(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロードセルの起歪部に貼り付けられた少なくとも4個のストレインゲージで構成されるホイートストーンブリッジ回路における2個の端子からの出力信号に基づいてそれぞれハーフブリッジ荷重信号を生成するとともに、複数個所が前記ロードセルにて支持されるホッパ内に被計量物を収容してその被計量物の重量を測定するようにしたホッパ式計量装置において、
前記ロードセルへの負荷荷重に対して、前記各ハーフブリッジ荷重信号がそれぞれ同じ大きさの荷重信号となるように演算処理するハーフブリッジ荷重信号演算手段と、
運転中に生じた前記各ハーフブリッジ荷重信号に含まれる零点変動成分を運転中に除去する運転中零点変動成分除去手段と、
前記ハーフブリッジ荷重信号演算手段によって演算処理されたハーフブリッジ荷重信号において、前記運転中に、前記運転中零点変動成分除去手段によって前記零点変動成分を除去し、前記零点変動成分の除去された前記ハーフブリッジ荷重信号、または前記零点変動成分の除去された前記ハーフブリッジ荷重信号に基づいて算出された荷重信号を比較することによって前記ロードセルのスパン異常を検出するスパン異常検出手段と、
を備えることを特徴とするホッパ式計量装置。
前記スパン異常検出手段によってスパンの異常が検出されたロードセルにおける2個のハーフブリッジのうちのいずれのハーフブリッジが異常であるかを特定するスパン異常ハーフブリッジ特定手段が設けられる請求項1に記載のホッパ式計量装置。
前記相対比較手段による比較結果のバラツキの大きさに基づいて前記スパン異常ハーフブリッジ特定手段におけるスパンが異常であるハーフブリッジを特定するための許容値が設定される請求項6に記載のホッパ式計量装置。
前記スパン異常ハーフブリッジ特定手段は、前記スパン変化検出手段による比較結果の変化の大きさが0の近傍であることに対応させて前記相対比較手段の比較結果を集計するとともに、前記スパン変化検出手段による比較結果の変化の大きさがスパン変化の許容値の近傍である時点における前記相対比較手段の比較結果を集計することによって、前記ロードセルのいずれかのハーフブリッジのスパンが正常である状態からの変化の大きさを算出することにより、スパン変化が異常であるハーフブリッジを特定する請求項6に記載のホッパ式計量装置。
前記スパン異常ハーフブリッジ特定手段によってスパンが異常であると特定されたハーフブリッジにおけるハーフブリッジ荷重信号のスパンを補正するスパン補正手段が設けられる請求項5に記載のホッパ式計量装置。
前記スパン異常ハーフブリッジ特定手段によってスパンが異常であると特定されたハーフブリッジのハーフブリッジ荷重信号を、スパンが異常であると特定されない方のハーフブリッジのハーフブリッジ荷重信号でもって代替するハーフブリッジ荷重信号代替演算手段が設けられる請求項5に記載のホッパ式計量装置。
前記スパン異常ハーフブリッジ特定手段は、前記スパン変化検出手段の比較結果と、前記相対比較手段の比較結果とに基づいて、スパンが異常であるロードセルを特定した時点で、その特定したロードセルにおけるスパンが異常であるハーフブリッジの特定を行う請求項6に記載のホッパ式計量装置。
前記バラツキ減衰演算手段は、予め定めた複数回の計量によって得られる前記相対比較手段の比較結果に基づく相対比率の平均値を算出することによってその相対比率のバラツキを縮小する請求項12に記載のホッパ式計量装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明によるホッパ式計量装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1(a)(b)には、本発明の一実施形態に係るホッパ式計量装置の構造説明図で、平面図(a)および縦断面図(b)がそれぞれ示されている。また、
図2には、本実施形態のホッパ式計量装置に適用されるロードセルの使用状態図で、ロバーバルロードセルに使用した状態図が示され、
図3には、本実施形態のホッパ式計量装置における故障診断装置の概略システム構成図が示されている。
【0029】
図1(a)(b)に示されるホッパ式計量装置は、複数個所(3点:a,b,c点)が複数のロードセル1A,1B,1Cにて吊り下げ支持される計量容器としてのホッパ2を備えている。
ホッパ2は、下部に設けられた排出ゲート3,3が閉じられている状態にあるときに、上方に設けられた供給装置4から供給される被計量物Mを収容して計量を行うことができ、計量完了後、排出ゲート3,3を開くことで内部の被計量物Mを落下させて排出することができるように構成されている。
3個のロードセル1A,1B,1Cは、
図1(a)に示されるように、円筒状のホッパ2の中心に対して、ロードセル1Aとロードセル1Bとが角度θ
1を成すように、ロードセル1Aとロードセル1Cとが角度θ
2を成すように、ロードセル1Bとロードセル1Cとが角度θ
3を成すように、それぞれ配置されている。これらロードセル1A,1B,1Cは、平面視で、ホッパ2の中心点を基準にホッパ2をほぼ3等分するように配置される(θ
1≒θ
2≒θ
3)。
【0030】
図2に示されるように、各ロードセル1A,1B,1Cはロバーバルロードセル、すなわち2本梁に2箇所起歪部が設けられた平行四辺型ロードセルである。本実施形態では、防水、防塵のため、起歪体の一部を金属蛇腹5(
図1参照)で覆われたものが適用される。
【0031】
各ロードセル1A,1B,1Cは、2つの梁(ビーム)6,7を有する起歪部8を備えている。起歪部8において、ビーム6にはストレインゲージ11,12が、ビーム7にはストレインゲージ13,14がそれぞれビームの長手方向に沿って貼り付けられている。起歪部8には、ホッパ2を吊り下げ支持するための吊り金具9(
図1(b)参照)が結合されている。そして、ホッパ2内に被計量物Mが収容されると、その被計量物Mの重量に応じた荷重が起歪部8に作用し、ストレインゲージ12,14は、ゲージ接着面が伸びる方向の曲げ応力を受け、ストレインゲージ11,13は、ゲージ接着面が縮む方向の曲げ応力を受ける。
【0032】
図3に示されるように、ストレインゲージ11,12,13,14は、フルブリッジ回路(本発明における「ホイートストーンブリッジ回路」に対応する。)15を構成するように互いに接続されている。ここで、フルブリッジ回路15において、対向する辺を構成しているストレインゲージ12,14がどちらも引張力なら引張力を、対向する辺を構成しているストレインゲージ11,13がどちらも圧縮力なら圧縮力というように同じ型の力を受けるように結線されている。
【0033】
フルブリッジ回路15において、対向する2つの接続点16,17には、励磁用の直流電圧が印加され、これら接続点16,17と直角に位置する接続点18,19からは力又は荷重の検出電圧が取り出される。
【0034】
上述のフルブリッジ回路15に対して故障診断装置20が設けられる。この故障診断装置20は、2つの電圧参照用の固定抵抗器21,22と、アナログ加算回路23と、2つのアナログ−デジタル変換器(以下、「A/D変換器」と称する。)24,25と、演算回路26とを備えている。ここで、固定抵抗器21,22は、互いに直列接続されるとともに、フルブリッジ回路15の接続点16,17に接続されている。また、固定抵抗器21,22とストレインゲージ12,13とにより、ハーフブリッジ回路15aが形成され、固定抵抗器21,22とストレインゲージ11,14とにより、ハーフブリッジ回路15bが形成されている。
【0035】
アナログ加算回路23は、第1演算増幅器31と、第2演算増幅器32と、第3演算増幅器33と、第4演算増幅器34とを備えて構成されている。
第1演算増幅器31において、入力正端子31aはフルブリッジ回路15の接続点18に接続され、入力負端子31bは出力端子31cに接続され、出力端子31cは抵抗器40に接続されている。
第2演算増幅器32において、入力正端子32aは2つの固定抵抗器21,22の接続点41に接続され、入力負端子32bは出力端子32cに接続され、出力端子32cは抵抗器42,43に接続されている。
第3演算増幅器33において、入力正端子33aは回路のアース44に接続され、入力負端子33bは、抵抗器40,42に接続されるとともに、抵抗器45を介して出力端子33cに接続され、出力端子33cはA/D変換器24に接続されている。
第4演算増幅器34において、入力正端子34aはフルブリッジ回路15の接続点19に接続され、入力負端子34bは、抵抗器43に接続されるとともに、抵抗器46を介して出力端子34cに接続され、出力端子34cはA/D変換器25に接続されている。
【0036】
A/D変換器24,25は、アナログ加算回路23からのアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換するものである。2組のハーフブリッジ回路15a,15bから出力されるアナログ荷重信号eoa,eobは、アナログ加算回路23を経てアナログ荷重信号eoa´,eob´とされ、これらアナログ荷重信号eoa´,eob´は、A/D変換器24,25によってデジタル荷重信号に変換される。これらデジタル荷重信号は、演算回路26に入力されてデジタル荷重信号とされる。
【0037】
図3に示されたA/D変換器24,25からの出力信号Wa1,Wa2は、比較的短い時間間隔(例えば5msec)でもってアナログ荷重信号eoa´,eob´をA/Dサンプリングしたデジタル信号で、演算回路26にてホッパ式計量装置の固有振動信号などが平滑フィルタリング処理され、例えば数100msecの時間間隔毎に後述の式(1)に与えられる。なお、各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力に対応する出力信号Wa1,Wa2を、それぞれWa11,Wa21;Wa12,Wa22;Wa13,Wa23と表記する。
【0038】
図4に示されるように、各ロードセル1A,1B,1C(LC1,LC2,LC3)は、起歪部8(
図2参照)を含む起歪体と
図3に示されるA/D変換回路用の部品を、起歪体を囲むケース(金属蛇腹5:
図1(b)参照)に内蔵したデジタルロードセルの構成をなしており、本実施形態のホッパ式計量装置の演算回路26に接続されている。なお、A/D変換回路をホッパ式計量装置側に設けることもできるが、起歪体と一体化したデジタルロードセルの構成とするのがより好適である。
【0039】
演算回路26は、
図4に示されるように、入出力回路(I/O)51と、中央演算処理装置(CPU)52と、メモリブロック(MEM)53とを備えて構成されている。こうして、A/D変換器24,25の出力信号は、入出力回路51から中央演算処理装置52を介してメモリブロック53に読み込まれる。ここで、メモリブロック53は、データを入力、出力、演算のために一次記憶するRAMや設定データを継続記憶するEEPROMや所定プログラムを継続記憶するPROMなどの記憶素子(半導体素子)から成るものである。また、演算回路26には、表示装置(DIS)54やキースイッチ(KEY)55などが付設されており、重量値等は表示装置54に表示され、データの設定や零点調整などの操作はキースイッチ55によって実施される。
【0040】
<ロードセルのハーフブリッジ荷重信号の調整と処理の説明>
各ロードセル1A,1B,1Cにおける2組のハーフブリッジ回路15a,15b(以下、それぞれ「ハーフブリッジ1」「ハーフブリッジ2」という。
図3参照)の出力信号(ハーフブリッジ荷重信号)をそれぞれW11,W21;W12,W22;W13,W23とする。これらの出力信号の処理には、それぞれ独立してスパン係数、零点重量記憶メモリ、初期重量記憶メモリが設けられる。
【0041】
最初に、ロードセル単体の調整が行われる。この調整においては、
図4に示されるのと同様の重量測定装置がデジタルロードセルに接続される。ここで、このロードセル調整用の重量測定装置には初期荷重記憶スイッチ、スパン係数設定スイッチが設けられる。
例えばロードセル1Aのハーフブリッジ1の調整に際しては、最初、スパン係数K11=1にセットし、ロードセル無負荷の状態にして初期荷重記憶スイッチを押し、ハーフブリッジ1から得られるデジタル荷重信号Wa11を初期荷重Wi11として初期荷重記憶メモリに入れる。
【0042】
ハーフブリッジ1の出力は、演算回路26において、次の処理式で演算される。
W11=K11・(Wa11−Wi11)
この時点で、K11=1であり、Wa11=Wi11になるから、調整用重量測定装置にはW11=0と表示される。ハーフブリッジ2についても同様に調整される。なお、W11は実際に計量器における被計量物Mの重量測定値としての表示値の分解能に比べ、例えば4倍の分解能を有するように設定される。
【0043】
次に、ロードセル1A,1B,1Cに定格荷重を負荷し、定格荷重を高い分解能にて変換した値WMを設定する。スパン係数調整スイッチを押すと、重量表示がWMの値を表示するようにスパン係数K11が決定される。ハーフブリッジ2のスパン係数K21についても同様に決定され、これらスパン係数K11,K21は不揮発メモリに記憶され、ロードセル単体の調整が完了する。こうして、ロードセル単体での各ハーフブリッジのスパン係数が、同じ負荷に対して同じ出力変化となるように調整される。
【0044】
次に、ホッパ式計量装置のホッパ2に上述のように調整されたロードセル1A,1B,1Cを組み込み、その出力をホッパ式計量装置用の重量測定装置に接続する。この状態で重量測定装置の初期荷重記憶スイッチを押すと、例えばロードセル1Aのハーフブリッジ1にはA/D変換され平滑処理された荷重信号Wa11が初期荷重記憶用メモリに入り、単体調整時に記憶された初期荷重値が変更される。
【0045】
ホッパ式計量装置として使用中は零点変動分の調整(ホッパ2内に被計量物Mがない時に出力を0にする調整)が必要になるので、零点重量記憶メモリWz11が設けられ、ハーフブリッジ1の出力が下記処理式(1)にて設定される。ハーフブリッジ2についても、また他のロードセル1B,1Cについても同様の処理式が設定される。
・ロードセル1Aについて
W11=K11・(Wa11−Wi11)−Wz11
W21=K21・(Wa21−Wi21)−Wz21
W1=(W11+W21)/2
・ロードセル1Bについて
W12=K12・(Wa12−Wi12)−Wz12
W22=K22・(Wa22−Wi22)−Wz22
W2=(W12+W22)/2
・ロードセル1Cについて
W13=K13・(Wa13−Wi13)−Wz13
W23=K23・(Wa23−Wi23)−Wz23
W3=(W13+W23)/2 ・・・(1)
なお、
図3に示される測定回路では、ハーフブリッジ出力のみ設けられているので、通常の計量に際して、被計量物Mの重量測定値を得るために使用されるフルブリッジ出力は、ハーフブリッジ1,2の出力を加算して表わされる。
被計量物Mの重量値WTは、3個のロードセル1A,1B,1Cの出力でもって、次式で表される。
WT=W1+W2+W3 ・・・(2)
【0046】
<零点調整手段の説明>
ホッパ式計量装置使用中の手動零点調整操作として、使用中に重量測定装置において零点調整スイッチ55a(
図4参照:本発明における「零点調整手段」に対応する。)を操作すれば、3個のロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ1,2の出力が共通に同時に零点調整されるようにすれば好適である。ここで、零点調整とは、例えばW11について、零点調整時点のW11の値をWz11へ加算し、W11=0とする処理である。
【0047】
また、自動零点補正機能として、各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力の零点重量付近での安定状態を個別に判別し、出力が安定状態であって、重量表示値のカウントレベルでは0表示であるが、
図5に示されるように表示カウントは0でも内部カウントのレベルでは零から外れているときには、自動的に零点補正機能を各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ毎に個別に実施する。この場合、前述のように、各ハーフブリッジ出力信号を、被計量物Mの重量値としての最小単位の表示重量値の1カウントに対して少なくとも4倍以上大きいカウント数で表せるように高い分解能でもって処理する。
なお、かかる零点調整動作は、中央演算処理装置52の中の零点調整部52c(本発明における「零点調整手段」に対応する。)において実行される。
【0048】
このようにハーフブリッジ毎に信号処理することによって、通常の計量作業の時点の各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力毎の零点変動分が除去され、負荷荷重の大きさに精確に対応するものが得られるので、スパン異常の検出に対応させることが可能になる。
【0049】
<ハーフブリッジ荷重信号演算手段、スパン異常検出手段の説明>
以上のように、本実施形態では、ロードセル1A,1B,1Cへの負荷荷重に対してハーフブリッジ1,2がそれぞれ同じ大きさの出力信号となるような演算処理が、中央演算処理装置52の中のハーフブリッジ荷重信号演算部52a(本発明における「ハーフブリッジ荷重信号演算手段」に対応する。)において実行される。また、2個のハーフブリッジ1,2からの出力信号を比較することによって3個のロードセル1A,1B,1Cの中でスパンの異常なロードセルを検出する演算処理が、中央演算処理装置52の中のスパン異常検出部52b(本発明における「スパン異常検出手段」に対応する。)において実行される。
【0050】
<確実なスパン異常の判定処理の説明>
ホッパ式計量装置の重量表示は、ホッパ2内の被計量物Mの重量値である上記のWTの値が表示レベルの分解能に換算されて表示される。この表示値を見ながら作業者は計量作業を行う。したがって、例えばロードセル1Aのハーフブリッジ1,2の零点が正負方向にそれぞれ同じ大きな値で変動している場合、ロードセル1Aとしての出力は0になる。他のロードセル1B,1Cの出力も0であれば、加算値WTとしての零点は0になるから表示値は0になり、零点調整スイッチ55aは押されない。
【0051】
本実施形態のロードセル1A,1B,1Cのスパンの異常検出は、同一ロードセル内の2つのハーフブリッジの出力を比較することで異常判定を行っているので、もし相互の零点が異なっていれば、荷重負荷による信号変化分が同じでも差が残りスパンの異常と判定してしまう。例えばホッパ2に異物が付着しているような場合には、両ハーフブリッジ出力の零点は同じ量だけ変動するため比較結果には影響を及ぼさないが、周囲温度が変化しつつあるような場合には、2つのハーフブリッジが異なる温度影響を受けて両ハーフブリッジ出力の零点に差が生じる。
【0052】
<零点変動識別手段の説明>
この点に鑑み、精確にスパン異常を検出するには、ハーフブリッジ出力の零点が個別に調整されていることを認識できる手段又は個別に零点変動を認識できる手段を設けることが必要である。このため、本実施形態では、中央演算処理装置52の中に零点変動識別部52d(本発明における「零点変動識別手段」に対応する。)を設け、この零点変動識別部52dにおいて、ハーフブリッジ出力が個別に設定された零点から変動しているのを識別するようにされる。また、本実施形態では、いずれか1個でもハーフブリッジ出力が零でない場合、あるいは、全てのロードセル1A,1B,1Cの全てのハーフブリッジ出力が零の場合に、その旨を表示装置54にランプ表示あるいは文字表示させるための表示信号を生成するハーフブリッジ零点表示信号生成部52m(ハーフブリッジ零点表示信号生成手段)を中央演算処理装置52の中に設けるように構成している。こうすることで、いずれか1個でもハーフブリッジ出力の零点が移動している場合に、作業者はそのことを表示装置54により容易に認識することができ、零点調整スイッチ55aを押すことで、全てのハーフブリッジ出力の零点調整を同時に実施することができる。ここで、零点調整スイッチ55aは、通常の重量表示用の零点調整スイッチと兼用とするのが好ましい。
【0053】
上記ハーフブリッジ零点表示信号生成部52mによるサイン表示に関しては、ハーフブリッジ出力が零点付近の領域にあることを判別する境界重量値として下限値Wzl、上限値Wzuを定め、全てのロードセル1A,1B,1Cの中でいずれか1個のハーフブリッジ出力でも表示重量値より例えば4倍以上高い分解能で表された重量測定値が零点近傍領域内にない場合を検出し、零点近傍領域内にない場合はその旨のサイン(零点変動サイン)を表示させ、作業者に零点調整スイッチ55aを押す必要性の有無を認識させ、場合によっては零点調整スイッチ55aを押すのを促すことのできる構成とされる。この場合、上限値Wzu、下限値Wzlとしては、上記WTから換算された被計量物Mの重量値表示の最小表示量(最小目盛り値)の値が表示される手前の大きさの値が設定されるのが好ましい。
【0054】
しかし、作業者がハーフブリッジ出力に対する零調整操作を忘れる場合もある。ハーフブリッジ出力に対して零点調整がなされず、ハーフブリッジ出力間に差のあるままに計量するときは、スパンの異常は検出できないようにする必要がある。
対策として、下記に述べる安定重量値が
図5に示される下限値Wzl、上限値Wzuの範囲にあるときはハーフブリッジ出力は零点範囲にあるとして零点フラグを1にセットする。
また、負荷荷重の除去検出用として零点より少し正方向に離れた重量値Wzzを予め設定する。そして、ハーフブリッジ出力の(下記に述べる)安定重量値がWzz以下へ戻りながらも上記の下限値Wzl、上限値Wzuで定められる範囲内に無ければ零点フラグはリセットされる。
全てのハーフブリッジについての零点フラグがセットされていない計量においては、下記に述べるスパン異常検出のための分類集計演算を実施させない(分類集計用データとして採用しない。)。
【0055】
次に、作業者の零点調整操作に頼れないホッパ式計量装置の場合、あるいは作業者がハーフブリッジ出力に対する零点調整操作を忘れる場合の対策について述べる。この対策としては、各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力信号に対して次のように負荷荷重による変動量のみを算出する荷重変化量算出手段を設けることにより、自動的に精確にスパン異常を検出できるようにする。
【0056】
<安定重量値生成手段の説明>
例えばロードセル1Aのハーフブリッジ1の出力W11について、このW11は、A/D変換器24から読み込まれる荷重信号を平滑処理した後、例えばTa=数100msecの時間間隔で生成されるものとし、この生成順に常に最新のM個のW11が用意されたM個のシフトレジスタに記憶されるようにし、記憶されたM個のW11における最大値−最小値が予め設定された安定限界の許容値以内であれば安定状態にあると判定する。こうして、全てのロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力に対して、時間間隔Ta毎に安定判別が逐次行われるとともに、シフトレジスタの平均値を算出して現在の重量測定用のW11、すなわちロードセル1A,1B,1Cの安定重量値とする。この演算処理は、中央演算処理装置52の中の安定重量値生成部52e(本発明における「安定重量値生成手段」に対応する。)において実行される。
【0057】
<安定荷重変化量算出手段の説明>
自動的に精確にスパン異常を検出するには、全てのロードセルのハーフブリッジ出力に対して次のように負荷荷重による変動量のみを算出する必要がある。このため、中央演算処理装置52の中に安定荷重変化量算出部52f(本発明における「安定荷重変化量算出手段」に対応する。)を設け、この安定荷重変化量算出部52fにおいて、最新の安定重量値と、この最新の安定重量値の一つ前のタイミングにおいて生成された安定重量値との差を安定荷重変化量として各ロードセル1A,1B,1C毎に算出する演算を実行させる。
なお、M個のW11の値が許容値を表す幅以内であれば安定と判定する。また、全てのロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力に対して安定判別はTaの時間間隔で逐次行われる。
【0058】
ホッパ2に被計量物Mを収容したとすると、あるタイミング以降に読み取ったW11の値は、許容値より大きくなることによってシフトレジスタデータが許容値を外れ安定条件が成立しなくなるが、この安定条件を外れる1つ手前のタイミングでシフトレジスタに入った最新の値もすでに許容範囲の限界値に達している場合が想定されるので、安定重量値としてW11の値を算出するには、最も新しく入った値を除外し、M−1個でもって平均値を求めるのが適切である。
【0059】
不安定になる直前の安定重量値(最新の安定重量値)を記憶するための安定重量値記憶レジスタを1個用意し、時間間隔Ta毎に連続的に安定重量値が生成されれば、安定重量値が生成されるたびに最新の安定重量値W11を前回安定重量値W1uとして安定重量値記憶レジスタの内容を更新する。こうして、全てのロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力に対して、常に最新の安定重量値を安定重量値記憶レジスタに記憶させて最新の値に更新するようにし、それぞれの値を、W11u,W21u;W12u,W22u;W13u,W23uとする。そして、各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力W11〜W23の安定重量値が揃って生成されたとき、全てのロードセル1A,1B,1Cの安定重量値と現在記憶している安定重量値とより次式(3)で示される荷重変化量W11p〜W23pを算出する。
W11p=|W11−W11u|
W21p=|W21−W21u|
W12p=|W12−W12u|
W22p=|W22−W22u|
W13p=|W13−W13u|
W23p=|W23−W23u| ・・・(3)
【0060】
予め安定重量値の変化幅Whを定め、全ての荷重変化量が変化幅Whを超える大きさであるとき、すなわち次式(4)が同時に成立するときには、各ロードセル1A,1B,1Cにスパン異常を判定するに十分大きい荷重変化量W11p〜W23pであるとして、各ロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ1,2間でのスパン異常を判定する。ここで、Whの値としては、ホッパ式計量装置の定格荷重Wsに対して各ロードセル1A,1B,1Cには標準的に最大Ws/4の荷重が負荷されるので、その値の1/4として、Wh=Ws/16等の値が設定される。
W11p〜W23p>Wh ・・・(4)
【0061】
例えばロードセル1Aについて、ハーフブリッジ1とハーフブリッジ2の荷重変化量の差によって、スパン変化率R1を次式(5)で表す。
R1=1−(W21p/W11p) ・・・(5)
このパラメータをハーフブリッジ出力比較比率と定義する。
なお、他のロードセルの変化率R2〜R4についても同様にして求めることができる。
【0062】
例えばW11p=W21pの状態からW11pのスパンがeだけ変動すると、
R1=1−W21p/{W11p・(1+e)}
=1−{1/(1+e)}≒1−(1−e)
=e (e<<1)
W21pのスパンがeだけ変動するとR1=−e
W11pのスパンが−eだけ変動するとR1=−e
W21pのスパンが−eだけ変動するとR1=e
という関係になる。
なお、R1=W11p/W21p−1,R2=W12p/W22p−1でもよい。
この中にはハーフブリッジ別に零点調整すれば各ハーフブリッジ出力の零点変動分は含まれず、精確にいずれかの側のハーフブリッジのスパンの、もう一方の側のハーフブリッジのスパンに対する変化率として表すことができる。他のロードセル1B,1Cについての変化率R2〜R3も同様である。
【0063】
こうして、各ロードセルLCn(n=1〜3)の中で、スパン変化率Rnが設定された許容値Rhに対して、不等式(6)
Rn>Rh ・・・(6)
が成立するものが存在すれば、ロードセルLCnのスパンが異常であると判定される。すなわち、ホッパ2の3箇所を支持するロードセル1A,1B,1Cの中でいずれのロードセルのスパンが異常であるかを、通常の計量作業の中で自動的にかつ精確に特定することができる。
【0064】
この判定法では、すべてのハーフブリッジ出力の零点変動分を除去するようにされているので、荷重変化量の差はスパンの変動によるものであるから、精確に特定のロードセルのスパンの異常を判定するための信号処理手段が構築される。
そして、1つのロードセルの起歪体に負荷された荷重に対するハーフブリッジ出力を相互に比較するようにされているので、ロードセル1A,1B,1Cの配置やホッパ2の形状がどのように非対称であろうと、また、毎回の計量で被計量物Mがホッパ2にいかなる分布で収容されようとも、それらに影響を受けず、精確に、いずれのロードセルのスパンが異常であるかを通常の計量作業を継続しながら判定することができる。
【0065】
ただし、左右のハーフブリッジ出力を比較する上で、振動ノイズや電気ノイズの影響によって故障が無くても差の生じることがあり得るので、Rnの値も複数個の移動平均値を求め、その値を持ってハーフブリッジ出力比較比率とすることが好適である。
【0066】
異常が判定されると、スパンが異常である旨のサインや、故障したロードセルの番号、故障内容などが作業者に識別できるように表示装置54に表示され、かつスパンの変化率も表示される。また、警報信号をランプ表示、文字表示、音声などの手段で出力する。
【0067】
ところで、上記の判定法では、R1>Rhであることが検出された場合、W11pのスパンが増加か、W21pのスパンが減少のいずれかと判明するのみであり、R1<−Rhであることが検出された場合、W11pのスパンが減少か、W21pのスパンが増加のいずれかと判明するのみであって、ロードセル1A,1B,1Cのうちのハーフブリッジ出力W11pとW21pのいずれかのスパンが増減した結果であるかということは判定することができない。
【0068】
<スパン異常ハーフブリッジ特定手段、スパン変化検出手段、相対比較手段の説明>
正常な計量を行うことができる状態に復帰させるためには、いずれのハーフブリッジが異常で、そのスパンの増減状態が検出できなければならない。
本実施形態では、中央演算処理装置52の中に、スパン異常ハーフブリッジ特定部52g(本発明における「スパン異常ハーフブリッジ特定手段」に対応する。)と、スパン変化検出部52h(本発明における「スパン変化検出部」に対応する。)と、相対比較部52i(本発明における「相対比較手段」に対応する。)とが設けられる。
スパン変化検出部52hは、スパンの異常が検出されたロードセルにおける2個のハーフブリッジ荷重信号を比較する。
相対比較手段52iは、スパンの異常が検出されたロードセルにおける2個のハーフブリッジ荷重信号と、スパンの異常が検出されたロードセル以外のロードセルにおける2個のハーフブリッジ荷重信号とを比較する。
そして、スパン異常ハーフブリッジ特定部52gは、スパン変化検出部52hによる比較結果と、相対比較部52iによる比較結果とに基づいて、スパンの異常が検出されたロードセルにおける2個のハーフブリッジのうちのいずれのハーフブリッジが異常であるかを特定する。
【0069】
いずれのハーフブリッジのスパンが増加方向、あるいは減少方向に変動したかについては、特定ロードセルのハーフブリッジ出力と、残りのロードセルの出力との関係を次のように定義して行う。すなわち、異常と特定されたロードセルのハーフブリッジ出力と、他の正常なロードセルのハーフブリッジまたはフルブリッジ出力とを比較し、その比較結果の変化の状況に基づいて判定する。この場合、正常なロードセルのフルブリッジ出力と比較して、以下の相対比率r11,r21;r12,r22;r13,r23として下記(7)式のように定義する。
・ロードセル1A(LC1)について、
r11=W11p/{(W2p+W3p)/2}−1
r21=W21p/{(W2p+W3p)/2}−1
・ロードセル1B(LC2)について、
r12=W12p/{(W3p+W1p)/2}−1
r22=W22p/{(W3p+W1p)/2}−1
・ロードセル1C(LC3)について、
r13=W13p/{(W1p+W2p)/2}−1
r23=W23p/{(W1p+W2p)/2}−1 ・・・(7)
【0070】
ハーフブリッジ出力の比較(出力比較比率)によってスパンの異常なロードセルが特定されたとき、いずれのハーフブリッジのスパンが異常で、かつそのスパンが増加または減少しているかの判定は上記の相対比率の増減の判定によって行う。
【0071】
例えば、ロードセル1A(LC1)については次の理論によって実施する。
すなわち、ロードセル1Aを単体で調整する時点で基準の負荷荷重に対する各ロードセル1A,1B,1Cのフルブリッジ出力と2つのハーフブリッジ出力変化は等しくなるようにそれぞれのスパンが調整され、設定されているので、全てのロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジ出力のスパンが正常であれば任意の荷重負荷に対してr11=r21=・・・=r13=r23=0である。
ここで、例えば前記(7)式において、ハーフブリッジW11pのスパンがeだけ変化すると相対比率r11もeだけ変化する。
【0072】
前記(5)式の説明の際に述べたように、
(1)R1>Rhによる異常検出があるとき、
(1.1)W11のスパンがeを超えて増加、W21のスパンは正常
(1.2)W11のスパンは正常、W21のスパンがeを超えて減少
のいずれかであるから、
r11の値が増加変化していれば(1.1)による故障であり、
r21の値が減少変化していれば(1.2)による故障であると判定される。
(2)R1<−Rh=−eによる異常検出があるとき、
(2.1)W11のスパンがeを超えて減少、W21のスパンは正常
(2.2)W11のスパンは正常、W21のスパンがeを超えて増加
のいずれかであるから、
r11の値が減少していれば(2.1)による故障であり、
r21の値が増加していれば(2.2)による故障であると判定される。
以下、他のロードセル1B、1Cのハーフブリッジについても同様に判定される。
【0073】
したがって、通常の計量を継続しながら、R1,R2,R3の出力比較比率(の移動平均値)を算出するとともに、これらに関する相対比率の増減変化を検出し、いずれかのロードセル1A,1B,1Cにおいて出力比較比率が許容値より大きくなってスパンが異常であることが判定されたとき、相対比率が増減いずれに変化しているかを検出して、異常なハーフブリッジの特定およびスパンの増減の特定を行う。
【0074】
ところで、3個のロードセル1A,1B,1Cの全ての出力のスパンが正常で精確に零点調整され、ホッパ2はいかなる断面についても精確に左右対称に製作され、ロードセル1A,1B,1Cへの荷重配分は等しく、被計量物Mがホッパ2内に偏り無く収容され、被計量物Mの見掛け比重の分布が等しいという条件が揃い、前記(1)式が成立するように調整されていれば、ロードセル1A,1B,1Cのスパンが正常である限りは任意荷重の被計量物Mのホッパ2への収容に対して、全ての相対比率は常に0である。
【0075】
しかし、全てのロードセル1A,1B,1Cのスパンが正常であっても、上述したように実際のホッパ式計量装置では、例えば以下の(1)〜(3)の要因により、相対比率r11〜r23に固有の偏差分とバラツキとが含まれる。
(1)ホッパ2と供給装置との位置関係からホッパ2への被計量物Mの収容状態に固定的な偏りがある。
(2)ホッパ2の形状寸法誤差やロードセル1A,1B,1Cの配置のずれ(
図1において配置角度θ
1,θ
2,θ
3が互いに等しくないことによるロードセル間の固定的な配分比率分)
(3)ホッパ2における被計量物Mの収容状態の分布が自然に毎回ばらつく(
図1(b)中、一点鎖線、二点鎖線、点線を参照)。また、ホッパ2に収容された被計量物Mの見掛け比重の分布も毎回均一ではい。
【0076】
上記の(1)(2)の要因によって特定ロードセルのハーフブリッジ出力と残りのロードセルとの出力の比率r11〜r23は0でない固定の偏差を有す。
【0077】
例えば、ホッパ2に荷重Wxの被計量物Mを均一に収容できたとし、被計量物Mは均一な見掛け比重分布であっても、負荷荷重Wxのロードセル1A,1B,1Cへの配分比率はk1:k2:k3≠1:1:1である。
また、ホッパ2へ被計量物Mを供給する際の供給装置4とホッパ2の位置のズレなどの要因による固定的な被計量物Mの供給偏りによる偏り負荷荷重も配分比率に影響を与える。
荷重Wxの被計量物Mがホッパ2に均一に収容されたときの各ロードセル1A,1B,1Cへの荷重の配分比率がk1:k2:k3であると、相対比率r11〜r23は、前記(7)式より、以下の(8)式の如き固定偏差が現れる。
r11=r21={(k1・Wx)/{(k2・Wx+k3・Wx)/2}}k1/{(k2+k3)/2}=k1/{(k2+k3)/2}−1
同様に、
r12=r22=k2/{(k3+k1)/2}−1
r13=r23=k3/{(k1+k2)/2}−1 ・・・(8)
これらは0ではなく、k1〜k3の値は容易に求められない。また、ホッパ2における被計量物Mの毎回の収容状態や見掛け比重のバラツキによってr11〜r13はばらつく。
【0078】
そこで、偏りやバラツキに影響を受けない同一ロードセルにおけるハーフブリッジ出力比較比率R1,R2,R3の大きさを検査しながら計量運転を実施し、いずれのロードセル1A,1B,1Cのハーフブリッジも正常でR1,R2,R3の値が小さい時点におけるr11〜r13と、いずれかのロードセル1A,1B,1Cのいずれかのハーフブリッジのスパンが異常になり、R1,R2,R3のいずれかが0からRhだけ離れた時点におけるr11〜r13とを求め、両者間の変化量の大きさを評価する。この変化量は差であるので固定偏差分は相殺される。
しかし、この変化量の差にはバラツキも含まれているので、直接この変化量の差でもって精確に変化量を判定することはできない。
【0079】
<分類集計計算の説明>
このため、計量開始の後に、毎回の計量毎に測定したハーフブリッジ出力に基づいて各ロードセル1A,1B,1Cについて出力比較比率と相対比率を求め、次のように分類集計演算を実施する。
分類集計計算が必要な理由は、複数回の計量における平均値を求めることによって毎回の計量時に生じる被計量物Mのホッパ2での収容状態のバラツキによる相対比率のバラツキを縮小し、スパンの変動による変化分のみを精確に抽出するためである。
なお、上述したように、荷重変化量を使用しない場合、すなわち作業者の零点調整に頼る場合は、全てのハーフブリッジ出力に零点フラグがセットされている計量についてのみ、分類集計演算を実施する。また、荷重変化量を使用する場合も含め、全てのハーフブリッジ出力が所定以上の大きさの値であるときのみ分類集計演算の対象とすることについても同様である。
【0080】
ロードセルが正常に近い状態、すなわち下記の(1)(3)の出力変化率の範囲における相対比率と、ロードセルが異常に近い状態、すなわち下記の(2)(4)の出力変化率の範囲における相対比率とを、出力変化率の範囲によって分類して統計データを求めるために集計する。ここで、ハーフブリッジ出力をスパン異常と判定する許容値をRh(=e)とする。この値は予め設定されるものである。
【0081】
<(1)0<R1≦(Rh/4)の範囲>
ロードセル1Aについて述べる。
前記(5)式のハーフブリッジ出力変化率R1の値が
(1)0<R1≦(Rh/4)の範囲では、
レジスタR11aにr11を加算し、レジスタR11a´にr11
2を加算する。
レジスタR21aにr21を加算し、レジスタR21a´にr21
2を加算する。
そして、回数カウンタCA1aをインクリメントする。
当該(1)の範囲ではR1ができるだけ0に近い時点の値のr11,r21の値、すなわちr11,r21の変化ができるだけ小さい時点の値を扱うほうが下記(2)の範囲の集計値との差、(下記のD11,D21)が大きくなって判定が精確になるので、R1が0に近い間にv・Q
0個分を集計し、R1>Rh/4が成立した時点で下記のr11ai,r21aiと標準偏差σ11ai,σ21aiを算出する。
ロードセル1Aの異常になる変化が早く、集計回数がv・Q
0に至らなかった場合は、自己復帰不可能の旨を警報する。これと同時にロードセル1Aのスパン異常も警報・サイン表示する。
【0082】
<(2)R1>(3/4)・Rhの範囲>
前記(5)式のハーフブリッジ出力変化率R1の値が
(2)R1>(3/4)・Rhの範囲では、
レジスタR11bにr11の値を加算し、レジスタR11b´にr11
2を加算する。
レジスタR21bにr21の値を加算し、レジスタR21b´にr21
2を加算する。
そして、回数カウンタCA1bをインクリメントする。
当該(2)の範囲ではR1ができるだけRhに接近した時点、のr11,r21の値、すなわちr11,r21ができるだけ大きく変化したときの値を扱う方が上記(1)の範囲の集計値との差、(下記のD11,D21)が大きくなって判定が精確になるので、v個のシフトレジスタを用意し、基本集計回数Q
0回毎にr11,21の加算値とr11
2,r21
2の加算値を集計が完了すると最も古い集計値を捨てて新たな集計値をシフトレジスタにストアし、シフトレジスタには常に最新のv個のQ
0回単位の集計値が保存されるようにし(
図7参照)、R1>Rhが成立した時点で下記のr11av,r21avはシフトレジスタの集計値を用いて求めることが好ましい。標準偏差σ11av,σ21avもシフトレジスタの値に基づいて算出する。
【0083】
<(3)−(Rh/4)<R1≦0の範囲>
前記(5)式のハーフブリッジ出力変化率R1の値が
(3)−(Rh/4)<R1≦0の範囲では、
レジスタR11cにr11の値を加算し、レジスタR11c´にr11
2を加算する。
レジスタR21cにr21の値を加算し、レジスタR21c´にr21
2を加算する。
そして、回数カウンタCA1cをインクリメントする。
当該(3)の範囲の集計も上記(1)の範囲の集計と同様に実施する。
【0084】
<(4)R1<−(3/4)<Rhの範囲>
前記(5)式のハーフブリッジ出力変化率R1の値が
(4)R1<−(3/4)<Rhの範囲では、
レジスタR11dにr11の値を加算し、レジスタR11d´にr11
2を加算する。
レジスタR21dにr21の値を加算し、レジスタR21d´にr21
2を加算する。
そして、回数カウンタCA1dをインクリメント。
当該(4)の範囲の集計についても上記(2)の範囲の集計と同様に実施する。
【0085】
こうして、上記(1)〜(4)のそれぞれ範囲での演算を実施する。
なお、その他のロードセル1B,1Cのハーフブリッジ出力についてもそれぞれレジスタを設けて並列に同じ演算を実施する。
【0086】
そして、R1の値が、R2>RhまたはR1<−Rhになったときロードセル1Aの異常を警報するとともに、いずれのハーフブリッジのスパンが異常かについて、集計データを用いることによって判定するものとする。
【0087】
集計に当たってそれぞれ上記(1)〜(4)のR1の集計範囲に対して基本の集計回数Q
0と総集計回数v・Q
0(vの値)を設定する。
上記(1)〜(4)のいずれのR1の範囲における集計も、集計回数がQ
0に到達すると、回数Q
0の時点での仮の平均値と標準偏差を算出する。これ以降から改めてv・Q
0の集計を開始させる。
相対比率の入力範囲を
入力範囲=平均値±標準偏差
と設定し、相対比率が上記の入力範囲を超える場合は集計演算に参加させないようにし、集計結果の平均値のバラツキを小さくする。これで平均値を中心にして約±32%以上の範囲に属する大きいバラツキを持つデータが除外される。
【0088】
毎回の計量を継続する中でR1の値が、
(a)R1>Rhが成立したとすると、上記(1)、(2)の集計結果をもって比較判定する。
また、
(b)R1<−Rhが成立したとすると、上記(3)、(4)の集計結果をもって比較判定する。
【0089】
上記(a)が成立したとすると、W11のスパン増加(W21は正常)またはW21のスパン減少(W11は正常)のいずれかであるから、相対比率r11の変化とr21の変化を調べていずれかを判定する。
また、上記(1)の0<R1≦(Rh/4)の範囲の集計レジスタのデータを使用してr11の平均値r11aiと標準偏差σ11aiおよびr21の平均値r21aiと標準偏差σ21aiをそれぞれ求める。
また、上記(2)のR1>(3/4)・Rhの範囲の集計レジスタのデータを使用してr11の平均値r11avと標準偏差σ11avおよびr21の平均値r21avと標準偏差σ21avを求め、r11,r21の変化量D11,D21を、下記(9)式により算出する。
D11=r11av−r11ai
D21=r21av−r21ai ・・・(9)
【0090】
ここで、K1´=k1/{(k2+k3)/2}と置く。
もし、W11のスパン増加によるものであれば、R1の値が上記(1)の範囲の場合、r11は殆どK1´〜K1´・(1+Rh/4)の値が集計される。
一方、r21はW21pの変化が小さいので殆どK1´・(1−Rh/4)〜K1´・(1+Rh/4)の値が集計される。
R1の値が上記(2)の範囲の場合、r11は殆どK1´・{1+(3/4)・Rh}〜K1´・Rhの値が集約される。
一方、r21はやはりW21pの変化が小さいので殆ど−K1´・((1−Rh/4〜K1´・(1+Rh/4))の値が集約される。
【0091】
集計値を平均すると、r11av≒K1´・{1+(7/8)・Rh}、r11aiはR1の値が上記(1)の範囲であるからr11ai≒K1´・{1+(1/8)・Rh}である。
一方、R21の方はいずれの平均値もK1´に近い。
K1´はロードセル1A,1B,1Cの配置やホッパ2の非対称性による値で正確には1でないが通常の構成であれば1に近いのでK1´≒1とすると、
W11のスパン増加によるものであれば変化量の検出幅は約(7/8)・Rh−(1/8)・Rh=(3/4)・Rhであるから、D11,D21は下記(10)式により算出される。
D11≒(3/4)・Rh
D21≒0 ・・・(10)
W21のスパン減少によるものであれば、D11,D21は下記(11)式により算出される。
D11≒0
D21≒−(3/4)・Rh ・・・(11)
【0092】
上記の如く、R1の範囲に対応してD11,D21を計算することによって、ロードセル1Aについての出力変化率R1は、R1>Rhが成立すればハーフブリッジ1のスパンがRhを超えて増加変化したか、ハーフブリッジ2のスパンがRhを超えて減少変化していることは確実に判定される。
したがって、R1>Rhが成立した場合に、ハーフブリッジ1のスパンが増加変化しているとき、D21がバラツキによってD11と同時に増加変化していることがあったり、ハーフブリッジ2のスパンが減少変化しているとき、D11がバラツキによってD21と同時に減少変化したりしている場合があっても、D11が確実に増加変化しているものか、またはD21が確実に減少変化しているものかを判定することができる。
【0093】
相対比率の平均値r11av,r11ai,r21av,r21aiにはバラツキがあるので、バラツキがあってもR1>Rhの成立時点でD11が増加変化しているか、またはD21が減少変化しているかを判別することができる大きさの許容値Rhが設定されている必要がある。
【0094】
D11の増加変化を調べるとき、D11が確実に増加していることを識別することができる条件は下記のようにして定める。
変化量D11=r11av−r11aiにおけるr11av,r11aiのバラツキ量を調べる。
特別な運転条件の変更がない限り、稼働運転開始後のv・Q
0回の計量と稼働運転途中のv・Q
0回の計量におけるバラツキの標準偏差σ11aiとσ11abvとはほぼ等しいと考えられるので稼働運転開始後のv・Q
0回の計量によってD11のバラツキσd1を下記(12)式のように定める。
σd1=(σ11ai
2+σ11av
2)
1/2≒2
1/2・σ11ai
・・・(12)
D21のバラツキσd2についても上記で求めた標準偏差σ11aiと同様に下記(13)式に示されるように算出される。
σd2≒2
1/2・σ21ai ・・・(13)
【0095】
バラツキの大きさを次のように2シグマ(3シグマでもよい)で評価するものとすれば
2・σd1<(3/4)・Rh
であれば
図6に示されるようにD21もD11と同様にバラツキを持つ状態において、D11がほぼ確実にスパンが0から増加変動しているものであることを識別することができる。
すなわち、異常なハーフブリッジを特定する判定を有効に実施することができる。
したがって、判定のための許容値Rhを設定することによってR1>Rhにてロードセル1Aのスパン異常が判定されたとき、同時にW11とW21のハーフブリッジ出力のうちでいずれが異常であるかをD11,D21によって判定することができるためには許容値Rhが下記(14)式で示されるように設定されている必要がある。
Rh>(8/3)・σd1 ・・・(14)
すなわち、
D11>0で、かつD11>Rhであれば、W11がスパン増加であり、
D21<0で、かつ|D21|>RhあればW21がスパン減少であると判定することができる。
なお、バラツキ量として、標準偏差を使用する代わりにv・Q
0回の集計データにおいて平均値から最大に離れた値を使用してもよい。
【0096】
<収容バラツキに合わせた許容値設定手段の説明>
前記(14)式から許容値Rhが
Rh>(8/3)・σd1
に設定されていなければ、異常なハーフブリッジを特定することができないので、収容バラツキに関しては計量中は常に同じ条件であるから前記(12)式でσ11av=Σ11aiが成立するものとして許容値Rhを、下記(15)式を満足するように設定する必要がある。
σd1=2
1/2・σ11ai
∴Rh>(8/3)・2
1/2・σ11ai ・・・(15)
【0097】
ロードセルの異常判定、および異常なハーフブリッジを特定して自己復帰操作が可能であるかを判定させるための許容値Rhの設定と警報出力、サイン表示について次の(A)〜(D)ように取り決めて行う。
(A)まず、稼働運転前に許容値Rhを設定する。
(B)稼働運転後は上記の分類集計演算における(1)(3)に定めたR1〜R3の範囲に基づいてレジスタへ集計する。
(C)シフトレジスタにv・Q
0個が集計されるとその時点でr11,r21についてはσ11ai,σ21aiを算出する。
R1と並列にR2,R3についても演算されるので、これらについてもRh´が得られる。
1台のホッパ2における各ロードセル1A,1B,1Cに対するバラツキ条件はほぼ同じであるからいずれの標準偏差もほぼ同じ値になる。
ただし、R1〜R3の間ではv・Q
0個が集計されるタイミングは異なるので、r11〜r23の中で最も早く集計されたものに基づいてRh´の値を決定する。r11〜r23について全てが集計されてから最大の標準偏差を選択してRh´としてもよい。
これが仮にr11についての標準偏差であったとすると、Rh´は以下のように表すことができる。
Rh´=(8/3)・2
1/2・σ11ai
(D)
(a)設定値Rhが上記のRh´に比べてRh>Rh´である場合
上記分類集計演算においてR1〜R3に関する範囲(2)、(4)のRhをそのまま使用する。
そして、R1〜R3のいずれがRhを超えると(|Rn|>Rhであると)、ロードセルのスパン異常を警報し、サインを表示する。これと同時に自己復帰操作可能サインを表示する。
(b)Rhの設定値がRh≦Rh´である場合
上記分類集計演算においてR1〜R3に関する範囲(2)、(4)のRhをRh´に置き換えて実施する。ただし、ロードセルの異常判定は予め設定されたRhに基づいて行う。
そして、R1〜R3のいずれかがRhを超えると(|Rn|>Rhであると)、ロードセルの異常を警報する。これと同時に自己復帰操作待機サインを表示する。
また、R1〜R3のいずれかがRh´を超えると自己復帰操作可能サインを表示する。
【0098】
ようするに、計量中にロードセル別のハーフブリッジの比較比率であるR1,R2,R3の移動平均値を求めながらいずれかがRh(またはRh´)を超えるか、あるいは−Rh(またはRh´)未満になるかを判定しながらr11〜r23の値について分類集計演算を並列に実施し、R1,R2,R3のいずれかがRh(またはRh´)を超えるか、あるいは−Rh(またはRh´)未満になったことを検出すれば異常なロードセルが特定されるので、特定されたロードセルについて、自己復帰操作可能サインが表示された時点で当該スパン異常が検出されたロードセルと2つのハーフブリッジと他の正常なロードセルの出力との相対比率の集計結果を選択し、何れのハーフブリッジがスパン異常であるかを特定するとともに、自己復帰操作可能サインが表示されていればスパンが増加か減少かにつても判定し、以下に述べるように異常なスパンを補正する。
【0099】
<バラツキ減衰演算手段の説明>
本実施形態では、中央演算処理装置52の中のバラツキ減衰演算部52l(本発明における「バラツキ減衰演算手段」に対応する。)において、収容バラツキによるr11〜r23のバラツキの平均値を求めることでバラツキを減衰させる例を示したが、これに限定されるものではない。
例えば基本回数Q
0回ごとに中央値を求めて代表値とし、v個の代表値による平均値、標準偏差を求める方法、あるいは、基本回数Q
0ごとに最小2乗法によって直線式を求め、直線式から中央の回数である(Q
0/2)回に対応する値を代表値とし、v個の代表値による平均値、標準偏差を求めるなど種々のバラツキ減衰演算手段を用いて良い。
【0100】
ロードセル1A,1B,1Cの配置の不均等性やホッパ2の非対称性、供給装置4の偏りがロードセル1A,1B,1Cのスパン異常を警報する精度の観点から無視でき、収容バラツキのみが無視できない場合は、上記でR1の場合であれば、r11,r21について上記(1)の0<R1≦(Rh/4)の範囲および上記(3)の−(Rh/4)<R1≦0の範囲の集計を行い、同様にR2,R3についても並列に実施してRh´を、Rh´=(8/3)・σ11aiにより算出する。
これはロードセル1A,1B,1Cが正常な時点ではr11〜r23=0とみなすため例えばD11,D21について、
D11=r11av
D21=r21av
であり、前記(12)(13)式は、
σd1=σ11ai=σ11av
σd2=σ21ai=σ21av
となる。したがって、Rh´=σ11aiと算出する。
予め設定したRhとRh´の大小比較、上記(2)のR1>(3/4)・Rhの範囲の範囲および上記(4)のR1<−(3/4)・Rhの範囲においてのRhの置き換え、ロードセルの故障表示、自己復帰操作可能サインの表示について上記と同様に実施する。
【0101】
<自己復帰法についての説明>
復帰可能との判定の場合は、正常な計量作業への復帰について、自動復帰と手動復帰の選択手段を設け、自動復帰と手動復帰の選択ができるようにする。
【0102】
<スパン補正の説明>
復帰操作可能の判定のもとで自動復帰が選択されている場合は、判定によってW11のスパン増加であれば、ハーフブリッジ出力のW11のスパン増加を減じるため、W11のスパン係数である前記(1)式のK11の代わりにK11・(1−Rh)または、安全を見込んでK11・(1−q・Rh)、0<q<1を新たなK11として設定し、徐々に補正しながら計量を継続する。なお、W21のスパン減少であればK21の代わりにK21・(1+Rh)を新たなK21として設定する。
なお、かかる補正は、中央演算処理装置52の中のスパン補正部52j(本発明における「スパン補正手段」に対応する。)において実行される。
【0103】
手動復帰が選択されている場合は、復帰可能の場合のみ警報表示スパン復帰スイッチを押すと有効に動作し、上記の復帰のためのスパン補正演算を実施する。
【0104】
自動、手動に関わらず復帰処理を終えると復帰処理済みのサインを表示する。
復帰処理後も、ロードセルの異常判定表示は残し、故障したロードセルの交換に備える。
【0105】
従来、故障したロードセルの出力を他のロードセルの出力信号を使用して置きかえると、故障した方のロードセルに掛かっていた固定偏差分やバラツキ分の荷重を検出することができずに毎回の被計量物Mの重量測定値が大きい誤差になるという問題点が生じる。
本実施形態では、スパンの異常なロードセルのハーフブリッジ出力をスパン補正するようにしたので、毎回の計量において、上記の固定偏差分やバラツキ分があってもそれらを反映した精確な出力によって精確な重量測定値を得ることができる。
【0106】
<フルブリッジ出力の置換、ハーフブリッジ荷重信号代替演算手段の説明>
ここで、ハーフブリッジ出力のW11のスパンの異常が特定された場合には、前記(1)式のW1=(W11+W21)/2において、フルブリッジ出力のW1の代わりにハーフブリッジ出力W21を使用し、W1=W21として求めるようにしても良い。このような代替演算は、中央演算処理装置52の中のハーフブリッジ荷重信号代替演算部52k(本発明における「ハーフブリッジ荷重信号代替演算手段」に対応する。)において実行される。
なお、フルブリッジ出力が独立して存在する測定回路では、フルブリッジ出力をスパンの正常な方のハーフブリッジ出力に置換するようにしてもよい。
【0107】
<他の実施形態に係る故障診断装置についての説明>
本実施形態における故障診断装置20では、
図3に示されるように、ハーフブリッジ毎の荷重信号を得るとともに、フルブリッジ出力は2つのハーフブリッジ出力を加算することにより得るものについて説明したが、このようなシステム構成に代えて、
図8に示されているように、フルブリッジ出力をハーフブリッジ出力から独立させて検出するようなシステム構成とすることもできる。なお、この故障診断装置20Aにおいて、先の実施形態の故障診断装置20と同一又は同様の部分については図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては先の実施形態の故障診断装置20と異なる点を中心に説明することとする。
【0108】
本実施形態の故障診断装置20Aは、フルブリッジ回路15に対して設けられる、アナログ加算回路57と、A/D変換器58と、演算回路26とを備えている。
ここで、フルブリッジ回路15と演算回路26は、先の実施形態の故障診断装置20で使用されたものと共通のものである。
先の実施形態の故障診断装置20では、2つのA/D変換器24,25が用いられているが、本実施形態の故障診断装置20Aでは、1つのA/D変換器58が用いられる。故障診断装置20Aで、2つのハーフブリッジ出力と1つのフルブリッジ出力のそれぞれに3個のA/D変換器を用いても良い。
先の実施形態の故障診断装置20では、フルブリッジ回路15における接続点16の電位が+Vで接続点17の電位が零の直流電圧が印加されているが、本実施形態の故障診断装置20Aでは、接続点16の電位が+Vで接続点17の電位が−Vの直流電圧が印加されている。この場合、先の実施形態の故障診断装置20では必要とされる電圧参照用の固定抵抗21,22によるハーフブリッジ回路15a,15bは不要となる。
【0109】
アナログ加算回路57は、第1演算増幅器61と、第2演算増幅器62と、第3演算増幅器63と、第4演算増幅器64と、第5演算増幅器65とを備えて構成されている。
第1演算増幅器61において、入力正端子61aはフルブリッジ回路15の接続点18に接続され、入力負端子61bは出力端子61cに接続され、出力端子61cは抵抗器66,67に接続されている。
第2演算増幅器62において、入力正端子62aはフルブリッジ回路15の接続点19に接続され、入力負端子62bは出力端子62cに接続され、出力端子62cは抵抗器68および第4演算増幅器64の入力正端子64aにそれぞれ接続されている。
第3演算増幅器63において、入力正端子63aは、抵抗器68に接続されるとともに、抵抗器69を介して回路のアース70に接続され、入力負端子63bは、抵抗器66に接続されるとともに、抵抗器71を介して出力端子63cに接続され、出力端子63cはアナログスイッチ72を介してA/D変換器58に接続されている。
第4演算増幅器64において、入力正端子64aは第2演算増幅器62の出力端子62cに接続され、入力負端子64bは、抵抗器73を介して回路のアース70に接続されるとともに、抵抗器74を介して出力端子64cに接続され、出力端子64cはアナログスイッチ75を介してA/D変換器58に接続されている。
第5演算増幅器65において、入力正端子65aは抵抗器76を介して回路のアース70に接続され、入力負端子65bは、抵抗器67に接続されるとともに、抵抗器77を介して出力端子65cに接続され、出力端子65cはアナログスイッチ78を介してA/D変換器58に接続されている。
【0110】
本実施形態の故障診断装置20Aにおいては、計量器用のアナログ荷重信号は第3演算増幅器63において合成される。接続点18側のハーフブリッジ回路15aの出力荷重信号がeob、接続点19側のハーフブリッジ回路15bの荷重信号がeoaであり、A/D変換器58は全ての信号に兼用して1個のみ設けられ、その入力がアナログスイッチ72,75,78によって切り換えられる。このように適宜A/D変換器の使用個数は選択すれば良い。
【0111】
この故障診断装置20Aのようにフルブリッジ出力が独立して存在する構成であれば、ロードセル単体調整時点で同じ負荷荷重に対してフルブリッジ出力と2つのハーフブリッジ出力とが同一値となるように、すなわちWn=Wan=Wbnであるようにスパン係数が設定され、初期重量記憶メモリ、零点重量記憶メモリが設けられる。
そして、ハーフブリッジ出力とは独立に、W1〜W4は次式にて処理される。
W1=K1・(Wa1−Wi1)−Wz1
W2=K2・(Wa2−Wi2)−Wz2
W3=K3・(Wa3−Wi3)−Wz3
W4=K4・(Wa4−Wi4)−Wz4
【0112】
以上、本発明のホッパ式計量装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。