特許第5679505号(P5679505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679505熱電材料、これを含む熱電モジュール及び熱電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679505
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】熱電材料、これを含む熱電モジュール及び熱電装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/14 20060101AFI20150212BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20150212BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20150212BHJP
   C01F 17/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   H01L35/14
   H01L35/16
   H01L35/34
   C01F17/00 B
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-502486(P2013-502486)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公表番号】特表2013-524503(P2013-524503A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】KR2011002247
(87)【国際公開番号】WO2011122888
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2012年11月27日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0029348
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイー,ジョン−ソ
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−モク
【審査官】 羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06369314(US,B1)
【文献】 特開平11−150307(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/008247(WO,A2)
【文献】 K Deguchi,Magnetic order of rare-earth tritelluride CeTe3 at low temperature,Journal of Physics: Conference Series,2009年 4月,Volume150,Part4,2023,1-4,URL,http://iopscience.iop.org/1742-6596/150/4/042023/pdf/1742-6596_150_4_042023.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/14
H01L 35/16
H01L 35/34
C01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の構造を有する化合物を含む熱電材料:
【化1】
式中、前記R及びR’は、それぞれ相異なり、それぞれ希土類元素及び遷移金属からなる群から選択される一つ以上の元素であり、
前記T及びT'は、それぞれ相異なり、S、Se、Te、P、Bi、C、Si、Ge、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記aは、0≦a≦1であり、
前記bは、0≦b≦1であり、
前記yは、0y<1である。
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、2次元層状構造を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
前記化学式1の化合物は、R及びTから実質的に構成された二つのブロック層の間に、Tから実質的に構成された二重層が介在した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項4】
前記R及びR’のうちいずれか一つは、希土類元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項5】
前記T及びT’のうちいずれか一つは、S、Se及びTeからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項6】
前記aは、0ないし0.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項7】
前記bは、0ないし0.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項8】
前記yは、0より大きく0.5以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項9】
前記化学式1の化合物は、下記化学式2の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料:
【化2】
式中、前記Rは、希土類元素であり、R’は、遷移金属であり、
前記Tは、S、Se及びTeから選択される一つ以上であり、T’は、P、Bi、C、Si、Ge、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記a’は、0≦a’≦1であり、
前記b’は、0≦b’≦1であり、
前記y’は、0y’≦1である。
【請求項10】
前記y’は、0y’≦0.5であることを特徴とする請求項9に記載の熱電材料。
【請求項11】
前記化学式1の化合物は、多結晶構造または単結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項12】
300Kで3.5W/mK以下の熱伝導度を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項13】
300Kで5μV/K以上のゼーベック係数を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項14】
300Kで0.05以上の性能指数を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電材料。
【請求項15】
R’はR’およびR’を含み、R’およびR’のモル比は、それぞれ1:9ないし9:1であり、
T’はT’およびT’を含み、T’およびT’のモル比は、それぞれ1:9ないし9:1である、
請求項1に記載の熱電材料
【請求項16】
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する熱電素子を備え、
前記熱電素子が請求項1に記載の熱電材料、CeTeまたはこれらの組合せを含む熱電モジュール。
【請求項17】
熱供給源と、
前記熱供給源から熱を吸収する熱電素子と、前記熱電材料と接触するように配された第1電極と、前記第1電極に対向して配され、前記熱電素子と接触する第2電極を備える熱電モジュールと、
を備え、
前記熱電素子は、請求項1に記載の熱電材料、CeTeまたはこれらの組合せを含む熱電装置。
【請求項18】
一材料および第二材料を結合することにより結合体を形成すること、および、
前記結合体を熱処理することにより熱電材料を形成することを含み、
前記第一材料がRおよびR’を含み、RおよびR’が相異なり、RおよびR’が希土類元素および遷移金属からなる群から選択される少なくともいずれか一つの元素を含み、
前記第二元素がTおよびT’を含み、TおよびT’が互いに異なり、TおよびT’がそれぞれS、Se、Te、P、Bi、C、Si、Ge、B、Al、Ga、およびInからなる群から選択される少なくともいずれか一つを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の熱電材料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性能指数に優れた熱電材料、これを含む熱電モジュール及び熱電装置に係り、さらに具体的には、ゼーベック係数及び電気伝導度が高く、熱伝導度の低い熱電材料、これを含む熱電モジュール及び熱電装置が提供される。
【背景技術】
【0002】
一般的に、熱電材料は、ペルティエ効果(Peltier Effect)及びゼーベック効果(Seebeck Effect)を利用して、能動冷却及び廃熱発電に応用できる材料である。前記ペルティエ効果は、図1に示したように、外部からDC電圧を加えた時、p型材料の正孔及びn型材料の電子が移動することによって、材料両端に発熱及び吸熱を起こす現象である。前記ゼーベック効果は、図2に示したように、外部熱源から熱を供給される時、電子及び正孔が移動しながら材料に電流の流れが生じて発電を起こす現象を称す。
【0003】
このような熱電材料を利用した能動冷却は、素子の熱的安定性を改善させ、振動及びノイズがなく、別途の凝縮機及び冷媒を使用せずに、体積が小さく、かつ環境にやさしい方法として認識されている。このような熱電材料を利用した能動冷却の応用分野としては、無冷媒冷蔵庫、エアコン、各種のマイクロ冷却システムに使用でき、特に、各種のメモリ素子に熱電素子を付着させれば、既存の冷却方式に比べて、体積は減らし、かつ素子を均一で安定した温度に維持させることができるので、素子の性能が改善できる。
【0004】
一方、ゼーベック効果を利用して熱電材料を熱電発電に活用すれば、廃熱(Waste Heat)をエネルギー源として活用できて、自動車エンジン及び排気装置、ゴミ焼却場、製鉄所の廃熱、人体熱を利用した人体内医療機器の電源など、エネルギーの効率を向上させるか、または廃熱を回収して使用する多様な分野に応用できる。
【0005】
このような熱電材料の性能を測定する因子としては、下記の数式1のように定義される無次元性能指数ZT値を使用する。
【0006】
【数1】
【0007】
(式中、Sはゼーベック係数、σは、電気伝導度、Tは絶対温度、κは、熱伝導度である。)
前記無次元性能指数ZT値を増加させるためには、ゼーベック係数及び電気伝導度が高く、熱伝導度の低い材料を探さねばならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ゼーベック係数及び電気伝導度が高く、熱伝導度の低い熱電材料を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記熱電材料を含む熱電素子を備える熱電モジュールを提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記熱電モジュールを備える熱電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するために、下記化学式1の構造を有する化合物を含む熱電材料を提供する:
[化学式1]
【0012】
【化1】
【0013】
式中、前記R及びR'は、それぞれ相異なり、それぞれ希土類元素及び遷移金属からなる群から選択される一つ以上の元素であり、
前記T及びT'は、それぞれ相異なり、それぞれS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記aは、0≦a≦1であり、
前記bは、0≦b≦1であり、
前記yは、0≦y<1である。
【0014】
一実施形態によれば、前記化学式1の化合物は、2次元層状構造を有する。
【0015】
一実施形態によれば、前記化学式1の化合物は、R及びTで構成された二つのブロック層の間にTで構成された二重層が介在した構造を有し、前記R及びTは、それぞれR’及びT’でドーピングされる。
【0016】
一実施形態によれば、前記R及びR’のうちいずれか一つ以上は、希土類元素を含む。
【0017】
一実施形態によれば、前記T及びT’のうちいずれか一つ以上は、S、Se及びTeからなる群から選択された一つ以上を含む。
【0018】
一実施形態によれば、前記aは、0ないし約0.5の範囲を有する。
【0019】
一実施形態によれば、前記bは、0ないし約0.5の範囲を有する。
【0020】
一実施形態によれば、前記yは、0ないし約0.5の範囲を有する。
【0021】
一実施形態によれば、前記化学式1の化合物は、下記化学式2の化合物である:
[化学式2]
【0022】
【化2】
【0023】
式中、前記Rは、希土類元素であり、R’は、遷移金属であり、
前記Tは、S、Se及びTeから選択される一つ以上であり、T’は、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記a’は、0≦a’≦1であり、
前記b’は、0≦b’≦1であり、
前記y’は、0≦y’≦1である。
【0024】
一実施形態によれば、前記y'は、0≦y’≦約0.5の範囲を有する。
【0025】
一実施形態によれば、前記化学式1の化合物は、多結晶構造、または単結晶構造を有する。
【0026】
一実施形態によれば、前記熱電材料は、常温で約3.5W/mK以下の熱伝導度を有する。
【0027】
一実施形態によれば、前記熱電材料は、常温で約10μV/K以上のゼーベック係数を有する。
【0028】
他の形態によれば、第1電極、第2電極、及び前記第1電極及び第2電極の間に介在する熱電素子を備え、前記熱電素子が前記化学式1の化合物を含む熱電材料を含む熱電モジュールが提供される。
【0029】
他の形態によれば、熱供給源と、前記熱供給源から熱を吸収する熱電素子と、前記熱電材料と接触するように配された第1電極と、前記第1電極に対向して配され、前記熱電素子と接触する第2電極を備える熱電モジュールとを備え、前記熱電素子は、上述した熱電材料を含む熱電装置が提供される。
【0030】
さらに熱電材料を製造する方法が提供され、前記方法は第一材料と第二材料を結合し、結合体を形成し、前記結合体を熱処理して熱電材料を形成することを含み、前記第一材料はRおよびR’を含み、RおよびR’は相異なり、RおよびR’はそれぞれ希土類および遷移金属からなる群から選択される一つ以上の元素であり、前記第二材料はTおよびT’を含み、TおよびT’は相異なり、TおよびT’はそれぞれS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、RおよびR’の和とTおよびT’の和のモル比は約1:2から約1:4である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ペルティエ効果による熱電冷却を示す概略図である。
図2】ゼーベック効果による熱電発電を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態による熱電材料の結晶構造を示す模式図である。
図4】一実施形態による熱電モジュールを示す図面である。
図5】実施例1ないし5から得られた熱電材料の熱伝導度を示すグラフである。
図6】実施例1から得られた熱電材料のゼーベック係数を示すグラフである。
図7】実施例1から得られた熱電材料のパワーファクターを示すグラフである。
図8】実施例1から得られた熱電材料の性能指数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで実施形態について詳しく言及し、実施形態の実施例を添付の図面で説明し、同じの参照番号は同様の要素を最初から最後まで参照する。この際、本実施形態は異なる形態であってもよく、ここに説明した記載に限定された解釈をするべきではない。したがって、各実施形態は、図を参照することにより、本開示の各形態を説明する目的のためだけに記載されたものである。
【0033】
ある要素が、他の要素の「上に」あると言及されているとき、それがもう一方の要素の上に直接あることもあれば、介在する要素が間にあってもよいことが理解される。対照的に、ある要素が他の要素の「直接上」にあると言及されている際には、介在する要素はなにもない。ここで使用されているように、「および/または」という用語は、関連する列記された要素のいずれかおよび一つ以上のもののすべての組合せを含む。
【0034】
「第一」、「第二」、「第三」などの用語は、様々な要素、成分、領域、層、および/または部分を表現するために使用されるが、これらの要素、成分、領域、層、および/または部分はこれらの用語に限定されるものではない。これらの用語は一つの要素、成分、領域、層、または部分を他の要素、構成要素、領域、層、または部分と区別するために単に使用される。ゆえに、以下で議論される「第一要素」、「成分」、「領域」、「層」、または「部分」は、ここでの教示を逸脱することなく第二要素、成分、領域、または部分と呼ばれてもよい。
【0035】
ここで用いる用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的とし、限定するものではない。ここで用いられるように、単数形“a,”“an,”および“the”は、文脈明らかな場合を除いて、複数形も含むものである。さらに、“comprises”および/または“comprising,”または“includes”および/または“including”の用語は、この明細書で使われた際には、述べられた特徴、領域、整数、工程、操作、要素、および/または成分の存在を明記するが、一つ以上の特徴、領域、整数、工程、操作、要素、成分、および/またはそれらの集合の存在または追加を排除するものではない。
【0036】
さらに、「より下の(lower)」、「底の(bottom)」、「より上の(upper)」、「最も上の(top)」といった相対用語はここでは図で説明するように別の要素に対する一つの要素の関係を表現するために使用される。相対用語は図に記載された姿勢に加え、装置の違った姿勢を指し示すものである。例えば、一つの図に記載された装置をひっくり返したとき、他の要素「より下に(lower)」と記載されていた要素は、結果として他の要素「より上の(upper)」側に位置しうる。ゆえに例とした「用語「より下の(lower)」は、図の特定の姿勢によっては「より上の(upper)」と「より下の(lower)」の位置両方を指しうる。同様に一つの図に記載された装置をひっくり返したとき、他の要素「より下に(below)」または「の下に(beneath)」と記載されていた要素は、結果として他の要素「より上に(above)」側に位置しうる。ゆえに例とした用語「より下に(below)」または「の下に(beneath)」は、図の特定の姿勢によってはより上とより下の位置両方を指しうる。
【0037】
特に定義されていない限り、ここで使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本開示内容の属する技術分野における通常の技術を有するものが共通に理解するのと同じ意味を有している。一般的な辞書で定義される様な用語は、従来技術と本開示の文脈におけるこれらの意味と矛盾しない意味を有していると解釈すべきであり、ここに明確にそのように定義されない限り理想化し、または過剰に形式的な意味に解しないことがさらに理解される。
【0038】
例とした実施形態は、理想化した実施形態を図解した断面的な説明を参考にここに記載されている。そのようなものとして、例えば製造技術および/または耐久性の結果として説明された形態からの多様な変化が考えられる。ゆえに、ここに記載された実施形態は、ここに記載された分野の特定の形態に限定して解するべきではなく、例えば製造から得られた結果としての形態における変化を含むものである。例えば、平らであるとして説明または記載された領域は、典型的に、粗いおよび/または非線形の特徴を有していてもよい。さらに、説明された鋭角は丸みを帯びていてもよい。ゆえに、図において説明された領域は、事実上の略図であり、これらの形はその領域の正確な形を説明することを意図するものではなく、本請求項の範囲を制限するものではない。
【0039】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0040】
一般的に、熱電材料の性能を測定する因子である無次元性能指数ZT値を増加させるためには、ゼーベック係数及び電気伝導度が高く、かつ熱伝導度の低い材料を探さねばならない。熱伝導度κは、次のように、電子による寄与分と量子化した格子振動であるフォノンによる寄与分とに分かれる。
【0041】
【数2】
【0042】
式中、κは、熱伝導度を表し、κelは、電子による熱伝導度を表し、κphは、フォノンによる熱伝導度を表し、Lは、ローレンツファクタを表し、σは、電気伝導度を表し、Tは、絶対温度を表し、κは、ボルツマン定数を表す。
【0043】
前記熱伝導度κの電子寄与分であるκelは、Wiedemann−Frantz法則によって電気伝導度(σ)に比例するため、電子による熱伝導度は、電気伝導度の従属変数である。したがって、熱伝導度を低めるためには、格子熱伝導度を低くせねばならない。また、ゼーベック係数の自乗と電気伝導度との積であるパワーファクターSσを大きくするためには、固体のフェルミ準位付近でエネルギーバンドの減少(degeneracy)が大きくて、電子の状態密度が鋭利な特異点を有さねばならない。
【0044】
このように、熱伝導度が低く、パワーファクターの大きい熱電材料の特性を達成するために、本発明の一実施形態による熱電材料は、in−plane方向には、共有結合による強い結合を形成し、b−軸(例えばout−of−plane)方向には、イオン結合またはファンデルワールス(van der Waals)結合による弱い結合を形成する2次元層状構造の下記の化学式1の化合物を含む:
[化学式1]
【0045】
【化3】
【0046】
式中、前記R及びR'は、それぞれ相異なり、希土類元素及び遷移金属からなる群から選択される一つ以上の元素であり、
前記T及びT'は、それぞれ相異なり、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記aは、0≦a≦1であり、
前記bは、0≦b≦1であり、
前記yは、0≦y<1である。
【0047】
前記一実施形態による熱電材料は、図3に示したように、成分TおよびT’を必須として構成された二重層がブロック層の間に配置され、それぞれのブロック層は成分RおよびR’並びに成分TおよびT’を必須として構成する2次元層状構造を有する。この理論に制限されないが、図3に示したように、前記二次元層構造を有することにより、2次元伝導特性を有することができる。また、in−plane方向に2次元または1次元の格子歪曲を有し、b−軸(例えば、面外)には、整列(例えば、歪みなく)された層状構造を有することができる。他の一実施形態によると、前記熱電材料は、成分TおよびT’を必須として構成された二重層がブロック層の間に配置され、それぞれのブロック層は成分RおよびR’並びに成分TおよびT’を必須として構成する2次元層状構造を有する。他の一実施形態によると、前記熱電材料は、成分TおよびT’を必須として構成された二重層がブロック層の間に配置され、それぞれのブロック層は成分RおよびR’並びに成分TおよびT’を必須として構成する2次元層状構造を有する。
【0048】
例えば、希土類元素R及びカルコゲン元素Tで構成されたトリカルコゲナイド化合物は、希土類元素の局所化したf−電子をフェルミエネルギー付近に調節して、フェルミエネルギー付近で高い状態密度を有することができる。また、前記トリカルコゲナイド化合物は、前記T成分で構成された層が二重層で構成され、その両側にR−Tブロック層が位置する構造を有することにより、前記二重層のうち一つであるT−単一層とR−Tブロック層との間の電子−正孔ゼーベック係数の相殺効果を防止して、ゼーベック係数を増加させることが可能になる。また、電子−格子間の強い相互作用によって電荷密度波が発生することによって、格子熱伝導度を低下させて性能指数を増加させる。また、前記熱電材料では、正孔密度が上昇して電気伝導度が増加すると同時に、電子−正孔相殺効果を防止してゼーベック係数も増加する。
【0049】
前述した化学式1の構造を有する熱電材料で、前記R及びR'は、それぞれ相異なり、希土類元素または遷移金属のうち選択された一つ以上の元素を含む。前記遷移金属元素周期表の3族から12族の金属でもよい。前記希土類元素としては、Y、Ce、Laが使用でき、前記遷移金属としては、Ni、Cu、Zn、Ag、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ag、Reのうち一つ以上が使用できる。他の一実施形態では、希土類元素はセシウム(Ce)でよく、遷移金属はNi、Cu、Zn、Ag、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Reのうちから選択してよい。
【0050】
他の一実施形態では、希土類元素はセシウム(Ce)でよく、遷移金属はNi、Cu、Zn、Ag、Reのうちから選択してよい。
【0051】
一実施形態によれば、前記R及びR'のうちいずれか一つ以上は、希土類元素を含むことができる。例えば、前記希土類元素は、Ceである。
【0052】
前記化学式1の化合物で、aは、R'のモル比を表し、約0以上約1以下の値を有することができ、具体的には0ないし約0.8、より具体的には0ないし約0.5、を使用することができる。他の一実施形態では、aは約0.1ないし約1、具体的には0.2ないし約0.8、より具体的には約0.3ないし約0.6でよい。
【0053】
前述した化学式1の構造を有する化合物で、前記T及びT'は、それぞれ相異なり、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inのうち一つ以上を含む元素を含む。 他の一実施形態では、前記T及びT'は、それぞれ S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、Inのうち一つ以上を含む元素を含む。
【0054】
一実施形態によれば、前記T及びT'のうちいずれか一つ以上は、カルコゲン元素を一つ以上含むことができる。例えば、前記カルコゲン元素は、S、Se、Teのうち一つ以上である。前記化学式1の化合物で、bは、T’のモル比を表し、約0以上約1以下の値を有し、具体的には0ないし約0.8、より具体的には0ないし約0.5を使用することができる。他の一実施形態では、bは約0.1ないし約1、具体的には0.2ないし約0.8、より具体的には約0.3ないし約0.6でよい。
【0055】
前記TとT’との成分和(すなわち、数式1において3±y)のモル比は、前記RとR’との成分和のモル比1モルに対して、約2.0モルより多く約4.0モル未満の範囲、約2.1モルないし約3.9モル、または、約2.5モルないし約3.5モルの範囲を使用でき、例えば、前記TとT’との成分和のモル比は、前記RとR’との成分和のモル比1モルに対して、約2.0モル超過約3.0モル以下の範囲で使用するか、または約2.5モルないし約3.0モルの範囲を使用することができる。または、約3.0モル以上約4.0モル未満の範囲で使用するか、約3.0モルないし約3.5モルの範囲で使用するか、または約3.0モルないし約3.2モルの範囲で使用することができる。
【0056】
一実施形態においては、前記化学式1の化合物で、yは、0以上約1以下の値を有し、具体的には約0.1ないし約0.9、より具体的には約0.2ないし約0.8、または約0.3ないし約0.7、または約0.4ないし約0.6できる。
【0057】
前記化学式1の化合物で、R’及びT’は、ドーピング元素であって、それぞれR及びTの種類、含量を調節して、電気伝導度及びゼーベック係数を高めることもできる。例えば、電子と正孔とが共存する2バンド伝導が発生する場合、Rの一部をR'に置き換えて、電子または正孔のうち一つのみ伝導特性を発生させることによって、熱電材料の電流密度が制御できる。このようなR’及びT’成分は、1成分系、2成分系あるいは3成分系の形態であり、前記2成分系の場合、モル比は、1:9ないし9:1の割合で添加され、具体的には約2:8ないし約8:2、より具体的には約3:7ないし約7:3である。したがって一実施形態においてR’はR’およびR’を含み、R’およびR’のモル比は、それぞれ約1:9ないし9:1であり、具体的にはそれぞれ約2:8から約8:2であり、より具体的には3:7ないし約7:3である。また、T’はT’およびT’を含み、T’およびT’のモル比は、それぞれ約1:9ないし9:1であり、具体的にはそれぞれ約2:8から約8:2であり、より具体的には3:7ないし7:3である。
【0058】
また、成分R’およびT’が3成分系の場合、それぞれ約1:0.1:9.0〜約9:0.1:1の割合で添加されるが、これらに特別に限定されるものではない。したがって、一実施形態においてR’はR’、R’およびR’を含み、R’、R’およびR’のモル比は、それぞれ約1:0.1:9.0ないし 約9:0.1:1であり、具体的にはそれぞれ約2:0.1:8.0から約8:0.1:2である。また、T’はT’、T’およびT’を含み、T’、T’およびT’のモル比は、それぞれ約1:0.1:9.0ないし9:0.1:1であり、具体的にはそれぞれ約2:0.1:8.0から約8:0.1:2である。例えば、CeTe系熱電材料に遷移金属が含有、ドーピングまたは挿入された場合、希土類元素の局所化したf−電子の原子エネルギーを調節することができて、f−電子エネルギーバンドをフェルミ面で調節する場合、高いゼーベック係数が具現できる。
【0059】
前述したような一実施形態による熱電材料は、低い熱伝導度を表すと同時に、電子の二次元的な伝導特性によって格子歪曲が発生する特徴を有している。また、正孔を運ぶT成分で構成された層が二重層を形成することによって、電気伝導度が大きく、かつゼーベック係数が大きい材料を具現可能になる。
【0060】
したがって、本発明の実施形態によれば、熱電性能指数ZTの高い熱電材料を具現することができ、特に、常温で熱電性能が高い。ここで、約600K以下、具体的には約550K以下、より具体的には400K以下で、熱電材料はZTの値が少なくとも約0.05であり、具体的には少なくとも約0.1であり、より具体的には少なくとも0.2である。例えば、前記熱電材料のZTの値は、常温または約200Kないし約400Kで、または約250Kないし約350Kにおいて、少なくとも約0.05であり、具体的には少なくとも約0.1であり、より具体的には少なくとも約0.2である。
【0061】
一実施形態による熱電材料は、下記の化学式2の化合物を含むことができる。
【0062】
[化学式2]
【0063】
【化4】
【0064】
式中、前記Rは、希土類元素であり、R'は、遷移金属であり、
前記Tは、S、Se及びTeから選択される一つ以上であり、T'は、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga及びInからなる群から選択される一つ以上であり、
前記a’は、0≦a’≦1であり、
前記b’は、0≦b’≦1であり、
前記y’は、0≦y’≦1である。
【0065】
一実施形態によれば、前記化学式2の化合物で、Rは、Ceであり、Tは、Teでありうる。
【0066】
一実施形態によれば、前記化学式2の化合物で、a’は、0≦a’≦0.5、具体的には0.1≦a’≦0.4、または0.2≦a’≦0.3である。
【0067】
一実施形態によれば、0≦b’≦0.5、具体的には0.1≦b’≦0.4、または0.2≦b’≦0.3である。
【0068】
一実施形態によれば、前記化学式2の化合物で、前記y’は、0≦y’≦0.8、0≦y’≦0.5、または0≦y’≦0.3である。
【0069】
一実施形態によれば、前記化学式1で表した化合物を含む熱電材料は、約3.5W/mK以下、例えば、約3W/mK以下、約2W/mK以下、または約1ないし約1.5W/mKの熱伝導度を有することができる。
【0070】
また、前記化学式1で表した化合物を含む熱電材料は、約5μV/K以上、例えば、約10μV/K以上、約30μV/K以上、約50μV/K以上のゼーベック係数を有し、一例では、約50ないし約100μV/Kのゼーベック係数を有することができる。
【0071】
また、前記化学式1で表した化合物を含む熱電材料は、約0.05以上の性能指数(ZT)有し、一例では、約0.1以上の性能指数を有することができる。
【0072】
前述した実施形態による熱電材料は、多結晶構造または、単結晶構造を有することができる。一実施形態において前記熱電材料は単結晶である。
【0073】
前記のような多結晶構造を有する熱電材料の合成方法としては、下記のような例があるが、これに限定されるものではない。
【0074】
(1)アンプル(Ampoule)を利用した方法:原料(例えば、元素)を石英管、または金属アンプルに入れて真空で密封して熱処理することを含む方法。
【0075】
(2)アーク溶融(Arc Melting)法:原料(例えば、元素)をチャンバに入れて非活性ガス雰囲気下でアークを放電させて、原料を溶解して試料を作ることを含む方法。
【0076】
(3)固相反応法(Solid State Reaction):粉末状の原料をよく混ぜて加工(例えば、圧縮)して堅固な生成物(例えば、ペレット)を得た後に、得られた堅固な生成物を熱処理するか、または混合粉末を熱処理した後に加工して焼結する工程を含む方法。
【0077】
しかし、多結晶構造を有する前記熱電材料は他の方法によって合成してもよい。
【0078】
前記のような単結晶構造を有する熱電材料の合成方法としては、下記のような例があるが、これに限定されるものではない。
【0079】
(1)金属フラックス法(Metal Flux):原料と、原料(例えば、元素)が高温で結晶によく成長できるように雰囲気を提供する元素(例えば、元素)とを坩堝に入れて高温で熱処理して、結晶を成長することを含む方法。
【0080】
(2)ブリッジマン法(Bridgeman):原料(例えば、元素)を坩堝に入れて坩堝の端側から原料が溶解されるまで高温に加熱した後、高温領域を徐々に移動させて試料を局部的に溶解させながら、試料全体を高温領域に通過させて結晶を成長させることを含む方法。
【0081】
(3)領域溶融法(Zone Melting):原料(例えば、元素)を棒状にシードロッドとフィードロッドとに作った後、局部的に高温にして試料を溶解させながら、溶解部分を上側に徐々に引き上げて結晶を成長させることを含む方法。
【0082】
(4)蒸気移動法(Vapor Transport):原料を石英管の下側に入れて原料部分を加熱し、石英管の上側は、低温にして、原料が気化しながら低度で固相反応を起こし、結晶を成長させることを含む方法。
【0083】
本発明は、前述した多様な方法のうちいずれも制限せずに使用して熱電材料を製造することができる。
【0084】
一方、前記多結晶化合物の場合、追加的に高密度化工程を行うことも可能である。このような高密度化工程によって、追加的な電気伝導度の改善が可能になる。
【0085】
前記高密度化工程としては、下記3つの工程を例として挙げられる:
(1)ホットプレス法:対象体である粉末化合物を所定形状のモールドに加え、高温、例えば、約300ないし約800℃、及び高圧、例えば、約30ないし約300Mpaで整形する方法;
(2)スパークプラズマ焼結法:対象体である粉末化合物に高圧条件で高電圧電流、例えば、約30Mpaないし約300Mpaの圧力条件で約50ないし約500Aを通電して短時間に材料を焼結する方法;
(3)ホットフォージング法:対象体である粉末に加圧整形する時、高温、例えば、約300ないし約700℃を加えて圧出焼結して加工する方法。
【0086】
前記高密度化工程によって、前記熱電材料は、理論密度の約70ないし約100%に達する密度を有する。前記理論密度は、分子量を原子体積で除算して計算され、格子定数として評価される。例えば、約95ないし約100%の密度を有し、それにより、さらに増加した電気伝導度を表す。
【0087】
本発明の他の一実施例によれば、熱電材料を切断加工の方法で整形して得られる熱電素子を提供する。前記熱電材料が単結晶構造を有する場合、前記熱電材料の切断方向は、成長方向に対して垂直方向であることを例として挙げられる。
【0088】
前記熱電素子は、p型熱電素子またはn型熱電素子である。このような熱電素子は、熱電材料を所定形状、例えば、直線状の形状、具体的には平行六面体に形成したことを意味する。
【0089】
一方、前記熱電素子は、電極と結合して、電流印加によって冷却効果を表し、素子または温度差によって、発電効果を表すことができる成分である。
【0090】
図4は、前記熱電素子を採用した熱電モジュールの一例を表す。図4に示されたように、上部絶縁基板11及び下部絶縁基板21には、上部電極12及び下部電極22がパターン化して形成されており、前記上部電極12及び下部電極22に、p型熱電成分15及びn型熱電成分16が相互接触している。これらの電極12,22は、リード電極24によって熱電素子の外部と連結される。
【0091】
前記絶縁基板11,21としては、ガリウム砒素(GaAs)、サファイア、シリコン、パイレックス、石英基板を利用することができる。前記電極12,22の材質は、アルミニウム、ニッケル、金、チタンなど、多様に選択され、そのサイズも、多様に選択される。これらの電極12,22がパターニングされる方法は、従来公知のパターニング方法を制限せずに使用でき、例えば、リフトオフ半導体工程、蒸着方法、フォトリソグラフィ法が使用できる。
【0092】
それ以外の熱電モジュールの例としては、図1及び図2に示されたように、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在し、前記化学式1による熱電材料を含む熱電モジュールを例として挙げられる。前記熱電モジュールは、前記図4に示したような前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一つが配される絶縁基板をさらに備える。このような絶縁基板としては、前述したような絶縁基板を使用することができる。
【0093】
熱電モジュールの一実施形態で、前記第1電極及び第2電極のうち一つは、図1及び図2に示したような熱供給源に露出される。熱電素子の一実施形態で、前記第1電極及び第2電極のうち一つは、図1に示したような電力供給源に電気的に連結されるか、または熱電モジュールの外部、例えば、電力を消費/保存する電気素子(例えば、電池)に電気的に連結されることができる。
【0094】
前記熱電モジュールの一実施形態として、前記第1電極及び第2電極のうち一つは、図1に示したような電力供給源に電気的に連結される。
【0095】
前記熱電モジュールの一実施形態で、図4に示したように、前記p型熱電素子及びn型熱電素子は、交互に配列され、前記p型熱電素子及びn型熱電素子のうち少なくとも一つは、前記化学式1の化合物を含有する熱電材料を含むことができる。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、熱供給源及び前記熱電モジュールを備える熱電装置を含み、前記熱電モジュールは、前記熱供給源から熱を吸収し、前記化学式1のトリカルコゲナイド化合物を含む熱電材料、第1電極及び第2電極を備え、前記第2電極は、前記第1電極に対向して配される。前記第1電極及び第2電極のうち一つは、前記熱電材料と接触することができる。
【0097】
前記熱電装置の一実施形態は、前記第1電極及び第2電極に電気的に連結された電力供給源をさらに備えることができる。前記熱電装置の一実施形態は、前記第1電極及び第2電極のうち一つに電気的に連結された電気素子をさらに備えることができる。
【0098】
前記熱電材料、熱電素子、熱電モジュール及び熱電装置は、例えば、熱電冷却システム、熱電発電システムでもあり、前記熱電冷却システムは、マイクロ冷却システム、汎用冷却機器、空調機、廃熱発電システムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記熱電冷却システムの構成及び製造方法については、当業界に公知されているところ、本明細書では、具体的な記載を省略する。
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1
Ce及びTeを1:3のモル比に定量した後、石英管からなるアンプルに入れて真空に密封し、850℃で24時間熱処理することによって、CeTe3.0を合成した。前記化合物の構成モル比は、誘導結合プラズマスペクトロスコピー(Inductively Coupled Plasma Spectroscopy)を通じて確認した。
【0101】
実施例2
前記実施例1で、Ce及びTeを1:3のモル比の代わりに1:2.7に定量したことを除いては、前記実施例1と同じ工程を実施してCeTe2.7を合成した。
【0102】
実施例3
前記実施例1で、Ce及びTeを1:3のモル比の代わりに1:2.9に定量したことを除いては、前記実施例1と同じ工程を実施してCeTe2.9を合成した。
【0103】
実施例4
前記実施例1で、Ce及びTeを1:3のモル比の代わりに1:3.1に定量したことを除いては、前記実施例1と同じ工程を実施してCeTe3.1を合成した。
【0104】
実施例5
前記実施例1で、Ce及びTeを1:3のモル比の代わりに1:3.2に定量したことを除いては、前記実施例1と同じ工程を実施してCeTe3.2を合成した。
【0105】
実験例1:熱伝導度の測定
前記実施例1ないし5から得られた熱電材料CeTe2.7、CeTe2.9、CeTe3.0、CeTe3.1及びCeTe3.2に関する熱伝導度を測定して、図5に示した。前記熱電材料は、常温で熱伝導度が約3W/mK以下、例えば、約1.3ないし約2.9W/mKであると確認した。この時、熱伝導度は、レーザフラッシュ(Laser Flash)法で熱的透過度(Thermal Diffusivity)を測定して計算した。
【0106】
前記CeTeの結晶構造的な特徴は、図3に示したように、白丸はTおよびT’原子を表しており、小さな点で覆われた丸はRおよびR’原子を表す。前記熱電材料において理論に制限されるものではないが、Ce−TeブロックがTe−二重層の間に位置し、(ac)方向には共有結合をしていて、結合力が堅固であり、(b)軸方向には、ファンデルワールス結合で弱く結合している。このような結晶結合力の異方性は、熱伝導度を低めるので、低い熱伝導度を有する。
【0107】
実験例2:ゼーベック係数の測定
前記実施例1ないし5から得られた熱電材料CeTe2.7、CeTe2.9、CeTe3.0、CeTe3.1及びCeTe3.2に関するゼーベック係数を測定して、図6に示した。前記ゼーベック係数は、4−terminal法を通じて測定した。
【0108】
前記熱電材料を構成する化合物CeTeの場合には、正孔が流れるカルコゲナイド層を増加させることによって正孔密度を増加させて、ゼーベック係数が増大する。前記実施例1ないし5から得られた熱電材料は、図6に示したように、常温で約5μV/K以上、一実施例では、約80μV/K以上を表すと確認された。
【0109】
実験例3:性能指数(ZT)の計算
前記実施例2から得られたCeTe2.7について、前記実験例1ないし3の結果に基づいてパワーファクター及び性能指数を計算して、それぞれ図7及び図8に示した。
【0110】
前記熱電材料の高い電気伝導度によって、図7に示したように、常温でパワーファクターは、2.25mW/(mK)と非常に高い値を有し、ZT値は、図8のように、常温で0.53に達する。
【0111】
温度の上昇につれて、ZTは、減少するが、常温(例えば、300K)で既に高いZT値を表し、これは、電流密度を制御するか、または単結晶にして、電荷密度波による格子歪曲の効果を利用すれば、熱伝導度がさらに低くなることによって、さらに高いZTの具現が可能であるということが分かる。
【0112】
ここに示した実施例によって示した実施形態は、単に説明的な意味であり、限定する目的ではないことを理解すべきである。それぞれの実施形態の特徴または側面の記載は他の実施形態の同様の特徴または側面にも利用できると考えるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8