(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679569
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ライン結像システム及びレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20150212BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20150212BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
H01L21/268 J
H01L21/268 G
H01L21/265 602C
H01S3/00 B
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-94008(P2011-94008)
(22)【出願日】2011年4月20日
(65)【公開番号】特開2012-9824(P2012-9824A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年1月10日
(31)【優先権主張番号】12/800,203
(32)【優先日】2010年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【復代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【復代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アニキチェフ、セルゲイ
【審査官】
柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−339630(JP,A)
【文献】
特開2006−156984(JP,A)
【文献】
特公昭57−007834(JP,B1)
【文献】
特開平08−174257(JP,A)
【文献】
特開平08−125258(JP,A)
【文献】
特開2005−210129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/265
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ熱処理システム用のライン像を形成するライン形成光学システムであって、
入力光線を生成するレーザと、
周辺の強度最小値により画定される中心ローブを有する第1方向のライン焦点に前記入力光線を集束する第1円筒形レンズシステムと、
前記ライン焦点に配置され、前記ライン像を第2方向において前記中心ローブ内で切り捨てるように構成され、これにより第1光線を形成する第1空間フィルタと、
前記第1光線の一部を前記第2方向で受光して切り捨てることによって実質的に平行な第2光線を形成する第2円筒形レンズシステムと、
前記実質的に平行な第2光線を前記第2方向で切り捨てるように構成され、第3光線を形成するナイフエッジ開口と、
前記ナイフエッジ開口と共役な画像平面を有し、前記第3光線を受光してそこから前記第2方向に集束された第4光線を形成するように構成され、前記画像平面にライン像長LLを画定する第3円筒形レンズシステムと、
前記第1方向に前記第4光線を集束して前記画像平面にライン像幅WLを画定する第4円筒形レンズシステムと
を光学軸に沿って順に備える、ライン形成光学システム。
【請求項2】
前記第2円筒形レンズシステムは、(a)前記切り捨ての実行に適した大きさの開口絞り、又は(b)前記切り捨ての実行に適した大きさの開口により前記第1光線の切り捨てを実行する
請求項1に記載のライン形成光学システム。
【請求項3】
前記ナイフエッジ開口は、対向する鋸歯状ブレードエッジを有する
請求項1または2に記載のライン形成光学システム。
【請求項4】
前記ライン像長LLは、5mm≦LL≦100mmの範囲内である
請求項1から3のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項5】
前記ライン像幅WLは、25ミクロン≦WL≦500ミクロンの範囲内である
請求項1から4のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項6】
前記第3円筒形レンズシステムは、第2空間フィルタを画定する開口絞りを有する円筒形中継レンズシステムを含む
請求項1から5のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項7】
前記ライン焦点の前記中心ローブは、幅WCを有し、
前記第1空間フィルタは、0.6WC≦W1≦0.9WCを満たす幅W1を有する
請求項1から6のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項8】
前記レーザは、実質的に10.6ミクロンの波長を有するように前記光線を生成するCO2レーザである
請求項1から7のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項9】
前記第1光線は、前記第1空間フィルタにおいて複数の強度ローブを有し、
前記複数の強度ローブは、中心強度ローブと複数の周辺強度ローブとを含み、
前記第2円筒形レンズシステムは、前記中心強度ローブと前記周辺強度ローブの一部とを通過させると共に前記周辺強度ローブのその他の一部を遮断する
請求項1から8のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項10】
前記ライン像は、50W/mm2から5000W/mm2の範囲内の出力密度を有する
請求項1から9のいずれかに記載のライン形成光学システム。
【請求項11】
表面を有するウエハをアニールするレーザアニールシステムであって、
請求項1から10のいずれかに記載の前記ライン形成光学システムと、
前記ウエハ表面に前記ライン像を走査するように、前記ウエハを前記画像平面で動作可能に支持すると共に前記ウエハを移動させるように構成されるステージと
を備える、レーザアニールシステム。
【請求項12】
表面を有するウエハをアニールするためにライン像を形成する方法であって、
入力用のレーザ光線を生成することと、
前記入力用のレーザ光線を集束して、中心ローブを有するライン焦点を形成することと、
前記ライン焦点において前記レーザ光線を前記中心ローブ内で切り取るための第1空間フィルタ処理を実行して第1光線を形成することと、
前記第1光線をさらに前記第1空間フィルタ処理と同じ方向にフィルタするための第2空間フィルタ処理を実行して、2回の空間フィルタ処理がなされた第2光線を形成することと、
前記第2光線を前記第1の空間フィルタ処理と同じ方向にて切り捨てて第3光線を形成することと、
前記第3光線を少なくとも1方向に集束して、前記ウエハ表面に前記ライン像を形成することと
を備える方法。
【請求項13】
前記ライン像を形成する際に、前記切り捨てられた前記第3の光線を前記第1の空間フィルタ処理の方向と直角な方向に集束すること
をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
開口絞りを有する円筒形光学システムを利用して前記第2空間フィルタ処理を実行することを備える
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記ライン像は、5mm≦LL≦100mmの範囲内の長さLLと、25ミクロン≦WL≦500ミクロンの範囲内の幅WLとを有する
請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記中心ローブは、周辺強度最小値により画定される幅WCを有し、
0.6WC≦W1≦0.9WCを満たす幅W1を有する開口を利用して前記第1空間フィルタ処理を実行することを備える
請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記入力光線を生成することは、実質的に10.6ミクロンの波長を有するように前記入力光線を形成することを含む
請求項12から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第1光線は、前記遠隔フィールド位置において複数の強度ローブを有し、
前記複数の強度ローブは、中心強度ローブと複数の周辺強度ローブとを含み、
前記第2空間フィルタ処理を実行して、前記中心強度ローブと前記周辺強度ローブの一部とを通過させると共に前記周辺強度ローブの他の一部を遮断することをさらに備える
請求項12から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ウエハを前記ライン像に対して移動させ、前記ウエハ表面に前記ライン像を走査することをさらに備える
請求項12から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ライン像に対して50W/mm2から5000W/mm2の範囲内の出力密度を与えることをさらに備える
請求項12から19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光線を使用するライン像の形成に関し、特に、レーザアニールに応用するために改良されたライン結像のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な応用事例において、コヒーレント光線から形成された均一なライン像を利用しなければならない。その一例がレーザ熱処理(LTP)である。当該技術分野において、LTPは、レーザスパイクアニール(LSA)または単純に「レーザアニール」と称される。レーザアニールは、半導体製造で使用され、トランジスタ等の能動素子(超小型回路素子)の形成時、半導体ウエハの選択領域のドーパントを活性化する。レーザアニールは、光線で走査されたライン像を使用して、ドーパント活性化には十分長いがドーパント拡散の最小化には十分短い時間で、ウエハ表面をある温度(アニール温度)まで加熱する。ウエハ表面がアニール温度となる時間は、ライン像の出力密度と、ライン像を走査する速度(走査速度)で除算されたライン像幅とにより規定される。
【0003】
商業LSAツールで高スループットを実現するためには、ライン像が高出力密度を有すると共に、ライン像ができるだけ長細くなければならない。利用可能なライン像寸法は、例えば、5mm長から100mm長、25ミクロン幅から500ミクロン幅である。均一なアニールを実現するためには、強度プロファイルがライン像長に沿ってできるだけ一定であることも必要である。典型的な半導体プロセス要件では、1000℃から1300℃の範囲内のアニール温度が必要とされると共にプラス・マイナス3℃の温度均一性が必要とされる。このような温度均一性を実現するためには、アニール光線により形成されるライン像が、ほとんどの条件下でプラス・マイナス5%の比較的均一な強度を有する必要がある。
【0004】
CO
2レーザは、レーザアニールへの応用において好ましい光源である。CO
2レーザの波長(名目上10.6ミクロン)が被照射装置の大きさに比べてかなり長く、散乱の少ないより均一な露光が行なわれ、「パターン効果」を取り除くこと、また、CO
2レーザが比較的高強度の光線を照射することがその理由である。しかし、CO
2レーザのコヒーレント長は、比較的長く、典型的には数メートルである。このため、CO
2レーザでは、ケーラー照明の法則により、10%未満(プラス・マイナス5%の)の均一性を有する長く狭いライン焦点を生成するバイナリ光学手法を利用することができない。
【0005】
CO
2レーザを利用してレーザアニールを実行する従来の方法としては、一組のナイフエッジ上に光線を結像する方法が挙げられる。ナイフエッジは、ガウス光線の狭い中心部のみを通過させるように配置される。通過した光線の長さは、ウエハ上に形成されるライン像の均一性仕様を満たす光線の部分に相当する。ガウス型CO
2光線の場合、ナイフエッジは、典型的にはガウス型光線の中心10%のみを通過させるように配置される。かかる場合、残念ながら光線の残り90%が遮断され、光源からの高強度光を極めて非効率に使用することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,612,372号明細書
【特許文献2】米国特許第7,514,305号明細書
【特許文献3】米国特許第7,494,942号明細書
【特許文献4】米国特許第7,399,945号明細書
【特許文献5】米国特許第7,154,066号明細書
【特許文献6】米国特許第6,747,245号明細書
【特許文献7】米国特許第6,366,308号明細書
【特許文献8】米国特許第7,098,155号明細書
【特許文献9】米国特許第7,148,159号明細書
【特許文献10】米国特許第7,482,254号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、レーザ熱処理システム用のライン像を形成するライン形成光学システムである。ライン形成光学システムは、レーザ、第1円筒形レンズシステム、第1空間フィルタ、第2空間フィルタを有する第2円筒形レンズシステム、ナイフエッジ開口、円筒形中継システム、円筒形集束レンズを光学軸に沿って順に備える。レーザは、入力光線を生成する。第1円筒形レンズシステムは、周辺の強度最小値により画定される中心ローブを有する第1方向のライン焦点に入力光線を集束する。第1空間フィルタは、ライン焦点に配置される。そして、第1空間フィルタは、ライン像を第2方向において中心ローブ内で切り捨てるように構成され、第1光線を形成する。第2円筒形レンズシステムは、第1光線の一部を第2方向で受光して切り捨てるように構成され、実質的に平行な第2光線を形成する。ここで、切り捨ては、第2空間フィルタとして動作する開口絞りにより実行される。ナイフエッジ開口は、実質的に平行な第2光線を第2方向で切り捨てるように構成されており、第3光線を形成する。実施形態の一例では、ナイフエッジを画定するブレードは、鋸歯エッジを有する。円筒形中継レンズシステムは、ナイフエッジ開口と共役な画像平面を有する。円筒形中継レンズシステムは、第3光線を受光してそこから第2方向に集束された第4光線を形成するように構成されており、画像平面にライン像長LLを画定する。円筒形集束レンズは、第1方向に第4光線を集束するように構成されており、画像平面にライン像幅WLを画定する。
このライン形成光学システムにおいて、第2円筒形レンズシステムは、(a)切り捨ての実行に適した大きさの開口絞り、又は(b)切り捨ての実行に適した大きさの開口により第1光線の切り捨てを実行することが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、ナイフエッジ開口は、対向する鋸歯状ブレードエッジを有することが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、ライン像長LLは、5mm≦LL≦100mmの範囲内であることが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、ライン像幅WLは、25ミクロン≦WL≦500ミクロンの範囲内であることが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、第3円筒形レンズシステムは、第2空間フィルタを画定する開口絞りを有する円筒形中継レンズシステムを含むことが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、ライン焦点の中心ローブは、幅WCを有することが好ましい。また、第1空間フィルタは、0.6WC≦W1≦0.09WCを満たす幅W1を有することが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、レーザは、名目上10.6ミクロンの波長を有するように光線を生成するCO
2レーザであることが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、第1光線は、第1空間フィルタにおいて複数の強度ローブを有することが好ましい。複数の強度ローブは、中心強度ローブと複数の周辺強度ローブとを含む。また、第2円筒形レンズシステムは、中心強度ローブと周辺強度ローブの一部とを通過させると共に周辺強度ローブのその他の一部を遮断するように構成されることが好ましい。
このライン形成光学システムにおいて、ライン像は50W/mm
2から5000W/mm
2の範囲内の出力密度を有することが好ましい。
【0008】
本発明の他の態様は、表面を有するウエハをアニールするレーザアニールシステムである。このレーザアニールシステムは、上述のライン形成光学システムと、ウエハ表面にライン像を走査するように、ウエハを画像平面で動作可能に支持すると共にウエハを移動させるように構成されるステージとを備える。
【0009】
本発明の他の態様は、表面を有するウエハをアニールするためにライン像を形成する方法である。この方法は、光線を生成すること、光線を集束して中心ローブを有するライン焦点を形成することを備える。また、この方法は、中心ローブ内でライン焦点の第1空間フィルタ処理を実行して、第1空間フィルタ処理済の伸長光線を形成することを備える。また、この方法は、第1空間フィルタ処理済の伸長光線を遠隔フィールド位置に伝播すると共に第1空間フィルタ処理済の伸長光線を第2空間フィルタ処理して、2回の空間フィルタ処理がなされた伸長光線を形成することを備える。さらに、この方法は、2回の空間フィルタ処理がなされた伸長光線を長手方向に切り捨てて、切り捨てられた伸長光線を形成することを備える。また、この方法は、切り捨てられた光線を少なくとも1方向に集束して、ウエハ表面にライン像を形成することを備える。
この方法は、ライン像を形成する際に、切り捨てられた長手方向の光線を第2方向に集束することをさらに備えることが好ましい。
この方法は、開口絞りを有する円筒形光学システムを利用して第2空間フィルタ処理を実行することを備えることが好ましい。
この方法において、ライン像は、5mm≦LL≦100mmの範囲内の長さLLと、25ミクロン≦WL≦500ミクロンの範囲内の幅WLとを有することが好ましい。
この方法において、中心ローブは周辺強度最小値により画定される幅WCを有することが好ましい。また、この方法は、0.6WC≦W1≦0.09WCを満たす幅W1を有する開口を利用して第1空間フィルタ処理を実行することを備えることが好ましい。
この方法において、入力光線を生成することは、名目上10.6ミクロンの波長を有するように入力光線を形成することを含むことが好ましい。
この方法において、第1光線は、遠隔フィールド位置において複数の強度ローブを有することが好ましい。複数の強度ローブは、中心強度ローブと複数の周辺強度ローブとを含む。また、この方法は、第2空間フィルタ処理を実行して、中心強度ローブと周辺強度ローブの一部とを通過させると共に周辺強度ローブの他の一部を遮断することをさらに備えることが好ましい。
この方法は、ウエハをライン像に対して移動させ、ウエハ表面にライン像を走査することをさらに備えることが好ましい。
この方法は、ライン像に対して50W/mm
2から5000W/mm
2の範囲内の出力密度を与えることをさらに備えることが好ましい。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、下記の詳細な説明(発明を実施するための形態)に明記されている。また、それらの一部は、詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、下記の詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面を含む、ここに記載された発明を実施することによって認識される。
【0011】
上記の背景技術の記載および下記の本発明の詳細な説明の記載は、共に本発明の実施形態を提供するものであり、特許請求の範囲に記載されているように、本発明の本質および特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施形態を図示するものであり、本明細書の記載とともに、本発明の原則および実施を説明する一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】−Y方向から見た本発明に係るライン形成光学システムの概略図である。
【
図1B】−X方向から見た本発明に係るライン形成光学システムの概略図である。
【
図1C】
図1Aと同様の図であり、4つの折り返しミラーを有するシステム構成の一例を示す図である。
【
図1D】
図1Bと同様の図であり、4つの折り返しミラーを有するシステム構成の一例を示す図である。
【
図2A】第1空間フィルタとして使用されるナイフエッジ型空間フィルタの一例の正面図である。
【
図2B】第2空間フィルタとして使用されるナイフエッジ型空間フィルタの一例の正面図であり、ナイフエッジに鋸歯が形成されていることを示す図である。
【
図3】レーザにより照射された光線の強度分布の一例を示す3次元(3D)プロットであり、Y方向にガウス形状を示すと共にX方向に比較的「先端平坦」な形状を示す図(なお、各方向の大きさはmm単位で表示)である。
【
図4】第1空間フィルタSF1(平面P1)における集束入力光線のX方向(mm)の光線強度分布プロットであり、ガウス型第1出力光線の形成および非ガウス型第1出力光線の形成に関連する第1空間フィルタ幅W1を示す図である。
【
図5】平面P2における第1出力光線の遠隔フィールド光線強度分布の対数プロットであり、強度分布において五つの中心ローブを通過させるように第2円筒形レンズシステムCL2が構成された例を示す図である。
【
図6】遠隔フィールドでの正規化強度と、第1空間フィルタSF1において第1空間フィルタ幅W1を中心ローブ幅WCに等しくなるように設定する従来手法を使用して形成された平面P2上における第1出力光線のX方向位置(mm)との関係を示すプロット図である。
【
図7】
図6と同様のプロット図であるが、W1=0.7WCとした場合の本発明のライン形成光学システムに基づくプロット図である。
【
図8A】
図7と同様のプロット図であるが、実質的に異なるライン像長を生成するライン形成光学システムの二つの異なる倍率のうち一方を示す図である。
【
図8B】
図7と同様のプロット図であるが、実質的に異なるライン像長を生成するライン形成光学システムの二つの異なる倍率のうち他方を示す図である。
【
図9】本発明のライン形成光学システムを有するレーザ熱処理システムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本発明の好ましい実施形態について詳細に参照する。実施形態の一例については、添付図面に図示されている。同一または同様の構成要素を参照する場合、図面を通じて可能な限り同一または同様の参照番号及び符号を使用する。以下記載において、「伸長」光線は光線の断面を表し、一断面の寸法は他断面の寸法よりも大きい。
【0014】
図1A及び
図1Bは、それぞれ−Y方向及び−X方向から見たライン形成光学システム(光学システム)10の一例の概略図であり、参照の為、直交座標により表現されている。光学システム10は、光学軸A1を有し、最初の平行なコヒーレント光線22(以下、「入力光線」と称す)を照射するレーザ20を備える。実施形態の一例において、レーザ20はCO
2レーザを備え、光線22は名目上10.6ミクロンの波長を有する。レーザ20は、一般にレーザアニールウエハWに適した波長の光線22を生成するレーザであれば、どのようなレーザであってもよい。このようなアニールとしては、例えば、ウエハWの加熱、または、ウエハWに対する他光源からの放射線の照射が挙げられる。したがって、以下詳細に述べるが、ウエハWは、自身をアニール温度まで加熱するのに十分な量の光線22を吸収する。
【0015】
図2Bは、
図2Aと同様の図であり、ナイフエッジ開口50の一例を示す。ナイフエッジ開口50は、ナイフエッジBE3及びBE4をそれぞれ有するブレードB3及びB4を備える。ナイフエッジBE3及びBE4は、
X方向高さとして高さH2を有する孔(開口)50Aを画定する。ナイフエッジBE3及びBE4は、鋸歯状に図示されており、回折効果を低減する機能を果たす。
【0016】
第1円筒形レンズシステムCL1、第2円筒形レンズシステムCL2、円筒形レンズシステムCRL及び円筒形集束レンズCFLは、少なくとも一つの円筒形ミラー及び円筒形レンズを有してもよいが、便宜上、それぞれ単一の円筒形ミラーとして図示されている。また、第1円筒形レンズシステムCL1、第2円筒形レンズシステムCL2、円筒形レンズシステムCRL及び円筒形集束レンズCFLは、開口および同様の構成要素を有することができる。第2円筒形レンズシステムCL2は、光学システム10の瞳孔(pupil)を画定する開口絞りASを有する。また、円筒形レンズシステムCRLは、選択的に第2空間フィルタSF2を備える。折り返しミラーFM1及びFM2は、例えば光学システム10をさらにコンパクトにするために選択的に使用され、一般にミラーベースのシステムに好ましい。
【0017】
図1C及び
図1Dは、
図1A及び1Bと同様の図であり、第1空間フィルタSF1を備える光学システム10の一部構成例を示す。この構成例では、さらに2つの折り返しミラーFM3及びFM4が設けられる。
【0018】
図2Aは、第1空間フィルタSF1の一例の正面図である。第1空間フィルタSF1は、ブレードエッジBE1及びBE2(ナイフエッジ)をそれぞれ有する調整可能なブレードB1及びB2を備える。ブレードエッジBE1及びBE2は、スリット開口SA1を画定する。スリット開口S1は、幅W1を有し、X方向に狭くY方向に長い。
【0019】
図2Bは、
図2Aと同様の図であり、ナイフエッジ開口50の一例を示す。ナイフエッジ開口50は、ナイフエッジBE3及びBE4をそれぞれ有するブレードB3及びB4を備える。ナイフエッジBE3及びBE4は、Y方向高さに高さH2を有する孔(開口)50Aを画定する。ナイフエッジBE3及びBE4は、鋸歯状に図示されており、回折効果を低減する機能を果たす。
【0020】
一例において、レーザ20は、名目上10.6ミクロンの波長λの光を照射するCO
2レーザを含む。CO
2レーザにはガウス型出力光線を照射するものもあるが、所定の高出力シングルモードCO
2レーザは、不安定な共振器を採用することから、少なくとも一方向に非ガウス型出力光線を有する。
図3は、光源ユニットとしてのレーザ20により照射される非ガウス型光線22の強度分布の一例の三次元(3D)プロットである。
図3に示される光線の一例では、X方向に実質的に先端平坦な光線分布を有し、Y方向にガウス型分布を有する。
【0021】
従来のライン形成光学システムでは、第1空間フィルタSF1は、入力光線22からX方向にガウス型出力光線を形成するように構成(例えば、幅W1が設定)される。以下の説明では、このような従来の空間フィルタ設定では、例えば、第1空間フィルタSF1(
図4及び以下の記載を参照)で形成される光線分布の強度がゼロ(または、より一般的には中心ローブを画定する強度最小値)となる位置にブレードエッジBE1及びBE2を配置する。
【0022】
ライン焦点LF1の光線分布は、第1円筒形レンズシステムCL1の開口および焦点距離、入力光線強度分布(一例を
図3に示す)により規定される。
図4Aは、第1空間フィルタSF1としてのライン焦点LF1に関連する光線分布の対数等高線図である。
図4Bは、X方向のライン焦点LF1の(非対数)強度をプロットしている。
図4Bは、中心ローブCLを取り囲んで画定する強度最小値MIを示している。強度最小値は、強度ゼロZIと一致することが理想である。なお、
図4Aおよび
図4Bにおいて、X方向の光線分布は、本来「同期」関数であり、中心ローブCLが周辺の強度最小値MIにより画定されるような幅WCを有する。また、Y方向の光線分布は本来のガウス型特性を維持する。
図4Aの光線分布図は、光線22がY方向に伸長することを示している。
【0023】
図4Bでは、第1空間フィルタSF1を離れるガウス型出力光線23および非ガウス型出力光線23の形成に対応する第1空間フィルタ幅(W1=WC及びW1=0.8WC)を重ねてプロットしている。
【0024】
ブレードエッジBE1及びBE2を同期関数の強度最小値MI(即ち、W1=WC)に配置する第1空間フィルタ幅W1によって、光線23の光線分布(即ち、同期関数の中心ローブCLのフーリエ変換)が遠隔位置(例えば、第2空間フィルタSF2)に形成され、最終的にガウス型遠隔光線分布が形成される。しかし、本発明の光学システムは、空間フィルタ幅を中心ローブCL内、即ち、W1<WC(例えば、W1は0.6WCから0.09WCの範囲内、より好ましくは0.7WCから0.8WCの範囲内)に設定する。このため、強度最小値MI内の中心ローブCLが切り捨てられ、光線23の遠隔光線分布(即ち、中心ローブCLの一部のみのフーリエ変換)が形成される。出力光線23の高空間周波数のより多くを切り捨て、光線23をより回折させ、ガウス型光線分布に比べてより先端平坦な形状の光線分布を出力光線23に与えることにより、遠隔フィールドでの出力光線23の空間的広がりを拡張する効果が得られる。
【0025】
出力光線23は、第1空間フィルタSF1から第2円筒形レンズシステムCL2に進行する。一度フィルタ処理された光線23はX方向にフィルタされ(切り捨てられ)、光線24が形成される。フィルタ処理/切捨て処理関数は、第2円筒形レンズシステムCL2の大きさにより実行される。即ち、第2円筒形レンズシステムは光線23の一部のみを通過させるように構成されている。このように、第2円筒形レンズシステムCL2は第2空間フィルタSF2として機能する。第2円筒形レンズシステムCL2は、X方向に出力し、光線23が実質的に分散光である場合、光線24を実質的に平行光として形成する。
【0026】
光線24は、第2円筒形レンズシステムCL2によりナイフエッジ開口50に導かれる。ナイフエッジ開口50は、光線24を長手方向(伸長方向、即ち、X方向)に切り捨てる役割を担っており、光線25を形成する。このような切り捨て処理により、最終ライン像LIの長さLLが画定される。長さLLを調整するために、ブレードB3及びB4は調整可能となっている。ナイフエッジ開口50は、第2円筒形レンズシステムCL2の画像平面であり、対応する対象物平面が第1空間フィルタSF1上に存在する。
【0027】
光線25は、円筒形レンズシステムCRLに向かって進行する。円筒形レンズシステムCRLは、平面P2と画像平面IPとが共役面となるように構成されている。
図1Aを参照すると、円筒形中継レンズは、光線25をX方向に集束して光線26を形成する。光線26は、(Y方向に出力する)円筒形集束レンズCFLを直接通って、画像平面IPに最終ライン像LIを形成する。
図1Bを参照すると、ライン像LIが幅W1を有するように、光線26が円筒形集束レンズCFLによりY方向に集束される。ライン像LIの典型的な幅W1は、約25ミクロンから約500ミクロンの範囲内である。
【0028】
レーザ20から第1円筒形レンズシステムCL1を通過して第1空間フィルタSF1に伝播する光線22がフーリエ変換され、第1空間フィルタSF1から第2円筒形レンズシステムCL2を越えて(第2円筒形レンズシステムCL2の焦点距離と同様の距離だけ後方に)伝播する光線23が実質的に逆フーリエ変換されるように、第1円筒形レンズシステムCL1および第2円筒形レンズシステムCL2が、第1空間フィルタSF1に対して相対配置されている。
【0029】
光線23は第2円筒形レンズシステムCL2により空間フィルタ処理され、その結果、2回の空間フィルタ処理がなされた光線24が形成される。光線24は、2つのフィルタ処理工程で規定される光線分布を有する。
図5に示されるように、第1のフィルタ処理工程では、広域出力スペクトルが形成される。第2円筒形レンズシステムCL2は、(例えば、内部開口の設定またはその開口の選択により)出力スペクトルのいずれの強度ローブを通過させるのかを選択するように構成されており、光線24を形成する。例えば、
図5では、第2円筒形レンズシステムCL2は、中心ローブ(メインローブ)CLと四つの周辺ローブとを通過させ、範囲外の複数の強度ローブを遮断するように構成されている。なお、光線24はY方向においてガウス型特性を維持している。
【0030】
二重の空間フィルタ処理により、ナイフエッジ開口50での強度分布は、ガウス型分布から「より先端平坦な」分布に変化する(
図6と
図7を比較)。したがって、より多くの出力がナイフエッジ開口50を通過することができ、ライン像LIが形成される。また、結果的に得られるライン像LIは、長手方向に極めて均一(例えば、通常はプラス・マイナス5%よりも良好)であり、出力光線のコヒーレントによる干渉効果を受けることはない(これは、ナイフエッジの鋸歯とリレー内の空間フィルタ(またはリレーの低いNAと同様)による)。光学システム10は、ライン像LIを形成するのに従来のシステムに比べてより多くの出力を要する。このため、ライン像LIの長さLLをレーザ熱プロセス光学システムの従来のライン形成システムに比べて実質的に長く(例えば、3倍長く)することができる。例えば、ライン像LIの長さLLは、円筒形レンズシステムCRLの適切な倍率選択によって規定される。
【0031】
(例)
上述の通り、従来のライン形成光学システムは、ガウス型光線を生成するように最適化されている。ガウス型光線は、光線の狭い中心部分を通過させるように切り捨てられるので、最終的な出力光線においては相当な光線が損失していることになる。
【0032】
図6は、従来のライン形成光学システムの第1空間フィルタSF1における入力光線22の位置に対する正規化強度の一例をプロットしている。第1空間フィルタ幅はW1=WCであり、これは、実質的にガウス型の光線23をX方向に形成することに対応している。
図6のプロットの計算では、レーザ波長をλ=10.6ミクロンとし、第1円筒形レンズシステムCL1の焦点距離F1と開口(径)DをそれぞれF1=900mm、D=22mmとした場合、第1空間フィルタ幅はW1=WC=2*(λ/D)*F=0.87mmとなる。
【0033】
ライン像LIの距離LLは、7.47mmであり、≧0.9の正規化強度として規定されている。画像平面(したがって、ウエハ面WS)の光線の出力密度は63.3W(ワット)/mm
2である。
図7のプロットで注目すべきは、第1空間フィルタSF1により遮断されたエネルギー量が多い点にある。
【0034】
図7は、
図6と同様のプロット図であるが、本発明の光学システムに基づくプロット図である。ここで、第2円筒形レンズシステムCL2からナイフエッジ開口50までの距離は5メートルであり、システム全体の倍率は7.37である。第1空間フィルタ幅はW1=0.7WCであり、出力密度174W/mm
2で7.54mmの長さLLを有するライン像LIが形成される。特にこの例では、ライン長LLが従来の手段により生成されたライン長と同様であるが、出力密度は約3倍大きく、レーザ熱プロセスツールのスループットがかなり増大されている。光学システム10の倍率を変更することにより、ライン長LLをかなり(例えば、約3倍まで)長くすることができる。例えば、ライン長LLは、5mm≦LL≦100mmの範囲内である。また、例えば、ライン像LIの幅WLは、25ミクロン≦WL≦500ミクロンの範囲内である。また、例えば、ライン像LIは、50W/mm
2から5000W/mm
2の範囲内の出力密度を有する。
【0035】
図8Aおよび
図8Bは、W1=0.7WCとした場合の他の例を示している。
図8Aでは、ライン像LIの長さLLが7.3mmである。しかし、ここで
図8Bを参照すると、第1空間フィルタSF1と瞳孔との距離を変更することにより(または、第2円筒形レンズシステムCL2とナイフエッジ開口50との距離を延ばし、第1空間フィルタSF1と瞳孔との距離を短くすることにより)、倍率が16.7に変更され、ライン像LIの長さLLが約17mmに変更される。
【0036】
なお、第1空間フィルタSF1の構成はほとんどの場合において比較的許容範囲が広く、典型的な配置許容範囲は約プラス・マイナス0.5mmである。
【0037】
(レーザ熱プロセスシステム)
半導体プロセスにおけるレーザアニール処理は、典型的にはパターン化されたウエハに対して行われる。パターン化されたウエハの吸収率は、パターン寸法、パターン密度、レーザ波長により異なる。これまで、パターン寸法に比べて随分長い波長を有するレーザアニール処理が好ましいことが示されている。
【0038】
図9は、本発明の光学システムを有するレーザアニールシステム100の概略図である。光学システム10の使用に適するレーザアニールシステム100の一例は、例えば、米国特許第7,612,372号、7,514,305号、7,494,942号、7,399,945号、7,154,066号、6,747,245号および6,366,308号に記載されている。なお、これらの特許は、本願に援用される。
【0039】
図9のレーザアニールシステム100は、上述のような光学システム10を光学軸A1に沿って備える。光学システム10において、レーザ20により照射される光線22は、選択的条件下でウエハWによって吸収されウエハWを加熱可能な(例えば、CO
2レーザによる名目上10.6ミクロンの)波長を有する。例えば、このような条件としては、ウエハWを加熱すること、または、ウエハWの半導体バンドギャップエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する第2放射線(図示せず)でウエハWを照射することが挙げられる。これにより、ウエハWは、自身をアニール温度まで加熱するのに十分な程度まで光線22を吸収する。ウエハWが光線22の吸収材となるように第2光源を利用してウエハWを照射する一例は、米国特許第7,098,155号、7,148,159号、7,482,254号に記載されている。これらの特許は、本願に援用される。
【0040】
ウエハWは、上面112を有するチャック110により支持されている。一例において、チャック110は、ウエハWを加熱するように構成されている。また、チャック110はステージ120により支持され、ステージ120は載置台(図示せず)により支持される。実施形態の一例において、チャック110は、ステージ120に組み込まれている。実施形態の他の例では、ステージ120は、可動式であり、平行移動および回転が可能である。
【0041】
一例において、ウエハWには回路(例えば、トランジスタ)156が形成されており、回路156の一部として、ウエハ表面WS上またはその近傍に形成されるソース領域150S及びドレイン領域150Dが含まれることが図示されている。なお、
図10を簡略化するために、回路156のソース領域150S及びドレイン領域150Dの大きさをウエハWに対して非常に誇張して図示している。実際には、ソース領域150S及びドレイン領域150Dは、極めて浅く、ウエハWにおける深さは約1ミクロン以下である。
【0042】
実施形態の一例において、レーザアニールシステム100は、レーザ20及びステージコントローラ122に電気的に接続されたコントローラ170をさらに備える。ステージコントローラ122は、ステージ120に電気的に連結され、コントローラ170の指示を受けてステージ120の移動を制御するように構成されている。コントローラ170は、一般にレーザアニールシステム100の動作を制御するように構成され、特にレーザ20及びステージコントローラ122の動作を制御するように構成されている。
【0043】
実施形態の一例において、コントローラ170は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータそのものであるか、このようなコンピュータを備える。なお、コンピュータについては、テキサス州オースチンのデルコンピュータ社等、多くの周知のコンピュータ会社の任意のコンピュータを利用可能である。コントローラ70は、多くの商業利用可能なマイクロプロセッサのいずれか、当該プロセッサを記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)へ接続するのに適したバスアーキテクチャ、適切な入出力装置(例えば、キーボード、ディスプレイ等)を備えることが好ましい。
【0044】
引き続き
図9を参照すると、上述のように生成された光線26は、ウエハWの表面WS上に導かれ、ライン像LIを表面WS上に形成する。なお、ここで使用する「画像(像)」という用語は、一般に光線26により画像平面IPと、当該平面上に位置するウエハWの表面WS上に形成される光線分布を示す。したがって、ライン像LIは、必ずしも古典的な意味での「物体」を有する訳ではない。
【0045】
実施形態の一例において、矢印180で示されるように、ライン像LIは、ウエハWの表面WS上で走査される。その結果、ソース領域150Sおよびドレイン領域150Dのドーパントを活性化するのに十分な温度(例えば、1000から1300℃の間)までウエハWの表面WSが(約1ミクロン以下の深さまで)急速加熱されることになるが、その一方で、ドーパントが実質的に拡散しないようにウエハWの表面WSが急冷される。このため、ソース領域150Sおよびドレイン領域150Dが浅く維持される。ウエハWの面WS上におけるライン像LIの典型的な走査速度は、25mm/secから1000mm/secの範囲内である。一例において、光線26およびウエハWの一方または両方が走査中に移動可能である。光学システム10は、比較的大きな出力密度を有する比較的長いライン像LIを形成することができる。このため、この光学システム10では、従前のライン像生成光学システムにおける許容速度に比べて随分早い速度(例えば、3倍の速度まで、または、3倍のスループットの改善に対して3倍の長さのプロセスラインを有すること)でウエハWを走査可能である。このため、1時間当たりに処理可能なウエハ数が、この光学システム10により増加する。
【0046】
当業者には明白であるが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明に対して様々な修正及び変更を加えることができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲内において本発明の修正及び変更を包含する。