(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5679950
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】電子部品保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20150212BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
H01L21/68 U
B65D85/38 J
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-246530(P2011-246530)
(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公開番号】特開2013-105778(P2013-105778A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 清文
【審査官】
浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−283295(JP,A)
【文献】
特開2007−131791(JP,A)
【文献】
特開2006−069633(JP,A)
【文献】
特開2011−216541(JP,A)
【文献】
特開2011−018769(JP,A)
【文献】
特開2008−103494(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0314894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板に積層される可撓性の粘着層を備え、この粘着層の表面に電子部品を保持する電子部品保持具であって、
粘着層をポリプロピレン系エラストマーあるいはシリコーンゴムにより形成し、この粘着層を、支持基板に接着される接着領域と、支持基板に接着されない非接着領域とに区画し、接着領域の少なくとも一部を非接着領域よりも粘着層の周縁部寄りに位置させるとともに、この接着領域の少なくとも一部をXY方向にそれぞれ伸長形成し、接着領域の表面を非接着領域の表面よりも低く形成し、非接着領域の表面に電子部品を着脱自在に粘着保持させるようにしたことを特徴とする電子部品保持具。
【請求項2】
支持基板に積層される可撓性の粘着層を備え、この粘着層の表面に電子部品を保持する電子部品保持具であって、
粘着層をポリプロピレン系エラストマーあるいはシリコーンゴムにより形成し、この粘着層を、支持基板に接着される接着領域と、支持基板に接着されない非接着領域とに区画し、接着領域の少なくとも一部を非接着領域よりも粘着層の周縁部寄りに位置させるとともに、この接着領域の少なくとも一部をXY方向にそれぞれ伸長形成し、接着領域の表面を非粘着処理し、非接着領域の表面に電子部品を着脱自在に粘着保持させるようにしたことを特徴とする電子部品保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップやガラス板等の電子部品を保持する電子部品保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における粘着トレイは、例えば図示しないトレイの表面XY方向に複数の部品収納部が並べて形成され、各部品収納部に可撓性の粘着フィルムが緊張して粘着されており、この粘着フィルムの表面に個片化された半導体チップ等の電子部品が剥離可能に粘着保持される(特許文献1、2、3、4、5、6、7、8参照)。
各粘着フィルムは、例えば所定の樹脂フィルムにより形成され、部品収納部に裏面の四隅部がそれぞれ粘着されており、フリーの状態で部品収納部内に位置して電子部品を着脱自在に搭載する。
【0003】
このような粘着トレイは、複数の電子部品を整列収納し、この複数の電子部品を順次所定のテストに供したり、複数の電子部品を一括してチップオンウェハ工程に供するよう機能する。係る粘着トレイから電子部品をピックアップして取り外す場合には、粘着フィルムをバキュームにより変形させ、粘着フィルムと電子部品との粘着面積を減少させれば、電子部品を剥離して容易に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐311377号公報
【特許文献2】特開2004‐189314号公報
【特許文献3】特開2001‐97475号公報
【特許文献4】特開平05‐335787号公報
【特許文献5】特開2005‐203657号公報
【特許文献6】特開2008‐153499号公報
【特許文献7】特開2008‐91696号公報
【特許文献8】特開2004‐273899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における粘着トレイは、以上のように構成され、部品収納部内に粘着フィルムがフリーの状態で単に位置するので、トレイに振動等が作用すると、電子部品が水平方向に動いて位置ずれすることがある。この場合に粘着トレイから電子部品を確実にピックアップしようとすると、画像処理装置により画像処理して電子部品の位置を確認しなければならず、ウェーハテスター装置によるテスト作業の遅延を招いたり、三次元積層デバイス等の生産性が低下するという問題がある。また、複数の電子部品を一括してチップオンウェハ工程に供する場合、電子部品が面方向に位置ずれすると、半導体ウェーハ側の位置パターンと整合しなくなるので、不良品となるおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、電子部品が面方向に動いて位置ずれするのを抑制し、電子部品を適切にピックアップすることができ、各種作業の遅延や生産性の低下を防ぐことのできる電子部品保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、支持基板に積層される可撓性の粘着層を備え、この粘着層の表面に電子部品を保持するものであって、
粘着層をポリプロピレン系エラストマーあるいはシリコーンゴムにより形成し、この粘着層を、支持基板に接着される接着領域と、支持基板に接着されない非接着領域とに区画し、接着領域の少なくとも一部を非接着領域よりも粘着層の周縁部寄りに位置させるとともに、この接着領域の少なくとも一部をXY方向にそれぞれ伸長形成し、
接着領域の表面を非接着領域の表面よりも低く形成し、非接着領域の表面に電子部品を着脱自在に粘着保持させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、支持基板に積層される可撓性の粘着層を備え、この粘着層の表面に電子部品を保持するものであって、
粘着層をポリプロピレン系エラストマーあるいはシリコーンゴムにより形成し、この粘着層を、支持基板に接着される接着領域と、支持基板に接着されない非接着領域とに区画し、接着領域の少なくとも一部を非接着領域よりも粘着層の周縁部寄りに位置させるとともに、この接着領域の少なくとも一部をXY方向にそれぞれ伸長形成し、接着領域の表面を非粘着処理し、非接着領域の表面に電子部品を着脱自在に粘着保持させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における支持基板と粘着層とは、必要に応じ、平面円形、楕円形、矩形、多角形等に形成することができる。支持基板の表面は、粘着層用の接着領域と非接着領域とに区画し、これら接着領域と非接着領域とを粘着層の接着領域と非接着領域とに対応させることができる。支持基板には複数の作業孔を穿孔し、各作業孔を粘着層の非接着領域に対向させることができる。さらに、電子部品は、単数でも良いし、複数でも良い。
【0010】
本発明によれば、粘着層の非接着領域よりも外側に位置する接着領域の一部がXY方向にそれぞれ伸び、支持基板に粘着層が位置決めされるので、粘着層がXY方向にずれるのを減少させることができる。したがって、例え振動等が作用しても、電子部品が面方向に動いてずれるのを規制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品が面方向に動いて位置ずれするのを抑制し、電子部品を適切にピックアップすることができるという効果がある。また、各種作業の遅延や生産性の低下を防ぐことができる。
また、粘着層をポリプロピレン系エラストマー製とするので、優れた耐熱性や耐薬品性、柔軟性等を得ることができる。また、粘着層をシリコーンゴム製とすれば、良好な耐熱性、耐候性、難燃性、電気絶縁性を得ることができる。また、接着領域の表面を非接着領域の表面よりも低くするので、接着領域の表面に電子部品が粘着することが少なく、粘着層の非接着領域から電子部品を簡単に剥離することが可能となる。
【0012】
さらに、接着領域の表面を非粘着処理すれば、粘着層の接着領域表面を非接着領域表面よりも低くする加工作業を省略し、電子部品の剥離を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図2】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における電子部品保持具は、
図1ないし
図3に示すように、基本的には平坦な支持基板1と、この支持基板1に積層される粘着フィルム4とを備え、粘着フィルム4を、支持基板1に接着される接着領域5と、支持基板1に接着されない非接着領域9とに区画し、粘着フィルム4の接着領域5の一部6を非接着領域9よりも粘着フィルム4の周縁部寄りに位置させるとともに、XY方向に展開し、非接着領域9に半導体チップ等の電子部品10を粘着保持させるようにしている。
【0016】
支持基板1は、
図1や
図2に示すように、例えばガラス基板等により平面矩形に形成され、厚さ方向に複数の作業孔2が所定のパターンで選択的に穿孔されており、各作業孔2が電子部品10の減圧による位置決めや突き出しピンによる突き上げ等に利用される。この支持基板1は、半導体ウェーハに複数の電子部品10を一括してチップオンウェハする場合、作業の便宜を図る観点から半導体ウェーハと同サイズの大きさや形等に形成される。また、支持基板1は、電子部品10が半導体ウェーハに加圧してハンダ接合されたり、加熱接合されるような場合には、耐加圧性や250℃程度の耐熱性を有することが好ましい。
【0017】
支持基板1の表面3は、粘着フィルム4用の接着領域と非接着領域とに区画され、これら接着領域と非接着領域とが粘着フィルム4の接着領域5と非接着領域9とに対応する。支持基板1の接着領域は、その一部が非接着領域よりも外側に位置して表面3の周縁部寄りに形成され、縦横方向、換言すれば、X方向とY方向とにそれぞれ平面帯形に伸長形成されており、残部が非接着領域中に平面格子形に形成される。支持基板1の非接着領域、すなわち粘着フィルム4の非接着領域9に対向する対向部は、必要に応じ、サンドブラスト等により粗面化処理され、この粗面化処理により粘着フィルム4の非接着領域9との接着度の低減が図られる。
【0018】
粘着フィルム4は、所定の材料を使用して可撓性を有する平面矩形に形成され、支持基板1の全表面3、あるいは周縁部を除く表面3に積層被覆される。この粘着フィルム4の材料としては、例えばポリプロピレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム等があげられる。これらの中でも、耐熱性や耐薬品性等に優れる安価で柔軟なポリプロピレン系エラストマー、あるいは耐熱性・耐候性等に優れるシリコーンゴムの選択が最適である。
【0019】
粘着フィルム4は、大きな延伸性と柔軟性とを有することが好ましい。これは、粘着フィルム4が延伸性と柔軟性を有しない場合には、粘着フィルム4に粘着保持された電子部品10の剥離が困難になるおそれがあるからである。
【0020】
粘着フィルム4は、
図1ないし
図3に示すように、支持基板表面3の接着領域に接着材8で強固に接着される接着領域5と、支持基板表面3の非接着領域に接着されない非接着領域9とに区画され、接着領域5の表面が非接着領域9の表面よりも僅かに低い不揃いに形成されており、接着領域5の表面に電子部品10が粘着して取り外しに支障を来たすのを防止する。
【0021】
接着領域5は、その一部6が非接着領域9よりも外側に位置して粘着フィルム4の周縁部寄りに形成され、粘着フィルム4の縦横方向、換言すれば、X方向とY方向とにそれぞれ平面帯形に伸長形成されており、残部7が非接着領域9中に平面格子形に形成される。接着領域5の表面は、特に限定されるものではないが、例えば粘着フィルム4を部分的に薄く加工することにより、非接着領域9よりも低く形成される。
【0022】
接着材8は、支持基板1と粘着フィルム4の双方を接着できるタイプであれば、特に限定されるものではない。接着材8は、例えばエポキシ系接着剤、シリコーン変性接着剤、粘着剤、両面粘着テープ等が使用される。
【0023】
非接着領域9は、粘着フィルム4の中央部に形成されて接着領域5の一部6に包囲され、接着領域5の残部7により複数に分割されてXY方向にマトリックスに整列する。各非接着領域9は、
図1の場合、電子部品10と同じ大きさ、あるいは電子部品10よりも大きい平面矩形に形成され、支持基板1の作業孔2に上方から対向しており、粘着性を有する表面に電子部品10が着脱自在に粘着保持される。
各非接着領域9は、必要に応じ、電子部品10よりも小さい平面矩形に形成することもできる。
【0024】
上記構成において、粘着フィルム4に電子部品10を保持させたい場合には、粘着フィルム4の非接着領域9、あるいは隣接する複数の非接着領域9間に電子部品10を配置して押圧すれば、電子部品10を粘着して安全にハンドリングすることができる。この際、接着領域5の表面が非接着領域9の表面よりも低いので、接着領域5の表面に電子部品10が粘着することがなく、後の取り外しが実に容易となる。
【0025】
これに対し、粘着フィルム4から電子部品10をピックアップする場合には、電子部品10を真空吸着により保持して引き上げれば、粘着フィルム4の非接着領域9が伸びて変形し、この非接着領域9と電子部品10との接触面積が減少するので、電子部品10を剥離して簡単にピックアップすることができる。
【0026】
上記構成によれば、接着領域5の一部6が粘着フィルム4の縦横方向、換言すれば、XY方向にそれぞれ伸長形成され、粘着フィルム4が位置決めされてXY方向にずれることがないので、例え支持基板1に振動等が作用しても、電子部品10が水平方向に動いて位置ずれするのを有効に防止することができる。したがって、電子部品10をピックアップする際、画像処理装置により画像処理して電子部品10の位置を正確に把握する必要がなく、ウェーハテスター装置によるテスト作業の遅延を招いたり、三次元積層デバイス等の生産性が低下するのを防ぐことができる。
【0027】
また、複数の電子部品10を一括してチップオンウェハ工程に供する場合、電子部品10が面方向に位置ずれすることがないので、複数の電子部品10と半導体ウェーハ側の位置パターンとを適切に整合させることが可能になる。したがって、不良品となるおそれを有効に排除することができる。
【0028】
なお、上記実施形態ではガラス基板からなる支持基板1を使用したが、半導体ウェーハ(シリコンウェーハ)製の支持基板1を用いても良い。また、上記実施形態では支持基板1に作業孔2を穿孔したが、何らこれに限定されるものではなく、粘着フィルム4に粘着した電子部品10を上方に突き上げる必要のない場合には作業孔2を省略しても良い。
【0029】
また、支持基板表面3の接着領域をサンドブラスト、エッチング、掘り込み等により接着材8の厚さ分だけ掘り下げ、この支持基板1の接着領域に接着材8をディスペンサやスクリーン印刷等により層状に形成し、この接着材8に粘着フィルム4の接着領域5を接着しても良い。また、支持基板表面3の接着領域をサンドブラスト、エッチング、掘り込み等により深く掘り下げ、この支持基板1の接着領域に粘着フィルム4の接着領域5を接着材8で接着することにより、接着領域5の表面を非接着領域9の表面よりも僅かに低く形成することもできる。
【0030】
また、上記実施形態では粘着フィルム4の接着領域5を接着材8で接着したが、接着材8を省略し、支持基板1に接着領域5を直接接着することができる。さらに、接着領域5の表面を非接着領域9の表面よりも低く形成するのではなく、接着領域5の表面に、サンドブラスト処理やテフロン(登録商標)コート処理等の非粘着処理を施すこともできる。こうすれば、接着領域5の表面を非接着領域9の表面よりも低く形成する作業を省略し、電子部品10の剥離を容易にすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る電子部品保持具は、半導体チップ、ガラス部品、電子回路部品等、各種の電子部品の製造分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 支持基板
3 表面
4 粘着フィルム(粘着層)
5 接着領域
6 接着領域の一部
7 接着領域の残部
8 接着材
9 非接着領域
10 電子部品