(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679816
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】電気光学アセンブリにおける使用のための接着剤および結合剤
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
G02F1/167
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-534096(P2010-534096)
(86)(22)【出願日】2008年11月5日
(65)【公表番号】特表2011-505586(P2011-505586A)
(43)【公表日】2011年2月24日
(86)【国際出願番号】US2008082439
(87)【国際公開番号】WO2009064642
(87)【国際公開日】20090522
【審査請求日】2010年6月23日
(31)【優先権主張番号】60/987,876
(32)【優先日】2007年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトサイズ, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ラン
【審査官】
赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−510956(JP,A)
【文献】
特表2006−521586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層および電気光学材料層を備える電気光学アセンブリであって、前記接着剤層は、ポリマー接着剤材料およびイオン性材料を含み、前記イオン性材料は、前記ポリマー接着剤材料に化学的に結合されたそのカチオンおよびアニオンの一方、ならびに前記ポリマー接着剤材料を通って自由に移動することができるそのカチオンおよびアニオンの他方を有し、前記イオン性材料は、前記ポリマー接着剤材料の体積抵抗を低下させ、前記ポリマー接着剤材料を50℃に加熱することによって除去されず、前記イオン性材料は、四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオン、および前記ポリマー接着剤材料に化学的に結合されたカルボン酸アニオンを含み、前記ポリマー接着剤材料がポリウレタンを含み、そして前記イオン性材料は、三級アミンを含まない、電気光学アセンブリ。
【請求項2】
前記電気光学材料が、流体中に配置され、電場の影響下で前記流体を通って移動することができる複数の帯電粒子を含む電気泳動材料を含む、請求項1に記載の電気光学アセンブリ。
【請求項3】
前記流体が気体である、請求項2に記載の電気光学アセンブリ。
【請求項4】
請求項1に記載の電気光学アセンブリを備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学ディスプレイを備える、電子ブックリーダー、携帯コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、サイン、時計、棚ラベルまたはフラッシュドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国際出願公開第WO2003/104884号パンフレット、同第WO2004/023195号パンフレット、同第WO2005/041160号パンフレット、同第WO2005/07377号パンフレット、および同第WO2007/104003号パンフレット、ならびに国際出願番号PCT/US2006/60049および同PCT/US2006/62399に関連する。読者は、本発明に関連する背景情報のためにこれらの国際出願を参照する。
【0002】
本発明は、電気光学ディスプレイの製造において有用な電気光学アセンブリ、ならびにこのようなアセンブリの使用のための接着剤および結合剤に関する。より具体的には、本発明では、制御された体積抵抗を有する接着剤および結合剤組成物、ならびにこのような接着剤を組み入れる電気光学アセンブリおよびディスプレイが提供される。本発明は、特に、しかし排他的ではないが、カプセル化された電気泳動媒体を含むディスプレイによる使用について意図される。しかし、本発明は、媒体が、多くの場合、流体(液体または気体)を含む内部空洞を有することができるものの、固体外部表面を有するという意味で固体である、種々の他の種類の電気光学媒体を利用することもできる。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という用語には、カプセル型電気泳動ディスプレイ、カプセル型液晶ディスプレイ、および以下に検討される他の種類のディスプレイが含まれる。本明細書で開示される接着剤は、電気光学ディスプレイ以外の用途に有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
電気光学ディスプレイに関する背景の用語および最新技術は、さらなる情報について本読者が参照する米国特許第7,012,600号明細書に詳細に検討されている。したがって、この用語および最新技術は以下に簡単に要約する。
【0004】
材料またはディスプレイに適用される「電気光学」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの光学特性が異なる第1のディスプレイ状態および第2のディスプレイ状態を有する材料であって、その材料に電場を印加することによってその第1のディスプレイ状態からその第2のディスプレイ状態に変化する材料を指すために画像技術におけるその従来の意味で用いられる。一部の電気光学材料は、その材料が、内部液体または気体充填空間を有することができ、多くの場合、有するものの、固体外部表面を有するという意味で固体である。固体電気光学材料を用いるこのようなディスプレイは、以後便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称することができる。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という用語には、回転バイクロマル部材ディスプレイ、カプセル型電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイおよびカプセル型液晶ディスプレイが含まれる。
【0005】
「双安定」および「双安定性」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの光学特性において異なる第1のディスプレイ状態および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ構成要素を備えるディスプレイを指すために当技術分野におけるそれらの従来の意味で用いられ、したがって、任意の所与の構成要素が、その第1のディスプレイ状態または第2のディスプレイ状態を想定して、有限の継続時間のアドレッシングパルス(addressing pulse)によって駆動された後に、そのアドレッシングパルスが終了すると、ディスプレイ要素の状態を変化させるために必要とされるアドレッシングパルスの最小継続時間、少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍の間は、その状態が持続する。
【0006】
いくつかの種類の電気光学ディスプレイ、例えば:
(a)回転バイクロマル部材ディスプレイ(例えば、米国特許第5,808,783号明細書;同第5,777,782号明細書;同第5,760,761号明細書;同第6,054,071号明細書;同第6,055,091号明細書;同第6,097,531号明細書;同第6,128,124号明細書;同第6,137,467号明細書;および同第6,147,791号明細書を参照のこと);
(b)エレクトロクロミックディスプレイ(例えば、O’Regan, B.ら、Nature 1991年、353巻、737頁; Wood, D.、Information Display、18巻(3号)、24頁(2002年3月); Bach, U.ら、Adv. Mater.、2002年、14巻(11号)、845頁; 米国特許第6,301,038号明細書;同第6,870,657号明細書;および同第6,950,220号明細書を参照のこと);
(c)エレクトロウエッティングディスプレイ(Hayes, R.A.ら、「Video−Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」、Nature、425巻、383〜385頁(2003年9月25日)および米国特許出願公開第2005/0151709号明細書を参照のこと);
(d)粒子ベース電気泳動ディスプレイ(ここでは、複数の荷電粒子が電場の影響下に流体を通って移動する)(米国特許第5,930,026号明細書;同第5,961,804号明細書;同第6,017,584号明細書;同第6,067,185号明細書;同第6,118,426号明細書;同第6,120,588号明細書;同第6,120,839号明細書;同第6,124,851号明細書;同第6,130,773号明細書;および同第6,130,774号明細書;米国特許出願公開第2002/0060321号明細書;同第2002/0090980号明細書;同第2003/0011560号明細書;同第2003/0102858号明細書;同第2003/0151702号明細書;同第2003/0222315号明細書;同第2004/0014265号明細書;同第2004/0075634号明細書;同第2004/0094422号明細書;同第2004/0105036号明細書;同第2005/0062714号明細書;および同第2005/0270261号明細書;ならびに国際出願公開第WO00/38000号パンフレット;同第WO00/36560号パンフレット;同第WO00/67110号パンフレット;および同第WO01/07961号パンフレット;および欧州特許第1,099,207B1号明細書;同第1,145,072B1号明細書;ならびに前述の米国特許第7,012,600号明細書中で検討された他のMITおよびE Inkの特許および出願を参照のこと)
が公知である。
【0007】
電気泳動媒体のいくつかの異なる変形がある。電気泳動媒体は、液体または気体の流体を用いることができ;気体流体については、例えば、Kitamura, T.ら、「Electrical toner movement for electronic paper−like display」、IDW Japan、2001年、論文HCS1−1、およびYamaguchi, Y.ら、「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」、IDW Japan、2001年、論文AMD4−4;米国特許出願公開第2005/0001810号明細書;欧州特許出願第1,462,847号明細書;同第1,482,354号明細書;同第1,484,635号明細書;同第1,500,971号明細書;同第1,501,194号明細書;同第1,536,271号明細書;同第1,542,067号明細書;同第1,577,702号明細書;同第1,577,703号明細書;および同第1,598,694号明細書;ならびに国際出願公開第WO2004/090626号パンフレット;同第WO2004/079442号パンフレット;および同第WO2004/001498号パンフレットを参照されたい。これらの媒体は、多数の小カプセルを含んで、カプセル化することができ、それらのそれぞれは、それら自体、液体懸濁媒体に懸濁させた、電気泳動可動粒子を含む内相、およびその内相を取り囲むカプセル壁を含む。通常、2つの電極間に位置付けられたコヒーレント層を形成するために、カプセルはそれら自体、ポリマー結合剤内に保持される;前述のMITおよびE Ink特許および出願を参照されたい。あるいは、カプセル化された電気泳動媒体中の離散マイクロカプセルを囲む壁は、連続相によって置き換えることができ、したがって、いわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを作ることができ、ここで、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の離散液滴、およびポリマー材料の連続相を含む;例えば、米国特許第6,866,760号明細書を参照されたい。本出願において、このようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種とみなされる。別の変形は、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」であり、ここでは、帯電粒子および流体は、通常ポリマーフィルムである担体媒体内に形成された複数の空洞内に保持される;例えば、米国特許第6,672,912号明細書および同第6,788,449号明細書を参照されたい。
【0008】
電気泳動媒体はしばしば不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、その粒子が、ディスプレイを通る可視光の伝達を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、一方のディスプレイ状態が実質的に不透明であり、一方が光透過性であるいわゆる「シャッタモード」(shutter mode)で動作させることができる。例えば、前述の米国特許第6,130,774号明細書および同第6,172,798号明細書、ならびに米国特許第5,872,552号明細書;同第6,144,361号明細書;同第6,271,823号明細書;同第6,225,971号明細書;および同第6,184,856号明細書を参照されたい。電気泳動ディスプレイと同様であるが、電場強度の変動に依存する誘電泳動ディスプレイは、同様のモードで動作し得る;米国特許第4,418,346号明細書を参照されたい。他の種類の電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作させることができる。
【0009】
カプセル型電気泳動ディスプレイは通常、旧来の電気泳動装置の集積化(clustering)および沈着(settling)の故障モードを被らず、多種多様な柔軟および硬質な基板上にそのディスプレイを印刷またはコーティングする能力などのさらなる利点を与える。(「印刷」という用語の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことが意図され、前計量コーティング、例えば、パッチ染色コーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング;ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、前方および後方ロールコーティング;グラビアコーティング;デップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷処理;静電印刷処理;熱印刷処理;インクジェット印刷処理;電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号参照);および他の同様の技術が含まれるが、これらに限定されない。)したがって、得られたディスプレイは可撓性であり得る。さらに、このディスプレイ媒体は、印刷することができるので(種々の方法を用いて)、ディスプレイ自体安価に作製することができる。
【0010】
他の種類の電気光学媒体、例えば、ポリマー分散液晶も、本発明のディスプレイに用いることができる。
【0011】
電気光学ディスプレイは通常、電気光学材料層、および該電気光学材料の対向する側に配置された少なくとも2つの他の層を備え、これら2つの層の一方は電極層である。ほとんどのこのようなディスプレイにおいて、その層の両方が電極層であり、電極層の一方または両方がディスプレイの画素を画定するためにパターン化される。例えば、一方の電極層は、細長い横列電極にパターン化され、他方は、横列電極に対して直交する細長い縦列電極にパターン化され得、画素は横列および縦列の電極の交点によって画定される。あるいは、より一般的には、一方の電極層は単一の連続した電極の形態を有し、他方の電極層は、画素電極のマトリックス中にパターン化され、それらのそれぞれはディスプレイの1つの画素を画定する。スタイラス、プリントヘッドまたは(ディスプレイから分離する)同様の可動電極を伴う使用が意図される別の種類の電気光学ディスプレイにおいては、電気光学層に隣接する層の1層のみが電極を備え、電気光学層の反対側にある層は通常、可動電極が電気光学層を損傷させないように意図された保護層である。
【0012】
三層電気光学ディスプレイの製造には通常、少なくとも1つのラミネーション操作が含まれる。例えば、いくつかの前述のMITおよびE Ink特許および出願において、結合剤中にカプセルを含むカプセル化された電気泳動媒体が、プラスチックフィルム上にインジウムスズ酸化物(ITO)または同様の導電性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極として機能する)を含む可撓性基板上にコーティングされ、カプセル/結合剤コーティングを乾燥させて、その基板に強固に接着させた電気泳動媒体のコヒーレント層を形成する、カプセル型電気泳動ディスプレイを製造する方法が記載されている。別に、画素電極のアレイおよび画素電極を駆動回路に接続する導体の適当な配列を含むバックプレーンが調製される。最終ディスプレイを形成するために、その上にカプセル/結合剤層を有する基板は、ラミネーション用接着剤を用いてバックプレーンに積層される。(非常に類似した処理を、バックプレーンを簡単な保護層、例えば、スタイラスまたは他の可動電極がその上をスライドできるプラスチックフィルムに置き換えることによって、スタイラスまたは同様の可動電極で使用できる電気泳動ディスプレイを調製するために用いることができる)。このような処理の1つの好ましい形態において、バックプレーンは、それ自体可撓性であり、プラスチックフィルムまたは他の可撓性基板上に画素電極および導体を印刷することによって調製される。この処理によるディスプレイの大量生産のための明らかなラミネーション技術は、ラミネーション用接着剤を用いるロールラミネーションである。同様の製造技術は、他の種類の電気光学ディスプレイに用いることができる。
【0013】
前述の米国特許第6,982,178号明細書で検討されたように(第3欄、63行から第5欄、46行参照)、固体電気光学ディスプレイで用いられる多くの構成要素、およびこのようなディスプレイを製造するために用いられる方法は、液晶ディスプレイ(LCD)で用いられる技術に由来する。しかし、LCDを組み立てるために用いられる方法は、固体電気光学ディスプレイに用いることができない。LCDは通常、別個のガラス基板上にバックプレーンおよび前面電極を形成し、次いで、これらの構成要素をそれらの間に小さな隙間を残して、一緒に接着固定し、得られたアセンブリを真空下に置き、そのアセンブリを液晶の浴に浸漬させることによって組み立てられ、その結果、液晶はバックプレーンと前面電極との間の隙間を通って流れる。最後に、液晶を定位置に置いて、その隙間を密封して最終ディスプレイを得る。
【0014】
このLCDアセンブリプロセスは、固体電気光学ディスプレイに簡単に移すことができない。電気光学材料は固体であるので、それは、これらの2つの完全体(integer)が互いに固定される前にバックプレーンと前面電極との間に存在しなければならない。さらに、いずれにも結合されることなく前面電極とバックプレーンとの間に単に置かれる液晶材料と対照的に、固体電気光学媒体は通常、両方に固定される必要があり;ほとんどの場合、固体電気光学媒体は、前面電極上に形成され(これは一般に、回路含有バックプレーン上に媒体を形成するよりも容易であるので)、次いで、通常、電気光学媒体の表面全体を接着剤で覆い、熱、圧力および恐らくは真空下に積層することによって、前面電極/電気光学媒体の組合せはバックプレーンに積層される。したがって、固体電気泳動ディスプレイの最終ラミネーションのためのほとんどの従来技術の方法は、(通常)電気光学媒体、ラミネーション用接着剤およびバックプレーンが最終アセンブリ直前に一緒にされる本質的にバッチ方法であり、大量生産によりよく適合した方法を提供することが望ましい。
【0015】
米国特許第6,982,178号明細書には、大量生産によく適合した固体電気光学ディスプレイ(カプセル型電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法が記載されている。本質的に、この特許には、順番に、光透過性導電層;該導電層と電気的に接触している固体電気光学媒体層;接着剤層;および離型シートを含む、いわゆる「フロントプレーンラミネート(front plane laminate)(「FPL」)」が記載されている。通常、該光透過性導電層は、光透過性基板上に置かれ、これは、該基板が永久変形なしに、直径で(例えば)10インチ(254mm)のドラムの周りに手巻きすることができるという意味で、好ましくは可撓性である。「光透過性」という用語は、本特許および本明細書では、このように指定された層が十分な光を透過して、その層を通して見る観察者が、電気光学媒体(これは通常、導電層および隣接する基板(存在する場合)を通して見られる)のディスプレイ状態の変化を観察することができることを意味するために使用され;電気光学媒体が、非可視光線の反射率の変化を表示する場合には、「光透過性」という用語は当然、関連する非可視光線の透過を指すと解釈されるべきである。
【0016】
米国特許第6,982,178号明細書には、ディスプレイ中へのフロントプレーンラミネートの組み込み前にフロントプレーンラミネート中の電気光学媒体を試験する方法も記載されている。この試験方法では、離型シートは、導電層を備え、電気光学媒体の光学状態を変化させるために十分な電圧が、この導電層と、電気光学媒体の反対の側の導電層との間に印加される。次いで、電気光学媒体の観察により媒体中のいかなる不良も明らかとなり、したがって、ディスプレイ中へ不良の電気光学媒体を積層することが、単に不良のフロントプレーンラミネートだけでなく、全体のディスプレイを廃棄する結果として生じる費用とともに、回避される。
【0017】
米国特許第6,982,178号明細書には、離型シート上に帯電させ、したがって、電気光学媒体上に画像を形成させることによってフロントプレーンラミネート中の電気光学媒体を試験する第2の方法も記載されている。次いで、この画像は、前と同様に観察され、電気光学媒体中のいかなる不良も検出する。
【0018】
このようなフロントプレーンラミネートを用いる電気光学媒体のアセンブリは、フロントプレーンラミネートから離型シートを除去し、接着剤層にバックプレーンを接着させるために有効な条件下で接着剤層とバックプレーンを接触させ、それにより、接着剤層、電気光学媒体層および導電層をバックプレーンに固定することによって行うことができる。フロントプレーンラミネートは、通常ロール対ロールコーティング技術を用いて、大量生産され、次いで、特定のバックプレーンによる使用のために必要とされる任意の大きさの一片に切断され得るので、このプロセスは大量生産によく適合している。
【0019】
米国特許出願公開第2004/155857号明細書には、前述の米国特許第6,982,178号明細書のフロントプレーンラミネートの本質的に単純化バージョンである、いわゆる「二重離型シート」が記載されている。二重離型シートの1つの形態は、接着剤層の一方または両方が離型シートで覆われている2層の接着剤層間にはさまれた固体電気光学媒体の層を備える。二重離型シートの別の形態は、2枚の離型シート間にはさまれた固体電気光学媒体の層を備える。2つの別個のラミネーションであって;通常、第1のラミネーションにおいて二重離型シートはフロントサブアセンプリを形成するために前面電極に積層され、次いで、第2のラミネーションにおいて、フロントサブアセンブリは、最終ディスプレイを形成するためにバックプレーンに積層される(但し、これら2つのラミネーションの順序は必要に応じて逆にすることができる)ラミネーションが含まれる以外は、二重離型フィルムの両形態は、既に記載されたフロントプレーンラミネートから電気光学ディスプレイを組み立てるためのプロセスと、一般に同様のプロセスにおける使用のために意図される。
【0020】
前述の2007/0109219号明細書には、前述の米国特許第6,982,178号明細書に記載されたフロントプレーンラミネートの変形である、いわゆる「反転フロントプレーンラミネート」が記載されている。この反転フロントプレーンラミネートは、順に、少なくとも1層の光透過性保護層および光透過性導電層;接着剤層;固体電気光学媒体層;ならびに離型シートを備える。この反転フロントプレーンラミネートは、電気光学層と前面電極または前面基板との間にラミネーション用接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために用いられ;第2の、通常接着剤の薄層は、電気光学層とバックプレーンとの間に存在しても、していなくてもよい。このような電気光学ディスプレイは、良好な分解能と、良好な低温性能とを兼ね備えることができる。
【0021】
前述の米国特許第7,012,735号明細書および同第7,173,752号明細書で検討されたように、電気光学ディスプレイにおける(または、このような電気光学ディスプレイを作製するために用いられるフロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネート、二重離型シートもしくは他のサブアセンブリにおける)使用のためのラミネーション用接着剤の選択は、ある種の特定の問題を提示する。ラミネーション用接着剤は通常、電気光学媒体の電気状態を変化させるために必要とされる電場を印加する電極間に位置付けられているので、この接着剤の電気特性は通常、重要である。ラミネーション用接着剤は、接着強度、可撓性、ラミネーション温度において耐えるおよび流れる能力などを含めて、いくつかの機械的およびレオロジー的基準を満たすことも必要である。関連する全ての電気的および機械的基準を満たすことができる市販の接着剤の数は少なく、実際には、最も好適なラミネーション用接着剤は、ある種のポリウレタン、例えば、米国特許出願公開第2005/0107564号明細書に記載されたものである。これらのポリウレタンは、ヘキサメチレンジアミンで鎖延長させた、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI−系統名1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ベンゼン)と、ポリプロピレングリコールと、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸との重合をベースとしている。ポリウレタンが調製された後に、トリエチルアミンによる中和および水による希釈によって水性ラテックス様懸濁液として分散される。しかし、実際には、その製造に用いられる材料の比率を制御することによってポリウレンタンの導電性を変化させることはできない。
【0022】
結果として、ポリウレタン接着剤は、多くの電気光学ディスプレイおよび電気光学アセンブリにおける使用に対して十分導電性ではなく、前述の米国特許第7,012,735号明細書および同第7,173,752号明細書に記載されたように、それを塩または他の材料でドーピングすることによってその導電性を増加させることが公知である。この目的のための好ましいドーパントは、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(以後、「TBAHFP」)である。残念なことに、このように配合された接着剤は、ある種の有機半導体から作製されたトランジスタを備える活性マトリックスバックプレーンを損傷し得ることが見いだされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明では、有機半導体を含むディスプレイで用いられる場合、従来技術の接着剤によって生じた問題を低減または解消し得るラミネーション用接着剤の代替形態が提供される。本発明ではまた、有機半導体を含むディスプレイにおける従来技術の結合剤によって生じた問題を低減または解消するために電気光学ディスプレイで用いられる結合剤の改変にまで及ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、2つの主な態様を有する。第1の態様は、その材料が接着剤層から拡散して出させない仕方でのイオン性材料の接着剤層への取込みに関する。第2の態様は、有機半導体を損傷させ得るある種の拡散性種を除去するための接着剤材料または結合剤の前処理に関する。
【0025】
したがって、1つの態様において、本発明では、接着剤層および電気光学材料層を備える電気光学アセンブリであって、該接着剤層は、ポリマー接着剤材料およびイオン性材料を含み、該イオン性材料は、該ポリマー接着剤材料に固定されたそのカチオンおよびアニオンの一方、およびポリマー接着剤材料を通って自由に移動するそのカチオンおよびアニオンの他方を有し、該イオン性材料は、該ポリマー接着剤材料の体積抵抗を低下させ、かつ該ポリマー接着剤材料を約50℃に加熱することによって除去されない、電気光学アセンブリが提供される。
【0026】
以後便宜上、ポリマー接着剤材料に固定されるイオン性材料のカチオンまたはアニオンは、「固定イオン」と呼ばれ、ポリマー接着剤材料を通って自由に移動できるカチオンまたはアニオンは、「可動イオン」と呼ばれる。通常、固定イオンは、ポリマー接着剤に化学的に結合され、ポリウレタン接着剤に結合したこのようなイオンを得るための様々な技術は以下に検討される。しかし、固定イオンがポリマー接着剤を通って移動できないことを条件として、このような化学結合は絶対に必要というわけではなく;例えば、固定イオンは、ポリマー接着剤と異なるが、鎖がそれと絡んだポリマーの一部を形成することができる。
【0027】
電気光学アセンブリの1つの形態において、イオン性材料は、ポリマー接着剤材料に固定した、四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオン、およびカルボン酸アニオンを含む。ポリマー接着剤材料は、ポリウレタンを含み得る。あるいは、イオン性材料は、ポリマー接着剤材料に固定した四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオン、およびヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルボレートまたはテトラフェニルボレートアニオンを含み得る。電気光学アセンブリの別の形態において、イオン性材料は、塩基性モノマー由来の繰返し単位、およびスルホネート、スルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ビス(メタンスルホニル)イミデート、ホスフェートおよびホスホネートを含む群から選択される可動アニオンを含む。塩基性モノマーは、例えば、ビニルピリジン、β−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−メチルまたはベンジル(ビニルピリジン)、N−アルキルまたはアルカリール(alkaryl)−N’−ビニルイミダゾール、およびβ−(トリメチルアンモニオエチル)アクリレートまたはメタクリレートのいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0028】
このような電気光学アセンブリにおいて、電気光学材料は、回転バイクロマル部材またはエレクトロクロミック材料を含み得る。あるいは、電気光学材料は、流体中に配置された複数の帯電粒子を含み、電場の影響下で流体を通って移動することができる電気泳動材料を含み得る。帯電粒子および流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められ得る。あるいは、帯電粒子および流体は、ポリマー材料を含む連続相によって取り囲まれた複数の離散液滴として存在し得る。この流体は、液体または気体であってもよい。
【0029】
本発明は、本発明の電気光学アセンブリを備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルムにまで及ぶ。
【0030】
本発明ではまた、接着剤層および電気光学材料層を備える電気光学アセンブリであって、該接着剤層は、約3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションにかけたポリマー接着剤材料を含む電気光学アセンブリが提供される。
【0031】
本発明ではまた、接着剤層および電気光学材料層を備える電気光学アセンブリであって、該接着剤層は、該接着剤層および電気光学材料層の総重量に基づいて約500ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有するポリマー接着剤材料を含む電気光学アセンブリが提供される。
【0032】
このような電気光学アセンブリにおいて、ポリマー接着剤材料は、ポリウレタンを含み得る。N−メチルピロリドンの含有量は好ましくは、該接着剤層および電気光学材料層の総重量に基づいて、約200ppm、および望ましくは100ppmを超えない。
【0033】
このような電気光学アセンブリにおいて、電気光学材料は、回転バイクロマル部材またはエレクトロクロミック材料を含み得る。あるいは、電気光学材料は、流体中に配置され、電場の影響下で該流体を通って移動することができる複数の帯電粒子を含む電気泳動材料を含み得る。帯電粒子および流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められ得る。あるいは、帯電粒子および流体は、ポリマー材料を含む連続相によって取り囲まれた複数の離散液滴として存在し得る。流体は、液体または気体であってもよい。
【0034】
本発明は、本発明の電気光学アセンブリを備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルムにまで及ぶ。
【0035】
本発明ではまた、連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、該非連続相は、複数の液滴を含み、それらのそれぞれが、懸濁流体、および該懸濁流体内に配置され、該電気泳動媒体に電場が印加された後に該流体を通って移動することができる少なくとも1個の粒子を含み、該連続相は、非連続相を取り囲みおよびカプセル化し、約3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションにかけたポリマー結合剤を含む電気泳動媒体が提供される。該電気泳動媒体は、カプセル型またはポリマー分散型のいずれであってもよく、すなわち、それぞれの液滴と結合剤との間にカプセル壁があってもなくてもよい。
【0036】
本発明ではまた、連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、該非連続相が複数の液滴を含み、それらのそれぞれが、懸濁流体、および該懸濁流体内に配置され、該電気泳動媒体への電場の印加後に、該流体を通って移動することができる少なくとも1個の粒子を含み、該連続相が、該非連続相を取り囲みおよびカプセル化し、該電気泳動媒体の重量に基づいて約1,000ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有するポリマー結合剤を含む電気泳動媒体が提供される。
【0037】
本発明は、本発明の電気光学アセンブリまたは電気泳動媒体を備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルムにまで及ぶ。
【0038】
本発明のディスプレイは、従来技術の電気光学ディスプレイが用いられていたいずれの用途でも用いられ得る。したがって、例えば、本ディスプレイは、電子ブックリーダー、携帯用コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、サイン、時計、棚ラベルおよびフラッシュドライブで用いられ得る。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
接着剤層および電気光学材料層を備える電気光学アセンブリであって、前記接着剤層は、ポリマー接着剤材料およびイオン性材料を含み、前記イオン性材料は、前記ポリマー接着剤材料に固定されたそのカチオンおよびアニオンの一方、ならびに前記ポリマー接着剤材料を通って自由に移動することができるそのカチオンおよびアニオンの他方を有し、前記イオン性材料は、前記ポリマー接着剤材料の体積抵抗を低下させ、前記ポリマー接着剤材料を50℃に加熱することによって除去されない、電気光学アセンブリ。
(項目2)
前記イオン性材料が、前記ポリマー接着剤材料に固定されたカルボン酸アニオン、および四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオンを含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目3)
前記ポリマー接着剤材料がポリウレタンを含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目4)
前記イオン性材料が、前記ポリマー接着剤材料に固定された四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオン、およびヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルボレートまたはテトラフェニルボレートアニオンを含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目5)
前記イオン性材料が、塩基性モノマー由来の繰返し単位、およびスルホネート、スルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ビス(メタンスルホニル)イミデート、ホスフェートおよびホスホネートを含む群から選択される可動アニオンを含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目6)
前記塩基性モノマーが、ビニルピリジン、β−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−メチルまたはベンジル(ビニルピリジン)、N−アルキルまたはアルカリール−N’−ビニルイミダゾール、およびβ−(トリメチルアンモニオエチル)アクリレートまたはメタクリレートの任意の1種または複数を含む、項目5に記載の電気光学アセンブリ。
(項目7)
前記電気光学材料が、流体中に配置され、電場の影響下で前記流体を通って移動することができる複数の帯電粒子を含む電気泳動材料を含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目8)
前記流体が気体である、項目7に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目9)
項目1に記載の電気光学アセンブリを備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミメート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルム。
(項目10)
項目9に記載の電気光学ディスプレイを備える、電子ブックリーダー、携帯コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、サイン、時計、棚ラベルまたはフラッシュドライブ。
(項目11)
接着剤層および電気光学材料の層を備える電気光学アセンブリであって、前記接着剤層は、約3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションにかけたポリマー接着剤材料を含む、電気光学アセンブリ。
(項目12)
接着剤層および電気光学材料の層を備える電気光学アセンブリであって、前記接着剤層は、前記接着剤層および電気光学材料層の総重量に基づいて500ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有するポリマー接着剤材料を含む、電気光学アセンブリ。
(項目13)
前記ポリマー接着剤材料がポリウレタンを含む、項目12に記載の電気光学アセンブリ。
(項目14)
200ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有する、項目12に記載の電気光学アセンブリ。
(項目15)
前記電気光学材料が、流体中に配置され、電場の影響下で前記流体を通って移動することができる複数の帯電粒子を含む電気泳動材料を含む、項目12に記載の電気光学アセンブリ。
(項目16)
前記流体が気体である、項目15に記載の電気光学ディスプレイ。
(項目17)
項目12に記載の電気光学アセンブリを備える、電気光学ディスプレイ、フロントプレーンラミネート、反転フロントプレーンラミネートまたは二重離型フィルム。
(項目18)
項目17に記載の電気光学ディスプレイを備える、電子ブックリーダー、携帯コンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、サイン、時計、棚ラベルまたはフラッシュドライブ。
(項目19)
連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、前記非連続層は、複数の液滴を含み、そのそれぞれは、懸濁流体、および前記懸濁流体内に配置され、前記電気泳動媒体への電場の印加後に前記流体を通って移動することができる少なくとも1個の粒子を含み、前記連続相は、前記非連続層を取り囲みおよびカプセル化し、3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションをかけたポリマー結合剤を含む、電気泳動媒体。
(項目20)
連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、前記非連続層は、複数の液滴を含み、そのそれぞれは、懸濁流体、および前記懸濁流体内に配置され、前記電気泳動媒体への電場の印加後に前記流体を通って移動することができる少なくとも1個の粒子を含み、前記連続相は、前記非連続層を取り囲みおよびカプセル化し、前記電気泳動媒体の重量に基づいて1000ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有するポリマー結合剤を含む、電気泳動媒体。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】添付の図面の唯一の図は、以下の実施例5で得られる光学状態の読取りを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
上に示されたように、本発明は2つの主な態様を有し、その第1は、接着剤層への非拡散性イオン性材料の取込みに関し、ならびにその第2は、電気泳動媒体およびディスプレイにおける透析またはダイアフィルトレーションされた接着剤材料および/または結合剤の使用に関する。本発明のこの2つの主な態様は主に、以下に別々に検討されるが、本発明の両態様が、単一の物理的ディスプレイに組み込まれ得ることは容易に明らかである。
【0041】
A部:非拡散性イオン性材料
上に示されたように、1つの態様において、本発明では、電気光学層および接着剤層を備える電気光学アセンブリが提供される。接着剤層は、イオン性材料を含み、そのうちの一方のイオンは接着剤層を通って移動できないが、他方はできる。この種のイオン性材料は、イオンが接着剤層から拡散して出ることおよびイオンが拡散して入る他の層(例えば、有機半導体層)を潜在的に損傷させることを防ぐ。
【0042】
ポリマー接着剤層のイオン伝導は、「ホッピング」機構によって起きることが示されており、ここで、解離した遊離のイオンは、イオン凝集体(イオン対およびより高度の凝集体)の中で移動し(translate)、大部分のこれらの凝集体は、本質的に中性である。本発明によれば、イオン性材料のアニオンおよびカチオンの一方のみが動くことができる。固定イオンは一つの位置に拘束されるが、可動イオンは、なお自由に移動できる。適当なイオン性材料の一例は、ポリマー塩、例えば、ポリマーカルボン酸のイオン性塩である。この場合、カルボン酸イオンは、そのポリマー鎖に結合されており、全体としてポリマーと一緒に動くことができるのみであるので、事実上、非可動である。一方、そのカチオン性対イオンは、ホッピング運動に自由に関与でき、それが動くことができる速度は、アニオン性カルボン酸との静電相互作用の強度、接着剤媒体中のカルボン酸−対イオン凝集体の濃度、該媒体の粘度、および該媒体による対イオンの溶媒和の自由エネルギーに依存する。
【0043】
前述の米国特許第7,012,735号明細書に記載されたイオンドープ接着剤におけるように、本発明において、大きなカチオンは、それらが、イオン性凝集状態に対する引力の比較的低い静電エネルギーを有し、したがって、それらから容易に解離する点で有利である。一例として、水酸化四級アンモニウムは、ポリウレタン上のカルボン酸官能基を中和するために用いることができ、上記のようにイオン伝導を支持することができるカルボン酸四級アンモニウムポリマーをもたらす。
【0044】
イオン性材料は、乾燥後の最終接着剤層の導電性が、ポリウレタンのカルボン酸含有量を変えることによって、およびまた用いられるカチオンによって、改変および調整され得るように選択されることが望ましい。例えば、ポリウレタン上のカルボン酸基が、所与のカルボン酸含有量で、水酸化四級アンモニウムで中和される前述の系において、その導電性は、以下の順:
テトラメチルアンモニウム<テトラエチルアンモニウム<テトラブチルアンモニウムなどで増加することが予想される。ホスホニウム塩も用いることができ、中心原子の比較的大きなサイズのために、窒素含有類似体よりもいくらか大きい導電性であるはずである。他のカチオン性種(例えば、金属の錯イオン)も、この目的に有用であり得る。接着剤中のイオン性材料の溶解度は、本手法において問題ではないが、その理由は、イオンは媒体の固有の部分であり、したがって、別個の結晶相として相分離させることができないからである。
【0045】
ポリマー接着剤の酸性成分も、少なくとも1個の存在する解離性プロトンがある限り、カルボン酸成分を、より高い解離定数を有する基、例えば、硫酸モノエステル、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸の基またはリン酸エステルで置き換えることによってより酸性にさせることもできる。四級塩および他の大きなカチオンは、それらの大きなサイズ、および低極性の乾燥接着剤媒体中の比較的高いイオン解離度のために、対イオンとして最も有用であることがやはり予想される。十分に電子求引性の官能基(例えば、RSO
2−NH−SO
2R)に結合した場合、窒素系酸も用いることができる。この場合、稼動イオンは乾燥接着剤においてさえもプロトン化形態で存在するので、三級アンモニウムも含めて、ほとんど全ての可動イオンを用いることができる。しかし、比較的大きなアミン(すなわち、比較的長いアルキル尾部を有するもの)に基づく可動イオンは、サイズが有効により大きく、したがって、それらを含むイオン対がより解離性になるので、やはり好ましくあり得る。
【0046】
あるいは、接着剤上のカルボン酸基は、強いブレンステッド酸でない、すなわち、上に検討された四級カチオンなどの酸性プロトンを持たない可動イオンと一緒に用いることができる。
【0047】
カチオンが固定イオンである接着剤組成物は、ポリマー主鎖におけるまたは側鎖として四級アンモニウム基を用いる、好ましくは、可動イオンとして大きなアニオン(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルボレート、テトラフェニルボレートなど)を用いることによって構成され得る。四級アンモニウム基は、金属カチオンとの錯化によって形成されるものを含めて、解離性水素を有しないホスホニウム、スルホニウムまたは他のカチオン性基によって置き換えられ得る。後者の例には、ポリエーテル/リチウムイオン包接錯体、特に、遷移金属イオンとの環状ポリエーテル(例えば、18−クラウン−6)またはポリアミン錯体が含まれる。この場合、アニオン性可動イオンには、上に記載した種類のイオンに加えて、カルボキシレートまたはさらにフェノラートなどのより強い塩基性材料が含まれ得る。
【0048】
代替の固定カチオン接着剤材料には、塩基性モノマー、例えば、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(β−ジメチルアミノエチルアクリレート)など由来の繰返し単位を含むポリマー、およびこのような基を、良好なブレンステッド受容体でない可動アニオン(例えば、スルホネート、スルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ビス(メタンスルホニル)イミデート、ホスフェート、ホスホネートなど)とともに含むコポリマーが含まれる。このようなアミノモノマー由来の四級塩、例えば、ポリ(N−メチルまたはベンジル(ビニルピリジニウム))、ポリ(N−アルキル(またはアルカリール)−N’−ビニルイミダゾリウム)、およびポリ(β−トリメチルアンモニオエチル)アクリレートまたはメタクリレートの塩、ならびにこれらのイオン性基を含むビニルコポリマーも用いることができる。前のように、より大きな可動イオンが好ましい。
【0049】
これらの化学的改変技術は、ポリウレタンに制限されず、適切な構造の任意のポリマーに適用することができる。例えば、ビニルベースのポリマーはアニオン固定イオンまたはカチオン固定イオンのいずれかを含むことができる。
【0050】
B部:透析またはジアフィルトレーションされた接着剤材料および/または結合剤
既に述べられたように、本発明の1つの態様では、電気光学ディスプレイの接着剤層から他の層へのイオンドーパントの移動によって生じる問題、特にある種の有機半導体から作製されたトランジスタを含む活性マトリックスバックプレーンに対する損傷が低減または解消される。しかし、いまや、これらの問題の原因は、イオンドーパントに限られないが、それには、イオンドーパントと同様に電気光学ディスプレイの接着剤層または結合剤層から他の層へ移動できる、従来技術の接着剤および結合剤組成物中に存在する他の逃亡種が含まれることが見いだされた。特に重要な1つのこのような逃亡種は、N−メチルピロリドン(NMP)であり、これは、ポリウレタンの調製において溶媒として用いられる。一部の場合に重要であり得る他の逃亡種には、ポリウレタンの調製において用いられる他の溶媒、および重合反応由来の透析可能な、不十分に特徴づけされた低分子量分子が含まれる。接着剤層からの慎重な乾燥によってNMPを除去することは、その層の貯蔵安定性を改善することが見いだされた。ラミネーション用接着剤の透析は、NMPおよびまた他の低分子量材料の両方を除去し、さらにより有効である。電気的中性が固定および可動イオンの全体の分離を防止するので、本発明の非拡散性イオン性材料の接着剤組成物は透析にかけることができ、透析後に、接着剤材料は、拡散性材料をほとんどもしくは全く含まない。したがって、本接着剤は、有機半導体を含むバックプレーンの性能に対するラミネーション用接着剤の有害な作用を低減することに特に有効であることが見いだされた。透析に代えて、ダイアフィルトレーションも用いることができる。
【0051】
既に述べられたように、本発明の非拡散性イオン性材料の接着剤材料は、透析またはダイアフィルトレーションで精製され得る。しかし、透析によってこれらの接着剤材料を合成することも有用であり得る。例えば、ポリアミンまたはポリエーテルの水溶液は、適当な水溶性金属塩の溶液中のポリマー溶液の透析によってカチオン性錯体に一部変形させることができる。
【0052】
透析またはダイアフィルトレーションは、従来のポリウレタン接着剤が従来のイオン性ドーパントと混合される前に、このような接着剤からNMPおよび他の逃亡種を除去するために用いることもできる。したがって、既に述べたように、その第二の主な態様において、本発明では、接着剤層および電気光学材料層を含む電気光学アセンブリであって、該接着剤層は、約3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションにかけたポリマー接着剤材料を含む電気光学アセンブリが提供される。このような透析またはダイアフィルトレーションは、とりわけ、NMP、テトラヒドロフラン(THF)およびアセトンを除去するために用いられ得る。同様に、本発明の第2の態様ではまた、接着剤層および電気光学材料層を含む電気光学アセンブリであって、該接着剤層は、全ての場合に該接着剤層および電気光学材料層の総重量に基づいて、約500ppmを超えない、好ましくは約200ppmを超えない、望ましくは約100ppmを超えないN−メチルピロリドンの含有量を有するポリマー接着剤材料を含む電気光学アセンブリが提供される。
【0053】
本発明の第2の態様ではまた、連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、該非連続相は、複数の液滴を含み、それらのそれぞれが、懸濁流体、および該懸濁流体内に配置され、該電気泳動媒体への電場の印加後に、該流体を通って移動することができる少なくとも1個の粒子を含み、該連続相は、該非連続を取り囲みおよびカプセル化し、約3,500未満の分子量を有する有機種を除去するために透析またはダイアフィルトレーションにかけたポリマー結合剤を含む電気泳動媒体が提供される。電気泳動媒体は、カプセル型またはポリマー分散型のいずれであってもよく、すなわち、それぞれの液滴と結合剤との間にカプセル壁があってもなくてもよい。本発明の第2の態様ではまた、連続相および非連続相を含む電気泳動媒体であって、該非連続相は、複数の液滴を含み、それらのそれぞれが、懸濁流体、および該懸濁流体内に配置され、該電気泳動媒体への電場の印加後に、該液体を通って動くことができる少なくとも1個の粒子を含み、該連続相は、該非連続相を取り囲みおよびカプセル化し、全ての場合に該電気泳動媒体(すなわち、該連続および非連続相の組合せ)の重量に基づいて、約1000ppmを超えない、好ましくは約400ppmを超えない、望ましくは約200ppmを超えないN−メチルピロリドン、テトラヒドロフランおよびアセトンの総含有量を有するポリマー結合剤を含む電気泳動媒体が提供される。
【0054】
既に示されたように、本発明の第2の態様は、電気光学ディスプレイで用いられるラミネーション用接着剤および/または結合剤からNMPおよび恐らくは他の逃亡種を除去するために用いることができる。多くの場合、結合剤からの逃亡種の除去は、ラミネーション用接着剤からの除去よりも重要である。ラミネーション用接着剤層の調製には通常、離型シートの上に流動可能な形態の接着剤をコーティングし、次いで、接着剤の層を乾燥させ、その結果、接着剤のコヒーレント層が離型シート上に形成される工程が含まれる。乾燥工程中の高温および低いコーティング速度は、大きな比率の揮発性有機種を追い出すために十分であり;例えば、50,000ppmのNMPでコーティングされたラミネーション用接着剤は、乾燥後にわずか200ppmのNMPを有することが見いだされた。さらに、乾燥中に存在する層は、ラミネーション用接着剤および離型シートだけである(接着剤の電気光学媒体へのラミネーションは、乾燥工程の後のみに行われる)ので、乾燥条件の選択はラミネーション用接着剤それ自体の特性のみに基づくことができ、電気光学媒体の特性を考慮に入れる必要はない。対照的に、電気泳動媒体で用いられる結合剤は通常、該媒体の非連続相と混合されて、スラリーを形成し、次いで、これはコーティングされ、乾燥させて、電気泳動媒体を形成する。したがって、この場合、乾燥条件は、非連続相の特性、および特に、揮発性非連続相溶媒の同時の除去に関する問題を考慮に入れなければならない。最後に、品質管理の観点から、電気光学媒体が接触する状態になることが予想され得る任意のバックプレーンを損傷させる可能性を有する全ての材料を除去することが良好な保証策を示し、その結果、未知の成分(その濃度は知ることまたは制御なしで変わり得る)の数は最小に保たれ;明らかに、良好な製造工程の問題として、公知の組成の純材料の使用が非常に望ましい。
【0055】
透析およびダイアフィルトレーションの両方は、コロイドおよびポリマーの懸濁液を精製する周知の方法である。両技術において、この懸濁液は、その反対側が洗浄溶液、通常水または緩衝溶液である半透膜によって閉じ込められる。該膜を通過でき、洗浄溶液に可溶性である分子は、装置の2つの領域間で平衡させ、洗浄溶液の交換によって懸濁液から除去される。通常、該膜は、低分子量材料の選択的通過を可能にする材料からできており、水は、一般に溶媒として用いられ;本発明において、約3.5kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する膜が有用であることがわかった。NMPは水溶性溶媒であるので、これらの技術は、この汚染を除去するために十分適している。同時に、一部は潜在的に有害な特性を有する、他の可溶性材料も除去され得る。乾燥による除去の場合におけるように、除去される種が認め得るほどに揮発性であることは必要ではない。膜の特性を調節することによって、除去される分子のクラスは変えることができる。例えば、特定のラミネーション用接着剤または結合剤における場合、水溶性オリゴマーポリマー断片の存在は問題であり、このような断片を除去するために、より高いMWCOを有する膜を用いることができ;種々のMWCOを有する様々な半透膜が市販されている。
【0056】
透析またはダイアフィルトレーションのいずれも本方法において用いることができるが、商業生産に対しては、ダイアフィルトレーションが通常好ましい。透析は簡単な平衡処理であるが一方、ダイアフィルトレーションは、高い流量条件および高い膜透過圧を用い、該膜を通して大量輸送を促進させる。ダイアフィルトレーションは、透析より実質的に速く、しばしば透析における場合のように、精製される材料の希釈を防ぐ条件下で用いることができる。ダイアフィルトレーションは、容易に拡張可能な処理であり、実験室規模および生産規模の両方の装置は、妥当な費用で入手できる。ダイアフィルトレーションは、生化学および他の産業で広く用いられる、確立した工業手順である。
【0057】
本発明者らは、透析およびダイアフィルトレーションの両方が、市販のポリウレタンラテックスの懸濁液からのNMPの除去に有効であることを示した。低MWCO(3.5kD)を有する膜を使用するポリウレタンラテックスの透析およびダイアフィルトレーションは、数時間で1桁を超えてNMP含有量を減少させることができることが経験的にわかっている。例えば、あるポリウレンタン結合剤のNMP含有量は、ダイアフィルトレーションによって約14%(140,000ppm)から約500ppmに減少した。透析を用いる場合、NMP除去の効率は、ラテックスの希釈によって制限され得、これは、特にラミネーション用接着剤の場合に、ラテックスをコーティングすることを困難にさせた。ラテックスは、減圧下で過剰の水の蒸発によって濃縮することができるが、これは、不適当な操作である。精製ポリウレタンラテックスの分子量分布の調査は、その出発物質と本質的に同一である、すなわち、ポリマーは透析中に失われないことを示した。透析された材料が未透析結合剤およびラミネーション用接着剤に代えて用いられた場合、多くの利点が見られた。
【0058】
第1に、有機半導体バックプレーンの性能の低下が大きく削減された。ラミネーション用接着剤ではなく、結合剤のみを透析した場合も同じ結果が得られた。しかし、結合剤の透析を省いた場合は、有機半導体装置の性能の重大な低下が認められた。
【0059】
第2の利点は、セル空隙抵抗(フロントプレーンラミネートの導電性の尺度)が、透析された材料を用いて、通常約50パーセントより高いことであった。より高いセル空隙抵抗により、動作トランジスタのオン状態の導電性に対する要求はほとんどない(すなわち、より低いオンオフ比が許容される)。これは、そのオン−オフ比が通常、無機トランジスタほど高くない有機半導体トランジスタについて特に重要な特徴である。
【0060】
第3の利点は、透析されたラテックスから製造された電気泳動媒体の電気光学特性の小さな改善であった。以下の実施例5で例証されるように、透析されたポリウレタンラテックスの使用は、未透析材料の使用に比べて、ダイナミックレンジ(媒体の極限の白色および暗色の電気光学状態の差)において約2L
*(L
*の通常のCIE定義を用いて)の改善をもたらした。
【0061】
本発明において用いられた好ましい試薬、条件および技術の詳細を示すために、例証のみのつもりではあるが、以下の実施例をこれから示す。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
水酸化テトラブチルアンモニウム中和によるTMXDI−PPOポリウレタンの合成
この実施例で調製されるポリウレタンは、より高い酸分を有する以外は、以下の実施例2で製造される従来技術のポリウレタンと同様である。
【0063】
プレポリマーを、電磁撹拌機、コンデンサ、および窒素注入口を備えた3つ口丸底フラスコ内で調製した。反応は窒素下で行った。テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI、Aldrich Chemical Companyより供給、16.34g、0.067モル)、ポリ(プロピレングリコール)ジオール(Aldrich Chemical Companyより供給、平均M
n約2000、33.5g、0.0168モル)、およびジブチル錫ジラウレート(Aldrich Chemical Companyより供給、0.04g)をそのフラスコ中に入れ、この混合物を油浴中90℃で2時間加熱した。その後、1−メチル−2−ピロリジノン(Aldrich製、8.5g)中2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Aldrich製、3.35g、0.025モル)の溶液をフラスコに添加し、反応を90℃でさらに2時間進行させて、NCO−末端プレポリマーを得た。次いで、反応混合物の温度を70℃に下げた。別に、水酸化テトラブチルアンモニウム(NBu
4OH)(Aldrich製、6.15g、0.0237モル)および脱イオン水(100g)を、機械式撹拌機、温度計および窒素注入口を備えたジャケット付きの500mLガラス反応器に入れ、得られた混合物を窒素下に35℃に加熱した。次いで、プレポリマー混合物をNBu
4OH水溶液にゆっくり添加し、そのプレポリマーを機械式撹拌および窒素雰囲気下で水性分散液に変換させた。この分散工程後に、鎖延長反応を、少量の水に溶解させたヘキサメチレンジアミン(Aldrich製)によって35℃で行った。鎖延長反応の終点は、pH測定から決定した。最後に、得られた分散液を50℃に1時間加熱し、残留イソシアネート基が水によって全て消費されることを確認した。
【0064】
(実施例2)
トリエチルアミン中和によるTMXDI−PPOポリウレタンの合成(対照)
NCO末端プレポリマーが得られる時点まで、実施例1を繰り返し、反応混合物の温度を70℃に下げた。その後、トリエチルアミン(Aldrich製、2.4g、0.0237モル)を30分の時間をかけてゆっくり添加し、そのカルボン酸を中和した。次いで、この反応混合物を、機械式撹拌および窒素雰囲気下でジャケット付き500mLガラス反応器中、35℃で脱イオン水(100g)にゆっくり添加し、プレポリマーを水性分散液に変換させた。鎖延長反応および分散液の50℃への最終加熱は、実施例1と同様に行った。
【0065】
(実施例3)
実施例1および実施例2で調製した材料からの実験的単一画素ディスプレイの調製
上記実施例1および実施例2で調製したポリウレタンを別々に、メッキ離型フィルムに約20μmの(乾燥)厚さにコーティングした。コーティングしたポリマーフィルムの乾燥を60℃および1フィート/分(約5.1mm/秒)の移送速度でベルト移送式乾燥オーブンにおいて行い;これらの条件は、NMPの含有量を非常に低濃度に減少させることが公知である。別に、電気泳動媒体を、実質的に、米国特許第7,002,728号明細書の実施例4に記載されたように調製し、インジウムスズ酸化物(ITO)で一表面上にコーティングされた5ミル(127μm)のポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムのITOコーティング表面上にコーティングした。この2つのサブアセンブリをラミネーション用接着剤と接触している電気泳動層とともに互いに積層し、前述の米国特許第6,982,178号明細書に記載されたとおりのフロントプレーンラミネートを形成した。離型シートをフロントプレーンラミネートから剥がし、残っている層を、PETフィルム上にカーボンブラックの層を含む実験的単一画素2インチ(51mm)平方バックプレーンに積層し、実験的単一画素ディスプレイを形成した。いずれの接着剤コーティング中にも添加ドーパントは取り込まなかった。この実験的ディスプレイを、50パーセント相対湿度で1日間調整した(いくつかの前述のE Ink特許および出願で検討されたように、電気泳動ディスプレイの電気光学特性は、電気泳動層の水分量で変化し、したがって、試験前に標準条件下で試験片を調整することが望ましい)。
【0066】
次いで、実験的ディスプレイを種々の電圧における250ミリ秒パルスを用いてそれらの黒色および白色の光学状態に駆動させ、黒色および白色の光学状態の反射率を測定し、これらの反射率を、L
*が通常のCIE定義:
L
*=116(R/R
0)
1/3−16
(ここで、Rは反射率であり、R
0は、標準反射率値である)
を持つ従来のL
*値に変換することによって、実験的ディスプレイの電気光学特性を試験した。以下の表1は、種々の電圧で得られたダイナミックレンジ(黒色および白色の光学状態のL
*値間の差)を示す:
【0067】
【表1】
表1から、本発明のラミネーション用接着剤が対照接着剤に比べて全ての駆動電圧で実質的により大きなダイナミックレンジを示したことがわかる。この改善は、導電性の差から予想されるものと一致し、低酸分の従来技術のドープ接着剤を用いて見られるものと同様である。トリエチルアミンで中和した対照接着剤は、非常に抵抗性であるラミネーション用接着剤に対して予想された電気光学応答を示す。操作中のディスプレイの目視検査により、対照接着剤を用いたディスプレイはディスプレイの端部に少量のブルーミングのみを示し、一方本発明の接着剤を用いるディスプレイは、大量のブルーミングを示すことがわかった。高度のブルーミングはまた、高導電性の接着剤と一致する。
【0068】
実験的ディスプレイは、低温試験も受けた。いくつかの前述のE Ink特許および出願で検討されたように、ラミネーション用接着剤の導電性は温度とともに低下するので、電気泳動ディスプレイの電気光学性能は、少なくとも部分的に、低温で急激に低下する傾向がある。本発明の実験的ディスプレイの低温挙動を決定するために、250または500ミリ秒のいずれかの持続時間の15Vパルスを用いて+25から−25℃の温度でディスプレイを駆動し、駆動パルスの終了2分後に取った反射率を用いて、ダイナミックレンジを決定した。(反射率値を取る前のこの2分の中断により、反射率値を消散させるように影響するある種の短時間効果が可能になる)。得られた反射率値は、前と同様にダイナミックレンジ値に変換し、結果を以下の表2に示す。
【0069】
【表2】
表2のデータから、パルス長補償が用いられることを条件として、すなわち、駆動パルスを低温で長くすることを条件として、本発明の接着剤は、約−10℃まで下がって適切な性能を与えることがわかる。この低温性能は、高度にドーピングした従来技術のラミネーション用接着剤のものに匹敵する。
【0070】
(実施例4)
透析による本発明のラミネーション用接着剤の精製
上記実施例1で調製したラミネーション用接着剤の試料(49.3g、35重量%固形分)を透析膜のチューブ(Fisher(登録商標)再生セルロース膜、MWCO3500)に入れた。クランプでチュービングの両端を閉じた後に、連続的に補給した水の撹拌タンクにそのチュービングを約4時間浸漬させた。次いで、この時間の終了時に、固形分29.5%(95%回収)の61.6gの材料を回収した。初期に、NMP含有量は4.4%であり;透析後、含有量は1.4%であった。このNMP含有量を、他の水溶性低分子量材料の除去に対する代替として用いることができる。
【0071】
透析または非透析の両方の従来技術のラミネーション用接着剤とともに、上記実施例4で調製した透析ラミネーション用接着剤、および独自仕様の有機半導体バックプレーンを用いるディスプレイに対する予備的長期間保存試験は、本発明の透析ラミネーション用接着剤が、従来技術の接着剤よりも実質的に良好な長期間保存特性を有することを示した。
【0072】
(実施例5)
電気泳動ディスプレイにおける透析した結合剤およびラミネーション用接着剤の使用
実質的に、米国特許出願公開第2008/0074730号明細書の実施例2に記載されたようにポリウレタンラテックスを合成し、以下に記載した実験の結合剤として用いた。実質的に、米国特許出願第2005/0107564号明細書の実施例2に記載されたように第2のポリウレタンラテックスを合成し、これらの実験においてラミネーション用接着剤として用いた。
【0073】
前述の結合剤およびラミネーション用接着剤を用いた以外、実質的に、米国特許第7,002,728号明細書の実施例7に記載されたように実験的単一画素ディスプレイを調製し;ラミネーション用接着剤は、180ppmのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートでドーピングした。以下のとおり、4組の実験的ディスプレイを作製した:
(A)結合剤もラミネーション用接着剤も透析しなかった;
(B)結合剤は、実質的に、上記実施例4に記載されたように透析したが、ラミネーション用接着剤は透析しなかった;
(C)結合剤は透析しなかったが、ラミネーション用接着剤は、実質的に、上記実施例4に記載されたように透析した;
(D)結合剤およびラミネーション用接着剤の両方を、実質的に、上記実施例4に記載されたように透析した。
【0074】
次いで、この4組の実験的ディスプレイの電気光学特性を、±15Vの300ミリ秒パルスを用いる以外は、実質的に、米国特許第7,002,728号明細書の実施例7に記載されたように試験し、極限の白色および暗色状態の反射率を測定し、CIE L
*単位に変換した。結果は、添付の図面の唯一の図に示す。それぞれの組の読取りにおいて、左側バーはディスプレイの極限の白色状態を表し、中央バーは極限の暗色状態を表し、右側バーはダイナミックレンジ(すなわち、L
*単位で測定した、極限の白色と暗色状態との間の差)を表す。
【0075】
この図から、結合剤およびラミネーション用接着剤の透析は、ディスプレイの電気光学特性に悪影響を与えなかったことがわかる。実際に、結合剤が透析された2つのディスプレイ(BおよびD)は、改善された白色状態を示し、ディスプレイCおよびDは、改善された暗色状態を示した(暗色状態の改善は当然、より低いL
*値で表される)。結合剤およびラミネーション用接着剤の両方が透析されたディスプレイDは、4組のディスプレイ中で最大ダイナミックレンジを示した。
【0076】
100および500ミリ秒の持続時間の±15Vのパルス、ならびに±10V、100、300および500ミリ秒のパルスを用いて、電気光学試験を繰り返した。全ての場合に、得られた結果は、図に示されたものと一致した。
【0077】
上記(A)〜(D)の下で述べた結合剤およびラミネーション用接着剤の組合せを含むフロントプレーンラミネートを、有機トランジスタを用いるバックプレーンに積層した場合、非透析結合剤を含むフロントプレーンラミネートは、有機トランジスタの迅速な劣化を引き起こしたが、透析結合剤を含むフロントプレーンラミネートは引き起こさないことが観測された。透析ラミネーション用接着剤を用いて、同様の、しかしより小さい効果が認められた。
【0078】
上記から、本発明は、ある種のバックプレーンを損傷し、他の問題を潜在的にもたらし得る逃亡イオン種の使用を避ける一方、従来技術の接着剤のものに匹敵する電気光学特性および低温性能を与えるラミネーション用接着剤を与え得ることがわかる。さらに、本発明は提供することができる。