(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正温度算出手段は、当該車両が次駅に到着後、応荷重センサにより当該車両の乗車率を検出する乗車率検出手段によって検出された当該発車時の発車時乗車率に基づいて補正温度を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空気調和装置。
【背景技術】
【0002】
一般に車両用空気調和装置においては、例えば
図12に示されるものが知られている。すなわち、従来の車両用空気調和装置は、
図12に示されるように、パンタグラフ31より入力される電力が補助電源装置32に与えられ、ここで、空調用電源が生成されて、空調装置1と暖房用ヒータ2に供給される。空調制御器3は、空調装置1内の空調コンプレッサの運転台数や運転周波数、運転時間を制御し、あるいは室内送風機の電動機の運転速度を制御することで冷房運転時の空調能力制御を行い、暖房用ヒータ2を一定時間毎にオン,オフ制御することで暖房運転時の空調能力制御を行う。
【0003】
空調制御器3はマイクロコンピュータを搭載しており、記憶領域に記憶された空調設定温度には、各種補正が行われ、空調基準温度が逐次算出されている。前記各種補正は、車両の内部に設けられた車内温度センサ4によって測定された車内温度と、前記車両の外部に設けられた外気温度センサ6によって測定された外気温度と、前記車両の内部に設けられた車内湿度センサ5によって測定された車内湿度と、前記車両に設けられた応荷重センサ7によって測定されたこの車両の乗車率とに基づいて算出されている。
【0004】
従来、前記乗車率は、車両が走行している時点の乗車率を測定して補正に使用している。また、実績に基づき予め作成された時間帯毎の駅間乗車率情報を曜日別と月日別、車両運用形態別、車両別の駅間乗車率情報を記憶手段に蓄積しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
さらにまた、現在の環境情報と過去に記憶した環境情報とに基づいて予測された空調負荷に基づき、空調能力の制御を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
そして、さらにまた、空調機の運転情報と、車両の位置情報とを有するデータを定期的に管理コンピュータに送信し、管理コンピュータがデータを蓄積し、処理するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置の構成例を示す機能ブロック図。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る乗車率補正パターンの一例を示す概念図。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る冷房運転パターンの一例を示す概念図。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る暖房運転パターンの一例を示す概念図。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る各駅間毎の乗車率を時間帯毎に分けた記憶パターンの一例を示す概念図。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置が適用された車両の構成例を示す概念図。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の構成例を示す機能ブロック図。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置が適用された車両の他の構成例を示す概念図。
【
図9】従来の車両用空調制御方法を実施したときの車両内温度と空調制御パターンの変化挙動の一例を示す図。
【
図10】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置が動作したときの車両内温度と空調制御パターンの変化挙動の一例を示す図。
【
図11】本発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置が動作したときの車両内温度と空調制御パターンの変化挙動の一例を示す図。
【
図12】従来技術の車両用空気調和装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置の構成例を示す機能ブロック図であり、
図2は、本発明の実施の形態1に係る乗車率補正パターンを示す概念図、
図3は、本発明の実施の形態1に係る冷房運転パターンの概念図、
図4は、本発明の実施の形態1に係る暖房運転パターンの概念図、
図5は、本発明の実施の形態1に係る各駅間毎の乗車率を時間帯毎に分けた記憶パターンの一例を示す概念図である。
【0013】
図1において、本実施の形態に係る空気調和装置は、空調装置1、暖房用ヒータ2及びこれらを制御する空調制御器3を備えている。空調装置1は、例えば冷凍サイクルから構成される。また、空気調和装置は、車内温度センサ4、車内湿度センサ5、外気温度センサ6及び応荷重センサ7を備えている。空調制御器3は、情報演算処理部3aを備えている。情報演算処理部3aは、車内温度センサ4、車内湿度センサ5、外気温度センサ6及び応荷重センサ7の各検出データと、位置情報8とを入力する機能を備えている。また、空調制御器3は、駅間乗車率データ格納部9、乗車率補正パターン格納部10、空調運転パターン格納部11、冷房設定温度格納部12、暖房設定温度格納部13及び時刻計時部14を備えている。
【0014】
なお、上記の冷房設定温度格納部12及び暖房設定温度格納部13は、本発明の温度設定手段に相当し、車内温度センサ4及び情報演算処理部3aは本発明の車内温度検出手段を構成し、駅間乗車率データ格納部9は本発明の記憶手段に相当する。応荷重センサ7及び情報演算処理部3aは本発明の乗車率予測手段を構成し、情報演算処理部3aは補正温度算出手段を構成する。また、情報演算処理部3a、空調装置1及び暖房用ヒータ2は、本発明の空調手段を構成している。
【0015】
以上のように構成された車両用空気調和装置の詳細を、
図2、
図3、
図4及び
図5を用いて説明する。
空調制御器3は、乗車率補正パターン格納部10に一例として
図2で示される乗車率補正パターンを格納している。
図2では、乗車率が、
(a)0≦乗車率<100%の範囲では補正温度が零であり、
(b)100%≦乗車率<150%では補正温度が−1deg、
(c)150%≦乗車率では補正温度が−3deg
となることを表している。
【0016】
また、実績に基づき予め作成された時間帯毎の駅間乗車率情報は一例として、
図5の形態で駅間乗車率データ格納部9に格納されている。情報演算処理部3aはこの駅間乗車率情報から次駅と次々駅間の乗車率を読み出して、次駅到着より一定時間前に当該読み出された乗車率に基づいて、
図2に示される乗車率補正パターンから補正温度を算出して、冷房運転時にあっては、冷房設定温度格納部12に格納された冷房設定温度に当該補正温度を加算して冷房基準温度を算出し、暖房運転時にあっては、暖房設定温度格納部13に格納された暖房設定温度に当該補正温度を加算することによって暖房基準温度を算出して、これら冷房基準温度又は暖房基準温度を元に空調運転を実施する。なお、この冷房基準温度又は暖房基準温度は、本発明の空調基準温度に相当する。
【0017】
図1の空調運転パターン格納部11には冷房運転パターン及び暖房運転パターンが格納されており、
図3に冷房運転パターンの一例を示し、
図4に暖房運転パターンの一例を示す。
冷房運転では、
図3に示されるように、
(a)車内温度<冷房基準温度の場合には、冷房能力0%の運転、
(b)0deg≦(車内温度−冷房基準温度)<1degの場合には冷房能力25%の運転、
(c)1deg≦(車内温度−冷房基準温度)<2degの場合には冷房能力50%の運転、
(d)2deg≦(車内温度−冷房基準温度)<3degの場合には冷房能力75%の運転、
(e)3deg≦(車内温度−冷房基準温度)の場合には冷房能力100%の運転を行う。
【0018】
また暖房運転では、
図4に示されるように
(f)暖房基準温度≦車内温度の場合には暖房能力0%の運転、
(g)−1deg≦(車内温度−暖房基準温度)<0degの場合には暖房能力25%の運転、(h)−2deg≦(車内温度−暖房基準温度)<−1degの場合には暖房能力50%の運転、
(i)−3deg≦(車内温度−暖房基準温度)<−2degの場合には暖房能力75%の運転、
(j)(車内温度−暖房基準温度)<−3degの場合には暖房能力100%の運転を実施することを示している。
【0019】
本実施の形態1に係る車両用空気調和装置は、上記のように構成されており、次のような制御が行われる。
(S1)情報演算処理部3aは、当該車両が次駅到着の所定時間前の段階で、駅間乗車率データ格納部9から次駅と次々駅間の当該時間帯における乗車率を読み出し、その乗車率がその区間の乗車率であると予測する。
(S2)情報演算処理部3aは、その予測乗車率と、乗車率補正パターン格納部10(
図2参照)のデータとに基づいて補正温度を求める。
(S3)情報演算処理部3aは、冷房運転の場合には、冷房設定温度格納部12から冷房設定温度を読み出し、その冷房設定温度に補正温度を加算して冷房基準温度を求める。また、情報演算処理部3aは、暖房運転の場合には、暖房設定温度格納部13から暖房設定温度を読み出し、その暖房設定温度に補正温度を加算して暖房基準温度を求める。
【0020】
(S4)情報演算処理部3aは、冷房運転の場合には、冷房基準温度を空調運転パターン格納部11の冷房運転パターン(
図3参照)に適用して空調装置1を駆動制御する。また、情報演算処理部3aは、暖房運転の場合には、暖房基準温度を空調運転パターン格納部11の暖房運転パターン(
図4参照)に適用して暖房用ヒータ2を駆動制御する。
(S5)情報演算処理部3aは、当該車両が次駅に到着すると、応荷重センサ7の出力を取り込んで、当該駅(次駅)での当該車両の乗車率を検出する。そして、その乗車率に基づいて補正温度を求める。以下は、上記の説明と同様に、冷房設定温度(又は暖房設定温度)に補正温度を加算して冷房基準温度(又は暖房基準温度)を求め、その冷房基準温度(又は暖房基準温度)に基づいて空調装置1(又は暖房用ヒータ2)を駆動制御する。
【0021】
本実施の形態では、上記のように、車両が次駅に到着する前に空調制御パターンを、次駅と次々駅の間を走行するときの空調基準温度に対応した空調制御パターンに変更することができる。その結果、車両が次駅に到着し、次駅を出発した時点でも車内を快適に空調することが可能となる。
【0022】
ところで、前記の実績に基づき予め作成された時間帯毎の駅間乗車率情報だけでは、イレギュラーな乗車率の変化に対応できない場合がある。そこで、次の(1)式に示されるように、当該車両の現在の乗車率を、前駅と次駅間での当該時間帯における実績に基づいて記憶された乗車率で除した値に、次駅と次々駅間での当該時間帯における実績に基づいて記憶された乗車率を掛け算して得られた値を次駅と次々駅間での当該時間帯の乗車率(予測乗車率)と見なす。そして、この予測乗車率に基づいて
図2に示された乗車率補正パターンを実施し、空調制御パターンを算出して車両が次駅に到着する前に、この空調制御パターンを実行することで、車両が次駅に到着し、次駅を出発した時点で車内を快適に空調することが可能となる。
【0024】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置が適用された車両の構成例を示す概念図であり、
図7は、本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の構成例を示す機能ブロック図である。なお、
図6及び
図7において、
図1と同一符号のものは同一又は相当部を示すものとする。
【0025】
図6及び
図7において、本実施の形態に係る車両用空気調和装置が適用されたX駅17とY駅18の間を走行するA車両15は、空調装置1と、暖房用ヒータ2と、空調制御器3と、車内温度センサ4と、車内湿度センサ5と、外気温度センサ6と、応荷重センサ7と、データ受信部29と、データ送信部30とを備えている。データ受信部29は、A車両15と同じ路線の一つ前を先行して走る同じ車両運用形態別のB車両16から送信されたX駅17の次駅であるY駅18とY駅18の次駅であるZ駅19の間に取得されたデータ20を受信する。データ送信部30は、B車両16が送信するデータ20と同様に、A車両15が同じ路線を後続する車両(図示せず)にデータを送信する。
なお、データ受信部29に受信されるB車両16のデータ20には、B車両16の車両運転形態情報22と、B車両16の位置情報23と、B車両16の号車情報24と、B車両16の車内温度25と、B車両16の車内湿度26と、B車両16の外気温度27と、B車両16の乗車率28とが含まれる。
【0026】
上記のうち、空調装置1と、空調制御器3と、車内温度センサ4と、車内湿度センサ5とは、それぞれ車両毎に備えている。なお、
図7は、外気温度センサ6と、応荷重センサ7と、データ受信部29と、データ送信部30とが各車両に備えられている構成を示しているが、外気温度センサ6と、応荷重センサ7と、データ受信部29と、データ送信部30とは列車毎に備えるようにしてもよい。
また、
図7は、データ受信部29に送信されるデータ20には、B車両16の車内温度25と、B車両16の車内湿度26と、B車両16の外気温度27と、B車両16の乗車率28とが含まれ、それらが送信される構成を示している。しかし、前記車内温度25の代わりに車内温度センサ4から出力される信号でもよく、前記車内湿度26の代わりに車内湿度センサ5から出力される信号でもよく、前記外気温度27の代わりに外気温度センサ6から出力される信号でもよく、前記乗車率28の代わりに応荷重センサ7から出力される信号でもよい。
さらにまた、
図6及び
図7は、B車両16から直接A車両15にデータ20が送信されているが、
図8のように地上のサービスコンピュータ21を経由してA車両15にデータ20が送信されてもよい。
【0027】
このように構成された車両用空気調和装置について、
図7を用いて説明する。
A車両15の車内温度センサ4は、車両内部に設けられており、車両内部の温度を測定し、その測定結果である車内温度センサ信号をA車両15の空調制御器3に出力する。
A車両15の車内湿度センサ5は、車両内部に設けられており、車両内部の湿度を測定し、その測定結果である車内湿度センサ信号をA車両15の空調制御器3に出力する。
A車両15の外気温度センサ6は、車両外部に設けられており、車両外部の温度を測定し、その測定結果である外気温度センサ信号をA車両15の空調制御器3に出力する。
A車両15の応荷重センサ7は、車両に設けられており、車両の乗車率を検出するためにA車両15の空調制御器3に出力する。空調制御器3は、応荷重センサ7の検出信号に基づいて車両の乗車率を求める。応荷重センサ7は、一般的に使用されているものでよく、例えば電気式応荷重センサや、機械式応荷重センサを用いてもよい。
【0028】
A車両15の空調制御器3は、A車両15が次に到着するY駅18に到着する所定の時間前に、A車両の乗車率(現在の乗車率)、蓄積された乗車率(Y駅での当該時間帯)、B車両16から受信した乗車率28等のデータ20によってY駅での乗車率を予測する。このY駅での予測乗車率は、例えば次の(2)式〜(6)式の何れかによって求められる。なお、これらの式における「次駅と次々駅間のみなし乗車率」は、次駅(この例ではY駅)での予測乗車率を意味する。
【0030】
そして、その予測乗車率と車両設定温度(冷房設定温度又は暖房設定温度)とに基づいて、上記の実施の形態1の場合と同様にして、A車両15が次に到着するY駅18とY駅18の次に到着するZ駅19の間を走行するときの空調基準温度(冷房基準温度又は暖房基準温度)を予測する。そして、この空調基準温度に対応した空調制御パターンにより、空調装置1または暖房用ヒータ2が制御される。但し、B車両16がA車両15と、ある時間(例えば、30分)以上離れて運行している場合には、B車両16とA車両15の環境が変わっている可能性があり、本実施の形態は実施しない。なお、この時間は、変更可能である。
仮に、従来技術のように、Y駅18を出発した時点でY駅18とZ駅19の間の空調基準温度を設定し、空調制御パターンが変更され、空調装置を制御すると、一例として
図9に示されるように実際の車内温度が空調基準温度に達するまでにT1の時間を要する。このT1の時間の間、車両内は快適な空調基準温度より高い温度になっているため、乗客にとって、不快感がある。
【0031】
本実施の形態2を適用した場合には、
図10に示されるように、Y駅18に到着する所定の時間T2前に空調基準温度が変更され、空調制御パターンが変更されると、Y駅18に到着した時点でA車両15の車内温度がY駅18とZ駅19を走行するときの空調基準温度に到達するため、車内環境が不快になることを阻止することができる。なお、この所定の時間T2は変更可能とする。
【0032】
本実施の形態2に係る車両用空気調和装置は、上述したような構成をしているので、車両が次駅に到着する前に、空調制御パターンを次駅と次々駅の間を走行するときの空調基準温度に対応した空調制御パターンに変更することができる。その結果、車両が次駅に到着し、次駅を出発した時点で、車内を快適に空調することが可能となる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態3について、
図11を用いて説明する。
上記実施の形態2では、空調基準温度を変更するタイミングをY駅18に到着する所定の時間の前としていたが、実施の形態3では、Y駅18に到着するまでの距離が所定の距離L1に達したときに空調基準温度を変更するようにしている。それ以外の点については、実施の形態2で説明したものと同様としている。なお、この所定の距離L1は変更可能とする。
【0034】
以上、本発明の好適な実施の形態1〜3について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。