(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料ガスに接する燃料極と、酸化剤ガスに接する空気極と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池において、
外周側の第1領域と内周側の第2領域とに区分され、前記第2領域の表面が前記第1領域の表面よりも所定の高さだけ低く形成された段差構造を有する枠体状の金属フレームと、
前記金属フレームの前記第2領域の表面に溶接接合され、前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とを隔離する金属セパレータと、
前記金属フレームの前記第1領域の表面に密着配置された枠体状のガスシール部材と、
を備え、
前記ガスシール部材の内周側は前記第2領域の上方に突出し、前記金属セパレータの溶接部分が前記ガスシール部材と非接触の状態となるように前記所定の高さが設定されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
前記金属セパレータには、前記燃料極と前記固体電解質層と前記空気極とを一体的に積層したセル本体が接合され、当該セル本体の表面が前記金属フレームの開口部から露出する位置関係にあることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
前記金属フレーム及び前記ガスシール部材は、それぞれの外周側の端部が平面視で同一位置に形成されるとともに、前記金属フレームの内周側の端部に比べて前記ガスシール部材の内周側の端部が平面視で内周寄りの位置に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池。
燃料ガスに接する燃料極と、酸化剤ガスに接する空気極と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法において、
前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とを隔離する金属セパレータを、外周側の第1領域と内周側の第2領域とに区分された枠体状の金属フレームの前記第2領域の表面に密着させた状態で溶接接合する第1の工程と、
前記燃料極と前記固体電解質層と前記空気極とを一体的に積層したセル本体を、前記金属フレームと溶接接合された金属セパレータに接合する第2の工程と、
絶縁性の枠体状のガスシール部材を、前記金属フレームの前記第1領域の表面に密着配置する第3の工程と、
を含み、前記金属フレームは、前記第2領域の表面が前記第1領域の表面よりも所定の高さだけ低く形成された段差構造を有し、前記ガスシール部材の内周側が前記第2領域の上方に突出し、前記金属セパレータの溶接部分が前記ガスシール部材と非接触の状態となるように前記所定の高さが設定されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属フレームと金属セパレータを一体化した構造において、その上下には燃料ガス流路と空気流路が存在することになるので、それぞれの流路をシールするためのガスシール部材を配置する必要がある。例えば、金属セパレータが一体化された金属フレームの上部にガスシール部材を配置する場合、良好なガスリーク性を維持するために、ガスシール部材の十分な密着性を保つ必要がある。しかしながら、金属フレームと金属セパレータとを溶接により接合する場合、溶接を施した部分が加熱されて突起部が形成され、表面の平坦性が保たれなくなる。また、ロウ付けにより接合する場合でも、ロウ溜まりなどによりセル表面に突起部が形成されることがある。そのため、金属セパレータを一体化した金属フレームの上部にガスシール部材を配置したとき、ガスシール部材の底面が突起部に接触した状態になり、密着性が損なわれる恐れがある。その結果、ガスシール部材の不十分な密着性に起因して部分的にガスリークが生じるなど、単位セルのガスリーク性が劣化するという問題がある。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、金属フレームと金属セパレータとを溶接接合する場合であっても、単位セルの良好なガスリーク性を維持することが可能な固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の固体酸化物形燃料電池は、燃料ガスに接する燃料極と、酸化剤ガスに接する空気極と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池において、外周側の第1領域と内周側の第2領域とに区分され、前記第2領域の表面が前記第1領域の表面よりも所定の高さだけ低く形成された段差構造を有する枠体状の金属フレームと、前記金属フレームの前記第2領域の表面に溶接接合され、前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とを隔離する金属セパレータと、前記金属フレームの前記第1領域の表面に密着配置された枠体状のガスシール部材とを備えて構成され、前記ガスシール部材の内周側は前記第2領域の上方に突出し、前記金属セパレータの溶接部分が前記ガスシール部材と非接触の状態となるように前記所定の高さが設定されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の固体酸化物形燃料電池によれば、単位セル内で燃料ガスの流路と酸化剤ガスの流路を隔離する金属セパレータを、金属フレームに溶接接合し、さらに金属フレームにガスシール部材を配置する構造において、金属フレームには段差構造が設けられ、外周側の第1領域の表面にガスシール部材が密着配置され、第1領域より高さが低い内周側の第2領域の表面に金属セパレータが溶接接合される。第2領域の表面に金属セパレータを溶接接合する際、加熱によって金属セパレータの溶接箇所に溶接突起部(またはロウ材溜りによる突起部)が形成されるが、金属フレームの段差構造により、溶接突起部が上方のガスシール部材の底面に接触しない関係に保たれる。そのため、溶接突起部の形成後にガスシール部材と金属フレームとの密着性が損なわれず、かつ金属セパレータが単位セルの側面には露出せず、良好なガスシール性を維持することができる。
【0008】
前記金属セパレータには、例えば、燃料極層と空気極層と固体電解質層とが積層されたセル本体を接合することができる。この場合、前記金属フレームに形成された開口部から、前記セル本体の表面(例えば、空気極層の表面)が露出する位置関係で配置することが望ましい。
【0009】
前記金属フレームと前記ガスシール部材とは多様な位置関係で配置することができる。例えば、前記金属フレーム及び前記ガスシール部材は、それぞれの外周側の端部が平面視で同一位置になるように形成し、前記金属フレームの内周側の端部に比べて前記ガスシール部材の内周側の端部を平面視で内周寄りの位置に形成してもよい。かかる構造により、第2領域の上方に突出するガスシール部材の存在により、可撓性を有する薄型の金属セパレータが上方に撓むことによる変形を抑制することができる。
【0010】
前記金属フレームの段差構造に関連する寸法条件は特に制約されないが、例えば、前記所定の高さを、前記金
属セパレータの厚みに0.1mmを加えた値以上に設定することが望ましい。一般に、溶接接合によって形成される溶接突起部は0.1mmより十分に低い高さになるため、かかる設定によって、溶接突起部が上方のガスシール部材に接触する事態を確実に避けることができる。また例えば、前記金属セパレータは、可撓性と強度のバランスから、30μmから200μmの範囲内の厚みで形成することが望ましい。以上のような設定により、金属セパレータの厚みと溶接突起部の高さを考慮しつつ、金属フレームの段差構造を容易に形成することができる。
【0011】
前記ガスシール部材としては、ガスリーク性を維持し得る多様な絶縁材料を用いることができる。例えば、絶縁性のマイカを用いて前記ガスシール部材を形成することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の固体酸化物形燃料電池の製造方法は、前記燃料ガスに接する燃料極と、酸化剤ガスに接する空気極と、一方の面側に前記燃料極が配置され他方の面側に前記空気極が配置された固体電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とを隔離する金属セパレータを、外周側の第1領域と内周側の第2領域とに区分された枠体状の金属フレームの前記第2領域の表面に密着させた状態で溶接接合する第1の工程と、前記燃料極と前記固体電解質層と前記空気極とを一体的に積層したセル本体を、前記金属フレームと溶接接合された金属セパレータに接合する第2の工程と、絶縁性の
枠体状のガスシール部材を、前記金属フレームの前記第1領域の表面に密着配置する第3の工程とを含み、前記金属フレームは、前記第2領域の表面が前記第1領域の表面よりも所定の高さだけ低く形成された段差構造を有し、前記ガスシール部材の内周側が前記第2領域の上方に突出し、前記金属セパレータの溶接部分が前記ガスシール部材と非接触の状態となるように前記所定の高さが設定されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の固体酸化物形燃料電池の製造方法によれば、第1の工程により、金属フレームと金属セパレータとを一体化するために溶接接合を用いるので、例えば、ロウ付けを用いる場合に比べて、工程を簡素化することが可能であるとともに、段差構造の作用によりガスリーク性の劣化を防止することができる。なお、前記第1の工程では、前記金属セパレータを前記第2領域の表面に接合するための溶接接合の手法として、例えば、レーザ溶接を適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単位セルを構成する金属セパレータを金属フレームに溶接接合する際、金属フレームに段差構造を設けることで、加熱によって形成される溶接突起部が上方のガスシール部材の底面に接触しないようにしたので、ガスシール部材と金属フレームとの十分な密着性を保ちつつ、単位セルの良好なガスシール性を維持可能な固体酸化物形燃料電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の一実施形態について具体的に説明する。
図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1の側面図を示し、
図2は、
図1の固体酸化物形燃料電池1の上面図を示している。なお、
図1は、
図2の矢印A方向から見た側面図に対応する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、基本的な構成単位である燃料電池セル(以下、単位セルと呼ぶ)3を複数個積層した燃料電池スタック2を備えている。また、燃料電池スタック2は、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定されている。各ボルトB1〜B8のうち、
図2の方形平面内の四隅に位置する4個のボルトB1、B3、B5、B7は、燃料電池スタック2を固定する連結部材としてのみ用いられる。一方、各ボルトB1〜B8のうち、
図2の方形平面内の四辺に位置する4個のボルトB2、B4、B6、B8は、上記連結部材に加えて、積層方向に沿う貫通孔に連通し、それぞれ燃料ガスの流路(燃料ガス流路)又は酸化剤ガスの流路(空気流路)の一部として機能する。具体的には、ボルトB2は燃料ガス流路の入口側の燃料ガス導入管Finに連通し、ボルトB2の対向位置のボルトB6は燃料ガス流路の出口側の燃料ガス排出管Foutに連通する。また、ボルトB4は空気流路の入口側の空気導入管Ainに連通し、ボルトB4の対向位置のボルトB8は空気流路の出口側の空気排出管Aoutに連通する。
【0018】
次に、
図1の固体酸化物形燃料電池1に含まれる単位セル3の基本構造について説明する。
図3は、1個の単位セル3に関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造を示している。
図3に示す単位セル3には、発電機能を担うセル本体10を備えている。セル本体10は、下層側から順に、燃料極層11と、固体電解質層12と、空気極層13とが積層形成されてなる。また、単位セル3は、上下1対のインターコネクタ20、21と、下側のインターコネクタ20と燃料極層11との間に配置された燃料極側集電体22と、上側のインターコネクタ21と空気極層13との間に配置された空気極側集電体23と、燃料極層11の側面を取り囲む金属フレーム24と、セル本体10と一体的に接合され、燃料極層11の側の燃料ガス流路Fpと空気極層13の側の空気流路Apとを隔離する金属セパレータ25と、金属フレーム24と下側のインターコネクタ20との間に配置されたガスシール部材26と、金属セパレータ25と上側のインターコネクタ21との間に配置されたガスシール部材27と、を備えている。
【0019】
燃料極層11は、水素源となる燃料ガスに接触し、単位セル3のアノードとして機能する。燃料極層11は、セル本体10を支持する支持基体層となるので、機械的強度を確保できる程度の十分な厚みで形成することが望ましい。例えば、燃料極層11の材料としては、Ni等の金属粒子とセラミック粒子からなるサーメットを用いることができる。固体電解質層12は、イオン導電性を有する各種の固体電解質からなる。例えば、固体電解質層12の材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等を用いることができる。空気極層13は、酸素源となる空気ガスに接触し、単位セル3のカソードとして機能する。例えば、空気極層13の材料としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットを用いることができる。なお、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13は、いずれも方形(例えば、正方形)の平面形状を有する。
【0020】
以下、単位セル3内の主な構成部材の構造について、
図4〜
図9を参照して説明する。なお、
図4〜
図9は、いずれも
図2と平面内で方向が一致する。まず、下側のインターコネクタ20は下層に隣接する単位セル3との電気的接続を担い、上側のインターコネクタ21は上層に隣接する単位セル3との電気的接続を担う。
図4に示すように、インターコネクタ20、21は、例えばフェライト系ステンレスからなる薄型の金属板であり、その外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。また、下側のインターコネクタ20に接合された燃料極側集電体22は、例えば、通気性を有するNiフェルトからなり、上側のインターコネクタ21に接合された空気極側集電体23は、例えば、金属及び導電性セラミックからなる。
【0021】
下側のガスシール部材26は、例えば、マイカ等の絶縁材料からなり、単位セル3における燃料ガス流路Fpをシールする役割がある。
図5に示すように、枠体状のガスシール部材26の中央には開口部30が形成されるとともに、外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。このうち、開口部30には、方形の対向する2辺において、外縁部に延伸される各4本の切り欠きが形成されている。後述するように、開口部30に形成される切り欠きは、燃料ガス流路Fpの一部となる。なお、上側のガスシール部材27は、
図5のガスシール部材26を、平面内で90度回転させた平面構造を有するので、その説明は省略する。この場合、上側のガスシール部材27の開口部30に形成される切り欠きは、空気流路Apの一部となる。
【0022】
金属フレーム24は、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料からなり、セル本体10及び金属セパレータ25を単位セル3に固定する役割がある。
図6(A)は、金属フレーム24の平面図を示し、
図6(B)は、
図6(A)のA−A断面における側面図を示している。
図6(A)に示すように、枠体状の金属フレーム24の中央には開口部31が形成され、四方の各辺に沿って4つの開口部32が形成され、4つの角部には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。中央の開口部31は、ガスシール部材26の開口部30(
図5)の方形部分に対向しているが切り欠きは形成されていない。各辺の4つの開口部32は、インターコネクタ20(21)及びガスシール部材26(27)の各丸孔に重なる部分から辺方向の両側に延びる溝状に形成されている。
【0023】
よって、入口側のボルトB2から燃料極層11の表面を経由して出口側のボルトB6に至る燃料ガス流路Fpは、インターコネクタ20及びガスシール部材26の各2辺の丸孔と、金属フレーム24の2辺の開口部32と、ガスシール部材26の開口部30の切り欠きのそれぞれを含んで構成される。また、入口側のボルトB4から空気極層13の表面を経由して出口側のボルトB8に至る空気流路Apは、インターコネクタ21及びガスシール部材27の各2辺の丸孔と、ガスシール部材27の開口部30の切り欠き(
図5のガスシール部材26の開口部30の切り欠きを90度回転させた位置に形成)のそれぞれを含んで構成される。
【0024】
また、
図6(B)に示すように、金属フレーム24の断面構造は、外周側と内周側が異なる高さに形成されている。すなわち、金属フレーム24は、外周側の領域R1と内周側の領域R2(開口部31の周囲)とに区分され、それぞれの底面を基準として、領域R1の表面が領域R2の表面よりも高く設定されている。これにより、金属フレーム24には、高さが異なる領域R1、R2に基づく段差構造Sが形成されている。この段差構造Sは、領域R2の表面に金属セパレータ25を溶接接合するために設けたものであるが、より具体的な接合構造については後述する。
【0025】
次に、金属セパレータ25は、可撓性を有する金属材料として、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料を用いて、厚み0.02〜0.3mm程度の枠体状の薄板に形成されている。
図7に示すように、金属セパレータ25の中央には開口部33が形成されている。金属セパレータ25の全体形状は、金属フレーム24及びガスシール部材27よりサイズが小さく、さらには金属フレーム24の各領域R1、R2の境界部分よりもサイズが小さい方形である。また、金属セパレータ25の開口部33は、金属フレーム24の開口部31と対向する方形であって、金属フレーム24の開口部31よりもサイズが小さく、かつガスシール部材27の開口部30よりもサイズが大きい方形である。
【0026】
セル本体10は、
図8に示すように、方形の外周形状を有する。セル本体10は、金属セパレータ25に接合されるので、金属セパレータ25の外周形状よりサイズが小さく、かつ金属セパレータ25の開口部33よりもサイズが大きい方形の外周形状を有する。一方、セル本体10の上層の空気極層13の外周形状は、セル本体10の外周形状よりもサイズが小さく、さらには金属セパレータ25の開口部33よりもサイズが小さい方形である。これにより、
図3の断面構造を用いて説明したように、セル本体10の外周側が金属セパレータ25に接合された状態で、開口部33から空気極層13が露出可能な構造にすることができる。
【0027】
以下、
図9を参照して、本実施形態の単位セル3における特徴的な断面構造について説明する。
図9(A)は、本実施形態の単位セル3(
図3)の部分的な断面構造を示す図であり、金属フレーム24と、金属セパレータ25と、ガスシール部材27とを含む左端近傍の部分を拡大して示している。上述したように、金属フレーム24は外周側の幅W1の領域R1と内周側の幅W2の領域R2とに区分され、それぞれの表面の底面からの高さは、領域R1が高さH1で、領域R2が高さH2であり、H1>H2の関係を満たしている。金属フレーム24は、領域R1の表面がガスシール部材27の底面に密着した状態で配置される。金属フレーム24とガスシール部材27との密着性が損なわれるとガスシール性が劣化するので、領域R1の幅W1をある程度確保する必要がある。なお、
図9(A)は、ガスシール部材27の開口部30の切り欠きが形成されていない箇所の断面構造に対応する。
【0028】
また、金属フレーム24の段差構造Sは金属セパレータ25を一体的に溶接接合するために形成されている。金属フレーム24と金属セパレータ25との溶接接合は、後述する溶接工程において、領域R2の表面と金属セパレータ25の底面を接触させた状態で行われる。溶接接合により、領域R2上の金属セパレータ25の表面の所定位置には、溶接工程時の加熱による溶接突起部Pが形成される。この溶接突起部Pは、帯状の領域R2の全周にわたって形成される。
図9(A)に示すように、金属セパレータ25上の溶接突起部Pの頂点は、金属フレーム24の領域R1の高さに達していない。換言すれば、金属セパレータ25の厚さTと溶接突起部Pの高さHpは、段差構造Sの高さであるH1−H2に対し、以下の(1)式の関係を満たしている。
H1−H2>T+Hp (1)
【0029】
ここで、
図9(B)は、
図9(A)に対する比較例として、金属フレーム24に段差構造Sを設けない場合の断面構造を示している。
図9(B)の比較例では、金属フレーム24が領域R1、R2には区分されず、金属フレーム24の平坦な表面に金属セパレータ25が溶接接合され、
図9(A)と同様の溶接突起部Pが形成され、その上部にガスシール部材27が配置される構造となっている。本比較例の場合は、ガスシール部材27が溶接突起部Pに接触した状態で配置されるため、
図9(A)のような密着性を保つことは困難になる。そのため、
図9(B)の比較例では、空気流路Apからガスシール部材27と金属セパレータ25との間を経て酸化剤ガスがリークすることになり、ガスリーク性の劣化が避けられない。これに対し、
図9(A)の構造を採用すれば(1)式を満たす限り、溶接接合によって形成された溶接突起部Pが上方のガスシール部材27の底面と接触しない状態に保たれるので、金属フレーム24とガスシール部材27との密着性を損なうことなく良好なガスリーク性を確保することができる。
【0030】
一方、上記の構造に加えて、段差構造Sの上方にはガスシール部材27の内周側が突出した状態で配置されている。上述したように、金属セパレータ25の開口部33(
図7)よりもガスシール部材27の開口部30の方がサイズが小さいため、金属セパレータ25は、(1)式の関係に基づき溶接突起部Pを含めてガスシール部材27と非接触の状態を保ちつつ、上方をガスシール部材27に覆われた構造になっている。ただし、ガスシール部材27の開口部30の切り欠きの直下では、
図9(A)のような構造になっていない。このような構造により、可撓性を有する金属セパレータ25が上方に撓んだとしても、上方のガスシール部材27が金属セパレータ25の変形を規制する作用がある。
【0031】
図9(A)の構造を採用した単位セル3の一実施例において、段差構造Sに関連する寸法条件の一例を以下に挙げる。
H1=2mm
H2=1.5mm
W1=50mm
W2=3mm
T=0.1mm
【0032】
また、接合時に形成される溶接突起部Pについては、例えば、Hp=0.05mm程度が想定される。よって、上記寸法条件によれば、H1−H2=0.5mmに対し、T+Hp=0.15mmとなるから、段差構造Sにおいて溶接突起部Pとガスシール部材27の底面との間に十分なマージンを確保することができる。なお、
図9(A)では、理解の容易のため、段差構造Sの部分のサイズ(H1−H2、W2)を、実際に想定される寸法条件よりも拡大して示している。
【0033】
上述したように溶接突起部Pの通常の寸法を考慮すると、段差構造Sの高さH1−H2(本発明の所定の高さ)は、金属セパレータ25の厚みTに0.1mmを加えた値以上に設定することが望ましい。H1−H2の値が0.1mmより小さい場合は、溶接突起部Pの高さHpに対するマージンが取れなくなるためである。なお、金属セパレータ25の厚みTは、50μmから100μm(0.1mm)の範囲内に設定することが望ましい。金属セパレータ25の厚みTが大き過ぎる場合は十分な可撓性が確保できなくなり、金属セパレータ25の厚みTが小さ過ぎる場合は強度が不十分になるためである。
【0034】
次に、本実施形態の単位セル3の製造工程のうち、特徴的な構造に関連する工程について、
図10を用いて説明する。まず、周知の手法で、金属の薄板の打ち抜き加工により、
図7に示す平面構造を有する金属セパレータ25を作製する。また、周知の手法で、金属の板材の打ち抜き加工により、
図6に示す構造を有する金属フレーム24を作製する。このとき、金属フレーム24の内周側には、
図6(B)に示す段差構造Sが形成される。
【0035】
次いで、
図10(A)に示すように、金属フレーム24に対して金属セパレータ25の位置合せを行いつつ、金属フレーム24の領域R2の表面に金属セパレータ25の底面を密着させた状態で配置する。この状態で、例えば、ファイバーレーザ溶接機を用いて、上方から金属セパレータ25の外縁部にレーザ光を照射することにより、金属フレーム24と金属セパレータ25が一体的に溶接接合される。溶接接合が完了すると、領域R2の上部の金属セパレータ25の表面には、
図9(A)に示す溶接突起部Pが形成される。
【0036】
次いで、周知の手法で、支持基体層となる燃料極グリーンシートを形成するとともに、固体電解質グリーンシートを形成し、燃料極グリーンシートの上層に固体電解質グリーンシートとの積層体を形成する。続いて、得られた積層体を所定の方形形状に加工した後に焼成し、燃料極層11と固体電解質層12からなる焼結体を得る。続いて、得られた焼結体の上層の所定位置に空気極層13を積層形成することで、
図8の平面構造を有するセル本体10を作製する。
【0037】
次いで、
図10(B)に示すように、金属セパレータ25の底面にロウ材を塗布するとともに、セル本体10の固体電解質層12の外縁部の上面にロウ材を塗布する。ロウ材としては、例えば、Agを主成分として若干のPdを含有するAg系ロウ材が用いられる。この状態で、
図10(C)に示すように、金属セパレータ25とセル本体10とを位置合わせしつつ、ロウ材を加熱することによってセル本体10が金属セパレータ25に一体化される。以上のようにして得られた金属フレーム24、金属セパレータ25、セル本体10からなる部分を組み込むことにより、単位セル3を得ることができる。
【0038】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、金属フレーム24、金属セパレータ25、ガスシール部材27の材料、形状、寸法条件等については、本発明の目的を達成できる範囲で多様な設定が可能である。また、金属フレーム24と金属セパレータ25とを溶接接合する際は、ファイバーレーザ溶接機等のレーザ装置には限られず、他の手法を採用してもよい。また、セル本体10を構成する各層は、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13に限らず、多様な役割を有する機能層が含まれていてもよい。この場合、セル本体10のうち支持基体とする層も、燃料極層11には限られず他の層であってもよい。その他の点についても上記各実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更可能である。例えば、単位セル3内の各構成部材の構造、形状、材料、形成方法等については、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更することができる