特許第5679504号(P5679504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679504
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20150212BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20150212BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20150212BHJP
   B43K 23/008 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   B43K8/02 F
   B43K8/02 J
   B43K29/02 Z
   B43K3/00 F
   B43K23/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2007-325903(P2007-325903)
(22)【出願日】2007年12月18日
(65)【公開番号】特開2009-143207(P2009-143207A)
(43)【公開日】2009年7月2日
【審査請求日】2010年7月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(72)【発明者】
【氏名】川内 和博
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−63238(JP,A)
【文献】 特開2005−516830(JP,A)
【文献】 特開2006−289798(JP,A)
【文献】 実開昭52−129334(JP,U)
【文献】 実開昭52−57730(JP,U)
【文献】 実開昭49−50027(JP,U)
【文献】 特開2006−224646(JP,A)
【文献】 特開平6−91689(JP,A)
【文献】 実開昭57−125388(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/105227(WO,A1)
【文献】 特開2008−126595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、スプリングにより後方に弾発されたレフィールの筆記先端を、ノック体へのノック操作により、軸筒の先端開口部より突出させて筆記可能とするノック式筆記具であって、
レフィールに、消去性インキが充填されており、
レフィールの筆記先端が、ラインマーカー用のチップであり、
軸筒の少なくとも先端部が、JIS K 6253Aに従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で被覆されており、
弾性体が、軸筒の把持部分を被覆しており、
弾性体の先端が先端開口部を越えており、
弾性体が筆跡を消去する摩擦体として機能する、
ノック式筆記具。
【請求項2】
軸筒内に、スプリングにより後方に弾発されたレフィールの筆記先端を、ノック体へのノック操作により、軸筒の先端開口部より突出させて筆記可能とするノック式筆記具であって、
レフィールに、消去性インキが充填されており、
レフィールの筆記先端が、ラインマーカー用のチップであり、
先端開口部が、軸筒とは別部材の先栓に設けられており、
先栓が、JIS K 6253Aに従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で被覆されており、
弾性体の先端が先端開口部を越えており、
弾性体が筆跡を消去する摩擦体として機能する、
ノック式筆記具。
【請求項3】
弾性体が、軸筒の把持部分を被覆している、請求項2に記載のノック式筆記具。
【請求項4】
弾性体が、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、またはスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レフィールに消去性インキが充填されているノック式筆記具であって、筆跡した文字等を擦って消すための弾性体を備え、かつ筆記具の向きを変えることなく、弾性体で筆跡を消去することが可能なノック式筆記具を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記した筆跡を消すことのできる消去性インキを用いる筆記具が種々提案され(特許文献1〜3)、一部は既にボールペンおよびマーキングペンとして市販されている。ここで、「筆跡」とは、筆記面または描画面に筆記または描画された線図および塗りつぶしを指し、以下においても同じ意味で使用される。消去性インキで筆記した筆跡は、例えば、加熱により変色する性質を有し、あるいは剥離性を有するものである。加熱により変色する性質のインキで筆記した筆跡は、弾性樹脂等から成る摩擦体で擦るときに発生する熱で、インキの色が無色になる又は薄くなることにより、消去される。剥離性を有するインキで筆記した筆跡は、摩擦体または消しゴムで擦って、紙面からインキを剥がすことによって、消去される。いずれの消去性インキを用いる場合も、筆記した文字等の消去には「擦る」という、消去操作が必要となる。
【0003】
消去性インキを用いている市販のボールペンおよびマーキングペンは、一般に、筆跡を消すための摩擦体または消しゴムを備えており、それらは、筆記具の後端部またはキャップの先端に設けられている。
【特許文献1】特開2006−63238号公報
【特許文献2】特開2007−223302号公報
【特許文献3】特開2006−123324号公報
【特許文献4】実開昭57−125388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸筒の後端部に設けられた摩擦体等で筆跡を消去する場合には、筆記中であれば、筆記具の向きを変えて、消去操作を行う必要がある。そして、消去後、さらに筆記を続けるときには、再度、筆記具の向きを変えて持ち直す必要がある。筆記中に何度も筆記具の向きを変えることは、利用者にとって意外に煩わしいことである。また、キャップ式の筆記具であって、軸筒の後端部に摩擦体が設けられている場合には、キャップはずして、摩擦体を露出させる操作がさらに必要となる。一般に、キャップは、筆記中、軸筒の後端部に被せられるからである。キャップの先端に摩擦体が設けられた筆記具を用いる場合にも、消去操作は筆記具の向きを変えることを伴う。
【0005】
特許文献4には、ペン本体の先端に孔のあいた消しゴムを取り付ける構造のシャープペンシルが提案され、その構造によれば、消去の際にペンを持ち直す必要のないことが示されている。特許文献4に記載のシャープペンシルにおいて、消しゴムに設けられる孔は、鉛筆芯を内蔵する芯保持具が出入りすることを可能にしている。しかし、特許文献4に記載のシャープペンシルにおいては、使用中に消しゴムが摩耗して、消しゴムの形状および孔の寸法が変化することがあり、その結果、芯保持具が、消しゴムの孔の中または孔の入口付近でぐらついて、安定して筆記できないことがある。さらに、消しゴムの摩耗が進むと、消しゴムを取り替える必要があり、継続してシャープペンシルを使おうとする場合には、専用の小さな消しゴムを常に用意しておかなければならない。さらにまた、特許文献4に示されたシャープペンシルは、一般的なシャープペンシルとはかなり形状および構造が異なり、例えば既存の製造ラインを使用して製造できるものではない。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、消去操作のために筆記具の向きを変える必要がなく、かつ従来の筆記具と同じ構成および構造を有し、かつ従来の筆記具と同様の筆記性が確保された、消去用の摩擦体を備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の要旨において、
軸筒内に、スプリングにより後方に弾発されたレフィールの筆記先端を、ノック体へのノック操作により、軸筒の先端開口部より突出させて筆記可能とするノック式筆記具であって、
レフィールに、消去性インキが充填されており、
先端開口部が、軸筒とは別部材の先栓に設けられており、
先栓が、JIS K 6253Aに従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で形成されている、ノック式筆記具を提供する。
【0008】
このノック式筆記具は、通常のものと同様のノック操作で筆記可能であり、ノック操作でレフィールの筆記先端を軸筒内に収めてから、JIS K 6253Aに従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で、筆跡を擦ることによって、筆跡を消去し得るようにしたことを特徴とする。先栓が、ショア硬度Aが40度以上の弾性体で形成されているために、先栓を摩擦体として用いることが可能となり、また、摩擦体として用いても、変形および摩耗が生じにくいため、先栓としての機能(即ち、安定した筆記の確保、未筆記時のレフィールの筆記先端の保護)が損なわれることがない。また、先栓を摩擦体として使用できるため、消去操作において、ペンの向きを変える必要がない。
【0009】
本発明はまた、第2の要旨において、
軸筒内に、スプリングにより後方に弾発されたレフィールの筆記先端を、ノック体へのノック操作により、軸筒の先端開口部より突出させて筆記可能とするノック式筆記具であって、
レフィールに、消去性インキが充填されており、
軸筒の少なくとも先端部が、JIS K 6253Aに従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で被覆されている、ノック式筆記具を提供する。
【0010】
このノック式筆記具は、軸筒の先端部が、ショア硬度Aが40度以上である弾性体で被覆され、レフィールの筆記先端が軸筒内に収められてから、先端を被覆する弾性体を摩擦体として用いて、筆跡を消去し得るようにしたことを特徴としている。この筆記具においても、弾性体のショア硬度Aが40度以上であるため、変形および摩耗が生じにくい。また、この筆記具においても、先端部を摩擦体として使用できるため、消去操作において、ペンの向きを変える必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノック式筆記具は、レフィールを軸筒内に収容したときに、先端部に摩耗しにくい弾性体が位置するように構成され、この弾性体を用いて、筆跡を消去できるようにしたものである。よって、筆記中、筆跡を消去する必要があれば、利用者は、ノック操作をしてレフィールの筆記先端を軸筒内に収容するだけでよく、筆記具の向きを変えることなく、そのまま消去操作に移ることができる。消去操作終了後は、ノック操作をしてレフィールの筆記先端を先端開口部より突出させて、ペンの向きを変えることなく、筆記に戻ることができる。
【0012】
また、本発明のノック式筆記具においては、摩耗しにくい弾性体を使用して先栓を構成する、あるいは先端部を被覆するので、摩擦体を取り替える必要がない。さらに、先栓を弾性体で構成する場合には、部品点数を増やすことなく、消去機能を有する筆記具を得ることができる。先端部を弾性体で覆う構成は、先端部が軸筒と一体に形成されている場合に有用である。即ち、弾性体で先端部を覆うだけで、容易に先端部が摩擦体として機能する筆記具を得ることができ、大幅に製造工程を変更する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の要旨に係るノック式筆記具の一形態を図1に示す。このノック筆記具(100)は、スプリング(図示せず)により後方に弾発されたレフィール(16)の筆記先端(16a)を、軸筒(14)の後端部より外方に突出したノック体(12)へのノック操作により、軸筒の先端開口部(18)より突出させて筆記可能とするものである。図示した形態は、一例であり、通常のノック式筆記具で用いられている構成および機構を任意に用いてよい。例えば、ノック方式は、ノック体が軸筒の側部に露出しているサイドノック方式であってよい。
【0014】
図示した形態において、ノック式筆記具は、軸筒(14)、ノック体(12)、および先栓(10)を含み、先栓(10)の先端に先端開口部(18)が形成されている。先栓(10)は、軸筒に螺着されている。先栓(10)の形状は、通常のノック式筆記具の先栓と同様の形状であってよく、一般には、図示するように、軸筒に螺着可能な円錐形状を有する。あるいは、先栓は、円筒形状、または角柱形状であってよい。
【0015】
先栓(10)は、JIS K 6253A(2006)に従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体で形成され、より好ましくは55度以上の弾性体で形成される。弾性体のショア硬度Aが45度未満であると、筆跡を擦ったときに、弾性体自身の磨耗による消しカスが生じやすくなり、弾性体が変形して、先栓としての機能を果たせなくなることがある。また、弾性体のショア硬度Aは、100度以下であることが好ましい。ショア硬度Aが100を超える弾性体は弾力性が小さく、筆跡を消去しにくい。
【0016】
上記のショア硬度Aを有する弾性体は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、アクリル、ナイロン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、およびアクリロニトチル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂等の合成樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリスチレンとポリオレフィンのブロック共重合体、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、1,2−ポリブタジエン系エラストマー、および塩化ビニル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマーと合成樹脂の混合物、2種以上の熱可塑性エラストマーの混合物、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、ならびに発泡体などである。
【0017】
前記弾性体のうち、スチレン系エラストマーが好ましく用いられ、特に、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、またはスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体が好ましく用いられる。スチレン系エラストマーは、特許文献2にも記載のように、加熱により消去されるインキで筆記した筆跡を消去する際に、摩擦熱の発生効率が良く、また、紙等を擦るときに滑らかに擦ることができる。さらに、スチレン系エラストマーは、剥離性のインキを擦るときでも、剥離したインキが付着しにくいという利点を有する。
【0018】
弾性体による先栓(10)の形成は、筆記具の製造で通常用いられている方法で実施してよい。例えば、先栓は、押出成形、射出成形、および圧縮成形等から選択される任意の方法で作製してよい。したがって、図1に示す構成の筆記具は、先栓の材料を弾性体にすることを除いては、常套の方法で、各部材を作製し、組み立てることができる。
【0019】
軸筒の材料およびノック体は、通常のノック式筆記具で用いられている材料(金属または樹脂等)および方法を使用して作製することができ、ここではその詳細な説明を省略する。
【0020】
レフィール(16)には、消去性インキが充填されている。本明細書において、「消去性インキ」とは、それを用いて筆記した筆跡を、後で消去できるインキをいう。消去性インキは、加熱により消去可能なインキであってよい。加熱により消去するインキは、例えば、電子受容性化合物と、電子供与性呈色性有機化合物(例えば、ロイコ染料)と、消色剤を含み、常温では、電子受容性化合物により発色状態にされた電子供与性呈色性有機化合物が消色剤から分離されており、加熱したときに、消色剤が電子受容性化合物に作用して、無色になる又は色が薄くなるものであってよい。電子受容性化合物により発色状態にされた電子供与性呈色性有機化合物は、例えば、ワックス粒子に包含されることにより、消色剤から分離させることができる。その場合、さらに消色剤をワックス粒子に包含させてよい。あるいは、消去性インキは、特許文献1に記載のような感温変色性色彩記憶性インキ組成物であってよい。本発明のノック式筆記具において、加熱により消去可能なインキを使用する場合には、弾性体で擦るときに生じる摩擦熱によって、消去可能なように、インキの組成を決定する。
【0021】
あるいは、消去性インキは、剥離により消去するインキであってよい。剥離により消去するインキは、紙に浸透しにくい顔料(例えば、粒径の大きい顔料)を含み、それを用いて筆記した筆跡を擦ると、インキが紙から剥がれて、筆跡が消去されるインキであってよい。あるいは、剥離により消去するインキは、平均粒子径が0.2μm未満の着色剤、乾燥したときのゴム硬度が例えば75°以下である造膜樹脂を含み、かつ消去性インキ組成物の表面張力が30mN/m以上となるように、調製されたものであってよい。このインキにおいては、粒子径の小さい着色剤が使用されるので、このインキを使用すると、筆記先端で目詰まりが生じにくい。本発明のノック式筆記具において、剥離により消去するインキを使用する場合には、弾性体で擦るときに加わる力(擦過力)によって、消去可能なように、インキの組成を決定する。
【0022】
次に、第2の要旨に係るノック式筆記具の一形態を図2に示す。このノック式筆記具(200)も、スプリング(図示せず)により後方に弾発されたレフィール(26)の筆記先端(26a)を、軸筒(24)の後端部より外方に突出したノック体(22)へのノック操作により、軸筒(24)の先端開口部(28)より突出させて筆記可能とするものである。
【0023】
図2に示した形態において、ノック式筆記具は、先端まで一体に成形された軸筒(24)と、ノック体(22)とを含み、軸筒(24)の先端に先端開口部(28)が形成されている。軸筒(24)の先端部には、弾性体(20)が被着されており、この弾性体(20)が筆跡を消去する摩擦体として機能する。
【0024】
この形態において、先端部を被覆する弾性体(20)は、図1に示した先栓に関連して説明したように、JIS K 6253A(2006)に従って測定されるショア硬度Aが40度以上の弾性体である。より好ましいショア硬度A、および弾性体として使用するのに適した具体的な材料も、図1に関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。
【0025】
軸筒を覆う弾性体の形状および寸法は特に限定されず、図示したように、略円錐形の形状を有し、先端開口部および軸筒の直径が漸増している部分を覆う形状および寸法を有してよい。弾性体は、筆記に影響を及ぼさない限りにおいて、その先端が軸筒の先端開口部を越えていることが好ましい。弾性体の先端が軸筒の先端開口部を越えていると、消去時に軸筒の先端が筆記面に当たらないので、軸筒の損傷を防止できる。弾性体は、軸筒の先端開口部から、例えば1mm程度越えていることが好ましい。弾性体が軸筒の先端開口部を越える場合には、必要に応じて、筆記時におけるレフィールの筆記先端から軸筒の先端開口部までの距離が長くなるように、筆記具を設計してよい。
【0026】
図2に示す弾性体は、軸筒が先端まで一体に成形されたものにのみ用いられるわけではない。例えば、図1に示すような軸筒と先栓を有し、先栓が金属または硬質の樹脂で形成されているノック式筆記具において、弾性体が先栓を覆うように被着されていてよい。
【0027】
あるいは、図3に示すように、弾性体は、先端開口部から、軸筒の把持部分まで覆う形状および寸法を有してよい。「軸筒の把持部分」とは、筆記するときに利用者が筆記具を把持する部分であり、グリップ部とも呼ばれる。図3に示す筆記具(300)もまた、ノック体(32)および軸筒(34)を含み、軸筒内でレフィール(36)が、スプリングにより後方に弾発されている。弾性体(30)は、軸筒(34)の先端開口部(38)を覆い、軸筒(34)の円錐形状に形成された部分を覆い、さらに軸筒(34)の略一定の直径を有する部分の一部(把持部分)を覆っている。この構成によれば、筆跡の消去のための部材とグリップ部とを、一度に形成することができる。一般に、ショア硬度Aが40度以上の弾性体は、把持部を構成するのにも適している。
【0028】
この構成において、弾性体は、先端開口部から、筆記先端から4cm〜7cm程度までの領域に設ける(即ち、弾性体の後端が筆記先端から4cm〜7cmの位置にある)ことが好ましい。グリップ部は、通常、筆記先端から2cm〜3cmの位置から開始して、筆記先端から6cm〜7cmの位置で終了するように、設けられることによる。
【0029】
図2および図3に示す形態において、被着される弾性体の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm〜3.0mmの厚さを有してよい。被着される弾性体の厚さが大きすぎる場合には、筆記に支障を来すことがあり、小さすぎる場合には、筆跡を消去するときに、弾性体と筆跡の接触面積が小さくなって、消去操作がしにくくなる。
【0030】
弾性体を被着する構成のノック式筆記具は、常套の方法で筆記具を組み立てた後、弾性体を被着させる方法で作製できる。よって、従来の製造装置をそのまま使用することができる。また、弾性体を、先端開口部から、軸筒を把持する部分まで覆うように、被着させれば、グリップ形成工程と、消去のための部材形成を同時に実施することができ、効率的である。
【0031】
図1図3に示す筆記具はいずれも、レフィールの先端がボールペンチップである、ノック式ボールペンである。レフィールの種類はこれに限定されず、ラインマーカーのチップであってよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のノック式筆記具は、当該で筆記した筆跡を、筆記具の向きを変えることなく、筆記具の先端で擦ることにより、消去することが可能なものであり、事務用および描画用の筆記具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のノック式筆記具の一形態を模式的に示す側面図である。
図2】本発明のノック式筆記具の別の形態を模式的に示す側面図である。
図3】本発明のノック式筆記具のさらに別の形態を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 先栓
12、22、32 ノック体
14、24、34 軸筒
16、26、36 レフィール
16a、26a 筆記先端
18、28、38 先端開口部
20、30 弾性体
図1
図2
図3