特許第5679416号(P5679416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679416
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ノック式ボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
   B43K24/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-187606(P2010-187606)
(22)【出願日】2010年8月24日
(65)【公開番号】特開2012-45735(P2012-45735A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅信
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−036784(JP,A)
【文献】 特開2003−063192(JP,A)
【文献】 特開平10−236073(JP,A)
【文献】 実開平4−22293(JP,U)
【文献】 実公昭54−43775(JP,Y2)
【文献】 実開平3−23494(JP,U)
【文献】 実開昭57−13281(JP,U)
【文献】 特開昭63−118299(JP,A)
【文献】 特開2002−52891(JP,A)
【文献】 実開平7−33681(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 7/00− 7/12
B43K 24/00−24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、回転カムを前後に摺動案内し回転させるためのカム溝を形成し、このカム溝に、回転カムを摺動自在に配設し、前記軸筒より外方に突出して配設したノック体を操作することにより、軸筒内にスプリングにより軸筒後端方向へ付勢して摺動自在に配置したボールペンレフィルのボールペンチップを軸筒先端開口部より出没可能な回転カムからなる繰出機構を具備してなるノック式ボールペンにおいて、前記回転カムの前方に、前記ボールペンレフィルの後端部と当接し、前記ボールペンレフィルの後方への付勢力を受ける、少なくとも、前記ボールペンレフィルの後端部の外径よりも大径の挿入部と、前記挿入部の後方に、前記ボールペンレフィルの後端部に当接する当接部と、前記当接部の後方に、コイルスプリングの付勢力によって前記回転カムに当接する受け部とを有する支持部材を軸筒内に摺動可能に配設するとともに、前記軸筒が、前記支持部材の外径よりも小さい内径の小径部と、前記小径部よりも後方に、前記小径部の内径及び前記支持部材の外径よりも内径が大きい大径部とを連接して設け、前記支持部材が、軸筒の大径部内を摺動可能、且つ前記小径部と大径部の連接部によって、軸筒先端開口部側への移動を規制してあることを特徴とするノック式ボールペン。
【請求項2】
前記支持部材が、前記挿入部から後方に向かって縮径する傾斜面を有し、前記挿入部より内径が小さい複数本のリブ状突起を設けるとともに、前記当接部が、前記リブ状突起と連接したリブ形状であることを特徴とする請求項1に記載のノック式ボールペン。
【請求項3】
前記軸筒が、少なくとも軸筒本体と、前記軸筒本体の先端部に着脱自在に装着した前軸と、前記軸筒本体の後端部に装着した、前記カム溝を形成した後軸とから構成し、前記後軸の内壁に、前記回転カムの脱落防止のための突部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のノック式ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に、回転カムを前後に摺動案内し回転させるためのカム溝を形成し、このカム溝に、回転カムを摺動自在に配設し、前記軸筒より外方に突出して配設したノック体を操作することにより、軸筒内にスプリングにより軸筒後端方向へ付勢して摺動自在に配置したボールペンレフィルのボールペンチップを軸筒先端開口部より出没可能な回転カムからなる繰出機構を具備してなるノック式ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボールペン用インキを収容したボールペンレフィルを、軸筒内にスプリングにより軸筒の後端方向へ付勢して摺動自在に配置し、ノック体を操作することによりボールペンレフィルの筆記部となるボールペンチップを軸筒の先端開口部より出没可能な回転カムからなる出没機構を具備したノック式ボールペンの構造はよく知られている。
【0003】
こうしたノック式ボールペンにおいて、剪断減粘性を有した水性インキや低粘度の油性インキを収容したボールペンレフィルは、落下やノック衝撃によってインキの逆流が発生する恐れがあった。
【0004】
こうした問題を鑑みて、インキ収容筒内に低粘度インキ又は剪断減粘性インキを収容した出没式ボールペンでは、ポケット等に挿着した状態では、ペン先部が軸筒の先端開口部から没入するように、特開平10−264582号公報「ノック式筆記具」や特開2001−105785号公報「ノック式筆記具」のように、セーフティー機構を設けることが行われていた。
【0005】
しかし、こうしたセーフティー機構を設けると、従来の出没機構にさらにセーフティー機構を付加することになり、構造が複雑となり、部品の増加につながり、製造上の問題から低価格品の出没式ボールペンに採用するには難しいという問題があった。
【0006】
ところで、特開平10−236073号公報「ノック式ボールペン」では、レフィルの交換時等に回転カムが脱落しないように、アンダーカットを設けているノック式ボールペンが開示されている。
【特許文献1】特開平10−264582号公報
【特許文献2】特開2001−105785号公報
【特許文献3】特開平10−236073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3のアンダーカットは、回転カムが乗り越え可能な程度にしか突出していないため、回転カムをアンダーカットのみで脱落防止としただけでは、強い衝撃によって、回転カムが脱落する恐れがあった。また、回転カムは、押圧体等のカム部が係合する歯部等、構造が複雑であるため、できるだけ簡略した形状とすることが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、本発明者は上記問題を鑑み、回転カムの形状が簡単で、従来の出没機構を踏襲することができ、落下やノック衝撃によってインキの逆流が発生し難く、回転カムが脱落しないノック式ボールペンを、簡単な構造で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記問題を解決するために、軸筒内に、回転カムを前後に摺動案内し回転させるためのカム溝を形成し、このカム溝に、回転カムを摺動自在に配設し、前記軸筒より外方に突出して配設したノック体を操作することにより、軸筒内にスプリングにより軸筒後端方向へ付勢して摺動自在に配置したボールペンレフィルのボールペンチップを軸筒先端開口部より出没可能な回転カムからなる繰出機構を具備してなるノック式ボールペンにおいて、前記回転カムの前方に、前記ボールペンレフィルの後端部と当接し、前記ボールペンレフィルの後方への付勢力を受ける、少なくとも、前記ボールペンレフィルの後端部の外径よりも大径の挿入部と、前記挿入部の後方に、前記ボールペンレフィルの後端部に当接する当接部と、前記当接部の後方に、コイルスプリングの付勢力によって前記回転カムに当接する受け部とを有する支持部材を、前記軸筒内に摺動可能に配設するとともに、前記軸筒が、前記支持部材の外径よりも小さい内径の小径部と、前記小径部よりも後方に、前記小径部の内径及び前記支持部材の外径よりも内径が大きい大径部とを連接して設け、前記支持部材が、軸筒の大径部内を摺動可能、且つ前記小径部と大径部の連接部によって、軸筒先端開口部側への移動を規制してあることを特徴とする。
【0010】
また、前記支持部材が、前記挿入部から後方に向かって縮径する傾斜面を有し、前記挿入部より内径が小さい複数本のリブ状突起を設けるとともに、前記当接部が、前記リブ状突起と連接したリブ形状であることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、前記軸筒が、少なくとも軸筒本体と、前記軸筒本体の先端部に着脱自在に装着した前軸と、前記軸筒本体の後端部に装着した、前記カム溝を形成した後軸とから構成し、前記後軸の内壁に、前記回転カムの脱落防止のための突部を設けたことを特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項1の構成によれば、前記回転カムの前方に、前記ボールペンレフィルの後端部と当接し、前記ボールペンレフィルの後方への付勢力を受ける、少なくとも、前記ボールペンレフィルの後端部の外径よりも大径の挿入部と、前記挿入部の後方に、前記ボールペンレフィルの後端部に当接する当接部と、前記当接部の後方に、コイルスプリングの付勢力によって前記回転カムに当接する受け部とを有する支持部材を軸筒内に摺動可能に配設するとともに、前記軸筒が、前記支持部材の外径よりも小さい内径の小径部と、前記小径部よりも後方に、前記小径部の内径及び前記支持部材の外径よりも内径が大きい大径部とを連接して設け、前記支持部材が、軸筒の大径部内を摺動可能とすることで、回転カムと支持部材が独立して摺動自在であるため、ノック時の衝撃を緩和することができる。
【0013】
また、前記支持部材が、前記軸筒本体の小径部と大径部の連接部によって、軸筒先端開口部側への移動を規制することで、組立性を向上するとともに、ボールペンレフィルを交換等、回転カム及び支持部材の脱落を防止することができる。
【0014】
尚、本発明の支持部材の材質は、PP樹脂、ABS樹脂、PC樹脂等、特に限定されるものではないが、前記回転カムよりも硬度の低い軟質な材料とすることで、衝撃吸収を効果的に行うことができるので好ましい。
【0015】
本願発明の請求項2の構成によれば、前記支持部材が、前記挿入部から後方に向かって縮径する傾斜面を有し、前記挿入部より内径が小さい複数本のリブ状突起を設けるとともに、前記当接部が、前記リブ状突起と連接したリブ形状とすることで、ボールペンレフィルを支持部材の当接部まで、スムーズに配設することができ、径方向のガタツキを抑制する効果を奏する。また、ボールペンレフィル後端までの空気を流通し易くすることができる。また、リブ状突起とリブ形状の当接部とを連接することで、支持部材の後端が開口していなくても、ボールペンレフィルの後端に、空気を流通することができる。さらに、支持部材の後端に閉鎖した底部を設けることで、支持部材の強度が向上するので好ましい。
【0016】
本願発明の請求項3の構成によれば、前記後軸内に、前記回転カムの先端部が当接する脱落防止のための突部を設けることで、後軸内に回転カムを配設した後、軸筒本体と後軸を組立する時にも回転カムが脱落し難く、組立性を向上するとともに、前記した支持部材と連接部による脱落防止との相乗効果により、回転カムの脱落を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、回転カムの形状が簡単で、従来の出没機構を踏襲することができ、落下やノック衝撃によってインキの逆流が発生し難く、回転カムが脱落しないノック式ボールペンを、簡単な構造で提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1のノック式ボールペンのペン先部が突出した状態を示す縦断面図である。
図2図1における一部省略した要部拡大断面図である。
図3図2における支持部材のA−A断面図である。
図4図2における筆記体を取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例1
図1から図4に示す本発明のノック式ボールペン1は、両端が開口した軸筒本体2と、軸筒本体2の先端部に、着脱自在に螺着した前軸3と、軸筒本体2の後端部に乗り越しによって装着した後軸4とで軸筒を構成し、後軸4の内壁面に回転カム5を前後に摺動案内し回転させるためのカム溝(図示せず)を形成し、このカム溝に、回転カム5に形成した突起5aを係合して配設してある。回転カム5の後端には、回転カム5を摺動し回転を付与するためのカム部(図示せず)を先端に有したノック体6を、後軸後端開口部4aより外方に突出した状態に配設した、回転カムによる出没機構を具備したノック式ボールペン1であり、後軸4の後端部にはクリップ12を設けてある。
【0020】
また、回転カム5の前方には、ボールペンレフィル8のインキ収容筒9の後端部と当接し、ボールペンレフィル8の後方への付勢力を受ける支持部材7を、軸筒本体2の大径部2b内を摺動可能に配設してある。
【0021】
支持部材7は、ボールペンレフィル8のインキ収容筒9の後端部外径Oよりも大径の開口部7aと、開口部7aの後方に、開口部7aから後方に向かって縮径する傾斜面Kを有する複数本のリブ状突起7bを設けてある。また、リブ状突起7bの後方には、ボールペンレフィル8のインキ収容筒9の後端部が当接するリブ状の当接部7cを連設してある。また、支持部材7の後端部には、コイルスプリング11の付勢力によって回転カム5に当接する受け部7dと、回転カム5内に挿入される底部7eを設けてある。
【0022】
具体的には、軸筒本体2には、内径Lの小径部2aと、小径部2aの内径Lよりも大きい内径M(L<M)の大径部2bを段状の連接部2cによって連接してある。また、支持部材7の先端部外径Nは、大径部2bの内径Mより小さく(M>N)、小径部2aの内径Lよりも大きく(L<N)してあり、軸筒本体2の大径部2b内を摺動可能に配設してある。また、インキ収容筒9の後端部外径Oは、支持部材7のリブ状突起7bの内径P以下、且つ当接部7cの内径Qよりも大きくしてある。(P≧O>Q)
【0023】
支持部材7の前方には、ボールペン用インキ(図示せず)を収容したインキ収容筒9の先端部にボールペンチップ10を装着したボールペンレフィル8をコイルスプリング11により後軸後端開口部4a方向へ付勢して、摺動自在に配設してあり、前軸3を軸筒本体2から取り外すことで、ボールペンレフィル8を交換可能としてある。
【0024】
後軸4内には、回転カム5が乗り越し可能な突起4bを設けてあり、回転カム5の脱落し難くしてある。また、軸筒本体2は、小径部2aと大径部2bが、急激な肉厚の変化が生じると成形性が低下するため、連設部2cを後方に向かって除々に拡径する傾斜面とし、小径部の外径Rと大径部の外径Sを内径に略比例して形成(R<S)することが好ましい。また、支持部材7によって回転カムの脱落を防止できるので、回転カム5の最大外径が軸筒本体2の小径部2aの内径Lよりも小さくすることができ、従来の構造をより踏襲し易くすることができる。
【0025】
ノック式ボールペン1の組立方法の一例について詳述すると、先ず、軸筒本体2の後端開口部から支持部材7を挿入する。その後、軸筒本体2の後端部に、後軸4を乗り越し嵌合によって装着する。この時、後軸4には、予め、ノック体5及び回転カムを順次、後軸4の先端開口部側から挿入してある。さらにその後、ボールペンレフィル8を軸筒本体2の先端開口部から、支持部材7の挿入部7aに挿入して当接部7cに当接させる。その後、軸筒本体2の先端部にコイルスプリング11を配設した前軸3を螺着して、コイルスプリング11によって、ボールペンレフィル8を後方に付勢してノック式ボールペン1を作成することができる。
【0026】
ノック式ボールペン1を使用するには、ノック体6を押圧操作して回転カム5をカム溝に沿って前進させ、ノック体6のカム部の作用により回転カム5を回転させて、ボールペンチップ10を前軸3の先端開口部3aより突出させて使用する。さらにノック体6を押圧操作すると、ノック体6のカム部の作用により回転カム5を回転させ、コイルスプリング11の付勢力によって回転カム5をカム溝に沿って後退させ、ボールペンチップ10を没入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のノック式ボールペンは、使用するインキに限定されることなく使用可能であるため、ノック式ボールペンとして広く利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ノック式ボールペン
2 軸筒本体
2a 小径部
2b 大径部
2c 連設部
3 前軸
3a 先端開口部
4 後軸
4a 後端開口部
5 回転カム
6 ノック体
7 支持部材
7a 開口部
7b リブ状突起
7c 当接部
7d 受け部
7e 底部
8 ボールペンレフィル
9 インキ収容筒
10 ボールペンチップ
11 コイルスプリング
12 クリップ
K 傾斜面
L 小径部の内径
M 大径部の内径
N 支持部材の先端部外径
O インキ収容筒の後端部外径
P リブ状突起の内径
Q 当接部の内径
R 小径部の外径
S 大径部の外径
図1
図2
図3
図4