【実施例】
【0052】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。
図1は本発明によるLED微少点灯時間制御回路の実施例であり、前記
図7に示した従来技術を基本にして実施する時の例を示している。即ち
図1に示す例に於いては、前記
図7に示す従来例と同様に、昇圧定電流回路で、3直列2並列のLEDの点灯制御を行う例を示しており、バッテリ1からの電流をLED2に対して、FET3で制御を行いながら電流を供給している。
【0053】
図1の回路例では、このFET3はLED制御部4のFETドライバ5によって駆動制御している。このLED制御部4にはLED2に所定の電流が流れるように定電流ドライバ6を備え、図示する2並列の第1LED列11と第2LED列12について、それぞれ第1定電流ドライバ8と第2定電流ドライバ9によって、電流設定/PWM設定部10で設定されるPWMパルスにより、所定の設定電流が供給されるようにしている。
【0054】
ここでは第1LED列11と第2LED列12の各々について、誤差増幅器7によってそれぞれの誤差を検出、増幅し、それぞれが所定の電流となるように、FETドライバ5の設定の元で、PWM制御しながらフィードバック制御を行っている。この制御に際しては、バッテリ1の電圧を取り込んで、特に車両用バッテリで生じ易いLEDへの供給電圧の変動を監視し、また同じバッテリ1の電圧をマイコン用の電源回路13を介して取り込んでいるマイコン14が、LED制御回路4内の各部の検出値等を取り込んで、所定のソフトウェアによって制御を行っている。
【0055】
図1に示す実施例の回路に於いては、前記のような従来のLED点灯制御回路の構成を前提に、
図7の従来例における第1定電流ドライバ58と第2定電流ドライバ59がそれぞれLED制御部54外に於いて直接接地していた部分に、電流遮断調整器15を設けている。
【0056】
図1に示す電流遮断調整器15に於いては、従来から用いられているLED制御部4の回路素子部分とは別に、その内部の第1定電流ドライバ8の接地部分に第1電流遮断調整トランジスタ16を設け、同様に第2定電流ドライバ9の接地部分に第2電流遮断調整トランジスタ17を設けている。なお、この電流遮断トランジスタは、広く用いているトランジスタ機能を行う素子であるならば、例えばFETを含め各種のものを用いることができる。
【0057】
これらの第1電流遮断調整トランジスタ16及び第2電流遮断調整トランジスタ17は、それぞれマイコン14により、後述するタイミングで駆動され、それぞれPWMパルスが最小点灯時間でON作動している時に各定電流ドライバが定電流を供給している時でも、強制的にOFFすることができるようにしている。
【0058】
上記回路構成で、各部の出力波形を従来のものと比較して示したものが
図2の波形図である。同図の(1)は従来の波形であり、(2)は本発明の波形である。また、同図に於いて(a)は
図1に示すようにマイコン14からLED制御部4の電流設定/PWM設定部10に入力するPWMパルスの電圧波形であり、(b)はマイコン14から電流遮断調整器15に入力するPWMパルスの電圧波形である。また、(c)は定電流ドライバ6によって定電流制御された波形であり、(d)はその定電流制御された波形が電流遮断調整器15によって遮断調整された波形である。
【0059】
図2に示す波形図から明らかなように、(a)に示すPWMパルスは前記のように25μsecと、(1)の従来のものと、(2)の本発明のものとは同一であり、それに対して(b)の電流遮断調整器における波形は(2)の本発明でのみ出力される。
図2に示す電流遮断調整器のパルス波形に於いては、(a)のPWMパルスの波形のON時点よりも例えば10μsec等の所定時間早くONさせており、それによりその後にONするPWMパルスの作動に影響を与えないようにしている。
【0060】
図2の(b)に示す電流遮断調整器の作動パルスは、そのOFF時点に於いて定電流ドライバ6のトランジスタの接地を遮断することによって作動を停止するものであり、したがってそのOFF時点によってLEDの供給電流の調整が可能となる。したがって同図(c)に示すように、電流遮断調整器が存在しない従来のものに於いては、(1)のように前記従来技術で述べた最小点灯時間である12μsecより小さくできなかったのに対して、本発明に於いては同図(2)(c)に示すように、最小点灯時間の確保に必要なPWMパルスのパルス幅を狭くすることなく、最小点灯時間を12μsec以下の任意の点灯時間に制御可能となる。
【0061】
電流遮断調整器15におけるパルスは前記のような作動を行うため、その作動パルスのOFF時点は、最小点灯時間を従来のものよりも短時間にするためのパルスであることから、(a)のPWMパルスのOFF時点より早くOFFする時点の所望の時点に設定され、且つ、最小点灯時間を制御するものであることから、(c)の定電流ドライバで得られる12μsecの遅延時間、及び1μsecの立ち上がり時間後に定電流になる時点の後の時点に設定される。
【0062】
本発明における
図1に示すようなLED点灯制御回路に於いて、
図2に示すような電流遮断調整器による、従来の最小点灯時間よりも小さなLED点灯時間の制御を行うためには、例えば
図3に示すような作動フローにより本発明を実施することができる。即ち、
図3に示すLEDの最小点灯時間以下の点灯制御処理の例に於いては、最初LEDの点灯希望時間の入力から行っている(ステップS1)。
【0063】
この時の点灯希望時間については、このLEDが使用されるLCDに於いて、画面の状態により、更には周囲の明るさ等により画面全体、或いは画面の一部でバックライトの明るさを変更する時、その希望する明るさの指示を入力することとなる。したがって多くの場合はLCDの表示に対する利用者の指示、或いは各種の自動的な明るさ指示信号を入力することとなる。
【0064】
次いで点灯希望時間に応じたPWMパルス幅(Wa)を演算する(ステップS2)。この作動は使用しているLEDの特性も考慮して、従来から用いられている手法によって行われる。次いで
図3の例では演算したPWMパルス幅(Wa)は予め設定されている最小点灯時間のパルス幅(Wm)より小さいか否かを判別している(ステップS3)。
【0065】
したがってこのステップS3に於いては、前記従来技術で述べたように、現在広く用いられている点灯制御用のICでは、前記のような理由により25μsec程度であるので、ここでは点灯希望時間に対応するパルス幅(Wa)が25μsecより小さいか否かの判別を行うこととなる。
【0066】
このステップS3に於いて、点灯希望時間のPWMパルス幅(Wa)が、予め設定されている最小点灯時間のPWMパルス幅(Wm)より小さくはない、と判別した時には、ステップS13に進んで、点灯希望時間に対応したPWMパルスを出力して、LEDを点灯制御し、以降はステップS1に戻って新たなLEDの点灯希望時間の入力を行い、前記作動を繰り返す。
【0067】
このステップS13の処理は従来の処理と同様の処理を行うものであるが、本発明においては、PWMパルスを希望点灯時間よりも充分大きなパルス幅で出力しておき、電流遮断調整器のOFF時刻を希望点灯時間に合わせるように出力することにより作動させることも可能であり、その際には通常のPWMパルスによる点灯制御を行う時においても、従来のものよりきめの細かな解像度の高い点灯時間制御が可能となる。
【0068】
ステップS3に於いて、点灯希望時間のPWMパルス幅(Wa)が、予め設定されている最小点灯時間のPWMパルス幅(Wm)より小さいと判別した時には、ステップS4に進んで、次に出力するPWMパルスを、設定された最小点灯時間に対応して出力するON時刻(tpn)とOFF時刻(tpf)を演算する。
【0069】
上記作動は
図4に示すように、同図(a)のような最小点灯時間に対応したPWMパルスのパルス幅がWmであるとき、
図2のステップS2で得られた点灯希望時間に対応するパルス幅が
図4(b)のようにWaであり、それによりステップS3で、点灯希望時間のPWMパルス幅(Wa)が、予め設定されている最小点灯時間のPWMパルス幅(Wm)より小さいと判別され、その後ステップS4の作動に於いて、同図(c)に示すように、設定された最小点灯時間に対応して出力するPWMパルスのON時刻(tpn)とOFF時刻(tpf)を演算することとなる。この時のON時刻は、多くの場合PWMパルスの所定の周波数でパルスをONする時刻となり、OFFする時刻はその後最小点灯時間に対応したPWMパルス幅であるWm後の時刻となる。
【0070】
図3に於いてその後、演算したPWMパルスのON時刻(tpn)より所定時間(Wb)だけ前の、電流遮断調整器作動用パルスのON時刻(tsn)を演算する(ステップS5 。この作動は
図4(d)に示すように、同図(c)のPWMパルスがONする時刻であるtpnよりも、例えば10μsec等の適宜設定した時間(Wb)だけ前の時刻であるtsnを電流遮断調整器の作動用パルスのON時刻とする。
【0071】
この時の適宜設定する時間(Wb)は、電流遮断調整器のON作動とPWMパルスのON作動が同時であることによる作動干渉を防止するものであり、したがってその観点から任意の時間を設定することができる。したがって、定電流ドライバ等の作動に影響を与えないときには同時にONするように設定することもできる。
【0072】
その後ステップS6に於いて、演算したPWMパルスのON時刻(tpn)から、点灯希望時間に応じたPWMパルス幅(Wa)でOFFする時刻に相当する、電流遮断調整器作動用パルスのOFF時刻(tsf)を演算する。この作動は
図4(d)に示すように、前記PWMパルスのON時刻(tpn)から、点灯希望時間(Wa)に応じたPWMパルス幅(Wa)でOFFする時刻(tsf)を演算することによって行っている。
【0073】
次いで
図3の例においては、ステップS7において、演算した電流遮断調整器の作動パルスのOFF時刻(tsf)は、PWMパルスのON時刻(tpn)から遅延して定電流になる定電流開始時刻(trn)より後か否かを判別している。この作動に際しては、
図4(e)に示すように、定電流ドライバが時刻tpnからPWMパルスによって作動を開始し、その後定電流設定がなされ、次いで定電流ドライバーが作動し、電流引き込みが行われる一連の作動処理によって作動遅れが生じる。
【0074】
したがってこれらの処理による遅延時間は制御ICの特性によって異なるが、前記のように広く用いられている制御ICにおいては13μsec程度であり、これは予めわかっている値である。図示の例では時刻tpnから作動を開始し、予め設定される時間Wcの遅延時間後の、時刻trnに定電流になっていることを示している。
【0075】
したがって、前記ステップS7においては、
図4(d)で得られた電流遮断調整器の作動パルスのOFF時刻(tsf)は、前記定電流開始時刻(trn)より後か否かを判別し、定電流開始時刻よりも前であった時には、希望点灯時間に対応した電流遮断調整器での最小点灯時間の制御を行うことができないため、その際は
図3のステップS14に進み、電流遮断調整器作動用パルスのOFF時刻を、定電流ドライバでの最小定電流調整時間となる、定電流開始時刻(trn)に設定する。以降はステップS1に戻って前記作動を繰り返す。
【0076】
ステップS7 において、演算した電流遮断調整器の作動パルスのOFF時刻(tsf)は、PWMパルスのON時刻(tpn)から遅れて定電流になる定電流開始時刻(trn)より前であると判別した時には、ステップS8以降に於いて、前記演算した各時刻に対応した作動を順に行うこととなる。
【0077】
図3の例においてはステップS8において、
図4に示すように時刻tsnになったとき、電流遮断調整器の作動をONする。次いで時刻tpnにおいて、PWMパルスをONして定電流ドライバの作動を開始する。但し定電流ドライバでは作動遅れ後に定電流制御がなされることは前記のとおりである。
【0078】
その後ステップS9で、時刻trnにおいて定電流ドライバが定電流となり、次いでステップS11において、時刻tsnで電流遮断調整器がOFF作動して、定電流ドライバがOFFする。その後ステップS12において、時刻tpfでPWMパルスがOFFになる、という一連の作動が行われ、以降はステップS1に戻って前記作動を繰り返す。この作動によって
図4(f)に示すような、従来の最小点灯時間よりも小さなパルス幅で、正確な点灯作動の制御を行うことが可能となる。
【0079】
また、上記のような作動を行うことにより、
図5に示すような点灯時間とLCD輝度の関係について、従来の最小点灯時間よりも小さな点灯時間にすることによる各制御IC特有の曲線での作動は本発明によって無くなり、最小点灯時間よりも小さな点灯時間においても両者の比例関係を維持することができる。
【0080】
本発明で用いている電流遮断調整器は、例えば
図6に示すような種々の態様で実施することができる。即ち、同図(a)には前記
図1の一部を省略した回路図を示しており、同図における電流遮断調整器15においては、定電流ドライバ6の第1定電流ドライバ8と第2定電流ドライバ9のLED制御部4外に引き出されるアース線部分を結合し、その結合部分から接地部分の間に1個の第1電流遮断調整トランジスタ16を設けて、これをマイコンにより制御することによっても実施することができる。それにより前記の
図1に示す回路より電流遮断調整トランジスタを減らすことができ、安価なものとすることができる。
【0081】
また、
図6(b)に示す実施例においては、電流遮断調整器15をLED制御部4内に組み込んでいる。同図の実施例においては、前記(a)の実施例と同様に、第1定電流ドライバ8と第2定電流ドライバ9のアース接続線部分をLED制御部4内で結合し、その結合部分以降に1個の第1電流遮断調整トランジスタ16を設けると共に、そのアース線をLED制御部4外に引き出して接地している。それにより、予めLED制御部4としての制御回路に組み込んでおくことができ、LED制御部4の定電流回路で安定して作動し、また安価なものとすることができる。