特許第5679669号(P5679669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5679669発電機のステータに関するステータセグメント、ステータ装置、発電機用のステータおよび発電機のステータのステータセグメントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679669
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】発電機のステータに関するステータセグメント、ステータ装置、発電機用のステータおよび発電機のステータのステータセグメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20150212BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   H02K1/18 C
   H02K3/04 E
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-13035(P2010-13035)
(22)【出願日】2010年1月25日
(65)【公開番号】特開2010-172189(P2010-172189A)
(43)【公開日】2010年8月5日
【審査請求日】2012年12月26日
(31)【優先権主張番号】09000947.3
(32)【優先日】2009年1月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【復代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク スティースダル
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−044893(JP,A)
【文献】 特開2002−291184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機のステータに関するステータセグメント(100)において、
ベースエレメント(103)と、
前記ベースエレメント(103)に取付けられているコイルエレメント(101)と
を有し、
前記ベースエレメント(103)は接続領域(104)を有し、
前記接続領域(104)にて、前記ステータセグメント(100)を別のステータセグメント(110)に接続する接続コイルエレメント(102)が取り付けられており
前記コイルエレメント(101)および前記接続コイルエレメント(102)は、前記ベースエレメント(103)の外側の重畳領域(203)にて相互に重畳しており、前記重畳領域(203)では、前記コイルエレメント(101)の重畳平面の重畳垂線(NO)は、前記接続コイルエレメント(102)の重畳平面の重畳垂線(NF)に対して垂直に延びる、
ステータセグメント(100)
【請求項2】
前記ベースエレメント(103)は前記コイルエレメント(101)が取り付けられる巻線スロット(105)を有する、
請求項1記載のステータセグメント(100)
【請求項3】
前記接続領域(104)は前記接続コイルエレメント(102)の収容に適した接続スロット(106)を有する、
請求項1または2記載のステータセグメント(100)
【請求項4】
前記接続領域(104)は複数の接続コイルエレメント(102)の収容に適した複数の接続スロット(106)を有する、
請求項3記載のステータセグメント(100)
【請求項5】
前記ベースエレメント(103)は複数の接続領域(104)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載のステータセグメント(100)
【請求項6】
ステータ装置において、
請求項1から5までのいずれか1項記載のステータセグメント(100)と、
接続コイルエレメント(102)と
を有し、
前記接続コイルエレメント(102)は固定領域(201)および調整可能領域(202)を有し、
前記接続コイルエレメント(102)の前記固定領域(201)は前記ステータセグメント(100)の前記接続領域(104)に固定されており、
前記調整可能領域(202)は、前記別のステータセグメント(110)の接続領域(104)に取付けられる、
ステータ装置。
【請求項7】
さらに、複数の接続コイルエレメント(102)を有し、
前記複数の接続コイルエレメント(102)のそれぞれの固定領域(201)は前記ステータセグメント(100)の前記接続領域(104)に固定されており、
前記複数の接続コイルエレメント(102)のそれぞれの調整可能領域(202)は、前記別のステータセグメント(110)の接続領域(104)に取付けられる、
請求項6記載のステータ装置。
【請求項8】
さらに、別のコイルエレメント(101)を有し、
コイルエレメント(101)および別のコイルエレメント(101)は、前記コイルエレメント(101)と前記別のコイルエレメント(101)とが重畳する重畳領域(203)が形成されるよう配置されている、
請求項6または7記載のステータ装置。
【請求項9】
電機用のステータにおいて、
請求項6から8までのいずれか1項記載の少なくとも1つのステータ装置を有し、
前記ステータ装置および前記ステータセグメント(100)は、前記ステータ装置の接続領域(104)および前記ステータセグメント(100)の接続領域(104)に接続されている接続コイルエレメント(102)によって接続されていることを特徴とする、発電機用のステータ。
【請求項10】
電機のステータのステータセグメント(100)の製造方法において、
コイルエレメント(101)をベースエレメント(103)に取付けるステップと、
前記ステータセグメント(100)を別のステータセグメント(110)に接続する接続コイルエレメント(102)が取付け可能であるように、前記ベースエレメント(103)の接続領域(104)を成形するステップと
を有し、
前記コイルエレメント(101)および前記接続コイルエレメント(102)は、前記ベースエレメント(103)の外側の重畳領域(203)にて相互に重畳しており、前記重畳領域(203)では、前記コイルエレメント(101)の重畳平面の重畳垂線(NO)は、前記接続コイルエレメント(102)の重畳平面の重畳垂線(NF)に対して垂直に延びる、
法。
【請求項11】
さらに、
前記接続コイルエレメント(102)を前記接続コイルエレメント(102)の固定領域(201)を用いて前記接続領域(104)に取付けるステップと、
前記別のステータセグメント(110)の接続領域(104)に前記接続コイルエレメント(102)の調整可能領域(202)が取付けられるよう、前記接続コイルエレメント(102)の前記調整可能領域(202)の形状を前記別のステータセグメント(110)の接続領域(104)について調整するステップと
を有する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記接続コイルエレメント(102)の前記調整可能領域(202)の形状を調整するステップは、
ダミー接続領域(302)が設けられているダミーセグメント(301)を前記ステータセグメント(100)に取付けるステップと、
前記接続コイルエレメント(102)の前記調整可能領域(202)を、前記ダミー接続領域(302)に取付けるステップと、
前記接続コイルエレメント(102)の前記調整可能領域(202)の形状を前記ダミー接続領域(302)について調整するステップと
を有し、
前記ダミー接続領域(302)は、前記別のステータセグメント(110)の前記別の接続領域(104)の幾何学的な寸法と同じ幾何学的な寸法を有する、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記接続領域(104)を、前記接続コイルエレメント(102)の少なくとも一部と同じ幾何学的な寸法を有するツールエレメント(303)について成形するステップをさらに有する
請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
記接続コイルエレメント(102)を備えた前記ステータセグメント(100)を含浸材料に含浸し、前記接続コイルエレメント(102)の形状を固定するステップをさらに有する
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング型発電機のステータに関するステータセグメント、ステータ装置、リング型発電機用のステータおよびリング型発電機のステータのステータセグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電機においては風力エネルギをリング型発電機によって電力に変換することができる。リング型発電機はロータおよびステータを有し、ステータ内にはロータ軸が回転可能に支持されている。ロータ軸には風力発電機のロータブレードが取り付けられているので、風力エネルギはロータ軸を回転させ、したがって電磁誘導によりステータ内に電力を形成する。
【0003】
従来の風力発電機においては、ロータブレード、したがってロータ軸の回転速度は非常に遅い。したがって従来の風力発電機には、ステータ内でのロータ軸の回転速度をより速くするためにギアボックスを設け、効率的な発電を行っている。
【0004】
他方ではギアボックスの使用により、このギアボックスの抵抗に起因して効率が低下する虞がある。したがって現代の風力発電機においては、ステータの直径を非常に大きく形成し、ロータの誘導性素子とステータコイルとの間の接触領域をロータ軸の回転軸から遠ざけている。つまり、回転軸の回転が遅くとも、ロータとステータとの間の接触領域における相対速度は上昇している。これによって風力発電機においてはリング型発電機のステータの大きい直径がもたらされるが、このリング型発電機は製造場所から設置場所まで移送されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大きい直径を有するステータに起因して生じる問題を解消する、リング型発電機のステータに関するステータセグメント、ステータ装置、リング型発電機用のステータおよびリング型発電機のステータのステータセグメントの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
リング型発電機のステータに関するステータセグメントに関する課題は、ステータが、ベースエレメントと、ベースエレメントに取付けられているコイルエレメントとを有し、ベースエレメントは接続領域を有し、接続領域はステータセグメントを別のステータセグメントに接続する接続コイルエレメントの取付けに適合されていることにより解決される。
【0007】
ステータ装置に関する課題は、ステータ装置が、請求項1から5までのいずれか1項記載のステータセグメントと、接続コイルエレメントとを有し、接続コイルエレメントは固定領域および調整可能領域を有し、接続コイルエレメントの固定領域はステータセグメントの接続領域に固定されており、調整可能領域は、別のステータセグメントの別の接続領域に取付けられるよう、別のステータセグメントの別の接続領域について調整されていることにより解決される。
【0008】
リング型発電機用のステータに関する課題は、ステータが、請求項6から8までのいずれか1項記載の少なくとも1つのステータ装置と、請求項1から5までのいずれか1項記載のステータセグメントとを有し、ステータ装置およびステータセグメントは、ステータ装置の接続領域およびステータセグメントの接続領域に接続されている接続コイルエレメントによって接続されていることにより解決される。
【0009】
リング型発電機のステータのステータセグメントの製造方法に関する課題は、この方法が、コイルエレメントをベースエレメントに取付けるステップと、接続ステータセグメントを別のステータセグメントに接続する接続コイルエレメントが取付け可能であるように、ベースエレメントの接続領域を成形するステップとを有することにより解決される。
【0010】
本発明の第1の実施例によれば、リング型発電機のステータに関するステータセグメントが提供される。ステータセグメントはベースエレメントと、このベースエレメントに取り付けられているコイルエレメントとを有する。ベースエレメントは接続領域を有する。接続領域はステータセグメントを別のステータセグメントに接続するための接続コイルエレメントの接続に適合されている。
【0011】
別の実施例によれば、ステータ装置はステータセグメントおよび接続コイルエレメントを有する。接続コイルエレメントは固定領域および調整可能領域を有する。接続コイルエレメントの固定領域はステータセグメントの接続領域に固定されている。調整可能領域は別のステータセグメントの別の接続領域について調整されているので、調整可能領域を別のステータセグメントの接続領域に取り付けることができる。
【0012】
別の実施例によれば、リング型発電機用のステータが提供される。ステータは上述のステータ装置のうちの少なくとも1つおよび上述のステータセグメントのうちの少なくとも1つを有する。ステータ装置およびステータセグメントは、ステータ装置の接続領域およびステータセグメントの接続領域に取り付けられている接続コイルエレメントによって接続されている。
【0013】
別の実施例によれば、リング型発電機用のステータのステータセグメントの製造方法が提供される。コイルエレメントがベースエレメントに取り付けられる。ベースエレメントの接続領域は、ステータセグメントを別のステータセグメントに接続する接続コイルエレメントが取り付け可能であるように成形されている。
【0014】
「ベースエレメント」という用語はステータセグメントの平坦な部分またはリング形状の部分を意味する。ベースエレメントを積層材料または金属のような剛性材料から構成することができる。リング型発電機の総重量を低減するために、ベースエレメントを軽構造に成形することができる。
【0015】
「コイルエレメント」という用語は1つの導体または複数の導体を意味する。各導体は閉じられたループを形成しているので、ステータの内側でのロータの回転によって、電磁誘導に基づいた電力を生成することができる(ローレンツ力)。コイルエレメントを複数の単一導体から形成することができ、それらの単一導体は例えば樹脂のようなラミネートに挿入され、良好な絶縁と衝撃保護が提供される。これは樹脂リッチ技術(resin rich technology)によってなされる。
【0016】
「接続コイルエレメント」という用語は、2つのステータセグメント間に挿入されている上述のコイルエレメント、殊にループを形成している少なくとも1つの導体を表す。接続コイルエレメントは少なくとも1つのステータセグメントに固定的に取り付けられている。
【0017】
従来の風力発電機において、リング型発電機のステータには大きい直径が設けられている。大抵の場合は、ステータを複数のステータ部分に分解し、それらのステータ部分を個別に移送しなければならない。ステータ部分は運転地において組立てられなければならない。次いで、ステータ部分が組立てられると、導体がステータ部分の表面に取り付けられ、各導体によってそれぞれのステータコイルを形成することができる。したがってインシトゥーで、すなわちステータの運転地において、それらのステータ部分の時間の掛かる設置作業が行われなければならない。つまり、ステータ部分を慣例のステータに組立てた後に、時間の掛かるコイルの導体のはんだ付けならびに緊張を含む、いわゆるコイル作業が実施されなければならない。さらには、導体(すなわち自由銅端部)のはんだ付けおよび緊張が完了した後に、はんだ付け作業後の含浸処理が実施されなければならず、このことは完成したステータの運転地での設置作業を増やすことにもなる。
【0018】
本発明によれば、既に事前に組立てられたコイルエレメントを含む、ステータセグメントおよびステータ用のステータ装置が提供される。すなわち、コイルエレメントが必要とされる全ての接続部およびインタフェースを既に有しており、また既に定義済みで事前決定された形状を有するようにコイルエレメントはステータセグメントに取り付けられている。さらにはステータセグメントが相互接続されるように、ステータセグメントは接続領域を有し、この接続領域は接続コイルエレメントの収容および取り付けに適合されている。このことは、ステータセグメントのベースエレメントにおける接続領域に接続コイルエレメントを取り付け可能であることを意味している。接続コイルエレメントの一部がそれ自体の固定領域を用いて接続領域に固定されるように、この接続コイルエレメントを接続領域に取り付けることができる。また接続コイルエレメントは別のステータセグメントの接続領域について調整されている調整可能領域を有する。したがって、ステータセグメント(または接続コイルエレメントを有するステータ装置)を製造地において事前に組立て、次いで運転地において、僅かな付加的なコイル作業で別のステータセグメントに接続することができる。換言すれば、接続コイルエレメントは調整された領域を備えた突出領域を形成し、この突出領域を簡単且つ迅速にロータの別の取り付け可能なステータセグメントに取り付けることができる。
【0019】
したがって、本発明によれば、複数のステータセグメントおよびステータ装置の構造キットを提供することができ、はんだ付けや緊張のような時間の掛かる設置作業を要することなく、各ステータセグメントまたは装置を運転地において簡単且つ迅速に取り付けることができる。各ステータセグメントおよびステータ装置は独立した別個の構成素子を形成する。したがって、リング型発電機の移送中または設置場所において困難な問題が生じることなく、リング型発電機用のステータに大きい直径を備えさせることができる。
【0020】
別の実施例によれば、ベースエレメントはコイルエレメントが取り付けられる巻線スロットを有する。巻線スロットをベースエレメントの一方の側において例えば平削りによって形成することができる。巻線スロット(巻線溝)の内側にコイルエレメントを挿入することができる。したがってコイルエレメントの形状を巻線スロットの形状によって規定することができる。さらに、巻線スロットの内側にコイルエレメントが確実に設置される。すなわち、コイルエレメントを、例えば外部からの衝撃から保護することができる。
【0021】
別の実施例によれば、接続領域は接続コイルエレメントの収容に適した接続スロットを有する。
【0022】
別の実施例によれば、接続領域は複数の接続コイルエレメントの収容に適した複数の接続スロットを有する。接続スロットは接続コイルエレメントを収容するためのベースエレメントの接続領域内に溝またはスロットを形成することができる。したがって、別の接続コイルエレメントの突出した調整可能領域をステータセグメントの接続スロットに掛けることができるか、ヒンジ式に取り付けることができる。つまり接続コイルエレメントを、接続スロットの形状によって定義された、所定の位置ならびに形状でステータセグメントに固定的に取り付けることができる。それによって、運転地における組立て作業中の接続スロットおよびこの接続スロットの別の電気的な接続部の形状のアラインメントおよび調整のようなさらなる組立て作業を省略することができる。さらには、1つより多くの接続スロットを設けることもできるので、1つより多くの接続コイルエレメントを備えた別のステータセグメントをステータセグメントに取り付けることができる。
【0023】
別の実施例によれば、ベースプレートは複数の接続領域を有する。ベースエレメントの各々側に接続領域を形成することができるので、各々の側に別のステータセグメントを取り付けることができる。したがって、例えば、接続スロットが設けられている接続領域を有するステータセグメントを成形することができ、各側に別のステータセグメントからの別の接続コイルを取り付けることができる。換言すれば、ステータセグメントをメスコネクタとして設けることができる。メスコネクタとして成形されているステータセグメントは、接続コイルを有するステータ装置よりも簡単に形成することができるので、ステータセグメントの製造時間を短縮することができる。
【0024】
別の実施例によれば、ステータ装置は複数の接続コイルエレメントを有する。複数の接続コイルエレメントのそれぞれの固定領域はステータセグメントの接続領域に固定されている。複数の接続コイルエレメントのそれぞれの調整可能領域は別のステータセグメントの別の接続領域について調整されているので、調整可能領域を別のステータセグメントの接続領域に取り付けることができる。本発明の実施例により、複数の接続コイルエレメントは例えばステータ装置とステータセグメントとの間の溝を覆っている。したがって、溝を覆うことによって、機械的な回転から電力へのより効率的な変換を提供することができる。
【0025】
別の実施例によれば、ステータ装置は別のコイルエレメントを有する。コイルエレメントと別のコイルエレメントとが重畳領域を形成するように配置されており、この配置によりコイルエレメントは別のコイルエレメントと重畳する。したがって、コイルエレメントおよび/または接続コイルエレメントが重畳する場合には、ステータの改善された効率を提供することができる。さらにはコイルエレメントループの直径を拡大することができる。何故ならば、コイルエレメントループは隣接する巻線スロットへの配置に制限されずに、間隔を置いた巻線スロット内に配置することもできるからである。したがって、適切な効果を提供することができる。
【0026】
本方法の別の実施例によれば、接続コイルエレメントは固定領域を用いて接続領域に取り付けられている。接続コイルエレメントの調整可能領域は別のステータセグメントの別の接続領域について調整されているので、調整可能領域は別のステータセグメントの接続領域に取り付け可能である。接続コイルの調整可能領域が既に製造過程中に調整されていれば、ステータセグメントおよび別のステータセグメントの組立て時における接続コイルのさらなる調整はもはや必要ない。すなわち、接続コイルエレメントの調整可能領域を例えば、接続コイルが簡単なやり方で別のステータセグメントの別の接続領域に掛けられることによって、発電機の運転地において別のステータセグメントに取り付けることができる。したがって設置場所における複数のステータセグメントの簡単且つ迅速な取付け方法を提供することができる。
【0027】
本発明の別の実施例によれば、接続コイルエレメントの調整可能セクションを調整するステップはダミー接続領域が設けられているダミーセグメントをステータセグメントに取り付けるステップを含む。接続コイルエレメントの調整可能領域はダミー接続領域に取り付けられる。接続コイルエレメントの調整可能領域はダミー接続領域について調整されている。ダミー接続領域は別のステータセグメントの別の接続領域と同じ幾何学的な寸法を有する。本方法の実施例によって、ダミー接続領域が設けられているダミーセグメントを使用することができ、ダミーセグメントは接続コイルエレメントの調整過程中に雛形として機能するので、正確に寸法設計された接続コイルエレメントを製造地において製造することができる。つまり、接続コイルエレメントの調整可能領域をアライメントおよび調整するために、2つのステータセグメントを製造過程中に接続する必要はない。これにより製造コストおよびスペースを削減することができる。
【0028】
別の実施例によれば、接続領域は接続コイルエレメントの少なくとも一部と同じ幾何学的な寸法を有するツールエレメントについて調整されている。したがって、ツールエレメントを使用することによって、接続領域、例えば接続スロットを接続コイルエレメントの調整可能領域の所定の形状について簡単且つ廉価に調整することができる。
【0029】
接続領域および接続コイルの成形後にツールエレメントおよびダミーセグメントを取り外すために、ダミーセグメントもツールエレメントもテフロン、ポリプロピレンまたは含浸材料に対して非粘着特性を提供する他の材料によって覆われている鋼のような材料を含むことができる。
【0030】
別の実施例によれば、調整された接続コイルエレメントを備えたステータセグメントが含浸され、それにより調整された接続コイルの調整された形状が固定される。ステータセグメントの含浸によって、ステータセグメントおよび調整された接続コイルエレメントを外部の衝撃から保護することができる。さらには、接続コイルエレメントの調整された形状を含浸材料によって固定することができるので、例えば、調整された接続コイルエレメントの移送中の変形を阻止することができる。
【0031】
本発明によって、大きい直径が設けられているステータを有するリング型発電機を複数のステータセグメントおよびステータ装置から構成することができる。ステータセグメントに例えばコイルエレメントを事前に取付けることができ、運転地におけるステータセグメントの組立ては、大部分のマニュアル作業を要することなく容易になる。したがって、コイルはステータセグメントのベースプレート(例えば積層セグメント)内に事前に組立てられており、また事前定義された位置に固定されている。ステータの電磁効果を改善するために、少なくとも1つの接続コイルエレメントは組立てられた状態の2つのステータセグメント間の溝に架橋されている。
【0032】
本発明によれば、個々のステータセグメントをステータの完全に独立したサブコンポーネントとしてそれぞれ処理および製造することができる。
【0033】
接続コイルエレメントの調整可能な領域における接続コイルエレメントの所望の長さおよび形状を提供するために、ステータセグメントの隣に一次的に取り付けられるダミーセグメントを製造過程中に一時的にステータセグメントに取り付けることができる。一時的なダミーセグメントは別のステータセグメントと同じ形状を有することができる。したがって、ダミーセグメントは例えば少なくとも1つの溝を有し、この溝は別のステータセグメントに類似する幾何学的な寸法を有する。次に接続コイルをダミーセグメントおよびステータセグメントの接続領域内に配置し、調整することができる。
【0034】
コイルエレメントの取り付けおよび接続コイルエレメントの成形が完了した後、すなわち巻付けが完了した後では、緊張およびはんだ付けは全て完了している。次いで、ステータセグメントを含浸することができる。例えば、真空圧力含浸VPIによって含浸が完了した後では、コイルエレメントおよび接続コイルエレメントの形状を固定することができ、また一時的なダミーセグメントおよびツールエレメントをステータセグメントから取り外すことができる。
【0035】
最後に、ステータセグメントには必要とされる全てのコイルエレメントおよび/または接続コイルエレメントが事前実装された状態で設けられている。接続コイルエレメントを有する場合には、接続コイルエレメントの調整可能領域はさらに適切な長さおよび形状を備える。含浸に起因して、接続コイルエレメントおよびコイルエレメントはシーリングもされる。
【0036】
ツールエレメントが接続領域、例えば接続スロットに挿入されている場合、ツールエレメントはシーリングプロセス後または含浸プロセス後に取り外されるので、それぞれの接続スロットの溝は完全に空になり、含浸材料によって汚染されることもない。さらにはスロットを保護するために、ツールエレメントがステータセグメントの移送過程中に取り付けられたままでもよい。
【0037】
本発明の実施形態を種々の対象に関して説明したことを言及しておく。殊に、幾つかの実施形態は装置を特定する請求項に関して説明したが、その他の実施形態は方法を特定する請求項に関して説明した。しかしながら当業者であれば、前述の記載および後述の記載から、ことわりが無い限り、1つの対象に関連する特徴のあらゆる組み合わせの他に、それとは異なる対象に関連する複数の特徴の組み合わせ、殊に装置を特定する請求項に記載の特徴と、方法を特定する請求項に記載の特徴の組み合わせも本願の開示内容と見なせることが分かる。
【0038】
上記において定義した本発明の態様および別の態様は以下において説明する実施例より明らかになり、また実施例を参照しながらそれらを説明する。以下では実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例によるステータセグメントと別のステータセグメントの概略的な断面図を示す。
図2】1つの実施例によるステータセグメントの斜視図を示す。
図3】本発明の実施例による製造過程中のステータセグメントを示す。
図4】本発明の1つの実施例によるオスコネクタ内のステータセグメントの斜視図を示す。
図5】本発明の1つの実施例によるメスコネクタ内のステータセグメントの斜視図を示す。
図6】リング型発電機のステータの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
各図は概略的に示したものである。異なる図面において、類似または同一の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0041】
図1は、リング型発電機のステータに関するステータセグメント100を示す。ステータセグメント100はベースエレメント103と、このベースエレメント103に取り付けられているコイルエレメント101とを有する。ベースエレメント103は接続領域104を有する。接続領域104はステータセグメント100を別のステータセグメント110に接続する接続コイルエレメント102を接続するために適合されている。
【0042】
図1においてコイルエレメント101および接続コイルエレメント102はベースエレメント103の外側面に接続されている。本発明の別の実施例においては、コイルエレメント101および接続コイルエレメント102をベースエレメント103の内側面(例えば回転軸に向けられた内側表面)に取り付けることもできる。ベースエレメント103は巻線スロット105と、接続領域104の領域内に接続スロット106とを有することができる。巻線スロット105および接続スロット106にはコイルエレメント101および接続コイルエレメント102を取り付けることができる。ステータセグメント100と別のステータセグメント110との間において、接続コイルエレメント102が接続領域104および別の接続領域104に取り付けられている。したがって、ステータセグメント100と別のステータセグメント110との間の隙間は、適切な電気機械的な特性を設けるために、接続コイルエレメント102によって架橋されている。
【0043】
図2は、ステータセグメント100の斜視図を示す。ベースエレメント(ベースプレート)103の一方の側には、巻線スロット105および接続スロット106が設けられている。巻線スロット105の内側にはコイルエレメント101が取り付けられている。ステータセグメント100の縁部領域には2つの接続領域104が形成されている。接続領域104はステータエレメント100のx軸に沿って配置されているので、このx軸に沿って別のステータセグメント110を取り付けることができる。
【0044】
さらに図2には、複数のコイルエレメント101および少なくとも1つの接続コイルエレメント102が示されている。接続コイルエレメント102およびコイルエレメント101はベースエレメント103、殊に巻線スロット105および接続スロット106に取り付けられており、接続コイルエレメント102およびコイルエレメント101は重畳領域において相互に重畳している。この重畳領域203においては、コイルエレメント101および接続コイルエレメント102のうちの一方のコイルエレメントが重畳垂線(NO)を有する重畳平面を形成し、この重畳垂線(NO)は他方のコイルエレメントの重畳平面の垂線(NF)に対して垂直に延びる。
【0045】
図2の左側に示されている接続領域104には接続コイルエレメント102が取り付けられている。接続コイルエレメント102は固定領域201を有し、この固定領域201は接続領域104、すなわち接続スロット106に取り付けられている。さらに、接続コイルエレメント102にはベースエレメント103から張り出した張り出し領域が設けられている。すなわち、接続コイルエレメント102には自由ループ部が設けられている。この自由ループ部は調整可能領域202を形成する。調整可能領域202を別のステータセグメント110の別の接続領域104(例えば別の接続スロット106)について調整することができる。したがって、調整可能領域202はその長さについて調整されており、また別のステータセグメント110の別の接続領域104の別の接続スロット106の形状に関して成形されている。
【0046】
図2に示されているステータセグメント100の右側には、別のステータセグメント110からの接続コイルエレメント102を収容するために適合されている接続領域104が設けられている。したがって、図2に示されている右側の接続領域104には自由接続スロット106が設けられており、この自由接続スロット106に別のステータセグメント110の接続コイルエレメント102を取り付けることができる。
【0047】
つまり、接続コイルエレメント102の調整可能な領域202の調整により、別のステータセグメント110の別の接続コイルエレメント102の調整可能領域202を図示されているステータセグメント100の接続領域104(例えば接続スロット106)内に正確に嵌合させることができる。
【0048】
図3は、それぞれ製造過程中の製造側におけるステータセグメント100を示す。ステータセグメント100の接続領域104にはダミーセグメント301が取り付けられており、このダミーセグメント301は別のステータセグメント110と同じ幾何学的な寸法を有する。ダミーセグメント301はさらにダミー接続領域302を有する。ダミー接続領域302は例えばダミー接続スロットを有し、このダミー接続スロットは接続スロット106と同じ幾何学的な寸法を有する。したがってステータセグメント100の製造過程において、接続コイルエレメント102を固定領域201に取り付けることができる。接続コイルエレメント102の調整可能領域202をダミー接続領域302に挿入することができ、また所望の長さおよび形状にアライメントおよび調整することができる。換言すれば、コイルを形成する導体をステータセグメント100の接続領域104からダミーセグメント301のダミー接続領域302に巻き付けることができる。適切な長さおよび形状に調整されると、接続コイルエレメント102の導体をシール、および/または、はんだ付け、および/または、緊張させることができるので、接続コイルエレメント102には所望の寸法が設けられる。
【0049】
さらに図3にはツールエレメント303が示されている。ツールエレメント303に接続コイルエレメント102の少なくとも一部、例えば接続コイルエレメント102の調整可能領域202と同一の幾何学的な寸法を設けることができる。したがって巻線スロット105および接続スロット106(接続領域104)をツールエレメント303の寸法に基づき成形することができる。したがって、完成した別のステータセグメント110が取り付けられなくても、巻線スロット105および接続スロット106を正確に製造することができる。
【0050】
完成したステータセグメント100が含浸されるまで、ダミーセグメント301およびツールエレメント303を取り付けたままでもよい。その後に、ダミーセグメント301およびツールエレメント303を取り外し、後に製造される別のステータセグメント110のために使用することができる。
【0051】
図4は、ステータセグメント100、殊に2つの接続領域104を有するステータ装置の斜視図を示す。各々の接続領域104には、それぞれ調整可能領域202を有している接続コイルエレメントを1つ取り付けることができる。したがって、図4に示されているステータセグメント100の実施例は一種の「オスコネクタ」を形成し、このオスコネクタに例えば接続スロット106を有する別のステータセグメント101を取り付けることができる。
【0052】
図4は、各接続領域104が1つの接続コイルエレメント102を有することを示している。付加的に、各接続領域104が1つより多くの接続コイルエレメント102を有していてもよい。殊に、各接続領域104が2,3,4またはそれ以上の数の接続コイルエレメント102を有していてもよい。
【0053】
図5は、本発明の別の実施例によるステータセグメント100を示し、この図においては2つの接続領域104が示されている。各接続領域は接続コイルエレメント102の各々の取り付け(収容)に関して、別のステータセグメントの接続コイルエレメント102の調整可能領域202である。図5の実施例によるステータセグメント100は製造過程後に接続コイルエレメント102を有しておらず、したがっていわゆる「メスコネクタ」を形成することができる。ステータエレメント100の接続領域104は1つの接続スロット106を有することができるが、2,3,4またそれより多くの数の接続スロット106を設けることもできる。したがって、複数の接続スロット106の各々に対して、別のステータセグメント110の別の接続コイルエレメント102を取り付けることができる。つまり、例えば、ステータセグメント100の3つの接続コイルエレメント102をそれらの調整可能領域202を用いて別のステータセグメント110の3つの接続スロット106に取り付けることができる。
【0054】
図6は、ステータリング601およびロータ602を有するリング型発電機の斜視図を示す。ステータリング601の外面には複数のコイルエレメント101が取り付けられている。ロータ602が回転すると、発電のために電力をステータリング601のコイルエレメント101に誘導することができる。ステータリング601の直径は大きくなる可能性があり、したがって搬送が困難になる可能性がある。
【0055】
本明細書において「〜を有する、〜を有し」という表現は他の要素を排除するものではなく、また「1つ」という表現は複数を排除するものではない。異なる実施形態に関して説明した要素を組み合わせることもできる。また、特許請求の範囲の記載にされている参照番号は請求の範囲を制限するものではないと解するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6