(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のメインローラの間にワイヤを多重に巻き掛け、往復走行状態のワイヤにワークを押し当て、ワークを所定の厚みの多数の板状体に切断し、ウェーハとして産出するワイヤソーにおいて、
入力装置によって複数の加工条件として下記の事項を制御装置に入力し、
・総ワーク長さ〔mm〕
・メインローラの溝ピッチ〔mm〕
・ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/wafer〕
・ワークのフィード移動量〔mm〕
・ワークのフィード速度〔mm/min〕
・往復走行のワイヤのサイクル数〔回/min〕
・ワイヤの加速時間〔sec〕
・ワイヤの減速時間〔sec〕
・ワイヤの停止時間〔sec〕
・ワイヤの最高速度〔mm/min〕
下記の式により、
(1)1スライスに産出されるウェーハ枚数〔wafer〕=総ワーク長さ〔mm〕/溝 ピッチ〔mm〕
(2)1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕=1スライスに産出されるウェーハ枚数〔 wafer〕×ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/枚〕
(3)加工所要時間〔min〕=フィード移動量〔mm〕÷フィード速度〔mm/min 〕
(4)新線供給量〔m/min〕=1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕÷加工所要時 間〔min〕
(5)1サイクルの時間〔sec〕=60/サイクル数〔回/min〕
(6)最高速度の時間〔sec〕=1サイクルの時間〔sec〕−(加速時間〔sec〕 ×2+減速時間〔sec〕×2+停止時間〔sec〕×2)
(7)加速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(加速時間〔sec〕/2)
(8)減速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(減速時間〔sec〕/2)
(9)送り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)+(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
戻り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)−(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
1サイクルでのワイヤの送り距離および戻り距離を演算して求め、入力した前記複数の加工条件および求めた前記の送り距離および戻り距離を制御装置に自動的に設定する、ことを特徴とするワイヤソーの加工条件設定方法。
送り距離および戻り距離を画面上に表示した後、設定の指令にもとづいて設定する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のワイヤソーの加工条件設定方法。
総ワーク長さをワイヤソーの機内に設置した測長器の出力データから制御装置の内部に自動的に取り込むことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載のワイヤソーの加工条件設定方法。
【背景技術】
【0002】
ワイヤソーは、複数のメインローラの間にワイヤを多重に巻き掛け、走行状態のワイヤに半導体などのワークを押し当てることによって、ワークを所定の厚みの多数の板状体に切断し、薄いウェーハとして産出するときに利用される。
【0003】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、往復走行式のワイヤは、良好な切断面を確保するために、ワークの切断の初期から終期までの期間において、往復走行の状態を維持しながら、ワイヤの線径を一定の範囲に保持できるように、繰り出し側からメインローラに新線が供給され、メインローラから巻き取り側へと移動するように設定されている。
【0004】
特に、砥粒固定ワイヤによる加工方式の場合、安定な切断面を維持するという観点からワイヤ使用量が重要となるため、オペレータは、加工条件を決定する際に、ワーク長さ、メインローラの溝ピッチ、ウェーハ1枚当たりのワイヤ使用量などからワイヤの1往復走行毎に、新たに繰り出すワイヤの量すなわち新線使用量を求めている。
【0005】
例えば特許文献3は、切断加工中に、ワイヤの磨耗量に応じ、ワイヤの新線供給量(m/min)を変更することによって、経済的な切断を可能とする、技術を開示している。また、特許文献4は、往復走行式のワイヤの新線供給量を計算式により求め、求めた新線供給量にもとづいてワイヤの往復走行の態様を設定し、インゴットをウェーハとして切断をする、技術を開示している。
【0006】
一般に、ワークの切断加工に際し、オペレータは、加工条件を設定するために、階層構造の多くの入力画面を特定して、特定の入力画面中にワークの長さや、ワイヤの往復走行設定用の多くの数値を入力し、また必要に応じて机上で計算式によりワイヤの往復走行の設定に関する数値データを求め、求めた数値データを特定の入力画面に入力している。
【0007】
このように、多くの入力画面があると、階層構造の画面の制御が複雑化する。また、オペレータが入力画面を特定して、多くの入力画面に対して特定の数値データを入力するとき、入力過程で誤った値が入力されてしまい、加工時に、ワイヤの断線、ウェーハの品質問題が引き起こされたり、ワークの長さが変わる度に、同様の作業をする必要があり、煩雑な作業のために作業時間がかかるという、欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、加工条件を決定するに際して、オペレータの入力作業を少なくし、基本的な加工条件の数値を入力することによって、自動演算により加工条件に適合する数値データを制御装置に自動的に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題のもとに、本発明は、往復走行状態のワイヤにワークを押し当て、ワークを多数のウェーハとして産出するワイヤソーにおいて、入力装置によって基本的な複数の加工条件を制御装置に入力し、前記加工条件から1サイクルでのワイヤの送り距離および戻り距離を演算により求め、入力した前記複数の加工条件および求めた前記の送り距離および戻り距離を制御装置に自動的に設定するようにしている。
【0014】
具体的に記載すると、本発明のワイヤソーの加工条件設定方法は、複数のメインローラの間にワイヤを多重に巻き掛け、往復走行状態のワイヤにワークを押し当て、ワークを所定の厚みの多数の板状体に切断し、ウェーハとして産出するワイヤソーにおいて、
入力装置によって複数の加工条件として下記の事項を制御装置に入力し、
・総ワーク長さ〔mm〕
・メインローラの溝ピッチ〔mm〕
・ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/wafer〕
・ワークのフィード移動量〔mm〕
・ワークのフィード速度〔mm/min〕
・往復走行のワイヤのサイクル数〔回/min〕
・ワイヤの加速時間〔sec〕
・ワイヤの減速時間〔sec〕
・ワイヤの停止時間〔sec〕
・ワイヤの最高速度〔mm/min〕
下記の式により、
(1)1スライスに産出されるウェーハ枚数〔wafer〕=総ワーク長さ〔mm〕/溝 ピッチ〔mm〕
(2)1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕=1スライスに産出されるウェーハ枚数〔 wafer〕×ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/枚〕
(3)加工所要時間〔min〕=フィード移動量〔mm〕÷フィード速度〔mm/min 〕
(4)新線供給量〔m/min〕=1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕÷加工所要時 間〔min〕
(5)1サイクルの時間〔sec〕=60/サイクル数〔回/min〕
(6)最高速度の時間〔sec〕=1サイクルの時間〔sec〕−(加速時間〔sec〕 ×2+減速時間〔sec〕×2+停止時間〔sec〕×2)
(7)加速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(加速時間〔sec〕/2)
(8)減速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(減速時間〔sec〕/2)
(9)送り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)+(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
戻り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)−(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
1サイクルでのワイヤの送り距離および戻り距離を演算して求め、入力した前記複数の加工条件および求めた前記の送り距離および戻り距離を制御装置に自動的に設定する、ようにしている(請求項1)。
【0015】
総ワーク長さは、1または2以上のワークの切断方向に対する直交方向の長さの総和から求められる(請求項2)。
【0016】
フィード速度、最高速度は、フィード移動量毎に設定される(請求項3)。
【0017】
ワイヤの速度方向の切り換えは、ワイヤの速度0の停止時間の経過後に設定される(請求項4)。
【0018】
送り距離および戻り距離は、画面上に表示された後、設定の指令にもとづいて設定される(請求項5)。
【0019】
総ワーク長さは、ワイヤソーの機内に設置した測長器の出力データから制御装置の内部に自動的に取り込まれる(請求項6)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る本発明のワイヤソーの加工条件設定方法によると、基本的な加工条件の数値を入力すると、計算式に基づいて基本的な加工条件から1サイクルでのワイヤの送り距離および戻り距離が演算され、入力された加工条件および演算された送り距離、戻り距離が制御装置に自動的に設定されるから、送り距離や戻り距離の机上での計算や画面上での手操作による数値の入力がなくなり、誤計算や誤入力にともなう加工時のワイヤの断線、ウェーハの品質問題が引き起こされず、また、ワーク長さが変わったときにも速やかに対応でき、作業時間が短縮化できる(請求項1)。
【0021】
総ワーク長さによって切断方向に対する直交方向の長さが決定できるから、1個のワークのほかに2以上のワークの切断に対しても、柔軟な対応が可能となる(請求項2)。
【0022】
フィード速度、最高速度がフィード移動量毎に設定できるから、ワークの切断始め時におけるワイヤの不安定に起因する切り始め厚さのばらつき対策、ワークの切り終わり時におけるワーク形状の変化によるスラリーの持ち込み変化や、ワークからワーク支持部材への切断時の負荷変動に起因する切り終わりソーマーク・チッピング対策などに有効に対処できる(請求項3)。
【0023】
速度方向の切り換えが速度0の停止時間の経過後に設定され、目標の指令時間に対して実際の応答動作にずれがあったとしても、応答動作のずれが停止時間中に吸収されるからメインローラなどの機械的な回転系の慣性の影響を回避しながら、ワイヤの安定な往復走行が実現できる(請求項4)。
【0024】
1サイクルでのワイヤの送り距離および戻り距離が画面上に表示した後、設定の指令にもとづいて設定されると、それらの距離の数値データの視認ができ、確認してから数値データの設定が行える(請求項5)。
【0025】
総ワーク長さが測長器の出力データから制御装置の内部に自動的に取り込まれると、入力操作がなくなり、ワーク長さの加算計算もなくなるため、プログラムが簡単化でき、誤動作も少なくなる(請求項6)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、ワイヤソー1の要部の構成を示している。例えば砥粒固定型のワイヤ2は、繰り出しリール3から繰り出され、繰り出し側のトラバース装置4、ダンサローラ装置5を経て、複数例えば3本のメインローラ6に螺旋状として多重に巻き掛けられ、巻き取り側のダンサローラ装置7、トラバース装置8を経て、巻き取りリール9に巻き取られる。
【0028】
トラバース装置4、8は、それぞれ繰り出しリール3または巻き取りリール9の軸線に対してワイヤ2を常に直交させるために設けられており、また、ダンサローラ装置5、7は、図示しないダンサローラの往復運動によってワイヤ2の往復走行を許容しながらワイヤ2に一定の張力を付与するために設けられている。
【0029】
3本のメインローラ6は、例えば逆三角形の頂点位置に配置されており、ワイヤ2は、2本のメインローラ6の間で加工対象のワーク14に対向する範囲において、切断域を形成している。切断域でのワイヤ2の間隔は、メインローラ6の外周面に形成されている溝ピッチによって規制されており、この溝ピッチは、ワーク14を切断した後の板状体すなわちウェーハの厚みを決定する。
【0030】
繰り出しリール3、メインローラ6および巻き取りリール9は、それぞれ専用の繰り出し用のモータ11、メインローラ駆動用のモータ12および巻き取り用のモータ13によって駆動される。これらのモータ11、12、13は、いずれも制御装置10によって制御される。
【0031】
ワーク14は、メインローラ6の間のワイヤ2の切断域に対応する位置において、加工送り用のフィード装置15に固定され、所定のフィード速度のもとにワイヤ2の切断域に押し当てられる。フィード装置15のフィード用のモータ16は、図示しないが、例えば送りねじユニットなどの回転−直線運動変換機構を内蔵しており、制御装置10の制御下におかれ、ワーク14の加工のために、ワイヤ2による切り込み方向のフィード移動量に応じて、ワーク14を所定のフィード速度で加工送り方向に移動させる。フィード移動量は、ワーク14のフィード位置ないし切り込み深さに対応しており、フィード用のモータ16に連結されているエンコーダ17によって検出されるようになっている。
【0032】
制御装置10は、所定のプログラムにもとづいて入出力、記憶、演算機能を有するCPUなどにより構成されており、入力側でエンコーダ17、キーボードなどの入力装置18に接続され、出力側で表示装置19、繰り出し用のモータ11のドライバー22、メインローラ駆動用のモータ12のドライバー23、巻き取り用のモータ13のドライバー24およびフィード用のモータ16のドライバー25にそれぞれ接続され、さらに、各種プログラム格納用のROM20および各種データ記憶用のRAM21に対して双方向通信可能な状態として接続されている。
【0033】
図2は、ワイヤ2の往復走行の状況を示している。切断加工時に、ワイヤ2は、往復走行を繰り返して、往走行と復走行とで1サイクルを構成しており、往走行のときに、1サイクルでのワイヤ2の送り距離だけ前進し、また復走行のときに、1サイクルでのワイヤ2の戻り距離だけ後退する。したがって、1サイクルでのワイヤ2の新線使用量は、1サイクルでのワイヤ2の送り距離と戻り距離との差となり、新線使用量=(送り距離−戻り距離)の式から求められる。
【0034】
図3は、時間軸上で、ワイヤ2の往復走行の1サイクルにおけるワイヤ2の速度変化を示している。時間軸上において、往走行は、+符号で表され、復走行は、−符号で表されている。往走行のときに、ワイヤ2の速度は、加速時間中に、0から最高速度に達し、最高速度の時間にわたって最高速度を維持し、その後の減速時間中に、最高速度から0に達し、所定の停止時間だけ停止する。往走行後の復走行のときに、ワイヤ2の速度は、往走行のときと同様に、加速時間中に、0から最高速度に達し、最高速度の時間にわたって最高速度を維持し、その後の減速時間中に、最高速度から0に達し、所定の停止時間だけ停止する。ワイヤ2の往復走行は、このサイクルを繰り返して進行する。
【0035】
往走行のときの最高速度の時間は、1サイクルにおいてワイヤ2の必要な新線の供給量を発生させるために、復走行のときの最高速度の時間よりも長く設定されている。また、ワイヤ2の速度方向の切り換えは、速度0の停止時間の経過後に設定される。この停止時間は、ワイヤ2の速度方向の目標の切り換え時点に対する実際の切り換え時点のずれ、すなわち速度切り換えの応答動作のずれを停止時間中に吸収するとともに、メインローラ6などの機械的な回転系の慣性の影響を回避し、また、停止時間中にトラバース装置4、8の位置補正を行い、ワイヤの安定な往復走行を実現するために設定される。
【0036】
停止時間は、実際の応答動作のずれに応じて、通常、0.1〔sec〕から1〔sec〕までの範囲で設定される。しかし、応答動作のずれを考慮しなくてもよいときには、0〔sec〕に設定することもできる。停止時間=0〔sec〕の設定は、後述の式(6)において停止時間の項を無くすることと対応している。
【0037】
さて、複数の加工条件の設定に際して、オペレータは、入力装置18を操作して、下記の複数の基本的な加工条件の数値を制御装置10に入力する。
・総ワーク長さ〔mm〕
・メインローラ6の溝ピッチ〔mm〕
・ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/wafer〕
・ワーク14のフィード移動量〔mm〕
・ワーク14のフィード速度〔mm/min〕
・往復走行のワイヤ2のサイクル数〔回/min〕
・ワイヤ2の加速時間〔sec〕
・ワイヤ2の減速時間〔sec〕
・ワイヤ2の停止時間〔sec〕
・ワイヤ2の最高速度〔mm/min〕
【0038】
制御装置10は、上記の基本的な加工条件の数値を入力とし、予め入力されている加工条件設定用のプログラムの計算式から自動的に演算し、ワイヤ2について1サイクルでの送り距離および1サイクルでの戻り距離の数値を求め、求めた数値を加工条件の数値データとして制御装置10の内部に設定する。これらの1サイクルでの送り距離および1サイクルでの戻り距離は、入力された上記の基本的な加工条件から次の計算式によって求められる。
【0039】
1スライス(1回の切断)に産出されるウェーハ枚数〔wafer〕は、入力される総ワーク長さ〔mm〕およびメインローラ6の溝ピッチ〔mm〕から下記の式(1)により求められる。
(1)1スライスに産出されるウェーハ枚数〔wafer〕=総ワーク長さ〔mm〕/溝 ピッチ〔mm〕
【0040】
上記の総ワーク長さ〔mm〕は、1スライスでワーク14として複数、例えば3個のインゴットA、B、Cを同時に切断するときの切断方向に対する直交方向、つまりウェーハの厚み方向における各インゴットサイズ(ワーク長さ)の合計であるが、1個のインゴットを切断するときは、切断方向における1個のインゴットサイズ(ワーク長さ)となる。このため、1個のインゴットのほかに、2または3個のインゴットの切断に対しても柔軟な対応が可能となる。
【0041】
なお、総ワーク長さ〔mm〕は、
図1に例示するように、ワイヤソー1の機内にワーク14の設置位置に対向させて、パルス計数式接触型センサや光学式非接触型センサによる測長器41を設置し、この測長器41の出力データから制御装置10の内部に自動的に取り込むこともできる。測長器41の設置によると、入力操作がなくなり、ワーク長さの加算計算もなくなるため、プログラムが一層、簡単化でき、誤動作も少なくなる。
【0042】
1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕は、上記の式(1)で求めたウェーハ枚数〔wafer〕と入力されるウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/枚〕とから下記の式(2)により求められる。
(2)1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕=1スライスに産出されるウェーハ枚数〔 wafer〕×ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/枚〕
【0043】
1スライスの加工所要時間〔min〕は、加工条件として入力されるワーク14の加工送りのためのフィード移動量〔mm〕およびフィード速度〔mm/min〕から下記の式(3)により求められる。
(3)加工所要時間〔min〕=フィード移動量〔mm〕÷フィード速度〔mm/min 〕
【0044】
1スライスでの新線供給量〔m/min〕は、上記の式(2)で求めた1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕、および式(3)で求めた加工所要時間〔min〕を用いて下記の式(4)により求められる。
(4)新線供給量〔m/min〕=1スライスに使用するワイヤ距離〔m〕÷加工所要時 間〔min〕
【0045】
1サイクルの時間〔sec〕は、加工条件として入力されるサイクル数から下記の式(5)により求められる。
(5)1サイクルの時間〔sec〕=60/サイクル数〔回/min〕
【0046】
最高速度の時間〔sec〕は、式(5)、入力される加速時間〔sec〕、入力される減速時間〔sec〕および入力される停止時間〔sec〕から下記の式(6)により求められる。
(6)最高速度の時間〔sec〕=1サイクルの時間〔sec〕−(加速時間〔sec〕 ×2+減速時間〔sec〕×2+停止時間〔sec〕×2)
【0047】
加速距離〔m〕は、入力されるワイヤ2の最高速度〔m/min〕と加速時間〔sec〕とから下記の式(7)により求められる。
(7)加速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(加速時間〔sec〕/2)
【0048】
減速距離〔m〕は、入力されるワイヤ2の最高速度〔m/min〕と減速時間〔sec〕とから下記の式(8)により求められる。
(8)減速距離〔m〕=最高速度〔m/min〕/60×(減速時間〔sec〕/2)
【0049】
したがって、1サイクルでのワイヤ2の送り距離〔m〕および1サイクルでのワイヤ2の戻り距離〔m〕は、下記の式(9)の2つの計算式から求められる。
(9)送り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)+(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
戻り距離〔m〕=(最高速度の時間〔sec〕×最高速度〔m/min〕/60/ 2)+(加速距離〔m〕+減速距離〔m〕)−(新線供給量〔m/min〕/サイ クル数〔回/min〕/2)
【0050】
次に、
図4および
図5は、加工条件の入力設定プログラムのフローチャートを示しており、
図6および
図7は、それぞれ
図4および
図5のフローチャートに対応する加工条件設定用の入力画面26、27を示している。
【0051】
まず、オペレータは、
図4の入力設定プログラムをスタートさせ、ステップ1で、表示装置19によって
図6の入力画面26を表示し、入力装置18のテンキーを操作して、1個または2以上、例えば1個のインゴットAについてのワーク長さ〔mm〕、ウェーハ1枚当たりに使用するワイヤ量〔m/枚〕およびメインローラ6の溝ピッチ〔mm〕の数値を対応の入力欄28、30、31に入力してから、つぎのステップ2で、入力装置18の機能キーまたは表示装置19の図示しないタッチボタンなどを操作して、入力の完了を指示する。
【0052】
このときに、入力設定プログラムは、ステップ3で入力されたワーク長さ〔mm〕から総ワーク長さ〔mm〕を演算により求め、ステップ4で、表示装置19の総ワーク長さの入力欄29に総ワーク長さ〔mm〕の計算値を表示し、このプログラムを終了する。この例では、1個のインゴットAのワーク長さ〔mm〕がそのまま総ワーク長さ〔mm〕となる。
【0053】
つぎに、オペレータは、
図5の入力設定プログラムをスタートさせ、表示装置19の画面を切り換え、
図7の入力画面27を表示させてから、他の加工条件として、ステップ1で、入力装置18のテンキーを操作して、加速時間〔sec〕、減速時間〔sec〕、停止時間〔sec〕、サイクル数〔回/min〕、フィード移動量〔mm〕、フィード速度〔mm/min〕および最高速度〔mm/min〕を入力欄32、33、34、35、36、37、38に入力してから、ステップ2で、入力装置18の機能キーまたは表示装置19の図示しないタッチボタンなどを操作して入力の完了を指示する。
【0054】
一般に、ワーク14のフィード速度〔mm/min〕およびワイヤ2の最高速度〔mm/min〕は、ワーク14として例えば立方体のインゴットならば、インゴットに対して切断開始前のフィード移動量(フィード位置)〔mm〕、切断開始初期のフィード移動量(フィード位置)〔mm〕、その後の切断中のフィード移動量(フィード位置)〔mm〕および切断終了前のフィード移動量(フィード位置)〔mm〕の4態様毎に設定される。
図7において、フィード移動量(フィード位置)のNo.1からNo.4までの4つの入力欄36、37、38は、これらの複数の入力に備えるために設けられている。したがって、オペレータは、ワーク14の形状や材質(半導体の種類、単結晶インゴット、多結晶インゴット)に応じて、複数のフィード移動量(フィード位置)〔mm〕毎にフィード速度〔mm/min〕および最高速度〔mm/min〕を入力欄37、38に入力することになる。
【0055】
このような複数のフィード移動量(フィード位置)の態様は、ワーク14の切断始め時におけるワイヤ2の不安定に起因する切り始め厚さのばらつき対策、ワーク14の切り終わり時における形状の変化によるスラリーの持ち込み変化や、ワーク14からワーク支持部材(ガラス)への切断時の負荷変動に起因する切り終わりソーマーク・チッピング対策などのために設定される。しかし、上記の対策が必要とされないならば、フィード速度〔mm/min〕および最高速度〔mm/min〕は、ワーク14に対する1つのフィード移動量(フィード位置)〔mm〕についてのみ1つの値として設定することもできる。
【0056】
なお、
図5のステップ1では、送り距離や戻り距離の計算以外に、図示しないが、必要に応じてその他の加工条件として、繰り出しリール3の繰り出し速度、巻き取りリールの巻き取り速度、クーラント温度、クーラント量やワイヤ2のたわみ取り時間などが入力される。
【0057】
ステップ2での入力の完了指示の後に、入力設定プログラムは、次のステップ3で、すべての加工条件の入力?の判断を行い、ここで必要なすべての加工条件が入力されていないと判断され、NOであれば、ステップ1に戻るが、必要なすべての加工条件が入力されていると判断され、YESであれば、次のステップ4で、前記の式(1)から式(9)までの計算式の演算を自動的に行い、演算の結果、求めた1サイクルでのワイヤ2の送り距離および戻り距離の数値データをフィード移動量(フィード位置)に対応させて
入力画面27の表示欄39、40によりで表示し、確認できるようにする。
【0058】
オペレータは、表示欄39、40を見て、1サイクルでのワイヤ2の送り距離および戻り距離の数値データを確認し、つぎのステップ5で、入力装置18の機能キーまたは表示装置19の図示しないタッチボタンなどを操作して、設定の指示を与える。このとき、入力設定プログラムは、
図7の入力画面27の数値データを加工条件の設定データとして制御装置10に自動的に設定して、プログラムを終了する。
【0059】
なお、
図7の入力画面27には、必要に応じて、総ワーク長さ〔mm〕の入力欄29、ワイヤ量〔m/枚〕の入力欄30、メインローラ6の溝ピッチ〔mm〕の入力欄31が表示され、ここでも確認できるようになっている。
【0060】
このように、オペレータは、1サイクルでのワイヤ2の送り距離および戻り距離のほかに、他の加工条件の数値データを画面上で確認してから、それらの加工条件の数値データの設定を行う。したがって、加工条件の数値データの設定過程で、基本的な加工条件から演算によって導き出される送り距離および戻り距離の数値データの入力操作は、必要とされず、その分、ミス入力は、無くなり、正しく設定される。また、総ワーク長さ以外の加工条件が同一ならば、総ワーク長さのみの入力によって、加工条件の入力設定は、直ちに完了する。
【0061】
以上のように、オペレータは、演算結果の数値データを加工条件の設定のために改めて手動入力する必要はなく、手動入力の過程での誤入力を防止できる。このようにして、ワイヤソー1の制御装置10は、複数の加工条件として自動的に設定された多くの数値データによって、モータ11、12、13、16を駆動して、ワーク14を加工条件にしたがって切断できる状態に設定される。
【0062】
上記の例は、2つの入力画面を利用しているが、入力画面は、2つの入力画面を合成した1つの入力画面として構成することもできる。入力設定プログラムも、入力画面ごとに独立するものでなく、1つの連続的なプログラムとすることもできる。また、ワークは、立方体に限らず、円柱体、その他の形状であってもよい。