(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクセル操作により回転数を上げることが可能なディーゼルエンジンと、前記ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生手段とを備えた作業機であって、
前記フィルタ再生手段は、
前記フィルタに堆積した粒子状物質の堆積量が第1の堆積量閾値以上になったときに、前記フィルタ装置に堆積した粒子状物質を自動的に燃焼させて除去する自動再生を行う第1の再生制御モードと、
前記自動再生を行っている場合であって、前記粒子状物質の堆積量が前記第1の堆積量閾値よりも高い第2の堆積量閾値以上になったときに、前記ディーゼルエンジンの回転数を上げることを要求する第2の再生制御モードと、を有することを特徴とする作業機。
前記要求がなされている段階で前記粒子状物質の堆積量が前記第2の堆積量閾値よりも高い第3の堆積量閾値以上になると、前記ディーゼルエンジンに対して出力を所定範囲に制限するように指示する第3の再生制御モードを有することを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら、本発明の各実施形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の作業機は、ディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)を備えたものである。作業機としては、バックホーやコンパクトトラックローダ(CTL)などの建設機械、及びトラクタなどの農業機械があるが、本実施形態では、作業機の一例としてバックホーを説明する。
【0015】
図8は、バックホー1の概略構成を示す側面図である。
図8に示すように、バックホー1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とを備えている。
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備えたクローラ式走行装置である。また、走行装置2の前部にはドーザ5が設けられている。
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング6を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台7と、旋回台7の前部に備えられた作業装置8(掘削装置)とを有している。旋回台7上には、ディーゼルエンジン9、ラジエータ、運転席10、燃料タンク、作動油タンク、作動油タンクからの作動油を制御する制御弁等が設けられている。運転席10の周囲には、バックホー1に関する様々な情報を表示する表示装置11が設けられている。運転席10は、旋回台7上に設けられたキャビン12により囲まれている。
【0016】
作業装置8は、旋回台7の前部に設けられた支持ブラケット13に左右揺動自在に支持されたスイングブラケット14と、上下揺動自在となるように基部側がスイングブラケット14に支持されたブーム15とを備えている。ブーム15の先端側には、前後揺動自在となるようにアーム16が支持されており、アーム16の先端側に、スクイ・ダンプ動作が可能となるようにバケット17が設けられている。
【0017】
スイングブラケット14は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動される。ブーム15は、ブーム15とスイングブラケット14との間に介装されたブームシリンダ18の伸縮によって揺動される。アーム16は、アーム16とブーム15との間に介装されたアームシリンダ19の伸縮によって揺動される。バケット17は、バケット17とアーム16との間に介装されたバケットシリンダ20の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。
【0018】
スイングシリンダ、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、及びバケットシリンダ20の各シリンダは、制御弁によって流量が制御された作動油によって伸縮動作するように構成されている。
ここで
図2を参照しながら、運転席10の周囲に設けられた表示装置11について説明する。
【0019】
図2に示すように、表示装置11は、液晶パネル112と、LED表示部113とを備えている。液晶パネル112は、液晶表示によって文字や図形を自由に表示できると共に、表示する文字や図形を自在に変更することが可能である。例えば、
図2において、液晶パネル112の左側には、燃料の残量を棒グラフ状のゲージで示す燃料計が表示されており、ゲージの長さ、つまり棒グラフの長さが燃料の残量に対応している。また、液晶パネルの右側には、冷却水の水温をゲージで示す水温計が表示されており、現在の水温を示すカーソルが水温に応じて上下に移動する。
【0020】
さらに
図2において、液晶パネル112の中央部には、現在DPFの自動再生が行われていることを表すアイコンAと、DPF(ディーゼルパーティキュレートフィルタ)の再生に関する注意を喚起する文字情報が表示されている。液晶パネル112に表示される情報の種類や、図形や文字などの表示形態の選択は任意である。
LED表示部113は、LED素子の点灯、消灯、点滅によって、後述する制御部46(エンジンECU32及びメインECU33)に接続された各センサで検出された検出情報を表示するものである。詳しくは、LED表示部113として、何らかの警告が発せられていることを示す警告LED表示部113a、エンジン油圧の警告を示す油圧LED表示部113b、バッテリの充電状態の警告を示すバッテリLED表示部113c、速度警告を示す速度LED表示部113d、排気温度の警告を示す排気LED表示部などがある。これらLED表示部113は、点灯、消灯、点滅だけでなく、点灯時間、消灯時間、点滅間隔、点灯時の明るさを変更することによっても自由に表示の形態を変えることができる。
【0021】
このように
図2では、液晶パネル112を備えている表示装置11を示しているが、表示装置11は、上記の表示が可能なものであれば、液晶パネル112にて表示するものに限定されない。
図1は、ディーゼルエンジン9及びディーゼルエンジン9の排気系の構造を示した図である。まず、ディーゼルエンジン9の排気系について説明する。なお、ディーゼルエンジン9は、複数のシリンダ(気筒)を有する多気筒エンジンである場合が多いが、
図1では、そのうちの1つのシリンダ34の構成を示し説明する。
【0022】
図1に示すように、ディーゼルエンジン9のシリンダ34の上部には、シリンダ34内に空気を導入するための開口である吸気ポート35が形成されると共に、燃焼後のガス(燃焼ガス)をシリンダ34から排出するための開口である排気ポート36が形成されている。さらにシリンダ34の上部には、吸気ポート35を開閉するための吸気バルブ37と、排気ポート36を開閉するための排気バルブ38とが設けられている。
【0023】
吸気ポート35には、シリンダ34内に導入される空気の流路となる管状の吸気マニホールド39が接続されている。また、排気ポート36には、シリンダ34から排出される燃焼ガスの流路となる管状の排気マニホールド30が接続されている。排気マニホールド30の端部には排気音を低減するためのサイレンサ40が設けられていて、燃焼ガスはサイレンサ40を通過して環境中に排出される。
【0024】
排気マニホールド30において、排気ポート36とサイレンサ40との間には排出ガス浄化装置31が設けられている。排出ガス浄化装置31は、通過する燃焼ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して浄化するものである。つまり、シリンダ34から排気ポート36を経て排出された燃焼ガスは、排出ガスとして排気マニホールド30を通り、排出ガス浄化装置31で浄化されてサイレンサ40に至る。
【0025】
この排出ガス浄化装置31は、内部にディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)41を有している。DPF41は、排出ガスに含まれる粒子状物質PMを捕集するためのフィルタであり、例えば、セラミック製又は金属製で断面がハニカム構造となるように形成されている。つまり、DPF41の一端から他端にわたる長手方向に沿って、例えば六角柱のストロー状の多角形貫通孔が多数隣接しており、各貫通孔内には、DPF41の長手方向に沿って所定間隔で多孔質の隔壁が設けられている。このようなハニカム構造を有するDPF41は、貫通孔内に形成された隔壁のDPF41の長手方向における位置が、隣り合う貫通孔に形成された隔壁の位置とは異なるように構成されている。
【0026】
DPF41の一端側から進入した排出ガスは、貫通孔内に形成された多孔質の隔壁を通過しつつDPF41の他端側へ向かって流れる。排出ガスに含まれる粒子状物質は、多孔質の隔壁に付着したり、貫通孔の内壁に付着したりすることでDPF41に捕集されて堆積する。つまり、DPF41は、堆積した粒子状物質の量が多くなると目詰まりを起こす構造を有しているので、粒子状物質の堆積量(PM堆積量)が多くなり過ぎないように適宜クリーニングをしなくてはならない。
【0027】
本実施形態では、このDPF41のクリーニングを「DPFの再生」といい、そのための動作を「DPFの再生動作」という。DPF41の再生では、DPF41の温度を所定温度以上に上昇させることで堆積した粒子状物質を燃焼させてガス化し、排出ガスとともに環境中に排出する。
排出ガス浄化装置31は、このDPF41の他に、図示しないが、粒子状物質中の燃料及び燃焼ガス中の窒素酸化物を酸化するための酸化触媒などを有している。
【0028】
排出ガス浄化装置31の入側には、排出ガス浄化装置31の入口付近の排気圧力を検出する入側圧力センサ42が設けられ、出側には出口付近の排気圧力を検出する出側圧力センサ43が設けられている。入側圧力センサ42及び出側圧力センサ43は、例えば圧電素子などで構成される一般的な圧力センサである。入側圧力センサ42及び出側圧力センサ43は、次に説明する差圧センサ44に接続されている。
【0029】
差圧センサ44は、入側圧力センサ42が検出した排気圧力と、出側圧力センサ43が検出した排気圧力とから、排出ガス浄化装置31の入側と出側での排気圧力の差、つまり差圧を検出する。一般に、DPF41に粒子状物質の堆積がなく目詰まりがない場合、DPF41による圧力損失は非常に小さいので、入側圧力センサ42と出側圧力センサ43が検出した排気圧力の差はわずかであり、差圧センサ44が検出する差圧も小さな値となる。しかし、DPF41に粒子状物質が堆積し目詰まりの程度が大きくなってくると、DPF41による圧力損失が大きくなるので差圧センサ44が検出する差圧も大きくなる。この差圧の大きさは、DPF41の目詰まりの程度に対応するので、差圧の大きさを、DPF41の目詰まりの程度、すなわちDPF41におけるPM堆積量に換算することができる。
【0030】
図1に示すように、ディーゼルエンジン9と排出ガス浄化装置31とをつなぐ排気マニホールド30には、ディーゼルエンジン9から排出されて排出ガス浄化装置31へ向かう燃焼ガスの温度(排気温度)を検出する排気温度センサ45が設けられている。排気温度センサ45は、例えばサーミスタなどから構成されている。上述のような差圧センサ44が検出した差圧や、排気温度センサ45が検出した排気温度は、制御部46へ送られる。
【0031】
制御部46は、バックホー1を制御するものであって、複数の制御装置(ECU)から構成されたもので、例えば、ディーゼルエンジン9を制御するエンジンECU32と、バックホー1全体の動作を制御するメインECU33とを有している。エンジンECU32及びメインECU33は、例えば、CPU等から構成されている。
エンジンECU32は、ディーゼルエンジン9や動力伝達系の各所に設置したセンサから情報を得て、ディーゼルエンジン9の状態に応じた最適な燃料噴射量や噴射時期、点火時期、アイドル回転数などを演算してディーゼルエンジン9等に制御指令を出すものである。例えば、運転席10の周囲に設けたアクセルを操作すれば(アクセル操作を行うことによって)、エンジンECUがアクセルの操作量(開度)を検出して燃料噴射量などを増加させる。このようにして、ディーゼルエンジン9のエンジン回転数を上昇させることができる。
【0032】
エンジンECU32に情報を提供するセンサとしては、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、排出ガス浄化装置31の差圧を検出する差圧センサ44、排気温度を検出する排気温度センサ45、吸入空気量を検出するためのエアフロメータ、エンジン回転数を検出するためのクランクポジションセンサ、冷却水の水温を検出するための水温センサ、バルブの開度を検出するためのスロットルポジションセンサなどがある。これら以外にも、クランク位置を検出するためのカムポジションセンサ、吸入空気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサなどがある。
【0033】
メインECU33は、エンジンECU32と連携しながらバックホー1に備えられた各種装置(走行装置、作業装置など)を制御するものである。例えば、メインECU33では、スイングシリンダ、ブームシリンダ18、アームシリンダ19及びバケットシリンダ20などの各シリンダに所定の作動油を供給する流量制御を行う。
この流量制御は、運転席10の周囲に設けられた操作部材(操作レバー)の操作量に基づいて行うもので、詳しくは、操作レバーを中立位置より一方(左側)に揺動させて左側の操作量を入力すると、操作したアクチュエータ(スイングシリンダ、ブームシリンダ18、アームシリンダ19及びバケットシリンダ20)に対応する電磁比例弁のソレノイドに所定値の電流(作動信号)を出力する。そうすると、電磁比例弁は電流値に応じて開き、操作したアクチュエータに対応する制御弁のパイロット圧が制御され、アクチュエータが一方に動作する。操作レバーを中立位置より上記とは反対側に揺動させて右側の操作量を入力すると、左側に揺動したときとは反対側にアクチュエータを動作させる。このように、操作レバーを操作することによって、バックホー1を作動させることができる。
【0034】
また、メインECU33は、運転席10の周囲に設けられたメータ及びモニタ等であってバックホー1の動作状態を表示する表示装置11を含むバックホー1全体の動作を制御するものでもある。本実施形態におけるメインECU33は、排出ガス浄化装置31のDPF41を再生するためのフィルタ再生手段47を有している。フィルタ再生手段47は、メインECU33で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。
【0035】
ここで、表示装置11、エンジンECU32、及びメインECU33は、互いにController Area Network(CAN通信)などの車両用通信ネットワークNを介して接続されていて、相互にデータの送受信が可能である。なお、車両用通信ネットワークは、表示装置11、エンジンECU32、及びメインECU33間でデータを送受信できるものであれば特に規格を限定するものではない。例えば、FlexRay(フレックスレイ)であっても、その他のネットワークであってもよい。
【0036】
図2は、フィルタ再生手段47の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、フィルタ再生手段47は、DPF41に堆積する粒子状物質の堆積量(PM堆積量)を取得する堆積量取得手段50と、この堆積量取得手段50によって取得したPM堆積量に基づいてDPF41の再生を行うフィルタ再生制御手段60とを備えている。
堆積量取得手段50は、エンジンECU32から、排出ガス浄化装置31の差圧(差圧センサ44で検出した値)、排気温度センサ45で検出した排気温度、冷却水の水温、吸入空気中の酸素濃度、燃料の噴射量などの情報を得て、DPF41に堆積する粒子状物質の堆積量を算出し取得する。
【0037】
フィルタ再生制御手段60は、DPF41を再生するための再生動作を複数の態様(モード)に分けて段階的に行うものであり、具体的には、第1の再生制御モード51、第2の再生制御モード52、第3の再生制御モード53との3つのモードで再生動作を段階的に行う。つまり、フィルタ再生制御手段60は、堆積量取得手段50が取得したPM堆積量に応じて第1の再生制御モード51〜第3の再生制御モード53のうち動作させる再生制御モードを決定し、決定した各再生制御モードにてDPF41の再生を行う。
【0038】
例えば、フィルタ再生制御手段60は、PM堆積量に応じて再生制御モードを決定のための基準となる所定値として4つの閾値を有している。これら4つの閾値は、値が小さなものから順に、警告解除閾値、閾値TH1(第1の堆積閾値)、閾値TH2(第2の堆積閾値)、閾値TH3(第3の堆積閾値)である。これら4つの閾値は、実行されるDPF41の再生動作の内容に対応した再生制御レベルに対応している。このフィルタ再生制御手段60は、堆積量取得手段50にて算出したPM堆積量と、上記4つの閾値と比較して、現在のPM堆積量がどの閾値の間にあるのかを判断した上で、該当する再生制御レベルを決定する。
【0039】
図3は、経過時間に対する粒子状物質の堆積量(PM堆積量)の変化の一例を表すグラフである。
図3を用いてDPF41の再生について詳しく説明する。
バックホー1のディーゼルエンジン9が始動すると、堆積量取得手段50は、継続的にDPF41のPM堆積量を算出し取得する。
図3のグラフでは、原点側からスタートしてディーゼルエンジン9の稼働時間の増加に従ってPM堆積量が増加している。
【0040】
まず、堆積量取得手段50がPM堆積量を算出すると、フィルタ再生制御手段60は、取得したPM堆積量と、警告解除閾値、閾値TH1、閾値TH2、及び閾値TH3の4つの閾値との比較を行う。
PM堆積量が閾値TH1未満であるとき、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel0とし、Level0であるときはDPF41の再生を必要としないと判断して、DPF41の再生を行わない(DPF41の再生を開始しない)。
【0041】
次に、PM堆積量が閾値TH1以上閾値TH2未満となったとき、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel0からLevel1に移行(シフト)する。Level1以上では、PM堆積量がDPF41の自動再生を開始しなくてはならない程度となっていることを示すものである。フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルがLevel1となったことを受けて、DPF41の自動再生を行うための第1の再生制御モード51を選択して、第1の再生制御モード51における自動再生のための指令を制御部46等に出力し、DPF41の再生を行う。自動再生の動作として例えばディーゼルエンジン9の吸気スロットルが絞られ、この吸気スロットルの絞りによって排気温度が上昇する。
【0042】
第1の再生制御モード51では、粒子状物質の堆積量が閾値TH1以上(再生制御レベルがLevel1)になった場合に、DPF41の自動再生を開始し、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去する。
さらに、第1の再生制御モード51では、表示装置11に対して自動再生が実行されていることを示すアイコンAを表示させ、連続的な警告音を発生させる。
【0043】
上述したように、自動再生とは、バックホー1を操作している作業者に対して特別な操作を要求しない再生動作のことであって、バックホー1が独自に、つまり作業者から見れば自動的にDPF41の温度を上昇させて堆積した粒子状物質を燃焼させようとする動作である。
次に、自動再生の開始後、Level1における第1の再生制御モード51の実行にもかかわらず、PM堆積量が閾値TH2以上閾値TH3未満となったとき、排気温度を上昇させてDPF41の自動再生をさらに効率的に行うために、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel1からLevel2に移行(シフト)し、第2の再生制御モード52に移行する。
【0044】
第2の再生制御モード52では、自動再生は継続して行いつつ、ディーゼルエンジン9の回転数を上げることを要求する警告を発する。ここで、エンジン9の回転数を上げるとは、少なくともアイドリング回転数以上にエンジンの回転数を上げることであって、好ましくは、エンジン回転数を、アイドリング回転数の2倍以上にすることである。
具体的には、第2の再生制御モード52では、作業者に対して、エンジン回転数を、例えば1800回転以上に上昇させることを指示するアイコンBを表示装置11に表示させて、かつ間欠的な警告音を発生させる。第2再生制御モード52であるとき、作業者がこの表示及び警告音に従ってアクセル操作をして、エンジン回転数を所定の回転数以上(アイドリングの回転数よりも高い回転数であって、例えば、1800回転以上)に上昇させた場合は、さらに排気温度が上昇することとなり、DPF41に堆積した粒子状物質の燃焼が促進されてPM堆積量が減少する。ここで、PM堆積量が警告解除閾値を下回れば、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel0に戻し、DPF41の自動再生及び表示装置11でのアイコンA及びアイコンBの表示を終了する。
【0045】
さて、エンジン回転数を上昇させなかったときなど、PM堆積量がさらに増加して、PM堆積量が閾値TH3以上となった場合、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel2からLevel3に移行(シフト)し、第3の再生制御モード53に移行する。
第3の再生制御モード53では、第2の再生制御モード52によって警告が発せられている段階でPM堆積量が閾値TH2よりも高い閾値TH3以上になると、ディーゼルエンジン9に対して出力を所定範囲に制限するように指示する再生動作のことである。この第3の再生制御モード53では、自動再生を継続しつつ、エンジンの出力を制限する。
【0046】
第3の再生制御モード53である場合、フィルタ再生制御手段60は、ディーゼルエンジン9の最大出力を所定値以下(例えば、規定最大出力の50%以下)に制限する馬力制限をエンジンECU32に指示すると共に、表示装置11に対してPM堆積量が多くなりすぎていることを示すアイコンを表示させて連続的な警告音を発生させる。
このLevel3においても、Level2と同じく、エンジン回転数を上昇させることを指示するアイコンBを表示装置11に表示させている。作業者が、この警告に従ってエンジン回転数を上昇させ、PM堆積量が警告解除閾値を下回れば、フィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルをLevel0に戻し、DPF41の自動再生及び表示装置11での各アイコンの表示を終了する。
【0047】
このように、Level1〜Level3のいずれであっても、PM堆積量が警告解除閾値を下回れば、堆積量取得手段50は、再生制御レベルをLevel0に戻し、DPF41の自動再生及び表示装置11での各アイコンの表示を終了する。
図4及び
図5を参照しながら、上述したDPF41の再生制御についてさらに説明する。
図4は、フィルタ再生制御手段60によって再生制御レベルが決まった後の動作を示すフロー図であり、
図5は、各再生制御レベルにおける表示装置11の表示態様を示す図である。
【0048】
図4において、再生制御レベルがLevel1のとき(第1の再生制御モード51のとき)、フィルタ再生制御手段60は、エンジンECU32に対して燃焼処理として自動再生を実行させる(S1)と共に、自動再生が実行されていることを示すアイコン(DPF燃焼中ランプ)Aを、メインECU33によって表示装置11に点灯させる(S2)。
図5に示すように、第1の再生制御モード51のとき、表示装置11は、フィルタ再生制御手段60による指令に従って、液晶パネル112にアイコン(DPF燃焼中ランプ)Aを表示すると共に、「DPF再生中」、「排気温度上昇」のメッセージを表示する。このとき表示装置11は、LED表示部113の最上部に設けられた警告LED表示部113aを橙色で点滅させる。
【0049】
次に、再生制御レベルがLevel2のとき(第2の再生制御モード52のとき)、フィルタ再生制御手段60は、エンジンECU32に対して燃焼処理として自動再生を継続する(S3)と共に、自動再生が実行されていることを示すアイコン(DPF燃焼中ランプ)Aとエンジン回転数を上昇させることを指示するアイコン(Eng回転数上昇要求ランプ)Bを、メインECU33によって表示装置11に点灯させる(S4)。さらに、第2の再生制御モード52であるとき、フィルタ再生制御手段60は、エンジンECU32から取得したエンジン回転数が、例えば1800回転以上であるか否かを判断し(S5)、1800回転以上であれば(S5:YES)、Eng回転数上昇要求ランプBを消灯するように表示装置11に指示する(S6)。また、エンジン回転数が1800回転未満であれば(S5:NO)、フィルタ再生制御手段60は、Eng回転数上昇要求ランプBを点滅させるように表示装置11に指示する(S7)。
【0050】
図5に示すように、第2の再生制御モード52のとき、表示装置11は、第2の再生制御モード52によって、DPF燃焼中ランプ(アイコン)Aを表示する画面とEng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面とを液晶パネル112に交互に表示する。このとき表示装置11は、LED表示部113の最上部に設けられた警告LED表示部113aを橙色で点滅させている。
【0051】
作業者が、表示された指示通りにエンジン回転数を上昇させ、エンジンECU32から取得したエンジン回転数が1800回転以上であると、フィルタ再生制御手段60は、表示装置11に対してEng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面を表示させず、DPF燃焼中ランプ(アイコン)Aを表示する画面だけを表示するように指示する。
【0052】
続いて、再生制御レベルがLevel3のとき(第3の再生制御モード53のとき)は、フィルタ再生制御手段60は、エンジンECU32に対して燃焼処理として自動再生を継続する(S8)と共に、自動再生が実行されていることを示すアイコン(DPF燃焼中ランプ)Aとエンジン回転数を上昇させることを指示するアイコン(Eng回転数上昇要求ランプ)Bを、表示装置11に点灯させる(S9)。さらに、第3の再生制御モード53であるとき、フィルタ再生制御手段60は、エンジンECU32から取得したエンジン回転数が、例えば1800回転以上であるか否かを判断し(S10)、1800回転以上であれば(S10:YES)、Eng回転数上昇要求ランプBを消灯するように表示装置11に指示する(S11)。また、エンジン回転数が1800回転未満であれば(S10:NO)、フィルタ再生制御手段60は、Eng回転数上昇要求ランプBを点滅させるように表示装置11に指示し(S12)、LED表示部113の最上部に設けられた警告LED表示部113aを赤色で点滅させるようメインECU33によって表示装置11に指示する(S13)。
【0053】
図5に示すように、Level3における表示装置11は、フィルタ再生制御手段60からの指示に従って、DPF燃焼中ランプ(アイコン)Aを表示する画面とEng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面とを液晶パネル112に交互に表示する。Level3ではバックホー1の馬力制限が行われているので、Eng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面の下段には、「出力制限中」のメッセージが表示されている。このとき表示装置11は、LED表示部113の最上部に設けられた警告LED表示部113aを赤色で点滅させている。
【0054】
作業者が、表示された指示通りにエンジン回転数を上昇させ、エンジンECU32から取得したエンジン回転数が1800回転以上であると、フィルタ再生制御手段60によって表示装置11に対して、Eng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面において、「エンジン回転を上げてください」というメッセージの表示をしないように指示する。これによって、エンジン回転数が1800回転以上である場合には、表示装置11は、フィルタ再生制御手段60からの指示に従って、DPF燃焼中ランプ(アイコン)Aを表示する画面と、「エンジン回転を上げてください」というメッセージの表示がされないEng回転数上昇要求ランプ(アイコン)Bを表示する画面とを液晶パネル112に交互に表示する。このとき表示装置11は、LED表示部113の最上部に設けられた警告LED表示部113aを赤色の点滅から橙色の点滅に変更する。
【0055】
本実施形態によれば、作業者に警告を発してエンジン回転数の上昇を促しているため、警告に気づいた作業者は、作業中においても適宜ディーゼルエンジン9の回転数を上昇させて、排気温度を上昇させることができる。排気温度が上昇した結果、吸気スロットルの絞りなどの自動再生によって上昇したDPF41の温度がさらに上昇し、DPF41に堆積した粒子状物質が燃焼する。このように本実施形態によれば、自動再生をバックアップする操作(エンジン回転数の上昇)を作業者に促すことができるので、PM堆積量の減少を促進させることができ、DPF41の再生を効率よく行うことができる。
【0056】
上述したような自動再生のバックアップ操作であるエンジン回転数の上昇は、作業者によるアクセル操作によって行われるようになっているため、従来のように、DPF41の再生のためだけにバックホー1を停止させて作業を中断する必要がなくなる。
例えば、作業現場内で移動するためや作業現場から退避するために、バックホー1を走行させる場合がある。その場合、作業者は、運転席10の周囲に設けられた操作レバーを操作してバックホー1を走行させる。このような走行は、作業時に断続的に繰り返し行われることが多いので、繰り返し行われる走行の合間である空き時間に作業者の任意のタイミングでアクセル操作を手動で行うことによってエンジン回転数を上昇させて排気温度を上げることができる。
【0057】
また、作業現場において作業者は、バックホー1の走行に用いたものとは別の操作レバーを操作することで作業装置などを動作させて、例えば掘削作業などを実施することもある。作業現場で行われる作業は複数の作業単位が連続しているので、作業者は、一つの作業単位が終了してから次の作業単位を開始するまでの間である空き時間に、任意のタイミングでアクセル操作を手動で行うことによって走行時と同様にエンジン回転数を上昇させて排気温度を上げることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、走行中や作業中であっても、DPF41の再生をさらに促進する必要がある場合には、まず、エンジン回転数を上昇させることを警告によって作業者に知らせたうえで、任意にエンジン回転数の上昇をアクセル操作によって行えるようにしている。そのため、従来のように、DPF41の再生のためだけにバックホー1を安全な場所に停車させる必要はなく、簡単にDPF41の再生を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、PM堆積量が閾値TH1以上となって自動再生が開始した後に、PM堆積量の増加傾向(閾値TH2以上となったか否か)に基づいてディーゼルエンジン9の回転数を上げる必要性(DPF41の再生を作業者に促すか否か)を判断している。即ち、自動再生を開始したにもかかわらず十分な再生効果を得ることができずにPM堆積量がさらに増加した場合(閾値TH2以上の場合)だけ、エンジン回転数の上昇する必要があることを作業者に、警報によって通知することとしている。
【0060】
つまり、再生効果が十分である場合(閾値TH2未満)は、エンジン回転数を上昇させる警告を行わないため、不必要なエンジン回転数の上昇を回避することができ、その結果、エンジン回転数の上昇に伴う燃料悪化を防止することができる。
加えて、本実施形態によれば、再生制御レベルがLevel3になるとディーゼルエンジン9の出力(馬力)を制限している。このLevel3は、DPF41にて捕集可能なPM堆積量に対して、現状のPM堆積量が多くなってきている段階であるが、この段階でディーゼルエンジン9の馬力制限をすることによって、多くなったPM堆積量を低減させることが可能である。
【0061】
即ち、ディーゼルエンジン9の馬力制限を行う段階では、自動再生によってPM堆積量を低減させる(燃焼によって減らす)ことも行われ、さらに、この馬力制限によって排出ガスの排出量が抑えてPM堆積量の増加を抑えることも行われており、燃焼によるPM堆積量の低減と、排出ガスの排出量の抑制によるPM堆積量の低減との両面から全体のPM堆積量の増加が抑制されることになる。しかも、ディーゼルエンジン9の馬力制限では、ディーゼルエンジン9は回転中であるため、負荷の軽い作業であれば続けることができる。
本実施形態では、PM堆積量が閾値TH3以上となっても、エンジン回転数の上昇を促す警告を継続して発しているため、PM堆積量が過多となってしまう前に、作業者にディーゼルエンジン9の回転数を上げさせ、排気温度を上昇させることができる。
【0062】
[第2実施形態]
第2実施形態は、再生制御レベルをLevel1からLevel2に移行させる際の基準が、上述の第1実施形態とは異なっている。
【0063】
図6及び
図7を参照しながら、第1実施形態と異なる点について説明する。
図6を参照すると、PM堆積量が閾値TH1以上となったときに再生制御レベルはLevel1となっている。その後、PM堆積量が閾値TH2以上となっていなくても、Level1となった時点から所定時間T秒(sec)後のPM堆積量が、閾値TH1よりも小さい警告解除閾値未満となっていなければ(警告解除閾値以上であれば)、再生制御レベルをLevel1からLevel2に移行している。以下、このような第1実施形態とは異なる点について詳しく説明する。
【0064】
フィルタ再生手段47は、計時部54を備えている。この計時部54は、再生制御レベルがLevel1となった時点から計時を開始して、Level1となった時点からの経過時間を計測する。
フィルタ再生制御手段60は、PM堆積量が閾値TH2以上であるか否かを判断して、閾値TH2以上の場合は、再生制御レベルをLevel2に移行する。
【0065】
また、フィルタ再生制御手段60は、PM堆積量が閾値TH2未満であると判断しても、所定時間後のPM堆積量が警告解除閾値未満でなければ、再生制御レベルをLevel2に移行する。即ち、Level1となった時点から所定時間T秒(sec)後においてPM堆積量が警告解除閾値未満となっていなければ、再生制御レベルをLevel2に移行する。
【0066】
このように第2実施形態によるフィルタ再生制御手段60は、再生制御レベルがLevel1にある時間が所定時間T秒(sec)以上だと自動再生動作において吸気スロットルを絞るのみでは十分な再生効果が得られていないと判断できるので、次の再生制御レベルに移行する。
このような動作を行う堆積量取得手段50を有するフィルタ再生手段47によって、PM堆積量の上昇を待つことなく、作業者にエンジン回転数を上昇させる警告を発することができる。よって、常に早めにDPF再生を実行することができる。
【0067】
本実施形態によれば、自動再生を開始してからの経過時間(所定時間T秒)後のPM堆積量の減少傾向(警告解除閾値未満になっているか否か)に基づいてディーゼルエンジン9の回転数を上げる必要性(DPF41の再生を作業者に促すか否か)を判断している。即ち、自動再生の開始後、PM堆積量が警告解除閾値未満となっていて減少傾向にあるときは、エンジン9の回転数を上げる必要はなく、一方で、PM堆積量が警告解除閾値以上であって減少傾向でない場合は、エンジン9の回転数を上げることを作業者に通知して、出来るだけ早く自動再生のバックアップを行えるようにしている。つまり、常に早い段階(PM堆積量があまり多くなっていない段階)で、自動再生をバックアップしてDPFを再生することができるので、DPFの初期性能の低下及び劣化を抑制することができる。
【0068】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態における自動再生について、「吸気スロットルの絞り」を一例として説明したが、自動再生は「吸気スロットルの絞り」だけに限定されず、燃料のポスト噴射によるDPFの再生を自動再生に加えてもよい。ポスト噴射とは燃焼後のガスに燃料を噴射することによって、DPF41の温度上昇を促進する動作のことである。
【0069】
また、各再生制御モードで行う自動再生において、「吸気スロットルの絞り」を行うか、「ポスト噴射」を行うかは、適宜組み合わせてもよい。例えば、第1の再生制御モード51〜第3の再生制御モード53は、全て吸気スロットルの絞りを行うこととし、そのうえで、第2の再生制御モード52において、水温や排気温度が第1の再生制御モード51のときよりも高くなったときに、吸気スロットルの絞りに加えてポスト噴射を開始してもよい。この場合、第3の再生制御モード53でも、継続してポスト噴射を行うことが好ましい。また、DPF41の制御は、バックホー1の他、コンパクトトラックローダ(CTL)、トラクタなどの作業を行う建設機械や農業機械についても、適用することができる。