特許第5679906号(P5679906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000002
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000003
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000004
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000005
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000006
  • 特許5679906-ホールセンサ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679906
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ホールセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20150212BHJP
   H01L 43/06 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   G01R33/06 H
   H01L43/06 S
   H01L43/06 D
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-113472(P2011-113472)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-32383(P2012-32383A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-153109(P2010-153109)
(32)【優先日】2010年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
(72)【発明者】
【氏名】近江 俊彦
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−233928(JP,A)
【文献】 特開平6−011556(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/116823(WO,A1)
【文献】 特開平08−102563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/07
H01L 43/06
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの凸部および4回回転軸を有する十字形上のホール素子感受部と、
前記4つの凸部のそれぞれの先端中央部に配置された同一形状を有するホール電圧出力端子と、
前記4つの凸部のそれぞれの側辺の中央部近辺に配置された制御電流入力端子と、
を有し、
前記制御電流入力端子のうち、前記側辺に沿って一直線上にならぶ1対の制御電流入力端子は配線により接続され同電位であることを特徴とするホールセンサ。
【請求項2】
前記制御電流入力端子が前記ホール素子感受部に接している長さである制御電流入力端子幅は、前記ホール電圧出力端子が前記ホール素子感受部に接している長さであるホール電圧出力端子幅に比べ大きいことを特徴とする請求項1記載のホールセンサ。
【請求項3】
前記制御電流入力端子幅は前記側辺の長さより短いことを特徴とする請求項1記載のホールセンサ。
【請求項4】
相対するホール電圧出力端子の間隔が、相対する制御電流入力端子間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のホールセンサ。
【請求項5】
前記ホール素子感受部は、P型半導体基板表面に形成されたN型不純物領域からなり、さらに、前記N型不純物領域の側面および底面を囲むように形成されたN型低濃度不純物領域からなる空乏層抑制領域を有し、
前記第1のN型不純物領域の端部に設けられた前記ホール電圧出力端子及びその両側に配置された前記制御電流入力端子はN型高濃度不純物領域からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のホールセンサ。
【請求項6】
前記制御電流入力端子及び前記ホール電圧出力端子は、前記P型半導体基板表面からの深さが前記ホール素子感受部と同じであることを特徴とする請求項5記載のホールセンサ。
【請求項7】
スピニングカレントによりオフセット電圧を除去できることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のホールセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ホール素子に関し、高感度で、かつオフセット電圧の除去が可能なホールセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
最初に、ホール素子の磁気検出原理について説明する。物質中に流れる電流に対して垂直な磁界を印加するとその電流と磁界の双方に対して垂直な方向に電界(ホール電圧)が生じる。
【0003】
図2のようなホール素子を考える。磁界に応じてホール電圧を発生するホール素子感受部1の幅をW、長さをL、電子移動度をμ、電流を流すための電源2の印加電圧をVdd、印加磁場をBとしたとき、電圧計3から出力されるホール電圧VHは
VH=μB(W/L)Vdd
と表され、このホール素子の磁気感度Khは、
Kh=μ(W/L)Vdd
と表される。この関係式よりホール素子を高感度にするための方法の1つはW/L比を大きくすることであるのがわかる。
【0004】
一方、実際のホール素子では磁界が印加されていないときでも、出力電圧が生じている。この磁場0のときに出力される電圧をオフセット電圧という。オフセット電圧が生じる原因は、外部から素子に加わる機械的な応力や製造過程でのアライメントずれなどによる素子内部の電位分布の不均衡によるものであると考えられている。
【0005】
オフセット電圧を応用上問題とならない大きさとなるように相殺するなどして補償する場合、一般的に以下の方法で行っている。
1つは、図3に示すようなスピニングカレントによるオフセットキャンセル回路を用いる方法である。
【0006】
ホール素子感受部10は対称的な形状で、1対の入力端子に制御電流を流し、他の1対の出力端子から出力電圧を得る4端子T1、T2、T3、T4を有している。ホール素子感受部の一方の一対の端子T1、T2が制御電流入力端子となる場合、他方の一対の端子T3、T4がホール電圧出力端子となる。このとき、入力端子に電圧Vinを印加すると、出力端子には出力電圧Vh+Vosが発生する。ここでVhはホール素子の磁場に比例したホール電圧を示し、Vosはオフセット電圧を示している。次に、T3、T4を制御電流入力端子、T1、T2をホール電圧出力端子として、T3、T4間に入力電圧Vinを印加すると、出力端子に電圧−Vh+Vosが発生する。以上の2方向に電流を流したときの出力電圧を減算することによりオフセット電圧Vosはキャンセルされ、磁場に比例した出力電圧2Vhを得ることができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
2つ目は、同形状のホール素子2個を直列接続し、ホール素子感受部は互いに直交する向きに近接して配置することで、応力により生じる電圧の不均衡を除去する方法がある。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−186103号公報
【特許文献2】特開昭62−208683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、ホール素子感受部に入力する2方向の電流や出力されるホール電圧が同じでなければスピニングカレントによるオフセット電圧除去ができないため、素子の形状は対称形で、4つの端子も同形状である必要がある。したがって、W/Lを大きくすることができないため、ホール素子の感度を向上できないといった課題がある。
【0010】
また、特許文献2の方法では、W/Lを任意に決めることができるため、高感度化は可能である。しかしながら、複数のホール素子を用いるため、チップサイズが大きくなり、コストアップにつながるといった課題がある。
【0011】
さらに、スピニングカレントによるオフセット電圧除去だけではオフセット電圧を除去できない場合がある。その理由を以下で説明する。
【0012】
ホール素子は、図4に示す等価回路で表される。ホール素子は、4つの端子を、4つの抵抗R1、R2、R3、R4で接続したブリッジ回路として表される。ホール素子が対称形の場合、4つの抵抗R1、R2、R3、R4の抵抗値は同一となる。しかし、実際には応力や製造上の加工精度等により異なる。前記のとおり2方向に電流を流したときの出力電圧を減算することによりオフセット電圧をキャンセルする。
【0013】
印加磁場がゼロの時を考える。ホール素子の一対の端子T1、T2に電圧Vinを印加すると、他方の一対の端子T3、T4間には、ホール電圧
Vouta=(R2*R4−R1*R3)/(R1+R4)/(R2+R3)*Vin
が出力される。一方、端子T3、T4に電圧Vinを印加すると、T1、T2にはホール電圧
Voutb=(R1*R3−R2*R4)/(R3+R4)/(R1+R2)*Vin
が出力される。2方向の出力電圧の差、つまりオフセット電圧は、
Vos=Vouta−Voutb=(R1−R3)*(R2−R4)*(R2*R4−R1*R3)/(R1+R4)/(R2+R3)/(R3+R4)/(R1+R2)*Vin
となる。ここで、右辺の分母(R1−R3)*(R2−R4)*(R2*R4−R1*R3)=0になる条件においてオフセット電圧は除去できる。したがって、オフセット電圧は各々の等価回路の抵抗R1,R2,R3,R4が異なる場合でもキャンセルできる。しかし、抵抗R1,R2,R3,R4が電流印加方向により値が異なる場合、つまり、ホール素子の一対の端子T1、T2に電圧Vinを印加する場合と端子T3、T4に電圧Vinを印加する場合とで4つの抵抗R1,R2,R3,R4の値が異なるとき、オフセット電圧Vosは前述の式が成り立たないため、キャンセルできないこととなる。
【0014】
図5は一般的なホール素子の断面図である。ホール素子感受部となるN型不純物領域102の周辺部は分離のためP型の不純物領域に囲まれている。ホール電流印加端子に電圧を印加すると、ホール素子感受部とその周辺部の境界では空乏層が広がる。空乏層中にはホール電流は流れないため、空乏層が広がっている領域ではホール電流は抑制され、抵抗は増加する。また、空乏層幅は印加電圧に依存する。そのため、図4で示す等価回路の抵抗R1,R2,R3,R4が電圧印加方向により値が変化するためオフセットキャンセル回路で磁気オフセットのキャンセルができない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のような構成をした。
ホール素子感受部の制御電流入力端子とホール電圧出力端子を独立に配置したことを特徴とする。
ホール素子の形状は、十字形状のホール素子感受部を有し、その端部にホール電圧出力端子、十字側面に制御電流入力端子を有することを特徴とする。
【0016】
配置した端子の形状は、制御電流入力端子幅は十字側面に大きくとり、ホール電圧出力端子幅は端部に小さくとることを特徴とする。
そして、ホール電圧出力端子間隔が大きく、制御電流入力端子間隔が小さいことを特徴とする。
また、スピニングカレントによりオフセット電圧を除去できることを特徴とする。
【0017】
さらにスピニングカレントによるオフセット電圧除去を可能にするため、P型半導体基板表面に形成されたN型不純物領域からなるホール素子感受部と、N型不純物領域の側面および底面を囲むように形成されたN型低濃度不純物領域からなる空乏層抑制領域と、N型不純物領域の端部に設けられたN高濃度不純物領域からなる制御電流入力端子とからなることを特徴とする。
【0018】
空乏層抑制領域であるN型低濃度不純物領域は磁気感受部のN型不純物領域よりも深く、濃度が薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記手段を用いることにより、スピニングカレントによりオフセット電圧を除去することができる。また、制御電流入力端子とホール電圧出力端子を独立に配置することにより、入力端子幅を大きくし、出力端子幅を小さくすることができる。また、ホール電圧出力端子間隔(W)を大きく、制御電流入力端子間隔(L)を小さくすることができる。これらにより、ホール素子の感度を増大させることができる。さらにホール素子1つでオフセット電圧を除去でき、チップサイズが小さく高感度なホールセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のホール素子の構成を示す図である。
図2】理想的なホール効果の原理について説明するための図である。
図3】スピニングカレントによるオフセット電圧の除去方法を説明するための図である。
図4】ホール素子のオフセット電圧を説明するための等価回路を示す図である。
図5】一般的なホール素子の断面構造を示す図である。
図6】スピニングカレントによるオフセット電圧の除去が可能なホール素子の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明のホール素子の実施例の構成を示した図である。本実施例のホール素子は4回回転軸を有する十字形状のホール素子感受部100の4つの凸部先端中央部に長方形のホール電圧出力端子111、112、113、114と各々の凸部側辺中央部近辺に長方形の制御電流入力端子121、122、123、124を有する。ここで、側辺に沿って一直線上に並んで配置される制御電流入力端子同士は金属配線により接続され同電位となるようにしてあるので、2個で一対となる。全部で四対である。
【0022】
即ち、本実施例ではホール素子に接続する端子についてホール電圧出力端子と制御電流入力端子を独立に配置した。従来の方法では、ホール電圧出力端子と制御電流入力端子の役割を同一端子に兼ねさせていたため、オフセット電圧を除去するために、それぞれの形状を機能に合わせ変化させることはできなかった。この2つの役割を合わせ持つ端子はすべて同一形状でなければならなかった。
【0023】
しかし、本発明において、ホール電圧出力端子と制御電流入力端子を独立に配置することにより、この2つの端子の形状は独立に決めることができる。オフセット電圧を除去するため、ホール電圧出力端子111,112、113,114は同一形状であり、制御電流入力端子121,122,123,124は同一形状である。
【0024】
そして、本実施例においては、ホール電圧出力端子がホール素子感受部に接する長さであるホール電圧出力端子幅を小さく、制御電流入力端子がホール素子感受部に接する端子1個分の長さである制御電流入力端子幅を大きくした。具体的にはホール電圧出力端子幅と制御電流入力端子幅との比が1:2から1:20の範囲にあるのが好ましい。制御電流入力端子幅を大きくすることにより、ホール素子感受部100内に流れる電流の均一性を向上させることができる。また、ホール電圧出力端子は導体であるので、その付近が同電位状態になってしまい、ホール効果が得られなくなってしまう。そのため、ホール電圧出力端子幅を小さくすることにより、ホール感度低下を抑制している。
【0025】
また、本発明において、ホール素子感受部の十字形状の寸法についてホール電圧出力端子間隔(W)を大きく、制御電流入力端子間隔(L)を小さく取ることによりW/L比が大きくなり、ホール感度を増大させることができる。
【0026】
さらに制御電流入力端子幅は十字形状のホール素子凸部側辺の長さより短くする。これは近隣の制御電流入力端子同士が接近しすぎることで、隣り合う制御電流入力端子間に電流が流れ、ホール素子感受部に電流が流れなくなることによる感度低下を抑制するためである。
以上のことにより、1つの素子で高感度であるホール素子を提供することができる。
【0027】
次にホール素子の構造について説明する。
ホール素子感受部は、半導体材料(例えばシリコン)を用い、電子移動度を高くして、感度を上げるため、不純物濃度を低くする。しかし、ホール素子感受部のN型不純物領域102の濃度を下げるほど、ホール素子感受部とその周辺部の境界では空乏層が大きくなる。これによりスピニングカレントによるオフセット電圧が除去できなくなることを防ぐため、本発明では図6のような構造とした。
【0028】
図6に示すホール素子は、P型半導体基板101の表面に形成されたN型不純物領域102からなるホール素子感受部と、N型不純物領域102の周囲すなわちN型不純物領域102の側面および底面を囲むように形成されたN型低濃度不純物領域103からなる空乏層抑制領域と、N型不純物領域102の端部に設けられたN型高濃度不純物領域110からなる制御電流入力端子を有する構成である。ここで、図6の断面図と図1の平面図を対比して少し説明する。図6に示すN型不純物領域102からなるホール素子感受部は、図1に示す符号100に相当しており、平面図においては正方形であって、その頂点である四隅にN型高濃度不純物領域110からなる制御電流入力端子が配置されている。なお、N型低濃度不純物領域103からなる空乏層抑制領域は、正方形のホール素子感受部の周囲に設けられるが、図1では省略している。
【0029】
磁気感受部のN型不純物領域102は深さ300〜500nm程度、濃度は1×1016(atoms/cm3)から5×1016(atoms/cm3)、空乏層抑制領域であるN型低濃度不純物領域103は深さ2〜3μm程度、濃度は8×1014(atoms/cm3)から3×1015(atoms/cm3)であることが好ましい。また、ホール電圧出力端子、制御電流入力端子部は、半導体材料表面の不純物濃度(N型)が選択的に高められ、コンタクト領域が形成されている。これにより、コンタクト領域とそこに配線される電極(配線)とを接続する。そして、各々の端子は、そこに配設される各配線を介して、電気的に接続される。制御電流入力端子及びホール電圧出力端子となるN型高濃度不純物領域110の深さは300〜500nm程度にすることが好ましい。つまり、空乏層抑制領域は磁気感受部よりも深く,濃度を薄くする。また、制御電流入力端子及びホール電圧出力端子は、ホール磁気感受部と深さを同程度にする。
【0030】
以上の関係を保つことにより空乏層抑制領域とその周辺部のP型基板領域との間の接合部で生じる空乏層に影響されず、制御電流をホール素子感受部に流すことができる。ホール素子をこのような構造にすることによりスピニングカレントによるオフセット電圧の除去ができる。
【0031】
また、本発明のホール素子の製造方法も容易である。まず、P型基板に空乏層抑制層となるN型低濃度不純物領域103を形成する。このとき、N型低濃度不純物領域103は深さ2〜3μm、濃度は8×1014(atoms/cm3)から3×1015(atoms/cm3)である。これはNウェルと同程度の濃度であり、同程度の深さである。さらに、N型低濃度不純物領域103は空乏層抑制領域として用いるため、Nウェルの製造ばらつきが大きくてもホール素子の感度やその他の特性に影響しない。そのため、他の要素のNウェルと同時に形成することができる。
【0032】
次に、ホール素子感受部であるN型不純物領域102を形成する。このとき、N型低濃度不純物領域103は深さ300〜500nm、濃度は1×1016(atoms/cm3)から5×1016(atoms/cm3)とする。この深さ、濃度の不純物領域は通常のイオン注入装置で形成可能で、Nウェルよりも濃度、深さのばらつきを小さくすることができる。ホール素子感受部をイオン注入で形成することにより、感度のばらつきの小さいホール素子を形成する。
【0033】
最後に、制御電流入力端子及びホール電圧出力端子となる高濃度不純物領域を形成する。高濃度不純物領域は深さ300nm〜500nmであり、他の要素と特に異なる工程を必要とせず、容易に形成可能である。
【0034】
次にオフセット電圧の除去方法について説明する。
まず、制御電流入力端子121、122間に電圧Vddを印加し、制御電流を流す(電流方向1)。電流が流れると、ホール電圧出力端子111、112間にホール電圧が生じる。ここでホール電圧出力端子111、112間に出力される電圧には、磁場の大きさに比例したホール電圧とオフセット電圧を含まれており、出力電圧をV34、ホール電圧をVH34、オフセット電圧をVos34とすると、
V34=VH34+Vos34
と表すことができる。
【0035】
次に、制御電流入力端子123、124間に電圧Vddを印加し、制御電流を流す(電流方向2)。電流が流れると、ホール電圧出力端子113、114間にホール電圧が生じる。ホール電圧出力端子113、114間に生じる電圧には、磁場の大きさに比例したホール電圧とオフセット電圧を含まれており、出力電圧をV12、ホール電圧をVH12、オフセット電圧をVos12とすると、
V12=VH12+Vos12
と表すことができる。
【0036】
ここでホール素子の形状は図1で示すように対称な十字形状で、ホール感受端部のホール電圧出力端子111、112、113、114及びホール素子感受部側面の制御電流入力端子121、122、123、124は同一形状で対称に配置している。そのため、生じるホール電圧VHは、電流を電流方向1で流した場合のホール電圧V12と電流方向2で流した場合のホール電圧V34の関係は、電流方向が異なるだけで、流す電流量やホール電圧出力端子間隔等は同じであるため、
VH=VH34=−VH12
とすることができる。オフセット電圧Vosについても同様のことが言えるので、
Vos=Vos34=Vos12
とすることができる。
【0037】
つまりホール電圧出力端子111、112間に生じる電圧V34とホール電圧出力端子113、114間に生じる電圧V12は、
V34=VH+Vos
V12=−VH+Vos
と表される。
【0038】
この電流方向1で得られた出力電圧V34と電流方向2で得られた出力電圧V12を減算させた電圧Voutは
Vout=V34−V12=2VH
となりオフセット電圧が除去され、2倍のホール電圧を得ることができる。
【0039】
以上により、図1のような構成により、チップサイズが小さく、高感度でオフセット電圧を除去できるホールセンサが実現できる。
【符号の説明】
【0040】
1、10、100 ホール素子感受部
101 P型半導体基板
102 N型不純物領域
103 N型低濃度不純物領域
110 N型高濃度不純物領域
111、112、113、114 ホール電圧出力端子
121、122、123、124 制御電流入力端子
2、12 電源
3、13 電圧計
11 切替信号発生器
S1、S2、S3、S4 センサー端子切替手段
T1、T2、T3、T4 端子
R1、R2、R3、R4 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6