(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、高質量容量、高クーロン効率および長サイクル寿命といった利点を有し、且つ高容量で優れた充放電特性を有する電池の製造に利用可能な特定構造を備えたエネルギー貯蔵複合粒子を提供する。以下に、いくつかの実例を挙げて、エネルギー貯蔵複合粒子、およびこのエネルギー貯蔵複合粒子を用いた電池負極材料および電池について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るエネルギー貯蔵複合粒子の概略図である。
図1を参照すると、エネルギー貯蔵複合粒子100は、炭素フィルム110と、導電性炭素成分120と、エネルギー貯蔵粒子130と、導電性炭素繊維140とを含む。炭素フィルム110は、空間Sを取り囲む。導電性炭素成分120およびエネルギー貯蔵粒子130は、空間S内に配置される。導電性炭素繊維140は、導電性炭素成分120、エネルギー貯蔵粒子130および炭素フィルム110に電気接続され、空間Sの内側から空間Sの外側へ延伸する。
【0017】
さらに詳しく説明すると、複数の導電性炭素成分120および複数のエネルギー貯蔵粒子130を用いて、概球状マイクロメートル粒子(15μmより小さい)を形成し、炭素フィルム110を用いて、概球状マイクロメートル粒子を包み込む。導電性炭素繊維140は、導電性炭素成分120および炭素フィルム110の表面から伸びて、導電ネットワークを形成する。このようにして、特定構造を有するエネルギー貯蔵複合粒子100を得る。エネルギー貯蔵複合粒子100は、十分な空間Sを有し、充電中にエネルギー貯蔵粒子130によって生じる体積膨張を緩衝するため、多サイクルにわたり充放電した後も、エネルギー貯蔵複合粒子100が破壊されない。
【0018】
図1を参照すると、炭素フィルム110の厚さは、0.5μmよりも小さく、炭素フィルム110の材料は、アスファルトの炭化物、樹脂の炭化物、または他の適切な材料である。エネルギー貯蔵複合粒子100の表面面積は、6〜15m
2/gである。
【0019】
さらに、導電性炭素成分120の大きさは、1μm〜4μmである。導電性炭素成分120がマイクロメートルレベルの大きさであるため、導電性炭素成分120とエネルギー貯蔵粒子130(マイクロメートルレベルの大きさ)を混合している間、粒子が容易に凝集しない。導電性炭素成分120は、エネルギー貯蔵複合粒子100において優れた導電ネットワークを形成する薄片黒鉛(flake graphite)(導電率が高い)であってもよい。導電性炭素成分120の重量百分率は、エネルギー貯蔵複合粒子100の重量に対して50〜80wt%である。導電性炭素成分120の重量百分率を調整することによって、形成された導電ネットワークの導電率を適切に制御することができる。
【0020】
エネルギー貯蔵粒子130の大きさは、30nm〜150nmである。エネルギー貯蔵粒子130の重量百分率は、エネルギー貯蔵複合粒子100の重量に対して10〜50wt%である。エネルギー貯蔵粒子130の重量百分率を調整することによって、エネルギー貯蔵複合粒子100が必要な容量を有することができる。
【0021】
エネルギー貯蔵粒子130は、ナノメートルシリコン系粒子130a、ナノメートル異質複合粒子130b、およびこれらの組み合わせから選ばれる。さらに詳しく説明すると、
図1において、ナノメートルシリコン系粒子130aおよびナノメートル異質複合粒子130bは同時に存在しているが、ナノメートルシリコン系粒子130aおよびナノメートル異質複合粒子130bは、単独で使用することも可能である。
【0022】
エネルギー貯蔵粒子130がナノメートルシリコン系粒子130aおよびナノメートル異質複合粒子130bである場合、ナノメートル異質複合粒子130bの重量百分率は、ナノメートルシリコン系粒子130aに対して0.1〜5.0wt%である。ナノメートルシリコン系粒子130aに対するナノメートル異質複合粒子130bの重量百分率を調整することによって、エネルギー貯蔵複合粒子100が高容量および長サイクル寿命を有することができる。
【0023】
ナノメートル異質複合粒子130bの材料は、Mg、Ca、Cu、Sn、Ag、Al、SiC、SiO、TiO
2、ZnO、Si-Fe-P、Si-P、Si-Fe、Si-Cu、Si-Al、Si-Ni、Si-Ti、Si-Co、およびこれらの組み合わせから選ばれる。注意すべきこととして、ナノメートル異質複合粒子130bは、金属(Mg、Ca、Cu、Sn、Ag、Al)またはこれらの合金、シリコン炭化物(例えば、SiC)、シリコン酸化物(例えば、SiO)、金属酸化物(例えば、TiO
2、ZnO)、シリコンリン化物(例えば、Si-P)、シリコン系金属リン化物(例えば、Si-Fe-P)、またはシリコンと金属の組み合わせ(例えば、Si-Fe、Si-Cu、Si-Al、Si-Ni、Si-Ti、Si-Co)を使用してもよい。
【0024】
さらに詳しく説明すると、ナノメートル異質複合粒子130bは、異質体(例えば、シリコンと金属の組み合わせ)によって形成されてもよく、異質体(金属)は、シリコン系材料の拡張可能構造および導電率を増加させることができる。リチウム電池を例に挙げると、リチウム電池の充電中に、リチウムイオンがシリコン系材料を挿入して、リチウム-シリコン合金を形成した時、ナノメートル異質複合粒子130bは、体積膨張を起こす。しかしながら、異質体(金属)によって提供される拡張可能性によって、シリコン系材料の応力変化が減少するため、ナノメートル異質複合粒子130bの破壊を防ぐ効果を得ることができる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る別のエネルギー貯蔵複合粒子の概略図である。
図2を参照すると、エネルギー貯蔵複合粒子102とエネルギー貯蔵複合粒子100は類似するため、同じ構成要素は同じ符号で示す。注意すべきこととして、
図2のエネルギー貯蔵複合粒子102は、さらに、空間S内に配置された導電性マトリックス150を含む。
【0026】
図2を再度参照すると、導電性炭素成分120、エネルギー貯蔵粒子130および導電性炭素繊維140は、いずれも導電性マトリックス150の中に分布する。導電性マトリックス150の材料は、炭素材料、金属、有機材料、無機材料、およびこれらの組み合わせから選ばれる。導電性マトリックス150の重量百分率は、エネルギー貯蔵複合粒子100に対して5〜10wt%である。導電性マトリックス150は、さらに、導電性炭素成分120、エネルギー貯蔵粒子130、導電性炭素繊維140および炭素フィルム110を電気接続し、それによって、エネルギー貯蔵複合粒子102の表面抵抗を減らし、ハイパワー特性を得ることができる。
【0027】
エネルギー貯蔵複合粒子102は、さらに、導電性マトリックス150内に配置された複数の開口160を含む。開口160は、さらに、エネルギー貯蔵粒子130の体積膨張を緩衝することができる。つまり、開口160は、高容量のエネルギー貯蔵粒子130の体積膨張に対する緩衝層を提供するため、エネルギー貯蔵複合粒子100が容易に破壊されない。開口160の大きさは、1nm〜1000nmの間である。さらに、開口160は、電解液の導入やイオンの迅速な出入りに有利であり、イオンの拡散経路を提供することができる。開口160は、さらに、シリカ系負極材料の表面面積を増やし、それによって、イオンの反応面積を増加させることができる。
【0028】
図3Aおよび
図3Bは、本発明の実施形態に係るエネルギー貯蔵複合粒子の集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡(focused ion beam equipped scanning electron microscope, FIB-SEM)の写真である。
図3Aを参照すると、エネルギー貯蔵複合粒子の断面が示されており、エネルギー貯蔵複合粒子の組成は、実例7(Si+SiC/Carbon)である。
【0029】
図3Aのエネルギー貯蔵複合粒子は、
図2に類似した構造を有する。つまり、エネルギー貯蔵複合粒子102は、複数の開口160を有し、エネルギー貯蔵複合粒子102の表面は、導電性炭素成分、エネルギー貯蔵粒子および導電性マトリックス(
図3Aに図示せず)を包み込む炭素フィルム110を有する。
図3Bに示すように、複数のストリップ状導電性炭素繊維140を炭素フィルム110の表面に形成して、導電ネットワークを形成する。
【0030】
図2、
図3Aおよび
図3Bからわかるように、大きさが約15μmの均一なエネルギー貯蔵複合粒子102を準備する。エネルギー貯蔵複合粒子102の内部は、高容量シリコン系ナノメートル粒子(エネルギー貯蔵粒子130)、導電性炭素繊維140、薄片黒鉛(導電性炭素成分120)、および数ナノメートルからマイクロメートルまでのサイズ分布を有する開口160によって形成される。エネルギー貯蔵複合粒子102の表面は、厚さが500nmよりも小さい炭素フィルム110および導電性炭素繊維140で覆われる。
【0031】
以上のように、炭素フィルム110が導電性炭素成分120およびエネルギー貯蔵粒子130を取り囲んでいるため、充電中にエネルギー貯蔵粒子130に対して体積膨張が生じた時に、空間Sが緩衝効果を提供し、それによって、エネルギー貯蔵複合粒子100の破壊を防ぐことができる。エネルギー貯蔵複合粒子100および102がナノメートル異質複合粒子130bおよび開口160を有する時、異質体によって提供される拡張可能性と開口160によって提供される緩衝空間により、エネルギー貯蔵複合粒子100および102の破壊を防ぐ効果を得ることができる。さらに、導電性炭素成分120、導電性炭素繊維140および導電性マトリックス150は、三次元(3D)導電ネットワークを形成するため、それによって、電子伝達効率を向上させることができる。
【0033】
図4は、本発明の実施形態に係る電池負極材料の概略図である。
図4を参照すると、電池負極材料200は、金属板300の上に配置され、エネルギー貯蔵複合粒子210と、導電性炭素220と、接着剤230とを含んでもよい。エネルギー貯蔵複合粒子210は、エネルギー貯蔵複合粒子100および102であってもよく、エネルギー貯蔵複合粒子210、導電性炭素220、接着剤230の重量比は、75:15:10である。接着剤230は、水性アクリレートを含み、エネルギー貯蔵複合粒子210と導電性炭素220を接着してもよい。さらに、金属板300は、銅または導電率の高い他の金属を用いて、集電してもよい。
【0034】
注意すべきこととして、複数のエネルギー貯蔵複合粒子210は、炭素フィルム110および導電性炭素繊維140を介して互いに電気接続され、複数のエネルギー貯蔵複合粒子210間の接触面積を増やすのに有利であるため、複数のエネルギー貯蔵複合粒子210間の接触インピーダンスを減らし、高い電子伝達能力を達成することができる。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係る電池の概略図である。
図5を参照すると、電池400は、負極板410と、正極板420と、イオン導電層430とを含む。電池負極材料200は、負極板410の上に配置される。正極板420は、負極板410に対応して配置される。イオン導電層430は、負極板410および正極板420に電気接続される。正極板420の材料は、リチウムを含んでもよい。
【0036】
以下に、本発明のエネルギー貯蔵複合粒子100および102の実例をいくつか挙げ、商用炭素材料(MCMB 1028)およびSi/Graphiteの2つの比較例と比較して、エネルギー貯蔵複合粒子100および102が実際に高質量容量、高クーロン効率および長サイクル寿命を有することを説明する。さらに、エネルギー貯蔵複合粒子の電池負極材料を用いた製造例についても説明する。
【0037】
[本発明のエネルギー貯蔵複合粒子の実例]
【0039】
高容量ナノメートルシリコンと炭素成分を高速攪拌で均一に分配した。次に、スプレー造粒および機械デバイスを用いて多孔性二次粒子を生成した。それから、アスファルトを均一な炭素前駆体の層として用いて、多孔性二次粒子を包んだ。その後、高温(950℃)炭化処理により外側に炭素フィルムを包んだ。最後に、多孔性エネルギー貯蔵複合粒子、つまり、Si/Carbonを得た(実例1)。
【0040】
[実例2〜6:Si+Mg/Carbon、Si+Ca/Carbon、Si+Cu/Carbon、Si+Ag/Carbon、Si+Al/Carbon]
【0041】
高容量ナノメートルシリコンと炭素成分を高速攪拌で均一に分配した後、溶解した金属前駆体をゆっくり加えた。そして、実例2ではMg (NO
3)
2を加え、実例3ではCa(NO
3)
2を加え、実例4ではCu(CH
3COO)
2を加え、実例5ではAgNO
3を加え、実例6ではAl(NO
3)
3を加えた。
【0042】
次に、スプレー造粒および機械デバイスを用いて多孔性二次粒子を生成した。それから、アスファルトを均一な炭素前駆体の層として用いて、多孔性二次粒子を包んだ。その後、高温(800〜1000℃)炭化処理により外側に炭素フィルムを包んだ。最後に、多孔性エネルギー貯蔵複合粒子、つまり、Si+Mg/Carbon(実例2)、Si+Ca/Carbon(実例3)、Si+Cu/Carbon(実例4)、Si+Ag/Carbon(実例5)、およびSi+Al/Carbon(実例6)を得た。
【0043】
[実例7:Si+SiC/Carbon]
【0044】
高容量ナノメートルシリコンと炭素成分を高速攪拌で均一に分配した。次に、スプレー造粒および機械デバイスを用いて多孔性二次粒子を生成した。それから、アスファルトを均一な炭素前駆体の層として用いて、多孔性二次粒子を包んだ。その後、高温(1100℃)炭化処理により外側に炭素フィルムを包んだ。最後に、多孔性エネルギー貯蔵複合粒子、つまり、Si+SiC/Carbonを得た(実例7)。
【0045】
[実例8〜9:Si+SiO/Carbon、Si+TiO
2/Carbon]
【0046】
高容量ナノメートルシリコン、ナノメートル酸化物および炭素材料を高速攪拌で均一に分配した。実例8で加えたナノメートル酸化物はSiOであり、実例9で加えたナノメートル酸化物はTiO
2であった。
【0047】
次に、スプレー造粒および機械デバイスを用いて多孔性二次粒子を生成した。それから、アスファルトを均一な炭素前駆体の層として用いて、多孔性二次粒子を包んだ。その後、高温(1100℃)炭化処理により外側に炭素フィルムを包んだ。最後に、多孔性エネルギー貯蔵複合粒子、つまり、Si+SiO/Carbon(実例8)およびSi+TiO
2/Carbon(実例9)を得た。
【0048】
[実例10:Si+SiFeP/Carbon]
【0049】
高容量ナノメートルシリコンと炭素成分を高速攪拌で均一に分配した後、金属前駆体の水溶液(例えば、C
6Fe
2O
12・5(H
2O))とリン酸溶液をゆっくり加えた。
【0050】
次に、スプレー造粒および機械デバイスを用いて多孔性二次粒子を生成した。それから、アスファルトを均一な炭素前駆体の層として用いて、多孔性二次粒子を包んだ。その後、高温(1000℃)炭化処理により外側に炭素フィルムを包んだ。最後に、多孔性エネルギー貯蔵複合粒子、つまり、Si+SiFeP/Carbonを得た(実例10)。
【0051】
[本発明のコイン電池の製造方法の実例]
【0053】
まず、負極材料として実例1〜10のエネルギー貯蔵複合粒子を提供し、水性アクリレート接着剤(LA132)および導電性炭素を加えた。エネルギー貯蔵複合粒子、水性アクリレート接着剤、導電性炭素の重量比は、75:10:15であった。次に、一定比率のイオン交換水を加えて均一に混ぜ、スラリーを形成した。それから、スラリーを銅箔(14〜15μm)の上に塗布して負極板を形成し、負極板を熱風で乾燥させた後、真空で乾燥させて、溶媒を取り除いた。
【0055】
電池に組み立てる前に、まず、負極板を圧延し、それから、直径が13nmのコイン型負極板に打ち抜いた。
【0056】
次に、正極板として、リチウム金属を負極板に対応して配置した。正極板と負極板の間にイオン導電層を提供し、例えば、1MのLiPF
6-EC/EMC/DMC(体積比は1:1:1)+2wt%のVCの電解液を使用して、電池を完成させた。LiPF
6はヘキサフルオロリン酸リチウム(lithium hexafluorophosphate)であり、ECは炭酸エチレン(ethylene carbonate)であり、EMCは炭酸エチルメチル(ethyl methyl carbonate)であり、DMCは炭酸ジメチル(dimethyl carbonate)であり、VCは炭酸ビニレン(vinylene carbonate)である。
【0057】
電池の充放電範囲は、2.0V〜5mVである。充放電電流を0.005Cとして、材料の様々な電気化学的特性を測定した。サイクル寿命の試験条件は、0.2C充電/0.5C放電である。
【0059】
商用黒鉛(MCMB 1028)を使用して、コイン電池の製造および試験を行った。
【0061】
ナノメートルシリコン粒子(50〜150μm)、人造黒鉛粉(1〜4μm)、軟質アスファルトおよび溶媒を均一に混ぜた後、湿式ボールミル(wet-ball-milling)を4日間行った。次に、溶媒を取り除き、生成物を真空で乾燥させた。最後に、粉体を高温(1000℃)炭化処理して多孔性Si/graphite複合負極材料を獲得し、コイン電池の製造および試験を行った。
【0062】
表1は、実例1〜10および比較例1と2のサイクル寿命試験の結果を示したものであり、
図6〜
図17は、それぞれ、比較例1と2および実例1〜10の最終容量とサイクル回数の関係を示した図である。
【0064】
表中、「サイクル保持率=(最終容量/放電容量)×100%」であり、大きい数値は長サイクル寿命、小さい数値は短サイクル寿命を示す。
【0065】
表1および
図6からわかるように、比較例1は、放電容量が約304mAh/g、クーロン効率が約89%、最終容量が210mAh/gの商用黒鉛であるため、サイクル保持率は、70%(100回サイクル)と計算される。
【0066】
表1および
図7からわかるように、商用黒鉛と比較して、比較例2の放電容量は45%まで上昇し、クーロン効率は92%に達したが、サイクル保持率は56%(100回サイクル)であるため、比較例2は比較例1より劣る。
【0067】
表1および
図8からわかるように、実例1のエネルギー貯蔵複合粒子(Si/Carbon)は高放電容量(485mAh/g)および高サイクル保持率71%(100回サイクル)といった優れた結果を示している。これからわかるように、開口構造を有するエネルギー貯蔵複合粒子(Si/Carbon)は、サイクル寿命において比較的優れた結果を示す。これは、エネルギー貯蔵複合粒子の構造内にある開口がエネルギー貯蔵粒子に対する緩衝空間を提供し、サイクル寿命を効果的に改善することができるからである。
【0068】
表1および
図9〜
図13からわかるように、高容量シリコン系/炭素複合材料において、金属異質体を使用してドーピングを行った場合、実例2〜実例6のサイクル保持率は、それぞれ、68%(Si+Mg/Carbon、100回サイクル)、92%(Si+Ca/Carbon、100回サイクル)、73%(Si+Cu/Carbon、100回サイクル)、90%(Si+Ag/Carbon、100回サイクル)、74%(Si+Al/Carbon、94回サイクル)である。比較例2(Si/graphite)および比較例1(Si/Carbon)と比較して、実例3〜実例6のサイクル寿命は明らかに長い。さらに、実例2(Si+Mg/Carbon)のサイクル寿命は、比較例1(Si/Carbon)のサイクル寿命に類似する。概して、高容量シリコン系/炭素複合材料のサイクル寿命は、金属異質体のドーピングによって明らかに改善される。これは、金属が高い導電率と拡張可能性を有しているため、エネルギー貯蔵粒子の物理性質が改善されるからである。
【0069】
図14および
図15からわかるように、高容量シリコン系/炭素複合材料において、金属酸化物異質体を使用してドーピングを行った場合、実例8および9のサイクル保持率は、それぞれ、97%(Si+SiO/Carbon、100回サイクル)および79%(Si+TiO
2/Carbon、100回サイクル)である。比較例2(Si/graphite、56%)および比較例1(Si/Carbon、71%)と比較して、実例8および実例9のサイクル寿命が長いことがわかる。金属酸化物は、エネルギー貯蔵粒子によって生じる膨張の緩衝層として用いることができるため、エネルギー貯蔵粒子の膨張によって破壊が生じる問題を解決することができ、それによって、高く安定した容量を得ることができる。
【0070】
表1および
図16からわかるように、高容量シリコン系/炭素複合材料において、合金不均一体を使用してドーピングを行った場合、実例10のサイクル保持率は、77%(Si+SiFeP/Carbon、200回サイクル)である。比較例2(Si/graphite、56%、100回サイクル)、比較例1(Si/Carbon、71%、100回サイクル)および
図17の実例7(Si+SiC/Carbon、65%、200回サイクル)と比較して、実例10のサイクル寿命が長いことがわかる。シリコン系合金異質体は、シリコン系材料の膨張に対する緩衝層として用いることができ、シリコン系材料の拡張可能構造を増やして、シリコン系材料の導電率を向上させる。そのため、電子伝達能力が増加して、シリコンベース応力の発生が減少する。その結果、シリコン系材料の膨張の問題を解決することができ、それによって、長サイクル寿命を達成することができる。さらに、実例7のSi+SiC/Carbon複合負極材料も類似した性質を有する。
【0071】
以上に基づき、本発明のエネルギー貯蔵複合粒子、電池負極材料および電池は、少なくとも以下の利点を有する。
【0072】
(1)エネルギー貯蔵複合粒子は、複数の開口を有するため、電解液の導入やイオンの迅速な出入りに有利であり、イオンの拡散経路を提供することができる。開口は、エネルギー貯蔵複合粒子の表面面積を増やし、イオンの反応面積を改善することもできる。さらに、複数の開口が高容量エネルギー貯蔵粒子の膨張に対する緩衝層を提供するため、エネルギー貯蔵複合粒子が容易に破壊されない。
【0073】
(2)エネルギー貯蔵粒子は、ナノメートル異質複合粒子である。ナノメートル異質複合粒子の異質体は、エネルギー貯蔵粒子の拡張可能構造および導電性を増やすため、高容量エネルギー貯蔵粒子が充放電中に破壊されるのを防ぐことができる。さらに、エネルギー貯蔵粒子と導電性マトリックスの間の接触インピーダンスを減らすことができるため、エネルギー貯蔵複合粒子のサイクル寿命を安定させるのに有利である。
【0074】
(3)導電性マトリックスは、エネルギー貯蔵粒子、導電性炭素および炭素フィルムに電気接続され、それによって、三次元(3D)導電ネットワークを形成する。導電性炭素繊維は、エネルギー貯蔵複合粒子の内側から外側に延伸することができるため、エネルギー貯蔵複合粒子の接触インピーダンスを減らすのに有利である。そのため、エネルギー貯蔵複合粒子が優れた電子導電経路を有し、それによって、ハイパワー特性を得ることができる。
【0075】
(4)複数のエネルギー貯蔵複合粒子は、炭素フィルムおよび導電性炭素繊維を用いて互いに電気接続されるため、複数のエネルギー貯蔵複合粒子間の接触面積を増やして、複数のエネルギー貯蔵複合粒子間の接触インピーダンスを減らすのに有利であり、それによって、高い電子伝達能力を得ることができる。
【0076】
(5)導電性炭素成分およびエネルギー貯蔵粒子の大きさは、それぞれ、マイクロメートルレベルおよびナノメートルレベルである。導電性炭素成分のマイクロメートルレベルの大きさは、導電性炭素成分とエネルギー貯蔵粒子のスラリー混合を行うのに有利であり、それによって、粒子の集積を防ぐことができる。
【0077】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。