【文献】
KITAMURA K,AGRICULTURAL AND BIOLOGICAL CHEMISTRY,日本,JAPAN SOC. FOR BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY 以下備考,1991年 1月 1日,V55 N2,P615-616,AND AGROCHEM
【文献】
SPRINGER G F,PROCEEDINGS OF THE SOCIETY FOR EXPERIMENTAL BIOLOGY & MEDICINE,米国,ACADEMIC PRESS,1957年 2月 1日,V94 N2,P404-409
【文献】
Takashi Nishino et al.,Carbohydrate Research,1994年,Vol.255,p.213-224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス−(ベータ−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、2,3−ジメルカプトプロパン−l−スルホン酸(DMPS)、および2,3−ジメルカプトコハク酸(DMSA)からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
前記対象が、慢性または急性出血性疾患、血液因子欠乏により引き起こされる先天性凝固障害、および後天性凝固障害からなる群より選択される出血性疾患を有する、請求項21または22のいずれかに記載の組成物。
強化された血液凝固を必要としている対象を処置するための薬剤の製造における、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法によって生産されたフコイダンの使用であって、前記フコイダンは、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により決定した場合に非検出可能レベルの砒素、臭素、セリウム、コバルト、鉛、リチウム、モリブデン、錫、タングステン、およびバナジウムを有する、使用。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施は、特に指示がない限り、当該分野の技術の範囲内にあるタンパク質化学、生化学、分子生物学、および薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献中に十分に説明されている。例えば、ProteinPurification Methods:A Practical Approach,(E.L.V.Harris and S.Angal,Eds.,1989);ProteinPurification Applications:A Practical Approach,(E.L.V.Harris and S.Angal,Eds.,1990);T.E.Creighton、Proteins:Structuresand Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(WorthPublishers,Inc.,current addition);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplaneds.,Academic Press,Inc.);Morrison and Boyd,Organic Chemistry(Allyn and Bacon,Inc.,currentaddition);J.March,Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill,current addition);Remington:TheScience and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,Ed.,20版;およびGoodman & Gilman The PharmacologicalBasis of Therapeutics,J.Griffith Hardman,L.L.Limbird,A.Gilman、10版を参照されたい。
【0021】
本明細書中で引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、上記であろうと下記であろうと、参照によりそれらの全体がここに組み込まれる。
【0022】
以下のアミノ酸略号は、本文全体を通して使用される:
アラニン:Ala(A) アルギニン:Arg(R)
アスパラギン:Asn(N) アスパラギン酸:Asp(D)
システイン:Cys(C) グルタミン:Gln(Q)
グルタミン酸:Glu(E) グリシン:Gly(G)
ヒスチジン:His(H) イソロイシン:Ile(I)
ロイシンン:Leu(L) リシン:Lys(K)
メチオニン:Met(M) フェニルアラニン:Phe(F)
プロリン:Pro(P) セリン:Ser(S)
トレオニン:Thr(T) トリプトファン:Trp(W)
チロシン:Tyr(Y) バリン:Val(V)
【0023】
1. 定義
本発明を説明する際、以下の用語が用いられ、以下に示されるように定義されることを意図している。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)、(an)」、および「前記(the)」は、その内容が明らかに別のものを指示しない限り、複数の言及を含む留意されなければならない。従って、例えば、「フコイダン」への言及は、2以上のそのようなフコイダン等の混合物を含む、などである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、その用語が修飾する値の約±10%を意味する。
【0026】
用語「生物活性な」は、天然分子の構造的、調整的、または生化学的機能を有するタンパク質を意味する。
【0027】
用語「フコイダン」は、本明細書中で使用される場合、多くの海洋植物および動物に見出される硫酸化アルファ−L−フカンを意味する。フコイダンは特に、褐藻類の細胞壁中に豊富にあり、Fucus属(例えば、Fucusvesiculosis、Fucus evanescens、Fucus distichus、およびFucus serratus)またはLaminaria属(例えば、Laminariajaponica、Laminaria religiosa、およびLaminaria abyssalis)由来のフコイダンが含まれる。フコイダンとしてはまた、Chordafilum、Cladosiphon okamuranus、Undaria pinnatifida、Leathesia difformis、Ascophyllumnodosum、Ecklonia kurome、Pelvetia fastigiata、Saundersella simplex、Chordaria flagelliformis、またはフコイダンを含有する何か他の海洋植物もしくは動物の種由来のフコイダンも含まれる。加えて、用語フコイダンは、生物活性なフラグメント、誘導体、またはそれらの類似物を含む。フコイダンは、より大きいフコイダン分子の分解(例えば、加水分解)により生成されたフコイダンのフラグメントを含み得る。分解は、分解フコイダンをもたらすための酸、塩基、熱、または酵素を用いたフコイダンの処理を含む当業者に知られた様々な手段のいずれかによって達成され得る。フコイダンはまた、化学的に改変されてもよく、硫酸化、ポリ硫酸化、アセチル化、エステル化、およびメチル化を含むがそれらに限定されない修飾を有してもよい。
【0028】
「実質的に精製された」は一般に、ある物質(例えば、フコイダン)が、その物質が存する試料の大部分のパーセントを占めるような物質の単離を意味する。典型的にはある試料において、実質的に精製された成分は、試料の50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90〜95%を占める。
【0029】
Aを含有する組成物が「実質的にBを含まない」のは、組成物中のA+Bの合計の少なくとも約80重量%がAである場合である。好ましくは、Aは、組成物中のA+Bの合計の少なくとも約85重量%〜95重量%を占める。
【0030】
本明細書中で用いられる「抗凝固剤」は、血餅形成を防止また減速することができる任意の薬剤を意味する。
【0031】
本明細書中で用いられる「凝固促進剤」は、血餅形成を加速することができる任意の薬剤を意味する。
【0032】
本明細書中で用いられるような「キレート剤」は、金属と結合することができる化合物、ペプチド、またはタンパク質を意味する。キレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス−(ベータ−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、2,3−ジメルカプトプロパン−l−スルホン酸(DMPS)、および2,3−ジメルカプトコハク酸(DMSA)等が含まれる。キレート剤は、固体担体(例えば、イミノ二酢酸キレート樹脂)上に固定されてもよい。
【0033】
用語「に由来する」は分子の起源を確認するために本明細書中で用いられるが、その分子が作られ得る方法を限定することを意図するものではなく、例えば、化学合成または組換え手段によるものであってもよい。
【0034】
「誘導体」は、参照分子の所望の生物活性(例えば、凝固活性)が保持される限り、目的の参照分子またはその類似物の、硫酸化、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、ポリマー接合(例えば、ポリエチレングリコールとの)、または他の外来部分の付加のような、任意の適切な修飾を意図する。フコイダンは、例えば、凝固促進機能を改善するために化学的に改変され得る。そのような修飾としては、硫酸化、多硫酸化、エステル化、およびメチル化が含まれるが、それらに限定されない。類似物および誘導体を作るための方法は、当該技術分野において一般に利用可能である。
【0035】
「フラグメント」は、インタクトな全長配列および構造の一部のみからなる分子を意図する。フコイダンのフラグメントは、より大きなフコイダン多糖の分解(例えば、加水分解)によって生成され得る。フコイダンの活性フラグメントは、当該フラグメントが凝固活性のような生物活性を保持するのであれば、一般に、全長多糖の少なくとも約2〜20個の糖単位、好ましくは全長分子の少なくとも約5〜10個の糖単位、または2個の糖単位と全長分子との間の任意の整数個の糖単位を含む。
【0036】
「薬学的に許容される賦形剤またはキャリア」は、本発明の組成物中に任意に含有させることができ、患者に対し重大な有害な毒性効果をまったく引き起こさない賦形剤を意味する。
【0037】
「薬学的に許容される塩」としては、アミノ酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、および硝酸塩のような無機酸を用いて調製された塩、または、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩、パルモエート、サリチル酸塩およびステアリン酸塩、ならびにエストレート、グルセプテートおよびラクトビオン酸塩のような有機酸を用いて調製された塩が含まれが、それらに限定されない。同様に、薬学的に許容される陽イオンを含有する塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換されたアンモニウムを含む)が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
本明細書中で記載される「活性分子」または「活性薬剤」としては、in vivoまたはin vitroで実証され得るある程度の、しばしば有用な効果をもたらす任意の薬剤、薬物、化合物、物質の組成物もしくは混合物が含まれる。これは、食品、食品サプリメント、栄養素、栄養補助食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有用な薬剤が含まれる。本明細書中で用いられる場合、これらの用語は、患者において局所的または全身的効果を引き起こす任意の生理的または薬理学的に活性な物質をさらに含む。
【0039】
「任意の」または「任意に」は、続いて説明される状況が生じるかまたは生じないことを意味し、その結果、説明は、状況が生じる例および状況が生じない例を含む。
【0040】
用語は「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書中で区別なく用いられ、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を意味する。哺乳動物としては、ネズミ類、齧歯類、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物およびペットが含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
2. 本発明を実行するモード
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、特定の処方またはプロセスパラメータに限定されるものではなく、そのようなものは変わり得ることが理解される必要がある。本明細書中で用いられる専門用語が、本発明の特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定的であることを意図していないことが理解される必要がある。
【0042】
本明細書中で説明されるものと類似または同等の多くの方法および材料が本発明の実施において用いられ得るが、好ましい材料および方法が本明細書中で説明される。
【0043】
A. フコイダンの生産
本発明は、重金属イオン、細菌性および内毒素汚染物質、ならびに他の不純物を実質的に含まないフコイダンの単離を考慮する精製手順の発見に基づく。この方法は、重金属を除去するためのキレート剤を用いた処理、不純物を除去するための1回以上の選択的沈降、ならびに細菌性および内毒素汚染物質を除去するための濾過を含む一連の単離ステップを含む。
【0044】
本発明のさらなる理解のため、フコイダン抽出物を精製する方法に関してより詳細な考察が以下に提供される。
【0045】
フコイダン
フコイダン抽出物のどのような供給源も精製において用いることができる。フコイダンは、多くの海洋植物および動物において見出され、褐藻類(Phaeophyceae)の細胞壁中に特に豊富である。例えば、Fucus属(例えば、Fucusvesiculosis、Fucus evanescens、Fucus distichus、およびFucus serratus)またはLaminaria属(例えば、Laminariajaponica、Laminaria religiosa、およびLaminaria abyssalis)の褐藻類に由来するフコイダンを精製において使用できる。あるいは、Chordafilum、Cladosiphon okamuranus、Undaria pinnatifida、Leathesia difformis、Ascophyllumnodosum、Ecklonia kurome、Pelvetia fastigiata、Saundersella simplex、Chordaria flagelliformis、あるいはフコイダンを含有する任意の他の海洋植物または動物の種を含むがそれらに限定されない他の供給源に由来するフコイダンも、本発明の実施において使用され得る。
【0046】
キレート剤
フコイダンを含有する異種混合物から金属イオン汚染物質を除去するため、金属イオンと結合できる任意のキレート剤が使用され得る。キレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス−(ベータ−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、2,3−ジメルカプトプロパン−l−スルホン酸(DMPS)、および2,3−ジメルカプトコハク酸(DMSA)等が含まれるが、それらに限定されない。あるいは、フコイダンを含有する試料から金属イオンを除去するために、固定されたキレート群を含む金属キレート樹脂を用いることができる。例えば、キレート配位子イミノ二酢酸塩(例えば、CHELEX100(Bio−rad)、DOWEXA1(Dow Chemical Co.)、およびキレート樹脂(Hampton Research)を含有する商業的に利用可能なキレート樹脂が使用され得る。キレート樹脂は、フコイダン試料にバッチで添加し、遠心分離により除去され得る。あるいは、金属イオンは、当該技術分野においてよく知られている方法により、キレート樹脂を含有するカラムを通してのクロマトグラフィーにより、フコイダン試料から除去できる。
【0047】
フコイダンの選択的沈降
フコイダン抽出物は、エタノールを用いたフコイダンの選択的沈降によりさらに精製される。選択的沈降により、いくらかのキレート剤および他の汚染物質がフコイダン混合から除去される。ある一定の実施形態において、フコイダンは、フコイダン混合物中で約40%〜50%(v/v)の濃度のエタノールによって1回以上選択的に沈降させられる。フコイダン混合物へのエタノールの添加の前に、フコイダン混合物のpHは、約pH5.7〜約pH6.0に調節され、NaClが約20〜24g/リットルの濃度でフコイダン混合物に添加される。フコイダンの沈降後、沈降フコイダンから上澄みが除去され、沈降フコイダンは、水溶液中に再懸濁させられる。そのような精製の繰り返しサイクルにより、フコイダンの純度を向上させことができる。
【0048】
濾過
フコイダンは、細菌性および内毒素汚染物質を除去するために、正に帯電している0.2μmフィルタを通して濾過される。濾過された生成物は、凍結乾燥または噴霧乾燥を使って乾燥させることができる。典型的には、フコイダンの収率は、約50%以上、より好ましくは約60%〜約80%以上である。
【0049】
精製フコイダンの分析
フコイダン試料は、純度ならびに、分子量、フコースおよびキシロースを含む炭水化物含有量、重金属汚染、硫酸塩、および水分のような様々な特性について分析され得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC:highperformance liquid chromatography)、元素組成分析、レーザー光散乱(LLS:laser light scattering)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS:inductivelycoupled plasma mass spectrometry)、およびGC−MSを含むがそれらに限定されない多くの分析手法をフコイダン試料の特性決定に用いることができる。
【0050】
B 薬学的組成物
精製フコイダンは、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を任意に含む薬学組成物に配合され得る。代表的な賦形剤としては、炭水化物、無機塩、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびそれらの組み合わせが制限なく含まれる。注射用組成物として適する賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、および界面活性剤が含まれる。糖、アルジトールのような誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーが、賦形剤として存在し得る。特定の炭水化物賦形剤としては、例えば、果糖、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトール類が含まれる。賦形剤としては、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびそれらの組み合わせのような無機塩または緩衝剤も含まれ得る。
【0051】
本発明の組成物は、微生物生育を防止または抑止するための抗菌剤も含有し得る。本発明に適する抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルゾル、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0052】
酸化防止剤も同様に、組成物中に存在し得る。酸化防止剤は、酸化を防止し、それによって調剤のフコイダンまたは他の成分の劣化を防止するために使用される。本発明において使用するのに適したな酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0053】
界面活性剤が賦形剤として存在し得る。代表的な界面活性剤としては、「Tween 20」および「Tween 80」のようなポリソルベート、ならびにF68およびF88(BASF,MountOlive,New Jersey)のようなプルロニック;ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(好ましくは、リポソーム形でないが)のようなリン脂質、脂肪酸および脂肪酸エステルのような脂質;コレステロールのようなステロイド;EDTAのようなキレート剤;ならびに亜鉛および他のそのような適切な陽イオンが含まれる。
【0054】
酸または塩基は、組成物中で賦形剤として存在し得る。使用できる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、蟻酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される酸が含まれる。適切な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、potassiumfumerate、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される塩基が制限なく含まれる。
【0055】
組成物中のフコイダンの量(例えば、ドラッグデリバリーシステム中に含有される場合)は、因子の数に応じて変わるが、組成物が単位剤形または容器(例えば、バイアル)中にある場合に、最適には治療有効用量であろう。治療有効用量は、どの量が臨床的に望ましい終点をもたらすかを決定するために、組成物の量を増加させて繰り返し投与することにより実験的に決定され得る。
【0056】
組成物中の任意の個別の賦形剤の量は、賦形剤の性質および機能ならびに組成物の特定の要求に応じて変わる。典型的には、任意の個別の賦形剤の最適量は、常用の実験によって、すなわち、変化する量(低い量から高い量へ)の賦形剤を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを試験し、次いで、重大な悪影響が全くなく最適性能が達成される範囲を決定することにより、決定される。しかしながら、一般に、賦形剤(単数または複数)は、組成物中で、賦形剤の約1%〜約99重量%、好ましくは約5%〜約98重量%、より好ましくは約15〜約95重量%、最も好ましくは30重量%未満の濃度で存在する。これらの上述の製薬用賦形剤は他の賦形剤と共に、“Remington:TheScience & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995),.the“Physician’sDesk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998),およびKibbe,A.H.,Handbookof Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.D.2000に記載されている。
【0057】
組成物は、あらゆるタイプの処方物、特に注射に適合させられた処方物、例えば、使用前に溶媒を用いて再構成でき、注射溶液または懸濁液としてそのままで使える粉体または凍結乾燥物、使用前に賦形剤と組み合わせるための乾燥不溶性組成物、ならびに投与前に希釈するためのエマルションおよび液体濃縮物を包含する。注射前に固体組成物を再構成すのに適する希釈剤の例としては、注射用滅菌精製水、デキストロース5%水溶液、リン酸塩緩衝食塩水、リンゲル溶液、食塩水、無菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが含まれる。液体薬学的組成物に関して、溶液および懸濁液が想定される。付加的な好ましい組成物としては、経口、経眼、または局所的送達が含まれる。
【0058】
本明細書中の調剤はまた、意図される送達および使用のモードに応じて、注射器、埋め込みデバイス等の中に収容され得る。好ましくは、本明細書中で記載されるフコイダン組成物は、単位剤形であり、事前計量されたまたは事前包装された形態の単一用量に適した本発明の抱合体または組成物の量を意味する。
【0059】
フコイダン組成物は本明細書中で、止血剤、血液因子、または症状もしくは疾患について対象を処置するために使用される他の薬物のような1種以上の付加的な薬剤を任意に含有し得る。第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォウィルブランド因子のような1種以上の血液因子を含有する配合調製物が特に好ましい。フコイダン組成物はまた、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、prekallekrein、および高分子量キニノーゲンを含むがそれらに限定制限されない内因性凝固経路の活性化因子、または組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含むがそれらに限定されない外因性凝固経路の活性化因子のような多の凝固促進剤を含んでもよい。フコイダン組成物は、天然の、合成の、または組み換えによる凝固因子もしくはフラグメント、変異体または生物活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)共有結合修飾されたそれらの誘導体を含有してもよい。あるいは、そのような薬剤は、フコイダンとは別個の組成物中に含有されて、本発明のフコイダン組成物と同時に、その前に、またはその後に同時投与され得る。
【0060】
C. 投与
フコイダンを用いた少なくとも1回の治療上有効な処置サイクルが対象に施される。「治療上有効な処置サイクル」とは、施された場合に、出血性障害についての個体の処置に関してポジティブな治療応答を引き起こす処置サイクルを意図する。止血を改善するフコイダンを用いた処置サイクルが特に興味深い。「ポジティブな治療応答」とは、本発明による処置を受ける個体が、血液凝固時間の短縮ならびに出血の減少および/または因子交換療法の必要の減少のような改善を含む、出血性障害の1つ以上の症状の改善を示すことを意図する。
【0061】
フコイダンを用いた他の治療上有効な処置サイクルは、抗凝固剤として、深部静脈血栓症、動脈血栓症ならびに他の心血管疾患および癌疾患のような血栓形成促進性の症状を有する対象に対して、予防的および/または維持療法として施される。
【0062】
ある一定の実施形態において、フコイダンおよび/または止血剤、血液因子、ないしは他の薬剤のような1種以上の治療薬剤を含む組成物の複数の治療上有効な用量が投与される。本発明の組成物は典型的には、必然的ではないものの、経口的に、注射(皮下、静脈内または筋肉内)により、輸液により、または局所的に投与される。薬学的調製物は、投与の直前に液体状の溶液または懸濁液の形状であり得るが、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、カプセル剤、散剤、ゲル、マトリックス、座薬等の別の形態を取ってもよい。経肺、経直腸、経皮、経粘膜、髄腔内、心膜、動脈内、大脳内、眼内、腹腔内などの付加的な投与モードも考えられる。フコイダンおよび他の薬剤を含む薬学的組成物は、当該技術分野において知られている任意の医学的に許容される方法に従って同じまたは異なる経路で投与され得る。
【0063】
1つの特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、病変、外傷、または手術の結果としての出血の処置のために、フコイダンの局所送達のために用いられる。本発明による調製物はまた、局所的処置にも適している。例えば、フコイダンは、出血部位に注射によって投与されてもよく、または固体、液体、もしくは軟膏の形態で、好ましくは接着テープまたは創傷カバーによって局所的に投与されてもよい。坐剤、カプセル剤、特に胃液耐性カプセル剤、ドロップまたはスプレーもまた用いられ得る。出血部位を標的化するために、特定の調製物および適切な投与方法が選択される。
【0064】
別の実施形態において、フコイダンおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、例えば、計画的手術の前に、予防的に投与される。そのような予防的使用は、既知のすでにかかっている血液凝固障害を有する対象にとりとりわけ価値がある。
【0065】
本発明の別の実施形態において、フコイダンおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、徐放性処方物の状態であるか、または徐放性デバイスを用いて投与される処方物の状態である。そのようなデバイスは、当該分野においてよく知られており、例えば、経皮パッチ、および非徐放性薬学的組成物を用いて徐放作用を達成するために、種々の用量で連続的な定常様式で経時的な薬物送達に備えることができる小型埋め込みポンプが含まれる。
【0066】
本発明はまた、結合体または組成物中に含有されるフコイダンを用いた処置に応答性の状態を患う患者に、本明細書中に提供されるようなフコイダンを含む結合体を投与するための方法を提供する。この方法は、本明細書中に記載されるモードのいずれかによって、治療有効量の結合体または薬物送達系(好ましくは、薬学的組成物の一部として提供される)を投与するステップを含む。この投与方法は、フコイダンを用いた処置に応答性の任意の状態を処置するために用いられてもよい。より具体的には、本明細書中の組成物は、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK)のような1つ以上の接触因子欠乏、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子のような臨床的に重大な出血に関与する1つ以上の因子の欠乏、ビタミンK欠乏症、無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含むフィブリノーゲンの障害、α
2−抗プラスミン欠乏、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血を含む、出血性疾患を処置するのに有効である。
【0067】
特定のフコイダンがどの状態を効率的に処置できるかを当業者は理解するであろう。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、ならびに処置される状態の重症度、ヘルスケアの専門家の判断、および投与される結合体に応じて変わる。治療有効量は、当業者によって決定され得、各特定の症例の特定の要件に適合される。
【0068】
一般に、治療有効量は、1日にフコイダン約0.01mg/kg〜200mg/kg、より好ましくは、1日に約0.01mg/kg〜20mg/kg、さらにより好ましくは、1日に約0.02mg/kg〜2mg/kgの範囲である。好ましくは、そのような用量は、0.01〜50mg/kgを1日4回(QID)、0.01〜10mg/kgQID、0.01〜2mg/kg QID、0.01〜0.2mg/kg QID、0.01〜50mg/kgを1日3回(TID)、0.01〜10mg/kg TID、0.01〜2mg/kgTID、0.01〜0.2mg/kg TID、0.01〜100mg/kgを1日2回(BID)、0.01〜10mg/kg BID、0.01〜2mg/kg BID、または0.01〜0.2mg/kgBIDならびに局所用の単一または多重適用については1日に0.1〜10%の範囲である。投与される化合物の量は、特定のフコイダンの効力および所望の大きさまたは凝血促進作用および投与経路に依存する。
【0069】
精製フコイダン抽出物(同じく、好ましくは製剤の一部として提供される)は、単独で、あるいは他のフコイダン抽出物または止血剤、血液因子、もしく特定の状態ないしは疾患を処置するために用いられる他の薬剤のような治療薬と組み合わせて、臨床医の判断、患者の要求等に応じて種々の投薬スケジュールに従って投与され得る。具体的な投薬スケジュールは、当業者に公知であるか、または慣用的な方法を用いて実験的に決定され得る。例示的な投薬スケジュールとしては、限定されないが、1日5回投与、1日4回投与、1日3回投与、1日2回投与、1日1回投与、週3回投与、週2回投与、週1回投与、月2回投与、月1回投与、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましい組成物は、1日1回よりも多くの投与を必要としない組成物である。
【0070】
フコイダンは、他の薬剤の前に、他の薬剤と同時に、または他の薬剤に続いて投与され得る。他の薬剤と同時に投与される場合、フコイダンは、同じまたは異なる組成物中に提供され得る。従って、フコイダンおよび他の薬剤は、併用療法として個体に与えられ得る。「併用療法」とは、物質の組み合わせによる治療効果が治療を受ける対象に引き起こされるような、対象への投与を意図する。例えば、併用療法は、組み合わされて治療有効用量を含む、フコイダンを含むある用量の薬学的組成物と、止血剤または凝固因子(例えば、FVIIIまたはFIX)のような少なくとも1つの他の薬剤を含むある用量の薬学的組成物とを、特定の投薬レジメンに従って投与することによって達成され得る。同様に、フコイダンおよび1つ以上の他の治療薬は、少なくとも1つの治療用量で投与され得る。別々の薬学的組成物の投与は、これらの物質の組み合わせの治療効果が治療を受ける対象において引き起こされる限り、同時にまたは別々の時間(すなわち、連続的に、いずれかの順序で、同日に、または他日に)行われ得る。
【0071】
F. 適用
ひとたび精製されると、フコイダン抽出物は、種々の目的に用いられ得る。これに関して、フコイダンは、例えば、血液凝固を促進し、出血を減少させ、抗凝固剤による対象の処置の効果を相殺するための凝固促進剤として、抗炎症剤として、抗がん剤として、抗ウイルス剤としてまたは造血細胞動員剤として用いることができる。凝固を促進し、出血を減少させる精製フコイダン抽出物の能力は、種々のinvitro凝固アッセイ(例えば、dPTおよびaPTTアッセイ)およびin vivo出血モデル(例えば、血友病のマウスまたはイヌにおける尾部切除または表皮出血時間決定)を用いて容易に決定される。例えば、PDRStaff.Physicians’ Desk Reference.2004,Anderson et al.(1976) Thromb.Res.9:575−580;Nordfanget al.(1991)Thromb Haemost.66:464−467;Welsch et al.(1991)Thrombosis Research 64:213−222;Brozeet al.(2001)Thromb Haemost 85:747−748;Scallan et al.(2003)Blood.102:2031−2037;Pijnappelset al.(1986)Thromb.Haemost.55:70−73;およびGiles et al.(1982)Blood 60:727−730を参照されたい。これらは、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0072】
1つの態様において、精製フコイダン抽出物は、出血性疾患、特に、凝固因子の欠乏に関連する出血性疾患の処置において止血を改善するために、または対象における抗凝血剤の作用を逆転させるために、本発明の方法において用いられ得る。フコイダンは、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む出血性疾患を処置するために、対象に投与され得る。フコイダンで処置され得る出血性疾患の例としては、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK)のような1つ以上の接触因子欠乏、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子のような臨床的に重大な出血に関与する1つ以上の因子の欠乏、ビタミンK欠乏症、無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含むフィブリノーゲンの障害、α
2−抗プラスミン欠乏、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血が含まれるが、これらに限定されない。ある一定の実施形態において、フコイダンは、血友病A、血友病Bおよびフォンヴィレブランド疾患を含む先天性凝固障害を処置するために用いられる。他の実施形態において、フコイダンは、第VIII因子、フォンヴィレブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子の欠乏を含む後天性凝固障害、特に、血液凝固因子に対するインヒビターまたは自己免疫により引き起こされる障害、あるいは凝固因子の合成の減少という結果になる疾患または状態により引き起こされる止血障害を処置するために用いられる。
【0073】
患者の要求は、処置される特定の出血性疾患に応じて異なる。例えば、フコイダンは、慢性状態(例えば、先天性または後天性凝固因子欠乏症)を処置するために、複数用量で長期間にわたって投与され得る。あるいは、フコイダンは、急性状態(例えば、手術または外傷に起因する出血、あるいは凝固因子交換療法を受けている対象における因子インヒビター/自己免疫症状の発生)を処置するために、単一または複数用量で比較的短期間、例えば、1〜2週間投与されてもよい。加えて、フコイダン治療は、他の止血剤、血液因子、および医薬品と組み合わせて用いられてもよい。例えば、対象は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1つ以上の因子の治療有効量を投与され得る。処置は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、ならびに高分子量キニノーゲンを含む内因性凝固経路のアクチベーター;または組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含む外因性凝固経路のアクチベーターのような凝固血促進剤を投与するステップをさらに含み得る。加えて、血液製剤の輸液は、過度の出血が起きている対象における失血に取って代わるために必要なことがあり、傷害の場合、外科的修復が出血を止めるために適することがある。
【0074】
本発明はまた、対象における抗凝血剤の作用を逆転させる方法を提供し、この方法は、精製フコイダンを含む組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む。ある一定の実施形態において、対象は、ヘパリン、ワルファリンまたはジクマロールのようなクマリン誘導体、TFPI、ATIII、ループス抗凝固剤、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位がブロックされた第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子インヒビター、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、およびラザクサバン(DPC906)を含む第Xa因子インヒビター、活性化プロテインC(APC:activatedprotein C)および可溶性トロンボモジュリンを含む第Va因子および第VIIIa因子のインヒビター、ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランを含むトロンビンインヒビターを含むがこれらに限定されない、抗凝固剤で処置されているかも知れない。ある一定の実施形態において、対象における抗凝固剤は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、または高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体を含むがこれらに限定されない、凝固因子に結合する抗体であってもよい。
【0075】
ある一定の実施形態において、精製フコイダン抽出物は、単独で投与されてもよく、または1つ以上の異なるフコイダンと共におよび/または対象における抗凝固剤の作用を逆転させるために1つ以上の他の治療薬と共に併用投与されてもよい。例えば、対象は、フコイダンならびに第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1つ以上の因子を含む組成物の治療有効量を投与され得る。処置は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンを含む内因性凝固経路のアクチベーター;あるいは組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含む外因性凝固経路のアクチベーターのような、凝固促進剤を投与するステップをさらに含み得る。
【0076】
別の態様において、本発明は、外科的または侵襲的手技を受ける対象における凝固を改善するための方法を提供し、この方法は、精製フコイダンを含む組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む。ある一定の実施形態において、フコイダンは、単独で投与されてもよく、または1つ以上の異なるフコイダンと共におよび/または1つ以上の他の治療薬と共に、外科的または侵襲的手技を受ける対象に併用投与されてもよい。例えば、対象は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される、1つ以上の因子の治療有効量を投与され得る。処置は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、ならびに高分子量キニノーゲンを含む内因性凝固経路のアクチベーター;あるいは組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含む外因性凝固経路のアクチベーターのような、凝固促進剤を投与するステップをさらに含み得る。
【0077】
別の態様において、本発明は、TFPIを含む組成物を、TFPI活性を阻害するのに十分な量のフコイダンと組み合わせるステップを含む、TFPI活性を阻害する方法を提供する。ある一定の実施形態において、TFPI活性は、精製フコイダン抽出物を含む組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む方法によって、対象において阻害される。ある一定の実施形態において、本発明は、生物学的試料中のTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、生物学的試料(例えば、血液または血漿)を、TFPI活性を阻害するのに十分な量の精製フコイダン抽出物と組み合わせるステップを含む。
【実施例】
【0078】
3. 実験
下記は、本発明を実行するための特定の実施形態の例である。これらの例は、単に例示の目的で提示されるものであり、本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【0079】
使用される数(例えば、量、温度等)に関して正確を期すための努力がなされているが、多少の実験誤差およびずれは、当然考慮されるべきである。
(実施例1)
【0080】
フコイダン試験体1の精製
1日目
フコイダン抽出物(50グラム、NPNutraロット#050316−FU−85)を、水浴中で40〜45℃で45分間撹拌することにより、1000mLの高純度水(NERL、ロット#0808036)に溶解した。2.5グラムのEDTA二ナトリウムを撹拌しつつ添加した時に、溶液はpHが5.82、温度が41℃であった(2.5%wEDTA/w開始フコイダン抽出物、FischerからのEDTAロット#006139)。EDTAが溶解された時に、溶液pHは4.70に低下したが、次に0.1MNaOHで6.02に上方調節した。次に反応物を混合し、40〜45℃およびpH6.0(±0.2)で1時間維持した。1時間後、24グラムの塩化ナトリウム(2%w/v、Fischerロット#010166)を添加し、ウォータージャケットを取り外した。次にpHを、0.1MNaOHでpH5.7〜5.95に調節した。フコイダンを、約1容量の無水エタノール(1.1リットル、Sigma−Aldrich ロット#06563JE)と混合し、常温で一晩沈降させることにより沈降させた。
【0081】
2日目
上澄み溶液を、吸引により多糖類沈降物から除去した。次に沈降物を、1リットル(1000mL)の常温の高純度水を添加し、続いて30〜60分間激しく撹拌して再溶解させた。ひとたび沈降物が溶液中に現れたら、溶液の撹拌を続けることにより20グラム(2%w/v)の塩化ナトリウムを溶解させた。800mLの無水エタノールを、1日目の再溶解、再塩類化した沈降物と混合することにより、多糖を再度沈降させた。再度、多糖を、一晩沈降させた。
【0082】
3日目
上澄み溶液を2日目の沈降物から再度除去し、再溶解(1000mL NERL水)、再塩類化(20グラムのNaCl)、および再沈降(800mLの無水ETOH)のプロセス全体を3日目に繰り返した。フコイダンを、再度一晩沈降させた。
【0083】
4日目
4日目に、上澄みを、吸引により多糖類沈降物から除去した。次に沈降物を、22℃で1〜1.5時間、900mLの高純度水と混合することにより溶解させた。6.85で測定されたpHを、6NHClを添加してpH5.8に調節した。次に溶液全体を、0.2μm KLEENPAK N66 POSIDYNEフィルタカプセル(Pall、ロット#IJ7287)を通して濾過した。次にフラスコおよびフィルタを、約100mLの高純度水ですすぎ、次にこのすすぎ水を、POSIDYNEフィルタを通して濾過し、多糖類溶液に加えた。次に濾液全体(約1.05リットル)を、単一の凍結乾燥機トレイに載せ、−40℃で3時間、凍結させた。次いで凍結乾燥を、続く約48時間にわたって以下のプログラムで実施した:最初の4時間、棚温度10℃、次の20時間、棚温度20℃、最後の24時間、棚温度50℃。次に乾燥生成物を、乾燥機およびトレイから取り出し、事前に風袋を測定しておいたプラスチック製容器に入れた。
【0084】
生成物収量は、26.4グラム(52.8%重量収量)であった。生成物には、ロット/試験体1とラベルし、保存のため二重ポリ袋に入れた。
(実施例2)
【0085】
フコイダン試験体2の精製
1日目
フコイダン抽出物(50グラム、NPNutraロット#050316−FU−85)を、水浴中で40〜45℃で30〜45分間撹拌することにより、1000mLの高純度水(NERL、ロット#0808036)に溶解した。1.25グラムのEDTA二ナトリウムを撹拌しつつ添加した時に、溶液はpHが5.83、温度が42.5℃であった(1.25%wEDTA/w開始フコイダン抽出物、FischerからのEDTAロット#006139)。EDTAが溶解された時に、溶液pHは4.90に低下したが、次に0.1MNaOHで6.04に上方調節した。次に反応物を混合し、40〜45℃およびpH6.0(±0.2)で1時間維持した。1時間のインキュベーション後、溶液pHは6.15であり、22グラムの塩化ナトリウムを溶液中に混合した。pHは、55.72に若干低下したが、次に1MNaOHで6.08に調節した。1リットル(1,000 mL)の無水ETOHを添加することにより、フコイダンを沈降させた。沈降物を、室温で一晩沈降させた。
【0086】
2日目
上澄み溶液を、吸引により多糖類沈降物から除去した。次に沈降物を、1リットル(1,000mL)の常温の高純度水を添加し、続いて30〜60分間激しく撹拌して再溶解させた。ひとたび沈降物が溶液中に現れたら、溶液の撹拌を続けることにより20グラム(2%w/v)の塩化ナトリウムを溶解させた。750mLの無水エタノールを、1日目の再溶解、再塩類化した沈降物と混合することにより、多糖を再度沈降させた。再度、多糖を、一晩沈降させた。
【0087】
3日目
上澄み溶液を2日目の沈降物から再度除去し、再溶解(1,000mL NERL水)、再塩類化(20グラムのNaCl)、および再沈降(750mLの無水ETOH)のプロセス全体を3日目に繰り返さした。フコイダンを、再度一晩沈降させた。
【0088】
4日目
4日目に、上澄みを、吸引により多糖類沈降物から除去した。次に沈降物を、22℃で1〜2時間、900mLの高純度水と混合することにより溶解させた。6.81で測定されたpHを次に、6NHClを添加してpH5.82に調節した。次に溶液全体を、0.2μm KLEENPAK N66 POSIDYNEフィルタカプセル(Pall、ロット#IJ7287)を通して濾過した。次にフラスコおよびフィルタを、約100mLの高純度水ですすぎ、次にこのすすぎ水を、POSIDYNEフィルタを通して濾過し、多糖類溶液に加えた。次に濾液全体(約1.1リットル)を、単一の凍結乾燥機トレイに載せ、−40℃で3時間、凍結させた。次いで凍結乾燥を、続く約48時間にわたって以下のプログラムで実施した:最初の4時間、棚温度10℃、次の20時間、棚温度20℃、最後の24時間、棚温度50℃。次に乾燥生成物を、乾燥機およびトレイから取り出し、事前に風袋を測定しておいたプラスチック製容器に入れた。
【0089】
生成物収量は、25.4グラム(50.8%重量収量)であった。生成物には、ロット/試験体2とラベルし、保存のため二重ポリ袋に入れた。
(実施例3)
【0090】
フコイダン試料の分析
試験体1(実施例1)および試験体2(実施例2)からの精製フコイダン抽出物の試料の特性決定を行い、粗製フコイダン抽出物(NPNutraロット#050316−FU−85)と比較した。試料分析は、BayBioanalytical Laboratory,Inc.(BBL,Hercules,CA)により実行された。フコイダン抽出物の特性決定としては、レーザー光散乱(LLS:laserlight scattering)検出を用いたサイズ排除クロマトグラフィー、フコースおよびキシロース含有量、含水率、重金属、硫酸塩、ならびに元素分析が含まれた。LLSを用いたサイズ排除クロマトグラフィーは、平均分子量を測定するために用いた。フコースおよびキシロースは、フコイダンを加水分解し、フコースおよびキシロース含有量を、小さい炭水化物を分離するために設計されたカラムを用いてHPLCにより測定することによって決定した。総炭水化物含有量も、フコースを標準としてフェノール−硫酸アッセイを用いて推定した。含水率は、カールフィッシャー(KF:KarlFischer)アッセイを用いて測定した。硫酸塩は、イオン交換クロマトグラフィーにより測定し、陽イオン(主にナトリウム、カリウム、および他の重金属)は、ICP−MSにより測定した。加えて、元素組成分析(CHNS)を、試料に対して実行した。ComplexCarbohydrate Reserach Center(University of Georgia,Athens,Georgia)は、試料からのペル−O−トリメチルシリル化メチルグリコシドの調製の後でGC/MSを介して単糖類分析を実行した。LALによる内毒素は、Avigenにおいて決定した。結果の概要を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
試料分析は、以下でさらに詳細に記載される。
【0093】
A. レーザー光散乱(LLS)
フコイダン抽出物を、参照により本明細書中に組み込まれるBBL刊行物SOP−059に記載されるように、レーザー光散乱(LLS)による検出および屈折率(RI)と共にサイズ排除HPLCを使用して分子量について分析した。各試料を、移動相中に約10mg/mLの最終濃度で溶解させた。AmericanPolymer Standardから入手したデキストランをシステム対照として用いた。以下の計測およびパラメータを使用した:
計測およびセットアップ
移動相: 0.1M酢酸アンモニウム
カラム: Shodex OHパックSB−803 HQ 30cm×8mm(ガードカラム付き)
ポンプ: ASIモデル500
注射器: Varian9010オートサンプラー(100μLループを装備)
LLS検出器: Precision Detector PD2020 Multi−Detector Light ScatteringSystem(90°Classical)
RI検出器: Shodex RI SE−61
注入容量: 100μL
流量: 1mL/分
分析時間: 20分間
データシステム: Precision Discovery 32v.0.98.010
【0094】
計器較正は、0.185mL/gの示差屈折率(dn/dc)値を有するNIST BSAロット927cを使用して実行した。デキストラン対照分子量についての計算は、AmericanPolymer Standardにより報告された0.147mL/gのdn/dcに基づいた。試料の分子量についての計算は、Sigmaテクニカルレポートから得られた0.137mL/gのdn/dcが使用した。単一注入を各試料について行った。
【0095】
フコイダン試料の分子量(MW)測定の結果の概要を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
これらの結果は、3つの粗製試料間の分子量の有意な差を示している。一般に、分子量値は、実験室内で約10%変動し得る。
【0098】
B.フコイダンの加水分解ならびにHPLCによるキシロースおよびフコースの測定
試料を、2M HClに溶解して約10mg/mL溶液を得た。各試料の5つの1mLアリコットを、60℃で、4mLガラスバイアル中で異なる時間インキュベートした。各試料の1つのバイアルを、2、4、6、8、および10時間後に取り出し、1mLの冷却2MNaOHを添加して中和した。
【0099】
試料を、フコースおよびキシロース含有量について屈折率検出を備えるHPLCにより分析した。水中のL−フコース(Sigma−Aldrich、ロット#105Kl058)およびD−キシロース(Flukaロット#1118093)を、定量化のための標準として使用した。以下の計測およびパラメータを使用した:
計測およびセットアップ
移動相: 5mM硫酸
カラム: Bio−Rad Aminex HPX−78H、300mm×7.8mm(ガードカラム付き)
ポンプ: ASIモデル500
注射器: Varian9010オートサンプラー(20μLループを装備)
RI検出器: Shodex RI SE−61
注入容量: 20μL
流量: 0.8mL/分
分析時間: 18分間
カラム温度: 常温
【0100】
3つのフコイダン抽出物中のフコースおよびキシロース含有量を、2N HCl中での22時間、60℃での加水分解の後にHPLCにより決定した。結果の概要を表3Aに示す。表中の%w/w値は、加水分解時の水の増加について修正されている:((164−18)/164)フコース%w/wまたは((150−18)/l50)キシロース%w/w。
【0101】
【表3A】
【0102】
これらの値は、予想されるよりもかなり低く、加水分解がおそらく完全ではなかったことを示している。試料のうちの2つを、2NHCl中の1mg/mLの試料濃度で8時間、100℃で加水分解した。結果の概要を表3Bに示す。
【0103】
【表3B】
【0104】
試料はまた、古典的な比色アッセイであるフェノール−硫酸アッセイにより、総中性糖について分析した。フコースを標準として用いた。
【0105】
これらの結果は、加水分解時の水の増加について修正されておらず、そのため数パーセント高いが、期待値に近い。結果の概要を表3Cに示す。
【0106】
【表3C】
【0107】
C.含水率
各フコイダン抽出物の含水率を、参照により本明細書中に組み込まれる、BBL刊行物SOP−009v6「Karl FischerMoisture Content Assay of Bulk Drug Using Anhydrous Methanol Extraction」に従って、カールフィッシャー(KF)アッセイにより決定した。カールフィッシャーアッセイ用に、約15mgの各試料を、清浄な1.8mLオートサンプラーバイアル中に計り入れた。試料は、三組準備した。約1mLのメタノールを密閉試料バイアル中に注入することにより、水分を抽出した。結果の概要を、表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
D. 金属、元素分析、および硫酸塩分析
重金属選別は、West Coast Analytical Services,Inc.によりICP−MSを使用して実行された。硫黄は、ICP−MSにより定量的に決定した。炭素、水素、窒素、および硫黄(CHNS)含有量についての分析も、WestCoast Analytical Services,Inc.により元素分析器を使用して実行された。硫酸塩も、6N HCl中で6時間加水分解されたフコイダン試料に関してWestCoast Analytical Services,Inc.においてイオンクロマトグラフィーにより決定された。
【0110】
イオンクロマトグラフィーによる硫酸塩決定の結果を、表5に示する。表中の%w/w値は、加水分解時の水の増加について修正されている:((96−16)/96)硫酸塩%w/w。
【0111】
【表5】
【0112】
ICP−MSによる元素の選別結果を、表6Aおよび6Bに示す。値は、μg/g(ppm)で報告されている。
【0113】
【表6A】
【0114】
【表6B】
【0115】
元素組成分析の結果を、表7Aおよび7Bに示す。元素組成分析は、重量パーセントとして、フコースおよび1つの硫酸塩のみを含有するフコイダン残分、例えば、C
6H
12O
5+SO
3−H
2O=C
6H
10O
7S(フコース残分+1つの硫酸塩)について計算された理論的組成と比較することができる。表7Bを参照されたい。すべてのロットについて決定された元素組成は、硫黄を除き、予想される理論値と良好に一致した。従って、各フコース残分が硫酸化されていることはありそうにない。硫黄値は、硫酸塩イオン分析と良好に相関している。窒素値はおそらく、フコイダンと共に抽出された他の非フコイダン物質のせいで低い。
【0116】
【表7A】
【0117】
【表7B】
【0118】
E. 単糖類組成
単糖類組成は、Complex Carbohydrate Reserach Center(University of Georgia,Athens,Georgia)においてGC/MSにより決定し。メチルグリコシドは、10μgの試料を、メタノール中の1MHCl(25滴)により80℃で15時間、続いて、メタノール(20滴)中のピリジン(5滴)および無水酢酸(5滴)により室温で1時間の再N−アセチル化によって処理することにより調製した。次に試料を、Tri−Sil(10滴、Pierce)を用いた80℃での処理(15分間)によりペル−O−トリメチルシリル化した。これらの手技は、MethodsEnzymol.1994,230,1−15においてMerkleおよびPoppe、ならびにMethods Enzymol 1985,118,3−40においてYorkらにより以前に記載された通りに実行した。TMSメチルグリコシドのGC/MS分析は、DB−1カラム(30m×0.25mmID)を用いて5970MSDに接続されたHP 5890GC上で実行した。結果を、表8に示す。
【0119】
【表8】
【0120】
処理の間の50%の質量損失ならびに総中性糖および硫酸塩の増大にもかかわらず、単糖類組成は、処理によって大きく影響されなかった。
【0121】
F. 内毒素
細菌内毒素は、USP<85>に従ってLALにより決定した。結果を以下の表9に示す。処理は、内毒素レベルの約50%減少という結果になった。
【0122】
【表9】
(実施例4)
【0123】
フコイダン試料の生物活性
試験体1(実施例1)および試験体2(実施例2)からの精製フコイダン抽出物の試料を、in vitro凝固アッセイにおいて活性について評価し、粗製フコイダン抽出物(NPNutraロット#050316−FU−85)と比較した。精製および粗製フコイダン抽出物を、AvigenInc.にてin vitroアッセイ、例えば、APTT、dPTおよびトロンボエラストグラフにおいて生物活性について評価した。
【0124】
血漿凝固アッセイ:
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
APTTアッセイは、標準手技(Anderson 1976;Staff 2004)から修正した。簡潔には、食塩水中の20Xフコイダンの5μLを、95μL血漿と共に室温で30分間インキュベートした。次に、100μLの37℃APTT試薬を混合物に添加し、3分間、37℃でインキュベートし、続いて100μLの37℃25mMCaCl
2の添加および標準フィブロメーターにおけるタイミングを開始した。
【0125】
希釈プロトロンビン時間(dPT)
dPTアッセイは、以前に記載されたもの(14)と同様であった。シンプラスチン(bioMeriex,Durham,NC)を、アッセイ型式に応じて、食塩水で1:100または1:300に希釈し、25mMCaCl
2と混合した。血漿試料も、37℃まで事前加熱し、次に、各々の約75μLは一緒に混合し、凝固時間をフィブロメーターよって測定した。フコイダン活性の評価については、20Xフコイダンの5μLを、dPTアッセイを開始する前に、血漿と共に室温で30分間プレインキュベートした。フコイダンによるTFPI活性の潜在的な阻害を評価するため、室温で、希釈rTFPI(AmericanDiagnostica,Stamford,CT)を、フコイダンと共に5分間プレインキュベートし、血漿試料を添加し、混合物をさらに25分間インキュベートし、続いてdPTを開始した。すべての凝固研究は、2回実行し、再現した。
【0126】
血漿トロンボエラストグラフ(TEG)
試料調製 − 37℃に事前加熱した第VIII因子欠損ヒト血漿(George King Biomedical,OverlandPark,KS)試料(360μL)を、処理してないまたはEDTA−処理したフコイダンの食塩水溶液40μLと混合した。血漿試料中の最終フコイダン濃度は、1μg/mL〜100μg/mLの範囲であった。
【0127】
TEG分析 − 血漿試料の活性化のため、20μLの0.2M CaCl
2を、アルミニウム製カップホルダ上に設置されたプラスチック製カップに加えた。血漿試料とフコイダンとの混合物(340μL)を、CaCl
2溶液中に分散させ、直ちに測定した。TEG分析器は、試料を37℃で連続的にインキュベートした。試験は、以下の血餅形成パラメータがTEG(登録商標)AnalyticalSoftware Version 4によって計算された後に停止した:R、測定が開始した時間からの初期凝固のための潜伏期間;角度α、血餅補強の速さを表す;および、MA(最大振幅)、形成された血餅の最大強度に等しい。血餅形成のない血漿試料において、測定は2時間後に終了した。平均値および標準偏差を、3つの独立な測定から計算した。
【0128】
内因性および外因性の凝固経路に対するフコイダンの活性に対する処理の効果を、APTT(
図1)およびdPT(
図2)アッセイにおける凝固時間対フコイダン濃度を測定することによって検査した。
図1において見られるように、処理は、APTT活性において比較的小さい変化を有した。しかしながら、
図2において見られるように、フコイダンは、凝固時間を減少させることによりTFPI阻害を向上させ、用量応答を変える(粗製フコイダン抽出物にIC90が約30μg/mLであるのに対して、精製フコイダン抽出物ロット#1および#2については約4μg/mLである)。
【0129】
TEG分析により測定されるヒトHemA血漿における凝固促進および抗凝固活性に対する処理の影響を、4人の別々の血友病A患者からの血漿試料について試験した。R値を濃度に対してプロットし、R値は、20mmサイズの血餅を形成するために要する時間を表す。
図3に描かれるように、粗製フコイダン抽出物および精製フコイダン抽出物が4つのHemA血漿すべてにおいて同様な凝固促進特性を示す一方で、抗凝固に対する効果は変化した。フコイダンを含有する処理したロット#1および#2は、いくつかの試料において変更された抗凝固活性を示した。
【0130】
E. 結論
実施例1および2において説明されたように、精製フコイダン抽出物は、増大された中性糖および硫酸塩含有量、ならびに低減された重金属汚染および内毒素レベルを有する一方で、単糖類特性を維持した。精製フコイダン抽出物は、非検出可能(ND)レベルの砒素、臭素、セリウム、コバルト、鉛、リチウム、モリブデン、錫、タングステン、およびバナジウムを有していた。加えて、精製により、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、リン、カリウム、およびルビジウムのレベルは、少なくとも2分の1に減少した。内毒素レベルは、約50%減少した。富化されたフコイダンを含有する精製フコイダン抽出物は、粗製フコイダン抽出物と比較した場合に、促進された凝固活性(および強化されたTFPI阻害)ならびに抗凝固活性における最小の変化を有していた。
【0131】
本発明の好ましい実施形態が例示され、かつ記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得ることが理解される。