(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679592
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20150212BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20150212BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
F01N3/18 C
F01N3/08 B
F02M37/00 H
F02M37/00 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-548615(P2012-548615)
(86)(22)【出願日】2011年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2011005674
(87)【国際公開番号】WO2012081152
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-281816(P2010-281816)
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003908
【氏名又は名称】UDトラックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恭功
(72)【発明者】
【氏名】福田 喜代史
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−118500(JP,A)
【文献】
特開2008−274765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サクションチューブと、
前記サクションチューブに設けられる流量計と、
リターンチャネルとデリバリチャネルとを有し、前記リターンチャネルと前記デリバリチャネルとを前記サクションチューブと接続させるポンプと、
前記リターンチャネルに接続するリターンチューブと、
前記サクションチューブと前記デリバリチャネルとの間に設けられる電磁弁と、
前記流量計の流量差によって液体を識別する制御装置と
を備え、
前記電磁弁は、前記液体の流入時には前記デリバリチャネルを閉じ、前記サクションチューブから吸い込まれた前記液体の流量を流量計によって測定し前記液体を前記リターンチャネルを介して前記リターンチューブに戻し、
前記制御装置が前記液体を目的とする液体であることを識別したときに、前記電磁弁を開放して前記デリバリチャネルへも前記液体を供給させる
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
選択触媒還元(SCR)型の排気浄化装置を搭載した自動車に用いられるポンプ装置において、
尿素を貯留する容器と、
前記容器内に配置されるサクションチューブと、
前記サクションチューブに設けられる流量計と、
前記容器の開口部側に位置し、リターンチャネルとデリバリチャネルとを有し、前記リターンチャネルと前記デリバリチャネルとを前記サクションチューブと接続させるポンプと、
前記容器内に配置され、前記リターンチャネルに接続するリターンチューブと、
前記サクションチューブと前記デリバリチャネルとの間に設けられる電磁弁と、
前記流量計の流量差によって尿素を識別する制御装置と
を備え、
前記電磁弁は、前記自動車のエンジン始動時には前記デリバリチャネルを閉じ、前記サクションチューブから吸い込まれた前記尿素の流量を前記流量計によって測定し、前記尿素を前記リターンチャネルを介して前記リターンチューブに戻し、
前記制御装置が前記尿素を目的とする尿素であることを識別したときに、前記電磁弁を開放して前記デリバリチャネルへも前記尿素を供給させる
ことを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポンプ装置において、
前記ポンプは、前記リターンチャネルと前記デリバリチャネルとに同軸上に連結するコンバインファンを配置している
ことを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、選択触媒還元型の排気浄化装置に使用されるポンプ装置に係り、詳しくは、識別機能を備え、低価格化を可能としたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気を後処理により浄化する装置として、排気中の窒素酸化物(NOx)をアンモニアにより低減させる選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)型の排気浄化装置が知られている。
【0003】
この排気浄化装置では、排気通路に窒素酸化物(NOx)の還元触媒が設置されるとともに、この窒素酸化物(NOx)還元触媒の上流に尿素水の供給装置が、下流にアンモニア浄化用の酸化触媒が設置される。供給装置により排気に添加された尿素の加水分解によりアンモニアが生じ、このアンモニアが還元剤として窒素酸化物(NOx)還元触媒に供給される。他方、窒素酸化物(NOx)の還元に寄与せずに窒素酸化物(NOx)還元触媒を通過したアンモニア(スリップアンモニア)は、大気中への放出前にアンモニア浄化触媒により酸化され、浄化される。
【0004】
選択触媒還元(SCR)型の排気浄化装置では、指定した液体を使用する容器では吸込み用ポンプの他、識別センサーと呼ばれるポンプとは別体の装置を必要とした。その装置を用いることによって、使用する液体を管理していた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−337969号公報
【特許文献2】特開2007−263949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の液種識別方法及び液種識別装置及び特許文献2の液体識別装置及び液体識別方法では、吸込み用ポンプの他、識別センサーと呼ばれるポンプとは別体の装置を必要とするため、コストアップが課題となっていた。
【0007】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、識別機能を備え、低価格化を可能としたポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るポンプ装置は、流量計を備えたサクションチューブと、このサクションチューブにリターンチャネルとデリバリチャネルとを接続させるポンプと、リターンチャネルに接続するリターンチューブと、サクションチューブとデリバリチャネルとの間に設けられる電磁弁と、流量計の
流量差によって
液体を識別する制御装置とを備えている。
【0009】
電磁弁は、液体の流入時にはデリバリチャネルを閉じ、サクションチューブから吸い込まれた
液体の流量を流量計によって測定し、
液体をリターンチャネルを介してリターンチューブに戻す。
【0010】
制御装置は、液体を目的とする
液体であることを識別したときに、電磁弁を開放してデリバリチャネルへも
液体を供給させる。
【0011】
本発明の実施形態では、本発明に係るポンプ装置を選択触媒還元(SCR)型の排気浄化装置を搭載した自動車に搭載し、尿素を貯留する容器を備え、電磁弁は、エンジン始動時にはデリバリチャネルを閉じ、サクションチューブから吸い込まれた尿素の流量を流量計によって測定し、尿素をリターンチャネルを介してリターンチューブに戻す。
【0012】
制御装置は、尿素を目的とする尿素であることを識別したときに、電磁弁を開放してデリバリチャネルへも尿素を供給させる。
【0013】
本発明の実施形態では、ポンプは、リターンチャネルとデリバリチャネルとに同軸上に連結するコンバインファンを配置している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポンプの吸い上げる動作の過程に流量計を挟むことによって
液体の識別というプロセスを付加することができ、これによって、従来の別置型の識別センサーが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置を示す一部切り欠き側面図である。
【
図4】
図3に用いるコンバインファンの斜視図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係るポンプ装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0017】
図1乃至
図4は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置1を選択触媒還元(SCR)型の排気浄化装置を搭載した自動車に適用した例を示す。
【0018】
本実施形態に係るポンプ装置1は、尿素を貯留する容器10の開口部11に載置されるポンプモジュール12を有する。
【0019】
ポンプモジュール12には、リターンチューブ27に接続するリターンチャネル14と、マフラーへの供給管26に接続されるデリバリチャネル15と、リターンチャネル14内に配置される第一ファン17と、デリバリチャネル15内に第一ファン17と同軸上に配置される第二ファン18と、第一ファン17及び第二ファン18を回転させるモータ16とを有するポンプ13が設けられている。
【0020】
第一ファン17及び第二ファン18は、
図4に示すように、コンバインファンによって構成されている。ここで、ポンプ13にコンバインファンを採用した主たる理由は、流量測定にはある程度の流速が必要であるが、SCR装置としての尿素使用量が少ないことによる各系統の大幅な流量差を一つの駆動機(モータ)で賄うためである。
【0021】
リターンチャネル14とデリバリチャネル15とは、容器10内に配置されるサクションチューブ20の端部に設けた下流側に拡大するように形成された二股形状の接続管21の管路21a,21bにそれぞれ並行して接続されている。
【0022】
デリバリチャネル15は、二股形状の接続管21の一方の管路21bとの境界部に電磁弁25を設けている。電磁弁25は、後述する制御装置24によって開閉が制御されている。
【0023】
サクションチューブ20には、流量計22が配置されている。
【0024】
流量計22は、制御装置(CPU)24に連絡し、流量差によりサクションチューブ20内を流れる
液体が尿素であるか否かの識別を行うように構成されている。
【0025】
ここで、本実施形態における流速測定方法について説明する。
【0026】
本実施形態では、制御装置24は、単位時間(ポンプ能力により異なるが、10秒〜1分程度)あたりの流量とリターンチューブ27の管路断面積より流速を算出する。
【0027】
電磁流量計を採用する場合は、非導電性の液体を混入した段階で流量測定が不可なので、空判断もしくはNG判断ができる(尿素の導電率は石油や水のそれとは異なる)。
【0028】
次に、本実施形態におけるポンプ13と電磁弁25との関係について説明する。
【0029】
本実施形態では、SCRシステムが始動されると、制御装置24が電磁弁25を閉じ、ポンプ13では、サクションチューブ20で吸い込んだ尿素をリターンチャネル14からリターンチューブ27のみへ流している。流量計22によって計測される流速から制御装置24がプリセットされたデータと合致したことを判断すると、制御装置24は電磁弁25を開いてリターンチューブ27とマフラーへの供給管26との両方へと流れる仕組みとなっている。
【0030】
リターンチャネル14には、容器10内に配置されるリターンチューブ27が接続されている。
【0031】
容器10には、液面レベルゲージ28が設けられている。
【0032】
次に、本実施形態に係るポンプ装置1の作用を説明する。
【0033】
先ず、本実施形態に係るポンプ装置1が適用される選択触媒還元(SCR)型の排気浄化装置を搭載した自動車のエンジン(ACC)が始動すると、制御装置24が電磁弁25を閉じた状態(100%リターン)で、ポンプ13のモータ16を例えば20secから30secほど駆動させ、流量計22にて流速を計測する(駆動時間:サンプリング時間については、ポンプの性能、使用する流量計の精度に依存するので参考値とする)。
【0034】
制御装置24は、その計測値がプリセットされた値に合致したと判断すると、SCRシステムが使用できる状態となる。システムがREADY後にマフラーへの供給管26内へ尿素を噴射せよという信号を受けた後(この制御は従前通りとする)、制御装置24が電磁弁25を開き全流量の数%がマフラーへの供給管26側へと供給される。
【0035】
この段階でも流量計25を通じて液体は常に制御装置24によって監視されており、エンジン始動後に不正液体を混入させた場合はただちに制御装置24が電磁弁2を閉じ、再計測、液体判断作業を行う。それでもNGの場合は異常信号をメーターへと発信する。なお、ポンプ13の出力は制御装置24によってコントロールされている。
【0036】
次に、本実施形態において、尿素噴射時も必ずリターン側への流水する構造とする理由について説明する。
【0037】
常に流量計22による流量に基づいて制御装置24は水溶液を監視すること、エンジン始動後に意図的に規定外液体(軽油やオイル)を混入させた際に電磁弁25を閉じ、事故防止を図ること、通常の尿素使用レベルでは充分な流速が得られないので、リターンチューブ27側へ戻すことによって検知に必要な流量が得られることが挙げられる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、ポンプ13より吸い上げられた液体は流量計25を通過する時に計測された流速が液体の密度によって異なるが、測定された流速が制御装置24内に予めセットされた流速と異なると電磁弁25を通じ、リターンチューブ27へと戻される。これを何度か繰り返し、初期設定流速が得られないと異常(指定外液体充填)と判断し、異常信号を出力する。
【0039】
尿素(比重:1.1)を正規液体とセットした場合、軽油(比重:0.8)を吸込むと流速が速くなる。その流速差を制御装置24で検知して、リターンチューブ27側へと切り替える。これによって、アトマイザー側へ不正
液体の分配を阻止することができる。
【0040】
本実施形態において、尿素の総供給量は、例えば、管路の断面積とモータの回転数、バルブのON−OFFで算出される。 例えば、アトマイザー側へ供給されてもリターンされる分があるので、単純には加算されないが、本実施形態では、流量(又はモータ回転数)+電磁弁の開閉時間(アトマイザー側へ供給された尿素の何%がリターンかは設計値で設定可能と考えます)で実供給量をデータとして出すことが可能である。
【0041】
なお、上記実施形態では、尿素SCR装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、酪農分野での適用が考えられる。
【0042】
図5は、流量計22Aから得た情報によって乳脂肪分を判別する例を示す。
【0043】
この装置では、それで電磁弁25A,25Bの開閉制御することによって乳脂肪分別にパック詰めが可能となる。
【0044】
この装置により、原料をランダムに殺菌装置へ投入しても、パック詰めの段階で乳脂肪分別に階級分けができる。
【0045】
また、本発明は、例えば、油水分離装置、廃液蓄積タンクなど、2種以上の混合液体を分離処理する際に応用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ポンプ装置
10 容器
13 ポンプ
14 リターンチャネル
15 デリバリチャネル
16 モータ
20 サクションチューブ
22 流量計
23 モータ
24 制御装置
25 電磁弁
26 マフラーへの供給管
27 リターンチューブ