湿熱条件下での圧縮残留歪みが改善されている。また、感触試験において、ヌメリ性、滑り性ともに良好な感触を示している。