特許第5679599号(P5679599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679599自己案内式キースイッチ及びそれを備えたキーボード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679599
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】自己案内式キースイッチ及びそれを備えたキーボード
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/14 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
   H01H13/14 A
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-166000(P2013-166000)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-154549(P2014-154549A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2013年8月9日
(31)【優先権主張番号】201310050820.7
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513203026
【氏名又は名称】蘇州達方電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】DARFON ELECTRONICS (SUZHOU) CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】512061711
【氏名又は名称】達方電子股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DARFON ELECTRONICS CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】陳飛雅
(72)【発明者】
【氏名】高黄暁
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−113765(JP,A)
【文献】 特開2007−173087(JP,A)
【文献】 特開平08−235961(JP,A)
【文献】 特開平10−040771(JP,A)
【文献】 特開2011−233406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーキャップと、該キーキャップの下に配置されるベースと、フレームと、案内機構とを含むキースイッチであって、
該フレームは、該キーキャップを収納する収容スペースを有し、該収容スペースはX軸に沿って延伸する外縁、Y軸に沿って延伸する外縁及びZ軸に沿って延伸する外縁を有し、該X軸と該Y軸と該Z軸のうち任意2つ軸は互いに垂直し、
該案内機構は、複数の案内溝と複数の摺動部材を含み、該複数の案内溝は該ベースの上表面に設けられ、該複数の摺動部材は該キーキャップの下表面から下へ向かって突出されており、該キーキャップが押し下げられる時、該キーキャップが該X軸と該Y軸の所在の平面に平行するように維持し、かつ移動経路に沿って移動するように該キーキャップを案内するように構成され、
該移動経路は、該X軸に沿う第1の変位と、該Y軸に沿う第2の変位と、該Z軸に沿う第3の変位とを与えるように構成されることを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
キーキャップと、該キーキャップの下に配置されるベースと、フレームと、案内機構とを含むキースイッチであって、
該フレームは、該キーキャップを収納する収容スペースを有し、該収容スペースは、X軸に沿って延伸する外縁、Y軸に沿って延伸する外縁及びZ軸に沿って延伸する外縁を有し、該X軸と該Y軸と該Z軸のうち任意2つ軸は互いに垂直し、
該案内機構は、複数の案内溝と複数の摺動部材を含み、該複数の案内溝は該キーキャップの下表面に設けられ、該複数の摺動部材は該ベースの上表面から上へ向かって突出されており、該キーキャップが押し下げられる時、該キーキャップが該X軸と該Y軸の所在の平面に平行するように維持し、かつ移動経路に沿って移動するように該キーキャップを案内するように構成され、
該移動経路は、該X軸に沿う第1の変位と、該Y軸に沿う第2の変位と、該Z軸に沿う第3の変位とを与えるように構成されることを特徴とするキースイッチ。
【請求項3】
該キーキャップは、基準点を有し、該キーキャップが該移動経路に沿って案内される時、該キーキャップは、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、該キーキャップが該第1の位置にある時、該基準点は座標(x1、y1、z1)に位置し、該キーキャップが該第2の位置にある時、該基準点は座標(x2、y2、z2)に位置し、
x1は、x2と異なり、y1はy2と異なり、かつz1はz2と異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキースイッチ。
【請求項4】
該移動経路は始点と終点とを有し、かつ該移動経路は該始点と該終点との間で伸びる直線であり、該始点から該終点へのベクトルは該座標(x1、y1、z1)から該座標(x2、y2、z2)へのベクトルに平行することを特徴とする請求項3に記載のキースイッチ。
【請求項5】
該移動経路は始点と終点とを有し、かつ該移動経路は該始点と該終点との間で伸びる曲線であることを特徴とする請求項3に記載のキースイッチ。
【請求項6】
該複数の案内溝の傾斜度は実質的に同じであり、これによって該キーキャップが下方へ移動する時に該複数の摺動部材はいつも実質的に同じ高さに位置され、かつ該キーキャップが該X軸と該Y軸の所在の平面に平行するように維持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキースイッチ。
【請求項7】
前記複数の案内溝は、少なくとも4つで、前記複数の摺動部材は、少なくとも4つで、4つの前記摺動部材が4つの前記案内溝内で摺動されるとき、4つの前記摺動部材は実質的に同じ高さに位置することを特徴とする請求項6に記載のキースイッチ
【請求項8】
複数の摺動部材が該複数の案内溝内で移動する時に該複数の摺動部材が該移動経路のみに沿って移動可能なように該複数の案内溝の寸法を該複数の摺動部材に適合させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキースイッチ。
【請求項9】
該キーキャップの該X軸上の寸法は、該収容スペースの該X軸上の寸法より小さく、かつ該キーキャップの該Y軸上の寸法は、該収容スペースの該Y軸上の寸法より小さく、
該案内機構は、外力が該Z軸に沿って該キーキャップに及ぼされる時に該収容スペースで該X軸とY軸の両方に沿って該キーキャップを移動させるように構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキースイッチ。
【請求項10】
ベースと、キーキャップと、案内機構とを含むキースイッチであって、
該キーキャップは、該ベースの上に配置され、該ベースに対し第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、
該案内機構は、少なくとも1つの案内溝と少なくとも1つの突起部とを含み、該突起部は、該案内溝に面する弧形側面を有し、
該キーキャップが押し下げられる時、該キーキャップは、該案内機構によって該第1の位置から該第2の位置へ移動し、かつ該突起部の該弧形側面と該案内溝は互いに線接触を維持し、
該キーキャップが押し下げられる時、該突起部と該案内溝の間の該線接触は、弧線であることを特徴とするキースイッチ。
【請求項11】
ベースと、キーキャップと、案内機構とを含むキースイッチであって、
該キーキャップは、該ベースの上に配置され、該ベースに対し第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、
該案内機構は、複数の案内溝と複数の突起部からなり、該複数の案内溝は該ベースの上表面に形成され、該複数の突起部は該キーキャップの下表面から下へ向かって突出し、各突起部は上から下へ対応する案内溝内に挿入され、各案内溝は弧形側面と突起部の底面を有し、
該キーキャップが押し下げられる時、該キーキャップは、該案内機構によって該第1の位置から該第2の位置へ移動し、かつ該突起部の該弧形側面と該案内溝は互いに線接触を維持することを特徴とするキースイッチ。
【請求項12】
ベースと、キーキャップと、案内機構とを含むキースイッチであって、
該キーキャップは、該ベースの上に配置され、該ベースに対し第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、
該案内機構は、複数の案内溝と複数の突起部からなり、該複数の案内溝は該キーキャップの下表面に形成され、該複数の突起部は該ベースの上表面から上へ向かって突出し、各突起部は下から上へ対応する案内溝内に挿入され、各突起部は弧形側面と突起部の頂部を有し、
該キーキャップが押し下げられる時、該キーキャップは、該案内機構によって該第1の位置から該第2の位置へ移動し、かつ該突起部の該弧形側面と該案内溝は互いに線接触を維持することを特徴とするキースイッチ。
【請求項13】
該弧形側面は、球面からカットされた部分であることを特徴とする請求項10に記載のキースイッチ。
【請求項14】
回復装置と、フレームとをさらに含み、
該回復装置は、外力が解除される時に該キーキャップを該第2の位置から該第1の位置へ戻し、
該フレームは、該キーキャップの周りに配置され、
該回復装置は、該キーキャップに配置される第1の磁性部材と該フレームに配置されかつ該第1の磁性部材に連結する第2の磁性部材とを含むことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のキースイッチ。
【請求項15】
制限機構とフレームとをさらに含み、
該フレームは、収容スペースを有し、
該キーキャップは、該収容スペース内に置かれ、かつ該制限機構は該キーキャップを該収容スペース内に拘束するように構成され、
該制限機構は、少なくとも1つの突出部と少なくとも1つの凹部とを含み、
該突出部は、該キーキャップの隅部に配置され、
該凹部は、該フレームに配置され、かつ該突出部に連結されることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のキースイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キースイッチに関し、特に自己案内式キースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンピュータキーボードは複数のキースイッチで構成されている。各々のキースイッチは、使用者の押し操作に応じて真っすぐに下へ移動し、次に、真っすぐに上へ戻る。小型化のため、キーボードの全体の厚さを薄くすることが望まれる。このため、キーストロークの移動距離は制限される。しかしながら、所定レベル以上に厚さを減らすと、移動距離は例えば2mmから1mmになるため、キーを打つ時の使用者の押圧感覚に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、キースイッチのキーキャップの移動を案内する案内機構を有するキースイッチを提供する。上記キースイッチは、使用者が満足するような押圧感覚を維持しながら、先行技術に比べて薄い厚さを有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、キーキャップと、上記キーキャップの下に配置されるベースと、上記キーキャップを収納する収容スペースを有するフレームと、上記キーキャップと上記ベースとの間に配置される案内機構とを含むキースイッチを提供する。上記収容スペースはX軸、Y軸及びZ軸によって定義され、かつ上記X軸と上記Y軸と上記Z軸のうち任意2軸は互いに垂直する。上記案内機構は、上記キーキャップが押し下げられ下方へ動く時、上記キーキャップが実質的に水平な配向で上記X軸と上記Y軸とによって定義される平面に平行されるように維持し、かつ移動経路に沿って移動するように上記キーキャップを案内するように構成される。上記移動経路は、上記X軸に沿う第1の変位と、上記Y軸に沿う第2の変位と、上記Z軸に沿う第3の変位とを与えるように構成される。
【0005】
また、本発明は、ベースと、ベースの上に配置されるキーキャップと、案内機構とを含むキースイッチを提供する。上記キーキャップは、上記ベースに対して第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。案内機構は、少なくとも1つの案内溝と少なくとも1つの突起部とを含む。上記突起部は、上記案内溝に面する弧形側面を有する。外力が及ぼされる時に、上記キーキャップは、上記案内機構によって上記第1の位置から上記第2の位置へ移動し、かつ上記突起部の上記弧形側面と上記案内溝は互いに線接触を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、本発明の実施例に係るキースイッチを概略的に示す分解上面図である。
図1B図1Bは、図1Aに示すキースイッチであって、一部の部品を省略したものを概略的に示す分解底面図である。
図1C図1Cは、図1Aに示すキースイッチにおける案内溝を含む案内機構を概略的に示す部分拡大図である。
図2A図2Aは、本発明の実施例に係るキースイッチを概略的に示す透視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示すキースイッチの元の状態を概略的に示す上面図である。
図2C図2Cは、図2Aに示すキースイッチの押された状態を概略的に示す上面図である。
図3A図3Aは、本発明の実施例に係るキースイッチの元の状態を概略的に示す断面図である。
図3B図3Bは、図3Aに示すキースイッチの押された状態を概略的に示す断面図である。
図4A図4Aは、本発明の実施例に係るキーボードの一部を示す上面概略図である。
図4B図4Bは、本発明の他の実施例に係るキーボードの一部を示す上面概略図である。
図5A図5Aは、本発明の他の実施例に係るキースイッチの案内機構を概略的に示す分解上面図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す案内機構を概略的に示す分解底面図である。
図5C図5Cは、図5Aに示すキースイッチの元の状態を概略的に示す断面図である。
図5D図5Dは、図5Aに示すキースイッチの押された状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の実施例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。留意すべきことは、以下の本発明に係る好適な実施例は、解説及び説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0008】
以下、図1Aから図1Cを参照しながら、本発明の第1の実施例を説明する。図1A及び図1Bは、それぞれ分解されたキースイッチ100を概略的に示す上方から見た斜視図及び下方から見た斜視図である。図1Aに示すキースイッチ100は、キーキャップ110と、ベース120と、フレーム130と、案内機構140と、回復装置150と、スイッチ装置170と、底板175とを含む。一方、図1Bは、キースイッチ100の一部を示す図であって、キーキャップ110と、ベース120と、フレーム130のみを示す。キーキャップ110は、フレーム130の収容スペースSに移動可能に収容される。キーキャップ110は、さらにベース120の上に配置される。案内機構140は、キーキャップ110とベース120との間に配置され、使用者のキーキャップ110への押し操作に応じて、キーキャップ110がフレーム130とベース120に対して移動するようにキーキャップ110を案内する。回復装置150は、キーキャップ110とフレーム130との間に配置され、押されたキーキャップ110を最初の位置へ戻す。本実施例のベース120は中空構造であり、スイッチ装置170は、ベース120の下に配置され、かつキーキャップ110が案内され移動すると、信号を生成し関連回路へ送信するように動作される。底板175は、支持物として、上述した部品の下に配置される。
【0009】
本実施例において、案内機構140は、4つの摺動部材141と4つの案内溝142とを含む。上記4つの摺動部材141は、それぞれキーキャップ110の4つの隅部の周りに配置される。上記4つの案内溝142は、それぞれベース120の4つの隅部の周りに配置され、かつ上記4つの摺動部材141に連結される。留意しておいて欲しいのは、摺動部材141と案内溝142との組の数は、4つに限定されないということである。それは単なる例であり、実際の設計に合わせて4つ以上又は以下にすることができる。本実施例において、それぞれの摺動部材141は、少なくとも1つの弧形突起部を有する。例えば、摺動部材141は、実質的に球形であってよい。案内溝142は、同じ傾斜度を有し、好ましくは、類似した又は実質的に同じ勾配分布を有する。キーキャップ110は、使用者によって押し下げられ下方へ動く時、摺動部材141が対応する案内溝142に沿って下方へ摺動する。これによって、キーキャップ110は、平行かつ安定にベース120に向かって斜めに移動する。言い換えれば、キーキャップ110は、実質的に水平な配向でX軸とY軸によって定義される平面に平行するように維持される。キーキャップ110が下方へ移動する時、複数の摺動部材141はいつも実質的に同じ高さに位置される。回復装置150は、キーキャップ110に配置される第1の磁性部材151と、対応する位置にフレーム130に配置される第2の磁性部材152とを含む。第1の磁性部材151と第2の磁性部材152は、常に互いに引き付け合うように形成される。例えば、両部材は異なる極性を持つ2つの磁石であってもよい。代わりに、一方は強磁性体であり、もう一方は磁石であってもよい。
【0010】
1つの実施例によれば、キースイッチ100は、ベース120の下に配置されるバックライトモジュール(未図示)をさらに含むことができる。キーキャップ110に透明な領域を設けることにより、バックライトモジュールから放出される光は、キーキャップ110を貫通するため、キースイッチ100が点灯し使用者の操作を円滑にすることができる。
【0011】
図1A及び図1Bを参照すると、本実施例において、キーキャップ110の摺動部材141は、凸面の弧形側面を有し、かつ案内溝142は、凹面の弧形側面を有する。案内溝142の曲率半径は、好ましくは対応する摺動部材141の曲率半径に等しいか又はそれより大きい。これにより、摺動部材141は案内溝142にスムーズに収容される。図1Cは案内溝142の構造を概略的に示す図である。キーキャップ110が使用者によって押し下げられ下方へ動く時、摺動部材141は、移動経路N1に沿って案内溝142内でスムーズに移動する。案内溝142はベース120の隣辺に対し角度を成すように斜め下方へ伸びるため、移動経路N1に沿う移動は、同時にX、Y及びZ軸の変位が関与することは明白である。
【0012】
図1Cに示すように、もし案内溝142の曲率半径は球形の摺動部材141の曲率半径に等しい場合、案内溝142と摺動部材141は、弧形接触線Tで互いに接触する。接触線Tの最大の長さは、球形の摺動部材141の円周の半分である。摺動部材141が案内溝142内で摺動すると、接触線はそれに伴って移動し、例えば、ある時点で他の接触線TN+1へ移動する。接触線T及びTN+1は、互いにベース120の底部に対し実質的に平行する。言い換えれば、摺動部材141と案内溝142は、経路N1においてずっと互いに線接触を維持する。
【0013】
一方、もし案内溝142の曲率半径は摺動部材141の曲率半径より大きい場合でも、案内溝142は、摺動部材141と弧形接触線で接触する。しかし、接触線T及びTN+1の長さは、曲率半径が等しい場合の長さより短い。例えば、摺動部材141と案内溝142とは、接触線の長さが球形の摺動部材141の円周の4分の1又はそれ以下であるか、或いはただ互いに点接触する。摺動部材141と案内溝142との線接触が短いほど、両者間の摩擦は小さくなることが分かる。したがって、案内安定性と円滑な移動性との間の良いバランスが設計の課題の1つである。
【0014】
案内溝142の曲率半径が摺動部材141の曲率半径に等しい場合を例とする。キーキャップ110の移動距離は、摺動部材141が経路N1に沿って案内溝142内で移動する距離に実質的に等しい。キーキャップ110の経路N1に沿う移動は、X軸方向で0.7mmの変位、Y軸方向で0.4mmの変位、及びZ軸方向で0.7mmの変位をもたらすと仮定すれば、約1.1mm(((0.4)+(0.7)+(0.7)1/2=1.06)の移動距離が得られる。これを従来技術におけるZ軸方向での0.7mm移動と比べるとかなり大きい。その結果、使用者の押圧感覚が良くなる上、従来のキースイッチと比べてキースイッチの厚さを減らすことができる。
【0015】
本実施例において、摺動部材141の移動経路は、参照記号N1で示されるように、直線的である。代わりに、案内溝142の外形又は構造を例えば曲線に変えることにより、摺動部材141の移動経路N1を長くすることで押圧感覚をさらに増進することができる。
【0016】
以下に、本発明に係る案内機構によるキースイッチのキーキャップの移動を説明する。図2A図2Cは、キースイッチの組立の実施例を概略的に示す図である。キースイッチの構造は、図1A図1Cに示すものと同一であるか、又は図示のような移動を実現するのにふさわしい他の任意の構造である。本実施例において、図1A図1Cに示すキースイッチ100を例とする。図2Bは、キースイッチがまだ押されていない元の状態を示し、図2Cは、キースイッチが押し下げられた状態を示す。図2B及び図2Cに示すように、フレーム130におけるキーキャップ110を収納するための収容スペースは、X軸とY軸との両方でキーキャップ110の寸法より大きい。例えば、フレーム130は、X軸上の第1の寸法とY軸上の第2の寸法とを有する。キーキャップ110は、X軸上の第1の寸法と、Y軸上の第2の寸法とを有する。フレーム130の第1の寸法は、キーキャップ110の第1の寸法より大きく、またフレーム130の第2の寸法は、キーキャップ110の第2の寸法より大きい。これによって、キーキャップ110は、収容スペース内でX軸とY軸との両方に沿って移動可能である。図2Bに示すように、キーキャップ110がまだ使用者によって押されていない時、キーキャップ110は、第1の位置にあり、そこでキーキャップ110は、フレーム130に対して最も高い高さに位置され、かつキーキャップ110の隅部A1は、フレーム130の隅部B1に近い。図2Cに示すように、キーキャップ110が使用者によって押し下げられた後、キーキャップ110は、案内機構によって第2の位置へ移動し、そこでキーキャップ110は、フレーム130に対して最も低い高さに位置され、かつキーキャップ110の反対側の隅部A2は、フレーム130の反対側の隅部B2に近い。キーキャップ110の隅部A2を基準点とし、キーキャップ110が第1の位置にある時、基準点の座標は(x1、y1、z1)であり、キーキャップ110が第2の位置にある時、座標は(x2、y2、z2)であると仮定する。座標(x1、y1、z1)から座標(x2、y2、z2)への跡をN2で示す。摺動部材141とキーキャップ110は同じ移動経路を有するため、同じ変位を有する。言い換えれば、摺動部材141の移動経路N1は直線である場合、移動経路N1の始点から終点へのベクトルはN2に平行する(基準点は座標(x1、y1、z1)から座標(x2、y2、z2)へ移動)。経路N1は曲線である場合、移動経路N1の始点から終点への変位は、N2の長さに等しい(基準点は座標(x1、y1、z1)から座標(x2、y2、z2)へ移動)。
【0017】
図3Aは、本発明の実施例に係るキースイッチの元の状態を示す断面図である。図3Bは、図3Aに示すキースイッチの押された状態を示す断面図である。図2A、2B、3A及び3Bを参照すると、第1の磁性部材151は、キーキャップ110に配置され、第2の磁性部材152は、フレーム130に配置される。キースイッチ100が元の状態にある時、回復装置150は、キーキャップ110をフレーム130へ付着させ、かつキーキャップ110を第1の位置に維持する(図3A及び図2Bを参照)。キースイッチ100が押し下げられると、キーキャップ110は案内機構140によって第2の位置へ移動する(図3B及び図2Cを参照)。移動過程において、摺動部材141と案内溝142とは互いに線接触が保たれる。上記断面図に示すように、摺動部材141の弧形側面と案内溝142とは、一点のみで接触する。キーキャップ110に及ぼされる外力が解除されると、回復装置150からの引力は、キーキャップ110を第1の位置へ戻す(図3A及び図2Bを参照)。
【0018】
図3A及び図3Bを参照すると、キースイッチ100は、制限機構160をさらに含む。制限機構160は、複数の突出部161と複数の凹部162とを含む。突出部161は、キーキャップ110の周りに位置され、かつキーキャップ110の端から外向きに伸びる。凹部162は、突出部161に対応するように、フレーム130に位置される。それぞれの凹部162の寸法は、対応する突出部161の寸法より大きい。キーキャップ110はベース120に対し第1の位置(図3Aを参照)にあるか又は第2の位置(図3Bを参照)にあるかに関係なく、突出部161は、対応する凹部162に留まる。これにより、キーキャップ110をフレーム内に拘束し、キーキャップ110がフレーム130から外れることを回避する。
【0019】
本実施例において、図1Aに示すように、回復装置150は、キーキャップ110の幾何学的中心を横断する水平線Mの近くに配置される。制限機構160の突出部161は、キーキャップ110の2つの隅部に配置される。図4Aに示すように、例えば、キーボードとして機能するように、複数のキースイッチ100を密に配列する必要がある場合、2つのキースイッチの間で伸びるフレーム130の縦の共有部分の異なる位置に、左側にあるキースイッチの2つの制限機構160と右側にあるとキースイッチの回復装置150が配置される。さらに具体的に説明すると、右側にあるキースイッチの回復装置150は、左側にあるキースイッチの制限機構160の2つの凹部162の間に位置される。フレーム130は、より経済的に使用され、これによって2つのキースイッチの間の距離Dは小さくなる。留意しておいて欲しいのは、本発明に係る突出部の位置及び数は限定されないということである。他の実施例において、図4Bに示すように、もしフレーム130の共有部分のスペースが十分であり、かつ2つのキースイッチの間の距離Dが大きければ、突出部の位置及び数は、実際の需要に応じて調整することができる。例えば、回復装置150(第1の磁性部材151と第2の磁性部材152を含む)及び制限機構160(突出部161と凹部162を含む)は、両方ともキーキャップ110の幾何学的中心を横断する水平線Mに沿って配置されてよい。
【0020】
図3A及び図3Bに示すように、スイッチ装置170は、ベース120の下に配置される。摺動部材141は、球体からカットされた部分であり、これにより、キースイッチ100の高さはさらに減らされることができる。摺動部材141が少なくとも弧形側面の一部を有する限り、摺動部材141はスムーズに案内溝142を摺動することができる。摺動部材141は、その底面にバンプ111を有する。図3Bに示すように、キーキャップ110が第2の位置へ移動する時、バンプ111によってスイッチ装置170が押され、信号が送信される。本実施例において、キーキャップ110の4つの隅部にある摺動部材141に配置されるバンプ111以外に、キーキャップ110の下面の中心に、他のスイッチ装置170を押すために、大きいバンプ112が配置される。その結果、図1Aに示すように、キースイッチ100は、接触点として、バンプ111及び112に対応する5つのスイッチ装置170を有する。それぞれのスイッチ装置170は、対応するバンプによって個別に動作される。もしキーキャップ110に及ぼされる力はすべてのスイッチ装置170を押すのに一様でない場合、1つだけでもスイッチが動作されれば、キースイッチ100を表す電子信号は発信される。
【0021】
図5Aは、本発明の第2の実施例に係るキースイッチの案内機構を概略的に示す分解上面図である。図5Bは、図5Aに示す案内機構を概略的に示す分解底面図である。図5Cは、図5Aに示すキースイッチの元の状態を概略的に示す断面図であり、また、図5Dは、図5Aに示すキースイッチの押された状態を概略的に示す断面図である。図5A図5Dを参照すると、本実施例に係るキースイッチ200と第1の実施例に係るキースイッチ100との間の相違点は、案内機構240の案内溝242がキーキャップ210に配置され、かつ摺動部材241がベース220に配置されることにある。他の部品の構造及び機能は、第1の実施例のものと同じであるため、以下に繰り返して説明しない。本実施例において、摺動部材241は、例えば、ベース220から取り外し可能な鋼球である。キーキャップ、摺動部材及びベースは、個別に製造された部品である。ベース220の下面には、複数の凹部221が対応して形成される。その結果、摺動部材241は、案内溝242に対し転がるため、両者間の摩擦はさらに小さくなる。
【0022】
さらに、図5C図5Dに示すように、複数のバンプ211は4つの案内溝242に隣接して配置され、またバンプ212はキーキャップ210の下面の中心に配置される。図1Aに示すスイッチ装置170に類似したように、キースイッチ200は、それぞれ個別に動作可能な5つのスイッチ装置270を有する。その結果、キースイッチ200は、接触点として、対応するバンプ211、212と接触する5つのスイッチ装置270を有する。
【0023】
以上、好適な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されない。本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨と範囲内に含まれる様々な変形や類似した配置を包含することを意図するものである。そして、特許請求の範囲は、そのような変形や類似した配置を全て網羅するために最も広い解釈が認められるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D