【0020】
第1及び第2の樹脂フィルムに付着させたレーザ吸収物質は、抵抗値が高いカーボンブラックを希釈することで半透過するレーザ吸収物質に変換し、レーザ吸収物質のレーザ光吸収率を30〜70%とし、レーザ吸収物質のレーザ光透過率を0〜50%とする。
ここで、レーザ吸収物質は、レーザ光を30〜70%吸収し、レーザ光0〜50%を透過すると例示したが、抵抗値が高いカーボンブラックの希釈率により、その割合は適宜異なる。
溶着すべき樹脂フィルムが増加する場合には、希釈率を高め、透過率を高めることも可能である。
より溶着性を強める場合には、第2の樹脂フィルムの上面に印刷されたレーザ吸収物質は、レーザ光を全部吸収するインキとしても良い。
【実施例】
【0022】
以下、メンブレンスイッチの作製方法に適用させた実施例を記載する。
図2(a)において、第1の樹脂フィルムである上部基板1と、第2の樹脂フィルムである下部基板2とは、連結する樹脂フィルムである。
スイッチ接点5は、まず導体である銀インキで厚さ9μに印刷され、さらにカーボンブラックにて厚さ9μで印刷される二重構造である。回路パターン6も同様に、二重構造で印刷されており、厚さ9μを有する。
図2(b)で示すように、連結する第1及び第2の樹脂フィルムの周辺部分には、レーザ吸収物質4をフィルタ印刷する。レーザ吸収物質は、抵抗値が高いカーボンブラックを希釈したインクであり、厚さ0.5〜15μに印刷する。
図2(c)は、絶縁材料からなる第3の樹脂フィルムであるスペーサ3を示す。ここで、第1乃至第3の樹脂フィルムは、PET樹脂フィルムである。
【0023】
図2(d)は、その周辺部にレーザ吸収物質4をフィルタ印刷し、スイッチ接点5を含む回路パターン6をレジスト印刷した第1の樹脂フィルム1及び第2の樹脂フィルム2をスペーサとなる第3の樹脂フィルム3を介して、フィルタ印刷部と接点同士が対向するように密着させ、連結する第1樹脂フィルムと第2樹脂フィルムを中折10し、周辺部にレーザ光を照射する以前の状態を示す。
ここで、第3の樹脂フィルムであるスペーサ3には、スイッチ接点に対向する穴7を有する。第1及び第2の樹脂フィルムに、スペーサ3を介在させることで、スイッチ接点は接触することなく対向するが、スイッチ接点を押下すれば、容易に導電する構造である。
【0024】
これらの構造を有する樹脂フィルムの周辺部にレーザ光を照射し、レーザ光の一部を第1の樹脂フィルムのフィルタ印刷部のレーザ吸収物質に吸収させ、残部を透過させて、第2の樹脂フィルムのフィルタ印刷部のレーザ吸収物質に吸収させることにより、レーザ吸収物質を発熱させ、この発熱により密着部を溶融さて、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを第3の樹脂フィルムを介して接着させる。つまり、第1乃至第3の樹脂フィルムの一括溶着が、可能となる。
【0025】
図3において、周辺部にレーザ吸収物質24をフィルタ印刷し、スイッチの接点25を含む回路パターンをレジスト印刷した第1の樹脂フィルム21及び第2の樹脂フィルム22をスペーサとなる第3の樹脂フィルム23を介してフィルタ印刷部とスイッチ接点同士が対向するように密着させ20、周辺部にレーザ光26を照射し、レーザ光の一部を第1の樹脂フィルムに付着させたレーザ吸収物質に吸収させ、残部を透過させて第2の樹脂フィルムに付着させたレーザ吸収物質に吸収させることによりレーザ吸収物質を発熱させ、この発熱により密着部を溶融させることにより第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを第3の樹脂フィルムを介して密着させることができる。
また、上方をガラス部材28により、下方をクッション材29によって挟み込むことで、圧力27が付加され、接着力を高める。
【0026】
本発明による樹脂フィルムの接着方法により作製されるメンブレンスイッチにおける印刷工程で言及すると、PET樹脂のフィルムに、銀インキにて導体(スイッチ接点)を9μの厚さで印刷し、厚さ15μのレジストで覆い、抵抗値が高いカーボンブラックを希釈したレーザ吸収物質を厚さ9μで印刷する。
【0027】
本発明による樹脂フィルムの接着方法により作製されるメンブレンスイッチで用いるカーボンブラックは、抵抗値が高いカーボンブラックを希釈することで半透過するレーザ吸収物質に変換し、レーザ光吸収率は30〜70%,レーザ光透過率は0〜50%とする。
【0028】
図3において、走査波長が810nm,940nm,1064nm(YAGレーザ)のいずれかのレーザ光26を照射する。
具体的には、波長1064nm(YAGレーザ)のレーザ光を、電流:10A,速さ:15nm/secで溶着させた。
その結果、第1の樹脂フィルム21の下面に印刷されたレーザ吸収物質24は、レーザ光を50%吸収し、レーザ光50%を透過した。
レーザ光50%を吸収したレーザ吸収物質24は、充分に発熱され、その発熱により、第1の樹脂フィルム21の下面とスペーサ23の上面とを溶着した。
透過したレーザ光50%は、第2の樹脂フィルム22の上面に印刷されたレーザ吸収物質24により吸収され、充分に発熱し、その発熱により、第2の樹脂フィルム22の上面とスペーサ23の下面とを溶着した。
【0029】
ここで、レーザ吸収物質24はレーザ光を30〜70%吸収し、レーザ光0〜50%を透過すると例示したが、抵抗値が高いカーボンブラックの希釈率により、その割合は適宜異なる。
溶着すべき樹脂フィルムが増加する場合には、希釈率を高め、透過率を高めることも可能である。つまり、3枚以上の樹脂フィルムの溶着が可能となる。
より溶着性を強める場合には、第2の樹脂フィルム22の上面に印刷されたレーザ吸収物質24は、レーザ光を全部吸収するインキとしても良い。
【0030】
溶着すべき樹脂部材が増えても、樹脂フィルムに付着させたレーザ吸収物質の半透過する特性により、一括して溶着することが可能であることから、溶着時間は短縮できる。
つまり、3枚以上の樹脂フィルムの溶着時間が短縮可能である。
【0031】
また、本発明を用いるメンブレンスイッチの作製方法では、レーザ溶着であることから、耐薬試験や耐油試験等での剥離は確認されていない。
さらに、従来技術にある両面テープは付帯しないので、防水,防塵に適したスイッチである。