(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載の引戸の位置決め構造を、レールに沿って互いに平行に移動する三枚以上の引戸のうち、前記レールの長さ方向の中央部の引戸を位置決めするのに使用することを特徴とする引戸システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、三枚以上の引戸を左右に移動させて開口を開閉する場合もある。上記特許文献1に記載の引込み装置を使用すれば、左右方向の両端部の引戸を全開位置又は全閉位置に位置決めすることができる。しかし、上記特許文献1に記載の引込み装置では、中央部の引戸を位置決めすることができず、中央部の引戸は中ぶらりんの状態にある。物があたると簡単に動いてしまうので、中央部の引戸も位置決めする必要があり、引戸の位置決め構造が必要になる。
【0006】
ただし、レール内にはトリガが突出している。また、引込み装置はレール内を走行する。トリガ及び引込み装置は、引戸の位置構造の障害になる。引戸の位置決め構造を設けるにあたって、いかにしてこれらの障害物を避けられるかが課題になる。
【0007】
そこで本発明は、レール内の障害物を避けて引戸を所定の位置に位置決めすることができる引戸の位置決め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、レールと、引戸が吊り下げられると共に前記レール内を走行する走行体と、前記走行体に上下動可能に設けられる可動体と、前記レールに設けられる吸引部と、前記レールに前記吸引部から前記レールの長さ方向に離れた位置に且つ前記吸引部よりも下方に設けられる障害物と、を備え、前記可動体が前記吸引部の下に移動するとき、磁石の吸引力によって前記可動体が上昇して前記吸引部に吸い寄せられ、前記可動体が前記障害物を通過するとき、前記可動体が下降して前記障害物を避ける引戸の位置決め構造である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸の位置決め構造において、前記走行体には引戸に引込み力を付与する引込み装置が設けられ、前記障害物は引込み装置に係合可能なトリガであり、前記走行体が前記レールの一方向に移動するとき、前記引込み装置が前記吸引部を通過した後、前記可動体が上昇して前記吸引部に吸い寄せられ、前記走行体が前記レールの他方向に移動するとき、下降した前記可動体が前記トリガを通過した後、前記引込み装置が前記トリガに係合して引戸に引込み力が付与されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の引戸の位置決め構造において、前記吸引部は前記レールの上面に設けられ、前記レールには前記可動体が前記吸引部に接することができるように孔が開けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の引戸の位置決め構造において、一対のトリガが前記レールの長さ方向の両側に設けられ、前記一対のトリガの間に前記吸引部が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の引戸の位置決め構造において、前記可動体は、前記走行体に設けられる支持体に上下動可能に支持され、前記支持体の前記可動体を挟んで前記レールの幅方向の両側には、前記レールの天井面に向かって突出する突出部が設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の引戸の位置決め構造を、レールに沿って互いに平行に移動する三枚以上の引戸のうち、前記レールの長さ方向の中央部の引戸を位置決めするのに使用することを特徴とする引戸システムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、走行体に設けた可動体が磁石の吸引力によってレールに設けた吸引部に吸い寄せられるので、引戸を所定の位置に位置決めすることができる。障害物を通過するとき、可動体が下降するので、障害物を避けることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、引戸をレールの長さ方向の端部以外の任意の位置に位置決めすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、レールの孔の周壁が段差となるので、引戸を確実に位置決めすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、引戸をレールの長さ方向の中央部に位置決めすることできる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、走行体に上下方向の力が作用しても、走行体をレール内で安定させることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、レールの長さ方向の中央部の引戸を位置決めすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態の引戸の位置決め構造を詳細に説明する。
図1は本実施形態の引戸の位置決め構造が組み込まれた引戸システムを示す。引戸システムは、複数本、例えば三本の平行なレール1a,1b,1cと、レール1a,1b,1cに長さ方向に移動可能に吊り下げられた複数の、例えば三つの引戸2a,2b,2cと、を備える。レール1a,1b,1cと引戸2a,2b,2cとは1対1に対応する。引戸2a,2b,2cには引込み装置3a,3b,3cが設けられる(
図3参照)。
【0022】
図1に示すように、レール1a,1b,1cの長さ方向の両側にはトリガ4が設けられる。一方のトリガ4は引戸2を閉じるときに使用され、他方のトリガ4は引戸2を開くときに使用される。引込み装置3には両方向タイプのものが用いられる。すなわち、引戸2を閉じる方向に所定の位置まで移動させるとき、引込み装置3は一方のトリガ4に係合し、引戸2に閉じ方向の引込み力を付与する。また、引戸2を開く方向に移動させるとき、引込み装置3は他方のトリガ4に係合し、引戸2に開き方向の引込み力を付与する。引戸2が閉じた状態又は開いた状態では、引戸2は図示しない枠、壁等に突き当たる。引戸2の閉じた状態又は開いた状態を維持できるように、引込み装置3は引戸2が閉じた状態又は開いた状態でも、引戸2にさらに閉じ方向又は開き方向の引込み力を付与する。
【0023】
図1(a)は三枚の引戸2a,2b,2cで開口を閉じた状態を示し、
図1(b)は三枚の引戸2a,2b,2cを開いた状態を示す。
図1(b)に示すように、引戸2が開いた状態では、引戸2はレール1の開き方向の端部に移動しており、引戸2には引込み装置3から開き方向の引込力が付与される。このため、引戸2は開いた状態を安定して維持する。
【0024】
図1(a)に示すように、引戸2で開口を閉じるとき、手前側の引戸2を引込み装置3の引込み力に打ち勝つ力で閉じ方向に移動させる。引戸2が閉じ方向に所定位置まで移動すると、引込み装置3がトリガ4に係合し、引戸2に閉じ方向の引込み力が付与される。引戸2が閉じ方向の端部に移動した後も、引込み装置3が引戸2に閉じ方向の引込み力を付与するので、引戸2は閉じた状態を維持する。中央の引戸2bを手前側の引戸2aと奥側の引戸2cの中間の位置まで移動させると、三枚の引戸2a,2b,2cで開口を閉じることができる。
【0025】
手前側の引戸2a及び奥側の引戸2cは、引込み装置3の引込み力によって閉じた状態又は開いた状態を維持する。しかし、中央の引戸2bの引込み装置3bは作動しておらず、中ぶらりんの状態にある。中央の引戸2bを位置決めするために位置決め構造が必要になる。
【0026】
図2に示すように、位置決め構造は、レール1の上面に設けられる吸引部としての磁石5を備える。磁石5は接着等の固定手段によってレール1の上面に固定される。中央の引戸2bはこの磁石5の吸引力によってレール1の長さ方向の中央部に位置決めされる。磁石5で位置決めした引戸2bが簡単には動かないように、磁石5にはネオジウム磁石等の強い磁力を持つ永久磁石が使用される。
【0027】
図3は、レール1、引戸2の分解斜視図を示す。レール1は、皿ねじ等によって建築物の天井面に取り付けられる。レール1は、断面略C字形に形成され、上壁部1−1、左右一対の側壁部1−2、及び左右一対の底壁部1−3と、を備える。左右一対の底壁部1−3間には、レール1の長さ方向に細長い開口部6が形成される。引込み装置3の走行体7の左右一対の車輪7b(
図4(a)参照)は、レール1の底壁部1−3上を走行する。
【0028】
レール1には、上述のトリガ4及び磁石5が設けられる。トリガ4はレール1の長さ方向の両側に設けられる。磁石5は一対のトリガ4の間に設けられる。また、トリガ4はレール1の内側(レール1の上壁部1−1の下面)に設けられており、磁石5はレール1の外側(レール1の上壁部1−1の上面)に設けられている(
図2、
図7も参照)。なお、図示しないが、トリガ4はねじ部及び頭部を有し、頭部がレール1の内側に設けられる。
【0029】
引込み装置3は走行体7と共にレール1内を移動する。引込み装置3の移動範囲に磁石5が設けられるので、引込み装置3に当たらないように磁石5はレール1の上面に設けられる。一方、トリガ4は引込み装置3のフックと係合しなければならず、引込み装置3と同一高さに設けられる。磁石5及びトリガ4は引込み装置3と上記の位置関係にあるので、トリガ4は磁石5の下方に位置する。
【0030】
引戸2の上面には、一対の走行体7が設けられる。一方の走行体7(
図3の手前側の走行体)には、引込み装置3が取り付けられる。引戸2bの奥側の走行体7には、後述するピンスライド機構11が設けられる。走行体7には車輪7b(
図4参照)が設けられる。走行体7は、本体部7aと本体部7aに回転可能に支持される複数の車輪7bを備える。本体部7aの下部には引戸2に連結される連結軸7cが設けられる。車輪7bは本体部7aの左右の両側に設けられる。トリガ4は走行体7の車輪7bに当たらないように走行体7の左右の車輪7bの間を通過する。
【0031】
図4及び
図5は走行体7に設けられるピンスライド機構11の詳細図を示す。ピンスライド機構11は、走行体7の本体部7aの移動方向の端部に固定された支持体13と、支持体13に上下動可能に支持される可動体としてのピン12と、を備える。略直方体形状の支持体13はねじ等の結合手段で走行体7の本体部7aに結合される。支持体13には、上下方向に貫通孔15(
図5(a)参照)が開けられる。貫通孔15には、可動体としてのピン12が上下動可能に挿入される。
図4(a)に示すように、支持体13には、ピン12を挟んでレール1の幅方向の両側に、上方に向かって突出する突出部13aが設けられる。突出部13aは円弧状に形成される。
【0032】
突出部13aはレール1内の走行体7を安定させる役割を持つ。引込み装置3が作動し、引戸2が枠に当たったとき、引戸2には持ち上げようとする力が働く。支持体13に突出部13aを設けてレール1の上壁部1−1との間のすきまを小さくすれば、引戸2の持ち上がりを防止することができる。
【0033】
図5(b)に示すように、ピン12の上端部には、頭部12aが設けられる。頭部12aの下端部にはフランジ12bが設けられる。頭部12aは上端に向かうに従って外形が狭まるテーパに形成される。頭部12aの上端面は平坦に形成される。ピン12の下端部には、ピン12の上方への移動を制限するためのリング12cが取り付けられる。ピン12は鉄、珪素鋼等の軟磁性材料からなる。
【0034】
ピン12はその自重によって
図4(a)及び
図5(a)に示す下端位置に下降する。ピン12の下端位置はピン12の頭部12aが貫通孔15の上部大径部15aの底面に着座することで決定される。ピン12は磁石5の吸引力によって
図4(b)及び
図5(b)に示す上端位置まで上昇する。ピン12の上端位置はピン12のリング12cが貫通孔15の下部大径部15cの上面に接することで決定される。ピン12の上下動は貫通孔15の中部小径部15bによって案内される。
【0035】
図6はレール1の上面に設けられる磁石5の詳細図を示す。レール1の上壁部1−1には、ピン12の頭部12aが磁石5に接することができるように孔17が開けられる。この孔17は、ピン12に向かって拡大するテーパに形成される。磁石5は扁平な円筒形状に形成される。磁石5の外径は孔17の小径側の内径よりも大きい。
【0036】
磁石5で位置決めした引戸2を移動させようとしても、レール1の孔17の内壁が段差になるので、ピン12の移動が妨げられる。このため、軽い力で引戸2を移動させようとしても、引戸2は動くことがない。一方、磁石5で位置決めした引戸2を強い力で移動させるとき、孔17の内壁のテーパは磁石5とピン12とを切り離すように機能する。このため、磁石5とピン12とを切り離すことができる。
【0037】
以下に
図7ないし
図10を参照しつつ引込み装置3及び位置決め構造の動作を説明する。
【0038】
図7は
図1(a)の中央の引戸2bを示す。
図7に示すように、引戸2bが開き方向の端部に位置するとき、引込み装置3bはトリガ4と係合しており、引戸2bには開き方向の引込み力が付与される。このため、引戸2bは開いた状態を維持する。
【0039】
図8に示すように、開き方向の端部に位置する引戸2bを閉じ方向に移動させると(
図1(b)→
図1(a))、まず、引込み装置3bが磁石5を通過し、その後、ピン12が磁石5の下方に到達する。ピン12が磁石5の下方に到達すると、磁石5の吸引力によってピン12が上昇して磁石5に接する。ピン12が磁石5に接すると、引戸2がレール1の長さ方向の中央部に位置決めされる。
【0040】
図9は閉じ方向の端部に位置する引戸2bを示す。引戸2bが閉じ方向の端部に位置するとき、引込み装置3bはトリガ4と係合しており、引戸2bには閉じ方向の引込み力が付与される。このため、引戸2bは閉じた状態を維持する。
【0041】
次に、
図10に示すように、レール1の長さ方向の中央部に位置決めした引戸2bを開き方向に移動させると(
図1(a)→
図1(b))、ピン12が磁石5から切り離され、ピン12はその自重により下降する。引戸2bを開き方向に移動させると、
図10に示すように、まず、下降したピン12がトリガ4を避け、トリガ4の下方を通過する。その後、引込み装置3bがトリガ4に係合して引戸2bに引込み力が付与される(
図7参照)。引込み装置3bによって引戸2bが自動的に全開状態になるのは上述のとおりである。
【0042】
図11は、引込み装置3の一例を示す。引込み装置3には公知の引込み装置を用いることができる。
図11には、引込み装置3の一例として出願人が出願した特許文献1の引込み装置が示されている。
【0043】
図11(a)は引込み装置3の平面図を示し、
図11(b)は側面図を示す。引込み装置3は、開閉方向に細長く伸びるベース23、ベース23の長手方向の両端部に設けられる第一及び第二のスライダ21,22、並びに第一及び第二のスライダ21,22の間に配置されるダンパ24を備える。第一のスライダ21が引戸2の閉動作をアシストし、第二のスライダ22が引戸2の開動作をアシストする。ダンパ24は引戸2の閉動作及び開動作を制動する。
【0044】
第一のスライダ21はベース23の閉じ方向の端部に移動可能に設けられる。第一のスライダ21の移動はベース23に案内される。第一のスライダ21にはトリガ4と係合可能なフック21aが設けられる。ベース23の開き方向の端部と第一のスライダ21との間には付勢部材としての引っ張りコイルばね26が設けられる。
【0045】
第二のスライダ22は、ベース23の開き方向の端部に移動可能に配置される。第二のスライダ22の移動はベース23に案内される。第二のスライダ22にはトリガ4と係合可能なフック22aが設けられる。ベース23の閉じ方向の端部と第二のスライダ22との間には付勢部材としての引っ張りコイルばね27が設けられる。
【0046】
第一のスライダ21が引込み力を発生させる原理は以下のとおりである。最初に第一のスライダ21はベース23の閉じ方向の端部のロック位置にいる。引戸2を閉じ方向に移動させると、第一のスライダ21のフック21aがトリガ4に当接する。すると、フック21aが回転して、第一のスライダ21がベース23に対してスライド可能になる。第一のスライダ21とベース23との間には引っ張りコイルばね26が介在しているので、第一のスライダ21に引っ張り力が働く。フック21aはレール1に固定されたトリガ4を捕捉しているので、ベース23が閉じ方向に移動する。ベース23の閉じ方向の移動に伴って引戸2が閉じ方向に移動する。引戸2の閉じ方向の移動はダンパ24によって制動される。
【0047】
第二のスライダ22も第一のスライダ21と同一の原理で引戸2に開き方向の引込み力を付与する。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0049】
上記実施形態では、レール内の障害物の例として引込み装置のトリガを挙げているが、レール内の障害物はトリガに限られない。レール内に突出するものであれば、例えば走行体減速させるための制動力付与部材(例えば特開平9−72154号公報の制動付与部材3、特開2005−126933号公報のブレーキシュー6)でもよいし、引込み装置のコイルばねが弾性力を蓄える状態と、引込み装置のコイルばねの弾性力を出力する状態と、に切り換えるための切替具(例えば特開2012−97427号公報の切替具20)でもよい。
【0050】
上記実施形態では、レールにピンが通過する孔を開け、ピンが磁石に直接的に接するようにしているが、レールに底のある凹部を設け、ピンがレールの凹部を介して磁石に間接的に接するようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、三枚に引戸を用いた引戸システムの例を説明したが、引戸の枚数は三枚に限定されることはない。
【0052】
上記実施形態では、ピンをその自重により下降させているが、自重に加えてばねの弾性力を用いてピンを下降させてもよい。
【0053】
上記実施形態では、ピンを磁性材料にし、吸引部を永久磁石としているが、ピンを永久磁石にし、吸引部を磁性材料にすることもできる。
【0054】
上記実施形態では、磁石に永久磁石を用いているが、永久磁石の替わりに電磁石を用いることもできる。
【0055】
上記実施形態では、一対の走行体のうちの一方の走行体に引込み装置を取り付け、他方の走行体にピンスライド機構を取り付けているが、いずれか一方のみの走行体に引込み装置及びピンスライド機構を取り付けることもできる。また、一対の走行体を単一の走行体とすることもできる。さらに、走行体、引込み装置、ピンスライド機構を一体にすることもできる。
【0056】
本明細書は、2013年1月16日出願の特願2013−005678に基づく。この内容はすべてここに含めておく。