特許第5679615号(P5679615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679615茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5679615
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
   A23F3/16
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-165328(P2014-165328)
(22)【出願日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(72)【発明者】
【氏名】坂田 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】笹目 正巳
(72)【発明者】
【氏名】村山 和人
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5534272(JP,B2)
【文献】 特開2014−068635(JP,A)
【文献】 特開2006−115788(JP,A)
【文献】 特開2008−178396(JP,A)
【文献】 特開2008−306980(JP,A)
【文献】 特許第5452748(JP,B2)
【文献】 特開2014−068629(JP,A)
【文献】 カテキンを増量した緑茶飲料,静岡県環境衛生科学研究所 商品テスト情報 [retrieved on 2014-09-18,2005年,No.16,<http://www6.shizuokanet.ne.jp/eikanctr/test/test119.htm>
【文献】 奈良農技セ研報,2003年,Vol.34,pp.66-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00 − 5/50
A23L 2/00 − 2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
CAplus/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0であって、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0であることを特徴とする容器詰緑茶飲料。
【請求項2】
飲料液中に含まれる水不溶性の浮遊性物質のうち、沈降性粒子(SSS)の含有量(mg/L)が1.0〜60.0であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項3】
前記酸性アミノ酸の含有量がアスパラギン酸とグルタミン酸の合計含有量であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項4】
前記ガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)が10.0〜60.0であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項5】
飲用液中の水不溶性粒子の平均粒子径(μm)が3.0〜24.0であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項6】
前記酸性アミノ酸含有量合計(mg/100ml)が1.0〜9.0未満であることが特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項7】
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性の側鎖を有するアミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0となるように調整され、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0となるように調整されることを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項8】
飲料液中に含まれる水不溶性の浮遊性物質のうち、沈降性粒子(SSS)の含有量(mg/L)が1.0〜60.0となるように調整されることを特徴とする請求項6に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項9】
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性の側鎖を有するアミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0となるように調整され、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0となるように調整されることを特徴とする容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰緑茶飲料及びその製造方法であって、特に冷温領域から常温領域において飲用する場合において弱くなりがちな、高級緑茶のような甘味を十分に感じることが可能であると共に、甘味とバランスの取れた適度な渋味を感じられることで、飲み応えのある濃度感を味わえ、喉越しも良く、良好な味の余韻を愉しめる容器詰緑茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶の飲用形態としては、従来は急須で淹れて熱い状態で少しずつ飲用する形態が中心であり、一部、冷水で長時間かけて抽出したものを飲用する場合もあったものの、手間と時間がかかり一般的な方法とは言えなかった。
近年は、このような形態に代わって、緑茶の抽出液を容器詰の形態として、いつでもすぐに飲用できる形態、所謂RTD(Ready to Drink)形態の容器詰緑茶飲料が広く普及している。
【0003】
前記容器詰緑茶飲料は、止渇飲料として飲用されるシーンが多かったが、容器の強化、改良等を通じて、加温販売にも対応できるようになり、ホット飲料としても利用される等、消費者ニーズに従って多様に進化を続けている。
また、冷温〜常温領域で飲用する場合であっても、従来のように止渇飲料として水代わりに多量に飲用するのではなく、仕事や読書等の合間に少しずつ飲用する形態、所謂「ちびだら飲み」といわれる形態で飲用されるシーンも増えてきている。
更に近年では、容器詰緑茶飲料に対しても緑茶本来の香りや味を愉しみたいという、本来のお茶好きの嗜好も満たすことできる高い品質が要求されてきており、例えば、小容量であっても高級茶のような甘い香味を味わうことができるといったコンセプトの容器詰緑茶飲料へのニーズが高まってきている。
【0004】
容器詰緑茶飲料を止渇飲料として飲用する場合は、苦味や渋味が強すぎることなく飲み易いことが優先される。
このため、ホット領域で飲用する容器詰緑茶飲料と比較して濃度は薄く、緑茶特有の甘い香味も弱く感じられるが、飲み易さが優先されるため、特に大きな問題は生じなかった。
【0005】
前述の通り、容器詰緑茶飲料を、お茶を愉しむための嗜好性飲料としてゆっくりと味わう飲用シーンも増えてきており、また、冷温若しくは常温の温度領域で飲用されることも多く、このような温度帯域であっても、高級緑茶のような緑茶の甘い香味や、飲み応えと余韻等を愉しみたいという要望も強い。
【0006】
しかしながら、前述の通り、ホット領域で飲用する場合と比較して、冷温状態であると苦味と渋味が強調され易くなる傾向がある一方で、甘い香味は逆に感じ難くなるという傾向がある。
このため、濃度を薄く調整して苦味と渋味を抑制すると、飲料全体が薄くなり、甘味や濃度感が更に感じ難く、また、高級茶のような甘い香味を強くするために、濃度を濃くすると苦味と渋味がより強調され、甘味に勝ってしまうという問題があった。
【0007】
緑茶飲料は味や香りがデリケートであり、冷温〜常温にかけては特にバランス調整が難しい。
従って、冷温〜常温の温度領域で飲む容器詰緑茶飲料において、緑茶が本来有する甘味を強調しつつも苦味と渋味を適度に抑制し、且つ濃度感を十分に確保することは、他の容器詰飲料と比較して、技術的ハードルが極めて高かった。
【0008】
飲用シーンの多様化や緑茶飲料に特有の技術的課題を解決するために、現在までに様々な試みが提案されている。
例えば、特許文献1には、単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度が100ppm〜300ppmであり、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)が10〜28である容器詰緑茶飲料を提供することにより、火香(こうばしい香り)が強く、薄い味ではなく、しかもさっぱりとした後味を備えており、冷めた状態でもおいしく飲用できる緑茶飲料が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度が150ppm〜500ppmであり、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)が2.0〜8.0であり、前記糖類の濃度に対する電子局在カテキンの濃度の比率(電子局在カテキン/糖類)が1.8〜4.0であり、ゲラニオールに対するフルフラールの含有比(フルフラール/ゲラニオール)が0.5〜3.0である容器詰緑茶飲料を提供することにより、口の中に香りが広がるとともに余韻が残り、しかも味にコク・濃度感を備えており、冷めた状態でも香り立ちのある、新たな容器詰緑茶飲料が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献1、2に係る発明は、冷温時における飲用感の向上という観点においては一定の効果を呈するものの、本願発明のように、高級茶のような甘い香味が強調されると共に、甘味と適度なバランスの渋味、及び濃度感を十分に感じることができる容器詰緑茶飲料を実現するためには、依然として不十分なものであった。
また、前記特許文献以外においては、係る特性を有する容器詰緑茶飲料を開発するという技術課題について認識されておらず、更には係る技術課題を解決するための方法についての具体的な知見、及びこれを評価するための指標は、当業者の間でもこれまで提案されていなかった。
【0011】
【特許文献1】特許第4843118号公報
【特許文献2】特許第4843119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記先行技術文献の知見を活かしつつ、冷温領域から常温領域において、小量の飲用であっても、緑茶飲料に特有の甘味を強くに感じることが可能で、飲み応えのある濃度感を味わえつつも、甘味とバランスの取れた適度な渋味を感じることができ、のど越しが良く、良好な味の余韻を愉しめる容器詰緑茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、飲料液中の粒子の粒度分布を示す90%積算粒子径(D90)と、10%積算粒子径(D10)との差(D90−D10)、即ち液中の含有粒子径の統一度合の指標と、飲料液中ガレート型カテキン類と酸性アミノ酸の含有量の比率をそれぞれ所定の範囲に調整することによって、冷温状態で飲用する場合であっても、苦味と渋味を抑制しつつも、緑茶飲料特有の甘味を強く感じられ、甘味とバランスの取れた適度な渋味を感じることが可能であって、且つ十分な飲み応えを感じることが可能な容器詰茶飲料が得られることを見出した。
【0014】
すなわち本願発明は以下のような構成からなる。
(1)
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0であって、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0であることを特徴とする容器詰緑茶飲料。
(2)
飲料液中に含まれる水不溶性の浮遊性物質のうち、沈降性粒子(SSS)の含有量(mg/L)が1.0〜60.0であることを特徴とする1の容器詰緑茶飲料。
(3)
前記酸性アミノ酸の含有量がアスパラギン酸とグルタミン酸の合計含有量であることを特徴とする1または2の容器詰緑茶飲料。
(4)
前記ガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)が10.0〜60.0であることを特徴とする1〜3いずれか1の容器詰緑茶飲料。
(5)
飲用液中の水不溶性粒子の平均粒子径(μm)が3.0〜24.0であることを特徴とする1〜4いずれか1の容器詰緑茶飲料。
(6)
前記酸性アミノ酸含有量合計(mg/100ml)が1.0〜9.0未満であることが特徴とする1〜5いずれか1の容器詰緑茶飲料。
(7)
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性の側鎖を有するアミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0となるように調整され、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0となるように調整されることを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。
(8)
飲料液中に含まれる水不溶性の浮遊性物質のうち、沈降性粒子(SSS)の含有量(mg/L)が1.0〜60.0となるように調整されることを特徴とする7の容器詰緑茶飲料の製造方法。
(9)
飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性の側鎖を有するアミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0となるように調整され、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0となるように調整されることを特徴とする容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は前記の構成を具備することにより、冷温領域から常温領域において、小量の飲用であっても、緑茶飲料に特有の甘味を強くに感じることが可能で、飲み応えのある濃度感を味わえつつも、強調される苦味と渋味を適度に抑え、のど越しが良く、良好な味の余韻を愉しめる容器詰緑茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明に係る容器詰緑茶飲料を実施する為の形態について、以下具体的に詳述するが、本願発明の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、以下に示す実施形態以外の公知手法を適宜選択することも可能である。
【0017】
(容器詰緑茶飲料)
本実施形態にかかる容器詰緑茶飲料は、緑茶を抽出して得られた抽出液を主たる原料とし、容器に充填してなる飲料である。
容器に充填される緑茶飲料は、例えば緑茶を抽出して得られた抽出液のみからなる液体、或いは、当該抽出液を濃縮又は希釈した液体、或いは異なる濃度、若しくは異なる種別の茶葉から抽出液した抽出液どうしを所定割合で混合した液体、或いはこれら前記何れかの液体に添加物を加えた液体等の形態を例示することができる。
なお、主たる原料とは、少なくとも配合割合が50%以上であることを示している。
【0018】
(原料茶葉)
本発明における容器詰緑茶飲料の原料茶葉は、その種類を特に制限するものではない。
具体的に例示すれば、蒸し茶、煎茶、玉露、抹茶、番茶、玉緑茶、釜炒り茶、中国緑茶など、不発酵茶に分類される茶を広く包含する概念である。
また、本実施形態係る原料茶葉は、2種類以上をブレンドしたものであっても良く、玄米等の穀物類、ジャスミン花、その他のハーブ等のフレーバー類を添加してあるものでもよい。
【0019】
(アミノ酸類)
容器詰緑茶飲料に含まれるアミノ酸類としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、テアニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、メチオニン、アルギニン、リシンがあるが、本願にあってアミノ酸含有量(mg/100ml)とは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン、テアニンの合計含有量の値を示している。
また、本願発明の指標の一つである酸性アミノ酸とは、酸性を示す側鎖を有するアミノ酸であり、本願発明にあっては、前述の各アミノ酸類のうち、アスパラギン酸とグルタミン酸の合計含有量(mg/100ml)を示している。
本実施形態にあっては前記酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)は1.0〜9.0であることが好ましく、1.2〜8.0であることがなお好ましく、1.2〜7.0であることがさらに好ましい。
また、本実施形態にあっては、アミノ酸含有量(mg/100ml)は、50.0未満であることが好ましく2.0〜40.0であることがなお好ましく、2.0〜30.0であることが更に好ましく、2.5〜5.0であることが最も好ましい。
酸性アミノ酸及び、アミノ酸の含有量が前記範囲にあることによって、後述の粒度分布の指標をと相まって、容器詰緑茶飲料の甘い香味を強くすると共に、渋味とのバランスを好適に調整することに寄与する。
【0020】
(カテキン類)
本願発明にあっては、容器詰緑茶飲料にふくまれるカテキン類は、所謂非重合体カテキンと称される、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)の合計8種の意味である。
本実施形態にあっては、カテキン類の含有量(mg/100ml)は25.0〜110.0が好ましく、35.0〜100.0がより好ましく、35.0〜80.0がさらに好ましく、45.0〜75.0が最も好ましい。容器詰緑茶飲料のカテキン類濃度が25.0を下回ると香気成分による甘い火香は強調されるものの濃度感が十分に得られない等、香味バランスに影響を与える点で好ましくなく、110.0を上回ると甘い火香が弱過ぎたり、苦味、渋味及びエグ味が強調され過ぎてバランスに影響を与える点で好ましくない。
非重合体カテキン類濃度を前記範囲に調整するには、抽出条件等で調整するようにすればよいが、カテキン製剤等を添加することによっても調整することも可能である。
【0021】
前述の非重合カテキンの内、ガレート基を含むカテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)はガレート型カテキンと総称される。
本実施形態においては、前記ガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)は、10.0〜85.0であることが好ましく、10.0〜75.0であることがなお好ましく、15.0〜55.0であることがさらに好ましい。
また、本発明にあっては、前記酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率は2.0〜22.0であり、2.0〜20.0であることが好ましく、2.0〜18.0であることがなお好ましく、2.5〜17.5であることが更に好ましい。
本比率が前記範囲にあることによって、一定量のガレート型カテキンを含みつつも、苦味と渋味が効果的に抑制され、更に後述の粒度分布(D90−D10)の値が特定の範囲にあることで、高級緑茶のような甘味が強調され、且つ飲み応えのある濃度感を味わうことが可能となる。
【0022】
(エピ体カテキン類・非エピ体カテキン類)
本発明の緑茶飲料におけるカテキン類は、「エピ体カテキン類」すなわち(−)EC、(−)EGC、(−)ECg、(−)EGCgといった没食子酸とのエステル結合を含んでいて良く、又、「非エピ体カテキン類」すなわち(−)C、(−)GC、(−)Cg、(−)GCgを含んでいてよい。「非エピ体カテキン類」は、約80℃以上で加熱処理して熱異性化(エピマ−化)を促すことにより得ることができる。本発明の緑茶飲料における「非エピ体カテキン類に対する非エピ体カテキン類の比率(エピ体カテキン類濃度/非エピ体カテキン類濃度)」は、0.4〜3.0が好ましく、0.5〜3.0がさらに好ましく、0.6〜1.5が最も好ましい。
【0023】
(電子局在カテキン)
容器詰緑茶飲料中に含まれる「電子局在カテキン」とは、トリオール構造(ベンゼン環にOH基が3基隣り合う構造)を有し、イオン化したときに電荷の局在が起こりやすいと考えられるカテキンであり、具体的には、エピガロカテキンガレート(EGCg)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、ガロカテキンガレート(GCg)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)などがある。
【0024】
(電子局在カテキン濃度)
電子局在カテキン濃度を前記範囲に調整するには、抽出条件で調整すればよいが、抽出時間や温度で変化しやすいため、温度が高すぎたり、抽出時間が長すぎたりするのは、飲料の香気保持の面からも好ましくない。この際、電子局在カテキンを添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料のバランスが崩れるおそれがあるため、茶抽出液を得るための条件を調整するほか、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整することが好ましい。
【0025】
本発明の緑茶飲料における電子局在カテキン濃度(mg/100ml)は、13.0〜100.0であることが好ましく、14.0〜90.0がより好ましく、15.0〜80.0がさらに好ましい。
【0026】
(積算質量%の粒子径)
本実施形態において積算質量%の粒子とは、飲用液に含まれる不溶性微粒子の粒度分布を示す指標であり、飲用液を所定の目開き径で濾過した場合に、含有粒子の全体質量に対して90%の粒子が通過しうる目開き径を90積算質量%粒子径(D90)、含有粒子の全体質量に対し50%の粒子が通過しうる目開き径を50積算質量%粒子径(D50)、及び含有粒子の全体質量に対し10%の粒子が通過しうる目開き径を10積算質量%粒子径(D10)という。
飲用液の積算質量%粒子径は、原料に乾燥(火入)加工を施す、微粉砕した抹茶等の粒子を添加する、抽出時の圧搾、抽出液の遠心分離、及び抽出液を濾過すること等、公知の手法により調整することができる。
また、濾過は、限外濾過、微細濾過、精密濾過、逆浸透膜濾過、電気透析、生物機能性膜などの膜濾過、多孔質媒体を用いた濾滓濾過などを挙げることができるが、生産性と粒子径調整の観点から、シリカ分を多く含んだ濾剤又は珪藻土などの多孔質媒体のどちらか一方又は両方を用いた濾滓濾過によって調整することが好ましい。
粒子径の調整は、特に限定されるものではないが、原料茶葉の段階や、抽出液下で、ミル、ミキサー、コミトロール、ホモジナイザー、ラインミキサー、エマルダー、カッターミル、ディスパー、ジューサーミキサー、マイルダー、ホモミキサー、マスコロイダー、チョッパー、パルパーフィニッシャー等の破砕機または摩砕機を使用することにより行うことができる。特に均質化処理時には少なくとも20MPa以上、好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上の圧力を掛けて処理すると、粒子の微細化が促進される。
なお、緑茶飲料の場合、積算質量%の粒子径(D90、D10等)は、例えば市販のレーザー回析式粒度分布測定装置等により測定することができる。
本実施形態にあっては、D90とD10の差(D90−D10)の値(μm)は3.0〜50.0であり、5.0〜45.0であることが好ましく、2.0〜45.0であることが更に好ましい。
【0027】
(浮遊物質濃度(suspended solids(SS)))
本実施形態において浮遊物質濃度(suspended solids(SS))とは、水色の濁り度合を示す指標の一つである。
具体的には、飲用液中に浮遊する「粒径2mm以下」の不溶解性物質の総称であって、重量濃度(mg/L(ppm))で表される。
浮遊物質濃度の測定には、ガラス繊維濾紙法と遠心分離法があるが、通常はガラス繊維濾紙法が用いられ、遠心分離法は濾過しにくい試料に適用される。 ガラス繊維濾紙法は、試料を孔径1μmのガラス繊維濾紙で吸引濾過し、濾過残留物を105〜110℃で2時間乾燥させたのち、残留物の重量を測定する。また、浮遊物質濃度値が透視度と逆数にある性質を利用して、より簡便に浮遊物質濃度値を求める方法もある。本発明における浮遊物質濃度の測定は、前記簡便法による測定方法を想定するものの、当業者が通常実施する範囲においてより厳密な測定方法により得られた測定値を採用することを排除するものではない。
【0028】
(沈降性浮遊物質濃度(settleable suspended solid(SSS))
沈降性浮遊物質濃度(settleable suspended solid(SSS))とは、5℃で5時間静置したサンプルの上澄みの浮遊物質濃度(SS)を測定し、静置前の浮遊物質濃度(SS)との差分により求められる値である(沈降性浮遊物質濃度(SSS)=静置前の浮遊物質濃度(SS)−静置(5℃、5時間)後の浮遊物質濃度(SS))。
即ち、飲料液中の水不溶性の浮遊物質のうち、一定時間経過により沈降する粒子の量を示すものである。
本実施形態にあっては、沈降性浮遊物質濃度(SSS)(mg/L)は、1.0〜60.0であることが好ましく、1.0〜50.0がより好ましく、1.0〜40.0が更に好ましく、1.0〜30.0が最も好ましい。
【0029】
浮遊物質濃度(SS)及び沈降性浮遊物質濃度(SSS)の調整方法
緑茶飲料の浮遊物質濃度(SS)及び沈降性浮遊物質濃度(SSS)は、緑茶飲料の製造に供する原料茶の種類、茶期、火入・加工方法、若しくは異なる2種以上の原料茶の混合、又は抽出時の条件、ビタミンC等の添加物、若しくは異なる2種以上の茶抽出液の混合により調整することができる。
例えば、原料茶として微粉を多く含む茶葉(深蒸し煎茶、粉茶、粉末茶など)を選択し、例えば圧搾抽出や抽出時に攪拌するなどの、茶葉を切断・破砕するような抽出を実施することにより、緑茶飲料の浮遊物質濃度(SS)を増加させることができる。また、原料茶として微粉が少ない茶葉(釜炒り茶、粉抜きを実施した煎茶など)を選択し、単独又は複数種類を適宜割合で混合し、例えばカラム式抽出機を使用してシャワー抽出を実施するなどの、茶葉が切断・破砕されないような抽出を実施し、抽出液を濾過(濾滓濾過など)することによって、緑茶飲料の浮遊物質濃度(SS)を低下させることができる。また、例えば、浮遊物質濃度(SS)が高い緑茶飲料と、浮遊物質濃度(SS)が低い緑茶飲料を適宜割合で混合することにより、浮遊物質濃度(SS)を調整することもできる。
また、例えば、原料茶として比重の大きい茶葉(一番茶、火入れの弱い茶葉、本茶など)を選択し、さらに比重の大きい微粉を含む茶葉(粉末茶を水に懸濁し、一定時間経過後に沈降している茶葉など)を選択し、緑茶飲料の比重を小さくすることにより緑茶飲料の沈降性浮遊物質濃度(SSS)を増加させることができる。また、例えば、原料茶として比重の小さい茶葉(番茶、火入れの強い茶葉、茎茶など)を選択し、抽出液から比重の大きい微粉を取り除く(遠心分離など)、緑茶飲料の比重を大きくすることにより緑茶飲料の沈降性浮遊物質濃度(SSS)を低下させることができる。さらに、抽出液等の微粉を含む液を遠心分離する際に、液の温度、pH、遠心分離機通液流速、回転数、遠心沈降面積(Σ)の条件を適宜調整することにより、沈降性浮遊物質濃度(SSS)を調整することもできる。
【0030】
(カフェイン濃度)
本発明の緑茶飲料におけるカフェイン濃度(mg/100ml)は、本発明の緑茶飲料におけるカフェイン濃度(mg/100ml)は、35.0未満であることが好ましく、7.0〜30.0がより好ましく、8.0〜20.0がさらに好まししい。カフェイン濃度が35.0を上回ると、カフェイン由来の苦味が香りの感じ方と苦味とのバランスに影響を与える点で好ましくない。
カフェイン濃度を前記範囲に調整するには、茶葉に熱湯を吹き付けたり、茶葉を熱湯に浸漬させたりして茶葉中のカフェインを溶出させ、その茶葉を用いて茶抽出液を作製し、これら茶抽出液どうしを混合して調整すればよい。また、抽出液に活性炭や白土等の吸着剤を作用させてカフェインを吸着除去してもよい。
【0031】
(糖類)
本実施形態おける容器詰緑茶飲料に含まれる糖類としては、単糖類と二糖類がある。
単糖は、一般式C(HO)で表される炭水化物であり、加水分解によりそれ以上簡単な糖にならないものであり、本実施形態にあっては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)を指す。
本実施形態の容器詰緑茶飲料の単糖の濃度(ppm)は、5.0〜120.0であることが好ましく、11.0〜100.0がより好ましく、15.0〜80.0が更に好ましく、18.0〜70.0最も好ましい。
容器詰緑茶飲料の単糖の濃度が5.0ppmを下回ると緑茶飲料における濃度感(コク
)が不足してしまう観点で好ましくなく、120.0ppmを上回ると緑茶飲料における爽快味が不足してしまう観点で好ましくない。
(二糖)
二糖は、一般式C12(HO)11で表される炭水化物であり、加水分解により単糖を生じるものであり、本発明でいう二糖とは、スクロース(蔗糖)、セロビオース、マルトース(麦芽糖)を指す。
本発明の緑茶飲料の二糖の濃度(ppm)は、80.0〜260.0であることが好ましく、80.0〜230.0がより好ましく、90.0〜200.0が更に好ましく、90.0〜180.0最も好ましい。
容器詰緑茶飲料の二糖の濃度が80.0ppmを下回ると緑茶飲料における濃度感(コク)が不足してしまう観点で好ましくなく、260.0ppmを上回ると緑茶飲料における爽快味が不足してしまう観点で好ましくない。
【0032】
(糖類濃度)
本発明における「単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度」とは、前記単糖の濃度と前記二糖の濃度とを合計したものである。
本発明の緑茶飲料の「単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度」(ppm)は、85.0〜380.0であることが好ましく、91.0〜320.0がより好ましく、105.0〜280.0が更に好ましく、108.0〜250.0が最も好ましい。
容器詰緑茶飲料の「単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度」の濃度が85.0を下回ると緑茶飲料における濃度感(コク)が不足してしまう観点で好ましくなく、380.0を上回ると緑茶飲料における爽快味が不足してしまう観点で好ましくない。
また、単糖の濃度と二糖の濃度との比率(二糖/単糖)は、特に限定されるものでないが0.5〜0.95であってよい。
(ショ糖濃度)
本発明におけるショ糖とは、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖類の一種である。
本発明の緑茶飲料のショ糖濃度(ppm)は、80.0〜350.0であることが好ましく、90.0〜300.0が更に好ましく、90.0〜280.0最も好ましい。
容器詰緑茶飲料のショ糖濃度80.0を下回ると緑茶飲料における苦みが目立ってしまう観点で好ましくなく、350.0を上回ると緑茶飲料におけるエグ味が目立ってしまう観点で好ましくない。
【0033】
(糖類濃度に対するショ糖濃度の比率(ショ糖/糖類濃度))
本発明における「糖類濃度に対するショ糖濃度の比率(ショ糖/糖類濃度)」とは、前記単糖の濃度と前記二糖の濃度とを合計したものである糖類濃度に対するショ糖濃度の比率(ショ糖/糖類濃度)である。本発明における「ショ糖/糖類濃度」は、特に限定されるわけではないが、0.5〜0.95であってよい。
【0034】
(糖類の濃度・比率の調整方法)
糖類濃度や糖類比率を前記範囲に調整するには、例えば特許第4843118号が記載するように、茶葉の乾燥(火入れ)加工や抽出を適宜条件にして調整することができる。例えば、茶葉の乾燥(火入れ)加工を強くすると糖類は分解されて減少し、また、高温で長時間抽出すると糖類は分解されて減少する。しかるに、茶葉の乾燥(火入れ)条件と、抽出条件により、糖類濃度や糖類比率を調整することができる。
【0035】
この際、糖類を添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料本来の香味バランスが崩れるおそれがあるため、糖を添加することなく、例えば茶抽出液を得るための条件を調整したり、複数の異なる茶抽出液の混合割合を調整したり、茶抽出物や茶精製物を添加することにより調整するなどの方法が好ましい。
【0036】
(香気成分)
本願発明における容器詰緑茶飲料の飲料液中に含まれる香気成分には、メチルピロール、メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、エチルピラジン、及び3−エチル−2,5−ジメチルピラジンのような複素環を有するピラジン類、また、1−ペンテン−3−オール、Z−2−ペンテン−1−オール、2Z,4E−ヘプタジエナール、2E,4E−ヘプタジエナールといった、脂肪族アルコール類及び脂肪族アルデヒド類からなる所謂脂肪酸分解物類、リナロール、トリエノール、α−テルピネオール、ネロール、及びネロリドール等のテルペンアルコール類、ペンタナール、ヘキサナール、ペプテナール、ノナナール、E−2−ヘキサナール等のアルデヒド類、フルフラール、5−メチルフルフラール等のフラン類等に起因するものがある。
また、ヨノン類としては2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトアルデヒド、α−ヨノン、β−ヨノン、5,6−エポキシ−β−ヨノン、及びジヒドロアクチニジオライド等がある。
【0037】
前記香気成分のうち、脂肪酸分解物類に対するピラジン類(ピラジン類/脂肪酸分解物類)は2.0〜70.0が好ましく、2.0〜45.0であることが好ましく、10.0〜45.0がより好ましく、15.0〜45.0であることが更に好ましい。
また、ヨノン類に対するピラジン類(ピラジン類/ヨノン類)は、5.0〜70.0が好ましく、5.0〜65.0であることが好ましく、10.0〜50.0がより好ましく、20.0〜45.0であることが更に好ましい。
【0038】
ピラジン類は、茶葉中のアミノ酸が火入れ等による加熱でアミノ−カルボニル反応を起こすことで発生する甘く香ばしい香気であり、主に高級茶独特の甘味に寄与すると考えられる。
これに対し、脂肪酸分解物類は茶葉の酸化等によって増加し、一般的にスミレの花に近い香りといわれている。前記ピラジン類と所定の範囲の比率で存在することによって、高級茶のような甘くさわやかな香味に調製することができる。
また、ヨノン類は茶葉の酸化等によって増加し、一般的にスミレの花に近い香りといわれている。前記ピラジン類と所定の範囲の比率で存在することによって、高級茶のような甘くさわやかな香味に調製することができる。
なお、前記香気成分の調整は、茶葉の水蒸気蒸留エキスの添加によって行うことが可能である他、茶種、加工方法、火入れの条件、若しくは抽出条件等によっても調整することができる。
ピラジン類や脂肪酸分解物類といった香気成分が、茶種や抽出温度条件等によって変動することは前述の通り周知であり、またその傾向も当業者の間では知られている。
しかしながら、ピラジン類と脂肪酸分解物類の好適バランスの知見、並びに飲用液中のガレート型カテキンと酸性アミノ酸の好適バランスとの関係に着目することで、高級茶の味わいを実現できる旨の知見は、現在まで当業者に全く知られていなかった。
このため、指標となる成分の数値範囲が明らかとなれば、公知技術によって所望の数値範囲にピラジン類と脂肪酸分解物類を調製することは、試行錯誤的調整を経ることなく当業者に可能である。
【0039】
(pH)
本実施形態における容器詰緑茶飲料のpHは、20℃で6.0〜6.5であることが好ましい。pHは6.0〜6.4であるのがより好ましく、中でも特に6.0〜6.3であるのがさらに好ましい。
【0040】
(各成分の測定方法)
前記した単糖類、二糖類、総カテキン類、電子局在カテキン類、カフェイン、アミノ酸類の濃度は、高速液体クロマトグラム(HPLC)などを用い、検量線法などによって測定することができる。
【0041】
(容器)
本発明の緑茶飲料を充填する容器は、特に限定するものではなく、例えばプラスチック製ボトル(所謂ペットボトル)、スチール、アルミなどの金属缶、ビン、紙容器などを用いることができ、特に、ペットボトルなどの透明容器等を好ましく用いることができる。
【0042】
(製造方法)
本発明の緑茶飲料は、例えば、茶葉原料の選定と共に、茶葉の乾燥(火入)加工や抽出条件、さらには抽出液や粉砕茶葉の混合割合を適宜調整して、飲用液中のアミノ酸の内、酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0であって、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)を3.0〜50.0に調整することにより製造することができる。但し、このような製造方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
以下、前記実施形態に基づき、本発明の実施例を説明するが、本願発明の技術的範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜形態の変更を行うことができる。
【0044】
1.試料の調製(使用茶葉)
本実施例における実施例試料及び比較例試料の調製方法について以下説明する。
本実施例に係る容器詰緑茶飲料は以下の茶葉を用いて抽出液を得た。
(抽出用液用茶葉A)
やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し 荒茶を回転ドラム型火入機にて265℃10分間で火入加工
(抽出液用緑茶葉B)
ゆたかみどり種、鹿児島県産一番茶深蒸し 荒茶
(混濁液用粉砕茶葉C)
やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し 荒茶 ボールミル粉砕(マキノ社製BM−400)(投入量200kg)
【0045】
2.茶抽出液、粉砕茶葉懸濁液及び水蒸気蒸留エキスの調製
前記茶葉を原料として茶抽出液、粉砕茶葉懸濁液及び水蒸気蒸留エキスを得た。
なお、水蒸気蒸留エキスは香気成分の調整用に必要に応じて使用した。
(茶抽出液A)
上記茶葉A6g、B6gを85℃の湯480mLで3分抽出した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速300L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、目開1μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し、茶抽出液Aを得た。
(茶抽出液B)
上記茶葉A7.8g、B7.8gを85℃の湯480mLで3分抽出した後、濾過助剤(シンワフーズケミカル(株)「ダイバガン」)2.6gを添加し3分間攪拌した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速300L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、目開1μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し茶抽出液Bを得た。
(茶抽出液C)
上記茶葉A4.2g、B28.8gを60℃の湯480mLで6分抽出した後、濾過助剤(シンワフーズケミカル(株)「ダイバガン」)1.12gを添加し3分間攪拌した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速300L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、目開1μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し茶抽出液Cを得た。
(茶抽出液D)
上記茶葉A13.4g、B3.4gを90℃の湯480mLで3分抽出した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速300L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、目開1μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し茶抽出液Dを得た。
(粉砕茶葉懸濁液A)
上記粉砕茶葉Cを高速ホモジナイザーで水中に分散し、目開60μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し、粉砕茶葉懸濁液Aを得た。
(粉砕茶葉懸濁液B)
前記粉砕茶葉Cを高速ホモジナイザーで水中に分散し、目開5μmのフィルター(ポリプロピレン製)で濾過し、粉砕茶葉懸濁液Bを得た。
(水蒸気蒸留エキスA)
抽出液用茶葉A100gを40℃の温水100gで10分浸漬し、水蒸気蒸留法により150gの留出液を回収し、「水蒸気蒸留エキスA」を得た。
(水蒸気蒸留エキスB)
抽出液用茶葉B100gを40℃の温水100gで10分浸漬し、水蒸気蒸留法により150gの留出液を回収し、「水蒸気蒸留エキスB」を得た。
【0046】
3.飲料原料液の調製
前記茶抽出液、粉砕茶葉懸濁液をそれぞれ下記の条件で混合し、実施例試料及び比較例試料を調整するための飲料原料液A〜Dを得た。
(飲料原料液A)
抽出液Aに最終メスアップ時、SSが90mg/L、SSSが55mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液Aを混合し、混合液に茶抽出物((株)伊藤園「テアフラン90S」(ガレート型を主体とするカテキン混合物))を1.16g添加し、更にビタミンCを400ppm加え、重曹にてpH調整を行った後、2000mlに純水でメスアップし、「飲料原料液A」を得た。
(飲料原料液B)
抽出液Bに最終メスアップ時、SSが90mg/L、SSSが20mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液Bを混合し混合液を得た。 前記混合液の最終メスアップ時に合わせて、ビタミンCを400ppm混合、重曹にてpH調整を行った後、2000mlに純水でメスアップし、「飲料原料液B」を得た。
(飲料原料液C)
抽出液Bに最終メスアップ時、SSが90mg/L、SSSが40mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液Aを混合し混合液を得た。前記混合液の最終メスアップ時に合わせて、ビタミンCを400ppm混合、重曹にてpH調整を行った後、2000mlに純水でメスアップし、飲料原料液C」を得た。
(飲料原料液D)
抽出液Aに最終メスアップ時、SSが90mg/L、SSSが10mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液Bを混合し混合液を得た。前記混合液の最終メスアップ時に合わせて、混合液に茶抽出物((株)伊藤園「テアフラン90S」(ガレート型を主体とするカテキン混合物))を0.20g添加し、更にビタミンCを400ppm加え、重曹にてpH調整を行った後、2000mlに純水でメスアップし、「飲料原料液D」を得た。
【0047】
4.実施例試料の調整
前記飲料用原料液A〜Dをそれぞれ表1に示す混合比率にて混合し、実施例試料1〜8及び比較例試料1〜4を得た。
調整した実施例試料1〜8及び比較例試料1〜4は、それぞれUHT殺菌(135℃、30秒)し、プレート内で冷却し85℃にて、透明プラスチックボトル(PETボトル)に充填した。
なお実施例試料6と8については、最終メスアップ時にSSが90mg/L、SSSが55.0mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液を混合した飲料A〜Dを表の配合比率で混合した。
また、実施例試料7については、最終メスアップ時にSSが90mg/L、SSSが0.5mg/Lとなるように粉砕茶葉懸濁液を混合した飲料A〜Dを表の配合比率で混合した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の通りに調製した実施例試料1〜8及び比較例試料1〜4について、ぞれぞれ本願発明の構成要件について、表2の通り分析測定を行った。
【0050】
【表2】
【0051】
なお、本実施例においては、各成分の分析は、以下に示す方法によって測定した。
【0052】
(1)各成分の測定方法(単糖類、二糖類、各カテキン類、カフェイン、アミノ酸類)
既述のとおり、単糖類、二糖類、総カテキン類、電子局在カテキン類、ガレート型カテキン、カフェイン、及びアミノ酸の濃度は、高速液体クロマトグラム(HPLC)などを用い、検量線法などによって測定した。
【0053】
(2)沈降性浮遊物質濃度(settleable suspended solid(SSS))
沈降性浮遊物質濃度(settleable suspended solid(SSS))とは、5℃で5時間静置したサンプルの上澄みの浮遊物質濃度(SS)を測定し、静置前の浮遊物質濃度(SS)との差分により求められる値である。
即ち、(沈降性浮遊物質濃度(SSS)=静置前の浮遊物質濃度(SS)−静置(5℃、5時間)後の浮遊物質濃度(SS))の関係である。
【0054】
(3)ピラジン類群、ヨノン類群及び脂肪酸酸化物類群
ピラジン類群の含量比及びヨノン類群含量比は、以下に示す装置を用い、SPME法(固層マイクロ抽出法)で測定した。
なお、本実施例で測定されたピラジン類は、メチルピロール、メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、エチルピラジン、及び3−エチル2,5−ジメチルピラジンであり、ヨノン類は、2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−アセトアルデヒド、α−ヨノン、β−ヨノン、5,6−エポキシ−β−ヨノン、及びジヒドロアクチニジオライドであり、脂肪酸酸化物類は、リナロール、トリエノール、α−テルピネオール、ネロール、及びネロリドール等のテルペンアルコール類、ペンタナール、ヘキサナール、ペプテナール、ノナナール、E−2−ヘキサナール等のアルデヒド類である。
【0055】
(分析装置/仕様)
SPMEファイバー:スペルコ社製DVB/carboxen/PDMS
装置:アジレント社製5973N
GC−MSシステム
カラム:アジレント社製DB−WAX,60mm×0.25mm×0.25μm
カラムオーブン:35〜240℃、6℃/min
(測定方法)
バイアル瓶にサンプル10mlとNaCl3g、内部指標として0.1% シクロヘキサノールを5μL添加し密閉した後、60℃に加温して30分間SPME法(固相マイクロ抽出法)で抽出し以下の装置を用いて測定した。
ピラジン類群、ヨノン類群の含有比及び、ピラジン類群、脂肪酸酸化物類群の含有非は、得られたMSスペクトルより、特徴のあるピークを選定し面積値から算出した。
【0056】
(評価方法)
実施例試料1〜8及び比較例試料1〜4全てについて、専門のパネリスト10人が、常温で一ヶ月間保管した後に、20℃で200mlを飲み干した状態で官能評価を実施し、それぞれのサンプルについて5段階評価(5〜1点)をしてその平均値を算出し、良好な評価の順にそれぞれ「◎」(5点)、「○」(4点)、「△」(3点)、「▲」(2点)、「×」(1点)とした。また、総合評価は前記各々評価の合計点が、20〜17点を◎、16〜14点を○、13〜11点を△、10点以下、若しくは前記各項目のいずれかで×、即ち1点評価があった場合は×とした。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
【0057】
(評価項目)
本が発明は、冷温領域から常温領域において飲用する場合において強調される苦味と渋味を抑え、また、少量の飲用であっても、薄くて物足りないという印象を与えず、高級緑茶のような飲み応えのある濃度感を味わえつつも、のど越しが良く、良好な味の余韻を愉しめる容器詰緑茶飲料を得ることを目的としていることから、これを達成できているか否かについて、以下の4項目において前記評価基準によって採点を行うことで評価した。
・滋味
・後味
・のどごし
・満足感(まろやかなコク):好適な食感と渋味のバランス
【0058】
前記評価項目による官能試験結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
(考察)
本実施例においては、通常の容器詰緑茶飲料よりも少ない200mlという容量で、且つ常温で一ヶ月間保管した後に、20℃の常温に近い状態で飲用した場合に、実施例試料1〜8についてからについて「滋味」、「後味」、「のどごし」、「満足感(まろやかなコク):好適な食感と渋味バランス」の評価項目のいずれについても比較例試料に対して優れている旨を確認できた。
これに対して、本願発明の要件を満たさない比較例試料1〜4については、評価項目一つ以上において、最低である1点の評価となり、飲料としての要件を満たさないことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、容器詰緑茶飲料及びその製造方法であって、並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法に利用することができる。

【要約】
【課題】 冷温領域から常温領域において、小量の飲用であっても、緑茶飲料に特有の甘味を強くに感じることが可能で、飲み応えのある濃度感を味わえつつも、甘味とバランスの取れた適度な渋味を感じることができ、のど越しが良く、良好な味の余韻を愉しめる容器詰緑茶飲料及びその製造方法並びに容器詰緑茶飲料の甘渋味調整方法を提供する。
【解決手段】飲料液中に含まれるアミノ酸の内、酸性アミノ酸の含有量(mg/100ml)に対するガレート型カテキンの含有量(mg/100ml)の比率が2.0〜22.0であって、前記飲料液中に含まれる微粒子の90%積算質量粒子径(μm)(D90)と、10%積算質量の粒子径(μm)との差(μm)が3.0〜50.0とする。
【選択図】なし