特許第5679872号(P5679872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679872
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】刷版を準備して渡す方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/00 20060101AFI20150212BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   B41C1/00
   G03F7/20 501
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-54431(P2011-54431)
(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公開番号】特開2011-189738(P2011-189738A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】10 2010 011 196.1
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】アクセル トリルク
【審査官】 鈴木 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−067897(JP,A)
【文献】 特開2004−292070(JP,A)
【文献】 特開2003−307853(JP,A)
【文献】 特開2000−351460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0241517(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0170100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00
B41F 27/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷版(42,43)を加工するための装置に刷版(42,43)を準備して渡す方法であって、
少なくとも1つの刷版準備エレメント(2)に少なくとも1つの刷版スタック(40,41)を準備し、刷版準備エレメント(2)は位置変化可能であり、個別化装置(50)によって、該個別化装置(50)の作用範囲内に存在する刷版スタック(40,41)から刷版(42,43)を個別化する方法において、
刷版準備エレメント(2)を、静止位置から取出位置に移動させ、取出位置への移動が少なくとも鉛直方向の成分を有し、刷版準備エレメント(2)を、取出位置で、個別化装置(50)の作用範囲内で停止させ、刷版準備エレメント(2)を、傾斜平面(7)とストッパ(9)とを備える強制手段(7,9)によって、個別化装置(50)に対して少なくとも1方向で位置決めし、
収容架構(26)によって刷版準備エレメント(2)を収容し、
収容架構(26)を、能動的に、静止位置から取出位置に移動させ、収容架構(26)が、刷版準備エレメント(2)を、少なくとも部分的に、位置決めするための強制手段(7,9)に渡し、
収容架構(26)が、刷版準備エレメント(2)を、静止位置に搬送するために再び完全に受け取り、
収容架構(26)が、刷版準備エレメント(2)の前方または後方を、傾斜平面(7)に載置し、刷版準備エレメント(2)が、概ね自重により、傾斜平面(7)に沿って移動して、ストッパ(9)に当接し、ストッパ(9)に向かって位置決めされることを特徴とする、刷版を準備して渡す方法。
【請求項2】
第1の刷版準備エレメント(2)の取出位置で、第1の刷版準備エレメント(2)から、刷版(42)を、個別化装置(50)により取り出し、第1の刷版準備エレメント(2)を静止位置へ移動させ、次に刷版(43)を、第1の刷版準備エレメント(2)の下方に置かれた第2の刷版準備エレメント(1)から取り出し、第2の刷版準備エレメント(1)は、第1の刷版準備エレメント(2)および第2の刷版準備エレメント(1)から刷版(42,43)を取り出す間、移動しない、請求項記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法を実施するための、刷版(42,43)を加工するための装置に刷版(42,43)を準備して渡す装置であって、
位置変化可能な少なくとも1つの刷版準備エレメント(2)が設けられており、少なくとも1つの刷版準備エレメント(2,1)の刷版スタック(40,41)から刷版(42,43)を個別化するための個別化装置(50)が設けられており、刷版準備エレメント(2,1)は、個別化装置(50)の作用範囲内に位置しているものにおいて、
調節装置が設けられており、該調節装置は、少なくとも1つの刷版準備エレメント(2)を、少なくとも部分的に鉛直方向に位置変化させ、少なくとも1つの強制手段が設けられており、該強制手段は、刷版準備エレメント(2)を鉛直方向に位置変化させたあとで、刷版準備エレメント(2)を、少なくとも1方向に位置決めするようになっており、強制手段は、傾斜平面(7)とストッパ(9)とを備えており、刷版準備エレメント(2)は、傾斜平面(7)に刷版準備エレメント(2)が接触しながら該刷版準備エレメント(2)を運動させるための運動機構(8)を備えていることを特徴とする、刷版を準備して渡す装置。
【請求項4】
調節装置は、収容架構(26)を備えており、該収容架構(26)は、刷版準備エレメント(2)を収容して、該刷版準備エレメント(2)を少なくとも部分的に傾斜平面(7)に渡すようになっている、請求項記載の装置。
【請求項5】
傾斜平面(7)は、2つの載設部として、ベースプレート(1)上で収容架構(26)の側方に形成されており、運動機構(8)は、側方の2つのローラとして形成されており、該ローラは、刷版準備エレメント(2)の側方部分に配置されており、ローラは、傾斜平面(7)の載設部に載置されるようになっていて、刷版準備エレメント(2)を、位置決めするために、少なくとも重力の作用により、傾斜平面(7)に沿ってストッパ(9)に当接させるようになっている、請求項記載の装置。
【請求項6】
調節装置は、収容架構(26)とレバー機構(27)と駆動装置(4)とを備えており、調節装置は、収容架構(26)に収容された刷版準備エレメント(2)を、略円形の軌道に沿って、第1の刷版準備エレメント(2)の下方に置かれた第2の刷版準備エレメント()に対して平行を保って旋回させる、請求項記載の装置。
【請求項7】
請求項からまでのいずれか1項記載の装置を備えた刷版露光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刷版を加工するための装置に刷版を準備して渡す方法であって、少なくとも1つの刷版準備エレメントに少なくとも1つの刷版スタックを準備し、刷版準備エレメントは位置変化可能であり、個別化装置によって、個別化装置の作用範囲内に存在する刷版スタックから刷版を個別化する方法に関する。
【0002】
また本発明は、このような刷版を準備して渡す方法を実施する装置に関する。
【0003】
さらに本発明は、このような装置を備えた刷版露光器に関する。
【背景技術】
【0004】
複製技術では、印刷しようとする全ての要素、たとえばテキスト、グラフィックおよび画像を含む印刷面用の印刷原稿が形成される。カラー印刷のために、各インキ用に、その都度のインキで印刷される全ての要素を含む個別の印刷原稿が形成される。4色刷りでは、インキは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)である。印刷原稿は、通常、刷版露光器において刷版に記録され、刷版を用いて、印刷機で、高い解像度を有する印刷面が印刷される。選択的に印刷原稿は、直接、デジタルデータとして、デジタル印刷機に渡すことができる。そこでは印刷原稿データが、印刷が開始される直前に、たとえば印刷機に組み込まれた露光ユニットによって、刷版に露光される。
【0005】
電子複製技術で刷版を露光するために用いられる記録装置では、たとえばレーザダイオードからレーザ光線が形成され、光学的な手段により成形され、刷版に集束され、偏向系を用いて点状または線状に刷版に偏向される。露光速度を高めるために、レーザ光線束が形成され、刷版に当てられる度に複数の画線が同時に露光される。刷版は、露光ドラム上(外側ドラム型露光器)、円筒形の凹部内(内側ドラム型露光器)または平面上(平床式露光器)に位置する。たとえば外側ドラム型露光器では、露光しようとする刷版は、回動可能に支承された露光ドラム上に取り付けられる。露光ドラムが回転しながら、露光ヘッドは、比較的短い間隔で、軸方向にドラムに沿って運動する。露光ヘッドは単数または複数のレーザ光線をドラム表面に集束し、レーザ光線は、螺旋形の狭い線に沿って当てられる。このようにしてドラムが回動する度に、単数または複数の画線が露光される。
【0006】
露光しようとする刷版は、手動で刷版露光器に供給することができる。刷版は、刷版露光器に引き込まれ、自動で露光器ドラムに緊締され、そこで刷版は、クランプ装置によって、また場合によっては真空装置によって、露光中固定される。作業プロセスを自動化して、これにより作業員を削減するために、積込装置が用いられ、積込装置は、露光しようとする刷版を個別にカセットから、たとえば吸着装置を用いて取り出して、刷版露光器に供給する。そのような積込装置は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10134151号明細書に記載されている。そのような積込装置は、シングルカセットローダと呼ばれる。なぜならばそれぞれ1つのカセットを備え、そこから刷版が取り出されるからである。カセットは、未露光の刷版のストックを有し、その際、通常、刷版は、同じ判型(判サイズ、つまり同じ寸法)を有している。カセット内で、刷版は、埃または光の侵入から保護されているので、刷版の意図しない露光が妨げられる。
【0007】
様々な判サイズの刷版が要求される場合、マガジンを備えた、自動化された別の装置も公知であり、マガジンには、刷版スタック用の複数のカセットが準備され、次いでカセットは個別化装置に供給される。たとえば米国特許第6726433号明細書において、個別化装置を備えた刷版マガジンが提案され、そこではカセットがマガジン内で上下に積み重ねられる。刷版をカセットから個別化するために、カセット上に位置するカセットが鉛直方向に移動させられ、所望の判サイズのカセットは、水平方向に渡し位置にもたらされ、そのあとで鉛直方向に部分的にマガジンから外へ移動させられ、個別化装置に提供される。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008023601号明細書において、そのようなマガジンに刷版のカセットを装着するのではなく、トレーを用いることが公知であり、トレーに刷版スタックが載設される。その利点によれば、別の刷版がより簡単に装着される。さらにこのようなシステムでは、刷版を備えたトレーは連続するステップで水平方向および垂直方向に移動させられ、これにより刷版が個別化に供給され、次いで露光ユニットに供給される。
【0009】
先行技術から、比較的大きく煩雑な装置が公知であるが、その役割は、刷版用の加工ユニット、たとえば露光ユニットに、できるだけ多数の様々な刷版サイズまたは刷版自体をマガジンに提供することである。このためにマガジンは、カセットまたはトレーを鉛直方向または水平方向に移動させることができる作用手段を有する必要がある。作用手段は、刷版を個別化しようとする際に、トレーまたはカセットの正確な位置決めを保証するために、十分な程度に正確に位置決めする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10134151号明細書
【特許文献2】米国特許第6726433号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008023601号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願第102009052144号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の課題は、先行技術の欠点が少なくとも部分的に解消されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、刷版を加工するための装置に刷版を準備して渡す方法であって、少なくとも1つの刷版準備エレメントに少なくとも1つの刷版スタックを準備し、刷版準備エレメントは位置変化可能であり、個別化装置によって、該個別化装置の作用範囲内に存在する刷版スタックから刷版を個別化する方法において、刷版準備エレメントを、静止位置から取出位置に移動させ、取出位置への移動が少なくとも鉛直方向の成分を有し、刷版準備エレメントを、取出位置で、個別化装置の作用範囲内で停止させ、刷版準備エレメントを、強制手段によって、個別化装置に対して少なくとも1方向で位置決めする。
【0013】
好適には、収容架構によって刷版準備エレメントを収容し、収容架構を、能動的に、静止位置から取出位置に移動させ、収容架構が、刷版準備エレメントを、少なくとも部分的に、位置決めするための強制手段に渡し、収容架構が、刷版準備エレメントを、静止位置に搬送するために再び完全に受け取る。
【0014】
好適には、収容架構が、刷版準備エレメントの前方または後方を、傾斜平面に載置し、刷版準備エレメントが、概ね自重により、傾斜平面に沿って移動して、ストッパに当接し、ストッパに向かって位置決めされる。
【0015】
好適には、第1の刷版準備エレメントの取出位置で、第1の刷版準備エレメントから、刷版を、個別化装置により取り出し、第1の刷版準備エレメントを静止位置へ移動させ、次に刷版を、好適には第1の刷版準備エレメントの下方に置かれた第2の刷版準備エレメントから取り出し、第2の刷版準備エレメントは、第1の刷版準備エレメントおよび第2の刷版準備エレメントから刷版を取り出す間、移動しない。
【0016】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、刷版を加工するための装置に刷版を準備して渡す装置であって、位置変化可能な少なくとも1つの刷版準備エレメントが設けられており、少なくとも1つの刷版準備エレメントの刷版スタックから刷版を個別化するための個別化装置が設けられており、刷版準備エレメントは、個別化装置の作用範囲内に位置しているものにおいて、調節装置が設けられており、該調節装置は、少なくとも1つの刷版準備エレメントを、少なくとも部分的に鉛直方向に位置変化させ、少なくとも1つの強制手段が設けられており、該強制手段は、刷版準備エレメントを鉛直方向に位置変化させたあとで、刷版準備エレメントを、少なくとも1方向に、好適には個別化装置に向いた方向に位置決めするようになっている。
【0017】
好適には、強制手段は、傾斜平面とストッパとを備えており、刷版準備エレメントは、傾斜平面に刷版準備エレメントが接触するように該刷版準備エレメントを運動させるための運動機構、好適にはローラを備えている。
【0018】
好適には、調節装置は、収容架構を備えており、該収容架構は、刷版準備エレメントを収容して、該刷版準備エレメントを少なくとも部分的に傾斜平面に渡すようになっている。
【0019】
好適には、傾斜平面は、2つの載設部として、ベースプレート上で収容架構の側方に形成されており、運動機構は、側方の2つのローラとして形成されており、該ローラは、刷版準備エレメントの側方部分に配置されており、ローラは、傾斜平面の載設部に載置されるようになっていて、刷版準備エレメントを、位置決めするために、少なくとも重力により支援して、傾斜平面に沿ってストッパに当接させるようになっている。
【0020】
好適には、調節装置は、収容架構とレバー機構と駆動装置とを備えており、調節装置は、収容架構に収容された刷版準備エレメントを、略円形の軌道に沿って、第1の刷版準備エレメントの下方に形成された第2の刷版準備エレメントに対して平行に旋回させる。
【0021】
このような刷版を加工するための装置に刷版を準備して渡す装置を備えた刷版露光器が好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明による方法によれば、刷版は、刷版を加工するための装置に渡される。この加工装置は、たとえば刷版露光器である。少なくとも1つの刷版スタックが、少なくとも1つの刷版準備エレメント内または刷版準備エレメント上に供給される。そのような刷版準備エレメントは、好適にはトレーであってよく、トレー上に適宜刷版スタックが準備される。そのような刷版準備エレメントは、本発明によれば、静止位置から取出位置に移動させられる。取出位置では、刷版準備エレメントは、個別化装置の作用範囲内に位置しており、個別化装置によって、刷版は、刷版準備エレメントから個別化される。静止位置から取出位置への移動は、少なくとも鉛直方向の成分を有しており、その際、提供される強制手段によって、個別化装置に対する刷版準備エレメントの位置決めを少なくとも1方向に行うことができる。好適には、位置決めは、個別化装置自体に向かって行われる。特に好適には、少なくとも2つの刷版準備エレメントが上下に配置して提供されており、第1の刷版準備エレメントの静止位置では、第1の刷版準備エレメントの直ぐ下に位置する第2の刷版準備エレメントに直接に作用することができる。このために専ら第1の刷版準備エレメントが可動に形成されており、これに対して第2の刷版準備エレメントは不動である。
【0023】
本発明の装置によれば、少なくとも1つの第1の刷版準備エレメントを位置変化させるために調節装置が設けられており、調節装置は、刷版準備エレメントを少なくとも部分的に鉛直方向に位置変化させる。さらに刷版を準備して渡す装置には、強制手段が設けられており、強制手段は、刷版準備エレメントの鉛直方向の位置変化に従って、刷版準備エレメントを、少なくとも1方向に、好適には個別化装置に向かって位置決めする。
【0024】
調節装置によって、刷版準備エレメントは位置変化させることができる。このために調節装置は、刷版準備エレメントを収容可能な収容架構を備えており、刷版準備エレメントは、少なくとも部分的に強制手段に渡される。強制手段は、特に好適な構成では、傾斜平面およびストッパであり、刷版準備エレメントは、さらに好適には傾斜平面に沿って刷版準備エレメントが接触するように刷版準備エレメントを運動させるための運動機構(たとえばローラ)を備えている。調節装置によって静止位置から取出位置に刷版準備エレメント用の収容架構を能動的に移動させることよって、刷版準備エレメントは、少なくとも部分的に強制手段に渡され、そうして強制手段によって位置決めすることができる。次いで収容架構は、再び静止位置に搬送するために刷版準備エレメントを受け取ることができる。
【0025】
適切な位置決めを行うために、収容架構は、少なくとも先ず刷版準備エレメントの前方または後方(好適には前方)を傾斜平面に載置する。刷版準備エレメントは、概ねそれ自体の重力によって、傾斜平面に沿って滑動し、本発明によれば、このために運動機構が設けられている。傾斜平面に部分的に渡すことによって、刷版準備エレメントは滑動してストッパに当接し、ストッパは、その位置によって、個別化装置に対する刷版準備エレメントの適切な位置決めを行う。
【0026】
好適な形態では、傾斜平面は、2つの載設部から形成されており、載設部は、収容架構に対して側方に形成されている。刷版準備エレメントの側に設けられた運動機構は、側方のローラとして形成されており、ローラは、側方の載設部に載置することができ、傾斜平面に沿って転動することができる。これによって少なくとも重力により支援して、刷版準備エレメントは、ストッパに当接運動され、適切に方向付けされる。
【0027】
そのように位置決めされた第1の刷版準備エレメントは、取出位置で、個別化装置によって適宜刷版を取り出すことができる。別の方法ステップでは、次に第1の刷版準備エレメントが、再び完全に収容架構によって受け取られ、静止位置に移動させられる。このために収容架構は、特に運動機構用の凹みを備えることができ、凹みに、刷版準備エレメントが係合可能である。第1の刷版準備エレメントが静止位置に移動させられたあとで、刷版は、第2の刷版準備エレメント(第2の刷版準備エレメントは好適には特にベースプレート1として第1の刷版準備エレメントの下方に設置されている)から取り出すことができる。本発明による方法によれば、第2の刷版準備エレメントは、第1の刷版準備エレメントから刷版を取り出す時点と第2の刷版準備エレメントから取り出す時点との間、移動しない。
【0028】
本発明による装置によれば、収容架構を静止位置から取出位置に、またその逆に位置変化させるために、レバー機構および駆動装置が設けられており、レバー機構は、収容架構に収容された刷版準備エレメントを、略円形軌道に沿って、第1の刷版準備エレメントの下方に設けられた第2の刷版準備エレメントに対して略平行に旋回させる。このようにして特に小さな所要スペースを有する調節装置が達成される。
【0029】
刷版を準備して渡す適切な装置を備えた刷版露光器に関しても独自の権利保護が要求されるものとする。
【0030】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】トレー収容部に収容するためのトレーを備えた刷版収容部の側方断面図である。
図2】静止位置にあるトレー収容部を備えた刷版収容部の側方断面図である。
図3】取出位置にあるトレー収容部を備えた刷版収容部の側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、刷版収容部52を側方横断面図で示す。刷版収容部52は、図示していない刷版露光器の構成部材であり、刷版露光器に、刷版収容部52を通って刷版42,43が供給される。そのような刷版露光器を備えた刷版収容部は、ドイツ連邦共和国特許出願第102009052144号明細書に記載されており、引用することにより、本発明に、刷版収容部および刷版露光器における刷版収容部の位置決めに関する前掲明細書の内容が援用されるものとする。
【0033】
刷版収容部52は、カバーエレメント44を備えており、カバーエレメント44は、保護部材10を備えている。保護部材10は、旋回可能に配置されており、刷版スタック40,41および/または刷版スタック42を備えたトレー2が刷版収容部52内に導入可能である。
【0034】
トレー2を収容するために、刷版収容部52は、トレー収容部26を備えている。ここではトレー収容部26は、前方下位の取出位置にあり、トレー収容部26は、トレー2を収容するためにも前方下位の取出位置を占める。
【0035】
トレー収容部26は、側方の複数のアーム3から成っており、アーム3は、それぞれ側方に配置されていて、トレー2を側面で収容することができる。図1の側面図からは、1つのアーム3だけが看取される。トレー収容部26の第2のアーム3は、トレー2の反対側に位置する。刷版収容部52の外側で、トレー2に、刷版スタック40が供給される。トレー2は、内側に刷版42を有する。矢印30の方向に、トレー2は、トレー収容部26に導入することができる。
【0036】
トレー収容部26の下方に、刷版収容部52の基板1が存在しており、基板1は、別の刷版43の刷版スタック41用の準備エレメントとして機能する。基板1は、以下にベースプレート1とも呼ばれ、ベースプレート1は、実際には刷版収容部52の底板もしくは底部であり、底板もしくは底部は、刷版43を収容するために適宜設置される。刷版収容部52の基板としてのベースプレート1が不動であるのに対して、トレー2を備えたトレー収容部26は様々な位置に旋回させることができる。トレー収容部26を旋回させるために、トレー収容部26は、旋回駆動装置4と結合されており、旋回駆動装置4は、昇降機構としてのレバー機構27の構成部材である。旋回のためにレバー20が、定位置の旋回軸5bを中心に旋回可能に支承されている。レバー20は、片側で、可動の旋回点6bで、トレー収容部26のアーム3と結合されていて、別の片側で、旋回点22で、旋回駆動装置4のピストン23と結合されている。旋回点22とレバー20の旋回軸5bとの間に、レバー20の一区分28が位置しており、レバー区分28は、旋回点22がトレー収容部26の取出位置付近で大体において旋回軸5bの直ぐ下側に位置するように、曲げられている。既にトレー収容部26について述べたように、この構造は、両側でほぼ対称的に形成されている。
【0037】
トレー収容部26の後方端部に、安定性を高めるために、別のレバー21が設けられており、別のレバー21は、連動する旋回点6aを介して、トレー収容部26のアーム3と結合されている。別のレバー21を介して、トレー収容部26は、旋回軸5bを中心とする旋回に対して追加的に旋回軸5aを中心に旋回させられ、旋回軸5aは、ベースプレート1に対して不動であり、基板1と別のレバー21が追加的に結合されている。旋回軸5aを中心とする旋回は、専ら受動的に、旋回駆動装置4により駆動されて行われ、旋回駆動装置4は、前方のレバー20に作用する。
【0038】
旋回駆動装置4自体は、定位置の旋回軸もしくは定位置の旋回点24と結合されていて、旋回軸もしくは旋回点24を中心に旋回可能に配置されている。ピストン23を介してレバー20に駆動装置4の力が作用すると、駆動装置4に戻る力が作用するので、駆動装置4は、定位置の旋回点24を中心に旋回させられる。この旋回運動は、図2において、矢印25で記号化して示す。このようにしてレバー機構27に関する所要スペースを削減することができる。
【0039】
上位のトレー2だけでなく下位の刷版スタック41からも刷版42,43を取り出すために、前縁端部に個別化装置50が形成されており、個別化装置50は、可動の吸着機構11を備えている。吸着機構11は、刷版42,43の幅延在方向に対して平行に、複数の吸着ヘッドを備えている。刷版を個別化するために、吸着機構11は、鉛直方向および水平方向に移動することができ、吸着機構11は、上位の刷版を刷版スタック40から吸着することができ、鉛直方向上向きに引き上げることができる。吸着機構11は、さらに支持部材12によって支援され、支持部材12は、持ち上げられた刷版42,43の下方に移動することができる。このために支持装置12は、水平方向に可動で、大体において刷版42,43の全区分を、その下側で前縁から後縁まで移動することができ、したがって持ち上げられた刷版42,43を、ほぼ完全に、その下に位置する刷版スタック40,41から分離する。
【0040】
さらに基板1に傾斜平面7が設けられており、傾斜平面7に、トレー2を位置決めする、つまりトレー2の位置を揃えるために、トレー2をトレー収容部26から渡すことができる。傾斜平面7は、実質的に2つの対称的な載設部から成っており、載設部は、トレー収容部26の側方に形成されている。トレー2は、下面に、ローラ8を備えており、ローラ8は、トレー2の側縁部分に設けられている。特に好適には、2つのローラ8がそれぞれ側縁に設けられており、ローラ8は、トレー2を位置決めするために、トレー収容部26から傾斜平面7に渡される。したがってトレー2は、傾斜平面7に沿って滑動し、前縁51で、個別化装置50の下側でストッパ9に当接する。ストッパ9により、トレー2は、個別化装置50に対して位置決めされ、刷版42は、個別化装置50の吸着機構11に対して所望の規定位置で取り出すことができる。
【0041】
図2には、刷版収容部52を別の側方断面図で示す。ここでは同一の構成要素には同一の符合を設けた。
【0042】
トレー2は、ここでは刷版収容部26により収容されており、刷版収容部26は、静止位置に旋回されている。刷版収容部52のカバーエレメント44は、保護部材10で、閉じられている。看取されるように、ベースプレート1上に設けられた刷版スタック41とトレー2を備えたトレー収容部26とは、保護部材10が閉じた状態で、カバーエレメント44によっても包囲され、それも、トレー収容部26が静止位置にあり、つまりトレー収容部26が、最後位にあり、要するに個別化装置50から最も離間する位置にあり、同時にベースプレート1に関して最高位にある場合に、包囲される。
【0043】
トレー2のローラ8は、図示のように、少なくとも部分的に、側方で、トレー収容部26のアーム3の凹み61に進入することができる。凹み61によって、トレー収容部26によるトレー2の、コントロールされた収容を、少なくとも支援することができる。
【0044】
安全性の理由から、カバーエレメント44は、安全センサ60を備えており、安全センサ60は、保護部材10が閉じられているか、または開かれているか検出する。図2に示すように、保護部材10が閉じられている場合、駆動装置4の作動が可能である。このようにしてレバー20,21による作業員の挫傷を回避することができる。作動方法の技術に関して、図2の状態は、図1の状態から出発しており、先ずトレー2がトレー収容部26に導入され、次いで保護部材10が閉じられる。安全センサ60が、保護部材10の閉鎖を検出し、図示していない制御エレメントを介して駆動装置4の作動を可能にするので、取り出そうとする所望の刷版42,43に応じて、トレー収容部26が取出位置または静止位置に旋回させられる。
【0045】
図2に示すように、トレー収容部26の静止位置では、刷版スタック41は、個別化装置50によって刷版43を取り出すように準備されている。トレー収容部26は、もはやベースプレート1の前方部分に位置しないので、吸着機構11は、矢印31の方向に水平に刷版スタック41の上方に移動することができ、次いで鉛直に矢印32の方向に鉛直方向に降下し、ベースプレート1に割り当てられた刷版43を吸着することができる。次いで吸着機構11は、矢印32とは逆向きに鉛直方向に上昇させられ、最上位の刷版43を少なくとも前方部分で連行する。場合によっては存在する中間紙または最上位の刷版43に付着する刷版43は、送風機構34によって解放するか、または剥離することができる。その下に位置する支持部材12は、持ち上げられた刷版43と該刷版43の下に位置する刷版スタック41との間に移動する。持ち上げられた刷版43は、通常、吸着機構11によって前縁部分だけが持ち上げられる程度に軟かい。個別化装置50から離間する側の後方部分は、依然としてスタック41に載置しており、吸着機構11が水平方向に移動する際に残りのスタック41に沿って擦過することにより、スタック41に位置する刷版43の表面が損傷する恐れがある。このために支持部材12は、持ち上げられた刷版43の下方を移動し、刷版43を完全にスタック41から持ち上げる。このために支持部材12は、矢印33の方向に持ち上げられたトレー収容部26の下方を移動することができ、その際支持部材12は、持ち上げられた刷版43の下方に留まる。持ち上げられた刷版43の搬出に際して、支持部材12は、均一に、吸着機構11と共に、矢印33とは逆向きに移動することができ、そうして刷版43は搬出され、後続加工機構または刷版露光器の旋回テーブルにもたらされる。
【0046】
図3には、トレー収容部2が取出位置に旋回させられた状態を示す。ここではトレー2の前縁51は、ストッパ9に当接している。個別化装置50による、下方に位置する刷版スタック41に対する作用(アプローチ)は行われない。なぜならばスタック41は、この時点では、トレー収容部26およびトレー収容部26上に位置するトレー2によって完全に塞がれているからである。取出位置では、トレー収容部26は、前方下方に旋回されており、トレー2上の刷版42は、図2について説明したように、個別化装置50自体によって個別化することができる。
【0047】
ストッパ9に位置決めするために、トレー2は、トレー収容部26によって、トレー2の運動方向に少なくとも鉛直方向の成分が存在するように旋回させられる。トレー2は、トレー収容部26に収容する際に、大体において後方部分だけでトレー収容部26のアーム3に載置される。前方部分では、トレー2とトレー収容部26との間の接触点は、実質的に凹み61だけに存在する。鉛直方向成分を有する下降旋回によって、前方部分において、トレー2は、2つのローラ8(ローラ8は対称的に配置されている)で、傾斜平面7の載設部に載置される。載設部は、斜面を備えており、斜面は、ここでは傾斜平面とも呼ばれる。傾斜平面7に、トレー収容部26のアーム3の適切な下降旋回により達成されるトレー2の完全な引渡しに際して、ローラ8が載置される。重力と、傾斜平面7の載設面の適宜選択された角度と、トレー2とアーム3の少なくとも後方部分との間の所望に調節された摩擦係数とによって、トレー2を前方に定位置のストッパ9に押し付ける力作用が生じる。したがってトレー2は、直角に、個別化装置50に対して常に同じ距離で、前縁で、ストッパ9に当接するよう保証される。
【0048】
トレー2を再び静止位置に移動させるために、トレー収容部26のアーム3は、レバー機構27によって上方に移動させられる。ローラ8は、凹み61によって収容され、トレー2は、完全に、コントロールされて、トレー収容部26から静止位置に移動させられる。
【0049】
ローラ8とトレー収容部26の鉛直方向の下降旋回とが協働して、形成された傾斜平面7により、個別化装置50に対するトレー2の、ストッパ9における所定の位置決めが保証される。これにより刷版42用の後続の加工装置に対する所定の位置決めと共に、個別化装置50による刷版42の個別化が大幅に簡素化される。
【符号の説明】
【0050】
1 ベースプレート、 2 トレー、 3 アーム、 4 旋回駆動装置、 5a,5b 旋回軸、 6a,6b 旋回点、 7 傾斜平面、 8 ローラ、 9 ストッパ、 10 保護部材、 11 吸着機構、 12 支持部材、 20,21 レバー、 22 旋回点、 23 ピストン、 24 定位置の旋回点、 26 トレー収容部、 27 レバー機構、 28 アーム区分、 30 導入方向、矢印、 34 送風機構、 40,41 刷版スタック、 42,43 刷版、 44 カバーエレメント、 50 個別化装置、 51 縁部、 52 刷版収容部、 60 安全センサ、 61 凹み
図1
図2
図3