【文献】
ワークフォースマネジメント WFM,Computer TELEPHON,日本,株式会社リックテレコム,2013年 7月20日,第16巻,第8号,p.81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、WFMでは、予測された受電数に対してアーランCによる必要人数を算出する方式が採用されているため、受電する確率に対して、待ち行列の確率で算出することになり、配置される人員の実際の受電する生産効率を配慮しているわけではなく、結果として、不確実性を二重に計上することになっていた。
【0005】
また、WFMを使うと余剰人員の配置と予測される受電件数に対して、適正配置ができると従来言われていたが、実際のコンタクトセンターで、
図17に示す様な人員配置をしている実績は実質上存在しない。
図17は、従来のWFMによる人員配置計画の一例を示すものである。
図17(A)は、人員配置計画をしない場合の人員配置の一例を示している。横軸は時間帯で縦軸は人数を示している。つまり、人員配置計画をしない場合には、全時間帯とも一律で同一人数とされている。ここで、領域102は、アーランCにより求められた、受電量に対応する必要人数を示している。つまり、領域101における人数配置が、無駄な人数配置となる。
図17(B)は、従来のWFMによる人員配置計画に従った場合の人員配置の一例を示している。横軸は時間帯で縦軸は人数を示している。領域103は、領域102と同一領域、即ち、アーランCにより求められた、受電量に対応する必要人数を示している。ただし、領域102では時間帯によっては、人数が少数点を含むようになってしまうため、実際には、領域104に示すような整数値単位での人数配置となる。
【0006】
WFMを用いることで、
図17に示すような人員配置をすることは可能である。しかしながら、実際には、コンタクトセンターは、人員採用の段階からシフト組みを工夫して、受電量に対応できるような人員配置をしており、WFMを用いていなかった。つまり、WFMは、結局のところ、繰り返し等のルールに基づいてシフトスケジュールを作成する機能しか用いられておらず、対費用効果(Return on Investment:ROI)が望めない状況であった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するために、ROIが望める人員配置計画を容易かつ適切に行えるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人員配置計画装置では、サービス目標が、生産効率、成果効率、品質効率その他対費用効果の要素として定義される。
ここで、対費用効果の要素の演算手法は、特に限定されないが、例えば、生産効率、成果効率、及び品質効率について例示として挙げると、次のようになる。
生産効率の演算のため、配置する人員の生産性が、PBX、CTI等の交換機から、一定時間の受電件数により取得される。
成果効率の演算のため、販売管理システムから取得される、一定時間の成約件数等の情報に基づいて成果が得られる。
品質効率の演算のため、コンタクト情況のモニタリング結果、顧客への追跡調査による評価に基づいて評価が得られる。
このように、本発明の人員配置計画装置は、人員の個々の生産性、成果性、品質性のパフォーマンスを考慮して、人員配置計画の際に、求められる時間帯に人員を的確に配置することにより、ROIを追求することができる装置である。換言すると、本発明の人員配置計画装置は、PPM(Performance Portfolio Management)による人員配置計画ができる装置である。
【0009】
本発明の一側面の人員配置計画装置は、
コンタクトセンターにおける人員の配置を計画する人員配置計画装置であって、
前記コンタクトセンターにおける複数の人員毎に、対費用効果の要素を演算する効率演算部と、
前記効率演算部の演算結果に基づいて対費用効果の指標を演算し、当該対費用効果の指標に基づいて、前記複数の人員の夫々の配置を計画する人員配置部と、
を備える。
【0010】
前記効率演算部は、前記対費用効果の要素として、生産効率と、成果効率と、品質効率とのうち少なくとも1つを演算する、
ことができる。
【0011】
前記対費用効果の指標を演算する時間帯を1以上指定する時間帯指定部をさらに備え、
前記割振部は、前記時間帯指定部により制定された1以上の前記時間帯毎に、前記割振り度合を夫々決定し、
前記人員配置部は、前記時間帯指定部により制定された1以上の前記時間帯毎に、前記割振部により夫々決定された前記割振り度合に基づいて、前記対費用効果の指標を夫々演算する、
ことができる。
【0012】
労働者に関する規定を準拠するための条件を演算する規定準拠演算部をさらに備え、
前記人員配置部は、前記規定準拠演算部の演算結果に基づいて規定準拠の指標を演算し、前記対費用効果の指標に加えて、当該規定準拠の指標に基づいて、前記複数の人員の夫々の配置を計画する、
ことができる。
【0013】
労働者の公平化のための条件を演算する公平化演算部をさらに備え、
前記人員配置部は、前記公平化演算部の演算結果に基づいて公平化の指標を演算し、前記対費用効果の指標及び前記規定準拠の指標に基づいて、当該公平化の指標に基づいて、前記複数の人員の夫々の配置を計画する、
ことができる。
【0014】
本発明の一側面の人員配置計画方法及びプログラムは、上述の本発明の一側面の人員配置計画装置に対応する方法及びプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ROIが望める人員配置計画を容易かつ適切に行うことができ、配置される人員の実績にもとづく配置計画であるため、確実性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について実施例に基づいて図を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の好適な実施形態の一例に係る人員配置計画装置の機能ブロックの概略を示す図である。
人員配置計画装置は、人員配置部1と、各効率演算部2と、公平化演算部3と、法準拠演算部4と、ROI割振部5と、時間帯指定部6とを含むように構成されている。
ここで、含むようにとしたのは、当然ながら、他機能を有する機能ブロックも存在し得るからである。
即ち、人員配置部1乃至時間帯指定部6は、情報の演算や処理を実行する情報演算処理部(CPU:Central Processing Unit)により構成される。換言すると、情報演算処理部は、人員配置計画装置の全体の制御を行うものであり、その一部の機能を発揮するために人員配置部1乃至時間帯指定部6を有している。
情報演算処理部は、図示せぬ記憶部に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、上述のハードウエアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。即ち、人員配置部1乃至時間帯指定部6は、本実施形態では、CPU等のハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現される。
【0019】
図示せぬ記憶部は、情報演算処理部と組み合わせてプログラムの実行に使用するローカルメモリ、大容量のバルクメモリ、及び当該バルクメモリの検索を効率的に行うために使用するキャッシュメモリを含んでよい。そして、記憶部が実行する各種プログラム等を記憶する。記憶部を実現するコンピュータ可読媒体(記憶媒体)としては、電気的、磁気的、光学的、電磁的に実現するものを含んでよい。より具体的には、半導体記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リードオンリー・メモリ(ROM)、CD−ROMとCD−R/WとDVDとを含む光ディスクが含まれる。
【0020】
また、人員配置計画装置には、図示はしないが、入力部と出力部が含まれる。
入力部は、管理者等による入力の受付を行うためのものであり、キーボード、ポインティングデバイス等を含んでよい。
出力部は、管理者等にデータの入力を受付用の画面を表示したり、情報演算処理部による演算処理結果の画面を表示したりするものであり、ブラウン管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイ装置を含む。
【0021】
このような
図1の機能的構成を有する人員配置計画装置は、PPMによる人員配置計画ができる装置、即ち、コンタクトセンターをROI重視へ革新させる新エンジン(人員配置部1乃至時間帯指定部6)を搭載する装置である。
【0022】
ここで、PPMとは、従来のWFMと比較して次の点で異なる。
即ち、従来のWFMの処理の流れは、次の(1)乃至(3)であった。
(1)受電量の予測
(2)受電業務を行うために応答率等の求められるサービスレベルに必要な人数を算出
(3)必要な人数のスケジュールを作成
これに対して、PPMの処理の流れは、次の(1),(2)のようになる。
(1)過去の受電数から、求められるスキル、生産性、販売能力等を個別に予測
(2)スキル、生産性、販売能力を持つ特定の個人単位で、求められた成果を最大限に発揮できるように人員配置のスケジュールを作成。
つまり、受電量を観点とした時間帯における人員数のスケジュールはなく、ROI(対費用効果)を観点とした時間帯(時刻、曜日、日付等)において、最も効果がでる人員配置のスケジュールを行うものが、PPMである。
【0023】
ここで、PPMでは、ROIの要素として、大別して次の(A)乃至(C)が存在する。
(A)生産効率
(B)成果効率
(C)品質効率
【0024】
先ず、(A)生産効率について説明する。
ここで、(A)生産効率は、さらに、次の(A−1)と(A−2)とに分類することもできる。
(A−1)受電量に基づく生産効率
(A−2)問い合わせ内容毎の処理件数に基づく生産効率
【0025】
(A−1)受電量に基づく生産効率は、人員毎に、受電量/コストを夫々演算することで求められる。
各人員毎に算出された(A−1)を参照することで、例えば、生産効率が高い人員を受電ピーク時間帯に優先的に配置することができる。この場合、各人員個々の単価はさほど変わらないので、コストを上げずに処理件数が増大するため、コストパフォーマンスの最大化を図ることができる。
具体的には、生産効率が平均的な人員に対して、1.6倍の生産効率を有する人員が、受電ピーク時間帯に配置されれば、コストは62.5%まで理論上低減することが可能になる。
【0026】
(A−2)問い合わせ内容毎の処理件数に基づく生産効率は、人員毎かつ問い合わせ内容毎に、処理件数/コストを夫々演算することで求められる。
例えば、過去の統計データの問い合わせ内容が既に分析されているものとする。この場合、個々の時間帯(時刻、曜日、日付等)において最も多い問い合わせ内容を特定し、(A−2)を参照することで、特定した問い合わせ内容について、生産効率が高い人員(特定した問い合わせ内容に対する処理を得意とする人員)を優先的に応答率を達成できるまで、配置することで実現できる。
【0027】
(B)成果効率は、人員毎に、売上実績又は受託件数/コストを夫々演算することで求められる。
例えば、過去の統計データの問い合わせ内容が既に分析されているものとする。この場合、成約件数が最も伸びる時間帯(時刻、曜日、日付等)を特定し、(B)を参照することで、特定した時間帯に、成果効率が高い人員を優先的に配置することができる。
ここで、(B)成果効率については、さらに、次の(B−1)乃至(B−4)に分類することもできる。
(B−1)成約率、
(B−2)アップセル率
(B−3)クロスセル率
(B−4)会員入会のお勧め率
【0028】
(C)品質効率は、人員毎に、応対が丁寧であったり、臨機応変に対応できるヒューマンスキルの指標として演算される。当該演算手法は、特に限定されず、例えば管理者等の評価に基づいて演算する手法を採用することができる。
個々の受電内容や、求める効果(上述の(A)や(B))に対しても対応できる人員の数に限りがあるため、対応できないときは、応対が丁寧であったり、臨機応変に対応できるヒューマンスキルを持つ人員を配置するために、(C)を活用することができる。
【0029】
ここで、上述のROIの3つの要素(A)乃至(C)のうち、任意の1つを採用したPPMによる人員配置計画をしたとしても、コスト削減の効果を奏することはできる。
図2は、(A−1)受電量に基づく生産効率に基づくPPMによる人員配置計画に従った場合の人員配置の一例を示している。横軸は時間帯で縦軸は人数を示している。
領域21は、
図17の領域102と同一領域、即ち、従来のWFMにより求められた、受電量に対応する必要人数を示している。
図2の例では、(A−1)受電量に基づく生産効率の最適化を行うべく、サービス目標の1つである応答率を達成できるまで、当該(A−1)の生産効率の高い人員の順に、勤務時間の長いシフト(
図2の下方にいけばいくほど長いシフト)に順次割り当てられる。このようにして得られた人員配置が、領域22として示されている。
つまり、従来のWFMによる人員配置は、
図17(B)の領域104であるのに対して、本発明が適用された(A−1)に基づくPPMによる人員配置は、
図2の領域22である。コストの概算は人数×勤務時間であるので、人員配置の面積が大きくなるほどコストが高くなっていくことになる。
図17(B)の領域104の方が、
図2の領域22よりも面積が大きいので、コストが高くなることがわかる。また、生産性が高く、コスト(時給)の単価の低い人員順に人員配置するとさらにコストパフォーマンスが改善される。換言すると、本発明が適用された(A−1)に基づくPPMによる人員配置計画をすることで、従来のWFMによるものと比較して、大幅なコストを削減することができる。
【0030】
ここで、単純に(A)生産効率の最適化を行うことでも、従来のWFMよりも効果がでるため、それだけでよければ、(A)生産効率の高い人員の順に、勤務時間の長いシフト、時給単価の低い順に順次割り当ていけばよい。
しかしながら、
図3に示すように、(A)生産効率はROIの一要素に過ぎない。
即ち
図3は、ROIの概念を示す図である。
図3に示すように、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率の夫々を軸とした3次元空間上における点(ベクトル)として、ROIは定義される。
従って、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率をバランスよく配置して、総合的な観点で最適化がなされるように人員配置計画をした方が、ROIがより顕著なものとなる。例えば
図3の例では、3次元内の1点を示す各軸の座標の夫々が、配置された(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率を示すことになるので、点線で示される球の範囲内の所望の点を特定することにより、所望のROIが容易に得られることになる。
【0031】
図4は、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率に基づくPPMによる人員配置計画に従った場合の人員配置の一例を示している。横軸は時間帯で縦軸は人数を示している。
領域21は、
図2と同一領域、即ち、従来のWFMにより求められた、受電量に対応する必要人数を示している。領域22は、
図2と同一領域、即ち(A)生産効率のみに基づくPPMによる人員配置を示している。
領域23は、過去の基幹システムから求めた時間帯別の結果の件数であって、例えば自動車保険の事故受付の電話のうち、レッカーの依頼が必要であった電話の受電件数を示している。ただし、領域23では時間帯によっては、人数が少数点を含むようになってしまうため、実際には、領域24に示すような整数値単位での人数配置となる。
これにより、例えばレッカーの依頼が必要となる時間帯には、レッカー対応の得意なスキル(例えば(B)や(C)等で判断)を有し、処理能力(例えばレッカー依頼の問い合わせに関する(A−2)等で判断)が高い人員を領域24に従って配置することができる。一方、電話の受電ピークの時間帯には、受電能力での処理能力(例えば(A−1)等で判断)が高い人員を領域22に従って配置することができる。
【0032】
ただし、公平化という観点や、(日本国の)労働基準法や36協定等による労働者の保護が求められる。即ち、ROI(対費用効果)のみを求める人員配置計画はできない。
図5は、本発明が適用されるPPMによる人員配置計画の概念を示している。
図5に示すように、ROIの最大化の観点で求められたベクトルVaと、労働者の保護の観点で求められたベクトルVb及びVcとの合成ベクトルという観点で、人員配置計画がなされる。
ここで、ベクトルVbは、労働者保護のうち、労働基準法や36協定等の労働者の保護に関する規定を準拠するための観点で求められるベクトルである。ベクトルVcは、労働者の保護に関する公平化の各条件についての重み(どの程度ルールに準拠するのか)の観点で求められるベクトルである。
【0033】
具体的には、
図1の各効率演算部2が、各人員毎に、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率を演算する。
【0034】
公平化演算部3が、労働者の保護に関する公平化の各条件についての重み(どの程度ルールに準拠するのか)演算する。
法準拠演算部4が、労働基準法や36協定等の労働者の保護に関する規定を準拠するための条件を演算する。
ROI割振部5は、各効率演算部2によって演算されたROIの各要素毎に、優先度と配分を割り振る。
時間帯指定部6については、後述する。
人員配置部1は、各効率演算部2及びROI割振部5の演算結果に基づいて、ROIの指標(
図5のベクトルVa)を求めると共に、公平化演算部3及び法準拠演算部4の演算結果に基づいて、労働者の保護の指標(
図5のベクトルVb,Vc)を求める。そして、人員配置部1は、ROIの指標(
図5のベクトルVa)と労働者の保護の指標(
図5のベクトルVb,Vc)とに基づいて、人員配置計画を作成する。
【0035】
さらに、以下、人員配置計画の詳細について説明する。
ここで、ROIの指標となるベクトルVaを、以下、「遡及ベクトルVa」と呼ぶ。
ROIの遡及ベクトルVaとは、法令順守や公平化を無視した場合における、管理者(人員配置計画者)にとって理想的な人員を示す指標となるベクトル(理想指標ベクトル)をいう。
【0036】
図6は、ROIの遡及ベクトルVaの生成手法を説明する図である。
図7は、生成されたROIの遡及ベクトルVaを示す図である。
【0037】
図6や
図7に示すように、遡及ベクトルVaは、生産効率として要求されるベクトルVa1(以下、「生産効率要求ベクトルVa1」と呼ぶ)と、成果効率として要求されるベクトルVa2(以下、「成果効率要求ベクトルVa2」と呼ぶ)と、品質効率として要求されるベクトルVa3(以下、「品質効率要求ベクトルVa3」と呼ぶ)との合成ベクトルである。
従って、生産効率要求ベクトルVa1、成果効率要求ベクトルVa2、及び品質効率要求ベクトルVa3の夫々を個別に設定することで、遡及ベクトルVaを設定することができる。
【0038】
生産効率要求ベクトルVa1の設定手法は、特に限定されないが、例えば、生産性が高く、コスト(時給)が低く、シフトが長い順に人員を配置するとするならば、ベクトル長を、当日配置すべき必要人数への充足率(%)として表現することで、生産効率要求ベクトルVa1を設定するという手法を採用することができる。
この場合、その他の成果効率要求ベクトルVa2及び品質効率要求ベクトルVa3の夫々についても同様に設定される。即ち、ベクトル長さを、当日配置すべき必要人数への充足率(%)として表現することで、成果効率要求ベクトルVa2及び品質効率要求ベクトルVa3の夫々を設定するという手法が採用される。
【0039】
ただし、
図6や
図7に示すように、ROIの遡及ベクトルVaに対して、法令順守と公平化のルールを夫々示す逆ベクトルVb,Vcを引いたベクトルが、人員配置をする際の実際の指標となるベクトル(以下、「実指標ベクトル」と呼ぶ)になる。
【0040】
ここで、図示はしないが、ベクトルの終点の座標を、(生産効率、成果効率、品質効率)と表すならば、各オペレータ毎に、原点から、(各オペレータの生産効率、各オペレータの成果効率、各オペレータの品質効率)の点まで引いたベクトルが定義される。このような各オペレータ毎に定義されるベクトルを、以下、オペレータベクトルと呼ぶ。
【0041】
この場合、実指標ベクトルと各オペレータベクトルとが比較され、類似度が高いオペレータベクトルを有するオペレータが、人員として選ばれる。
例えば8名選択するならば、指標ベクトルとの類似度が1乃至8位のオペレータベクトルを夫々有する人員が選ばれる。
【0042】
ただし、ベクトルの類似度の演算は、アルゴリズムが複雑になり演算時間もかかる場合がある。
そこで、例えば、
図6に示す3つの球のように、ROIの遡及ベクトルVaに基づいて許容範囲を予め設定しておき、その許容範囲内に入るオペレータベクトルを有するオペレータを人員として選択してもよい。
【0043】
さらに、人員配置計画の演算をより簡単にすべく、ROI割振部5は、ROIの(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率の夫々について優先度を設定することができる。
具体的には例えばここでは、ROI割振部5は、(A)生産効率が優先度1位であり、(C)品質効率が優先度2位であり、(B)成果効率が優先度3位である、と設定したものとする。
【0044】
図8は、人員配置の対象となる各オペレータについての、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率の夫々を示す表である。
図8においては、各オペレータに付されたNo(例えば社員番号等)順に昇順で、各オペレータの夫々について、(A)生産効率の一例としての「生産効率/15分」、(C)品質効率の一例としての「応対品質」、及び(B)成果効率の一例としての「成果(成約件数)/時間」が夫々示されている。
【0045】
この場合、人員配置部1は、当該表をソートすることで、人員を選抜することができる。
具体的には例えば、人員として10名が必要とされており、そのうちの80%(つまり、8名)が、ROIの設定に従って、
図8の表に示されるオペレータの中から選抜されるものとする。
人員配置部1は、
図8の表を、上記優先度に従って昇順にソートすることで、
図9の表を作成する。
図9は、人員配置の対象となる各オペレータについての、優先度を考慮したROIの昇順にソートされた、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率の夫々を示す表である。
図9に示すように、先ずは優先順位1位の(A)生産効率に従って昇順に各オペレータがソートされる。次に、(A)生産効率が同一順位の複数のオペレータについては、優先順位2位の(C)品質効率に従って昇順に各オペレータがソートされる。さらに、(A)生産効率及び(C)品質効率が同一順位の複数のオペレータについては、優先順位3位の(B)成果効率に従って昇順に各オペレータがソートされる。
このような表(リスト)のオペレータのソート手法は、結果として、理想指標ベクトルとの類似度が高いオペレータベクトル順に並べ替える手法を意味していることになる。
【0046】
ここで、法準拠演算部4が、労働基準法や36協定等の労働者の保護に関する規定を準拠すべく、当該規定の基準時間を超えるオペレータを特定する。
図9の例では、左斜め斜線が付されたオペレータB,C,Iが特定される。
また、公平化演算部3は、労働者の保護に関する公平化の各条件についての重み(どの程度ルールに準拠するのか)として、例えば5勤2休のルールを設定し、当該ルールに抵触するオペレータを特定する。
図9の例では、細かいドットが付されたオペレータJ,Eが特定される。
【0047】
次に、人員配置部1は、上述の法準拠演算部4又は公平化演算部3により制約条件があると特定されたオペレータを、人員の候補から除外する。
つまり、
図6や
図7に示すように、ROIの遡及ベクトルVaに対して、法令順守と公平化のルールを夫々示す逆ベクトルVb,Vcを引いた実指標ベクトルに基づいて、オペレータが除外されることと等価になる。
図10は、
図9の表から、制約条件があると特定されたオペレータを除外した表を示している。
つまり、
図10の表では、
図9における左斜め斜線が付されたオペレータB,C,Iが除外され、かつ、
図9における細かいドットが付されたオペレータJ,Eが除外されている。
【0048】
ここで、前提条件としては、人員として10名が必要とされており、そのうちの80%(つまり、8名)が、ROIの設定に従って、
図8の表に示されるオペレータの中から選抜される。
従って、人員配置部1は、
図10の表に含まれる9人のオペレータのうち、昇順に8名のオペレータを、人員として選抜して抽出する。
図11は、このようにして人員配置部1により人員として選抜された8名のオペレータを示す表である。
【0049】
さらに、以下、人員配置計画の別の具体的な手法について説明する。
図12は、本発明が適用されるPPMによる人員配置計画の具体的な手法を示している。
管理者等は、指定時間帯別に割振りの優先順位を設定することができる。
指定時間帯は、
図13を用いて後述するが、管理者等が、任意の単位で設定できるものである。例えば、毎週金曜日の10時から11時までの第1時間帯や、平日の3時から5時までの第2時間帯等が指定時間帯として任意に設定可能である。
管理者等は、各指定時間帯毎に、ROIの各要素として、(A)生産効率、(B)成果効率、及び(C)品質効率の優先順位を入力ボックス35に入力することで、各要素の優先度と配分の割振りパターンを設定することができる。なお、本実施形態では配分は優先度に応じて一律とされているが、別途配分も設定できるようにしてもよい。また、
図6の例の入力ボックス35では、説明の便宜上、(A)生産効率に対応するものとして「生産性」が、(B)成果効率に対応するものとして「販売実績(件数)」、「UpSell件数」、及び「CrossSell件数」の夫々が、優先度の入力対象となっている。当然ながら、(C)品質効率の優先順位も優先度の入力対象とすることもできる。
換言すると、
図12のコストの低減に対応する「生産性」は必須入力項目であるが、それ以外の3つの項目は管理者等が自在に指定できる項目とされている。つまり、
図12の例では、(B)成果効率、及び(C)品質効率のうち、「販売実績(件数)」、「UpSell件数」、及び「CrossSell件数」の夫々が設定されているに過ぎない。
ここで、入力ボックスの各項目の「上向き三角印」と「下向き三角印」は、当該項目の観点で人員を配置する時、昇順又は降順で人員を割り振るのかを指定するものである。
また、管理者等は、入力ボックス34を用いて、1つの時間帯について、入力ボックス35で設定された割振りのパターンに対して、所望の名称(以下、「割振りパターン名」と呼ぶ)を入力することができる。
【0050】
つまり、ROI割振部5は、所定日の所定時間帯については、対応付けられた割振りパターン(所定の割振りパターン名で特定されるパターン)に基づいて、各効率演算部2によって演算されたROIの各要素毎に、優先度と配分を割り振ることで、
図6のベクトルVaを生成する。
【0051】
法準拠演算部4は、労働基準法や36協定等の労働者の保護の条件として、例えば条件31を用いてベクトルVbを生成する。なお、条件31は、法に準拠するものなので、予め設定されている。
【0052】
公平化演算部3が、公平化の各条件(ルール)について重み(どの程度ルールに準拠するのか)を重みテーブル32から演算すると共に、それらのルールをどの程度遵守するのかの度合(以下、「ルール遵守度」)をルール遵守度設定テーブル33から特定する。そして、公平化演算部3は、公平化の各条件(ルール)について重み及びルール遵守度に基づいて、ベクトルVcを生成する。
【0053】
人員配置部1は、指定時間帯別割振りの優先順位に基づくROIの指標としてのベクトルVaと、労働者の保護のうち法準拠の指標としてのベクトルVbと、労働者の保護のうち公平化の指標としてのベクトルVcとを合成し、その合成ベクトルに基づいて人員配置計画を作成する。
【0054】
次に、このような割振りを適用する指定時間について、
図13乃至
図16を参照して説明する。
【0055】
図13は、割振りを適用する指定時間の一覧表である。
即ち、
図1の時間帯指定部6は、各指定時間帯を指定して、必要に応じて
図13に示すような一覧表等を作成することができる。
図13の例では、1日に適用可能な割振りパターンは3種類とされている。なお、当然ながら、1日に適用可能な割振りパターンの種類は、3種類に限定されない。
そして、所定の1日の所定の割振りパターンについては、5つまで任意の指定時間が設定可能とされている。
なお、
図13の例では、所定の1日は、毎週何曜日という曜日単位の表になっているが、特にこれに限定されず、実際の日単位(例えば○月○日)の表であっても構わない。
【0056】
図14乃至
図16は、割振りを適用する指定時間を管理者等に指定するためのGUIを示している。
図14乃至
図16に示すように、管理者等は、所定の1つの割振りパターンについて、年間(
図14)、4カ月指定月(
図15)、指定月(
図16)の指定パターンを選択することができる。つまり、年間(
図14)が設定された場合には、年間単位での指定が可能になり、4カ月指定月(
図15)が設定された場合には指定された4ケ月単位での指定が可能になり、指定月(
図16)が設定された場合には指定された1ケ月単位での指定が可能になる。
また、管理者等は、
図14乃至
図16に示す各カレンダーの中から所望日をクリックすることで、当該所望日について、所定数(本例では3つ)だけ、所望の時間帯(ただし重複しない範囲で)と所望の割振りパターンを個別設定することもできる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定しない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載された効果に限定されない。
【課題】ROIが望める人員配置計画を容易かつ適切に行い、配置される人員の実績にもとづく配置計画であるため、確実性が向上する人員配置計画装置及び方法、並びにプログラムを提供すること。
【解決手段】各効率演算部2は、コンタクトセンターにおける複数の人員毎に、対費用効果の要素を演算する。例えば各効率演算部2は、対費用効果の要素として、生産効率と、成果効率と、品質効率とのうち少なくとも1つを演算する。人員配置部1は、各効率演算部2の演算結果に基づいて対費用効果の指標を演算し、当該対費用効果の指標に基づいて、複数の人員の夫々の配置を計画する。