(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679810
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】浮揚海洋構造物
(51)【国際特許分類】
B63B 35/38 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
B63B35/38 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-508343(P2010-508343)
(86)(22)【出願日】2008年5月14日
(65)【公表番号】特表2010-526728(P2010-526728A)
(43)【公表日】2010年8月5日
(86)【国際出願番号】SG2008000183
(87)【国際公開番号】WO2008140423
(87)【国際公開日】20081120
【審査請求日】2010年9月15日
【審判番号】不服2013-21392(P2013-21392/J1)
【審判請求日】2013年11月1日
(31)【優先権主張番号】200703388-9
(32)【優先日】2007年5月14日
(33)【優先権主張国】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】509314921
【氏名又は名称】センブコープ・マリーン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEMBCORP MARINE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】ストックス・デーヴィッド・ティー.
【合議体】
【審判長】
鳥居 稔
【審判官】
大熊 雄治
【審判官】
平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−293288号公報(JP,A)
【文献】
特開2006−160109号公報(JP,A)
【文献】
特開2001−115416号公報(JP,A)
【文献】
特開平08−048285号公報(JP,A)
【文献】
特開平02−047472号公報(JP,A)
【文献】
特開昭55−016148号公報(JP,A)
【文献】
特開昭52−077391号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各組立式(modular)部材が上面、底面、および、上面と底面とを相互連結する側壁を備え、それぞれの側壁の少なくとも一部に沿って、実質的に隙間の無い隣接した位置において、前記組立式部材のうちの少なくとも1個の隣接した組立式部材に固定できるようになされている、浮揚構造物を形成するために堅固で解除自在に互いに固定された複数の浮揚可能な組立式部材を備え、
前記連結手段は、前記複数の組立式部材のうちの隣接した組立式部材の上端部と下端部とを係合するための少なくとも1個の側壁ロックアセンブリーと、少なくとも1対の隣接した組立式部材の角部を係合できるようになされている少なくとも1個のコーナーロックアセンブリーとを備え、
前記少なくとも1個の側壁ロックアセンブリーは、前記各組立式部材の側壁の下端部に取り付けられたロックバーと、1個ずつの前記組立式部材の側壁の上端部に固定された係合プレートと、前記ロックバーおよび前記係合プレートと固定により固定できるようになされているロックキーとを備え、
前記少なくとも1個のコーナーロックアセンブリーは、前記組立式部材の角部から外側に延びる舌状コネクタと、前記組立式部材のうち少なくとも1対の隣接した組立式部材の舌状コネクタを係合できるようになされているコーナーロック部材とを備え、
前記コーナーロック部材は、前記組立式部材のうちの隣接した組立式部材の舌状コネクタに対をなして(matingly)係合するためのスロットを備える、浮揚海洋構造物。
【請求項2】
前記各組立式部材は、概ね平行六面体形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記浮揚海洋構造物は、浮き桟橋であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記浮揚海洋構造物は、カヌーポロ用プールであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記各組立式部材は、浮き体ポンツーンであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記コーナーロック部材は、概ね矩形断面を有する浮き体を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記コーナーロック部材は、概ね三角形断面を有する浮揚体を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記組立式部材が互いに当接関係で固定される際に、前記組立式部材の上面が実質的に共平面の関係で方向付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記各組立式部材は、浮揚体を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記組立式部材は、互いに交換可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の商業活動、工業活動および娯楽活動を支援することができる相互連結された浮揚性プラットフォームモジュールの組立式(modular)の拡大縮小が可能な剛体浮揚アセンブリーを提供する。
【背景技術】
【0002】
都市人口の増加は、陸を益々価値あるものとし、公共の公園、アリーナ、および、娯楽地域に使用されることのできる場所を縮小している。このことは、商業開発業者、工業開発業者および住居開発業者が限られた臨海地域の利用を奪い合う場合に特に顕著である。一部の例では、この抑圧は、埋立によって緩和されることがある。海底、丘、掘削、および、建設廃材からの充填材を使用すると、技術者は海から比例して陸を作り出すことが可能である。オランダ、シンガポール、および、日本などの国は、すべて積極的な埋立プログラムを有している。
【0003】
しかし、埋立は、深海においては、あるいは、海底が非常に軟弱である場所では、費用効果がなく、技術的に実現可能性がない。さらに、埋立は海洋生息地を破壊し、有害堆積物の攪乱をもたらすことがある。このような自然条件および環境影響に直面するとき、巨大な浮揚構造物は生活、商業および娯楽空間を増大させる魅力的な代替解決法を提供することがある。
【0004】
浮揚構造物は埋立を上回る以下の利点がある。
【0005】
・浮揚構造物は、深海、あるいは、埋立を不可能にするある種の海底条件に対し費用的効果がある、
・浮揚構造物は、海洋生態系を損なわず、湾底部の汚染物を攪乱することがなく、あるいは、潮流を混乱させないので環境に優しい、
・浮揚構造物は、海洋建設物を迅速に建設し、水空間の急速な開発を可能にする標準的な海洋建設技術である、
・浮揚構造物は、将来の活動による要求に応じて簡単に移転あるいは拡張が可能である、
・沿岸水域における浮揚構造物の場所は、浮揚構造物をレジャーおよび水上スポーツ活動を適切にする周辺一帯の水上アクセスを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多種多様の機能のために使用可能である組立式ポンツーン、または、浮揚構造物に関する。より詳細には、本発明は、スポーツ行事、公開展示、および、プレゼンテーションなどの商業用途、工業用途および娯楽用途を支援するために、十分な剛性、強度および浮力をもつ浮揚プラットフォームを形成するために相互連結され得る程度の個数の組立式ユニットを有する浮揚装置(構造物)に関する。
【0007】
より大きいサイズからなるものを形成するために、ある程度の個数の比較的小型の浮揚構造物またはフロートを相互連結することは一般的である。ある程度の個数のフロートを一体的に連結することに伴う一つの問題は、フロート間の連結が安定性を欠く傾向があり、浮揚構造物がこの構造物の長さおよび幅に亘って収縮することを可能にするという点である。
【0008】
十分な剛性を実現するために、従来の設計はフロートの上端に大型の構造強度部材を使用していた。大型構造強度部材は、構造的剛性を維持することが可能であるが、フロートを他の用途のために容易に再構成すること、あるいは、容易に場所を移動することを妨げていた。多くの場合に、構造物は移動させる前に陸上で完全に分解する必要があった。
【0009】
本発明は、重量物吊り上げ設備を用いることなく水上で容易に再構成される剛体構造体を構築することを可能にする。
【0010】
本発明のさらなる目的と利点は、下記の開示および記載の考察から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】角状に切断された角部と舌状コネクタと側壁ロックアセンブリーの部品とを含む
単一ポンツーンまたは組立式部材の斜視図である。
【
図2】プラットフォームを形成するために互いに連結された複数のポンツーンを示す図
である。
【
図3】他の活動を支援するためのポンツーンの代替的な配置の実施例の図である。
【
図4】他の活動を支援するためのポンツーンの代替的な配置の実施例の図である。
【
図5】ロックバーおよび係合プレートを示す側壁ロックアセンブリーの部分図である。
【
図6】1対の隣接した組立式ポンツーンの
ロックバーを係合するために適合したロック
キーの側面図である。
【
図7】一点鎖線が隣接したポンツーンのロックバーに対するロックキーの位置を図示す
る側壁ロックアセンブリーの斜視図である。
【
図8】コーナーロックアセンブリーの詳細斜視図である。
【
図9】舌状コネクタのコーナーロック部材との係合を図示する側面図である。
【
図10】浮揚構造物の実施例を形成するためにポンツーンを互いに合わせるとともにロ
ックする方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の理解の便宜のために、好ましい一実施の形態を、添付図面を参照しながら例として説明する。
【0013】
図1は、ポンツーンの側面における固定配置と、角状に切断された(冠状)クロップドコーナーと、角部舌状コネクタとを含む単一ポンツーンの細部を示している。
【0014】
ポンツーンは、連結部に加わる力と、同様に予想される用途によって加えられる力とに耐える強度を有する、様々な材料で生産され得る。
【0015】
図2、
図3および
図4は、大型浮揚プラットフォームを形成するためにポンツーンが配置される方法と、カヌーポロ用プールまたは浮き桟橋などの他の用途に適応させるためにポンツーンが再配置される方法とを示している。これらの配置は包括的であるとは限らず、実際の用途はプラットフォームの強度および設計者の想像力だけによって限定される。
【0016】
図5は、ポンツーン船体におけるロック配置を示している。特に注目すべきは、ロックキー(
図6)を所定の位置に保持するロックバーおよび係合プレート付きの側壁ロックアセンブリーである。ロックキーは、ポンツーン船体に取り付けられたボルトまたはスタッドなどの適切な固定装置を使って所定の位置に保持される。
【0017】
図7は、ポンツーン側壁ロックアセンブリー、および、隣接したポンツーンと、組立式(modular)部材間に実質的に隙間の無い隣接した当接部を形成するために組立式部材のうちの隣接した組立式部材同士と係合するロックキーとの概略的な配置を示している。
【0018】
図8、
図9および
図10は、コーナーロックアセンブリーを示している。
図8の実施形態では、コーナーロック部材が正方形形状であるが、
図4の実施形態では、コーナーロック部材は概ね三角形である。コーナーロック部材は、舌状コネクタを収容するように成形され、ピンまたはボルトなどの適切な固定装置を使用してポンツーンにロックされる。ある用途のための滑らかな側面が必要とされるならば、正方形連結フロートが
図4に示されているような三角形設計と交換されることがある。
【0019】
ポンツーン、連結フロート、および、固定配置の設計は、付加的な設備を用いることなく要素の切り離しと再連結とを可能にする。必要とされる唯一の工具は、締結装置を連結し、切り離すために必要とされる工具、および、サイズおよび重量のために必要である場合、ロックバーの吊り上げ補助装置である。
【0020】
浮揚プラットフォームは、適当な領域で1個のポンツーンを固定することにより組み立てられる。2個またはそれ以上の連結フロートが、フロートのサイズに応じて手動または機械力による押し付けまたは引っ張りを行うことによってポンツーンに連結される。一度、コーナーロック部材が所定の位置に位置すると、1または2個以上のポンツーンが最初にコーナーロック部材に連結し、次に側壁ロックアセンブリーをロックすることにより固定される。一度、ロックキーが所定の位置に位置し、
ロックバーに固定連結されると、側壁ロックアセンブリーの上端係合プレートとロックキーの天板とが所定の位置で締結され、ポンツーンが剛体プラットフォームへ連結される。
【0021】
上述の記載および添付図面は発明者により現在意図されている特定に好ましい実施形態に関するが、広範な局面における本発明は記載および図示される要素の機械的および機能的均等物を含むことが理解されるであろう。