(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の有機発光素子は、下記一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として含むことを特徴とする。そこで、一般式(1)で表される化合物について、まず説明する。
【化11】
【0021】
一般式(1)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すとき、Y
1、Y
2およびY
3を含む環はピリミジン環となる。このとき、メチン基はY
1、Y
2およびY
3のいずれであってもよいが、Y
1またはY
3であることが好ましい。また、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表すとき、Y
1、Y
2およびY
3を含む環はトリアジン環となる。
【0022】
一般式(1)において、Z
1およびZ
2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Z
1およびZ
2がとりうる好ましい置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基、シアノ基、ニトロ基、および水酸基等が挙げられ、これらはさらに置換基により置換されていてもよい。Z
1およびZ
2は、より好ましくは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。Z
1およびZ
2は、さらに好ましくは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基である。Z
1は、さらにより好ましくは、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基である。Z
2は、さらにより好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アリール基は、単環でも融合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。ヘテロアリール基も、単環でも融合環でもよく、具体例としてピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、トリアジル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基を挙げることができる。これらのヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して結合する基であってもよいが、好ましいのはヘテロアリール環を構成する炭素原子を介して結合する基である。9−カルバゾリル基が置換されている場合は、上記のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基や、シアノ基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基で置換されていることが好ましい。
【0023】
一般式(1)において、R
1〜R
8は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
1〜R
8がとりうる好ましい置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロアリール基、シアノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数12〜30のジアリールアミノ基、炭素数12〜30のカルバゾリル基、炭素数12〜30のジアラルキルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基が挙げられ、これらはさらに置換基により置換されていてもよい。R
1〜R
8は、より好ましくは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜30のカルバゾリル基である。R
1〜R
8は、さらに好ましくは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、炭素数12〜24のカルバゾリル基である。
一般式(1)において、R
1〜R
8の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。カルバゾリル基の具体例として、9−カルバゾリル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基を挙げることができ、好ましくは9−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基であり、より好ましくは9−カルバゾリル基である。ジアリールアミノ基やカルバゾリル基が置換基を有するとき、置換基の種類は特に制限されないが、上記のR
1〜R
8がとりうる好ましい置換基を好ましい例として挙げることができる。一般式(1)においては、R
1〜R
8のいずれが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基であってもよいが、R
3およびR
6の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基であることが好ましい。
【0024】
また、一般式(1)で表される化合物は分子中にカルバゾール構造を少なくとも2つ含む。一般式(1)にはすでにカルバゾール構造が1つ記載されているため、R
1〜R
8、Z
1およびZ
2の少なくとも1つがカルバゾール構造を含む基であることが必要とされる。好ましいのは、R
1〜R
4、R
5〜R
8およびZ
1の少なくとも1つがカルバゾール構造を含む基である場合である。より好ましいのは、R
3、R
6およびZ
1の少なくとも1つがカルバゾール構造を含む基である場合である。R
3、R
6およびZ
1のうちのいずれか2つがカルバゾール構造を含む基であることも好ましく、これらの全てがカルバゾール構造を含む基であることも好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、分子中にカルバゾール構造を少なくとも3つ含むものがより好ましく、分子中にカルバゾール構造を少なくとも4つ含むものがさらに好ましい。分子中のカルバゾール構造の数の上限値は特に制限されないが、例えば8つ以下にすることができ、6つ以下にすることができる。
【0025】
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(2)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【化12】
【0026】
一般式(2)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
1は、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基、または置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基を表す。Z
2は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。R
3は、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、またはカルバゾリル基を表す。R
6は、水素原子または置換基を表す。また、一般式(1)で表される化合物は分子中にカルバゾール構造を少なくとも2つ含む。
【0027】
一般式(2)におけるZ
1は、より好ましくは、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基であり、さらに好ましくは、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基であり、さらにより好ましくは、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基である。R
3およびR
6がいずれもカルバゾリル基ではないとき、Z
1は置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基であることが好ましい。
一般式(2)におけるZ
2は、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、さらに好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
一般式(2)におけるR
3は、より好ましくは炭素数12〜30の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の1−カルバゾリル基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の2−カルバゾリル基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の3−カルバゾリル基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の4−カルバゾリル基であり、さらに好ましくは、炭素数12〜30の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換の3−カルバゾリル基である。
一般式(2)におけるR
6は、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜30の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。さらに好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、炭素数12〜24の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。
一般式(2)におけるY
1、Y
2およびY
3の説明と好ましい範囲や、置換基の好ましい範囲については一般式(1)における対応する記載を参照することができる。
【0028】
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(3)で表される構造を有するものであることも好ましい。
【化13】
【0029】
一般式(3)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
2は、水素原子または置換基を表す。R
1〜R
8およびR
11〜R
18は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。
【0030】
一般式(3)におけるY
1、Y
2、Y
3、Z
2、R
1〜R
8の説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。ただし、Y
1、Y
2およびY
3のいずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すとき、メチン基はY
1であることが最も好ましい。また、Z
2の好ましい範囲については、一般式(2)における対応する記載も参照することができる。R
11〜R
18の説明と好ましい範囲については、一般式(1)におけるR
1〜R
8の説明と好ましい範囲を参照することができるが、R
11〜R
18の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基である必要はない。
【0031】
一般式(3)で表される化合物は、下記の一般式(4)で表される構造を有するものであることがさらに好ましい。
【化14】
【0032】
一般式(4)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
2は、水素原子または置換基を表す。R
3、R
6、R
13およびR
16は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R
3およびR
6の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。
【0033】
一般式(4)におけるY
1、Y
2、Y
3、Z
2、R
3およびR
6の説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。ただし、Y
1、Y
2およびY
3のいずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すとき、メチン基はY
1であることが最も好ましい。また、Z
2の好ましい範囲については、一般式(2)における対応する記載も参照することができる。さらに、R
3およびR
6の好ましい範囲については、一般式(3)における対応する記載も参照することができる。R
13およびR
16の説明と好ましい範囲については、一般式(1)におけるR
3およびR
6の説明と好ましい範囲を参照することができるが、R
13およびR
16の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基である必要はない。
【0034】
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(5)で表される構造を有するものであることも好ましい。
【化15】
【0035】
一般式(5)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
1およびZ
2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
1、R
2およびR
4〜R
8は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。
【0036】
一般式(5)におけるY
1、Y
2、Y
3、Z
1、Z
2、R
1、R
2およびR
4〜R
8の説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。
一般式(5)におけるXは、より好ましくは、炭素数12〜30のジアリールアミノ基、または炭素数12〜30の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。Xが置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表すとき、置換もしくは無置換のカルバゾリル基には、置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の2−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の3−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の4−カルバゾリル基が含まれる。このうち、Xがとりうる置換もしくは無置換のカルバゾリル基の群として、例えば、置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の2−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の4−カルバゾリル基からなる群を例示することができる。
【0037】
一般式(5)には、下記の一般式(6)で表される構造を有する化合物が含まれる。
【化16】
【0038】
一般式(6)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
1およびZ
2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
1、R
2、R
4〜R
8およびR
21〜R
28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0039】
一般式(6)におけるY
1、Y
2、Y
3、Z
1、Z
2、R
1、R
2およびR
4〜R
8の説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。また、R
21〜R
28の説明と好ましい範囲については、一般式(1)におけるR
1〜R
8の説明と好ましい範囲を参照することができるが、R
21〜R
28の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基である必要はない。
【0040】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0057】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される骨格を複数個有する化合物を、有機発光素子の発光層に用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される骨格を有する重合性モノマーを重合させた重合体を、有機発光素子の発光層に用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR
1〜R
8、Z
1およびZ
2のいずれかに重合性官能基を有するモノマーを重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を有機発光素子の発光層に用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される骨格を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを有機発光素子の発光層に用いることも考えられる。これらの応用や改変は、当業者により適宜なされうるものである。
【0058】
[一般式(11)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物のうち、特に下記の一般式(11)で表される化合物は新規化合物である。
【化33】
【0059】
一般式(11)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
2’は、水素原子または炭素原子で結合する置換基(ただし該置換基はホウ素原子を含まない)を表す。R
1〜R
8およびR
11〜R
18は、各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも1つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。
【0060】
一般式(11)におけるY
1、Y
2、Y
3、R
1〜R
8の説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。ただし、Y
1、Y
2およびY
3のいずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すとき、メチン基はY
1であることが最も好ましい。また、一般式(11)におけるR
11〜R
18の説明と好ましい範囲については、一般式(1)におけるR
1〜R
8の説明と好ましい範囲を参照することができる。ただし、R
1〜R
8の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基である必要はなく、また、R
11〜R
18の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基である必要はない。Z
2’がとりうる「炭素原子で結合する置換基」は、炭素原子を介して一般式(11)のトリアジン環またはピリミジン環に結合する置換基を意味する。例えば、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基(炭素原子で結合する基に限る)、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基、シアノ基などを挙げることができる。より好ましくは、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基(炭素原子で結合する基に限る)、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基、シアノ基である。さらにより好ましくは炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基(炭素原子で結合する基に限る)である。
【0061】
一般式(11)で表される化合物は、下記の一般式(12)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【化34】
【0062】
一般式(12)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
2’は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基(炭素原子で結合する基に限る)、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のハロアルキル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基、またはシアノ基を表す。R
3、R
6、R
13およびR
16は、各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも1つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。Z
2’、R
3、R
6、R
13およびR
16の好ましい範囲については、一般式(11)の対応する記載を参照することができる。
【0063】
[一般式(11)で表される化合物の合成法]
一般式(11)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(11)で表される化合物の合成は、既知の合成法や条件を適宜組み合わせることにより行うことができる。
例えば、好ましい合成法として、下記一般式(21)で表される化合物を、下記一般式(22)で表される化合物および下記一般式(23)で表される化合物と反応させて下記一般式(24)で表される化合物を合成し、さらに下記一般式(25)で表される化合物と反応させることにより合成する方法を挙げることができる。
【0065】
一般式(21)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。X
1、X
2およびX
3は、各々独立にハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。X
1、X
2およびX
3は、同一であっても異なっていてもよく、一般式(22)(23)および(25)の各化合物との反応性などを考慮して適宜決定することができる。
なお、以下の一般式(22)〜(25)におけるY
1、Y
2、Y
3、Z
2’、R
1〜R
8およびR
11〜R
18の定義は、一般式(11)における対応する定義を同じであり、一般式(22)〜(25)におけるX
1、X
2およびX
3は定義は、一般式(21)における対応する定義を同じである。
【0067】
一般式(21)で表される化合物と一般式(22)で表される化合物との反応は、既知のカップリング反応条件を用いて行うことができる。例えば、一般式(22)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液中にn−ブチルリチウムを添加して反応させた後に、一般式(21)のテトラヒドロフラン溶液中に滴下してカップリングさせることができる。生成した化合物と一般式(23)で表される化合物とのカップリングも同様にして行うことができる。これらの反応では、最初に一般式(22)で表される化合物と一般式(23)で表される化合物との混合テトラヒドロフラン溶液を用意しておき、該混合溶液中にn−ブチルリチウムを添加して反応させた後に、一般式(21)のテトラヒドロフラン溶液中に滴下してカップリングさせてもよい。カップリング反応後の混合物からは、既知の精製法により下記一般式(24)で表される化合物を得ることができる。
【0069】
一般式(24)で表される化合物は、さらに下記一般式(25)で表される化合物と反応させることにより、一般式(11)で表される化合物を合成することができる。この反応は既知の反応であり、既知の反応条件を適宜選択して用いることができる。
【0071】
上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(11)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することもできる。
【0072】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に用いる発光材料として有用である。一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料としての有用性も示しうる。このため、一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0073】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、系間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆系間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ系間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆系間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への系間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0074】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図1に示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0075】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0076】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0077】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0078】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0079】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0080】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0081】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0082】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0083】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0084】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0085】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0086】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0087】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0088】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0094】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0096】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0103】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0105】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0107】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0111】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0113】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0115】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0116】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0117】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0118】
(合成例1)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物1を合成した。
【化58】
【0119】
3,9’−ビ−9H−カルバゾール(2.71g,8.15mmol)を三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換し、テトラヒドロフラン50mLを加えて10分間攪拌した。攪拌後、この溶液を−78℃に冷却して20分攪拌した。攪拌後、1.60M n−ブチルリチウムヘキサン溶液(5.00mL,8.00mmol)をシリンジにより加え、−78℃で2時間攪拌した。次にこの溶液を、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(0.740g, 4.01mmol)とテトラヒドロフラン20mLの混合物へ滴下ロートを用いて加えた。この混合物を70℃で8時間攪拌した後、水を加えてさらに30分攪拌した。その後、この混合物にクロロホルムを加えて抽出した。有機層と水層を分離し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液をカラムクロマトグラフィーにより精製し、9,9’−(6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス−9H−カルバゾールを収量2.67g(収率85.8%)得た。
【0120】
窒素雰囲気下で、9,9’−(6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス−9H−カルバゾール(1.50g,1.93mmol)とフェニルボロン酸(0.390g,3.20mmol)をテトラヒドロフラン40mLに溶解した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.110g,0.0952mmol)と炭酸カリウム水溶液(2.10g,7.00mL)を添加して48時間還流した。この混合物にクロロホルムを加えて抽出した。有機層と水層を分離し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物1(収量1.38g)を得た(収率87.4%)。化合物の同定は
1H−NMRおよび元素分析により行った。
1H−NMR(500 MHz, CDCl
3,
TMS,δ):9.32(d,J=8.6Hz,2H),9.15(d,J=8.7Hz,2H),8.82(d,J=7.6Hz,2H),8.29(s,2H),8.20(d,J=7.8Hz,4H),8.10(d,J=7.7Hz,2H),7.76−7.72(m,5H),7.63(t,J=7.8Hz,2H),7.51−7.43(m,10H),7.33(t,J=7.3Hz,4H).
元素分析:Anal. Calcd for C
57H
35N
7:C 83.70%,H 4.31%,N 11.99%; found:C 83.90%,H 4.20%,N 12.04%.
【0121】
(合成例2)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物4を合成した。
【化59】
【0122】
3,9’−ビ−9H−カルバゾール3.00g(9.03mmol)を300mL三つ口フラスコに入れ、当該フラスコ内を窒素置換し、テトラヒドロフラン50mLを加えた。この溶液を−78℃で20分攪拌した。この溶液へ、1.60mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液6.77mL(10.8mmol)をシリンジにより滴下した。この溶液を窒素雰囲気下、−78℃で2時間攪拌した。
攪拌後、この溶液へ、4,6−ジクロロ−2−フェニルピリミジン0.924g(4.11mmol)とテトラヒドロフラン20mLの混合溶液を加えて攪拌した。この溶液を−78℃から徐々に室温に戻した後、この溶液を80℃で10時間攪拌した。
攪拌後、この溶液に水100mLを加えて攪拌した。攪拌後、この混合物へトルエンを加えて抽出した。抽出後、有機層と水層を分離し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥後、この混合物をろ過してろ液を得た。
得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製後、GPCを用いてさらに精製し、固体を得た。得られた固体をクロロホルムとメタノールの混合溶媒で再結晶したところ、白色粉末状固体の化合物4を収量0.651g(収率19.4%)得た。化合物の同定は
1H−NMR、
13C−NMR、および元素分析により行った。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):8.78−8.76(m,2H),8.54(d,J=9.0Hz,2H),8.31(d,J=2.0Hz,2H),8.26(d,J=8.5Hz,2H),8.19(d,J=8.0Hz,4H),8.13(d,J=7.5Hz,2H),7.98(s,1H),7.72(dd,J=9.0Hz,2.0Hz,2H),7.66−7.59(m,5H),7.46−7.41(m,10H),7.33−7.31(m,4H).
13C−NMR(125MHz,CDCl
3,δ):165.95,160.41,141.61,139.43,138.00,136.89,132.29,131.91,129.05,128.67,127.53,126.69,126.20,126.00,125.06,123.31,122.77,120.87,120.38,119.89,119.37,114.05,112.60,109.74,103.48.
元素分析 Anal.Calcd for C
58H
36N
6:C 85.27%,H 4.44%,N 10.29%; found:C 84.97%,H 4.36%,N 10.40%.
【0123】
(合成例3)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物40を合成した。
【化60】
【0124】
3,9’−ビ−9H−カルバゾール4.00g(12.0mmol)を300mL三つ口フラスコに入れ、当該フラスコ内を窒素置換した後、テトラヒドロフラン100mLを加えて、−78℃で20分攪拌した。この溶液へ、1.60mol/L n−ブチルリチウムヘキサン溶液9.03mL(14.4mmol)をシリンジにより滴下した。
この溶液を窒素雰囲気下、−78℃で2時間攪拌した。攪拌後、この溶液へ、4,6−ジクロロピリミジン0.813g(5.45mmol)とテトラヒドロフラン20mLの混合溶液を加えて攪拌した。この溶液を−78℃から徐々に室温に戻した後、この溶液を80℃で5時間攪拌した。
攪拌後、この溶液に水100mLを加えて攪拌した。攪拌後、この混合物へトルエンを加えて抽出した。抽出後、有機層と水層を分離し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥後、この混合物をろ過してろ液を得た。
得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製後、GPC分取カラムを用いてさらに精製し、固体を得た。得られた固体をトルエンとメタノールの混合溶媒へ加え、60℃で加熱した。加熱後、この混合物を吸引ろ過して固体を回収したところ、白色粉末状固体の化合物40を収量1.20g(収率29.7%)得た。化合物の同定は
1H−NMR、
13C−NMR、および元素分析により行った。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):9.45(s,1H),8.50(d,J=8.5Hz,2H),8.29(d,J=1.5Hz,2H),8.21−8.18(m,6H),8.13−8.11(m,3H),7.70(dd,J=8.5Hz,2.0Hz,2H),7.59(t,J=7.7Hz,2H),7.46−7.41(m,10H),7.34−7.30(m,4H).
13C−NMR(125MHz,CDCl
3,δ):160.12,159.96,141.55,139.24,137.84,132.49,127.58,126.79,126.24,126.00,125.16,123.31,122.98,120.91,120.39,119.91,119.33,114.17,112.46,109.70,105.57.
元素分析 Anal.Calcd for C
52H
32N
6:C 84.30%,H 4.35%,N 11.34%; found:C 84.17%,H 4.27%,N 11.33%.
【0125】
(実施例1)
本実施例において、化合物1のみからなる発光層を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製して、温度を変えて特性を評価した。
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paの条件にて化合物1を蒸着源から蒸着し、化合物1の薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。浜松ホトニクス(株)製C9920−02型絶対量子収率測定装置を用いて、N
2レーザーにより337nmの光を照射した際の薄膜からの発光スペクトルを300Kで特性評価したところ、467nmの発光が確認され、その際の発光量子収率は43.1%であった。次に、この素子にN
2レーザーにより337nmの光を照射した際の時間分解スペクトルの評価を、浜松ホトニクス(株)製C4334型ストリークカメラにより行った。発光寿命の短い成分を蛍光、発光寿命が長い成分を遅延蛍光と判断した。その結果、素子発光のうち、蛍光成分が約96%、遅延蛍光成分が約4%であった。
有機フォトルミネッセンス素子の評価温度を28K、50K、150K、200K、250Kおよび325Kに変更して上記と同じ測定を行った。温度による発光寿命を示すグラフを
図2に示す。各温度における発光量子収率と、蛍光成分と遅延蛍光成分の割合は
図3に示す通りであった。
【0126】
(実施例2)
本実施例において、化合物1と種々のホスト材料からなる発光層を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paの条件にて化合物1とmCPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。浜松ホトニクス(株)製C9920−02型絶対量子収率測定装置を用いて、N
2レーザーにより337nmの光を照射した際の薄膜からの発光スペクトルを300Kで特性評価したところ、454nmの発光が確認され、その際の発光量子収率は38.9%であった。次に、この素子にN
2レーザーにより337nmの光を照射した際の時間分解スペクトルの評価を、浜松ホトニクス(株)製C4334型ストリークカメラにより行ったところ、実施例1と同様に蛍光成分と遅延蛍光成分が観測された。
ホスト材料として、mCPの代わりにBSB、PYD2、DPEPOおよびUGH2を用いた点を変更して、上記と同様にして有機フォトルミネッセンス素子を作製し、上記と同じ測定を行った。いずれのホスト材料を用いた場合であっても遅延蛍光が認められたが、T1(最低励起三重項エネルギー準位)が3.0eV以上、より好ましくは3.1eV以上であるホスト材料(DPEPOおよびUGH2)を用いた場合に遅延蛍光成分の割合が特に高くなることが確認された。
【0127】
(比較例1)
本比較例において、化合物1の代わりに下記の構造を有する比較化合物を用いて実施例1と同じ方法により薄膜を有する素子を形成した。発光量子収率を測定したところ24.8%であった。また、この素子にN
2レーザーにより337nmの光を照射した際の時間分解スペクトルの評価を、浜松ホトニクス(株)製C4334型ストリークカメラにより行った。発光寿命の短い成分のみ、観測され、遅延蛍光は観測されなかった。
【化61】
【0128】
(実施例3)
本実施例において、溶液を調製してその特性を調べた。
化合物4のトルエン溶液(濃度10
−5mol/L)を調製し、紫外・可視分光光度計(島津製作所製:UV−2550)を用いてUV吸収特性を測定した。また、343nmの光を照射したときのフォトルミネッセンス(PL)特性を蛍光光度分光計(日本分光社製:FP6500−A−ST)により測定した。結果は
図4に示す通りであった。
【0129】
(実施例4)
本実施例において、溶液を調製してその特性を調べた。
化合物40のトルエン溶液(濃度10
−5mol/L)を調製し、紫外・可視分光光度計(島津製作所製:UV−2550)を用いてUV吸収特性を測定した。また、342nmの光を照射したときのフォトルミネッセンス(PL)特性を蛍光光度分光計(日本分光社製:FP6500−A−ST)により測定した。結果は
図5に示す通りであった。
【0130】
(実施例5)
本実施例において、化合物1とDPEPOからなる発光層を有し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを40nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCPを異なる蒸着源から共蒸着し、10nmの厚さの層を形成した。この時、化合物1の濃度は6.0重量%であった。次に、化合物1とDPEPOを異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さに形成して発光層を形成した。この時、化合物1の濃度は6.0重量%であった。次に、DPEPOを10nmの厚さに形成し、さらにTPBiを30nmの厚さに形成した。次いで、フッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、および光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)を用いて測定した。エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを
図6に示し、電流密度−電圧(J-V)特性を
図7に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図8に示す。実施例5の有機エレクトロルミネッセンス素子は9.56%の高い外部量子効率を達成した。
【0131】
(実施例6)
本実施例において、化合物1のみからなる発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを40nmの厚さに形成した。次に、mCPを10nmの厚さに形成した。次に、化合物1を蒸着源から蒸着し、30nmの厚さに形成して発光層を形成した。次に、Bphenを20nmの厚さに形成した。次いで、フッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。496nmの発光が確認され、外部量子効率は2.3%であった。
【0132】
(実施例7)
本実施例において、化合物1のみからなる発光層を有する別の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを30nmの厚さに形成した。次に、mCPを10nmの厚さに形成した。次に、化合物1を蒸着源から蒸着し、30nmの厚さに形成して発光層を形成した。次に、TPBiを20nmの厚さに形成した。次いで、フッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。491nmの発光が確認された。
【0133】
【化62】