【実施例1】
【0028】
実施例1の便器は、水洗式便器である便器本体10と、便器本体10の後部に取り付け固定され、機能部を収容するケーシング20と、ケーシング20に取り付け固定され、便器本体10の後部両側面を覆うように配される化粧板60とを備えている。便器本体10は便鉢11を有している。
【0029】
機能部は、図示はしないが、局部洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置、便器洗浄装置、便座・便蓋開閉装置、人体検知装置及びこれらを制御する制御装置等によって構成されている。
【0030】
ケーシング20は合成樹脂製であって、
図1及び
図2に示すように、カバー本体21、ベースプレート22及び下カバー23によって構成され、その外面には、側方から化粧板60が被せ付けられる。
【0031】
ベースプレート22は、便器本体10の後部上面にボルト締め等して固定されている。そして、ベースプレート22には、上記の各種装置からなる機能部が設置され、機能部を覆うようにして上方からカバー本体21は被せ付けられる。カバー本体21には、便座15及び便蓋16が開閉可能に取り付けられている。
【0032】
また、ベースプレート22の後部には、ファンモータ等の収容空間を画成する立板部24が立ち上げ形成されている。立板部24は、上下方向に開放された形状をなし、左右の側板25、背板26及び前板27によって構成されている。側板25の内面には、
図6に示すように、互いに一定間隔をあけて上下方向に延びる前後の第1リブ28と、両第1リブ28間のほぼ中央に位置して両第1リブ28とほぼ平行に配される第2リブ29とが形成されている。また、側板25の内部には、第1、第2リブ28、29の内端同士を連ねるとともに側板25の内面とほぼ平行に配される架橋板30が形成されている。
【0033】
第1、第2リブ28、29、架橋板30及び側板25によって取り囲まれる内側には、後述する突片部63が下方から挿入される受け孔31が構成されている。受け孔31の下端部には、下方に向けて拡開する拡開部32が形成され、この拡開部32によって突片部63の受け孔31内への誘い込みがなされる。拡開部32の一部は架橋板30で構成され、
図8に示すように、架橋板30はその上端から下端にかけて側板25から離れるようにやや傾倒して配されている。
【0034】
第1リブ28には、受け孔31内に挿入された突片部63を係止可能な掛止部33が形成されている。
図6に示すように、前側の掛止部33は、前側の第1リブ28の後端縁を段付き状に切り欠いて形成され、後側の掛止部33は、後側の第1リブ28の上端面に形成されている。
【0035】
そして、ベースプレート22の下端部には、受け孔31を挟んだ前後両側に、一対の垂下部34が下方へ突出して形成されている。両垂下部34には、化粧板60の上端部が外側から当接可能とされている。また、ベースプレート22の下方には洗浄水の水圧を増すための図示しないブースターが設置され、下カバー23はこのブースターの周りを取り囲みつつベースプレート22の後部に垂下して取り付けられている。
【0036】
下カバー23の左右の側外面には、
図2に示すように、後述する装着部72を受ける装着受け部35が形成されている。装着受け部35は、
図11に示すように、下カバー23の側外面の下端部から外側に突出するとともに前後方向に延びる板状の延出部36と、延出部36の突端に沿って前後方向に延びるとともに中空環状に膨出される係止受け部37とからなる。
【0037】
係止受け部37の外周面のうち、内側の半円部分は、真円弧状の円弧面部38とされ、外側の半円部分は、後述する弾性係止部75が進入する側である前方へ向けて次第に細くなりながら突出する略山型の凸曲面部39とされている。凸曲面部39は、弾性係止部75の先端部が摺動可能な摺動面とされている。
【0038】
係止受け部37の上方及び両側方は門型枠状の庇部40によって覆われ、延出部36及び係止受け部37の前後両端は庇部40の両側壁に一体に連結されている。また、
図2に示すように、係止受け部37の前後方向略中央部には、後述する案内部74を嵌合可能な案内受け部41が切り欠き形成されており、延出部36及び係止受け部37は、案内受け部41を挟んだ前後両側に分断して配されている。
【0039】
続いて化粧板60について説明すると、化粧板60は、下カバー23を外側から覆うようにしてケーシング20に取り付けられ、上端部がベースプレート22の下端部に位置決めされて下端部が下カバー23から離間して配される回動初期位置と、上端部の位置決め状態が保たれつつ下端部が下カバー23に近接して配される回動完了位置とに、上端部を支点として回動可能とされている。
【0040】
図1に示すように、回動完了位置では、その前端縁が便器本体10の後端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するとともに、その上端縁がベースプレート22の下端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するようになっている。
図3及び
図4に示すように、化粧板60は、便器本体10の側外面と対応して湾曲状に沿った形状をなし、化粧板60の前端縁は上端へ向けて次第に前方へ突出するようなオーバーハング状をなし、化粧板60の上端縁はベースプレート22の下端縁に沿ってほぼ水平に延びる形状をなしている。化粧板60の後部上端側には、
図2に示すように、ケーシング20に設置されたスピーカー90と対応する位置に、多数の横長スリット孔61が上下方向及び前後方向に形成されている。
【0041】
また、化粧板60の後部上端縁には、
図4に示すように、ケーシング20への取り付け時にベースプレート22の下端縁に当接されるステージ部62が内側に突出して形成され、ステージ部62の上面には、突片部63が上方へ突出して形成されている。
【0042】
突片部63は、
図8に示すように、根元側にあってステージ部62の上面から立ち上がる第2片部64と、先端側にあって第2片部64とは異なる起立角度で立ち上がる第1片部65と、第1、第2片部64、65間にあって両者を連結する屈曲部66とによって構成されている。
【0043】
突片部63の略中央には、
図6に示すように、第1片部65の略全長に亘って延びるとともに上端に開口する受け溝67が形成されており、ケーシング20への取り付け時に、受け溝67内に第2リブ29が嵌合するようになっている。第2片部64の外側面には、上下方向に延びる一対の補強リブ68が前後に間隔をあけて形成されている。
【0044】
また、突片部63の両端側には、第1片部65の略全長に亘って延びるとともに上端に開口する一対のスリット溝69が形成され、両スリット溝69の外側に、一対の弾性片70が形成されている。弾性片70の先端部には、係止爪71が外側に突出して形成されている。受け孔31内への挿入過程では、係止爪71が第1リブ28を摺動して弾性片70がスリット溝69内に撓み変形され、突片部63が受け孔31内に正規挿入されるに伴い、弾性片70が弾性復帰して係止爪71が掛止部33を引掛け状態で係止し、もって突片部63の受け孔31からの抜け出しが規制されるようになっている。
【0045】
また、第2片部64は、化粧板60の上端縁に対して90度以下の所定の起立角度で内側へ傾斜して配され、第1片部65は、化粧板60の上端縁に対して90度以下ではあるが第2片部64よりも大きい起立角度で内側へ傾斜して配されている。したがって、回動初期位置から回動完了位置にかけて、下カバー23に対する化粧板60の開き角度を第1、第2片部64、65の各起立角度に会うように徐々に小さくすることにより、受け孔31内に突片部63を無理なく差し込むことが可能となっている。
【0046】
さて、化粧板60の内面には、回動完了位置にて装着受け部35を係止する装着部72が形成されている。装着部72は、突片部63よりも下方にあって、化粧板60の内面における上下方向略中央部でかつ後端寄りの位置に配されている。
【0047】
そして、装着部72は、化粧板60から取り外し可能であって化粧板60とは別体の部材とされ、化粧板60がPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)で構成されているのに対し、装着部72はPP樹脂よりも軟質のナイロン樹脂で構成されている。詳しくは、装着部72は、
図5に示すように、前後方向に細長い矩形状の支持板73と、支持板73の略中央部から内側へ突出する案内部74と、案内部74を挟んだ両側であって支持板73の両端側から内側へ突出する一対の弾性係止部75とを有している。支持板73は、
図11に示すように、化粧板60への取り付け時に、対向する化粧板60の内面と略平行に配される板面を有している。この対向する化粧板60の内面は、化粧板60の基準面76に相当するものである。
【0048】
案内部74は、支持板73の全高に亘る大きさの四角筒状をなし、
図14に示すように、その突端が閉止端とされている一方、その基端が支持板73を貫通する開口端とされている。化粧板60が回動完了位置に至ると、案内部74は、案内受け部41に適合して嵌合され、幅方向への遊動を規制された状態に位置決めされるようになっている。案内部74の上壁には、内外方向に延びて支持板73の外面に開口するスリット77が形成されている。
【0049】
弾性係止部75は、
図11に示すように、前後方向に延びるとともに支持板73の内面から突出する上下一対の係止片78を有し、両係止片78の先端部間が開放された断面略C字形をなしている。回動完了位置に至る過程では、両係止片78の先端部間から内側に係止受け部37が導入され、それに伴って両係止片78の先端が係止受け部37の凸曲面部39を摺動して弾性的に拡開変形される。その後、回動完了位置に至ると、両係止片78の先端側が係止受け部37の円弧面部38側に廻り込むとともに、両係止片78が係止受け部37を外側から弾性的に抱持し、もって装着部72が装着受け部35を係止するようになっている。
【0050】
両係止片78の先端部には、先端へ行くにしたがって外側に拡開する誘い込み部79が形成されている。この誘い込み部79は、化粧板60の回動動作に起因する装着部72と装着受け部35との取り付け誤差を吸収し、弾性係止部75内に係止受け部37を確実に導入する役割を果たす。
【0051】
そして、誘い込み部79の先端、つまり弾性係止部75の突端は、案内部74の突端よりも化粧板60側へ引っ込んだ位置に配され、言い換えれば、案内部74の突端は、弾性係止部75の突端よりも化粧板60側から離れるように突出した位置に配されている。したがって、弾性係止部75が係止受け部37との係止動作を開始するのに先立って、案内部74が案内受け部41に適合して嵌合されるようになっている。
【0052】
また、弾性係止部75は、支持板73の内面に対してやや下向きの姿勢で接続されており、両係止片78の先端部間の開口方向は、化粧板60の基準面76と直角な面Sに対してやや斜め下方を向くように設定されている。これにより、弾性係止部75と係止受け部37とが係止動作を開始する直前に、弾性係止部75が係止受け部37に対して正規の係止姿勢で向き合うことが可能となり、両係止片78が係止受け部37から過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片78が折損・破損するのを回避できるようになっている。なお、案内部74の突出方向は、化粧板60の基準面76と直角な面Sに対して平行な方向に向けられている。
【0053】
化粧板60の内面には、
図5に示すように、装着部72を受ける取付受け部80が一体に形成されている。取付受け部80は、支持板73の両側縁部が摺接可能に嵌合される一対のレール部81と、両レール部81間の両側に位置して両レール部81に連結される板片状の一対の第1突状部82と、両レール部81間のほぼ中央に位置する板片状の第2突状部83とを有している。装着部72は、
図15に示すように、取付受け部80に下方からスライドして取り付けられ、その取り付け過程では、
図16に示すように、支持板73の中央部が第1突状部82に弾性的に乗り上げられつつ支持板73の両側縁部がレール部81内を摺動する一方、正規に取り付けられるに伴い、
図17に示すように、支持板73が下側規制部を乗り越えて取付受け部80内にスナップ嵌合されるようになっている。この取り付け状態では、取付受け部80内における装着部72の上下方向及び幅方向への遊動が許容されており、これにより、装着部72と装着受け部35との間の取り付け誤差が吸収されて、弾性係止部75に過剰な応力が発生しないようになっている。
【0054】
また、装着部72の取付受け部80への取り付け状態では、レール部81の上端閉止面に支持板73の両端上縁部が当接して、装着部72の上方への抜けが規制されるとともに、第1突状部82に支持板73の両側下縁部が当接して、装着部72の下方への抜けが規制され、かつスリット77内に第2突状部83が凹凸状に嵌合するようになっている。
【0055】
ところで、上述した両係止片78の開口方向の傾斜に起因して、装着部72には上下方向の構造識別性を有することが求められる。その点、上記の構成によれば、スリット77内に第2突状部83が嵌れば、装着部72の化粧板60への取り付けが許容される一方、スリット77内に第2突状部83が嵌らなければ、装着部72の化粧板60への取り付けが規制されるため、化粧板60に対して装着部72が上下反転して誤組み付けされる事態を確実に回避できる。
【0056】
次に、化粧板60のケーシング20への取り付け方法について説明する。
まず、ベースプレート22の下端部に下方から化粧板60の上端部を押し当てるようにして、受け孔31内に突片部63の先端側を差し込む。すると、
図8に示すように、第1片部65が拡開部32を通して受け孔31内に進入するとともに、第1片部65の先端が架橋板30を摺動し、それに伴って化粧板60の下端部が下カバー23側に徐々に近づいて行く。
図7及び
図9に示すように、第1片部65の略全体が受け孔31内に進入すると、突片部63の係止爪71が掛止部33を弾性的に係止して化粧板60の下方への抜けが規制されるとともに、弾性片70の両端側縁が第1リブ28に当接して化粧板60の幅方向への遊動が規制され、かつ、受け溝67の奥端に第2リブ29の下端が当接して化粧板60の上方への押し込みが規制される。これにより、化粧板60の上端部は回動初期位置に位置決めされる。
【0057】
上記の状態で、化粧板60をその上端部を支点として下カバー23側に向けて回動する。化粧板60が回動完了位置に至ると、
図10に示すように、第1片部65が略垂直に起立した状態となり、第1片部65の外面が側板25の内面に当接して化粧板60の外側への遊動が規制されるとともに、ステージ部62の突端が垂下部34に当接して化粧板60の内側への遊動が規制される。
【0058】
また、
図11に示すように、化粧板60が回動完了位置に至る手前で、化粧板60の基準面76がやや上向きの状態になると、弾性係止部75と係止受け部37とが互いに正対して、両係止片78の誘い込み部79が凸曲面部39の上下両面に臨むように配される。さらに回動が進むと、
図12に示すように、両係止片78の先端部が凸曲面部39の上下両面を摺動し、それに伴って両係止片78が拡開変形する。このとき、両係止片78の先端部が先端尖がり気味の凸曲面部39を摺動するため、誘い込み部79が真円弧の曲面を摺動する場合と違って、両係止片78の拡開量が急激に大きくなることがなく、化粧板60が回動されるという事情があっても、両係止片78が係止受け部37から過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片78が折損・破損するのを回避できる。
【0059】
その後、化粧板60が回動完了位置に至ると、
図13に示すように、両係止片78の奥端に係止受け部37の先端が当接するとともに両係止片78が係止受け部37を上下方向から弾性的に挟持して、化粧板60がケーシング20に取り付け固定される。この場合、弾性係止部75が案内部74を挟んだ2箇所に設定されているから、弾性係止部75が1箇所のみに設定されるよりも係止強度が高められる。また、案内部74の片側に両弾性係止部75が順次並んで配されるよりも、両弾性係止部75のそれぞれと案内部74との間の距離を小さくできるため、取り付け誤差等に起因する弾性係止部75と係止受け部37との間の位置ずれを未然に防止できる。
【0060】
化粧板60が回動完了位置に至る手前で、かつ弾性係止部75と係止受け部37とが互いの係止動作を開始する前に、案内部74が案内受け部41内に適合して、装着部72の幅方向への遊動が規制されるとともに、弾性係止部75と係止受け部37との位置関係が適正に調整される。このため、弾性係止部75と係止受け部37とが係止動作を開始するときには、弾性係止部75が係止受け部37と正対可能な適正位置に至らされ、両者の係止動作が正確に行われる結果、化粧板60がケーシング20に位置ずれすることなく取り付けられる。したがって、ケーシング20に対する化粧板60の取り付け信頼性が高められる。