特許第5679511号(P5679511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679511
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/06 20060101AFI20150212BHJP
   F27D 1/14 20060101ALI20150212BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20150212BHJP
   F27D 1/04 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   F27D1/06
   F27D1/14 A
   F27B17/00 C
   F27D1/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-280530(P2010-280530)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-127593(P2012-127593A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】510331881
【氏名又は名称】サン技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】下間 誠
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−004164(JP,B1)
【文献】 実開昭56−014999(JP,U)
【文献】 特公昭35−010853(JP,B1)
【文献】 特開平06−300463(JP,A)
【文献】 特開2002−221391(JP,A)
【文献】 特開平03−063319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00 − 1/18
F27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物を加熱室に収容して加熱する加熱炉において、
水平方向に延びるビームと、
このビームに適長間隔をおいて垂架され下端部に、互いに向き合って水平方向に延びるフランジを有する複数個の係止部材と、
断面がH形をなし、上下に幅広の両端部を有し、それらの間に、幅狭の中間部を有する耐火物からなる複数個のブロックと、
を有し、
最上段の前記ブロックは、その幅広の上端部が前記フランジ間の間隔よりも大きく、幅狭の中間部が前記フランジ間の間隔よりも小さく、前記上端部が隣接する前記係止部材間の前記フランジよりも上方に挿入されて前記フランジに支持され、
その下段のブロックは、その幅広の上端部が上段のブロックの前記下端部間の間隔よりも大きく、幅狭の中間部が上段のブロックの前記下端部間の間隔よりも小さく、その幅広の上端部が隣接する最上段のブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持され、順次下段のブロックの上端部がその上段の隣接するブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持されるように構築されており、前記複数個のブロックにより板状の壁を構成していることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
断面がT形をなしその端部が前記ブロックの前記下端部間の間隔よりも大きく幅広であり、下部が前記ブロックの前記下端部間の間隔よりも小さく幅狭である耐火物からなる複数個の第2のブロックを有し、
前記第2のブロックの前記端部が前記壁の隣接する最下段の前記ブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持されるように構築されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記加熱室は、1対の側壁と、前記側壁間の上部に前面を構成するように設けられた前面壁と、前記側壁間に後面を構成するように設けられた後面壁と、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有し、
前記ビームは、前記天井部に支持され、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁が前記複数個のブロックにより構成された板状の壁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱炉。
【請求項4】
前記加熱室は、1対の側壁と、前記側壁間に後面を構成するように設けられた後面壁と、前記側壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有し、
前記ビームは、前記天井部に支持され、前記側壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁が前記複数個のブロックにより構成された板状の壁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱炉。
【請求項5】
前記加熱室の前面に上下動可能に設けられ下端位置にて前記加熱室の前面を塞ぐ蓋部を有し、前記ブロックからなる壁が、前記蓋部を構成することを特徴とする請求項3又は4に記載の加熱炉。
【請求項6】
前記係止部材と前記最上段のブロックの上端部との隙間、及び前記複数個のブロック間の隙間に耐火剤が埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象物を収容する加熱室の内壁が複数個のブロックにより構成された加熱炉に関し、特に、下方からの支持力が極めて弱い前面壁等を複数個のブロックにより構築する場合に、構築が容易であり、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止できる加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、耐火性、耐熱性等が必要とされる構造物には、その建材として耐火レンガ等のブロックが使用されており、構造物の構築の際には、ブロック間に接着剤を介装させて、下方から順次積み上げていく構築方法が採用されている。ブロック同士の接合に使用される接着剤としては、例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)等を主成分とする耐火性及びシール性を兼ね備えた接着剤が使用されている。そして、各ブロック間の目地部には、例えばモルタル等の耐火剤が注入される。
【0003】
これらの接着剤及び耐火材は、熱収縮率が大きい場合があり、加熱により、各ブロック間の接着部又は目地部に亀裂又は隙間が発生する場合がある。そして、熱収縮に起因する接着部又は目地部の破損により、積み上げられたブロックの一部が脱落したり、構造物自体が崩れてしまう場合がある。そして、このブロックの脱落及び構造物の崩れは、各ブロックに対する下方からの支持力が弱い場合等に顕著に発生する。
【0004】
複数個のブロックにより構成された構造物において、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止する技術としては、例えば特許文献1乃至3に開示されたものがある。特許文献1には、複数個のレンガを積み上げてガラス窯の蓄熱室を構築していく際に、平板状のレンガを鉄骨枠に沿うように配置し、各レンガを2本以上のボルトで鉄骨枠に固定することにより、外壁の崩れを防止している。また、レンガ同士の位置合わせを容易にするために、レンガの側面に設けた凹凸を互いに噛み合わせる技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、所定の大きさのコンクリート板の上に平板状の耐火レンガを複数枚並置し、コンクリート板と耐火レンガとの間にコンクリートを打設することにより、コンクリート板と耐火レンガとを一体化し、この接合体を枠状に組み上げて煙突を構築する技術が開示されている。そして、各耐火レンガには、コンクリート板に接合される縁部に段差を設け、各耐火レンガの段差同士を係合させることにより、耐火レンガの目地部への接合剤の注入を不要にすると共に、レンガ同士の係合を強固にしている。
【0006】
特許文献3には、筒状のレンガの両端に凹凸を設け、複数個のレンガを相互に係合させることにより積み上げていき、流体流路を備えた蓄熱した蓄熱室を構築する技術が開示されている。
【0007】
一方、複数個のブロックにより構成された構造物としては、例えば図6に示すような加熱炉がある。図6は、従来の加熱炉を一例として示す図である。この加熱炉10は、1対の側壁11、後面壁12、天井部13及び前面壁14によって構成されており、側壁11と前面壁14との間には、加熱対象物を加熱室に導入するための開口が形成されている。側壁11及び後面壁12は、例えば耐火レンガ等の耐火性を有するブロック20を積み上げることにより構築されており、各ブロック間は、例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)等を主成分とする耐火性及びシール性を兼ね備えた接着剤により接着されている。そして、天井部13は、側壁11又は後面壁12により支持された状態で、耐火ブロック20を順次水平方向に接着していくことにより構築されているか、又は他の場所で複数個の耐火ブロック20が接着により一体化されたものが、例えばホイスト等により、側壁11及び後面壁12上に載置され、固定されることにより構築される。前面壁14は、天井部13(及び側壁11)により支持された状態で、ブロック20を順次下方に接着していくことにより構築されている。側壁11は、例えば開口部側が柱状となるようにブロック20が積み上げられている。そして、加熱炉10の下方には、例えば加熱対象物を載置する載置板16が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−129031号公報
【特許文献2】特開昭58−35319号公報
【特許文献3】特開平5−106979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術には、以下のような問題点がある。即ち、図6に示すような従来の加熱炉10においては、各ブロック20は、1個あたりの重量が例えば1乃至5kg程度であり、加熱炉の規模にもよるが、例えば内壁の1面が200個のブロック20により構成されている場合、その重量は、200乃至1000kgと極めて大きいものである。上記のように、加熱炉10の前面壁14は、構造上、下部に加熱対象物を導入する開口が形成されている必要があるため、その重量の支持は、主に天井部13を構成する部材によるものとなる。従って、前面壁14の構築の際には、下方に支持部材が存在しないことにより、各ブロック20を例えば手作業により1個ずつ接着していくことが必須となり、作業効率が極めて悪い。
【0010】
また、図6に示す前面壁14のように、下方からの支持力が極めて弱い場合、各ブロック20同士の接着部には、ブロック20の重量が負荷され、この負荷は、下方の接着部から上方の接着部へいくにしたがって、順次大きくなる。よって、前面壁14において、ブロック20の脱落を防止するためには、接着力が極めて大きい接着剤を使用する必要がある。
【0011】
上記特許文献1乃至3の技術は、下方が安定的に支持された構造物を構築する場合には、好適である。よって、例えば図6に示すような加熱炉10において、側壁11及び後面壁等の構築の際には、特許文献1乃至3の技術を使用することにより、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止できる。しかし、例えば図6に示す加熱炉10の前面壁14のように、各ブロックの重量がその上方の支持体により支持されている構成に特許文献1の技術を採用しようとした場合、ブロックを固定するための鉄骨枠を新たに設置する必要があり、加熱炉を構築する際の生産性が悪く、構造物のコストが増大する。
【0012】
また、特許文献2の技術は、下方から順次上方へと構造物を構築していく場合には好適であるが、下方が支持されていない状態で、上方から順次構造物を構築していく場合には、ブロック同士が係合できない構造である。これは、特許文献3に開示された筒状レンガについても同様である。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、加熱炉において、下方からの支持力が極めて弱い部分を複数個のブロックにより構築する場合に、構築が容易であり、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止できる加熱炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る加熱炉は、
加熱対象物を加熱室に収容して加熱する加熱炉において、
水平方向に延びるビームと、
このビームに適長間隔をおいて垂架され下端部に、互いに向き合って水平方向に延びるフランジを有する複数個の係止部材と、
断面がH形をなし、上下に幅広の両端部を有し、それらの間に、幅狭の中間部を有する耐火物からなる複数個のブロックと、
を有し、
最上段の前記ブロックは、その幅広の上端部が前記フランジ間の間隔よりも大きく、幅狭の中間部が前記フランジ間の間隔よりも小さく、前記上端部が隣接する前記係止部材間の前記フランジよりも上方に挿入されて前記フランジに支持され、
その下段のブロックは、その幅広の上端部が上段のブロックの前記下端部間の間隔よりも大きく、幅狭の中間部が上段のブロックの前記下端部間の間隔よりも小さく、その幅広の上端部が隣接する最上段のブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持され、順次下段のブロックの上端部がその上段の隣接するブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持されるように構築されており、前記複数個のブロックにより板状の壁を構成していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る加熱炉は、例えば、
断面がT形をなしその端部が前記ブロックの前記下端部間の間隔よりも大きく幅広であり、下部が前記ブロックの前記下端部間の間隔よりも小さく幅狭である耐火物からなる複数個の第2のブロックを有し、
前記第2のブロックの前記端部が前記壁の隣接する最下段の前記ブロックの前記中間部間に挿入されてその下端部に支持されるように構築されている。
【0016】
上述の加熱炉において、例えば前記加熱室は、1対の側壁と、前記側壁間の上部に前面を構成するように設けられた前面壁と、前記側壁間に後面を構成するように設けられた後面壁と、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有し、前記ビームは、前記天井部に支持され、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁が前記複数個のブロックにより構成された板状の壁である。又は、前記加熱室は、1対の側壁と、前記側壁間に後面を構成するように設けられた後面壁と、前記側壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有し、前記ビームは、前記天井部に支持され、前記側壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁が前記複数個のブロックにより構成された板状の壁である。
【0017】
本発明に係る加熱炉は、例えば前記加熱室の前面に上下動可能に設けられ下端位置にて前記加熱室の前面を塞ぐ蓋部を有し、前記ブロックからなる壁が、前記蓋部を構成する。
【0018】
上述の加熱炉において、例えば前記係止部材と前記最上段のブロックの上端部との隙間、及び前記複数個のブロック間の隙間に耐火剤が埋め込まれていることが好ましい。
【0019】
上記加熱炉の製造方法としては、加熱対象物を加熱室に収容して加熱する加熱炉の製造方法において、断面がT形又はH形をなして少なくともその一端部にフランジを有する複数個の係止部材をその他端部にて適長間隔をおいて長尺のビームに固定する工程と、断面がH形をなして幅広の両端部及び幅狭の中間部を有し耐火物からなる複数個のブロックの前記幅広の一端部を隣接する前記係止部材間に挿入し、この挿入した一端部を前記フランジに支持させて最上段のブロック群を構築する工程と、隣接する最上段のブロックの中間部間にその下段のブロックの前記幅広の一端部を挿入し、この挿入した一端部を最上段のブロックの幅広の他端部に支持させて2段目のブロック群を構築する工程と、順次隣接する上段のブロックの中間部間にその下段のブロックの前記幅広の一端部を挿入し、この挿入した一端部を上段のブロックの幅広の他端部に支持させていき、複数個のブロックにより板状の壁を構築していく工程と、を有するものがある。
【0020】
上記加熱炉の製造方法は、例えば前記板状の壁を構築していく工程の後に、断面がT形をなしてその一端部が他端部よりも幅広の複数個の第2のブロックの前記幅広の一端部を前記壁の隣接する最下段のブロックの中間部間に挿入し、この挿入した一端部を最下段のブロックの幅広の他端部に支持させる工程を有する。
【0021】
上記加熱炉の製造方法は、例えば1対の側壁と、前記側壁間の上部に前面を構成するように設けられた前面壁と、前記側壁間に後面を構成するように設けられた後面壁と、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有する加熱炉の製造方法であって、前記ビームを前記天井部に支持させて、前記側壁、前記前面壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁を前記複数個のブロックにより板状に構築する工程を有する。又は、加熱炉の製造方法は、1対の側壁と、後面壁と、前記側壁及び前記後面壁の上部に配置された天井部と、を有する加熱炉の製造方法であって、前記ビームを前記天井部に支持させて、前記側壁及び前記後面壁の少なくとも1つの壁を前記複数個のブロックにより板状に構築する工程を有する。
【0022】
そして、前記板状の壁を構築する工程の後に、前記係止部材と前記最上段のブロックの上端部との隙間、及び前記複数個のブロック間の隙間に耐火剤を埋め込む工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る加熱炉は、ビームには、下端部に水平方向に延びるフランジを有する複数個の係止部材が適長間隔をおいて垂架されており、この係止部材間にブロックの上端部が挿入されて、最上段のブロックの上端部はフランジに支持されており、最上段のブロックよりも下段のブロックは、順次、その上端部が上段のブロックの下端部に支持されており、複数個のブロックにより板状の壁が構成されている。このように、本発明の加熱炉は、ビーム及び各ブロック間が接着ではなく、その形状により上方から安定的に支持されており、下方からの支持力が極めて弱い部分においてもブロックの脱落及び構造物の崩れを防止できる。また、本発明に係る加熱炉は、係止部材にブロックを係止させた後、順次下方へとブロックを係止させていくだけで、耐久性が優れた前面壁を容易に構築することができる。
【0024】
よって、本発明の加熱炉の製造方法によれば、加熱炉の構築が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る加熱炉を示す図である。
図2】(a),(b)は、本発明の実施形態に係る加熱炉において、耐火ブロックを示す図である。
図3】(a),(b)は、本発明の実施形態に係る加熱炉の製造工程を示す図であり、図3(a)は前面壁の最上部のブロックをビームに係止させる工程を示す図、図3(b)は前面壁の最下部のブロック間の隙間を埋める工程を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る加熱炉において、複数個のブロックにより構成された蓋を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る加熱炉において、蓋を一例として示す図である。
図6】従来の加熱炉を一例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本実施形態に係る加熱炉の構成について説明する。図1は本発明の実施形態に係る加熱炉を示す図、図2(a)及び図2(b)は、本発明の実施形態に係る加熱炉において、耐火ブロックを示す図である。図1に示すように、本実施形態の加熱炉1は、1対の側壁11、後面壁12、天井部13、前面壁14及びビーム15によって構成されており、図6に示す従来の加熱炉10と同様に、側壁11と前面壁14との間には、加熱対象物を加熱室に導入するための開口が形成されている。側壁11及び後面壁12は、例えば耐火レンガ等の耐火物からなるブロック20を積み上げることにより構築されており、各ブロック間は、例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)等を主成分とする耐火性及びシール性を兼ね備えた接着剤により接着されている。そして、加熱炉1は、複数個の耐火ブロック20が水平方向に並ぶように相互に接着されたものであり、その縁部が側壁11及び後面壁12により下方から支持されている。本実施形態においては、天井部13は、側壁11の最も開口側(前面壁14側)の上部に、側壁11の上部間に水平方向に延びるように配置されたビーム15を有し、ビーム15は天井部13により支持されている。そして、前面壁14は、このビーム15により上方から支持されている。加熱炉10の下方には、例えば加熱対象物を載置する載置板16が設けられている。
【0027】
本発明は、ビームに係止部材が複数個垂架されており、隣接する係止部材間にブロックの幅広部を挿入し、係止部材のフランジにブロックの幅広部を支持させ、以降、上段のブロックの下端の幅広部に下段のブロックの上端の幅広部を支持させていくことを特徴とするものであり、これにより、複数個のブロックにより構成された板状の壁において、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止するものである。この複数個のブロックにより構成された板状の壁は、加熱炉のいずれの壁でもよい。即ち、図6に示すような加熱炉10においては、側壁11、後面壁12及び前面壁14の少なくとも1つの壁が本発明の構成を有していればよい。本実施形態においては、複数個のブロック2により板状の前面壁14を構成する場合について説明するが、側壁11又は後面壁12が上記のような構成を有する場合についても同様である。
【0028】
本実施形態においては、側壁11、後面壁12及び天井部13を構成するブロック20は、例えばJIS R2001に規定されている耐火レンガ又は耐火断熱レンガであり、例えばSiO及びZrO等の酸性酸化物又はMgO及びCaO等の塩基性酸化物を主体とする化学成分を有する。又は、ブロック20は、高アルミナレンガ、炭素質レンガ等の中性耐火物からなる耐火(断熱)レンガである。ブロック20は、例えばJIS R2101に規定されている形状及び寸法のものであり、例えば幅:114mm、厚さ:65mm、長さ:230mmの直方体形状のものである。
【0029】
側壁11は、上記のような寸法及び形状を有するブロック20を例えば長手積みにより積み上げたものであり、ブロック20の小口面同士が相互に向かい合うように積み上げられている。そして、例えば、積み上げられたブロック20の縦目地が揃わないように(芋目地にならないように)、目地の位置がブロック20の長さの半分ずつずれて配置されており、各段の端部及び出隅には、七五分(幅:100mm、厚さ60mm、長さ155mm)又はようかん角(幅:45mm、厚さ60mm、長さ210mm)等のブロックが配置されている。また、図1に示すように、側壁11の最も開口部側は、例えば複数個のブロック20が柱状をなすように積み上げられており、各ブロック20の小口面の向きが各段ごとに相互に90度異なるように積み上げられている。後面壁12は、側壁と同様に、例えば複数個のブロック20が例えば長手積みにより積み上げられたものであり、側壁11間に加熱室の後面を構成するように設けられている。
【0030】
天井部13は、例えば複数個のブロック20が前後方向又は(側壁11間を結ぶ)左右方向に長手方向を有するように小口面同士が相互に向かい合うように接着されて例えば全体が水平になるように構成されている。この天井部13は、例えば図6に示すような従来の加熱炉と同様に、側壁11及び後面壁12により支持された状態で、各ブロック20を順次水平方向に接着していくことにより構築されたものであるか、又は他の場所で複数個のブロック20が接着により一体化されたものが、例えばホイスト等により、側壁11及び後面壁12上に載置され、固定されることにより構築されたものである。
【0031】
本実施形態においては、天井部13には、その最も前面壁14側に、ビーム15が固定されている。図1に示すように、本実施形態においては、ビーム15は、例えば断面形状がH形に成形され1対のフランジ形状の部分が上下に並ぶように配置されている。そして、このビーム15には、その下側のフランジ15bに、後述するブロック2を係止するための複数個の係止部材151が適長間隔をおいて固定されている。そして、ビーム15は、その長手方向が例えば側壁11同士を結ぶ方向と平行になるように、天井部13の最も前面壁14側に固定されている。即ち、図3に示すように、ビーム15は、長片状の第1部分15aと、第1部分15aの長辺から夫々第1部分15aに対して垂直方向に延出した第2部分15b及び第3部分15cとにより構成されており、第2部分15b及び第3部分15cがビーム15のフランジを構成し、第1部分15aの上縁及び下縁から前後方向に水平に延びている。また、係止部材151は、断面形状がH形に成形された金属製部材であり、一方のフランジ151bがビーム15の第2部分15bに例えば溶接により固定されている。よって、係止部材151は、フランジ151b,151c同士を結ぶ部分151aが、ビーム15を基端として下方に延び、下方のフランジ151cが部分151aの先端からビーム15の長手方向(加熱炉の左右方向)に対して平行に延びており、これにより、相互に隣接する係止部151の下方のフランジ151c間には、部分151a間よりも幅が狭い溝が設けられている。
【0032】
図2(a)に示すように、前面壁14を構成するブロック2は、例えばJIS R2001に規定されている耐火レンガ又は耐火断熱レンガであり、例えばSiO及びZrO等の酸性酸化物又はMgO及びCaO等の塩基性酸化物を主体とする化学成分を有する。又は、ブロック2は、高アルミナレンガ、炭素質レンガ等の中性耐火物からなる耐火(断熱)レンガである。本実施形態においては、このブロック2は、例えば直方体レンガの両側面の中間部に、溝2bが設けられたものであり、溝2bを挟む両端部が幅広の突起2aとして構成されており、断面形状がH形をなすように成形されている。
【0033】
図1に示すように、本実施形態においては、上記のようなブロック2の突起2aを隣接する係止部材151間に挿入することにより、ブロック2の上端部の突起2aは、フランジ151cに係止され、複数個のブロック2により前面壁14の最上段のブロック群が構成されている。そして、この最上段のブロック群における隣接するブロック2の溝2b間に、下段のブロック2の上端部の突起2aが挿入されて、順次、上段のブロック2の下端部の突起2aにより、下段のブロック2の上端部の突起2aが支持されている。複数個のブロック2が相互に係合されることにより、前面壁14は、側壁間の上部に前面を構成するように設けられている。
【0034】
本実施形態においては、最下段のブロック2間には、図2(b)に示すような形状の第2のブロック21が挿入され、ブロック2間の隙間が埋められている。即ち、第2のブロック21は、断面H形のブロック2をその高さ方向に2分割した形状を有しており、断面形状がT形のものである。そして、第2のブロック21は、その突起21a部分が最下段のブロック群における隣接するブロック2の夫々溝2b間に挿入され、最下段のブロック2の下端部の突起2aにより、第2のブロック21の突起21aが支持されている。
【0035】
加熱炉1の各ブロック2,20,21間の目地部には、隙間が形成される場合があるが、この目地部には、耐火剤が埋め込まれて加熱炉内のシール性が確保されていることが好ましい。耐火剤としては、例えば従来から使用されているモルタル等の耐火剤を使用することができ、一般的な工法で目地部に注入するだけでよい。同様に、ビーム15の係止部材151間の溝とブロック2の突起2aとの隙間も、耐火剤により塞がれて加熱炉内のシール性が確保されていることが好ましい。
【0036】
以上のような構成の加熱炉1において、加熱対象物を内部に収容して加熱する際に、加熱室の前面を塞ぐ蓋としては、例えば図5に示す構成のものを使用することができる。即ち、図5に示すように、加熱炉の基台18には、1対の側壁11の外側に、夫々金属製の柱170aが立設されており、この柱170a間に加熱対象物を加熱室へと導入する開口が位置している。この柱170aは、水平方向に延びる2本の梁170bにより、その上部が連結されており、基台18及び梁170bと共に、蓋171を支持する枠体170が構成されている。枠体170の上方の梁170bには、2台のホイスト172が設けられており、少なくとも前記開口を塞ぐ大きさの蓋171がホイスト172により上下動可能に支持されており、枠体170、蓋171及びホイスト172により、加熱室の前面を塞ぐ蓋体17が構成されている。蓋171は、例えばタングステン等の高融点金属により成形されたものである。この蓋体17において、蓋171の大きさが加熱炉の前面よりも十分に大きい場合には、蓋171により十分に開口を塞ぐことができ、前面壁14を蓋により代用することもできる。しかし、加熱炉における耐火性は、金属よりも耐火レンガ等の方が優れていることに加えて、高融点金属の代わりに本発明のような複数個のブロックにより蓋171を構成すれば、その製造コスト面でも有利である。即ち、例えば、図4に示すように、蓋171の上部の高温に曝されない部分にビーム15及び係止部材151を設置し、これをホイスト172に上下動可能に連結する。そして、係止部材151の下方に複数個のブロック2,21により板状の壁を構築して蓋171を構築する。これにより、耐久性に優れた蓋171が低コストで得られる。
【0037】
なお、図示は省略しているが、加熱炉1は、内壁(側壁11、後面壁12、天井部13及び前面壁14)及び蓋体17以外に、加熱対象物を加熱する加熱装置を有する。加熱装置としては、例えば電熱線等の抵抗加熱により内部を加熱する方式の加熱装置又は炉の内部に高温のガスを通流させる方式の加熱装置を使用することができる。又は、加熱炉1は、内部に可燃性のガスを通流させ、このガスを燃焼させることにより加熱対象物を加熱する燃焼炉として構成することができる。
【0038】
本実施形態の加熱炉1は、ビーム15には、その下端部に、水平方向に延びるフランジ151cを有する複数個の係止部材151が適長間隔をおいて固定されており、この係止部材151間にブロック2の上端部の突起2aが挿入されて、最上段のブロック2の上端部の突起2aはフランジ151cに支持されており、最上段のブロック2よりも下段のブロック2は、順次、その上端部の突起2aが上段のブロック2の下端部の突起2aに支持されており、複数個のブロック2により板状の前面壁14が構成されている。このように、本実施形態においては、ビーム15及び前面壁14の各ブロック2は、接着ではなく、その形状により上方から安定的に支持されており、前面壁14等の下方からの支持力が極めて弱い部分において、接着剤の強度等に左右されず、各ブロック2,21が安定的に支持され、ブロックの脱落を防止できる。
【0039】
なお、本実施形態における側壁11、後面壁12及び天井部13の構成は一例であり、ビームにフランジを有する複数個の係止部材が垂架され、隣接する係止部材151間に断面H形のブロック2の幅広の上端部が挿入されてフランジに支持され、順次、下段のブロックの上端部が、上段の隣接するブロックの中間部間に挿入されてその下端部が上段のブロックの下端部により支持されている限り、本発明は上記態様に限定されるものではない。例えば、側壁11及び天井部13を一体的にアーチ型に形成した場合等においても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ビーム15の支持については、例えば側壁11により支持されてもよく、ビーム15を支持する枠体等の構成を設けてもよい。ビーム15を支持する枠体としては、例えば図5に示すような蓋用の枠体170を兼用することもできる。更に、天井部13の各ブロック20については、上記のような構成のビーム15とは別に、側壁11の上部に複数本のビームを設け、このビームに夫々天井部13のブロック20を接着により固定すれば、各ブロック20がその上方のビームにより安定的に支持され、天井部13の耐久性が向上する。
【0040】
なお、側壁11の上部に複数本のビームを設ける場合においては、各ビームは、例えば前面壁14を支持するビーム15と同様の構成のものを使用することができる。この場合には、天井部13を構成するブロックも前面壁14と同様のブロック2を使用する。そして、前面壁14の最上段のブロックのように、ビーム15に垂架された係止部材151間に順次ブロック2の幅広の上端部を挿入していき、各ビームの長手方向に並ぶように配置された複数個のブロック2の下面により、天井部13の内面を構成することができる。なお、この場合には、ブロック2間の溝には、耐火剤を埋め込むか、又は、図2(b)に示すような断面形状がT形の第2のブロック21を係止させることにより、耐火性を十分に確保することができる。
【0041】
次に、本実施形態の加熱炉の製造方法について説明する。本実施形態の加熱炉1を製造する際には、先ず、直方体形状のブロック20を例えば長手積みにより積み上げていくことにより、加熱炉1の側壁11及び後面壁12を構築する。即ち、ブロック20の小口面同士が相互に向かい合うように複数個のブロック20を並べていくことにより、最下段のブロック20を配置する。このとき、ブロック20の小口面間には、例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)等を主成分とする耐火性及びシール性を兼ね備えたペースト状の接着剤を塗布する。次に、最下段のブロック20の上に、上記接着剤を塗布しながら、縦目地が揃わないように2段目のブロック20を配置していく。2段目のブロック20は、例えば最下段のブロック群に対して縦目地の位置が揃わないように(芋目地にならないように)、最下段のブロック20に対して、2段目のブロック20の位置を例えばその長さの半分ずつずらして、ブロック20間に接着剤を塗布しながら2段目のブロック20を接着していく。これにより、1段目のブロック群上の端部には、ブロック20の長さに満たない隙間が形成される。この隙間には、七五分(幅:100mm、厚さ60mm、長さ155mm)又はようかん角(幅:45mm、厚さ60mm、長さ210mm)等のブロックを配置し、1段目のブロック20に接着する。このように、芋目地を避ける積み方でブロック20を積み上げていくことにより、形成される内壁の化粧面の美観を向上させ、内壁が縦目地に沿って崩れることも防止できる。
【0042】
2段目のブロック20を並べ終えたら、2段目のブロック20の上に、接着剤を塗布しながら、2段目のブロック群に対して縦目地が揃わないように、3段目のブロック20を並べていく。このとき、例えば3段目のブロック群の配置を、最下段のブロック群と同様の配置にする。そして、以降、順次、4段目以降のブロック20を配置していく。これにより、側壁11及び後面壁12が構築される。
【0043】
次に、上記と同様の形状のブロック20により、天井部13を構築する。このとき、各ブロック20が側壁11又は後面壁12に支持されるように、側壁11及び後面壁12を始端として、ブロック20を1個ずつ接着していく。ブロック20の配置は、任意の配置でよいが、隣接する目地同士が揃わないように接着していくことにより、ブロック相互間の接着強度が向上する。これにより、側壁11及び後面壁12の上方は、前面壁14が構築される領域を除いて、複数個のブロック20により覆われて、天井部13が構築される。
【0044】
次に、天井部13の最も前面壁14側(最前部)にビーム15を固定する。ビーム15は、その長手方向が側壁11同士を結ぶ方向と平行になるように配置する。ビーム15は、断面形状がH形に成形され、長片状の第1部分15aの長辺からは夫々第2部分15b及び第3部分15cが延出し、フランジ形状をなしている。そして、第2部分15bには、ブロック2を係止するための係止部材151が溶接されている。よって、第2部分150bを下にして、第2部分15bと第3部分15cとが相互に上下方向に並ぶように、ビーム15を配置する。このとき、ビーム15は、後述するブロック2を係止した状態で、金属製のビーム15及び係止部材151の位置が加熱炉による加熱領域に入らないように配置することが好ましい。なお、ビーム15の設置の際には、例えばビーム15を支持するための枠体を設置し、金属製のビーム15を枠体に溶接等により固定してもよい。
【0045】
ビーム15を配置したら、ビーム15の下方に固定された係止部材151間にブロック2を係止させていく。図3(a)は、前面壁14の最上段のブロック2をビーム15に係止させる工程を示す図である。本実施形態においては、係止部材151は、断面形状がH形に成形された金属製部材であり、フランジ151b,151c同士を結ぶ部分151aが、ビーム15を基端として下方に延びている。そして、上記のようなビーム15の配置により、係止部材151の下方のフランジ151cは部分151aの先端からビーム15の長手方向(加熱炉の左右方向)に対して平行に延びており、相互に隣接する係止部151の下方のフランジ151c間には、部分151a間よりも幅が狭い溝が設けられている。本実施形態においては、図3(a)に示すように、この係止部材151間に、断面形状がH形に成形されたブロック2の一端部に形成された幅広の突起2aを挿入する。隣接する係止部材151におけるフランジ151c間の溝の幅は、ブロック2の溝部2bにおける厚さよりも若干大きく、突起2aの幅よりも小さくなるように設けられている。また、ビーム本体150を基端として下方に延びる部分151aは、隣接する部分151a間の幅が突起2aの幅よりも大きくなるように設けられている。よって、ブロック2の突起2aを係止部材151間に挿入すると、ブロック2は、突起2a部分が係止部材151のフランジ151cにより係止され、下方から安定的に支持される。同様に、ブロック2の突起2aを順次隣接する係止部材151の溝間に挿入していくことにより、前面壁14となる最上段のブロック群が構築される。
【0046】
本実施形態のブロック2は、その両側面に形成された溝2bの幅が、2個の突起2aを収容できる幅で設けられている。そして、前面壁14となる最上段のブロック群を構築した状態で、ブロック2の溝2bの底面同士が突起2aの幅よりも若干大きく離隔するように配置される。本実施形態においては、隣接するブロック2の中間部の溝2b間に他のブロック2の突起2aを挿入していく。これにより、上段のブロック2の下端部の突起2aにより、下段のブロック2の上端部の突起2aが支持されるように、2段目のブロック群が構築される。
【0047】
以降、同様に、上段のブロック群の隣接するブロック2の中間部の溝2b間に、次の段のブロック2の上端部の突起2aを挿入していき、順次、所定の段数となるまでブロック群を構築していく。すると、図3(b)に示すように、最下段のブロック2間には、隙間が残される。本実施形態においては、この隙間に図2(b)に示すような形状の第2のブロック21を挿入することによって、隙間を埋める。この第2のブロック21についても、最下段のブロック2の下端部の突起2aにより安定的に支持される。
【0048】
以上のようにして、前面壁14が構築されたら、必要に応じて、ビーム15の係止部材151間の溝とブロック2の突起2aとの隙間、及び各ブロック2,20,21間の目地部に、例えばモルタル等の耐火剤を埋め込み、隙間を塞ぐ。これにより、加熱炉1のシール性が向上する。
【0049】
このように、本実施形態の加熱炉1は、前面壁14の構築の際に、ビーム5の係止部材151間にブロック2を挿入して係止させた後、順次下段へとブロックを係止させていくだけで、耐久性が優れた前面壁を容易に構築することができる。
【0050】
次に、本実施形態の加熱炉の動作について説明する。加熱炉を使用する際には、先ず、図5に示すような蓋体17において、ホイスト172を駆動させて蓋171に接続された鎖体を巻き取り、蓋171を上昇させる。これにより、加熱炉1の側壁11及び前面壁14(及び基台18)間に形成された開口を塞ぐ蓋171が枠体170に吊架されて、加熱対象物を加熱室に導入するための開口が加熱炉の前面にあらわれる。
【0051】
この状態で、開口から加熱対象物を導入し、例えば載置板16上に載置する。そして、加熱対象物の導入が終了したら、ホイスト172を駆動させて、蓋体171に接続された鎖体を巻き解き、蓋171を下降させていく。そして、蓋171が基台18に接触するまで下降すると、側壁11及び前面壁14(及び基台18)間に形成された開口が、蓋171により塞がれて、内部が熱的にシールされる。
【0052】
この状態で、加熱炉1の内部を加熱させ、所定の用途で加熱対象物を加熱する。例えば粉砕して粉末状にした長石、珪石及び粘土等の原料に水を加えて泥状にした後、所定の形状に成形したものを、乾燥させたものを加熱対象物として加熱室に導入すれば、加熱炉1内で加熱して焼成することにより、磁器を製造することができる。この磁器としては、例えば碍子等が挙げられる。
【0053】
本実施形態の加熱炉1は、その内壁(側壁11、後面壁12、天井部13及び前面壁14)が耐火物により構成されているため、十分な耐火性を有している。そして、複数個の耐火性ブロック2により構成された前面壁14は、ビーム15により、上方から安定的に支持されており、各ブロック2についても、接着による支持ではなく、その形状により上段のブロック2により、下段のブロック2が安定的に支持されており、例えばブロック2間に接着剤を塗布しなくとも、前面壁14のブロック2が脱落したり、前面壁14が崩れることはない。しかし、接着剤を塗布することで、前面壁14の強度が向上する。また、前面壁14のブロック2間に例えば熱収縮率が大きい接着剤を塗布した場合においては、加熱により、熱収縮することがあるが、ブロック2の相互間は、その重量により上下方向で安定的に係合しているため、前面壁14の崩れ及び各ブロック2の脱落を防止できる。
【0054】
加熱対象物の加熱が終了したら、例えば内部温度を所定の温度まで冷却する。そして、再度ホイスト172を駆動させて、蓋171を上昇させる。その後、導入口から、加熱加工後の製品を取り出す。
【0055】
以上のように、本発明によれば、加熱炉の前面壁のような下方からの支持力が極めて弱い部分を複数個のブロックにより構築する場合においても、その構築が容易であり、また、できあがった構造物において、ブロックの脱落及び構造物の崩れを防止しながら、安定的に加熱対象物を加熱できる。よって、例えばこの技術を加熱炉以外の構造物に使用した場合においても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
1、10:加熱炉、11:側壁、12:後面壁、13:天井部、14:前面壁、15:ビーム、15a:第1部分、15b:第2部分、15c:第3部分、151:係止部材、151a:部分、151b、151c:フランジ、16:載置板、17:蓋体、170:枠体、170a:柱、170b:梁、171:蓋、172:ホイスト、18:基台、2、20、21:(耐火)ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6